2010/05/31

Email performance by Industry

Marketing Profsが出している「Digital Marketing Fact Book 2010 Q1」に業界別のEmailパフォーマンスが出ていた。

データそのものは2009年Q3のものだが、メールの受信率が最も低いのは消費者向け医薬品の86%。実に14%が不達だ。それに比べると小売りの衣料やエレクトロニクス関連は98.2%、96.3%と高い。

また、開封率の最も高いのは金融サービスで34.2%、非営利の教育が30.4%で続いている。

そして、CTRだが、最も高いのは消費者向けCPGが9.0%、そして非営利の教育が8.4%で続いている。
Source:MarketingProfs / Digital Marketing Factbook

業界・業種別の変動はあるが、受信率、開封率、CTRといいい、どこの世界の話だと思われるほどメールを受信したユーザがエンゲージしている。そして、受信したメールの情報・コンテンツを自分のピアへ転送してくれることを考えるとEmailはまだまだ企業・ブランド側からの一方的なメッセージチャネルとして機能している。

Emailをこのまま一方通行マーケティングとして実施するにしても、Samsungなどのようにソーシャルメディアマーケティングと統合するにしても、まず、Opt-inでEmailアドレスを登録してもらわなければならない。

どんな企業・ブランドにしてもEmail登録ユーザ数を伸ばすためにあれこれと方策を思案しなければならない。なぜなら、企業・ブランド側からの情報・コンテンツを受信しようとするユーザがいるからだ。

2010/05/28

BP Reputation Management Challenged -2

一昨日アップした「BP Reputation Management Challenged」のアップデート。

参考:BP Reputation Management Challenged (Online Ad 2010/05/26)

25日までTwitterCounterが、BPGlobalPRをカウントしておらずBP_Americaとの比較グラフが描けなかったが、26日から可能となったので比較してみる。

TwitterのBP_Americaアカウントは、26日昼ごろで4,751人のフォロワーを持ち、25日から275人増、Twitterランクは33,430位となっている。27日には5,547人、26日から796人増となって30,263位に上昇してきた。

一方、BPGlobalPRは5月19日にTwitterアカウントを開設したばかりにも関らず、すでに26日に3.3万人、そして27日には4.6万人以上のフォロワーを抱え、これからの30日間で35万人以上になると予想されている(TwitterCounterは26日からカウントしているため、この予想は大幅に割り引く必要がある)。そして、そのTwitterランクは26日で12,148位、27日で5,414位だ。

この2つのTwitterアカウントのフォロワーを比較すると下図のようになる。低空飛行を続けていたBP_Ameriaを横目に、BGGlobalPRは1週間やそこらであっというまに5万人に手が届くレベルまで増えている。BP_Ameriaもその影響で今週から増加傾向が見られる。(クリックで拡大)
そして、BPGlobalPRアカウントへアクセスしたTwitterユーザには以下のような人達がいる。米、伊、蘭の彼ら、彼女たちには最低261人、最大で54,000人以上のフォロワーがついている。彼らが肯定、否定、中立的なTweetをするだけでBPGlobalPR自体が露出してしまう。
BP_Americaアカウントにアクセスしたのは一昨日の彼女だけ。
Source:TwitterCounter / BPGlobaPR+BP_America

どちらが注目されているかは一目瞭然だ。BPGlobalPRが行うTweetをパロディとして捉えるユーザもいるし、性質の悪いいたずらと捉えるユーザもいる。一方、ブランド価値を毀損させるテロと捉えるべき企業・ブランドもいる。

ところがAdAgeによれば、
BPは、BPGlobalPRアカウントの存在を認識しているが、今のところ何らの対応を行ったこともない。BPGlobalPRアカウントが最初のようにBPと同じロゴを使っているわけでもなく、TweetもBPが特に目障りだと認識するものでもない。
そうだ。
ただし、このBPの対応の前提にあるのは、
(原油流出事故の)対応に対して人々がどのように感じるかは人々次第で、BPはそれを受け入れるしかない。今起こっていることに人々は不満を募らせているわけで、それを表現する方法のひとつだ(と認識している)。
ということだ。

Source:AdAge / Why BP Isn't Fretting Over Its Twitter Impostor

すなわち、BPはBPGlobalPRアカウントにかかずりあっている暇はないということだ。BPGlobalPRに関っているくらいなら原油流出をなんとかしろと言われるのは当然だとわかっているということだ。

しかし、平時に同じ対応を取れるだろうか?自社ロゴに類似したロゴを掲げ、Twitterの「なりすまし」、「パロディ」ガイドラインに抵触しているBPGlobalPRアカウントをそのままにしておけるだろうか?PRはともかく、法務が黙っていられるだろうか?法務が黙っているとしたら、それは職務怠慢、あるいは職務放棄と見なされるのではないだろうか?

さて、BPGlobalPRは、healthygulf.orgに「bp cares」Tシャツの収益を寄付すると宣言した。社会貢献団体に利益を寄付する「いいひと」なんですよというポーズをとっている。なかなか一筋縄ではいかない手強さが見て取れる。

揚げ足取り、パロディ、おふざけなど多様なTweetがこれからも発信されそうな状況だが、こんなイシューマネージメントを想定している企業・ブランドはいるだろうか?

2010/05/27

Integrated Communications

Integrated Communications(統合コミュニケーションズ)とはよく言われる言葉だ。CC、広報、広告、DM、販促、SMOであれ、ひとつの傘の下にコミュニケーションを統合しようとするものだ。

ところがVocusの「Blurring Lines, Turf Battles and Tweets: The Real Impact of Integrated Communications on Marketing and PR」を見ると、現実はなかなか思い通りには進んでいないようだ。

まず垣根をなくす意味でも、統合・合同キャンペーンをやるにしても必要な広報、マーケの全体会議を「いつもやる」のはたった11%、「やったことがない+めったにやらない+分からないの」は合計22%、「たまにやる」のが67%だ。
その理由はというと、最大の33%を占めるのは「組織の縦割りサイロ」、12%で「組織のカルチャーや抵抗」、「上職の理解不足」が7%、「社員の知識、スキル、能力不足」が6%となっている。
次に、ソーシャルメディアを担当すべきはどこかと訊いている。PR側はPRが担当すべきだと43%が考えているが、マーケ側でマーケが担当すべきと考えているのは35%。PRとマーケが合同で担当すべきと考えているのはPRで38%、マーケで42%だ。しかし、PRでも8%はマーケ、マーケでは11%はPRが担当すべきと考えている。いずれにせよPRやマーケ単独、そして合同でやるべきとするのは合計90%前後に達する。

