2006/10/31

OPA Internet Activity Index

OPA (Online Publishers Association) Webサイトに、Internet Activity Index (IAI) がある。

デフォルトでオンラインで消費された時間を4つのカテゴリごとに、データ収集が終わった最新月とその前月の比率と、%の変動を示している。また、最新月のトピックを掲載している。右は10月中旬まで表示していた8月のデータ、左は現在最新のデータとして9月のデータが表示されている。

4カテゴリの詳細は以下の通り。
コンテンツ
主としてニュース、情報そしてエンターテイメントを提供する目的のWebサイト、およびインターネットアプリケーション。CNN.com、ESPN.com、Windows Media Player、MapQuestなど。

コミュニケーション
考え、メッセージ、あるいは個人間、グループ間で直接やり取りされる情報を提供するためのWebサイト、およびインターネットアプリケーション。Yahoo! Mail、AOL Instant Messenger、MSN Groupなど。

コマース
オンラインショッピングなどを実施するWebサイト、およびインターネットアプリケーション。Amazon、eBay、Shopping.com、Dell.comなど。

サーチ
Webをスキャンし、ユーザごとのリクエストから特定条件に基づいた結果を提供するWebサイト、あるいはインターネットアプリケーション。Google Search、MSN Search、Yahoo! Searchなど。

このInternet Activity Indexのどこかをクリックすると、時系列データも見られるようになっている。Share of Time、Page Per Person、Page Views、Total Time、Unique Visitors、そしてReachがある。Unique VisitorsとReachを観てみると、それぞれ1億人を超すユーザがアクセスし、全インターネットユーザに対して70~80%台のリーチを上げている。メールなどのコミュニケーション、コンテンツ、サーチ、コマースの順になっている。
しかし、Total TimeとShare of Timeを見ると、いかにコンテンツ、コミュニケーションでユーザ時間が消費されているかがわかる。ユーザ消費時間が6億時間を越える2カテゴリに対して、Searchは8,400万時間しかない。GoogleがMySpaceを取り込んで、コンテンツとEmailでの広告スペースを確保、獲得した理由がわかる。また、GoogleがLPOを導入し、ランディングページであるコンテンツサイドでのサービス獲得に動いたのもうなずける。
しかし、どこまでいってもオフライン広告の一方通行をオンラインでやっているだけであることは間違いない。CTRはどこまでも下がり続け、検索キーワードの単価は上がり続け、CPAなども一方通行である限り、その効果は下がり続ける。

Googleが目指すように広告スペースを確保し、圧倒的な物量で広告を強制露出する一方通行ではなく、ユーザの自発参加を促進し、コンテンツ拡張やユーザのEngagement、関係性を深化させる双方向のコミュニケーションを模索しない限り、オンライン広告の冬の時代は意外なほど早くやってくるかもしれない。

Blog and RSS for B2Bでも紹介したが、BlogやRSSを活用したB2Bマーケティングに効果があることは、IT購入決定に大きく影響していることからも評価されている。Web2.0時代にグローバルなViral Marketingの核のひとつとなるのは、Blogをおいて他にない。

参考:OPA
参考:OPA Internet Activity Index
参考:Blog and RSS for B2B

2006/10/30

MySpace, ByeSpace?

GEN Yのデジタルイノベーター・アーリーアダプターがCoolだとして挙ったSNSが、商業化されていくにつれて彼らはどのような反応を示すのか?バナーが氾 濫するスペースから何時集団逃亡するのか?メインストリーム化したことで大挙するGEN X、あるいはBBがSNS自体をどのように変貌させるのか?
と、Profitable SNS with GEN Y, GEN X and BB?で書いた。

VIDEO
[See the video]
Unique visitors to MySpace and Facebook dropped from August to September. WSJ technology reporter Vauhini Vara offers a look at what's causing some users to bail out in a desk-side chat with Stacey Delo of Dow Jones Online.
変化のわずかな兆候かもしれないが、WSJ.comが次のように書いている。

20歳のJenny Thompsonは2年前にMySpaceにページを持ち、毎日、十数人からのリンクリクエストに応えていた。今年はじめになると顔も知らない友達は4,000人に達した。大勢が「omg (Oh My God)、綺麗だね」というコメントを寄せてくるのに辟易した彼女は、MySpaceのページを削除した。

彼女は、その人気の高さではなく、その存在自体のため、MySpaceや他のSNSを放棄するインターネットユーザのグループに属している。これはMySpaceやFacebookが直面するジレンマを明示している。クリティカルマスを抱えるようになりサイトが機能する反面、数多くのユーザが一部のユーザを阻害することになり、増え続ける広告と、SPAMによる不協和音を醸成している。

Niselsen//NetRatingsによる両サイトの9月のビジターを見ると、MySpaceは4,920万人から4%ダウンの4,720万人へ、Facebookは890万人から12%ダウンの780万人となっている。ただし、これは学生が大学へ戻った季節要因で、昨年もこの時期に減っているが、その後、戻っている。

Facebookのスポークスマンは、自社データでは9%アップの1,1000万人、ページビューは40%アップの165億に達したと語っている。一方、MySpaceを抱えるFox Interactive Mediaは、「MySpaceは急激な成長から成熟の過程へ移行しつつある」、「自分のページを削除した数が増加したということはない」としている。

MySpaceの人気によってSpamが増え、ユーザを悩ましている。多くの広告主は「Friend Request」機能を使い、広告そのもののリクエストを送っている。また、MySpaceユーザに短時間で「Friend Request」を自動送信するプログラムも出現している。これが新しい世代のEmail Spamだ。$19.95でプログラムを販売しているサイトもある。

Facebookは今のところSpam問題は表面化していない。しかし、それまで学生のみが対象だったユーザ制限を先月、開放したことで一部のユーザ離れを招いている。3,000近くのユーザは、「Facebookを学生に限定する公式請願」を出している。Facebookの売りである、「オフラインで知っている人をオンラインで結びつける」機能がストーカーまがいの行為を招いている。

ユニークビジターの減少は、数ヶ月続いた緩やかな伸びの後にきた。
MySpaceの場合、9月までの過去3ヶ月は3.1%の伸び、前年は45%の伸び。
Facebookの場合、前年の11%の伸びに比べ、1.7%のダウン。

Yahoo!も同じような状況でユーザ数の伸びは鈍化している。

Source:Wall Street Journal

友人コミュニティのMySpaceや学生中心だったFaceBookが、メインストリーム化することで様々な軋轢と、問題を生み始めたことが分かる。季節要因が大きいだろうから、10月以降またユーザ数は伸びるとは見られるが、成熟段階に入ったことで、どれほどの伸びが期待できるかは不透明になってきた。
ただし、Facebookは全てのインターネットユーザに門戸を開放したことで、今後もユーザ数は伸びるだろう。問題はいつMySpaceと同じ現象が起きるかだ。

MySpaceで今見えているのは、メインストリーム化する前に参加したアーリーマジョリティの先頭集団が、サイト属性の変化に不満を募らせつつあるといった状況だ。最初に参加したデジタルイノベーター、アーリーアダプターの興味はすでに失せ、どこかへ行ってしまっているのでは...?

Profitable SNS with GEN Y, GEN X and BB?で書いたようにMixiも招待制だが、50代の中年女性が自分の子供に誘われて参加するステージになってきた。2サイトと同様にユーザ間の軋轢や問題がいつ発生してもおかしくない。

2006/10/27

Web Accessiblity and CSR








以前、Customer Respect Group Reportで、米地裁が、National Federation of the Blind (NFB) は、米大手小売業者、Targetを相手に集団訴訟を起こすことができるとの判決を出したことを紹介した。

参考:Customer Respect Group Report

そこで、ADA (Americans with Disabilities Act) などの法律は、E-commerceサイトにも適用されるから、視覚障害者がWebへアクセスする際、よく利用するページ(内容の)読み上げソフトウェアを利用できるようにしろという訴えが成立することになった。
しかし、
今週、連邦裁判所は、直ちにTargetのWebサイトで読み上げソフトが使えるようにせよという強制命令は発行しなかったようだ。

画像に埋め込まれているコードがあれば、読み上げソフトがそれを探知し、画像内容を読み上げることができる。しかし、TargetのWebサイトにはそのコードがなく、その他にもアクセスできないイメージマップや他の画像機能を載せているので、視覚障害者が利用できない。

コードさえ埋め込めば済むはずの話なのだが、Targetは普通の視覚障害者にはアクセス可能なサイトだというが、APによればBestBuy.comなど他のECサイトはより進んだ対応をしている。

とにかく、なぜTargetが潜在顧客に訴訟を起こさせるまで突っ張っているのか分からない。

Source:Media Post / Just an Online Minute...

