2010/06/30

B2B goes Social

一般的にB2Bマーケターのソーシャルメディア対応は遅れているという認識を覆すようなレポートがWhite Horseから出ている。

と、言っても、それはある程度差が埋まってきたというレベルのものだ。例えば、フルタイムのソーシャルメディア担当者数がある。B2Cは54%が担当者を置いているが、B2Bは40%だ。ただし、企業規模からすると小さいと見られるB2B企業の40%が担当者をおいていることはB2C企業の54%に決して引けはとらない。
そして、兼任のマーケターを置いているかという点でB2BはB2Cを上回るといってもいい。B2Bの71%は兼任マーケターを2人以上置いているが、B2Cは62%だ。B2Bの場合、製品ごとや顧客ごとのマーケティングチームがあり、レガシーもやれば、オンラインもやるし、そしてソーシャルメディアもやるマーケターが多いということだ。この点で、B2Cのソーシャルメディア対応よりも一歩先を行っているかもしれない。
次にソーシャルメディアへの参加を見ると、外部フォーラムとPodcastを除きB2Cの参加が上回っていることは事実だ。また、一部のソーシャルメディア、例えば、モニタリング、UGC、バイラル、モバイルなどの差は大きい。モニタリングを除けば、これらはB2B属性とあまりそぐわないから致し方のないところだろう。が、全般を通して見ると、その差は狭まってきていると見て間違いない。
ただし、B2Bにおけるソーシャルメディア化を阻む障害が存在するのは事実だ。特に、「ビジネス適用の不適正」、「既存マーケティング優先」が大きく立ちはだかっている。
Source:White Horse / New Survey

最後のグラフには11項目がソーシャルメディアマーケティング遂行の障害として挙げられている。B2BがB2Cを上回って障害だと挙げられたのは5項目。逆にB2CがB2Bを上回って障害だと挙げられたのは6項目になっている。項目ごとのB2C/B2Bギャップはあるが、項目全体としてみるとB2CよりもB2Bのほうが理解が進み、承認される可能性が高まっていると見てもいいのだろうか?

残念なことに、この調査はLinkedInとか、Twitterとか、個別ソーシャルメディアへの参加、導入、活用に関してデータを開示していない。特に、B2BにおけるLinkedIn活用データを開示してくれれば、上の仮定から「?」が取れて、「見てもいい」と断言できたはずなのだが...、もったいない。

2010/06/29

Outsourcing for Social Media

MarketingSherpaのChart of the Dayに、「マーケティング機能のアウトソーシング」があった。

それこそ、PRからソーシャルメディアまで各マーケティング項目で、どれくらい「実際にアウトソースしているか、予定しているか、今は検討していない」という3つに分類している。

その全てでアウトソースされており、現状アウトソース率の高い上位は31%でPR、29%でSEO、23%でEmailが来ている。

これから予定しているマーケティング上位には、16%でSEO、15%でソーシャルメディアが来ている。
Source:MarketingSherpa / Outsourceing for Key Marketing Functions

現状のアウトソース率よりも、これから検討しているアウトソース項目が重要だろう。SEOとソーシャルメディアという項目は、社内リソースのスキル、必要とされるクオリティ、ROI、拡張性、専門性などを考えるとアウトソースするに越したことはないのかもしれない。

ただし、ソーシャルメディアと言っても広い。MarketingSherpaはPR 2.0を指して、PRのソーシャルメディア対応をアウトソースする可能性を見ているようだ。ソーシャルメディアによって、「企業が語る企業自身」ではなく、「消費者・顧客、インフルエンサー・アドボケーターが語る企業」のほうが重きを成してきた。その時代に、会話に参加しなければ、情報・コンテンツを共有してもらわなければ、話にならないわけだ。参加したり、会話するために必要なスキルやリソースに欠ける、特に中堅、及び大企業がPRサービスをアウトソースする可能性をあげている。

「見る、聞く」、「トレーニング」、「各種情報収集」、「競合比較・分析」、「効果測定」などはまだよしとしても、「会話する、エンゲージする」ことまでもアウトソースに含まれているのだろうか?もし、そうだとすると、それこそ、もっともソーシャルメディアユーザや、PR 2.0からは遠くなってしまう。担当部署だけが、あるいは担当者だけがスキルを獲得するのではなく、全社的なパラダイムシフトの取り組みをした方が、スキルの蓄積やROI的にも、コスト的にも最適とは考えないのだろうか?

どうも、一筋縄では行かない縦割りサイロ組織の逆襲はまだまだ続きそうだ。

2010/06/28

Email + Social Media -2

GetResponseが抱える19,149ユーザ(SMBが中心)が発信した5億通のemailをベースに、Emailマーケティングとソーシャルメディアの統合を調査したレポートが出ている。

以前のEmail+Social Mediaに関してはこちら。
参考:Email + Social Media (Online Ad 2010/03/29)

