2008/12/26

themediaisdying

Twitterのアカウントに、「themediaisdying」がある。15人の匿名グループがメディア業界の人員削減や新しいポストへの就任に関する最新情報を提供している。
スタートから3週間ほどで7,000人弱のフォロワーがおり、書き込みは347(12月19日時点)に達している。

中身はというと、わずかに新任ニュースもあるが、OMNICOMグループの3,500人削減、METRO Franceの記者12人削減、カナダのSUN Mediaの600人削減などと人員削減ニュースが満載だ。

Source:MarketingVox / Twitter Account Tracks Media's Erratic Employment Pulse
Source:Twitter / themediaisdying

アカウント名は「The Media Is Dying」であるが、削減されているのはメディアだけではない。代理店も大幅な人員削減に着手している。

インターネットがメディアとして確立し、ユーザのメディアシフトが進行してきた。次に広告ビジネスにもその影響が出始めてきた。30秒スポット数十万~数百万㌦というビッグビジネスにほころびが目立ち始め、手間と暇がかかるオンライン広告へ誰もがなだれをうってきた。しかし、オンラインであろうと広告は広告で、CTRは0.1%以下と誰も見向きもしない状況だ。検索広告とて、名の売れているビッグブランドではなくロングテールが金融危機以降も下支えしてくれるかは不明だ。Googleも安泰ではないかもしれないし、代理店のビジネスが危機を迎えている。

言い古された言葉だが、「パラダイムシフト」が起こっている。そしてこのパラダイムシフトは企業・ブランドのマーケティング戦略・手法にも波及してきた。わざわざ高いメディア費を支出してマーケティングする必要のないケースも実証されつつある。自社メディア・リソースを活用することで社外のメディアを使う必要もない。

パラダイムシフトに対応するには、マインドセットをシフトしなければならない。

さてさて、来年はどんな年になるのだろうか?

少なくとも読者の皆さんを含め、筆者にも明るい年であることを願って今年の書き込みを終了します。
よいお年を!

2008/12/25

Twitter drives real revenue

Venture BeatがTwitterを活用したDellのマーケティングをInternetNewsの記事を伝えている。InternetNewsによると、「Dellは、過去1年半の間に特売情報を提供することで100万㌦の売上を上げた。DellをフォローするTwitterユーザはDellのアウトレットストアでの特売情報を受信することができ、直接購入することも、あるいはその情報を他の人たちに転送することもできる」そうだ。

下はDellのアウトレット関連のひとつのTwitterページ。Dellには65のTwitterグループがあり、Dell Outletには2,475人のフォロワーがいるそうだ。

Source:VentureBeat / Twitter has made Dell $1 million in revenue
Source:InternetNews / What Keeps Twitter Chirping Along

ところで、下のDellOutletのフォロワーは3,007だ。IntenetNewsが10日に記事にしてから2週間程度で600人近くが増えたようだ。
なお、USだけではなく、UKのDellもTwitterページをいくつか立ち上げている。

さて、Dellは、新聞折り込み広告・チラシの替わりにTwitterを利用して最新ディスカウント・特売クーポン情報を提供し、100万㌦の売上をあげていることになる。折り込み広告やチラシ印刷コスト不要のソーシャルメディアマーケティングということになる。

100万㌦の売上を上げるために必要なメディア費、制作費を考えてみるといい。代理店の手数料を考えてみるといい。今のところタダのTwitterと比べようもない。ソーシャルメディアを活用するマーケティングを企業・ブランドは確実に身につけてきている。

広告の販促効果に関して長い間、その是非が問われている。しかし、このTwitterは確実に非常に高い、ROIを示してその効果を実証している。このマーケティングに代理店は不要のように見える。メディアや代理店が指し示せない(ソーシャル)メディアで販促効果が確実になっている。広告を出すから品物が売れる時代ではなくなってきた。

さて、下は様々な特売情報を提供している「dealnews」のTwitterページ。ここにもDellなど多くのメーカーの特売情報が満載だ。Dellのように独自にTwitterをいくつも立ち上げなくともこんなTwitterに取り上げてもらえるだけでも販促効果はありそうだ。

2008/12/24

Client's Perspective on Agencies

クライアントから見た代理店の評価といった資料がReardon Smith Whittakerから出ている。年間100万㌦以上のマーケティング予算を投下する企業のCEO/CMO/VP Marketing、ブランドマネージャ達などを対象に調査したものだ。

