2010/01/29

CES 2010 Attendees

1月13日に、「CES 2010?」として、今年のCES来場者は何人になるのかなといったエントリを書いていたところ、数人、「CES 2010 来場者」といったキーワード検索の後、このBlogにアクセスされていた。

参考:CES 2010? (Online Ad 2010/01/13)

中身のないエントリに失望されたと思う。そこでMultiChannel、Vegas Deluxのデータを紹介する。

それによると、中間発表的な数字だが、来場登録者は12万人を越えたそうだ。昨年は113,085人だったので6%強増えたことになる。新規出展社が330となり、海外からの来場者も1,000以上増えたそうだ。

3DTVが最大の注目を集め、Sony、Samsung、LG、Panasonic、Vizioが3DTV、Blu-rayプレイヤーを発表し、DirecTV、ESPN、Discovery Communicationsが3DTV番組をアナウンスしていた。

Source:MultiChannel / CES 2010: Show Registration Tops 120,000
Source:Vegas Delux / CES 2010 Attracts Over 120,000 Attendees

6%強増えたと言っても、2008年は141,150人、2007年は143,695人だった。また、初めての出展社は330社だそうだが、出展社は昨年の2,700から2,500へ減っている。これが意味するのは、従来から出展してきた企業・ブランドがCESを敬遠したということだ。その穴を埋めるべくCESが手を尽くして330社も新たに発掘してきたということだ。

また、CESのあの手この手は、Taylor Swift(MTVミュージックアワードでのKanye West騒動が思い出される)、Lady Gaga、Brook Shieldsなどセレブ総動員にも見て取れる。とに角、人を呼ぼうとしていた。

来年までに、燃油がべらぼうに安くなり、20年に一度の大発明的な新製品が登場しない限り、次のCESが大成功に終わるかは不明だ。来場者が増えるかどうかはわからない。

出展社が減っているのがその証拠だし、たった4日間で来場者だけに見せたい製品・サービスを展示する形ではもう立ち行かない。セレブにつられてくる来場者はいるだろうが、展示会そのものの在り方が変わらない限り、過去の最高記録は破られないだろう。

特にこれからの展示会ビジネスを取り巻く環境は大きく変わる。展示会、プライベートセミナー、ローカルキャラバンなどがオンデマンドでオンライン化する。このパラダイムシフトに大掛かり、金食い、人出食い、一方的、出しっぱなしで、効果が可視化できず、夜はショータイムだと不夜城に消えるラスベガス展示会パターンがついていけるのだろうか?

最後に、今回のCES関連のマーケティングで最も注目したのは、やはり、SamsungTweetsのリアルタイムで発信・中継したプレスコンファレンスだ。

参考:Samsung Twitter Press Conference (Online Ad 2010/01/08)

2010/01/28

Power of WOM

Industry StatisticsというページがBazaarVoiceにある。

ここは、業界統計、調査情報を集め、Power of Word of Mouth、Consumer Demand for Ratings & Reviews、Marketer Demand for Ratings & Reviews、Consumer Demand for Ask & Answer、Conversion Results、Average Order Value Results、User-generated Content Beyond the Web、Email Campaign Results、Search Engine Optimization Results、Return Rates and Customer Satisfaction、Evolution of Advertising and Media等など、様々な項目を掲示している。

Power of Word of Mouthを見ると2009年のものだけでも10項目以上ある。その中から目についたものを紹介する。(なお、トップに挙げられているのはBazaarVoiceとKeller Fayが2007年に出したものなので除外する)
  • 90%の消費者は知人からの推薦を信頼する。70%は見知らぬユーザが上げるオプションを信頼する。
    Econsultancy、2009年7月
  • 83%のオンラインショッパーは知人との情報共有に興味がある
    Manager Smarter、2009年9月
  • 43.7%の家電製品購買はWOMが影響
    BIG Research、2009年12月
  • 50%は購買する前にソーシャルネットワークで情報を共有した
    (18-24歳は65%)
    eMarketer、2009年10月
  • 10-24%のソーシャルメディアユーザは購買決定に際し、ソーシャルネットワークに意見を求めた
    eMarketer、2009年10月
Source:BazaarVoice / Industry Statistics

以前、WOM(Word of Mouth)をWeb of Mouthと言い換えた。

参考:Susan Boyle Debut Album : Online WOM (Online Ad 2009/08/28)
参考:Listen, Practice and Engage (Online Ad 2009/10/30)

このクモの巣を使ったWOMマーケティングがある。上のようにオンラインユーザのコネクション、リレーション、リコメンデーションが高い効果を上げていることを前提に、Bloggerを使ってソーシャルメディアスペースにシーディングし、ニュートラルをポジティブ、ポジティブから購買意思決定までユーザに影響を及ぼそうとするものだが、FTCの修正ガイドラインにより明確な修正が求められている。

ただし、WOMMAは、FTCガイドラインにWOMMAのガイドラインが何回となく引用され、「スポンサード・コミュニケーションのみがガイドラインの対象となるべき」とされたことを高らかに明示している。本当にそうなるだろうか?

Source:FTC / Final Guidelines
Source:WOMMA / FTC Updates

どうして、企業・ブランドはユーザとの直接対話を忌避するのだろう?それは直接対話を行う人材、組織、予算がないからだ。今までのメディア理解を続ける既存組織がオンラインWOMを使って、効率よく、効果を出そうとし、最終的にBloggerシーディングに行きついてしまう。

しかし、Dellを見ればいい。Starbucksを見ればいい。Twitter、Blog、Facebookアカウントなどからユーザとの直接対話を、すなわち、ブランドのコントロールが効かないスペースにおいて、火の粉、火花どころではなく、炎上しかねない危険を冒しながらも、行っている。

FordのRanger Stationが火に包まれそうになった時、それを鎮火したのはTwitterだ。Blogger ネットワークではない。担当者、Scott Montyが24時間以内に鎮火している。

参考:Ford : Online Monitoring (Online Ad 2009/09/17)

既存組織のままでは、新しい手法、手段の効果は減衰されるだけだ。リスクマネージメントとは、リスクを取らないことではなく、リスクをコントロールしながら最大効果を上げることのはずだが。