それによると、まず、EmailニュースレターにTwitterリンクを入れているのは18.9%、ソーシャルメディアの共有ボタンをつけているのは13.5%。まだまだソーシャルメディア機能を装備しているemailは少ない。
SMBが発信するソーシャルメディアリンクを含んだEmailから、ソーシャルメディアリンクごとのEmail数を見ると、LinkedInがトップで5.77回、Twitterが4.9回。後は3回台でMySpace、Facebook、Diggとなっている。やはり、LinkedInが強い。ビジネスネットワークとして、その訴求力は猛追するTwitterを凌ぐほどだ。
ただし、ソーシャルメディアリンクを含んで送信された全emailに含まれるツールごとに見ると、TwitterとFacebookの出現率が突出している。
当然、Emailに含むソーシャルメディアリンクはひとつだけとは限らない。2つ以上装備する例が40%もある。
どうしてかと言うと、当然、開封したEmailにソーシャルメディアリンクがついていれば、受信ユーザの個人コネクション、リレーションズ、ネットワークに共有してくれるからだ。平均するとCTRが30%アップするそうだ。

そして、CTRをソーシャルメディアリンク数別に見ると、3つ以上のリンクがあるemailの場合、そのCTRは11.2%に達している。リンクのないemailのCTRは7.2%。56%も違うことになる。
最後に、特定ソーシャルメディアネットワークで共有されたemailのCTRを見ると、Twitterで共有されたemailのCTRは10.2%、Facebookで共有された場合は9.1%となっている。
Source:GetResponse
Source:MarketingVox / Social Sharing Adds 30% to Email CTR

今時、ソーシャルメディアだけやっているのは愚の骨頂のようだ。他マーケティングと統合して本格的なIMCを実践する時に入ってきている。一時的なブームに踊らされてTwitterにネコも杓子もというステージが過ぎ、それをどうやってパラダイムシフトのコンテキスト内で統合してゆくかを検討する時期に入ったということだろう。

ただし、それでなくてもグローバルなオンラインマーケティングが欠如している企業・ブランドにとって見ると、Twitterブームを乗り越えるというか、根底を理解しない限り、IMCなど夢のまた夢なのかもしれない。

2010/06/25

2010 Green Brands

Cohn & Wolfe、Esty Environment Partners、Landor、Penn Schoen Berlandが、豪、ブラジル、中国、仏、独、インド、英、米の8カ国、9,022人 を調査したGreen Brands、消費者の製品および企業ブランドイメージの結果が出ている。

さて、どの国でも消費者は、グリーンよりも経済に関心を寄せている。が、インドとブラジルは違う。両国共にグリーンへの関心が50%を超えている。
しかし、各国ともに60%以上の消費者は、製品購買の段になると、グリーンが「とても重要」、「ある程度重要」になると回答している。先進国よりも、これからの各国にその傾向が強い。
ところが「グリーン」が錦の御旗になるわけではない。消費者が考える企業のトッププライオリティは、「企業が価値を提供するか」だし、「信に足るのか」だ。「環境意識が高いか」は4番目でしかない。
だが、消費者の少なくとも30%、特に中国、インド、そしてブラジルの消費者は70%以上が、来年、グリーン製品をもっと購買しようと予定している。
各国ごとのグリーンランキングを見ると、当然、ドメスティックブランドが各国で強いのだが、他国でランキング上位に顔を出すブランドもいる。まず、IKEAがそうだし、Nokia、Dove、MSなどがそうだ。日本ブランドは、TOYOTAが豪でトップに、そしてフランスの10位に顔を出している。しかし、IT・エレクトロニクスメーカーで顔を出しているブランドはない。ところが、インドでLGが7位に顔を出している。
スライドはこちらへ。
Source:Cohn & Wolfe / 2010 ImagePower Green Brands Survey

したたかな各国の消費者にグリーンで訴求するのは一筋縄ではいかないことは明らかだ。製品・サービスから価値を提供し、それに加えコミュニケーションメッセージに信頼がなければならない。そして、その当然至極のベースラインにグリーンが来る。

そのグローバルランキングに日本ブランドはToyotaしか入っていない。一方、LGがインドで7位に入っている。日本のグローバルなエレクトロニクスブランドは1社もランクインしていない。

価値がある製品・サービスを提供することは日本ブランドの最も得意とする点だが、各国の消費者に刺さる、響くコミュニケーションメッセージを送り、それを信頼してもらう、共有してもらえていないようだ。この調査対象国という、現在、そしてこれからの消費を先導する国々で、コミュニケーションメッセージが共有されていない。これらの国々は一カ国だけで孤立して存在しているわけではない。様々なチャネルを通して、各国でメッセージが共有されている。

そのコミュニケーションメッセージが露出、消費、共有されるスペースは既存レガシーマスメディアなのか、それともソーシャルメディアスペースがボリュームを膨らませているのか。また、そのコミュニケーションメッセージをテコ、バネにして、エンゲージメントを生成、加速するのか。そういった判断と必要な組織を準備しない限り、来年のグリーンランキングにも、再来年も、その先も、日本のグローバルブランドがランクインする可能性は少ない。

2010/06/24

Social Media in Germany

ドイツのZucker Kommunikationというところから、TVスポットを走らせているブランドのFacebookでの活動に関する調査レポートが出ている。レポートそのものは5月の初旬に出ており、それを月末に知ったのでZucker Kommunicationに英語版をなんとかなりませんかとお願いしておいたところ、ようやく先週、プレスリリースとプレゼン資料を送っていただいた。どうやらメールした担当者がちょっと早い夏休みをとられていたようだ。

「なんと親切な人たちばかりなのでしょう。ドイツの人たちは」と、いつも思うのだが、例えば、世界の果てから日本の本社に問合せをした場合、同じような対応が期待できるのだろうかと考えてしまう。それも日本語文書を英語に翻訳した上で送ってくれるかと...。

