参考:Profitability of Groupon Promotions (Online Ad 2010/12/22)
引用した米ライス大学の
次に、Grouponキャンペーンをしなかった場合をキャンペーン前の2ヶ月半の累積から推測したカーブを重ね合わせて比較している。それによると、キャンペーンをしなかった場合と比べて売上は140%も伸びている。これはGrouponキャンペーンがもたらした「露出価値」と分類することができる。
キャンペーンをしなかった場合、無名の新ビジネスがたたき出す売上も利益も緩やかな上昇カーブを描くことになる。その利益カーブに近似したカーブをキャンペーン期間中にたたき出していることから最低限の利益は確保できていたようだ。これがあるからこそ、ある意味で豊富な回転資金で仕入れを行いキャンペーン期間中を乗り越えられたということだろう。
キャンペーン終了直前に駆け込み需要があり実際の利益は推測利益を30%も上回るカーブをたたき出している。ここは、キャンペーン企画に際してひとつのポイントになるだろう。
そして、販売当たりの利益を見ている。ここに関しては、クーポン利用企業ごとのコスト、利益率、定価、割引率、販売クーポン数、期間など多くの変数があるので一概に断定することはできない。しかし、GPMの場合、赤にはなっていないが、キャンペーン開始前の2ヶ月半の利益からするとキャンペーン期間中は半分以下、三分の一程度の利益しか出ていない。平均するとキャンペーン前の60%ダウンというレベルだ。ただし、日によって、週によって大きく変動していたキャンペーン前と比べれば、低空飛行ではあるが安定した利益をもたらしていたと言えないこともない。
上の売上はクーポン利用客だけではなく定価販売客やその他の割引販売客も含めている。ということで客ごとの売上と利益も分析している。
定価販売客の売上をインデックス192とすると、クーポン客は71、その他割引き客は156。利益でみると定価販売客は617、クーポン客は-60、その他割引き客は405となっている。
ということは、クーポン客は定価販売客の半分以下の売上しかなく、当然ながら利益は赤だ。クーポン客は仕入れなどの回転資金に全く貢献していないのが明らかだ。
とどのつまり、「クーポン客だけ」では商売にならないのだ。ただし、下図に示されているようにキャンペーン期間中のクーポン客だけの利益と来店頻度の関りを見ると、クーポン客の60%は赤字だが、20%は利益を比較的多く稼げている。そのため、キャンペーン期間中の利益は赤字を免れているわけだ。
もうひとつある。それはクーポンで来た客が定価販売客として再訪し、期間中の定価販売客数を3倍に押し上げていることだ。それによって利益を黒に押し上げている。
次に累積利益率(累積利益÷累積売上)を見ると、販売当たりの利益と似通ったカーブを描いている。ひとつ違うのはキャンペーン終了直前に見られる跳ね上がりだ。この駆け込み需要が利益率を大きく押し上げている。このパターンは多分、他ビジネスにも反映されるとだろうから、終了直前には相応の仕込みが必要になる。
最後にクーポンの交換率を見ている。これもビジネス、業態ごとに多様だ。だから基本的な参考程度のデータではあるが、ここまで切り込んでいる初めての調査として価値は低くはない。
Source:Social Science Research Network / A Startup'S Experience with running a Groupon Promotion
この調査の結論は、上を参照していただくことにして、日本でもいろいろとお騒がせニュースが飛び交っているGroupon(グルーポン)だが、なにもパパママストア、中小・零細企業だけに利用させておく手はない。ナショナルクライアントであるGAPが利用したように大企業、グローバル企業であっても活用するチャンスはいくらでもあるはずだ。
この調査レポートを物売りビジネスだけに反映するのか、あるいは、サービスなど他ビジネスに展開する戦略を検討するのか、そこがマーケターの能力次第になる。