これはネガティブマーケティング以外の何物でもない。NPOなどがサイバーアクションを起こし、Targetの重要顧客や、金融機関、地方自治体、コミュニティにEmailを出し、Targetでの不買運動を起こされる可能性さえある。

毎年最大のショッピングシーズンがもうすぐ始まるというのにTargetのWebサイトのリーチは2004年と同様に下降気味、例年ならQ4から上がるべきリーチが今のところ、その気配がない。その上にネガティブなサイバーキャンペーンを発動されたらWebページ改修費以上の影響が出るだろう。

Source:Alexa

今や、消費者は声無き、力なき大衆ではない。コンタクトポイントが分散してはいる。しかし、Diet Coke Mentosの話ではないが、個人的な利益、コミュニティの利益、国や地球の利益に敏感に反応する。

日本でも一昨年、ビールメーカーがペットボトルに入った新ビールを出そうとしていたが、Green Peace Japanがビールメーカー各社に公開質問状を送り、回答を延期したメーカーに対して、「一般消費者の声」を届けるため、サイバーアクションを起こしたこ とがある。その結果、ペットボトルビールの発売は当面見合わせることになった。
ペットボトルビールが抱えた廃棄物問題、エネルギーの非効率利用、そして拡大生産者責任という個人の利益には直結しないと見られる問題でも、多くの人々を動かすことができる。それも当初はマスメディアが報道しないグラスルーツ、ボトムアップの情報発信から始まり、流通、共有、受信、拡散が行われた。

参考:Green Peace Japan

いい製品・サービスを製造、提供していればいいという時代ははるか彼方へ去り、株主、従業員、消費者、金融機関、コミュニティ、政府・自治体などのマルチステークホルダーに企業価値を知らしめていかなければならない時代だ。ブームだったメセナも去り、今、SCM (Supply Chain Management) の全チャネルにおけるCSR (Corporate Social Repsonsibility) がグローバル企業の第一の役割だと考えられている。

以前、米大学のCoca Colaボイコットが英国の大学へも波及してきたことを紹介したが、このボイコットが大学キャンパス内だけに留まると誰が確約できるのだろう?

参考:Coca-Cola hit by College Votes for Ethical Boycott

Crowdsourcing

Crowdsourcingとは聴きなれない言葉だが、今年のはじめにWiredが使った言葉だ。企業が困難に直面し、自身で全ての解を得られないとき、世界中の何百万というアマチュアの集合知を生かしたソリューションを得るプロセスをいう。例えば、P&Gの研究員がInnoCentive.comに研究上の問題をアップし、ベストなソリューションを出したアマチュア科学者などにインセンティブや報酬を払うことで解決することだ。

クリエイティブな広告やPR (Public Relations) の世界でも、そういったコラボレーションを体験し始めている。Crowdsourcingは、GoogleにとってYouTubeがどれほど魅力的であったという理由のひとつだし、人気を集める「American Idle」もCrowdsourcingそのものだ。

これはまだ始まったばかりだが、「うまい方法」ではなく、ビジネスの根幹に浸透する「必須の方法」として業界がコミットする時だ。「君のビデオをここにアップすれば俺達の神聖なホールに入場させてやるよ」といったレベル以上に、Crowdsourcingをより戦略的で統合されたプロセスにまで引き上げる必要がある。大衆に教えを請え。

Source:Ad Age

と、Steve Rubel (EdelmanのSVP) が書いている。

Outsourcingの大衆化とでも言ったらいいのだろうか?Crowdsourcingをマーケティングに置き換えると、トップダウンではなく、ボトムアップ、あるいはグラスルーツのマーケティングということになる。コンテンツ、あるいは製品・サービスを提供し、一般ユーザの自主参加とその英知によって最適な集合知、例えばマーケティング戦略を構築するということになる。

しかし、現実には、一般ユーザの遊び心がプロの領域をつきぬけ、途方もない結果をもたらし、プロはそのトレンドとスピードに追いつくのが精一杯というのが現状だ。Fritz GrobeとStephen Voltzが行ったDiet CokeとMentosの噴出実験は、まずMentosが飛びつき、ようやくそのバイラルビデオ効果を無視できずDiet Cokeも追随するようだ。「Experiment #214」と題して、10月30日に過去最大の実験ビデオが流される予定だ
バイラルビデオネットワークのRevverにある「Experiment #6」は54万回、「Experiment #13A」は48万回、そして「Experiment #137」は356万回視聴されている。YouTubeには、Diet Coke Mentos類似のビデオが3,299本もアップされ、最も視聴されたビデオは269万回に達している。(それぞれの数字は10月26日時点)

「Experiment #137」


これほどの拡散、波及効果を、どこの誰が予想し得ただろう?また、どんなプロであれここまでのシナリオを描ききることは不可能だ。やはり、メディアとしての地位を得、コンテンツプロデューサーとしても確立しつつある一般ユーザの英知に教えを請わなければならないし、そのバイラルパワーにも力を借りる必要がある。

2006/10/26

Future of the Print Media In Europe

10月23日付けでEUから出たプレスリリースに「8 editors-in-chief of newspapers and magazines at European Commission to discuss the future of the print media」がある。

ポーランド、ポルトガル、ドイツ、ルクセンブルグ、フィンランド、ポルトガル、英国、イタリアの新聞、雑誌社のトップを集め、急増するインターネットの利用、激化するクロスメディアとの競合、拡大するフリーペーパーの影響、そして若年層の新聞・雑誌離れを背景に、プリント媒体はどのように進化すべきか、プリント媒体の将来を議論するというものだ。

2005年にも「情報社会とメディアのコミッション」が公開コンサルテーションを開催したというプレスリリースが出ている。
その時点での状況判断として、出版業界はEU25のGDPの0.5%を構成し、総売上€1,210億に達する。出版業界は64,000社、75万人の職 を支えているが、中小・零細企業が多く、250人以上の企業が業界の半分以上の売上を上げている。出版業界の中で、新聞が最も大きなサブセクターであり、 2001年には業界全体売上の36.8%を占めていた。それに続くのは雑誌などの定期刊行物が32%、書籍が24.6%だ。総売上の半分以上を占める広告売上は、総じて減少傾向にあり、特定セグメント、例えばリクルート系はインターネットへシフトしている。
だから、今後のデジタル社会の中で出版業界はどうすべきかというコンサルを開催したわけだ。

今回、EUの情報社会とメディアのコミッショナーであるViviane Redingは、「報道はヨーロッパにおけるメディアの中心、言論と民主主義の自由の基礎を成している」、「それゆえに我々はEUのプリント媒体に対する政策の影響に大きな関心を払わなければならない。報道の自由と(それを支える)強固な経済的地盤は、新聞や雑誌がマルチメディア時代に繁栄するため不可欠だ」と述べて、新聞・雑誌のビジネスモデル、広告収入、編集と広告の分離、AVメディアでのProduct Placement、また、教育や著作権も話し合うようだ。

EUでのインターネット普及はすでに大きくクリティカルマスを超えており、例えば、右の表にあるように英国の新聞発行部数は長期低落傾向に歯止めがかからない。(クリックで拡大)
そして、「Broadband for all」で紹介したように、EUは、重要なICT政策のひとつとしてBB化を強く推し進めている。また、「Free Papers Home Delivered in Europe」で紹介したように、無料の宅配新聞が拡大していく気配もある。

参考:Broadband for all
参考:Free Papers Home Delivered in Europe

これらによりプリント媒体に大きな影響が出るのは明らかで、昨年の公開コンサルをもとに、今年は、特に影響が大きいと思われる新聞・雑誌社を集め、デジタル化戦略による生き残りを後押しする、というのが真意ではないだろうか。

Source:EU Press Release 2006
Source:EU Press Release 2005
Source:ABC

さて、英国同様、下の右肩下がりのグラフが示しているように、仏の新聞有料購読部数は減る一方だ。例えば、Le Mondeの仏国内有料購読部数は、2002年に361,254部あったが、2005-2006年の中間集計では313,977部へ、13%減少している。
Le Figaroは、2002年の345,080部から2005-2006年の中間集計で321,490部へ、7%ダウン。
Liberationは、2002年の156,077部から2005-2006年の中間集計で134,789部へ、14%ダウン。
Le Parisienは、2002年の360,505部から2005-2006年の中間集計で338,240部へ、6%ダウン。
どの新聞社も率先して会議に参加し、メディアとしての地位を確保する必要がありそうだ。




































Source:OJD

にもかかわらず、どうして仏の新聞・雑誌社のトップはこのEUの会議に出てこないのだろう。
仏 新聞社のオンラインの取り組みも米・英新聞社と比べると見劣りがするというよりは、デジタル化戦略がなく、最低限の取り組みしかしていないように見える。 以前、日本の新聞のWeb2.0取り組みを比較したBivingsの調査を紹介したが、日本の新聞よりも一段、あるいは2段後れて階段を上っているよう だ。