しかし、PR、マーケの双方で引いている綱がその時々のイベントやキャンペーンであっちに行ったり、こっちに行ったりしているようで、意識統一はまだできていないようだ。
そして企業公式Blogになると話はもっとややこしいようだ。PRやマーケ単独、そして合同を合計しても60%前後で上の90%前後とは大きく違う。企業Blogになると、PR、マーケ以外に法務、財務、IT・情シスなど、その他の別部署がからんでくるのが分かる。
Source:Vocus / Blurring Lines, Turf Battles and Tweets

EdelmanのSVP Digital、David Armanoが「Social Media Is Dead」で示すように、ソーシャルメディアにはそれこそ、ありとあらゆる部署がからんでくる。
Source:Logic + Emotion / Social Media Is Dead

Integrated Communicationsを進めてゆくには、まず全社各組織に対する啓もうしかない。そして、既存組織のままではなく、まったく新しい部署、組織を作るしかない。Cokeはグローバル、ドメスティックのカウンシルを社内に作ったそうだが、縦割りサイロを温存しながら、横串をさせる組織、風通しを良くする部署が必ず必要になる。Social Media、Digital Marketing、Interactive Marketing、Online Marketingといった組織からCorporate Social Media Summitに講演者として参加することからも明らかだ。

参考:Insights from Coke (Online Ad 2010/04/13)
参考:Corporate Social Media Summit (Online Ad 2010/04/15)
参考:Corporate Social Media Summit -2 (Online Ad 2010/05/07)

このように社内意識を統一した上で企業・ブランドとして外部発信メッセージをソーシャルメディア化し、ユーザとエンゲージしてゆくしかない。しかし、この「ユーザとエンゲージ」することを忘れているケースが大半だ。新しい部署、組織ができたのは良いが、ソーシャルメディアを使って既存マーケティング手法、メガホン手法、ブロードキャスト手法をやるだけのケースが大半だ。

「エンゲージ」するということは、今までの広告や広報とは違い、予算を計上してROIを確かめたうえで支出するだけといった簡単な業務には収まりきらない業務になる。マインドセットを切り替え、パラダイムシフトを受け入れ、理解しない限り、ソーシャルメディアマーケティングは効果がないのだが...。

2010/05/26

BP Reputation Management Challenged

4月20日に爆発、その後沈没したBPの石油掘削プラットフォームのおかげでメキシコ湾での原油流出は今も続いている。いつ流出が止まるか分からない現状からすると、環境被害、漁業被害は天文学的な数字になるかもしれない(?)。

その当事者、BPのグローバルサイトは事故の最新情報、追加コンテンツ、ビデオアップデート、ダウンロードファイル、ツール、コンタクト先、プレスリリースなど、これでもかといった具合にコンテンツを供給している。
Source:BP.com

そして、Twitterはどうなっているかというと、BPで検索するとBPGlobalPRというアカウントがトップにきている。しかし、このアカウントはとても世界に冠たるBPとは思えないTweetを重ねている。

例えば、
  • I'm sorry, are people mad at us for drilling in the ocean?!? Maybe God shouldn't have put oil there in the first place. DUH. #bpcares
  • Please do NOT take or clean any oil you find on the beach. That is the property of British Petroleum and we WILL sue you.
といった具合だ。

「BPは事故を起こし、メキシコ湾全体にとてつもない影響、被害を及ぼしているのに、何だこのTweetは、とんでもない企業だ」と思うユーザがいるかもしれない。
しかし、BP_Americaという別なアカウントもある。こちらはまともなTweetだし、ちゃんとグローバルWebサイトへのリンクもある。
Source:Twitter / BPGlobalPR
Source:Twitter / BP_America

BPGlobalPRというアカウント名からして、BP_Americaといった現地子会社ではなく、BP本社の広報が運営しているアカウントのように見られなくもない。しかし、このBPGlobalPRというアカウントは、「bp cares」というロゴのインクがにじんで汚いTシャツも売ろうとしているStreetGigant.comというサイトがBPの揚げ足を取り、おふざけ的に、あるいは実利を兼ねてやっているようだ。

こんなアカウントがとんでもないTweetを重ねている。そしてBPGlobalPRのフォロワー数は25日時点で約18,000、約4,600のBP_Americaより4倍近くも多い。今朝は28,000以上となっている。一日で1万人以上のフォロワーが増えている。また、BPGlobalPRのTweetはいずれも100回以上RTされている。これがどんなことかわかるだろうか?

おふざけ的に受けてくれるだけならいいが、そうも行かないかもしれない。真に受けたユーザが憤慨してTweetやRTしたり、別ユーザが輪をかけた悪さをTweetすることでネガティブセンチメントが累積してゆく。そして、どうやら@Wiredが@BPGlobalPRの誘いに乗ってしまったようなので、マスメディア系への露出もこれから急増してゆくだろう。にもかかわらず、BP側からの対処はないようでBPGlobalPRのアカウントはまだ生きている。モニタリングをしていない企業・ブランド側が風評被害を見過ごし、レピュテーションマネージメントが危機に瀕している。

そして、そんな状況に輪をかけるのが、BPのグローバルサイトだ。前述のように一見すると、最善、最適、最新のニュース・情報・コンテンツを供給しているようだが、ソーシャルメディアスペースにおける共有機能は皆無だ。

辛うじてRSSフィードだけはあるが、Share This、Add Thisはもちろん、ユーザのFacebook、Twitter、YouTubeアカウントを利用してコンテンツを共有する機能、また、Email転送などの機能はWebサイトに装備されていない。

これでは、ソーシャルメディアスペースに参加するのではなく、我々のコンテンツを見たいのなら、Webサイトへアクセスしろと言っているということになる。あるいは、Webサイトに全ての情報・コンテンツを供給しているから、これで我々の責任と義務は十二分に履行されていると胸を張っているということになる。また、情報・コンテンツを制作・発信するパワーがユーザにシフトしたにも関らず、ソーシャルメディア時代以前に企業・ブランドが持っていた一方通行コミュニケーションを踏襲しているだけだということにもなる。

Nestleの株主総会を揺るがした原因はGreenpeaceかもしれないが、Nestleに抗議のEmailを送ったり、Facebookを乗っ取ったのはGreenpeaceの賛同者だけではない。ソーシャルメディアスペースで情報・コンテンツを消費、共有したその他大勢のユーザが参加したからこそ、NestleのCEOは対策を発表しなければならなかったわけだ。旧態依然の対処ではもう立ち行かない時代なのだが...?