さて、まずドイツのTVとインターネット事情を示してくれるものがある。73%の消費者は少なくとも週に一度はTVとインターネットを同時に利用している。また、49%はTVをつけながらSNSを利用している。もちろん、これには、iChange、iPhone、iPadは含まれていない。
そして、TVスポットを打ち、Facebookで活動しているブランドを調査した平均を出している。ブランドには平均3,578人のファンがおり、1週間に114人増えている。ブランドから週に3本ポストやコメントがあり、それに対して93人が「Likes」とし、52人がコメントし、8人が新しい書込みをしている。インタラクション率としては4.3%となっている。

また、ブランドの三分の一は2010年に入ってからFacebookページを開設したばかり。三分の二は企業Webでリンクを出していて、五分の三はホームページにリンクしている。また四分の一はFacebookでの共有を提供しているそうだ。
これを見ると、TVで露出しているブランドはソーシャルメディアスペースにも参加していることはしているが、それがFacebookまで含んでいるケースは少なく、そのFacebookでの実績もまだまだ米国企業との差は大きいようだ。

ただし、Facebookに参加することは単なるリーチ獲得・拡張ではなく、企業・ブランドごとに何らかの戦略を持って参加しているわけだ。そこら辺を詳しく見てみると4つの特徴的な戦略が導き出せるとしている。それが次のスライドだ。

戦略なしのパッシブ、プッシュ戦略のセンダー、プル戦略のホスト、そして会話戦略のフレンドブランドに分類している。
  1. パッシブブランド
    調査対象ブランドの八分の一。
    ユーザがブランドファンになるためのチャネルとしてテンポラリに開設。
  2. センダーブランド
    調査対象ブランドの二分の一。
    Facebookを情報発信チャネルとして定期的に利用中。
  3. ホストブランド
    調査対象ブランドの八分の一。
    Facebookウォールなどをユーザに開放し、書込みやファンページとのやり取りを促進中。
  4. フレンドブランド
    調査対象ブランドの四分の一。
    ファンやユーザと会話し、質問し、ユーザの声を聞こうと活用中。
そして、それぞれの戦略をもったブランドのインタラクション率の伸び、ファンの増加数・率の伸びなど詳しく見ている。

最後に4点を挙げてまとめている。
  1. 巨大TVブランドもさほど後れてはいない
  2. やり取りを活性化するためにブランドは行動すべき
  3. ソーシャル化でユーザチャネルを開設するだけではなく
  4. 目的、戦略が重要
Source:Zucker Kommunication / Press Release
Source:Zucker Kommunication / Presentation
(注:いつもなら直URLを掲載するのだが、今回はメール添付データなので、Box.netにアップしたリンクを掲載している)

さて、このレポートには26のブランドが比較されている。BMWが最も多い2.2万人以上のファンを抱え、もっとも少ない173人のファンを抱えているのはKiKだ。レポートでは「巨大TVブランドもさほど後れていない」とは言うが、BMWにしても米企業と比べれば大きく立ち遅れている。

ドイツブランドが求められている積極的な参加、活動は、日本ブランドに求められているものと同じだ。

しかし、Volkswagenはちょっと違う。(Volkswagenはレポートに含まれていない)

6月12日にFacebookに開設したページは、世界中のターゲットにブランド体験を提供するため、「公式言語は英語」だと宣言している。そして、2011年モデルのPolo GTIキャンペーンをFacebookのみでやるようだ。

Source:AutoEvolution / 2011 VW Polo GTI Breaks Cover on Facebook

GAPもFacebookのみのキャンペーンをやっていたことがある。しかし、それは国内向けだった。ところが、ソーシャルメディア対応が遅れていると見られるドイツのブランドであっても、先進ブランドはGAPの上を行く戦略を実行してくる。そして、その実績、成果が将来、共有されてくる。それは何も自動車メーカーだけではなく、エレクトロニクスメーカー、B2Bの巨大ブランドも学んでくることは確実だ。それもドイツだけに限った話ではない。

もう、おいてけぼりを喰らうのはひょっとすると日本ブランドだけになるのでは...?

2010/06/23

Mobile Search Exploding

BusinessInsiderから、グローバルなWeb検索実績とスマートフォンの検索実績を比較するグラフが出ていた。
Source:BusienssInsider / Mobile Search Is Exploding

BusinessInsiderが伝えるRBC Capitalによれば、モバイル検索はこれからの3年間に4倍になるようだ。ただし、その間、PC検索も伸びることは伸びるので、モバイルに喰われるこ とはないようだ。

そして、広告費という面では、モバイルは今後、20~30億㌦規模に増えると予想されている。

ま、モバイル検索に対応するためモバイル検索広告もしなければという話ではなく、本当にユビキタスなモバイルデバイスが、いよいよ離陸するという話だ。これにロケーションアプリやSNS、そしてTwitterなどが絡んでくる。

On the Moveの世界中のユーザにコネクトできるデバイスを欧米企業・ブランドが、次のソーシャルメディアチャネルとして活用してくるのは間違いのないところで、それは一国、一地域といった地理的制限、垣根を超えることになる。それを自覚したマーケティングをどの企業・ブランドが最初に始めるだろう?