参考:The Use of the Internet by Japanese Newspaper

2006/10/25

Blogs in UK、Germany、France and Italy

Wal-Marting Across Americaで物議を醸しているEdelmanとTechnoratiが、10月はじめに英国、独、仏、伊各国の最も影響力のあるトップ10Blogリストを公表している。

  なお、Edelmanが仕掛けたFlogは他にも
  2つあるという話はこちらへ 
  Source:MediaPost

このリストはまず、他のBlogからのリンク数による世界トップ100ランクを出し、その後、独、仏、伊、そして英国のBlogをテーマ、他の国内グループとのネットワークから最も影響力のあるトップ100Blogサイトとしてランク付けされている。米、豪との切り分けが難しいため、英国のリストは手作業だが、その他の国はTechnoratiのデータから機械的に抽出されたようだ。その中のトップ10リストが公表されている。

基本的に世界のBlogではビジネス、政治が中心だが、
  • 個人の日記スタイルのBlogがヨーロッパでは多く、イタリアでは43%、ヨーロッパ全体では30%を占めている。
  • 仏では22%が最新トピック、テクノロジー関連で独は25%、伊は11%を占めている。
  • 米国同様、他のBlogやメインストリームメディアとのリンクが多い。伊と独はメインストリームメディアとのリンクが非常に多いが、仏はリジョナルメディアより、Blog間リンクが29%も多い。
  • 欧州の特定企業、ブランドに関する記事が多いが、米国ほどではない。しかし、車といった製品カテゴリに関する記事は米国と同程度ある。
なお、FTの記事ではLoic Le Meur Blogを英国リストの11位に載せ、仏リストにPlusjamaisseul.netを4位に載せているがこれは誤り。(と、本人自身のBlogで書いている)
Loic Le Meur Blogが仏の1位、Plusjamaisseul.netはランク外ということで、右のリストが正しい。

そこで、これが意味するのは;
  • インフルエンサーへ影響を及ぼすには、ローカルとグローバルの両面からBlogの記事内容を把握する必要がある
  • 各国のBlogはその内容にかなり開きがあり、ローカルのカルチャーや影響を受けている。しかし、海外のメディアやBlogから影響を受けている
  • 欧州でも企業やブランドに関する記事はあるが、米国ほどでもない。しかし、製品カテゴリに関する記事は米国も欧州も同じレベル
  • ブランドはBlog記事、会話に耳を傾け、プログラムを開発することで、参加できる大きなチャンスがある
と、MicropersuasionのSteve Rubel (EdlemanのSVP) が書いている。

Source:Micropersuasion
Source:PR Blogger (UK)
Source:FT

さて、Worldwideのトップ10データを追加、整理してみると、以下のグラフのようになる。まず、仏語Blogへのリンク数が圧倒的に少ない。次にドイツ語とイタリア語だが、トップを除くと若干、ドイツ語Blogのリンク数が多い。これら3国と比べると英国のBlogへのリンク数は、格段に多い。しかし、全世界で比べると、三分の一、あるいは四分の一以下のリンク数となる。全世界でトップ10にランクされるのは、3位のSina.comのBlog、4位のFC2のBlogサービスを除き、すべて米国Blogだ。また、トップ100を見ても80サイト前後が英語、あるいは米国のサイトだ。(WorldwideでのBlogリンク数は、10月24日付けのTechnorati.com/pop/blogs/より)
例えばリンク数最大のEngadgetは、26,766Blogサイトから248,511のリンクが張られている。直接的な比較はできないが、例えば Yahoo!は、91,035サイトからリンクがあり、MSNは23,358サイト、Googleは361,472サイト、MySpaceは65,789 サイト、YouTubeは49,354サイトからリンクを張られている。MSNよりもサイトリンクが多く、かつ、25万弱のリンクを集める Engadgetは、Blogとしてとてつもない巨大なリンクメッシュを構成している(Yahoo!などWebサイトのリンクサイト数は10月24日時点のAlexaによる)。

当然、コンテンツの質と量、テーマ、速報性などから米国Blogサイトへリンクする数が多いのだが、トップ10やトップ100に入る米国Blogサイトには英、豪などの英語圏だけからリンクされているわけではない。Engadgetは米国内からはもちろんだが独Spiegel、中国Baidu、楽天、韓国、スペインなど様々な国、サイトから多くのリンクを獲得している。これは、ITやインターネット、ビジネス、金融関連のニュースや最新情報はそのほとんどが米国発だから当然だ。

日本だけではなく欧州諸国のBlogや既成メディアも、米国メディアやBlogをウォッチしているから、米国トップBlogの影響力は大きい。また、これらBlogをウォッチしているだけのユーザも全世界にいる。そして、これらIT/インターネット関連情報をアップしている英語Blogにアクセスするのは、各国のデジタル・イノベーター、アーリーアダプター達だ。彼らが国内に持ち帰った情報を自身のBlogで発信することで、英語Blogへアクセスしていない国内ユーザにまで露出が広がっていく。

既成メディアのリーチを大幅に超え、浸透するBlogネットワークのソースである米国トップBlog。これを活用するマーケティング戦略構築が必要だ。「Web Marketing + Email」で示したようにIBMの戦略的革新とドライバの時系列パターンの2007年にはViral Communitiesが挙げられている。確実に新しいマーケティング戦略の検討が始まり、実装されつつある。

参考:Web Marketing + Email
参考:Blog and RSS for B2B

2006/10/24

Web 2.0 vs. Web 1.0

PEWの新しい調査というよりは、Backgrounderというメモに「Web2.o」がある。

HitwiseのデータからPhotobucketsKodakgalleryWikipediaとEncarta、MySpaceGeocityのカテゴリごとのマーケットシェアを出している。

KodakgalleryとPotobucketの場合、2004年末までは均衡していたシェアが、2005年から離れ始め、2006年に入ると一桁違うシェアの差になっている。「All」カテゴリでWeb2.0系のPotobucket(シェア0.2%)が、Web1.0系の伝統的ブランドであるKodakgallery(シェア0.03%)を大きく引き離している。

それよりも劇的なのはWikipediaだ。コンテンツが世界中のユーザによって編集されている百科事典は、MSNのフリーバージョン、Encarta Encyclopediaが低迷するにもかかわらず、「Education - Reference」カテゴリで20.81%のシェアを獲得している。
Wikipediaの年齢構成を見ると、18-24歳でEncartaよりも10ポイント%もユーザを多く集め、逆に35歳以上はEncartaのほうが4ポイントも多くなっている。

          Wikipedia  Encarta
   18-24歳  24.25%    14.92%
   25-34歳  23.25%    26.48%
   35-44歳  24.01%    25.28%
   45-54歳  17.11%    18.93%
   55歳+    11.38%    14.40%

最後に、「All」カテゴリでMySpaceとGeocityを比べると、4.88%のMySpae、0.1%のGeocityとなり、その差は歴然だ。
Geocityは町、隣人、ホームページといった場所を仲立ちとする世界の話、そしてMySpaceはプロファイル、Blog、ビデオへのリンクなど個人を仲立ちとする世界の話だ。Geocityは個人の世界への入り口として自分の町や隣人を作るのだが、MySpaceは個人への直接、および友人や家族といった社会生活へのアクセスを可能とした。

PEWは、現状をWeb2.0、あるいは10.0であろが、なかろうが、今日のインターネットは将来世代へのポジティブなベータであることに疑義はないと結んでいる。

Source:PEW / Web2.0

PEWのWeb2.0の基本的な論調は、参照しているSlate、Slateが言及しているNews Weekと同様に、あやふやな定義のWeb2.0に踊らされるな。基本的にWeb1.0でも、10.0でも構わない。次世代のベータ版インターネットが今、ここにあるという説だ。そのための結びと、副題として、「More than a buzzword, but still not easily defined」がある。

参考:Slate
参考:News Week

しかし、英語既成メディアの両雄であるCNNおよびNYTと、Web2.0の旗手であるYouTubeWikipediaMySpaceのリーチをAlexaholicを使って比較したのが下のグラフだ。
2003年まで影も見えなかったWikipediaMySpaceが、2004年末から大きく立ち上がり、2005年に立ち上がったYouTubeと共に2006年から高く飛翔しているのが明白だ。NYTは2005年当初、CNNは2006年始めには2サイトに追い抜かれ、その2サイトも年半ばにはYouTubeに抜かれている。

これはPEWが示すように、若者が主体で主導するブームではない。MySpaceの最大デモグラフィックは35-54歳で、40.6%を占めている。若者ではなく、アーリーマジョリティとレイトマジョリティが殺到しているのがMySpaceだ。