2010/01/27

Agency Creative ROI

MarketingExperimentから「Maximize your Agency ROI」というレポートが出ている。サブタイトルは、「How adding science to the creative process revelas a 26% gain」となっている。

EmailのクリエイティブデザインがどれくらいCTRに影響を及ぼすかを調査したレポートだ。

まず、AAA (American Automobile Association)の例がある。下は、30日以内に会員期限の来るメンバーに送られたemailだ。シングルクリックでメンバーシップを延長できる。
次に代理店Aと代理店Bが制作したemailがある。どちらも上と同様に故障した車を背景に、Aは大量テキスト、Bは水平視線上に会員メリットを上げている。どちらも赤の更新ボタンを用意している。もちろん、主要コンテンツはホールドの上にあることは当然だ。

参考:Critical Ad Placement :Above or Below Folds (Online Ad 2008/04/30)
参考:Critical Ad Placement -2 (Online Ad 2008/07/25)
参考:Critical Ad Placement -3 (Online Ad 2009/04/06)
さて、最後に代理店Cが制作したemailがある。こちらは大胆なデザインを取り入れている。赤線枠エリアが通常emailで表示されるエリアだ。普通なら下へスクロールすることになるが、このemailは右へスクロールすることになっている。
さて、コントロール、代理店3社が制作したemailの結果はというと、コントロールが4.18%のCTRに対して、代理店Cのそれは5.25%、コントロール対比25.6%ものアップをたたき出している。
クリエイティブひとつで26%もCTRが向上するわけだ。予算枠内で最大効果を上げるには、こういったA/B/C/Dテストが必要だ。

もうひとつ重要なことがある。

下は家具屋さんのemailの例で、コントロールと代理店A、B、Cが制作したemailだ。
結果として、コントロールemailのCTRが36.70%で最も高い。最低なのは代理店Aの17.68%、コントロール対比51.83%も低い。
この例から学ぶことは、何が最も効果を上げたかを特定することに加え、何が最も効果が低かったかを知ることが重要だということだ。

Source:MarketingExperiment / Email Marketing Strategy

今までのメディアではこんなA/B/C/Dテストも、効果を可視化することもできなかった。こういった土壌があると、テストの実施も、効果に応じてクリエイティブ(エージェンシー)を変更することも、データマイニングも、Email露出モニタリングも検討議題に上がってこない。加えて、このソーシャルメディア時代に即して、ユーザとの対話やコンテンツ共有を前提としたクリエイティブを制作できるエージェンシーもまだ少ないのかもしれない。

しかし、それでも今できることをやらなければ明日はない。

MarketingExperimentのレポートには、Forrester Researchのデータがある。2009年と比べて2014年には、モバイルは約3倍、ソーシャルメディアは約4倍、Emailマーケティングは約1.6倍の予算規模へ延びると予想されている。今まで手をつけてこなかったこれら領域はこれからもっと、もっとリソースと、能力・知識が必要とされるのだから。

2010/01/26

Travel Brands for Haiti

先週、「Donations for Haiti」で、
どんな企業・ブランド自身が献金・寄付しても、また、たとえ医療チームを派遣しても、できることには限りがある。その点、多くの顧客、ユーザを抱える企 業・ブランドは、ハイチの窮状を伝え、献金・寄付を呼び掛けたり、顧客、ユーザがハイチを支援しようという行動を支援することができる。それによって支援 活動そのものの認知を向上し、効果を拡大することができる。
と書いた。

参考:Donations for Haiti (Online Ad 2010/01/21)

その典型的な例としてBrandChaneelが旅行業界を取上げている。



曰く、
  • United Airlinesは、顧客・従業員からの献金・義捐金に加え、援助物資の空輸に協力
  • British Airwaysは、社員ボランティアが援助物資の空輸
  • Sprint Airlinesは、赤十字、UNICEFなどに最低5㌦の寄付をした顧客に5,000マイル提供
  • American Airlinesは、1万ポンドの援助物資を空輸、そして上の通り、Twitterでも14日にハイチへ向かう医師、看護師のチケット無料化を発表
  • Continental Airlinesは、顧客のマイレージを指定団体に寄付することができる
  • Norwegian Cruise Linesは、ハイチへの援助物資積み込みのため貨客船をフロリダに停泊中
Source:BrandChaneel / Travel Brands Are On Board With Haiti

各企業・ブランドともに今できることをやっている。被災地が近いということもあり、関係者の数や報道も日本の比ではない米国だからということもある。しかし、一般の人々が感じ、行動するのと同じように、企業・ブランドはそれそれのビジネスで可能な方策を考え出して支援活動を行い、他の支援活動を支援している。

この輪の中に日本企業・ブランドの姿がないのは非常にさびしい。

特に、彼らの努力、活動が世界中のインターネットユーザの目に触れている現在、可視化されず、記録されず、記憶に残らない支援は意味がない。意味のある支援を行うには今までのやり方、流儀は通用しない。

上の参考で書いたように;
これは、(ソーシャルメディアスペースに存在する)顧客・ユーザの力を借りることでもある。彼らの膨大な力、コネクションを借りることで、最終目的である災害復旧を行うことになる。

こ こにもパラダイムシフトがある。資金提供(広告出稿)だけで、結果(ブランド認知、販促)はなかなか生まれない。資金提供に加えてボトムアップの支援(エ ンゲージメント)がなければ結果はついてこない。このパラダイムシフトを理解するかしないかは、力任せに広告を垂れ流すか、それともブランド体験をユーザ に発信してもらい、共有してもらうかの違いだ。
ということを何度も、何度も言わなければならない。

2010/01/25

Toyota Risk Management

以前、「Toyota Floor Mat Campaign」というエントリを書いた。

BrandChannelの記事を、
400万台以上のリコールを行っているToyota USAのWebサイトには、大量リコールをうかがわせるものはなく、ただ、「NEWS ALERT Important Information on Floor Mat Campaign」とページ左下に、あくまでも目立たなく小さな告知があるだけだ。
また、昔、FordのPinto/Explorerがメカニカルな問題を隠ぺい、軽視、あるいは危険性公表を怠ったために受けたダメージを例に引き、Toyotaはデトロイト、大昔のデトロイトの流儀に危険なほど似ているとまで書いている。
と紹介した。