参考:Greenpeace Campaign Against Nestle (Online Ad 2010/04/19)

なお、ToyotaやNestle、BPとは違い、わが社は人身事故の危険もなく、熱帯雨林の違法伐採を行うサプライヤーと取引もなく、一旦大規模事故が起これば未曾有の被害をもたらすような事業はやっていないと他人事を決め込んでいる企業・ブランドはいるだろう。

しかし、こんなブランドレピュテーションの危機を迎えることは絶対ないと断言できる企業・ブランドは存在し得ない。自社の故意、過失の別なく事件、事故は起こるし、BPGlobalPRのように火事場泥棒を決め込む輩はどこにでもいるのだから。彼らにとって、企業・ブランドに責任のない事件、事故であったとしても、それを利用、悪用することさえできればいいわけだ。そして、そんな輩は世界中に掃いて捨てるほどいる。今も、彼らはBPとBPGlobalPRのケースからせっせと学んでいる。一方、企業・ブランドはただBPから学ぶこともなく...。

2010/05/25

Outsourcing Social Media Marketing

MarketingSherpaから「Social Media Handbook」が出ている。そのサンプルにソーシャルメディアマーケティングの成熟度・進展度を測るワークシートがある。

以下の4項目に対して、
  • ターゲットオーディエンス、ソーシャルメディアの利用、競合の情報を収集
  • ターゲットオーディエンスおよびソーシャル指標に基づいた目的・目標を定義
  • 実施計画を含むソーシャルメディアマーケティング戦略を構築
  • ソーシャルメディアマーケティング戦略・戦術を実施するプラットフォームを選択
それぞれ「やっていない」「非公式、ランダムに実施」「公式、継続実施」の3段階で判断し、1、3、5点を加算する。点数を合計して、「トライアル」「途上」「戦略実施」段階と判定するものだ。

調査を行った2,300人のマーケターのステージは以下のようになっている。さて、あなたの企業・ブランドはどのステージにあるのだろうか?
そして、Chart of the dayに「ソーシャルメディアのアウトソーシング」があった。コンテンツ制作、ソーシャルメディアサイトのSEO対策、モニタリング、ソーシャルメディア戦略立案、ソーシャルメディアマーケティングのトレーニング、オーディエンス・インフルエンサーに対するエンゲージメントの6項目に対してアウトソースしているかどうかを訊いている。

すでにアウトソースしているところもあれば、今はやっていないが来年は検討する、そして、まったくアウトソースしていないところもある。すでにアウトソースしているのはコンテンツ制作、ソーシャルメディアサイトのSEO対策が18%、モニタリング、ソーシャルメディア戦略立案、ソーシャルメディアマーケティングのトレーニングが10%、エンゲージメントが9%となっている。

Source:MarketingSherpa / Social Media Handbook
Source:MarketingSherpa / Social Media Outsourcing

企業・ブランドにおける取り組み、特に組織・予算・人員構成などが大きく変わるため、こういったベンチマーク数値をそのまま評価するのは非常に困難だ。

ただし、「途上」や「戦略実施」レベルを合わせた63%と、「トライアル」の33%の違いは明白だろう。「戦略実施」レベルと「トライアル」の間には、深くて長い川がある。

さて、基本的に「オーディエンス・インフルエンサーに対するエンゲージメント」は、企業・ブランドが内製すべきものでアウトソースするのは馴染まないはずだが、すでに9%がアウトソースし、来年アウトソースを検討しているところが14%もいる。どうもソーシャルメディアマーケティングを履き違えているとしか見えない。従来からのレガシーマーケティングのように外部エージェンシーに丸投げし、結果だけをレポートさせるようには決して行かないのがソーシャルメディアマーケティングだ。

ユーザが求めているもの、価値のあるものとして評価するのは企業・ブランドとのダイレクト、オープン、対等、そして双方向のコミュニケーションであり、それがあって初めて企業・ブランドとのコミュニケーションや情報・コンテンツを消費、共有、再露出から拡散してくれるわけだ。ダイレクトなコミュニケーションだと思っているコンタクト先がアウトソース先だとなると話は180度違ってくる。

「ターゲットオーディエンス、ソーシャルメディアの利用、競合の情報を収集」することや、「モニタリング」を外注することとはまるで違うのだが、そこが理解されていない。まだまだ、米国でもソーシャルメディアマーケティングは黒船来航前といった状況なのかもしれない。

2010/05/24

Walk on Water, 3D?