それが、日本企業・ブランドではないことだけは確かだ。

2010/06/22

Social Media at Work

UBM TechWebが「Social Media At Work」というWebinarを開催していた。

それによると、職場での仕事目的のメディア利用時間をメディア別に見ると、B2B Webサイトへのアクセス、B2B雑誌、Eメールニュースレターに次ぎ、4番目にSNSが来ている。ビジネスWebサイト、新聞、ビジネス誌などよりもSNSが仕事に利用されている。そして、IT専門家の40%は、これからの12カ月間でSNS利用時間を増やすと答えている。
どんなSNSへアクセスしているかと言うと、自社公式Blogは当然100%だが、その次に仕事目的で来るのはLinkedInだ。続いてTwitter、YouTube、Facebookと来ている。仕事と個人目的を合計すればTwitterがトップでYouTubeが二位で続いている。
なぜIT専門家がSNSを使っているかと言うと、同僚などとのつながりを、新製品・サービス・技術を知るため、SNSが技術・情報・アドバイスを入手する価値のあるスペースだと認識していたり、購買情報を仕入れたり、新しい企業・ブランドについて知るために活用している。
これほど、B2B業界・関係者やIT専門家が活用しているSNSなのだが、マーケティングとのギャップが指摘されている。すなわち、企業・ブランドのマーケターが評価しているそれぞれのソーシャルメディアスペースと、IT購買決定権者の評価が分かれている。

IT購買決定権者は、企業公式Blog、LinkedIn、Twitterに重きを置いているが、マーケターが力を入れているのはFacebook、Twitterであり、LinkedInはようやく三番目に顔を出している。
最後にソーシャルメディアを活用してB2B向けITマーケティングを行うためのアドバイスが6つ挙げられている。
Source:UBM TechWeb / Social Media At Work

IT購買決定権者とマーケターのソーシャルメディアスペース評価の違い、ギャップは非常に面白い。マーケターは人気、ブーム、注目を集めるFacebook、Twitter、LinkedInの順番になるが、IT購買決定権者は企業公式BlogおよびLinkedInが群を抜いている。

これは企業や役職者・社員が、ソーシャルメディアで共有されるコンテンツを発信し、共有されているかという判断だろう。また、それはオープン、対等、双方向のコミュニケーションをしているかという判断だろうし、タイムリーに質の高いコンテンツを継続的に制作、発信しているかということにもなる。

さて、最後に上げたすべてのアドバイスは、B2Bであれ、B2Cであれ同じことだ。ただし、どちらにしてもまず、1番目と2番目のアドバイスを継続実行し、特に2番目は必ず獲得しなければ企業として何も始められない。ここがネックになるのかしら...。

2010/06/21

Japanese Brand Endangered

先週金曜日、Ascii総合研究所とWDEのセミナー「企業Twitterは誰が使うべきか」において、「欧米企業のソーシャルメディア化がもたらす日本ブランドの危機」というテーマで話をさせてもらいました。

2006年10月、ANA総会において「パワーは消費者が握っている。彼らは考えられる全ての意味で我々のブランドを所有し、ブランドコンテンツ制作にも参加し始めている」と語たり、企業が支配してきたマスメディアにソーシャルメディアが追いつき、追い越すさまを理解したCEOがいるP&Gにしても、2009年3月に「デジタルビジネス戦略チーム」が、マーケティング役員向けにクラッシュコースを開催している。トップがパラダイムシフトを理解していたとしても、実際にマーケティングを実行する事業部トップを揺り動かし、マインドセットを切り替えさせるのは容易ではない。トップ企業であっても3年もかかっているし、また、それをマインドセットが切り替えられない担当事業部、部署が主催することも非常に困難なのだ。

それはそうだろう。今まで巨額の広報・広告・マーケティング予算を握ってきた既存組織が、訳の分からないとしか理解できないオンライン、それも「オープンだとか、対等だとか、エンゲージメントだとか」といったバズワードを口に出し、ブームに浮かれているとしか見えない社内の人間、社外のエージェンシーの声に耳を傾けると言うことは自分の存在を危うくすることになる。予算を別組織、別キャンペーンに横取りされてしまうことになる。組織内での自分の存在や声、知見が役に立たなくなるような新しいことを社内に啓発することはあり得ない。

だから、P&Gは「デジタルビジネス戦略チーム」 がクラッシュコースを開催したし、FordのScott Monty、PepsiのBonin Boughは外部のエージェンシーからヘッドハントされてパラダイムシフト、IMCのイニシアティブをとっている。それこそマスメディア・エージェンシーに取りつかれ、アゴアシ接待を受けているような社内組織のドンの首を挿げ替えなければ将来はないのだ。それさえも理解していない企業・ブランドは多い。

さて、6月12日にVolkswagen InternationalはFacebookにファンページを開設した。これは2011 Polo GTIキャンペーンの核を成すもので唯一のものだ。すなわち、Facebookファンページだけで2011年モデルのキャンペーンをやるそうだ。そして、このファンページの言語は英語だ。Volkswagenのブランド体験を全世界のユーザと共有するため、「公式言語は英語」だと宣言している。

Volkswagenがどこまでパラダイムシフトを理解しているかは不明だ。しかし、少なくとも他マスメディアを使わずにFacebook一本に絞ってPolo GTIキャンペーンをやろうとしているのはGAPのケースから学習している。Vitamin Waterからも学習している。今、どこに顧客が集い、ブランド体験、情報・コンテンツを消費、共有、再拡散してくれているかは理解している。そして、Starbucks、Adidasの戦略も加味してFacebookをブランドポータルとして全世界のユーザに英語でコミュニケーション、エンゲージしようとしている。ここからも学習している。