参考:Toyota Floor Mat Campaign (Online Ad 2009/12/14)

ところが、先週、Toyotaはまず、米国で230万台のリコールを発表、欧州でもリコールの準備をしているという報道があった。

Source:NYTimes.com / Toyota Issues a 2nd Recall
Source:朝日新聞 / トヨタ、米で新たに230万台リコール

以前、12月14日前後では「NEWS ALERT  Important information on Floor Mat Campaign」だったが、
今回、1月23日は、「NEWS ALERT Imporant information On Safety Recall Campaign」となっている。
そこで上の赤セクションをクリックすると、1月21日付の「Toyota Files Voluntary Safety Recall on Select Toyota Division Vehicles for Sticking Accelerator Pedal」というリリースが読める。今回のリコールを(あくまでも当局の強制ではなく)自発的に行うこと、限定された車種だけに適用され、ごく稀にしか起こらないと説明している。

Source:Toyota.com / Toyota Consumer Safety Advisory

ところがJust-Autoによれば、Toyotaのリコール発表は、ABC Newsがプライムタイムで「意図しない加速問題」を番組で取り上げる数時間前に出されたとのことだ。このABC Newsは、「ニュージャージーに住むKevin HaggertyというToyota車オーナーが車のアクセルの電気系統不具合をToyotaのディーラーに見せ、ディーラーはセンサーとアクセルを取り換えた」ことを伝えたらしい。

Source:Just-Auto / US: Toyota recalls 2.3m more cars as media eyes acceleration claims

今まで構造的な不具合はないとしていたToyotaに、エレクトロニクス系統の不具合の可能性があることを認めさせるような番組が報道される数時間前に、やっと、リコールを発表したというのが真相のようだ。

Facebook、Twitterにおける対応も同じだ。リコールが公表され、顧客・ユーザがFacebook、Twitterに書き込みだして、初めててリコールを告知している。その後、殺到している顧客からの問合せ電話回線がつながりにくいための「謝罪」が来ているが、リコール関係で公式Web以上の情報はない。


こう見てくると、まず企業・ブランドの公式Webサイトで顧客対応や危機管理はできないのが自明だ。顔の見えない者同士が建前だけで言いたいこと、聞かせたいこと、見せたいことを並べ立てるだけの公式Webサイトにおいて、わざわざ突っ込みを入れられかねない事柄、リコール情報を大仰に掲示するわけにはいかない。Web担当も法務、広報、財務など社内組織の複数から許可、承認を受けた上で公式Webページを改訂、更新するしかないわけだ。

しかし、ソーシャルメディアスペースにおいて、そんな建前は成立しない。製品・サービスを購買し、利用している既存顧客にCレベルから語れる言葉はない。製品・サービスを開発、検証、販売、保守している担当者の言葉がなければ既存顧客に届く言葉とはならない。対応を受けた顧客がそのコンテンツを他ユーザと共有するだけに、オープン、対等、双方向のメッセージでなければ意味がない。

また、オープンなソーシャルメディアスペースでは、企業・ブランドがアナウンスする前に情報感度の高いユーザは最新情報を複数サイトにあっという間に書き込む。そのユーザの友人やフォロワーは、自分のフォロワーに転送、共有する。全体トレンドの方向性を決めかねないほどのパワーが発揮されるスペースだ。そのスペースで後出しでは、告知効果もしれている。

だからこそ、FacebookやTwitterといったスペースで真摯に顧客・ユーザと直接対応しなければならないはずだが...?

2010/01/22

Requirement of Social Media Expert

MarketingVoxが、ソーシャルメディアの専門家を雇うにあたり必要な8項目を上げていた。

曰く、
  1. ビジネスおよびコミュニケーションの経験。最低3~5年のマーケティング・メディア経験があること
  2. コミュニケーション経歴での実績があること
  3. 第三者が実証でき、計測可能なソーシャルメディアキャンペーン実績があること
  4. ソーシャルメディアと企業顧客間のリレーションシップを理解していること
  5. ソーシャルメディアキャンペーン効果測定に対して即座に回答できること
  6. ROIを提示できること
  7. 明確な手段を提供できること
  8. IMCとの統合ができること
Source:MarketingVox / 8 Tips for Hiring a Social Media Expert

ちょっとBlog、Twitter、Facebook、LinkdeInなどで発信し、そこそこのトラフィックがあり、リンク、友人、フォローが多く、最低限のSEO、SEM、IT、Web、ソーシャルツールを理解しており、アマチュアにちょっと毛の生えた程度の実績さえあればコンサルタントを名乗れる時期があった。年間10万㌦といったプロポーザルを簡単に出す輩も多かったようだ。そんな時代はもう昔だ。

上のような最低項目もクリアできないのであればソーシャルメディアの専門家を名乗る資格はない。

ただし、上はあまりにレガシーマーケティングの匂いがする。

そういったレガシーボトムラインに付け加えるとすると
  1. レガシーマーケティングとソーシャルメディアマーケティングの違いを理解し、
  2. ボトムアップ、オープン、対等、双方向コミュニケーションを理解した上で、
  3. 3年、5年スパンの戦略構築を提案できること、
  4. 企業組織改革に踏み込めること、
  5. 人材育成ができること、
などが必要になる。

自戒の意味も込めて。

2010/01/21

Donations for Haiti

DealerScopeによると、Apple、Panasonic、Best Buy、Walmart、RadioShackなど家電関連企業が、甚大な地震被害を受けたハイチに対して募金を呼び掛け、企業としても寄付を行っている。

Appleは、Apple Storeにリンクを設け、米赤十字への寄付を呼び掛けている。(ただし、このページはApple Storeのどこを探しても見つけられない)
Panasonicは、1,000万円の寄付を公表し、Best Buyは20万㌦を赤十字などに寄付し、従業員にも寄付を呼び掛けている。Walmartも赤十字に50万㌦を寄付し、RadioShackもLance Armstrongと組んで25万㌦を目標に寄付を募る予定だ。