たまには気休めのビデオでも見たい気分だ。

ということでYouTubeに「Walk on Water」というビデオが上っていた。


Source:YouTube / Walk on Water

こんな馬鹿げたビデオでも3Dで撮ったらどうなるんだろうと考えてしまう。

下のグラフはモニター、PC、携帯なども含めた3Dディスプレイ全体の市場規模予想だが、DisplaySearchによれば、2009年に20万台の3D TVが2018年には6,400万台、170億㌦の規模になるとの予測が出ている。



Source:DisplaySearch / 3d revenues forecast

これほど期待される3DTVだが、SonyのEVPでConsumer product devices groupのPresident、Hiroshi Yoshioka氏は、
Poorly executed 3D is harmful, and it threatens its long-term success
と、べガスで開催されたNABコンベンションの基調講演で語っている。

ま、これは多分に、低い3Dクオリティを指摘されているワーナーブラザーズの「Clash of the Titans(タイタンの戦い)」が念頭にあるようだが、普段、我々人間が裸眼で見ている3D映像そのままのように、自然で素晴らしい3Dコンテンツが提供できるかどうかが3D TV普及の鍵になるということだ。

Source:The Hollywood Reporter / Sony exec : Poorly executed 3D threatens biz

ということで、一番の上のビデオを3D化してもあまり意味はなさそうだ。バイラルビデオを除けば。

2010/05/21

Global Teens Impact

2009年の資料だが、「Global Glance」というタイトルがつき、世界中のティーン(12歳~19歳)をプロファイリングしているレポートがTNSから出ている。

5大陸、16カ国において12歳~19歳のティーンは合計4.61億人、そして個人的な購買力合計は5,920億㌦という途方もない購買層を構成している。

もちろん、このティーンプロファイルで最大の存在感を発揮しているのは米国ではなく、中国だ。約1.8億人が2,360億㌦もの購買力を擁している。人数で38.4%、購買力で39.9%だ。
これを先進国、途上国に分けてみると以下のようになる。

先進国のティーンは7,100万人で購買力は2,680億㌦。途上国のティーンは3.9億人で購買力は3,240億㌦となる。
Source:TNS / Research

TNSと年代区切りがちょっと違うが、PEWの「Social Media and Young Adult」というデータを見ると、2000年時点で12歳~17歳のティーンズのインターネット普及率は75%弱、それが2009年には93%に上昇している。これは18歳~29歳と同率一位で、他のどの世代よりも高い。
Source:PEW / Social Media and Young Adult

彼らティーンズの就学時には家庭に複数PC、携帯、インターネットがあり、学校の宿題はGoogleで検索、学校や近くの友人とIM、携帯でSMSおしゃべりをし、iPodで音楽を聴き、DSでゲームをしているミレニアム世代=デジタルネイティブ世代だ。小学生でBlogを書き、Facebookにプロファイルを持って友人達とやり取りし、YouTubeにもビデオをアップし、Flickrで携帯で撮った写真を交換している。

そんな彼らが自国内の情報・コンテンツ、製品・サービスだけに満足していると思っていると大きな火傷を負うことになる。

Facebook、MySpace、Beboなどは言うまでもなく、Twitter、YouTube、Flickrなど、彼らを国境を越えて結びつけ、エンゲージするサイト、サービス、ツールがそこらじゅうに満ち溢れている。

以前、Starbucksのwallにあるコメントを調べたところ、英語以外の言語での書込みは7%前後だ。それに非英語圏ユーザの英語での書込みを加えれば15%くらいは行くのではないだろうか。企業・ブランドとエンゲージするのは本社が存在する該当国ユーザだけではなく、進出先の各国、そして、まだ進出していない海外諸国のユーザであってもインターネットアクセスさえあれば全く問題なく情報・コンテンツを消費、共有することができる。

そして、わざわざ、英語サイト・コンテンツを消費・共有する世界のティーンが抱える個人的なリレーションズ、コネクションズ、ネットワークは自国および海外ユーザへと広がっている。そのネットワークに英語コンテンツが自国語で、あるいは第三外国で共有されてゆく。

彼らに友人、ファン、フォロワーといった形でエンゲージしてもらうことは途方もない可能性を秘めていると見る企業・ブランドと、そうではない企業・ブランドとのギャップは、また途方もなく広く、深く、そして致命的となる。

2010/05/20

Look at yourself from head to toe after this

次のビデオを見ていただきたい。


日本には乙武さんがおられ、出版直後に「五体不満足」をむさぼるようにして読んだ記憶がある。

Source:Wikipedia / 乙武洋匡
Source:乙武洋匡公式サイト

このように心を揺さぶるビデオや、心が暖まったり、あっと息を飲むビデオ、思わず見入ってしまうビデオ、そして、講演者のメッセージを深く考えさせられるビデオがある。

参考:Free Hug Campaign : Global Viral Effect (Online Ad 2006/12/05)
参考:Amazing Ball Girl (Online Ad 2008/06/30)
参考:Extreme Sheep LED Art (Online Ad 2009/03/24)
参考:Anything Possible / Last Lecture by Randy Pausch (Online Ad 2008/07/30)

今更ながらビデオの力に脱帽するだけだ。

さて、日本のグローバル企業の中には世界中でCSRを実施しているケースが少なくない。各国の自治体、NGOと連携して多様な活動を実施している中から、年に2回でも、3回でもいい。ユーザの参加やコンテンツの共有を呼び掛けるビデオはできないのだろうか。

あるいはFlipがやっているキャンペーンをグローバルに共同で展開することもできなくはないはずだ。

参考:Online Video for NGO (Online Ad 2010/03/01)

価値を提供できて初めて情報・コンテンツは消費、共有、再露出してもらえるのだから。

2010/05/19

Viral Video from Newspaper Publishers

UKのThe Independent、The Sunがバイラルビデオを流している。
The Sunは昨年の11月、The Independentは今年の4月だ。





The Sunのビデオは、Engadget、Huffington Post、Gizmodo、Boing Boing、Technoratiなどが取上げ、11月30日にはDiggのフロントページにも取上げられた。今年4月時点で合計25万回以上のビデオ視聴、RT1,858回、Twitter上におけるCTRは5.2%、コメント154件、お気に入り1,098件という結果だ。期待、希望以上の結果をうけてThe Sunは、60秒のTVCFとして英国で放送したそうだ。

Source:Unruly Media / The Sun - Best Handheld for 40 Years

ま、それを目の当たりにしたIndependentが二匹目のドジョウをねらったという形だ。

新聞社、新聞そのもの、新聞社が新しく開発したサービス、サイトに価値がないわけではない。しかし、どの新聞社も一般事業会社と同じマインドセットなので、それらを旧態依然のコミュニケーションチャネルを通して広報、広告、マーケティングしているだけのように見受けられる。

そのコミュニケーションチャネルは数十年、いや百年以上をかけて築きあげてきたもので今までは効果が実証されてきたかもしれない。しかし、今は違う。情報・コンテンツの送信元が限られていたわが世の春といった時代ではない。この時代にそれを理解しないマーケティングをしても効果は薄い。

The Sunのキャンペーン詳細は上のソースに任せるが、この新しい読者獲得キャンペーンは新聞社に限らず、一般事業会社、企業・ブランドにとって何らかの参考にはなると思うが、どうだろう?