一方、パラダイムシフトを理解しない日本のグローバル企業・ブランドが、従来通りの縦割りサイロ組織から苔むしたメガフォンマーケティングをソーシャルメディア化しても、ツール主導のマーケティングを行ったとしても、パラダイムシフトを把握し、オープン、対等、双方向のコミュニケーション、エンゲージメントを行い始めた欧米企業との間に広がり、深まり、離れてゆくブランド体験ギャップは埋めようもない。

製品・サービスの購買者があれこれとつぶやき、称賛し、苦情を言いたてている今、彼らに刺さらないマーケティングをやるしかない日本企業・ブランドと、プロファイル・アップデート・ビデオコミュニケーション・つぶやき・個人検索・RSSフィード・自動タグ機能などFacebook、MySpace、Twitterが備える機能を取り込んだ企業内コラボレーションプラットフォーム、Cisco Quadのベータテストを今秋にも開始するCiscoとの差は途方もない。

社内の縦割りサイロ組織を越えるコラボレーションと、70を数える部署横断のチーム制、それこそ営業リーダーが開発チームを率いるCiscoが、そのプラットフォームをシステム化して販売しようとしている。それを導入してくる企業・ブランドが否応もなく、瓦解する縦割り組織から解き放たれてオープン、対等、双方向のコラボレーション、コミュニケーションを行い、顧客・ユーザとエンゲージする時、もし、日本のグローバル企業・ブランドが今まで通りのコミュニケーションを続けるとすると、そのブランド価値は奈落の底に転落するしか道はない。

可能性を見出すとするとそれはマインドセットを転換させ、パラダイムシフトを理解させるクラッシュコース開催だろう。あるいは、Webビジター調査を導入し、SiemensやPhilipsのように全世界40カ国、あるいは32カ国の自社Webサイトへアクセスするユーザにコンテンツを評価してもらうとともに、どんな情報・コンテンツを希望するのか、どんなフォーマット、チャネルで発信し、どういったスペースでどのようなエンゲージメント体制を敷けばいいのか聞くことだ。また、バズモニタリングを行い、何が語られ、何が共有され、何が批判されているのかを知ることだ。といって、数の話でも、グラフの話でも、限界線を越えたらアラートを発信するといった話ではない。バズのコンテンツ、影響する範囲・会話への参加者・参加度・可能性などからその価値を判断し、ブランドへの影響を想像することだ。

クラッシュコース開催、Webビジター調査、バズモニタリングなしに、通常マーケティング手法をソーシャルメディア化したところで、Cisco Quadが提供するコラボレーション、それが否応なく開くパラダイムシフトを想像できない限り、日本ブランドに将来はない。

と、考えるが、みなさんはどうでしょう?
ご意見をお待ちします。

2010/06/18

Learning from Customers

CES 2010においてリアルタイムでプレスコンファレンスを中継した@SamsungTweetsが下のようなTweetsをしていた。

参考:Samsung Twitter Press Conference (Online Ad 2010/01/08)

そしてSamsungTweetsをフォローしている何人からか回答があり、次のようなTweetsを返している。Source:SamsungTweets

パラダイムシフトを理解し、ユーザから学ぼうと言う姿勢があり、その企業・ブランドにエンゲージするユーザがいる。そして、そのエンゲージメントが世界中のユーザに露出している。

TwelpforceでTwitterマーケティングをリードしていると見られるBestBuyに、別段、Twitter戦略はなかったことをご存知ですか?戦略からスタートしたのではなく、Facebookマーケティングで失敗した経験から顧客ニーズに即して社内リソースをソーシャル化してきたことをご存知ですか?

そこらへんは、今日のセミナーでお話ししようと思います。

参考:Twelpforce of Best Buy (Online Ad 2009/12/15)
参考:Speaking at Ascii Seminar on Friday in Tokyo (Online Ad 2010/06/14)

2010/06/17

Digital Morning with Email

ExactTargetとCoTweetから、Digital Morningというレポートが出ている。

年代別に、Email購読、Facebookのブランドファン、Twitterのブランドフォロワーになっている率を出している。図にはないが、平均Email購読率は93%だ。Facebookのブランドファンになっているのは38%、Twitterのブランドフォロワーになっているのは平均すると5%ということになる。

17歳以下を除き、18歳以上のEmail購読率は95%前後。Facebookのファン率は18-24歳が最も高く54%だが、65歳以上でも11%ある。そして、Twitterフォロワー率は最も高くても18-24歳の9%だ。
そして、朝一番にすることは、58%がemailを開き、20%が検索するか・ポータルへアクセス、11%がFacebookへ行っている。ここにはTwitterは顔を出してこない。
Source:ExactTarget / Digital Morning

猫も杓子もTwitterに浮かれているようなブームになっているが、他のコミュニケーションツールと比べるとまだまだその根は浅そうだ。

ただし、FacebookファンとTwitterフォロワーを合わせると43%のオンラインユーザがいる。Emailを購読する93%と合わせてタッチポイントの重層化を図り、ブランド体験を共有してもらうことが重要だ。

どう考えても、ツール戦略ではなく、IMC戦略を構築しなければ、一過性のブームに踊らされ、人気のなくなった競技場に捨てられ、クシャクシャになったパンフレットを拾い集めることになる。