Source:DealerScope / CE Industry Helps Haiti

Starbucksも100万㌦を米赤十字に寄付し、Twitterで赤十字への寄付、献金を呼び掛けていた。

ビデオも上げている。


どんな企業・ブランド自身が献金・寄付しても、また、たとえ医療チームを派遣しても、できることには限りがある。その点、多くの顧客、ユーザを抱える企業・ブランドは、ハイチの窮状を伝え、献金・寄付を呼び掛けたり、顧客、ユーザがハイチを支援しようという行動を支援することができる。それによって支援活動そのものの認知を向上し、効果を拡大することができる。

災害に当たり献金・寄付金を提供することを「一方的な情報提供」とすれば、顧客・ユーザの支援活動を支援することは「双方向、オープン、対等な対話」ということになる。災害の復興支援をしようとする顧客・ユーザ、ビジネスパートナー、現地自治体が必要とする資金や物資をヒアリングし、提供する。あるいは彼らの活動を支援できる他の企業や、必要資材・人材を提供できる企業を募り、活動報告を肩代わりすることもできる。それがなければ長期的な復旧は行えない。

これは、(ソーシャルメディアスペースに存在する)顧客・ユーザの力を借りることでもある。彼らの膨大な力、コネクションを借りることで、最終目的である災害復旧を行うことになる。

ここにもパラダイムシフトがある。資金提供(広告出稿)だけで、結果(ブランド認知、販促)はなかなか生まれない。資金提供に加えてボトムアップの支援(エンゲージメント)がなければ結果はついてこない。このパラダイムシフトを理解するかしないかは、力任せに広告を垂れ流すか、それともブランド体験をユーザに発信してもらい、共有してもらうかの違いだ。

2010/01/20

B2C/B2B Twitter Effectiveness

先日、MarketingProfsのオンラインセミナー、Naked Truthがあった。

中にB2C、B2BのTwitter利用に関するデータがあったので紹介する。

B2CとしてのTwitterを利用し、効果ありと判断したのは、
  1. リアルタイムのPR・広報トラブルをTwitteでモニター 46.9%
  2. ブランドに否定的Tweetするユーザにコンタクト 44.0%
  3. リンククリックを促進する挑発的な書き込み 40.6% 
そして、B2Bとしては以下が挙げられている。
  1. リアルタイムのPR・広報トラブルをTwitteでモニター 40.7%
  2. Twitterのみを使ったイベント勧誘 37.4%
  3. ブランドに否定的Tweetするユーザにコンタクト 36.7%
Source:MarketingProfs / Nake Truth (有料コンテンツ)

B2Cであれ、B2Bであれ、ブランドの評価・評判・リスクマネージメントにTwitterは欠かせないようだ。当然、Twitterアカウントを持ち、メッセージ、コンテンツを発信し、RTしたり、ハッシュタグを使ったTweet、引用したTweetなどをモニターしているのは言わずもがなで、いずれであれマーケターの40%以上がTwitterでブランドをモニターしている。

そして、露出を最大化するためにTweetする時間帯を選択するといった細かいところまで手を入れている。

ただし、まだTwitterユーザとのエンゲージメントは初歩段階だ。Twitterユーザとのコンタクトから、「ブランドに対する好意的なTweetをさせるために何をするか」ではなく、Twitterをゲートウェイとしてブランド体験をしてもらう仕組みが必要だ。その上でTwitterユーザに自発的なTweetをしてもらう仕組みだ。今までどおりのフローでTwitterを使っても効果は先が知れている。

2010/01/19

Green and Cause Marketing

Environment LeaderとMedia Buyer Plannerが、「Green Marketing: What Works; What Doesn't」というレポートを出している。

環境やCSR、事業の持続可能性など様々な旗がふられる中、Green Marketingというセグメントというか、くくり方にも目が向けられ始めている。

すでにその効果は通常マーケティングよりも高いとするマーケターが33%もいる。環境やグリーンなどに関心のある顧客、消費者に対する錦の御旗として十分機能していると判断している。
だからこそ、そして、他企業の動きを横目に見ながら後れてはならないと考えるマーケターも多いようで、82%のマーケターはグリーン予算を増やすようだ。当然、競合他社の動きをモニタリングしているわけだし、マスやソーシャルメディアの報道・記事・調査・統計、そしてBlog、TwitterやFacebookなどのコンテンツ、フローを見ていることがマーケターの最低条件になっているからだ。
グリーンマーケティングを実行するメディアとしてトップに来るのは当然、インターネットだ。先週の「Cause Marketing 2009」で見たように、「ソーシャルメディアをアクティブに利用している79%の米国人は、企業・ブランド、非営利団体もソーシャルメディアを活用して活動資金調達や社会貢献・慈善活動の認知を向上させるべきたと考えている」のだから。関心、興味のある人々、ユーザの力を借りない手はないのだから。

参考:Cause Marketing 2009 (Online Ad 2010/01/15)

日本でもグリーンマーケティングが離陸し始めた状況だろうか。だが、インターネットで実施されているグリーンマーケティングを目にしたことがない。どなたかご存知の方がいらっしゃればご一報いただきたい。
レポートのエグゼクティブサマリには9つのポイントが挙げられている。7番目のポイントとして、「大企業ほど顧客よりも従業員をターゲティングしている」とある。メディア予算25万㌦規模の企業の80%は顧客をターゲットとし、50%は従業員をターゲットとしている。が、メディア予算が年間1,000万㌦以上の企業の70%は顧客をターゲットとしているが、従業員をターゲットとするのはそれ以上だそうだ。

そして、8番目に「マーケターやマネージメントはマーケターがコントロールしていると考えているが、現場はそうではない」というポイントがある。マーケターの50%、PR担当者の57%、マネージメントの50%はマーケター・担当者など企業側がマーケティングの舵を取っていると考えているようだ。しかし、営業は41%、現場は21%しかそうとは考えていない。