2010/05/18

Most adaptable to change

一般にダーウィンの言葉として伝えられる、「It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent that survives. It is the one that is most adaptable to change.」という言葉がある。

日本語では「強い者が生き残ったわけではない。賢い者が生き残ったわけでもない。変化に対応した者が生き残ったのだ」と訳されていることが多いようだ。

ただし、これはどうもダーウィンの言葉ではないようだ。本当は「Monkey Trial(Scopes Trial、スコープス裁判、1925年)」においてClarence Darrow(写真)という被告側弁護士が言った言葉のようで、1987年の米議会で引用されて議事録にも残っているようだ。

それがいつの間にやらというか、1997年頃からダーウィンの言葉として引用されるようになり、何代か前の威勢のいい日本の首相もそのまま引用してしまったらしい。

Source:Darwin Correspondence Project
Source:Mahalo Answers
Source:Wikiquote / Clarence Darrow

それはさておき、「強い者が生き残ったわけではない。賢い者が生き残ったわけでもない。変化に対応した者が生き残ったのだ」という言葉は、次のように言い換えてはどうだろう。

すなわち、「新興のソーシャルメディアがコミュニケーションを変革し、絶大な力を誇っていたレガシーマスメディアが衰退し、苔むした旧態依然の広報、広告、マーケティング、ブランディング戦略はソーシャルメディアスペースでは評価されることもなく、ブロードキャストされるメッセージのROIは地に落ちた。新しいコミュニケーションスペース、ユーザとのオープン・対等・双方向のエンゲージメント、個人の持つリレーションズ、コネクションズ、ネットワークがコアになりつつある変化に対応できる企業・ブランドだけが評価される(生き残る)」。

それを如実に示している図がある。YahooやMSが抱えるアドネットワークは別としてサイト単体での広告impression数だ。レガシーマスメディア系サイトの停滞、落ち込みを横目に見ながらただ一人、右肩上がりを続けるのはFacebookのみだ。
Source:SAI Chart of the Day

これらレガシーマスメディアにしがみつく企業・ブランドの価値、評価も停滞、落ち込むimpression数と運命を共にしなければと願う。

2010/05/17

Negative Tweet on Whirlpool washing machine

ちょっと古い話になるが、Heather Armstrong、別名dooceをご存じだろうか?
pic
今はTwitterに160万人以上のフォロワーを持ち、自分のWeb・Blogサイト (dooce.com)には平均3万人がアクセスしているスーパーBloggerだ。Forbesの選ぶ「The Most Influential Women In Media」にも選出されている。

が、2009年8月時点ではまだ100万人程度(!!!)のTwitterフォロ ワーしかいなかった彼女に何があったのか、Forbesが詳しく伝えている。

昨年の8月頃、2児の母である彼女は1,300㌦も払って古 い洗濯機を新品のMaytag洗濯機に取り換えたが、あっというまに故障してしまった。何度も何度も修理を依頼し、サービスマンが訪問して修理を試みたが 直らない。カスタマーサービスに電話してもラチがあかず、電話でとうとう最後の台詞を口に出した。

「Twitterってご存知?あたしは Twitterに100万人以上のフォロワーがいますのよ」

カスタマーサービスはそんなことは関係ないといった対応をしたようだ。

そ こで彼女はキーボードに打ち込んだ。

「I had exhausted all avenues and I had given them chance after chance to make it right」
「(I hope) the right person would hear it and help me so that you may not have to suffer like we have」
「DO NOT EVER BUY A MAYTAG. I repeat: OUR MAYTAG EXPERIENCE HAS BEEN NIGHTMARE.」

彼女がTweetして3分たつか経たないうちに、「私もMaytagでとんでもない目にあったわ」という別ユー ザからのTweetが来た。続いてもう3件同様のTweetが飛んできた。数時間すると、家電ショップから修理を請け負うというTweetも何件か飛んで きた。

そして、Maytagの親会社、WhirlpoolのTwitterアカウント、@WhirlpoolCorpからTweetが来 た。
翌朝、 Whirlpool本社のJeff Pirainoから新しいサービスマンを手配中だと言う電話があり、その翌日には彼女の洗濯機は完ぺきに修理された。

Source:Forbes / A Twitterati Calls Out Whirlpool

この ケースの属性・影響や波及・インサイトを、Twitterフォロワーを100万人以上も抱え、Maytag洗濯機故障に関するBlogに2,500件以上 のコメントを受け、Forbesの「The Most Influential Women In Media」に選出されているHeather ArmstrongというスーパーBloggerの特異性に求めるのも可能だろう。

しかし、自分のTwitterアカウントに一人のフォ ロワーがいなくても、自分のBlogに日に一人のビジターも来ないような一般のユーザであったとしても、Heatherやほかのパワフルな影響者、インフ ルエンサーにコンタクトすることができる。あるいは単純に、「Help me」と助けを呼べば、おっとり刀で駆けつける人助けを自分の使命だと思うユーザは数多存在する。彼らの声、Tweetが集まれば同じ効果、影響力を発揮 することができることになる。

それにしてもHeather ArmstrongがTweetした時点で12回、先週の5月14日時点でも55回しかTweetしていないWhirlpoolCorpがよく察知したも のだ。ForbesにWhirlpoolのスポークスマンが答えている。
  1. 我々はソーシャルメディアサイ トを継続的にモニタリングしている。
  2. Heather Armstrongの書込みを発見した際、我々は迅速に彼女にコンタクトし、通常手続きを通して問題を解決した。
し かし、モニタリングしていたとしてもリアルタイムにネガティブバズを探知するのは困難だ。最大過去3カ月のフォロワーしか分からないが、今年の2月頃で 850人程度、多分、昨年の8月頃は4~500人程度しかいなかったフォロワーの誰かがHeatherのTweetを受け、WhirlpoolCorpに 「大変なことになるよ」とDMしたのだろう。あるいはHeatherをフォローしていたWhirlpool社内の人間が通報したのかもしれない。

Source:TwitterCounter / WhirlpoolCorp

ソーシャルメディアスペースに参加することと、モニタリングする ことが最低必要条件だと理解している企業・ブランドがおり、そうではないケースもある。また、社員を含むブランドファンからのアドバイスやアラートを受ける体制がある企業・ブランドがあるし、そうではないケースもある。

このネガティブセンチメントを修復するために要する時間、コスト、手間 を計算してみたことがありますか?ブランドファンからの救いの手を見過ごすコスト、影響、被害を計算してみたことがありますか?