代理店の仕事にどれくらい満足しているかとか、次の仕事にも使うかとか、期待した結果を出したかとかいろいろある。その中に総合(Full service)代理店の比率が下がってきているグラフがある。
2006年には60%弱あった総合代理店を選ぶ比率が、2008年は48%にまで下降している。その代わり、インタラクティブ代理店が10%、モバイルマーケティング代理店が1%、マーケティング調査代理店が8%などと業務が分散されてきているようだ。

また、クライアント側が最も興味のある新しいものとして次が挙げられている。
最も興味を引いているのは「Online Marketing」が69%、「Buzz & WOM」が58%、「Brand Experience/experimental marketing」が53%となっている。

Source:Ad Week / New Study Reveals What a Client Wants in a Agency
Source:Reardon Smith Whittaker (要登録、pdf)

総合代理店が既成マスメディアを使ってビッグビジネスを享受していた時代が過ぎつつあり、手離れが悪く、総合代理店からするとROIの低い「Online Marketing」や「Buzz & WOM」をインタラクティブ代理店が侵食しているといった格好だろうか。

これからソーシャルメディアマーケティングの効果、効率が理解されるに従って、インタラクティブ代理店のシェアはもっと増えてゆく。金融危機による広告費削減の影響をまともに受ける総合代理店の試練は続く。

一方、クライアント側は削減された予算の中で効果、効率を求められる。しかし、今までどおりに代理店の提案を受け入れているだけでは何も始まらない。だが、Full Service代理店以外にインタラクティブ代理店を追加する、あるいは業務のアウトソースをするといったことを検討しているのだろうか?マインドセットが変わらない限り、日本のグローバルブランドもWeb 2.0と今回の金融危機の嵐の中でブランドエクイティを下げざるを得ないのだろうか?

2008/12/22

Cause Marketing - Good Purpose

企業・ブランドが行う社会貢献に対して消費者の意識を調査した「Goodpurpose」がある。

それによると景気の下降局面でも10カ国6,000人の消費者のうち68%は社会貢献を行うブランドに対して忠誠だし、71%は景気下降局面だからこそ社会貢献に関して時間をかけて考え、お金を使うと答えている。

いくつか数字を拾ってみる。
  • 42% 同じ質と価格なら、デザインや革新を抑えて社会貢献を重要視する
  • 52% 社会貢献に実績のあるブランドを推奨する
  • 54% 社会貢献を行うブランドならその製品プロモーションを支援する
これ以外にも国や一般的に消費者が社会貢献に対して感じていることなどを明らかにしている。

Source:Cause Marketing Forum
Source:Good Purpose (pdf)

さて、Xmasが近いこの時期、企業・ブランドが行っている社会貢献のひとつにHPの「Magic Giveaway」キャンペーンがある。(下をクリックでサイトへ)
Source:HP Magic Giveaway Campaign

「柳の下の二匹目のドジョウ」と言われそうだが、今月頭に始まったばかりの今回のキャンペーンは下の参考で示した前回の31のBlogサイトではなく、新たに選抜した50のBlogサイト共通で行われている。HPのPC、プリンタ、ソフトなどをパッケージとし、「恵まれない人々、介護・福祉施設」などへ送るキャンペーンだ。参加する50のBlogそれぞれで内容は若干違うようだが、例えば、パッケージを贈りたい人や施設の写真、ビデオをFlickr、あるいはYouTubeにアップしてユーザはコンテストに参加することになる。

参考:HP - Social Media Marketing (Online Ad 2008/12/01)

今回のキャンペーンが前回と違うのは、上のページから直接、Best Buy、Circuit CityなどECサイトへリンクしており、直接購入することができる点だ。また、前回はHPのサイトとは別なサイトでキャンペーンの紹介をしていたが、今回はHPのサイト内に紹介ページを公開している。

社会貢献とソーシャルメディアマーケティングが結びついた今回のキャンペーンだが、前回に勝るとも劣らない結果が今から見えるようだ。

2008/12/19

Greener Electronics Guide 2008 November

GreenpeaceのGreener Electronics Guide最新版、11月分がリリースされている。

トップのNokiaは自発的な引き取りプログラムで高得点を上げ、SonyEricssonは引き取り及びリサイクルプログラムの保証で得点を上げ、Toshibaは再生可能エネルギー利用を公表することでエネルギーポイントを積み上げている。
一方、Nintendoは2.9ポイントのMSからも大きく離されたダントツの最下位、0.8ポイントと前回同様だ。
Source:Greenpeace

BBCが6月に「最もグリーンではないハイテク企業」という記事を書いても変化はない。
一体、いつになったらNitendoは対応を変えるのだろうか?