参考:SNS Demographics Continue To Shift, Getting Older

また、毎月何日サイトへアクセスするかを米国のトップWeb(グループ)サイトを見ると、Time Warner、MSといった大ブランドサイトは昨年比アクセスが減っているのに対し、MySpaceFacebookといったSNS系サイトのアクセスが増えている。(Source:eMarketer)

技術、マーケティング戦略によってWeb1.o/2.0を区別したり、誰もが飛びつく魔法の言葉として線を引いているのではない。ここにあるのは;
  1. CNN、NYTといった既成ニュースメディアの確立したブランド、オン・オフラインの総合露出から誘導されるリーチを、ユーザが創造するコンテンツメディアへのリー チが上回っているということ、
  2. 膨大なコンテンツを誇るブランドサイトへのアクセスより、市民メディアが創造するコンテンツサイトへのアクセスが多くなっていること、
  3. 既成メディアからの一方的な情報提供、すなわちWeb1.0時代から、コンテンツの発信、共有、流通、受信のコンテンツフローすべてを一般ユーザが仕切るというWeb2.0時代へ大きくメディアがシフトしつつあるということ、
  4. ANAで多く聴かれたように、使い古されたトップダウンではなく、グラスルーツ、ボトムアップのマーケティングが必要なこと、
  5. そしてこれを前提として、マーケティング戦略の大変革が必要なことだ。
これがWeb2.0と1.0の違いではないだろうか?

2006/10/23

Behavior Targeting with Frequency

前回、紹介したBlueLitiumの新しいBT 調査データは、Next Century MediaとTacodaが先に発表した調査とも整合性があると言及していた。今年1月付けのTacodaのデータを見てみる。

このデータは、初めて視線トラッキングを用いて、行動ターゲティングと文脈ターゲティングを比較したもので、広告する製品・サービスと関連するコンテンツに掲出された広告よりも、関連しないコンテンツに掲出された広告のほうが17%も視線(LOOKS)を集めていることを証明している。また、最初の露出以降、フリーケンシーをかけることで17%の優位性が54%にまで跳ね上がることも示している。

視線トラッキングのPreTestingを使い、2005年12月のNew JerseyとLos AngelsエリアのEmailから、PlasmaTV、新車、コンピュータの調査に協力してくれる18~64歳を抽出。同じ広告を入れた2つのCDを作成。ひとつには行動ターゲティングベースの広告が最初に掲出され、もうひとつのCDには文脈ターゲティングベースの広告が最初に見られるようになっている。最終的に、行動ターゲティング、そして文脈ターゲティングを行った同じ広告が表示される。この調査に参加したのは、PanasonicのPlasma TV、車メーカーX、コンピュータ企業Yの3社。

計測指標は、Webページ内の広告が見られた回数として「LOOKS」、見られた累計時間として「SECONDS」が用いられた。(下は文脈ターゲティング(左)、行動ターゲティング(右)されたPanasonic のPlasma TVの広告例)

3社の広告を平均すると、行動ターゲティングは、文脈ターゲティングと比べ、LOOKS差異で17%増し、SECONDSではほぼ同じ結果となった。
フリーケンシーの結果を見ると、行動ターゲティングはLOOKSで4回のうち3回、SECONDSで3回のうち2回(原文のまま:最初の露出をカウントし ていないようだ)、文脈ターゲティングを上回っている。3社の文脈ターゲティング広告は、フリーケンシーをかけるごとにLOOKSが下がっていくが、行動ターゲ ティングの広告は、フリーケンシーをかけるごとにLOOKSが上がっていく。
ここで、最初の露出を除外すると、行動ターゲティングの平均LOOKS差異は17.4%から、54.3%増しにまで跳ね上がる。(行動:0.66、文脈:0.43、差異:54.3%)
加えて、最初の露出以降、行動ターゲティングは文脈ターゲティングより、12.5%増しのSECONDSを獲得している。(行動:1.44、文脈:1.28、差異:12.5%)
行動ターゲティングにフリーケンシーをかけることで大きな効果を得られることになる。
脳学者によると、ある脳波(P300)は驚いたときに現れる。この脳波は期待に反するものが出現すると生成される。脳に入ってくるデータは比較され、フィルターされて脳の中で知覚モデルが生成される、これが期待だ。この知覚モデルに反するものに対して注意、興味が生成される。
明らかに行動ターゲティング広告は、驚きファクターにより、期待した場所(文脈)で見た広告よりも注意を引き、文脈ターゲティング広告がフリーケンシーとともに注意(効果)が減衰するのに対して、フリーケンシーをかけることで効果が減衰しないことになる。

Source:Tacoda

Tacodaはこの調査の背景として、次のように書いている。
  • 何年にもわたり、広告主・広告代理店は車の広告は車専門誌に掲出するというように、すべてのメディアにおいて文脈ターゲティングを評価してきた。
    なぜなら
  • 文脈ターゲティングを行うことで、オーディエンス内に製品のターゲットが集中している度合いが高い
  • 製品広告と関連する(編集)内容のメディアで掲出されるほうが消費者の高い注意を引く
と信じてきたからだ。

しかし、インターネットによって、別の環境にいる消費者にリーチすることができるようになった。それはターゲットとするユーザがどんな環境にいても、行動ターゲティングを行うことで、ユーザの行動を追跡、解析し、どんなサイトへも送ることができるようになったからだ。この行動ターゲティングの優位性がありながら、まだ文脈ターゲティングの呪縛から抜け出せず、行動ターゲティングのCPMは文脈のそれよりも低い扱いを受けている。

だから、
  1. 同じ製品カテゴリの沢山の広告は消費者の眼を引くどころか、避けられるのではないか。消費者が製品購入目的でサイト調査をしていても、サイトに溢れる沢山の同様の広告メッセージではなく編集内容に集中するのではないか。
  2. 一方、まったく関連しないサイトで出会う広告に対して、消費者は期待していなかった驚きからその広告に注意を払うのではないか。
という仮説を検証すると書いている。

結果として、仮説は検証され、行動ターゲティングの効果が実証されたことになる。
行動ターゲティングは、2005年に米国で測定されたオンライン広告の8.3%しかない。Park Associatesの推測によると2005年に大・中堅企業の15%が行動ターゲティングをテストし、それは2004年の5%アップだそうだ。行動ターゲティングの効果と低いCPMを考慮すれば、もっと予算配分が必要で、キャンペーンには必ず実施されるべきだと結んでいる。

行動ターゲティングのオンライン広告比率が伸び、文脈ターゲティングの呪縛が解けたとき、オンラインではなく、オフライン、特にプリント媒体のターゲティングに変化は起こるのだろうか?オンラインとは別物の一言で片付けられてしまうのだろうか?

2006/10/20

BT Targeted Ads Work Better Out of Context

BT (Behavioral Targeting) に関して新しい調査データが出た。

様々なサイトやキャンペーンで露出された4億impression以上を調査し、CTR、コンバージョン率、ATR (Action Thru Rate) を行動および文脈カテゴリについて評価、解析したものだ。
1,000万impression以上が露出された9つの行動カテゴリを、様々な文脈カテゴリと照らし合わせて調査したものだ。

行動ターゲティングされた広告を比較すると、掲出ページの「文脈に合ったもの」と、「文脈に合わないもの」で違いが明らかとなった。
  • 108%高い
    行動ターゲティングされた広告を見ると、文脈に合ったものよりも、文脈に合わないもののほうがCTRが108%高い

    行動ターゲティングされた広告は、広告自体の内容とは違う文脈内容のページのほうがクリックされる。

  • 19%高い
    行動ターゲティングされた広告のコンバージョン率やATRは、広告自体の内容と同じ文脈内容ページよりも、違う文脈内容のページのほうが19%高い

  • ユーザカテゴリごとの違いも大きい
    • 「ビジネス+金融」というカテゴリのユーザは、同じ文脈のほうが、CTRは109%、ATRは128%高い
    • しかし、「エンタテイメント」というカテゴリのユーザは、同じ文脈では、CTRは92%、ATRは66%低い

  • 重 要
    パックになったオーディエンスセグメントや自動化されたルールベースのターゲティングでは、行動ターゲティングのメリットを最大限に生かせない。むしろ、行動ターゲティングのメリットを生かすには、独自セグメント化、リアルタイムでの人的データ解析が必要だ。
Source:MarketingVox
Source:BlueLithium (pdf)

なお、iMedia Connectionの「Why You Should Put Consumers In Control」は、日を改めて掲載します。

2006/10/19

Wal-Mart Enlists Bloggers in P.R. Campaign

「Wal-Marting Across America」というBlogがある、いや実際にはあったというべきか。
JimとLauraというペアがWal-Martの駐車場にタダでキャンプさせてもらいながらRV車で全米を旅し、行く先々のWal-Martで出会った素敵な人々や、見聞きしたことをBlogに書き込んでいた。