2010/06/16

Tell Dell to honor commitments

Nestleへのアクションが成功裏に終了したと思ったら、今度の標的はDellのようだ。

下はGreenpeaceから5月末に届いたemailで、「2006年にDellは有害化学物質を製品から2009年までに除去すると宣言したにもかかわらず、2010年の6月になろうかという現在でもPVCプラスティック、臭素系難燃剤(BFRs)がまだ使われている。他メーカーはすでにクリアしているがDellはまだだ。CEOのMichael Dellに約束を守るようメールしよう」とある。
tell CEO Michael Dell to honor his commitments」をクリックすると、Dell本社に垂れ幕をかけるGreepeaceの活動家の写真をフィーチャーし、CEOにemailを送るためのページへ飛ばされる。
その模様はTwitterでも発信されていた。
Source:Greenpeace / Toxics Action at Dell HQ Texas
Source:Twitter / Greenpeace

さて、Greenpeaceには、Cool IT Leaderboardというランキングがある。世界のトップIT企業に対してITをベースにして提供する様々な排出削減策のソリューション、IT企業自体のフットプリント、そしてCEOや企業自体によるアドボカシーなどを得点化している。

その最新版version3には世界のIT企業15社が取上げられており、日本企業はFujitsu、Panasonic、Sharp、Sony、そしてToshibaが入っている。最高得点はCiscoの62点で、36点で5位に入ったFujitsuを除き、他の日本企業の得点は低い。
Source:Greenpeace / Cool IT Leaderboard v3 (pdf)

あとはもう想像力の世界だ。

自社本社ビルに大きな横断幕を垂らされたり、5万人を越えるフォロワーを抱えるTwitterアカウントでつぶやかれたり、CEOに世界中からemailが飛んできたり、YouTubeのチャネルやFacebookのファンページを占拠されたり、BlogやForumで書込み露出が急増したり、世界各地で抗議行動を起こされたりと、いろんなことが想像できる。

そうそう、もうひとつある。最近、Greenpeaceのサイトは更新され、ソーシャルメディア対応が強化された。まるで、キャンペーンのオンライン化、ソーシャルメディア化を中心にすると宣言しているかのように。

2010/06/15

Social Media in China

3億8400万人のインターネットユーザがいる中国のソーシャルメディアのレポート、Social Media in China 2010がTNSから出ている。

中国ユーザの51%はソーシャルメディアスペースに参加し、最も頻繁に利用されているソーシャルメディアプラットフォームはForum/BBSだ。60%台前半のそれを50%強のBlog、50%弱のビデオ共有サイトが追っている。
そして、
  • 86% ソーシャルメディアスペースでブランドに関するネガティブコメントに
  • 90% ソーシャルメディアスペースでブランドに関するポジティブコメントに
出くわしたことがあるそうだ。

ネガティブの原因はというと、とんでもないサービス(81%)、ブランド不満足(78%)がトップ2だ。ちょっと気になるのは、ひどいCSRが47%になっている。
ポジティブの原因は、ブランドに満足(87%)、おまけや懸賞(56%)があるが、「友人のお勧め」が43%となっている。
そして、企業・ブランドがソーシャルメディアに参加する評価を聞いている。もっとアピールする(34%)、ある程度アピールする(43%)を合わせて77%が歓迎している。
Source:TNS / Social Media in China

中国も、欧米諸国とまったく違いがない。ソーシャルメディアスペースのユーザは自由闊達にコミュニケーションを育み、情報やコンテンツを共有している。そして、そのスペースにブランドが参加することを歓迎している。

もうリンクが消滅してしまったが、2006年3月の人民網(日本語版)には、
英語専攻者と非専攻者をあわせて約3億人が英語を学習している。そのうち、小学校から大学までの学習者は1億人を越え、数年で英語を母国語とする国家の人口合計を越えると見込まれる。
また、2008年6月17日には、
昨年、中国では100万人以上がIETLSを受験。世界で最も人気のある英語資格試験となった。
そして、2009年4月13日には、
英国王室言語学会首席会員のGrahame T. Bilbow氏は、中国での「英語ブーム」について、「中国語を学ぶ人が世界中で増えているのに、中国の人々の英語学習熱は衰えていない。私は多くの中国 の若者と接してきたが、彼らの英会話レベルは驚くほど高い」と語る。専門家の中には、「世界中で3千万の外国人が中国語を学んでいる一方で、3億の中国人 が英語をかじっている。英語を話す中国人の数が英語母語者の数を上回る日はすぐそこに迫っている」と言いきる人までいる。
という報道があった。

Source:人民網 / 中国人英語学習者は英語母国語者数を越えるか

中国には様々なアクセス制限、障害があるが、日本人よりけた違いの語学能力を発揮すれば、最新情報を発信する海外、米国のトップサイトへアクセスし、情報・コンテンツを何の苦もなく理解し、それをForumやBlogなどで国内に輸入、翻訳することができる。

ソーシャルメディアに慣れ親しんだ中国ユーザが、英語ソーシャルメディアスペースに参加することは、またひとつ、国単位や販売地域単位での広報、広告、マーケティング、ブランディングに頭痛の種を蒔くことになる。国外から持ち込んだ情報・コンテンツの方が最新であり、もっとも人気が高く、もっとも多くのユーザ達に共有されるのは間違いないのだから。