Source: MediaBuyerPlanner / Green Marketing

このレポートで多分、カバーしていないのは、製品・サービスでいくらグリーンを謳ったところで、それは今までのマーケティングのひとつでしかないということだ。

興味や関心のあるユーザ、あるいはすでにグリーンを実行している多くのユーザの力を借りて大きなうねりを盛り上げてゆく形でなければ、そして、企業・ブランドのコントロールをある程度抑えながら、あるいはユーザ・賛同者の支援に注力する参加形態を取らなければ、グリーンであろうが、CSRであろうが、社会貢献であろうが企業・ブランドが支出する予算以上の結果、効果を上げることはできないということだ。

社会貢献として記憶に残り、各種レポートに取り上げられる各種事業、運動、キャンペーンがある。1983年、Amexが行った自由の女神修復事業。1990年から始まった「Susan G Komen for the Cure」を支援するYoplaitの「Save Lids to Save Lives」。2004年から始まったDoveの「Real Beauty」。それらはすべて記憶に残り、形に残り、運動として継続し、米国だけではなく日本を含めた世界各国に広まっているものだ。

こういったマーケティングこそ、グローバルなブランドキャンペーンに相応しい。それをやらなければグローバルなCorporate Citizenとは認められないし、WebサイトにCommunityといったセクションを設けるにも憚られるし、ブランド価値が認められない時代になってきている。少なくともそう感じる。

2010/01/18

Haiti Earthquake with Twitter and Facebook

ハイチの地震はインフラ、通信網が切断され、どれほどの被害なのかまだ分からない。

UNICEFはYouTubeにビデオをアップし、ハイチ支援を呼び掛けている。



Google.comでHaitiと検索すると、すでに1億件以上の結果が表示され、検索結果ページの中段には「Latest results for haiti」と示されるTwitterのリアルタイム結果が表示されている。それこそ1秒に1本新しいTweetが書き込まれているようで、メディア系や、個人Twitterが最新情報を伝えるとともに、寄付を呼び掛けている。

Twitterだけではなく、FacebookでHaitiと検索すると5つほどがハイチ支援グループとして立ち上がっており、もっとも大きなグループは「Every person that joins we will donate $1 to help people in Haiti!」だ。このグループに参加すると1人につき1㌦寄付をすると言っている。15日の午前9時時点で16万人、11時時点で30万人以上が参加している。

ただし、その母体というか、アドミがいない。どこがどうやって1㌦をどこへ寄付するのか明示されていない。だから、Wallの書き込みにはそれを心配して、「そんなことより国際赤十字に寄付しよう」というものもある。
ということで上の「Every...」というグループは本物ではないと思われる。

しかし、それ以外のグループは、家族・親戚・友人・知人の安否を尋ねる書き込みや、現状報告、救助要請などリアルな人々の書き込みや差し伸べられる支援の手が伝えられている。

先週、「Cause Marketing 2009」を書いたが、米国人がソーシャルメディアを活用して支援する社会貢献活動の中に、「Disaster Relief」があり8番目の17%となっていた。

参考:Cause Marketing 2009 (Online Ad 2010/01/15)

Twitterであれ、Facebookであれ、それを読む、見る我々、遠く離れた国の人々、ユーザに災害の惨状が露出し、できることを提供、支援するヒューマンパワーを結集してくれる。そして、そのパワーは国境を越え、人種や言語を越えて、重層してゆく。

ソーシャルメディアスペースが力を発揮するのはマーケティングだけではない。ヒューマンリレーションと、コネクション、そしてパワーを活用するにはソーシャルメディアしかない。

2010/01/15

Cause Marketing 2009

「ソーシャルメディアをアクティブに利用している79%の米国人は、企業・ブランド、非営利団体もソーシャルメディアを活用して活動資金調達や社会貢献・慈善活動の認知を向上させるべきたと考えている」とConeのレポートが伝えている。

それによると、ニューメディア(emailを含む対話を行うメディアとしているので、ここでは以降、ソーシャルメディアとする)は、
  • 85% 新しい社会貢献を知る機会を与えてくれる
  • 82% 自分の住む地域以外の社会貢献や団体を支援する機会を与えてくれる
  • 80% 自分が貢献する社会貢献を支援する新しい方法を提供してくれる
という判断をしている。これほどの評価を既存メディアが受けられるのだろうか?
そして、ソーシャルメディアを使って
  • 36% 社会貢献をアドボケートした
  • 34% 社会貢献を学んだ
  • 34% 社会貢献を学んだことによって日常生活・行動を変えた
米国人が多い。

社会貢献の意義はよく理解してはいるが、自分が貢献する段になると二の足を踏むのは誰も同じだ。しかし、ソーシャルメディアが日常生活に浸透し、オンラインのみの友人やコネクションが確立しつつある今日、自分がイニシャティブを簡単にとることができるメディアとしてソーシャルメディアがある。
最後に米国人がソーシャルメディアを活用して支援する社会貢献は何かと言うと、動物愛護、健康や疾病、教育などが上位を占めるが、4番目(22%)に環境、5番目(21%)に人権・平等権が入っている。いずれもローカルイシューとも言えるし、グローバルシシュートも言える問題だ。
Source:Cone Research / 2009 Cone Consumer New Media Study

この調査は米国人を対象としてCone Researchが行ったものだが、日本、中国、ドイツ、イギリス、アルゼンチン、南アフリカでどんな差があるのだろう?どの国に住む人間であろうと、インターネットにアクセスでき、ソーシャルメディアを活用するユーザにどんな違いがあるのだろう?彼らが求める社会貢献活動に違いなどあるのだろうか?

資本側がコントロールするメディアではなく、無料でアクセス、活用できるソーシャルメディアを手にした各国のユーザは自分のコンテンツを発信し始めている。Greenpeaceなどの非営利団体、NGOも例外ではないし、各国の団体が提携して世界のユーザに対する啓発を始めている。それは、オープンで、対等、双方向のメッセージをやり取りする対話からパワーが発現しているからだ。そのパワーは個人ユーザのソーシャルコネクションを経由して津波のように広がってゆく。ボトムアップのウェーブは資本側メディアを揺さぶり続けている。

ここから発信されるメッセージを制限する国境などない。そして、社会貢献活動であろうと、ブランドイメージであろうと、製品に対する苦情であろうと、ソーシャルメディアを使うユーザが発信するコンテンツに違いなどない。また、英語で発信されたメッセージは世界中のユーザに共有されることになる。

参考:Lessons from Lenovo (Online Ad 2010/01/12)

それをモニタリングすることもなく、存在すら気付かず、対応することもなく、対話から疎外され、ブランド価値が崩壊することに気付かない企業・ブランドに存在意義は...???