2010/05/14

Most Admired Companies 2010

4月末、Forutneの「Most Admired Companies for 2010」にSamsungが2位にランクされたとemailがきた。
Source:Samsung / Email

Read MoreをクリックしてCNNMoney.com/Fortuneのページに行ってみると、15位までのランキングが出ている。日本企業はSonyからSumitomo Electric Industriesまで8社が顔を出しているが、2009年と比べると、まずPanasonicが3位から6位へ、Toshibaは8位から9位へ、Sumitomoが9位から14位へ、Hitachiが10位から13位へ転落している。Sonyは5位から4位へ、Sharpが14位から11位へと順位を挙げているが、9位だったSamsungがごぼう抜きで2位、11位だったLGも7位へ躍進している。

2010年のランキング:
こちらは2009年のランキングだ。
Source:CNN.Money.com / Fortune

日本企業・ブランドは、販売ボリュームでも、そして企業としてのブランド力さえも、韓国企業・ブランドに劣りつつあるようだ。

市場規模が縮減するしかない国内で「井の中の蛙」的に競合していたところで将来は見えてこない。海外の欧米、新興市場で如何に販売し、製品価値を提供し、ブランドパワーを発揮するかが問題だ。その際、日本本社が果たす役割は少なくないし、小さくない。いや、逆に、ソーシャルメディアスペースを使いさえすれば、本社からのグローバルなブランディングが可能だ。

さて、SamsungのようにユーザにEmail登録をしてもらっておかなければ、こんなemailを出すことはできない。まず、Email登録をしてみませんか?

ただし、Email登録をしたユーザが満足する情報・コンテンツを常時送っていなければ登録を抹消されてしまう。コンテンツの制作をお忘れなく。

2010/05/13

Mobile Tour Guide for Visit Japan Campaign

VisitBritainのTwitterアカウントに下のTweetがあった。
Source:Twitter / VisitBritain

上の短縮URLをクリックすると、iTunesにある「London Ride and Stride」へ誘引される。
iPhone Screenshot 1

iPhone Screenshot 2

Source:iTunes / London Ride and Stride

ロンドンのトラファルガー広場からバスやフェリーに乗り、セントポール大聖堂、フリートストリート、ロンドン塔など数多くの観光地を訪れる際、非常に便利なガイドとして使えるiPhone、iPod Touch、多分、iPadにも使えるアプリがダウンロードできる。

さて、Visit Japan Campaignの現状はというと、今年3月までの外客数は累計201万人、前年比55万人、29.4%増と上向いている。が、前年比30%増を達成しても、年間880万人程度で1,000万人の外客誘致目標を達成するにはまだ120万人も足りない。

Source:日本政府観光局(JNTO)

Flickrにバナー広告を出したり、アジア各国のエージェンシーへの働きかけ、インセンティブなど打つ手は打ち、外客誘致に成果が出てきているのかもしれない。しかし、一味もふた味も違うVisit Britainのアプローチのひとつでも参考にすべきだと思う。

参考:Social Media for Visit Japan Campaign (Online Ad 2010/02/12)

2010/05/12

US Twitter Detailed Stats

Edison ResearchとArbitronが、「Twitter Usage In America」というレポートを出している。

主だったところを抜き出してみる。
まず、Twitterの認知;
Twitter利用者;
Twitter利用頻度;
TwitterとFacebookの認知度比較;
Twitterユーザの年代、性別;
Twitterユーザのインデックス;
Twitterユーザの携帯からのSNSアクセス;
TwitterユーザのSNS利用;
Twitterユーザにとってのインターネット;
Source:PR Sarah Evans / Twitter Usage In America: 2010

他にもいろいろと参考になるデータがある。

さて、日本の消防庁も今月中旬をメドに「ツイッター」を活用して災害情報の発信を始めるそうだ。

Source:Yahoo News / 消防庁、ツイッターで災害情報発信へ

ただし、
フォロワーの「つぶやき」(書き込み)に対する返信は原則行わない。平常時は同庁の発表資料などを発信する。
そうだ。

なんともはや!!!!!!!!!??????????

以前、Police 2.0で受け持ち地区を巡回しながら、Twitterし始めたノース・ヨークシャー警察のEd Rogerson巡査を紹介した。あれから5カ月以上たって彼のフォロワーは1,086人に増え、例えば「子供用の靴、サイズ5と9はありませんか?」と訊いて、すぐに「靴をゲットしました。ありがとう」とTweetを返せるまでに住民、ユーザとエンゲージしている。

参考:Police 2.0 (Online Ad 2009/11/26)
Source:Twitter / hotelalpha9

彼はエンゲージしているからこそ、Tweetから価値を提供できている。しかし、エンゲージしない目的でTwitterを始めようと言う消防庁、いや、原口総務大臣は一体、何を考えているのだろう?情報の出し手は消防庁や総務省だけで、ユーザはそこから発信される情報・コンテンツをただ与えられた通りに消費するだけのブタだとでも思っているのだろうか?

鳩山首相のTwitterには57万人以上のフォロワーがいるが、彼が発する情報・コンテンツが57万人に伝わっていると思う人は何人いるだろう?