グローバルなブランディングには、英語が達者で、けた違いに多い中国ユーザも対象とすべきなのは明らかだ。

2010/06/14

Speaking at Ascii Seminar on Friday in Tokyo

今週末、Ascii総研とWeb Directions East主催のセミナー、「企業Twitterは誰が使うべきか」に参加させてもらうことになりました。
Source:アスキー総合研究所 / セミナー 企業Twitterは誰が使うべきか

セミナータイトルからは幾分というか、大きく外れるかもしれないが、「パラダイムシフトを理解する欧米企業が進めるソーシャルメディアを縫合したIMC(統合マーケティングコミュニケーションズ)が世界のユーザに露出、共有されることで日本ブランドの価値が下落する。なんとかしなければ...」という話を考えています。
海外向け広報、広告、マーケティングご担当の方に聞いていただければと思います。

2010/06/11

Online Ad Market in Europe

先週、IAB Europeから欧州におけるオンライン広告の市場規模データが出ていた。

西欧、東欧に加え、初めてロシア、ブルガリア、スイス、スロバキアなど合計23カ国のデータだ。それによると、2009年の対前年伸び率は4.5%だ。2008年が20%、2007年が40%というとてつもない伸びに比べれば伸び悩んだという状況だ。しかし、同時期の米国オンライン広告市場規模が163億ユーロと比べ、147億ユーロということであと一歩まで近付いている。

広告費を分類すると、やはり検索が強い。
adex1.png
カテゴリごとの広告費伸び率は以下の通り。
(なお、合計の伸び率が4.9%となっている。上に挙げた4.5%と相違しているのはなぜだろう?)
AdEx2.png
ディスプレイ広告は、英仏などのオンライン広告成熟国で前年を下回っている。仏で6%減、英で5%減、そして、スウェーデンでも5%減だ。

ディスプレイ広告だけではなくオンライン広告全体で見ると、英は前年比4.6%増、仏は1.7%増、独は5.2%増、蘭は1.9%増、西は7.7%、伊は6.5%増だそうだ。この6カ国で全体の76%の市場規模となっている。

そして、全広告費に占めるオンライン広告の比率は、英で30%、北欧諸国で20%~25%、仏および独で18%~19%とのことだ。

Source:IAB Europe / Europe's Online Ad Market Continue to Grow Despite Recession

もうそろそろ、IABも広告だけではなく、ソーシャルメディアマーケティング全体としての予算を調査してくれないかしら?あるいは担当者数とか、部署長のタイトルとか?

広告関連だけをカバーしても、もうほんの一部にしかならないことはIAB自体が分かっていると思うのだが...?

2010/06/10

Policy and Guideline of Social Media

ソーシャルメディアに関する企業ポリシーを簡単に作成してくれるツールを「Social Media Policy Tool」で紹介した。

参考:Social Media Policy Tool (Online Ad 2010/03/15)

その最後に
広告やマスマーケティングからピアリレーションズ、コネクション、ネットワークへといったパラダイムシフトが進行する中、広告やマーケティングのみをソー シャルメディア化させても効果は薄くなるばかりだ。企業そのもの、企業を構成する社員そのものがソーシャルメディア化しなければ取り残される。
と書いた。

「企業そのもの、企業を構成する社員そのものがソーシャルメディア化しなければ取り残される」のはなぜかというと、
  1. 企業が社員をコントロールしている限り個々の社員が持つ能力を十分には発揮させることができないからだ。個々の知見が消費、共有され、再露出することはないからだ。個々のエンゲージメントなしに、レガシーマスメディアを使った一方通行コミュニケーションと同様に、上位下達のストラクチャーからは何も生まれない。既存の戦略、戦術を手先で変えるだけで今のソーシャルメディアスペースには訴求しないからだ。
  2. また、社員自身がソーシャルメディアを理解し、参加し、慣れ親しんでいない限り、ポリシーやガイドラインを策定しても情報・コンテンツを発信することはできないからだ。そもそも、コンテンツを制作することさえできないからだ。
最適な事例としてIBMがある。

IBMには全世界で40万人の社員がいるが、公式企業BlogやTwitterアカウントはない。しかし、社内には10万人が活用している17,000のBlogがあり、SocialBlueには5.3万人が参加し、社員がつぶやく数千のTwitterアカウントがある。また、外部Blogも数千の規模、LinkedInに登録しているのは約20万人等などとなっている。
IBMに公式企業BlogやTwitterアカウントはない。そうした企業総体としてではなく、IBM社員全員の多様なソーシャルメディア参加を行っている。社員に自覚と責任をもたせ、外部パートナーとのコラボレーションへと拡張している。そこから上にあるような結果を導き出している。

そのIBMはまだ他社が社員のインターネットへのアクセスを制限していた80年代末だろうか、あるいは90年代始めから、積極的にインターネットを活用するよう促していた。以来、そのベースをもとに蓄積してきた多様な素地があるからこそ、ポリシーやガイドラインも生きる。ソーシャルメディアスペースで縦横無尽にコミュニケートし、エンゲージすることもできる。

Source:Social Media Examiner / How IBM Uses Social Media to Spur Employee Innovation

しかし、「出る杭は打たれる」方式の会社組織に、あるいは「ソーシャルメディアスペース」に社内からアクセスが制限されている会社組織に「ポリシーやガイドライン」だけあったところでどうなるのかということだ。