2010/01/14

Suicide Ad?

たまには少し軽めの話題をひとつ。

まず下のビデオを見ていただこう。


これはVWのPoloのCFで、人種偏見だとされた分、バイラルになっていたビデオだ。

これと同じようにちょっとあぶないビデオが出ている。


自殺しようという男がマフラーからチュープを車内に引き入れて...。

ビデオに登場するAudiはトレードマークを侵害しているとしてYouTubeに上がっていたビデオを削除するようYouTubeに要請した。そのためこのビデオが見られるのはAdlandだけだ。Adlandはビデオ制作とはかかわりなく、単純にビデオをホスティングしているだけだ。また、Adlandによれば、ビデオはemailで送られてきたということだ。


また、AdlandはAudiが「SPEC Ad(ビデオに登場するブランドが金を出したり、制作を承認したものではない広告)であることを」明確に明示するよう依頼してきたことを明らかにしている。


ビデオの出所を隠し、YouTubeにもっともらしく抗議し、唯一、ホスティングしているAdlandにはわざわざAudiとは全く関係ないことを明示させるなど、バイラル化するためにあの手、この手を使っている。このビデオは全欧州やオーストラリアにまで飛び火しているようだが、一体、バイラル化してどんな価値があるのか、どんな価値を期待しているのか分からない。

バイラル化することだけを目的として、ブランドが制作費を負担しているとしたら、クリエイティブエージェンシーの売上増加に寄与しただけだと思うが、いかがでしょうか?

2010/01/13

CES 2010?

昨年12月8日のVentureBeatによれば、1月7日から10日の日曜日まで開催されるCES (International Consumer Electronics Show) の予想入場者数は11万人だそうだ。

例年なら併用するSands Expoは使わず、LA Convention Centerのみで開催されるらしい。

入場者数がピークだったのは2006年の152,203人。2009年の入場者数は113,085人、2008年は141,150人だったので28,065人(前年比19.9%)減少したわけだ。

主催者CESのCEO、Gary Shapiroによれば、「通常のハイテク展示会は20~30%も縮小しているが、CESはそれほどではない」そうだ。だが、昨年約20%も入場者数が減少し、今年の入場者数も昨年並みを予想しているCESもどっこいどっこいだろう。

Source:VentureBeat / CES expected to be a smaller trade show this year, but still full of innovation
Source:VentureBeat / What to watch for at the Consumer Electronics Show

昨年は、以下のような閑散とした風景だったが、さて、今年はどうなったのだろうか?














参考:CES & Internet (Online Ad 2009/01/22)

2010/01/12

Lessons from Lenovo

The ConsumeristにLenovoのカスタマーサービスを取上げたエントリ、「Lenovo Ignores Customer, Waits For Gift To Reach Wrong Destination」がある。

12月4日、父親のためにLenovoのThinkPadをオンラインで購入した消費者は、まず自分が住むシカゴにThinkPadを送らせ、セットアップ後、19日にデトロイトに住む父親に届けようとしていた。父親へのXmasプレゼントが台無しになってしまったLenovoとのやり取りの一部始終を読んでいただきたい。

December 7th: The shipping date changes to the 12th. I start to get nervous.

December 9th: The shipping date changes to the 22nd. I send M. an email asking why there is a slip in the date and seeing if there is anything to be done. No response.

December 11th: I call M. and leave a message. No response

December 14th: I call M. again and leave a message. She calls me back and we agree that the best course of action is to have it shipped to a different address. I give her this address, and she says that I'll get a couple of emails over the next few days saying that they have to cancel the order and reissue it to change the address. This seems overly complicated, but hey, if it gets me what I need I'll go with it.

December 16th: I get a shipping confirmation (Woh! Ahead of schedule). Unfortunately, it's to the wrong address. So, I call M. No response.

December 17th: Call to M. No response. Package is spotted in Japan.

December 18th: Call to M. No response. Package is spotted in Alaska

I decide to change my plans and come back on Monday in foolish hopes of getting the computer.

December 21st: Call to M. Package is in Louisville. I call UPS to see if I can have it "predirected", they say I have to wait until they make a delivery attempt or the sender redirects. M. calls back to say that she's put in the request for redirection. I go back to Michigan.

December 22nd: Package is in Louisville getting cleared through customs.

December 23rd: Package is on its way to Chicago and ready for delivery.

December 24th: My neighbor emails me the info notice number so that I can redirect it. I don't have the option on line, so I call. They tell me that they can't redirect it because the sender won't allow it.

Merry Christmas. My dad got a box with a tracking number in it. (Also, Buy.com canceled the laptop stand that I tried ordering for him, so he had nothing under the tree.)

December 26th: I call UPS and they tell me that I need to either freeze it at the warehouse or they'll ship it back.

December 28th: I call M. again. No response. I call another number and wait on hold for 45 minutes and am told by a rep and supervisor that the redirect request was made on the 24th and it takes 2 business days to get processed, so look for the change on the 29th.

December 29th: No change in UPS. No response from M.

December 30th: See December 29th.

So, what do I do here? The laptop is 60 minutes away from my house, and 5 hours away from where it needs to be.”

Source:The Consumerist / Lenovo Ignores Customer, Waits For Gift To Reach Wrong Destination

Consumer Reportsを配信する非営利団体Cosumer Union(寄付などによる年間予算規模2億㌦、職員数600名以上)の子会社、Consumer Media LLCが運営するConsumerist.comに、ここまでボロボロのカスタマーサービスの現状を晒されたLenovoに残されているのは...?