このWal-Marに肩入れしたBlogにWal-MartのPR会社、Edelmanが資金援助をしていたことが明らかになり、集中砲火を浴びたJimとLauraは、10月12日に最後の書き込みを行ってBlogを停止した。

(以前のトップページ)       
話は、今年始めに遡る。3月7日付けのNYTの記事が、「Wal-Mart寄りの複数のBloggerの記事と、Edelmanから多くのBloggerへ送られたEmailの内容が同一」だと指摘したのが発端だ。

Wal-Martは、低賃金や厚生年金充実不足、地方進出による零細小売業者圧迫など、様々な点で一般メディアから批判されている企業だ。そのため、企業イメージアップのため、一般メディア以外のBloggerに触手を伸ばし、プレスリリースを送ったり、本社へ招待したりしている。

Wal-MartはBloggerへ提供している情報のソースを明確にしているし、金も払っていないとEdelmanは言っているが、問題は、独立して独自の意見を表明していることに誇りを持っているBlogger達が何を読者に明らかにするかだ。

というわけでNYTは、Edelmanからのリリースと同一、あるいはちょっと手を加えただけの記事を書いたBloggerに取材し、苦しい言い訳を引き出している。また、GEやMSがBloggerに対して取ったアプローチを紹介し、製品投入前のプロモーションと、薄汚れたイメージを改善するための手段の違いを明らかにしている。

Source:NYTimes.com

そして10月8日付けのBusiness Weekが第二幕を上げた。

それによるとJimは58歳、Lauraは42歳。Wal-Martに立ち寄った際、駐車場をタダでRV車に開放していることを知り、アイディアを思いつく。RV車で遠くにいる子供に会いに行こう。行く先々のことをRV関連雑誌に記事を書けばお金も入る。
ところが彼らは、まず、Working Families for Wal-Martに相談した。この組織は労働団体などの攻撃からWal-Martを防衛するため、Wal-MartのPRエージェンシー、Edlemanが立ち上げた組織だ。
Working Families for Wal-Martにすれば渡りに船、スポンサーとなることを決定し、さっそくこの2人をミントグリーンのRV(Working Families for Wal-Martのロゴ入り)が待っているLas Vegasへアゴ足つきで呼び、そこから彼らのWal-Marting Across Americaという旅が始まったというのだ。

Source:Business Week

(現在のトップページ)
この話が明らかにされるや否や、様々なメディア、Bloggerから批判、非難の集中砲火を浴びた結果、Wal-Marting Across AmericaというBlogは、Business Weekの説明とは若干違う、言い訳を残して停止した。

そして、10月17日付けでようやくPRエージェンシー、EdelmanのCEOが謝罪することになった。謝罪といっても、「当初から2人のBlogger のIDを明らかにしていなかったのはこちらの誤りで、クライアント(Wa-Martという名称は出さず)ではなく、100%我々の責任だ。今後は、WOMMA (Word of Mouth Marketing Association) の透明性ガイドラインを遵守する」というコメントだけだが。

参考:Richard EdelmanのBlog

Paid Publicityの範疇も超えて、Wal-Martのイメージ回復、向上のためにBlog、Bloggerを利用したというこのケースは、非常に特異なケースだ。Wal-MartのSVP、S. F. Quinnが、ANA総会で、「今日、消費者が手綱を握っている」、「消費者にうまく手綱を握らせることができる者が全ての金を稼ぐ」と述べているが、『手綱を取り戻すため、Bloggerを仕込み、金を稼ぐ』という算段を裏でやっていたとしたら強く糾弾されるべきだ。

なお、今回の教訓により、偏向した情報操作をやろうという企業はそう出てはこないだろうし、それらしい、おかしなBlogにはチェックがもっと入るようにもなるだろう。オンラインでの市民メディアが確立する産みの苦しみかもしれない。

また、GEがEcomaginationキャンペーンを開始する前に、幹部が環境関連Bloggerに会ってサポートを要請したり、MSやCingular WirelessがXboxや新型携帯電話の投入に際して、Bloggerへプロモーションを行ったように、Blog、Bloggerの力を無視できないのも事実だ。BlogやBloggerを操作するのではなく、コンテンツを提供し、ブランドとの関係性を深化させるべきだ。それがブランディングだという理解もまだ時間がかかるのだろうか?

(注:本記事のタイトルを、Wall-MartからWal-Martsへ変更:2008/7/7)

2006/10/18

Mazda seeks movie makers

Yahoo!のCMO、Cammie Dunawayは、第96回ANA年次総会で「私はこれを参加型マーケティングと呼んでいる。消費者に参加してもらい、ブランドとの接点を形作る手助けをしてもらう」と語っている。

そこにマツダが、少なくとも6ヶ月はTV広告なしで行うUGC (User Generated Content) ベースの新キャンペーンを実施するという話をMedia Guardianが伝えている。このコンセプトは、ムービークリップからハリウッドスタイルのミニムービーをつくり、それをオンラインで共有してもらおうというものだ。

ウエスタン、無声映画など4つのジャンルから、マーシャルアート、キアヌリーブのマトリックスばりのキャラクターまで4つの登場人物を選択することができる。これらを選択してユーザ独自の12秒スリラームービーを作っちゃいましょう。できたらお友達にも紹介してね。そしてフィーチャーされているMX-5コンバーチブルも見ちゃいましょう、というサイトになっている。
(詳細は左をクリック)

これは、マツダが主力車種で初めて投入するオンラインキャンペーンだそうで、総予算の5.5%から12.5%へと倍以上に積み増されている。「我々は、25~45歳の男性というターゲットオーディエンスにうまく訴求し、効果計測もでき、最も効果的なオンラインに予算をシフトする」

「12秒スリラー」というキャンペーンWebサイトの名前は、MX-5コンバーチブルがルーフを開閉するのにかかる秒数にかけてあり、マツダによれば世界で最も早い開閉時間だそうだ。

ユーザはこのムービーを友人にEmailしたり、Webサイトへゲストを招待することもできる。また、キャンペーンの認知を高めるため、3つのバイラルフィルムをYouTube、MySpaceといった人気サイトへ埋め込むそうだ。

マツダは近年、デジタル戦略を非常に重視しており、MX-5回りのオンラインコミュニティを開発し、Web2.0スタイルのフィーチャーを追加するためのエディターを雇い入れたところ。

Resource:Media Guardian

Yahoo!のCMOが参加型マーケティングと呼ぶ戦略がここにある。マツダUKのマーケティングディレクター、Mark Cameronが言うように、ターゲットに最適に訴求でき、他メディアとは違い効果測定が可能で、広告効果が高いアプローチを使い、ユーザの自発参加と、オリジナルコンテンツ作成に手を貸して、コミュニティを盛り上げていこうという戦略に、既存メディアを使ったブランドからの一方通行はない。
また、半年間はTV広告を出さないということは、いかにUGCに期待をかけているかを示している。UGCの潜伏期間を考慮したうえで、一気に地方流行と感染爆発を目指しているかのようだ。

参考:Blog and RSS for B2B
参考:Infection, Epidemic and Pandemic

ところで、最近発表されたYahoo!の売上見通しに影を投げかけていたのは、車と金融部門の広告だったわけだが、バナー広告というオフライン的な一方通行の広告手法に限界があるのかもしれない。だからこそのMySpace、YouTube、Facebookだったのだが、どうもYahoo!は煮え切らず、踏み出せていない。最近、52週ぶりの最安値$24を記録したYahoo!株価が持ち直す気配はまだ先か?