2010/06/09

Nonprofit-Corporate Partnership

先週、Coneのレポート、Cone Shared Responsibility Studyを取上げたばかりだが、もうひとつ2010 Cone Nonprofit Marketing Trend Trackerというレポートがある。

参考:2010 Cone Shared Responsibility Study (Online Ad 2010/06/04)

それによると、米国人の78%は彼らが信頼する企業・ブランドと非営利団体が連携することにより、社会貢献活動がそのものが目立つ、際立つと回答している。
非営利団体が企業・ブランドと連携すると、56%は団体に対する印象がよくなり、59%は連携している企業・ブランドの製品を購買する可能性が高くなる。
ただし、米消費者の75%はまず企業・ブランド+非営利団体の連携結果を知りたいと思っているし、61%は支援する前に時間をかけて連携の詳細を確認したいと思っているのだが、連携や寄付などに関する情報開示が十分だと考えているのは45%にしかすぎない。
最後に非営利団体が米消費者に訴求するチャネルとして以下をあげている。上位にはWOM(81%)、レガシーマスメディア(80%)、広告(74%)が来ている。下位にEmailが59%、SNSが49%、モバイルが29%で来ている。
Source:Cone / Nonprofit Marketing Trend Tracker

基本的には非営利団体がその活動を多くの消費者に知らしめ、寄付や支援の輪を広げるために企業・ブランドと連携してプレゼンスを露出しなさいと言っている。

社会、環境、その他の目的であれ、団体単独による啓発、活動、普及には限界があり、今まではそれを補完してくれるのは賛同者の寄付や支援活動だった。一人の声を次の人につなげ、その人からその次のひとにつなげてもらう非常に地味な活動にマスメディアの光が当たるのはごく稀だった。だから活動目的に賛同してくれる企業・ブランドと連携しなさいと。

なお、最後の図にあるように、WOM、レガシーマスメディア、広告が消費者に社会貢献活動を効果的に知らしめるチャネルとして70%以上があげている。反面、ソーシャルメディアチャネルは下から二番目の49%でしかない。これからやはり社会貢献活動にとってもレガシーマスメディアや広告は不滅だと短絡される向きもあるかもしれない。
しかし、実際のところGreenpeaceやOxfamなど事業会社顔負けのオンラインマーケティングを実行しているNGO、各種団体はほんの一握りだ。OxfamにしたところでFacebookのファンは3万人以下、Twitterのフォロワーも5万人以下、YouTubeチャネルの購読者も2,000人ちょっとしかいない。これらの数字と、本格的にソーシャルメディアに取り組み始めているグローバル企業・ブランドと比べると如何に少ないかがわかる。

マサチューセッツ大学ダートマス校のマーケティングリサーチセンターが行った調査によれば、2008年時点で慈善団体のBlog利用は57%には達しているのだが、その訴求や絶対的露出、情報・コンテンツの共有、再露出とは別物なのだ。
参考:Social Media in College and Univ. (Online Ad 2010/06/02)

ということは、マインドセットを切り替えていない他の一般的なNGO、各種団体のソーシャルメディアスペースでのプレゼンスはなきがごとしということだ。多くの場合、彼ら自体も、一般企業・ブランドと同じようにレガシーマーケティングの落とし穴にはまっているため、オンライン、特に、ソーシャルメディアスペースでの情報・コンテンツ発信や共有、再露出からの拡散ができていないのだ。

ここを改善しない限り、企業・ブランドと連携したところで大きな効果、結果は期待できない。

2010/06/08

UK Internet Users 2009

久しぶりにOfcom(英情報通信庁)を覗いて見たところ「UK Adults' Media Literacy」という新しいレポートが上っていた。

2005年、2007年、2009年と様々な要素、項目を比較している(調査項目によっては2005年はない)。

まず、SNSにプロファイルを持つ比率が倍になっている。2007年に22%だったものが、2009年には44%だ。当然、若年層の伸びが高いのだが、35-44歳、そして45-54歳層の伸び率は若年層のそれを上回っている。また、男性に比べて女性の伸びが大きい。
SNSの中でもMySpace、Beboからユーザが移ったFacebookは90%がプロファイルを持っている。また、今回から調査対象となったTwitterは10%がアカウントを持っている。
さて、SNS利用の中身だが、「日々出会う+たまにしか会わない」友人・家族との会話が延びている。そして、それ以外で伸びているのは「キャンペーンや嘆願・請願・支援依頼」だ。
Source:Ofcom / UK Adults' Media Literacy

中高年、女性、Facebook(+Twitter)というキーワードが見えている。そして、それに加えて、社会貢献、あるいは企業・ブランドのキャンペーンというパターンが顔をのぞかせている。

家族、友人、知人、同僚、友人の友人・知人といった個人ネットワークに加え、キャンペーンを経由して企業や団体などとのエンゲージメントが開始されてきたということだ。また、これはSNSユーザ自身が各種社会貢献活動を支援、先導しているからこそ、SNSにおける企業・ブランドとのエンゲージメントに注目してきたということでもある。

SNSに参加してソーシャル広告を流すだけの企業・ブランドもいるだろう。しかし、参加したスペースでファンを集めるだけ集めて、今までと同じようにブロードキャストしたとしても、その対象はエンゲージすることを求め始めている。広報、広告、マーケティング部では担当したことのないエンゲージメントを求められた時、小手先でかわせるほど簡単な話にはならない。そして、そのやり取りがオープンなことを既存の広報、広告、マーケティング部は理解していない。