考えるべきは;
  • 担当者にとって対応する消費者は1人だが、その背後には英語がわかる数億のインターネットユーザがいること
  • その数億のインターネットユーザは英語圏だけではなく世界200カ国以上に存在すること
  • 担当者の消費者対応はクローズなコミュニケーションではないこと
  • 企業・ブランドの消費者対応はオープンで累積されてゆくこと
  • 累積された対応・コミュニケーションは世界中から検索されること
  • そして、リアルタイムの対応・コミュニケーションも世界中から検索されること
  • もはや企業・ブランドがコントロールできる情報・コンテンツなど存在しないこと
  • 情報・コンテンツをコントロールしているのは消費者・ユーザであること

  • これを理解、把握しない企業・ブランドは蚊帳の外ではなく、オンラインに存在できないこと
  • 営々と築いてきたブランド評価、価値はオンラインにないこと
  • オンラインに存在しない企業・ブランドに価値はないこと

  • Cレベルの理解を促進しない限り、ボトムアップする時間は残されていないこと
  • Lenovoから学ばない限り、2010年以降、企業・ブランドに未来はないこと
  • ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ (○に思うこと、考えることを挿入してください)

2010/01/08

Samsung Twitter Press Conference

米現地時間1月6日、CESにおけるSamsungのプレスコンファレンスがあった。

目を惹いたのはTwitterを使い、リアルタイムでコンファレンスの内容を発信していたことだ。
SamsungTweetsをフォローしている筆者のTwitterアカウントには約1時間で60数個のTweetが入ってきた。
Source:SamsungTweets

それぞれのTweetには、やれ3D、Note PC、NetBook、デジカメ、Plasma/LED/LCD TV、eBook等など新製品やGoogle、DreamWorksなどとの提携話など盛りだくさんのメッセージがあった。

また、FacebookやCNETなどのコンテンツへのリンクや、#SamsungCESを使ったユーザコンテンツを合わせたアグリゲートも行えるようにしていた。

さて、今回のコンファレンスはTwitterを使ったリアルタイムのプレスコンファレンスとしては一応の意義があった。しかし、これは、レガシーメディアからソーシャルメディアのTwitterへメディアチャネルを変えただけ、今までどおりの一方通行メッセージの配信と若干のコンテンツへのリンク、コンテンツのアグリゲートを行っただけだ。

1、2か所はリアルタイムレスポンスも行われていたようだが、重要なのは、メッセージ配信とユーザへのレスポンスがパラでリアルタイムで行われ、会話を醸成、発展させ、次のステップにつなげるシーディングを行うことだ。

なぜなら、アグリゲートされているユーザには数百、数千のフォロワーを抱えるTwitterユーザがいるわけだ。そのフォロワーのフォロワーを考えると、ソーシャルメディアチャネルにつながっているユーザのソーシャルコネクションを活用して、初めてソーシャルメディアリレーションズとなるからだ。

さて、もう、ここにはPRエージェンシーの存在感は薄い。広告エージェンシーの影はない。

2010/01/07

B2B 2010 Outlook

250億㌦以上の売上げの企業が5%も占めるB2B企業を対象にしたBtoB Onlineの「2010 Outlook」が出ている。
  • 2009年のマーケティング予算をカットしたのは58%
  • 予算がカットされた分野は
    • 展示会 63%(のマーケターがカット)
    • プリント 63%(同)
    • DM 40%(同)
  • 予算を増やした分野は
    • オンライン 80%(同)
  • 2010年の予算
    • 増やす 39%
    • 減らす 13%
    • 同じ 47%
  • 2010年のマーケティング予算投下メディアは?
    これは当然、73%のマーケターがオンラインメディア予算を増やすと回答している。

  • 2009年オンライン予算のシェアは;
    1-9%が最も多く24%、10-19%が19%、20-29%が18%だ。この3セグメントを合計すると61%にもなる。

  • 2010年のオンライン予算は?
    2009年と比べると、19%以下の予算シェアだったセグメントが30-39%、40-49%セグメントへ移っているようだ。

  • 2010年のオンラインマーケティング戦術?
    マーケターの71%が増やすと回答してトップなのはWebサイト、次に68%のEmail、60%でソーシャルメディア(マーケティング)が来ている。

  • すでに54%のマーケターはソーシャルメディアマーケティングを実施
  • ソーシャルメディアマーケティングの目的トップは60%で「Thought Leadership」(実践的先駆者としてブランドバリューを向上する)
  • 2010年の海外マーケティング予算は?
    海外進出していないため海外予算のないところが40%だが、増やすと回答したのが合計31%いる。30%以上増やすのが3%、20%台が5%、10%台が8%もいる。

Source:BtoB Online / 2010 Outlook survey shows marketing budgets to grow

いつまでも展示会やDMでも、バナー広告やEmailでもない。Webcastsやビデオが60%を超えているのがいい例だ。B2Bだからこそ、個人的リレーションやコネクションがB2Cよりも重要で価値がある。それを培うのはソーシャルメディアスペースに他ならないし、そのコネクションは同じ国、同じ言語に限らない。

オンラインおよびソーシャルメディアマーケティング、その実績、今年の戦略、戦術、予算規模等など、比較するのも憚れるほど彼我の差は歴然、途方もなく大きい。

2010/01/06

Twitter: News Delivery Platform

Social Media Examinerが、年末に「Top5 Social Media Articles from 2009」をアップしていた。

昨年、アップした記事の中から人気の高い5本をリストアップしている。
  1. 必読のソーシャルメディアマーケティング調査5本
    1. eMarketer 2010年米成人の7人に1人(2,600万人)が毎月、Twitterを利用
    2. Nielsen 米ユーザはオンライン時間の17%をソーシャルメディアサイトで消費
    3. Center for Media Research 2010年マーケターの50%以上はソーシャルメディアを活用
    4. McKinsey 企業の51%はBlogが最も利用価値のあるソーシャルメディアツールと判断
    5. Unisfair 2010年マーケターの75%はソーシャルメディア利用を増やす
  2. Facebookファンを増やす5つの方策
  3. PDFにRetweetボタンをつける方法
  4. 必読の新しいソーシャルメディア調査3本
    1. Deloitte 多くの企業にとりソーシャルメディアエンゲージメントは大きなチャレンジ
    2. Nielsen オンラインユーザの18%はソーシャルメディアで検索
    3. BIA/Kelsey 中小企業のソーシャルメディア統合は遅延
  5. ソーシャルメディアでバイラル化する見出しの作り方
Source:Social Media Examiner / Top5 Social Media Articles from 2009