参考:Nintendo Least Green Tech Firm (Online Ad 2008/10/01)

2008/12/18

LG - YouTube

LGがブラジルで洗濯機とScarlet TVのキャンペーンを始めたようで、YouTubeにビデオがあがっている。

それぞれ1週間程度で25万回前後の視聴回数をたたき出している。下の参考「Viral Video Marketing」で書いたように代理店側は、25万回の視聴回数で成功だと考えているのは22.2%だ。1週間やそこらで25万回をたたき出したことからすれば十分成功した例だろう。



Source:DigitalStuffing / Videos 8 Dec 2008
Source:YouTube / LGdoBrazil
参考:Viral Video Marketing (Online Ad 2008/11/21)

TVCFなどもやっているのだろうが、メディア予算がなくともYouTubeでの露出で同等、あるいはそれ以上の露出が稼げるのは米国、欧州だけではなく、ブラジルでも同じようだ。どこの代理店も冬の時代に入ってきた。

2008/12/17

Failed Social Networks

雨後の竹の子のように数多くのSNSが生まれるけれど長続きする例は少なく、大抵はFacebook、YouTubeを前にして消えてゆく。そんな消えていってしまったSNSから学ぶことは?
ということでBivings Reportがいくつかのケースを上げている。

まず、Wal-MartのTeen向け「The Hub」があった。MySpaceのクローン的にWal-Martに関連するグラフィックやテキストのプロファイルを作成できるサイトだったが、誕生からサイト閉鎖までたった10週間という短い命だった。

「なぜ失敗したのか」
ティーンがThe Hubに登録するためには両親の同意を必要としていた。将来の訴訟沙汰を回避するためのものだったが、登録時点でティーンが離脱するのも当然だ。また、ニセモノのプロファイルも多く、Wal-Martの商品広告が氾濫していたことも一因だ。

「学ぶべきこと」
SNSが成功するにはユーザに自由なスペースを与えること。そして広告は必要最低限に抑えること。

次にニュージーランドのiYomuを取り上げている。これは中高年向けのSNSだったようだが、1年ももたずに閉鎖となっている。

「なぜ失敗したのか」
このサイトの特徴はそのすべてがFlashでデザインされていたことだ。またこのサイトに参加するためには長ーいプロファイルを記入する必要があり嫌われ たようだ。またサイト固有の明確な目的がなかった。18歳未満禁止と謳ってはいたが、サイトコンテンツは中高年向けとはなっておらず、そこら辺にあるその他のサイトと差異化されていなかった。

「学ぶべきこと」
SNSにはその構築時点から明確な目的があり、参加が簡単で、できれば参加することが楽しいことが必要。他に似たようなSNSが転がっているのに、できたばかりの同じようなSNSに参加するユーザがいるだろうか?

最後にDanah M. BoydとNicole B. Ellisonが著した「Social Networking Sites: Definition, History, and Scholarship」をあげている。このグラフに現れない数千、数万という名も知られないSNSが誕生しては消えていったわけだ。このグラフに上げられているSNSにしたところで我が世の春をいつまで享受していられるのかは分からない。

Source:Bivings Report / A Look At Failed Social Networks

2008/12/16

Toshiba - Leading Innovation in Nature

11月25日付けのThe Inspiration Roomによると、Toshiba Europeが「What Next?」というサイトを立ち上げてEMEA対象のキャンペーンを実施している。(下をクリックでサイトへ)
トップ画面でのインタラクティブ性は特筆ものだ。ジャングルのような森の中で鳥や動物、魚たちに導かれて行くと、Leading Innovationの数々に出会える。懸賞に参加してPortege R600などをもらうこともできるようだ。

AlexaでToshiba/euのトラフィックを見ると、11月から急激に増加している。
Source:The Inspiration Room
Source:Toshiba EU/Whatnext
Source:Alexa

当然、各種メディアを動員した露出を投下し、トラフィックを斬新なインタラクティブスペースに誘引して、ブランド・製品認知、販売促進を図るという点で目的を達しているようだ。