最後に、マツダだが、4つごとのジャンルと登場人物の組み合わせで作るミニムービーのコンテンツとしての魅力が、どれだけ自発的な感染を誘発するのかは別の問題。お仕着せではなく、ユーザがより参加、イメージを膨らませることができるかどうかがポイントだ。
また、もうひとつ、作ったミニムービーを友人にEmailで知らせる前に、Disclaimerを読み、承認したということでチェックボックスをクリックしてから送るのだが、このDisclaimerを表示させるリンクが10月17日時点では切れていた。多分、いろいろクレームが届いたのだろう。18日にはちゃんと表示される。

2006/10/17

Letting Consumers Control Marketing: Priceless

Infection」、「Epidemic」、そして「Pandemic」というフローがメディア消費を一層変革しつつあり、メディアを支配し、情報を垂れ流してきたブランドによる消費者支配にも影響を及ぼしている。そんな中、記録破りとなる1,000人近くの参加者を集め、先々週開催されたAssociation of National Advertisersの第96回年次総会をNYTが伝えている。

そこに満ち溢れていたのは、「使い古されたトップダウン方式のマーケティングではなく、ボトムアップ、グラスルーツ方式のマーケティングへ変えていかなければならない」という声だ。
  • P&GのCEO、A. G. Lafley:
    パワーは消費者が握っている
    「マーケターおよび小売業者は、消費者にしがみついて後れないようについて行っている」
    P&Gは長い間、消費者がどのように商品を理解、使用すべきかを教えてきたが、
    「DVRや衛星ラジオなどの技術を使った広告を、いつ見たり、いつ消すかを消費者が選択している今日、小売側は消費者とともに学んでいる段階だ」
    消費者があらゆる意味で我々のブランドを所有し、ブランド創造にも参加している
    「我々は、消費者や好きな製品の回りに築かれるオンラインコミュニティによってコマーシャルが創造されるこのトレンドを認めるべく学習すべきだし、それを歓迎すべきだ」
  • Wal-MartのSVP、S. F. Quinn:
    今日、消費者が手綱を握っている
    「消費者にうまく手綱を握らせることができる者が全ての金を稼ぐ」
  • BMW傘下、MiniのManaging Director、J. L. McDowell:
    「我々は、ブランドの完全なコントロールを手にしたことは無い」
  • YouTube、MySpace、ビデオゲームやiPodといったニューメディアを使ったブランドキャンペーンで、長い間、いたずらで遊び好きな人物像を作り上げてきたBurger KingのPresident of Global MarketingのRuss Klein:
    消費者が企業のブランド管理主義者からコントロールをもぎ取るのなら、そうさせろ。なぜなら、消費者にブランドを渡すことこそがブランドをコントロールすることだ。もしそうすれば、消費者はもっとよい形にして戻してくれる

  • MasterCardのEVPでCMOである、L. Flanagan:
    「我々は、そこで起きることを管理できない。ブランドは、それ自身でその命を育む」
    「消費者にブランドや製品の一部のコントロールを任せるのなら、良い所も悪い所も受け入れる必要がある」
Source:NYTimes.com / Oct 9
(注:NYTの記事は1週間前後でアーカイブ行きとなり、有料購読契約が必要となるケースもある)

どこのCEO、SVP、EVP、CMOの話も、ブランドのコントロールがブランド自身の手を離れ始めていることを強調している。ここで語られているのは、もはやコントロールを取り戻そうという話ではなく、どうしたらこのトレンド、フローを理解し、消費者と一緒にブランドビルディングに参画していけるかだ。そして、そのテリトリは既存メディアではなく、オンラインメディアであることも明らかだ。
  • YahooのCMO、Cammie Dunaway:
    「私はこれを参加型マーケティングと呼んでいる。消費者に参加してもらい、ブランドとの接点を形作る手助けをしてもらう」
    コンテンツはブランド側がプッシュしていくものではなくなった。コンテンツはブランドと関係を持ってもらうための招待だ
とNYTの記事は結んでいる。

さて、消費者に手綱を渡すときがきたということで、次回からiMedia Connectionの「Why You Should Put Consumers in Control」を紹介する。

2006/10/16

Infection, Epidemic and Pandemic

GoogleによるYouTubeの買収話が少し落ちついたと思ったところ、今度は著作権侵害の補償交渉が開始されるようだが、Videoユーザデータを比較してみた。

まず、comScoreの9月27日のデータだが、これは米国内のみのストリーミングビデオサイトのデータだ。それによれば、今年7月、合計で
  • 1億人以上の米インターネットユーザがビデオを視聴し、
  • 合計71.8億ストリーム、67.4ストリーム@人
  • 3,790万人のストリーマーを集めたYahoo!がトップ
  • 3,740万人のMySpaceが続き、
  • 3,050万人のYouTubeが3位だとしている。
しかし、ストリーム回数になると
  • 15億弱のストリームを提供したMySpaceがトップ、
  • 8億強のYahoo!が2位、
  • 6.5億のYouTubeが3位だとしている。
Source:comScore / Press Release (Sep 27) 

しかし、Hitwiseの各サイトごとのユニークビジターのシェアデータ、週ごとの各サイトへのユニークビジター数の全カテゴリに対するマーケットシェアを見ると、8月5日の週、(Hitwiseのデータは注釈なしのため全世界と仮定
  • YouTubeは0.25%、
  • MySpaceが0.13%、
  • Googleが0.054%、
  • Yahoo!が0.034%のシェアとなっている。
Source:Hitwise Intelligence / Analyst Weblogs

comScoreが全米のみ、Hitwiseが全世界(仮定)というデータを単純比較すると、
  • 米国内のユニークユーザ数はYahoo!、MySpace、YouTubeの順
  • 全世界のユニークユーザ数はYouTube、MySpace、Google、Yahoo!の順
  • 米国内で力を持つYahoo!、世界で力を持つYouTubeとMySpace
  • YouTubeは世界でダントツの集客力を持ったビデオ共有サイト
という構図が見えてくる。

そこに、YouTubeに関してだけだが、comScoreから新しく世界と米国の比較データが出た。10月11日のcomSocreのデータによれば、今年7月のYouTubeはユニークビジターを
  • 米  国 1,608万人(平均158.6万人@日)
  • 全世界 6,341万人(同620.5万人@日)
集め、ストリーミング回数は
  • 米  国 6.49億回(平均2,100万回@日)
  • 全世界 29.75億回(同9,600万回@日)
だとしている。

Source:comScore / Press Release (Oct 11)

やはり、YouTubeが、ユーザ数、ストリーム数のいずれでも世界で最大のビデオ共有サイトということになる。

さて、Hitwiseのグラフが示すようにYouTubeが他サイトを尻目に、急激な右肩上がりを続ける原因は、ユーザ数で75%、ストリーム数で78%を占める全世界のユーザにあるのは明らかだ。当然ながら、面白ビデオ、人気TV番組や音楽、ビデオクリップなど、非英語圏ユーザでも障害なしに楽しめ、かつ、自身のクリップをアップでき、他のユーザと共有できるというメカニズムが全世界からユーザを集めているのは確かだ。

しかし、月間で米国以外から4,700万人ものユーザは、どうやってYouTubeを知り、やってきたのか?YouTubeが告知キャンペーンなど実施したためしはなく、既存メディア、Webメディアでの紹介があったとしてもこれほどの短期間でトップサイトとなりえたのは何が原因なのだろう?
それは、「Infection(感染)」「Epidemic(地方流行)」そして「Pandemic(感染爆発)」フローだ

Infectionをデジタルイノベーター、Epidemicをアーリーアダプター、そしてPandemicをアーリーマジョリティ+レイトマジョリティとすれば分かり易い。
ユーザがコンテンツを創造し、それを共有、転送といった初期感染が米国内で始まり、Email、Chat、Blogなどで海外へ流出。各国でも初期感染が発生し、その後、各国で地方流行が発生。そして、既存メディア、Webメディアでの紹介も合わさって、最終的な感染爆発へとつながってゆく。
米国のデジタルイノベーターが感染し、国内アーリーアダプター層への散発的な地方流行へつながる。平行して、各国のデジタルイノベーターにも感染したウィルスは、各国のアーリーアダプター層へ広がっていく。そして、アーリーマジョリティとレイトマジョリティが殺到する全世界的な感染爆発が起こる。

SNS、Blogが有効に機能するこのフローは確立しつつあるため、初期段階で必要だった既存メディアの介在は不要となってきている。逆に既存メディアがSNS、Blogを参照する機会も増え、自社のWebサイトにSNS、Blog風機能を追加し、このフローに後れをとらないよう努力している。

このフローが機能することで、ユーザ、消費者はBlogやコミュニティサイトが最新情報のソースであり、TV・新聞などが報道しない情報の窓口であることを知ってしまった。米国だけではなく、世界中のインターネットユーザはまったく新しいメディアを自らが獲得したことを知ってしまった。加えて、このフローは、コンテンツの作り手、流し手、受け手のすべてが一般ユーザ、消費者だということを意味する。このフローに乗らない限り、あるいは参加させてもらえない限り、HipでCoolな仲間入りをさせてもらえない。今まで、メディアを支配し、情報を垂れ流してきたブランドによる消費者支配に陰りがさしてきた。

そのため、企業側の意識が変わってきている。それが明らかにされた第96回ANA (Association of National Advertisers) 年次総会での内容を伝えるNYTの記事を次回紹介する。

2006/10/13

Save Darfur

ダルフールをご存知だろうか?