Source:Twitter / hatoyamayukio
参考:Twitter: hatoyamayukio (Online Ad 2010/01/05)

Twitterを使うには特にマインドセットの切り替えが必要だ。Tweet、フォロー、RTすること、そしてフォロワーとのエンゲージメントを考えずに始めるくらいなら、あるいは自己満足ならやめた方がいい。「私作る人、僕食べる人」といったCMが昔あったが、今は、「僕聞く人」、そして、「僕君と話す人」といったマインドが必要だ。

2010/05/11

Pageviews Plunge with Pay Wall

昨年12月から、Varietyが有料化した当時、月間320万のPVを数えていたが、3月には40%落ちて190万PVにまで減少した。UU(ユニークユーザ)は74.5万人から18%減少し、60.9万人へと落ち込んだそうだ。
http://www.marketingvox.com/wp/wp-content/uploads/2010/04/variety-4-27.jpg

Source:MarketingVox / As 'Variety' Charges for Online Access, Pageviews Plunge

そして、PaidContentによれば、Times OnlineやSun Onlineは、英ABCのトラフィック公査をやめるようだ。

Source:PaidContent / Before The Paywall, Murdoch Stops Disclosing UK News Site Traffic

Murdockの判断にVarietyのPVやUU減少が影響したかどうかは不明だが、有料化すればどちらも落ち込むのは間違いないはずだ。ただ、少なくなったPVやUUであったとしても金を払ってでもサイトにアクセスするユーザに対する露出を行いたいとする広告主はいる。PVやUUが落ち込んだからと言って、すぐに広告売上も右肩下がりに陥るとは考えられない。ただし、半年後、1年後にどうなっているかは神のみぞ知るだ。

一つ言えることは、PVやUUといったKPIだけでサイト価値を謳わなければならない(レガシーマス)メディアサイトは、今後とも拡大するソーシャルネットワークスペースにおける価値はもちえないということだ。彼らが存在しうるのは、ディスプレイ広告のユーザ行動に与える影響をトレースし、あるいは、サイトへアクセスしたユーザの購買をトレース、実証する仕組みを提供できる場合のみだ。

また、下で書いたように
ひとつの宇宙の中に浮かんでいる小島が、宇宙の中でどのようなリレーションズ、コネクションズ、ネットワークを構成し、一部となっているかを示すデータが 必要だ。
参考:Future of Legacy Media Online Site (Online Ad 2010/04/12)

そして、Facebookの「Like」のように自身のリレーションズ、コネクションズ、ネットワークをソーシャルメディアスペースに絡みつかせなければダメだろう。

2010/05/10

Global CTR 2009

先日、EyeblasterからGlobal Benchmarks 2010がリリースされていた。これはDwellという指標を使ってオンライン広告の効果を測定し、全世界、地域、国別の広告効果を出したものだ。

Dwellとは何かと言うと、オンライン広告の総露出impressionに対するアクティブなユーザエンゲージメントを言い、広告に対するマウスオーバー、ビデオイニシエーション、広告拡大イニシエーション、その他ユーザが広告に対して行うイニシエーションを指す。ただし、1秒未満の意図しないDwellは除外されている。すなわち、Dwellは(ディスプレイ広告)キャンペーンのブランディング効果を把握するために開発されたものだ。

基本的にDwellはEyeblasterがカバーしているリッチメディアの効果を測定している。高いDwellの広告は低いDwellと比べ、検索行動を3倍も促進するし、低いDwellであってもコントロールグループと比べれば10%増しの検索行動に結びついているそうだ。

ディスプレイ広告の効果を、Webサイトのコンテンツと競合して、如何にユーザを広告とエンゲージさせるかにかかっているとすると、ビデオ広告はユーザの注意を惹き、高いDwell効果を上げることになる。だから下のようにビデオ広告は、なしと比べて29%アップのDwell効果をあげ、ビデオ広告は、なしと比べて83%アップのDwell時間をあげている。
さて、EyeblasterはタイトルにあげたグローバルなCTRもベンチマーク数値として出している。2009年の一年間にEyeblasterが配信した1,700億impressionを見ると、グローバルなCTRは0.23%。リッチメディアのCTRは0.37%でスタンダードバナーは0.09%となっている。地域別では豪・ニュージーランド、そして米国が大半となる北米のCTRはリッチ、スタティックともに低い。一方、南米、欧、南・東アジアはそれぞれ平均を上回る数値を挙げている。
Eyeblasterは国別に詳細なベンチマークを出している。例えば米国の場合、スタティックCTRは0.07%で、リッチCTRは0.37%だ。エクスパンダブル、フローティング、プッシュダウンごとのインタラクション(エンゲージメント)率、Dwell時間、CTRなどもある。
また、ビデオ再生率、半分再生率、完全再生率などもある。
Source:Eyeblaster / Benchmarks 2010

米国の場合、エレクトロニクスカテゴリのスタティックCTRは0.07%、リッチCTRが0.12%。ビデオ再生率は29.2%と、21カテゴリ中第9位とはかばかしくない。それもそのはずでビデオが約1分もある長尺では、エンゲージメントを促進するよりはユーザの興味を持続させられない結果となっているようだ。

スタティック広告からダイナミック、リッチな広告へ移行しているのは間違いのないところだ。が、それを使いこなせるかどうかは別の問題だ。

なお、24カ国のベンチマークには日本も入っている。ただし、内容はあまり期待しないほうが良い。

2010/05/07

Corporate Social Media Summit -2

先月、「Corporate Social Media Summit」を書いたが、オーガナイザーのUseful Social Mediaからアップデートが来た。

参考:Corporate Social Media Summit (Online Ad 2010/04/15)

それによると、参加登録をした主だった企業の中には以下のようにGeneral Mills、Merck、Air Franceなどに交じり日本企業の米子会社もいるようだ。

15 INITIAL HIGHLIGHTS FROM OUR CURRENT LIST OF ATTENDEES:


Director - Corporate Affairs Halliburton
Director - Corporate Communications Ryder System Inc
Director - Corporate Relations and Media Union Pacific Railroad
Director Digital & Social Media Sears
Director Marketing Dollar General Corporation
Director of Brand Public Relations General Mills
Director of Editorial Services Merck
Director of Strategic and Digital Communications BAE Systems
Director, Direct Sales and Distribution Air France
Director, Marketing Technology Strategy Prudential Insurance
Senior Manager of Corporate Communications The Timberland Company
Senior Manager, Marketing Canon USA
Senior Vice-President, Corporate Affairs and Communications Hertz
Vice-President, International Public Relations Polo Ralph Lauren
Vice-President, Marketing US Bank

注目すべきは彼らの肩書と、そして、もうひとつは所属部署だ。

部長級が名を連ね、コーポレートコミュニケーション、パブリックリレーションズ、戦略デジタルコミュニケーションといった部署が並んでいる。

そんな部署の部長たちが新しい動き、現状、トピックを学ぼうとNYへ向かうことになる。そんなサミットがあることさえも知らず、従来からのコミュニケーションズがどんどん未開の地へ進んでいることも、今、何が変わり、何が起きているかさえ知らないグローバル企業・ブランドを置き去りにして。

少なくとも現地法人から人を出すなり、エージェンシーに人を出してもらうなり、何かすべきだとは思いませんか?