ところが、Toshiba-Europeへのリンクだけはある(ようだ)が、キャンペーンサイトを基点とした露出拡散やコンテンツ共有手段はない。EmailでのURL転送サービス、ソーシャルブックマーク、コメント、pdfダウンロードなどWeb 2.0的仕掛けはない。Technoratiで際立ったBlogエントリもなし、英国で人気のBeboや、仏のDaily Motionにも露出はなさそうだ。OnlineのWOMを起こそうにもネタがない。

コンテンツを共有、再露出してもらわなければ、また一方的にキャンペーンサイトへアクセスしたユーザにコンテンツを消費させるだけでは、毎回、キャンペーンをかけなければならない。その予算に応じた露出しか獲得することはできない。

それに比べ、HPのソーシャルメディアキャンペーンは、広告は一切なし。HP本体からのプロモーションも一切なし。しかし、たった31日間のキャンペーンでHDXの販売は84%も増加している。だからHPパーソナルシステムグループのVP兼GM、Scott Ballantyneは、「結果は抜群だった」、「販売は想定をはるかに超えた」と自画自賛している。

参考:HP - Social Media Marketing (Online Ad 2008/12/01)

なお、HPはこのキャンペーン以前からWeb 2.0スペースに進出していたわけで、他社以上に参加型、共有型スペースに習熟していたし、ユーザ側の信頼や認知も獲得していた前提がある。それを差し引いても、「広告効果の限界」と「既存マーケティングの限界」が見えている。

2008/12/15

B2B - 2009 Marketing Priorities and Plans

BtoB Onlineの「2009 Marketing Priorities and Plans」によると今般の金融危機にもかかわらず三分の一近いB2Bマーケターは来年の予算を増やすようだ。43.5%は今年と同じレベルを維持し、四分の一だけが来年の予算を削減するようだ。

来年の予算を増やすB2Bマーケターのうち、20%以上増やすのは四分の一、15%から19%の間で予算を増やすマーケターも9%近くいる。

来年、66.5%のB2Bマーケターが「オンライン」予算を増やすと答えている。既成(マス)メディア予算よりも安く、より測定できる結果をもたらすオンラインを増やすのは当然だ。来年、削減されるメディアは印刷が最大、DMと展示会・イベントが続いている。

GEのSenior VP-CMO、Beth Comstockは、「メディア予算の約15%がデジタルになっているが、まだ少ない」、「デジタルへの予算シフトを継続することが私のゴールだ」と語り、ストリーミングビデオ、Webisodes、そしてリッチメディア広告を来年やるそうだ。

ソーシャルメディア活用も本格化してきたようだ。2008年の同じ調査ではソーシャルメディアを利用していたのは20%にしか過ぎなかったが、今回の調査では45%が利用すると答えている。

なお、「2009年に新しい広告キャンペーンを実施するか?」という問いに関して、60.2%が「YES」と回答しているのだが、グラフでは「No」になっている

Source:BtoB Online / Exclusive survey finds only 25% plant to cut budgets

代理店に関する満足度がある。44.7%が非常に満足、47.4%が満足、5.3%が満足していない(Poor)、2.6%がダメ(Unacceptable)と答えている。以前、「Agencies Unsatisfactory」で取り上げたHPのVPのコメントとは温度が違いそうだ。

参考:Agencies Unsatisfactory (Online Ad 2008/10/22)

これはWeb 2.0スペースを熟知しているHPと、「非常に満足・満足している」92%のB2Bマーケターとの認識の違いだろう。Web 2.0スペースにおけるユーザの参加、コンテンツ共有からのエンゲージメントを確立しようとするマーケターと、Web 2.0スペースにバナー広告を出稿することだけで「よし」とする既成マスメディア概念の虜になっているB2Bマーケターの違いだ。HPは、広告代理店が提供するメディアデータだけではダメだと認識している。だから「マーケターとしてコミュニティを持たずに会話を行うのは難しい」と、上の「参考:Agencies Unsatisfactory」で語っている。

一般的なマーケターは広告代理店の言うなりだ。自身で調査・勉強しなければ何も見えてこない。なぜなら、B2Bであれ、B2Cであれ、広告にならない情報、ビジネスにならないデータ・調査を代理店がクライアントに提供することはない。以下の参考で取り上げたHPのソーシャルメディアマーケティングの事例などをもってゆき、広告だけではないマーケティング戦略を構築する代理店はそう多くはいないということだ。実際のところ、日本にはそんな代理店はいるのだろうか?…多分、いないと思う。