スーダン西部、フランス全土と同じ大きさのサバンナ地帯の地名だ。そこで2003年から今までに少なくとも40万人が殺害され、200万人が家を追われ、難民キャンプでの生活を余儀なくされている。現在、350万人以上の人々の生存が危機にさらされており、1994年のルワンダでの大量虐殺以来、このような規模での飢餓、強姦および集団虐殺は例を見ない。

スーダン軍と、支援する現地アラブ系民兵組織が、反政府武装闘争を続けてきたアフリカ系住民と地域住人を無差別に殺戮してきた。2003年以来、国連による休戦協定、武装解除要求、国連軍の派遣など手段を尽くしてきてはいるが、いまだにスーダン政府の支援を受けるアラブ系民兵組織は虐殺を継続している。

この大量虐殺に終止符を打つため、Washingtonpost.com、NYTimes.comなどに 「 Save Darfur 」 というオンライン広告が掲出されている。
ブッシュ大統領に対して、国連に平和維持軍派遣を強く要請するよう訴えるTVCFも最近、流されたようだ。

Source:Save Darfur

宗教関係団体、人権擁護団体、教育団体がコアのメンバーとなっているSave Darfurは、ついに人気映画俳優George Clooneyも担ぎ出し、9月14日、国連安全保障理事会で彼にDarfurの状況説明、21世紀最初の大量虐殺に対して国際社会の早急な行動を促すスピーチを行わせている。

Source:American Rhetric New Top 100 Speeches

日本ではあまり報道されないこのダルフールだが、驚くのは日本の女子中学生のBlogに登場することだ。彼女の英語の教師から「Save Darfur」のキャンペーンレターをもらい、驚くべき悲惨な状況を知り、自分で何かを起こさなければならないという思いのたけを綴っている。

そして、Geroge Clooneyを担ぎ出したことで、彼の動向をウオッチしている世界中のファンが、その国内に「Save Darfur」キャンペーンを広めていくことになる。

確かに既存メディアの存在感はあるが、それを凌駕する市民メディアと、その波及・浸透力を支えるインターネット、Blogが存在している。

今、マーケターが認識すべきは、ユーザ・消費者・オーディエンスが会話メディア環境にいるということだ。Blogやコミュニティサイトといった会話メディアで、人々はパーミッションを求め、会話への招待を受けることで動かされる。この状況下でマーケティングは、「顧客との最適な対話環境で関係付けを深める機会」を創造することだ。

2006/10/12

Blog and RSS for B2B

オンラインマーケティングは急激に普及したが、Emailマーケティング、検索エンジン、バナー広告など、オフラインで使われている一方通行の手段が先行している。

そこで、B2Bのテクノロジーマーケティングにどのようなオンラインアプリケーションがインパクトを持つのか、KnowledgeStormとUniversal McCannが新しいレポートを出した。
4,500人のビジネス、テクノロジーの専門家を対象にBlogとRSS、特に製品・システム購入決定権にかかわるBlog読者の行動、信用、価値、そしてインパクトを調査し、Blogが直面する問題も取り上げている。
  • 調査対象の45%は、企業内でのテクノロジーに戦術レベルで参画
  • 同55%は、テクノロジーの導入、管理に従事
  • 同42%は、IT調査や経験から社内の10人以上に頼られている
  • 同28%は、IT製品・システム購入、購入承認権限を持つ
それによれば、BlogおよびRSS (Real Simple Syndication) が以前考えられていたよりも普及しており、comScoreによれば昨年から56%伸びて2006年7月には5,870万人 がBlogへアクセスしている。これは米国インターネットユーザの三分の一(成人ユーザに限れば半分近いと見られる)ユーザにまで波及するメインストリーム メディアだ。
また、今年初めて、Blogは、無料トライアルデモ、Webセミナー、ホワイトペーパーなどと並び、質の高いプロスペクトを引き付けるコミュニケーション手段として認知されてきた。
(MarketingSherpaの2006 Business Technology Marketing Benchmark Guideによる)
  • Blogはすでに普及
    回答者の80%がBlog読者、51%は最低毎日1回、28%は毎月1回はBlogを読む
  • Blog読者は必要な情報を入手
    テクノロジーバイヤーは、ビジネスおよび技術情報をBlogから入手
    53%はビジネス情報、
    57%は技術情報を毎週、あるいは毎日、Blogから入手
  • Blog情報は信頼できる
    57%以上はBlog情報を、ニュース、業界誌、メーカーのホワイトペーパー、アナリストレポートなどと同等あるいはそれ以上に信頼
  • Blogへの不安・不便
    Blogに対する信頼性
    必要なBlogを見つけ、アップデート情報を入手するのが困難
  • BlogはIT購入決定に大きく影響
    53%はBlogコンテンツが製品購入決定に影響
    (前回調査では、27%がPodcastコンテンツが影響と回答)
  • バイヤーは特定技術Blogに大きな価値を見る
    49%は、CRM、セキュリティやストレージなど特定のトピックに関する質の高いBlogは非常に有用だと判断
  • プロによるBlogが望まれている
    67%は、テクノロジートピックをカバーしている専門Blogが少ないと感じている
  • 読者から書き手へ
    半分近い回答者は、読んでいるBlogにコメントなりを寄稿
    32%は、自分でBlog開設検討
    4%は、すでにBlog開始
  • Blogを推奨する
    バイヤーはBlogを同僚などへ推奨
    70%は適切と判断したBlogを最低、月に1回は転送
  • 31%がRSS利用
    86%はBlogに対して、「まあまあ」から「非常に」知っている
    59%はRSSに対して、「まあまあ」から「非常に」知っている
    31%がRSS(フィード)を理解して利用
  • RSSコンテンツのトップは業界、企業ニュース
    79%が業界、企業に関するニュースをRSSで取得
    58%が一般ニュースを取得
  • 日に1時間、RSSで消費
    25%が5~10RSS、半分が5RSSを購読
    90%が毎日1時間RSSを購読
Source:knowledgestorm
Source:PDF (注:pdfは上のリンクページ下部の「View this now」をクリック後、登録が必要)

ビジネス・テクノロジーの最新情報・アップデートを求める製品・サービスの購入決定権者は米国のみならず、世界中に存在する。その彼らのうち、少なくとも米国の決定権者の80%が重要な情報チャンネルとして認め、毎日のようにアクセスするBlogを活用するマーケティングが求められている。
彼らはビジネス・テクノロジーシーンでのデジタルイノベーター・アーリーアダプターを形成している。既存メディアではタイムラグのある情報収集も、インターネット、Blogであればリアルタイムに近い形で最新情報・アップデートを入手できる。そのため、最新情報チャネルであるBlogを活用しているわけだ。

Technoratiによれば、2006年6月、英語のBlogは全体の39%を占め言語別でトップの地位を占めている。31%の日本語、12%の中国語が続いているが、他の言語ともあわせ、海外へは波及せず、国内で消費されるコンテンツが多い。

ビジネスやテクノロジーの最新情報・アップデートは欧米、特に米国から発信される。そのため非英語圏のユーザは英語のトップニュース・Blogサイトへアクセスすることになる。英語Blogであれば、米国は勿論のこと、非英語圏へも波及、伝播することになる。そして、最新情報を持ち帰ったデジタルイノベーター・アーリーアダプターは、それを自国語へ翻訳し、同僚、上司、業界の知人などへ転送、普及に拍車をかけていくことになる。

Web2.0時代にグローバルなViral Marketingの核のひとつとなるのは、Blogをおいて他にない。

2006/10/11

Web video search site Blinkx signs MS pact

Blinkx とはWebビデオ検索で重要性を増しつつあるメジャープレイヤーで、すでにAOL、Lycos、Times Onlineなどに検索サービスを提供している。BBC、Fox、MTV、Sky News、Reuters、YouTubeなどが提供している600万時間のオーディオ、ビデオ、TV番組をインデックスし、検索可能としている。

Blinkx は通常のテキスト検索ではなく、音声認識、画像、内容解析によってコンテンツ検索が可能で、ユーザはビデオ中に使用された言語によって検索ができる。通常 の検索エンジンではビデオのタイトルやテキスト情報をベースに検索するが、ビデオを見ても何がなんだか判断できない。しかし、Blinkxはオーディオト ラックに録音されている言葉をベースに検索することができる。

このBlinkxと契約したMSは、自身のWebサイトやLive.comにBlinkxの技術を導入してゆく。
YouTubeは笑い声の渦に包まれているのかもしれないが、観たい何か特別なものを見つけるのは、また別な話だ。また、GoogleやYouTubeとは違い、Blinkxはビデオに関する検索情報を集めるのであって、ビデオそのものを集めてくるわけではないので、著作権問題やストレージの話は出てこない。