2010/05/06

Johnson & Johnson in Social Media

「Ford: Online Monitoring」で引用したRonAmokに、Johnson & Johnsonのソーシャルメディア化を取上げたホワイトペーパーがある。今年で創業124年目を迎え、11.8万人の社員を抱え、関連企業250社、売上高640億㌦の超巨大企業であるJ & Jがどのようにソーシャルメディアスペースに参加したのかを解説している。

参考:Ford: Online Monitoring (Online Ad 2009/09/17)

世界中に名の知れたビッグブランドにありがちなように、「うちにソーシャルメディアは関係ない、そんなことをする必要はない、やるにしても社内調整が大変でできっこない」と、Johnson & Johnsonは考えなかった。

ただし、1996年にオープンした初めてのWebサイトは、まったく良いところはない。薬の説明書きをWeb化したかのように見出しとクリッカブルがあるだけだ。
その後、インターネットが次第に影響力を増すにつれて、Webサイトのコンテンツも改善されてきたのは当然だ。

マスメディア系Webサイトからの情報・コンテンツだけではなく、一般のユーザも情報・コンテンツの発信・制作を行うようになり、Blogが存在感を増してきた2006年7月、Kilmer Houseという最初のBlogを立ち上げている。これはJ&Jの最初のサイエンスディレクター、F. B. Kilmerの名を冠したBlogで、J&J創業当時の会社、働く人達を取上げて医療、衛生、健康、予防など幅広いトピックを紹介している。FDA(米食品医薬局)が出てくるまでもなく、J&Jが過去から培ってきた、過去に行った、人々の記憶に残っている事柄を分かりやすく説明している。

Blogという新しいメディアチャネルを企業としてどのように利用、活用できるのか、このBlogへのユーザの反応、評価といったものを時間をかけて理解しようというスタンスが見えてくる。
Source:Kilmer House

次に2番目のBlog、JNJ BTWを2007年7月に立ち上げている。こちらはJ&Jが今やっていること、自社に関するニュースへのコメント、公式発表の補足、その他を6人のスタッフが記事を書いているし、寄稿も受け付けているようだ。コンテンツを充実させ、多面的な情報を提供しようとするスタンスが見える。
Source:JNJ BTW

これら二つのBlogから多くのことを学んだのだろう。2008年7月には、YouTubeにチャネルを開設している。
Source:YouTube / Johnson & Johnson health channel

そして2009年3月にはTwitterアカウントが走り始め、
Source:Twitter / JNJComm

2009年4月にはFacebookのグループを立ち上がった。ただし、現在、グループはないようで、Johnson & Johnson + NetworkページとSafe Kidsなどのページがある。
Source:RonAmok / J&J Does New Media (pdf)

このようにJ&Jは、情報・コンテンツをデジタル化し、一般ユーザが集うスペース、ソーシャルメディアに参加し、対話を積み重ねてきている。最先端とは言わないが、標準的で模範的なソーシャルメディア戦略だと言える。いや、J&Jのような大企業、グローバル企業とすれば十分以上の対応だろう。

ただし、J&Jのように、初めてBlogを立ち上げた時点で、今何が起きているかを理解していた企業・ブランドは幸せだ。手探りながらも先進企業から半歩遅れ程度のギャップを意識しながら、トライ&エラーをやれる体制と組織が持て、予算が計上できた。だから、何年か経ってみると社内での意識も経験、実績もそこそこ累積している。2008年、2009年と立て続けに新しいステップを踏み出せているのがその証拠だ。

今、J&Jのように時間をかけ、トライ&エラーでやろうとしてもなかなかそうはいかない。あまりにも開いてしまった欧米企業とのギャップをどうやって埋めようかと検討しても、埋められる部分が少なく、小さくなってしまった競合の背中しか見えない分野ばかりといったケースもある。また、既存の広告、広報、マーケティング、戦略ブランディングといった部署だけでは手を出せない分野が多いことが明らかだ。既存の縦型サイロ組織に横串をささなければならないのだが、その音頭をとる人間にタスクが集中してしまい狙い通りに複数部署のコラボは動かない。猫の手も借りたいほどなのだが、外部支援エージェンシーはあまり頼りにならない。それどころか今まで通りの提案を持ってくるだけといった状況が続く。

そんな時、社内の有志を募るしか方法は残っていない。

今時、どんな企業・ブランドにもソーシャルメディアに詳しい人間が一人や二人、いや数百人、数千人のレベルでいるだろう。しかし、そういったエキスパートが企業・ブランドとしてのソーシャルメディアへの取り組みを他人事(ひとごと)としてとらえている。自分の担当ではない、部署ではない。いろいろな理屈、理由を持ち出してきて、自社がソーシャルメディアの潮流から遅れ、渦に巻き込まれ、海の底に沈んでいくのを黙って見ている。

このエキスパート達に現状を理解してもらい、積極的な参加、協力を募り、Cokeのようなカウンシルを立ち上げるしか、広がるばかりのソーシャルメディア対応ギャップを埋める手立てはない。欧米グローバル企業には、Social Media、Digital、Online、Interactiveという名称のついた部署があり、部長クラスが旗を振っているが、それは今までの既存組織と同様に孤立した組織ではないはずだ。風通しのいい情報・コンテンツの社内共有が前提にあることは明らかだ。

参考:Insights from Coke (Online Ad 2010/04/13)
参考:Corporate Social Media Summit (Online Ad 2010/04/15)