中で目を惹いたのは3番目の「PDFにRetweetボタンをつける方法」だ。

PDFは企業・ブランドが外部に出す、発信するドキュメント形式としてよく使われている。そのPDFファイルをTwitterのチャネルに載せようというわけだ。

それは、下図にあるようにニュース配信プラットフォームとしてTwitterがトップにきていることからもうなずける。ニュース、すなわちコンテンツが最も配信、流通、消費、共有、再露出されているプラットフォームはTwitterとなっている。あっと言う間にFacebookも追い越し、最大シェアを獲得している。

このプラットフォームにコンテンツを流さなければ、配信も、流通・消費もしてくれないわけだ。レガシーメディアのWebサイト、オンラインPRチャネルにコンテンツを掲載したり、配信しただけではもう立ち行かないのが明らかだ。
なお、いつもなら上図のソースを明示するのだが、ソースを確認できない。ファイルを探しに探したのだが見つからない。ということで、大変、申し訳ありませんが、もし、上図のソースを御存じの方、ご一報ください。

2010/01/05

Twitter: hatoyamayukio

1日からTwitterのhatoyamayukio、Blogの鳩cafeアカウントが動き出している。
Source:Twitter / hatoyamayukio
Source:鳩cafe

1億人近い日本のオンラインユーザに対してゲートウェイを開いたとも言えるし、単に今までのメディアコミュニケーションをTwitterやBlogでやるだけになるのかもしれない。Susan Boyleをコントロールする資本側がやっているように...。

参考:Death of Susan Boyle (Online Ad 2010/01/04)

さて、英Brown首相というか、英首相官邸もTwitterアカウントを持ち、2008年3月26日から1,652Tweetsを重ね、約169万人のfollowersを抱え、約49万人をfollowしている。
Source:Twitter / DowningStreet

英首相(官邸)はそれだけではなく、Flickr、YouTube、Facebookなどもやっているので、それらを総合したレピュテーションを、YomegoのSMR (Social Media Reputation)は42.59としている。この42.59は、英トーリー党キャメロン党首の62.49、仏サルコジ大統領の66.15、米オバマ大統領の77.79とは大きな差がある。
Source:The Blog Herald /British PM’s social media reputation flagging according to new audit
Source:Yomego / Why reputation is everything?

約169万人のFollowerに発信されたメッセージは各様にポジティブにも、ネガティブにも咀嚼され、消費、共有される。それがTwitterだけではなく、Facebook、Blog、YouTubeなどのソーシャルメディアスペースに再露出されてゆく。

その結果、ある意味で英首相はぼろくそにこき下ろされている。ただし、Brightonでの演説後、59.81にまで盛り返してはいる。が、Susan Boyleのパターンと大差はない。

Tweetし始めたばかりの「hatoyamayukio」アカウントはこの荒波にもまれてゆく。

RTも、DMもなく、対話のつながりもなく、ただ、一方通行メッセージを配信するチャネルとしてオープンしただけなら多くの企業・ブランドと同じだ。そして、世界のユーザとコミュニケーションチャネルを開くべき日本の首相として、英語Tweetなしに済ますのだとしたらグローバル戦略もないことになる。

2010/01/04

Death of Susan Boyle

昨年、12月31日、NHKの紅白歌合戦に出場し、「I dreamed a dream」を歌ったSusan Boyleは、「Britains got talent」予選会での歌唱からはほど遠く、憑き物が落ちたかのようにのっぺりとした歌声を響かせただけだった。

FacebookにあるSusan Boyleのファンページは、177万のファンがWallに書き込めず、資本側のコンテンツを消費するだけのコントロールされたスペースになっている。
SusanBoyleMusicには30カ国のインタフェースが用意され、ギャラリー、フォーラムなど一部ではユーザコメント、コンテンツがアップされてはいるが、Susanとのやり取りを行うスペースではない。
SusanBoyleMusicからリンクされ、ユーザコメントを受けているBebo、MySpace、YouTubeにしても、すべて売らんかなのスペースだし、Twitterは、スーパーの安売り広告チラシ的なメッセージのオンパレードだ。

Source:Facebook / SusanBoyle
Source:SusanBoyleMusic.com

ユーザがイニシアティブをとったソーシャルメディアスペースではコンテンツが消費、共有され、Madonnaの84%程度の露出を獲得しているのは昨年、「Social Media Power」でみた。

参考:Social Media Power (Online Ad 2009/12/29)

Susan Boyleが誕生したのは資本側コンテンツであり、コントロールする、できるTVで、その後、資本側がターゲットとする消費者をソーシャルメディアスペー スでコントロールしようとしている。しかし、資本側がコントロールするスペースにおいてコンテンツが消費、共有されているとは見られない。

また、Susan Boyleという唯一無二のコンテンツを資本側が毀損している。オープンで対等、双方向の対話でのみ培われるエンゲージメントがなく、枠をはめたコンテンツ提供を続けることで、コンテンツ自体のクオリティが失われている。

企業・ブランド側は、今まで使ってきたメディアをソーシャルメディアに変更し、そのスペースにおいて情報発信しようとしている。が、レガシーメディアで長年行われてきた同じメッセージを同じ形で配信しても、期待する効果、結果からはほど遠くなるばかりだ。加えて、ユーザの手にゆだねるべきコンテンツの制作、配信、消費、共有、再露出を自ら行うことで、共有されるべきコンテンツを損ない、価値を減じている。

固定観念を払しょくし、転換しなければ何も産まれないどころか、自損、自壊、自死してしまうのはSusan Boyleだけではない。

なお、追っかけや、住居侵入などリアルなリスクが彼女を追い詰め始めている今こそ、資本側が心を砕くべきは、売れるときに売れるだけ売るといった話ではないはずだ。「角を矯めて牛を殺す」過ちが砕きかねないガラスでできたSusanの心は、いつまでもつのだろうか?

Source:DailyRecord / Susan Boyle gets panic alarm after finding intruders in her back garden
参考:Susan Boyle - Final (2009/06/01)