Source:Reuters
Source:MarketingVox

Web上のビデオを視聴するユーザはBB接続の急増により爆発している。バイラルビデオもあっという間に世界へ伝播していく。

YouTube とGoogleの話で騒がしいが、Googleが単純テキスト検索エンジンとして地歩を固め、飛躍してきたのはWeb1.0の世界。コンテンツの発信、共 有、転送、マッシュアップによるコミュニティーやグループが自然発生、拡大してゆき、BBユーザが各国でアーリーアダプター域を超えつつある中、コンテン ツに最大情報を詰め込めるビデオによるWeb2.0時代に、ビデオコンテンツ解析をベースとする検索エンジンはWeb2.0の盟主となるのだろうか。

日本では経産省が音頭をとり、「情報大航海プロジェクト・コンソーシアム」が7月に発足している。映像や音声データでは優れた技術を持っている国産メーカー、検索関連技術研究を進めてきた大学などが参加している。数十億円の予算が確保され、2~3年で結果を出す計画だ。

Blinkxは2004年創立、1,200~1,300万㌦の出資を受け、すでにAOL、Lycosなどにサービスを提供し、出資金の四分の三を使った時点でMSとの契約に至っている。
BlinkxのCTOは、「我々はWeb上でただひとつ、最大のビデオ検索エンジンになる」と語っているが、日本製次世代検索エンジンは間に合うのだろうか。

Free Papers Home Delivered in Europe

12年前、Metro Internationalがヨーロッパで先陣を切ったフリーペーパーが、WANによれば現在、全世界で毎日3,250万部が発行、配布されている。これは全世界の新聞発行部数の7%を占めている。
米国とカナダの場合、8%を占め、ヨーロッパでは新聞紙市場の20%をフリーペーパーが占めている。

このフリーペーパー市場に新たな激震が走った。フリーペパーが65%の新聞紙市場を押さえているデンマークでフリーペーパーの宅配サービスが始まるというのだ。実際のところ、今春、365 Media Scandinaviaがその計画を明らかにするや否や、デンマークの既存新聞社2社がフリーペーパー宅配を計画し、8月から開始していた。
そこに3紙目として、365 Media Scandinaviaが加わることになる。既存2紙のフリーペーパーは365 Media Scandinavia迎撃用のものだから、本格的なフリーペーパーは365 Media Scandinaviaが初めてとなる。

3 紙ともに42.5万~50万部の発行部数を持つが、365 Media Scandinaviaは高級紙として100人の記者、700人の専従配達員を擁し、3大都市での宅配と交通要所での配布を行う。ポイントは郵政省と提携 し、DMなどと一緒にフリーペーパーを配達してもらう戦略だ。

宅配そのものは365 Media Scandinaviaが数年前にアイスランドで試験的に開始していたし、米国でもPhilips AnschutzがExaminerをサンフランシスコ、ワシントン、ボルチモアで行っている。

デンマークでの宅配が順調に推移すれば、他の欧州地域へ拡大されるだろうし、スウェーデンで次の宅配サービスが開始されるだろうという噂も飛び交っている。

Source:Media Life

さて、このフリーペーパーの宅配トレンドが欧州全域に拡大していけば既存新聞、雑誌、他の印刷物への影響は少なくない。
すでに新聞のメディアとしての消費はインターネットに押されている。既存新聞の読者がフリーペーパーに流れることで新聞社の収益構造が脆弱化していく。一層、欧州の新聞社はオンライン戦略を構築、確立する必要に迫られている。

参考:EIAA Europe Online
参考:The net benefit of digital publishing

雑誌も同様だ。古い資料で恐縮だが、IpsosのEBRS 2004を見ると、モニターされている18の国際ビジネス紙誌中、読者数が減ったのは14紙誌に上っている。全体の読者数として2002年の47.3%か ら2004年には43.1%へ下落している。(古い資料、かつ、Ipsosのリンクが消滅しているためSourceとして提示不能)

Ipsos によれば、58%が国際ニュースに関して最も信頼できるソースとして新聞および雑誌を挙げ、36%がTV、20%がラジオ、18%がインターネットよりも 先を行っているとしている。そのため国際ビジネス紙誌は欧州の最もシニアなビジネスプロフェッショナルにリーチする力のあるツールだと結論づけている。

しかし、一方では2002年の48%から2004年の58%へ上昇したオンラインの存在がある。16%は有料のオンラインコンテンツを購読しているという事実もある。

実態は、国際ビジネス紙誌の読者減少がよくここまでで止まったということだ。EUが進める「Broadband for All」の影響がひたひたと地歩を固めている欧州で、どこまでプリント媒体が存在を堅持してゆけるのだろう。EBRS 2006がすでにスポンサーなどには開示されているようだが、ぜひ、最新のEBRSデータを見たいものだ。

参考:Broadband for All

2006/10/10

Living the Promotional Life

北米Nissanが面白いキャンペーンを開始したようだ。
30歳のコンセプチュアルアーティスト、Marc Horowitzを起用して2007年型Sentraで1週間生活してもらい、それをBlogやWebisodesで流すというものだ。

ター ゲットは都会派の20代、30代、彼らがアクセスするMySpace、TiVo、videoクリップ、Webisodesなどを動員し、口コミで情報共 有、拡散を目指している。6社の代理店がコラボし、2005年の12万台をかなり上回る販売を期待している。「次世代Sentra、車内で生活できます (“The next generation Sentra. You could pretty much live in it.”)」というテーマはおくとしても、4,000~5,000万㌦の予算規模、TV、プリント、屋外広告など既存メディアも使われているが、それらは キャンペーンのコアではなく、キャンペーンの一部だ。

若年消費者の変わりつつある行動パターンを反映すべく、メディア選択を再構築せざるをえないマーケターの必死の努力を象徴している。

北米NissanのマーケティングVP、Jan Thompsonは、「我々が考えているように、人々がどのようにメディアを消費すべきかではなく、人々がどのようにメディアを消費するかを見守ってい る」と語り、また、「ノンリニアなコンテンツアプローチをするのは初めてだ」と加え、「TV依存からの脱却」を示唆しているとNYTは書いている。

こういった動きはNissanだけではなく、FordもRocketboom.comで人気のあったAmanda Congdonを起用したvblog (video blog) をサポートしている。

Source:MarketingVox
Source:NYTimes.com

「リ ニアなTVなどの既存メディアよりEngagementを得られる。impression、interaction、view throughを計測でき、ニューメディアエレメントが機能しているか判断できる」とJan Thompsonが言う背景には薄れ行くTVの視聴者とその広告効果がある。

Journalism.org が、The State of The New Media 2006 をアップしている。
そ の中のNetwork TV(夕方ニュース視聴者)、Cable TV(プライムタイム視聴者)を見ると、年々視聴者数が継続して低落ているTVの状況が見て取れる。地上波TVの視聴者だけではなく、Fox Newsを除くCNN、MSNBCは伸び悩む中、イメージ、メッセージキャリアとしてのTVはその地位を落としている。

分散、細分化されたメディア消費、かつ、共有、転送されるメディア状況に最適のマーケティング戦略は何かと探るTry and Errorの時代は過ぎ、大企業のブランドマーケティングにもインターネット、バイラルマーケティングが組み込まれてきた。

し かし、北米Nissanであれ、Fordであれ、こういった露出の影響は、米国内にとどまらない。MySpace、Youtubeなど世界トップのSNS へは世界中のユーザがアクセスするし、こういった記事を発信するトップのニュースサイトへも世界からユーザが来ている。米国内のマーケティング、ブラン ディング戦略によるコンテンツが世界のステークホルダーに消費され、露出が蓄積されてゆく。各国のディジタルイノベーター、アーリーアダプターがアクセス したコンテンツが、各国内のSNSへアップされ、自国語化されたコンテンツが国内に波及して行く。

とてつもないクロスメッシュリーチが創 造されて行く。すでに10億を超え、先進工業国ではクリティカルマスをはるかに上回るインターネットユーザが存在し、世界共通語としての英語が世界中の国 々のユーザに情報流通、共有、拡散を増進している。メディアの創造者であるインターネットユーザはその力を自覚し、グループ化、コミュニティ化を進め、一 層クロスメッシュを進めている。

世界に進出した日本のグローバル企業はこの現状をどう把握、理解、解析しているのだろうか。米国子会社に この新しいメディア局面を乗り切る責任と権利、予算を与え、米国ベースのプロモーションを遂行するのだろうか。IBM、HPなど米国グローバル企業が本社 ドメインとして、インターネットでの企業広告も、Blogマーケティングも開始している中、現地子会社に予算だけを割り振り、事業領域外の北米以外のテリ トリも、世界を対象とするグローバルなCSRまでも、そして本社のみが可能なグローバルなコーポレートブランディングも負わせようとするのだろうか。

日本本社のグローバルWebサイトには無味乾燥なコンテンツしかなく、海外メディアへの露出も少ないため、メディアシーンの先頭を行く世界のデジタルイノベーター・アーリーアダプターがアクセスすることもなく、日本に住む外国人向けの内容としての意味しかない。