参考:HP - Social Media Marketing (Online Ad 2008/12/01)

2008/12/12

EIAA Media Scope 2008

EIAA (European Interactive Advertising Association) から2008年版のMedia Scopeが出ている。

どうやら仏がEUでのトップインターネット国になったようだ。毎日インターネットを利用しているのは67%だ。インターネット普及率の高い北欧諸国よりも利用頻度が高くなってきた。EUで毎週、インターネットを利用するのは1.78億人、その55%は二日に一回は利用している。
25-34歳のグループは毎週13.9時間をインターネットで消費し、その36%はヘビーユーザで、その63%は毎日利用している。そしてソーシャルネットワーキングが力を持ってきた。検索やEmailといった基本活動に続いて49%がSNSを利用している。IMの43%、Forumの29%、そしてプロファイルを持つ26%をSNS、Web 2.0関連とすれば非常に大きなコアを形成している。
製品やサービスを調査・検索したり、比較・検討する際、重要な情報ソースのトップに来るのは個人的な推奨だ。が、リアルショップでの情報、価格比較サイトに僅差で続いているのは、よく知っているブランドサイト、新聞・雑誌、リアルショップの店員さんだ。
EIAAは、「よく知っているブランドサイト、消費者レビューサイト、専門家レビューサイト」に点線をつけ、消費者の購買決定に個人の推奨と同様にオンラインが影響力を増してきたと結論づけている。が、今さらという感じだ。

なぜなら、すでにFleishman-Hillardは「購買決定影響力」、「メディア消費」においてインターネットの影響力、消費がトップだという調査を発表しているからだ。参考:Digital Influence Index Study (Online Ad 2008/07/02)

最後にEIAAは、2004年と2008年を比較している。調査されている項目のどれを見てもインターネットの影響が急拡大してきた事実が明らかだ。一番伸びたのはオンラインショッピングの110%増。続いてオンライン検索・調査から購買決定へのコンバージョンが74%増、ヘビーインターネットユーザ比率が65%増となっている。
Source:EIAA / EIAA Media Scope 2008 Executive Summary (pdf)

2007年、EU諸国のオンライン広告比率を見ても7カ国で10%を超えている。UKの今年上半期のシェアは18.7%に達して、21.7%を占めるTVの後姿が近づいている。このEUでメディア消費時間に応じたオンライン広告費を計上している日本のグローバル企業はどれくらいいるのだろうか?
参考:Online Ad Spends in Europe 2007 (Online Ad 2008/08/28)
Source:MarketingCharts

2008/12/11

End of Newspaper Era?

「NYT Facebook Campaign」でNYTの実施したFacebookでのキャンペーンを取り上げたばかりだが、UKのGuardianが伝えるところによると、NYTは本社ビルを売却、あるいは証券化、リースバックして2.25億㌦を調達する検討をしているようだ。

数年前に買収したAbout.comの売却も可能性がありそうだ。こちらは5億㌦の価値はありそうなので、こちらが先かもしれない。

参考:NYT Facebook Campaign (Online Ad 2008/12/09)
Source:Guardian Unlimited / New York Times Looks to sell HQ to raise $225m

McClatchyは旗艦であるMiami Heraldの廃刊を検討しているようだし、LA TimesやChicago Tribuneを発行しているTribuneは今週、破産法の適用を申請した。

この新聞業界、新聞社の話は米国だけではない。日本も欧州も同じだ。インターネット、オンラインメディア、ソーシャルメディアへユーザがシフトする中、効果的な対策の取れない既成メディアは消え去るしかないのかもしれない。

NYTほどの危機感があり、Facebookキャンペーン、LinkedInとの提携、Self service広告導入、Extraリリースなど、手を打ってきていたメディアでも、購読・広告収入の落ち込みをオンラインだけでは埋めきれない。マインドセットをシフトするしかない。

30秒スポット、全面広告で何十万~何百万ドルというビジネスモデルは一部の例外を除き、昔の話になりつつある。ユーザがシフトしているオンライン、Web 2.0スペースは手間隙がかかり、売上の少ないオンライン広告で単純に埋め合わせるのは困難だ。消え行く、減り行く購読料や広告収入に依存する今までのビジネスモデルを少しずつでも変えていくしかない。

まだ、それが明らかな成果をあげるまでには至っていないが、新しい取り組みを始めている既成メディアがある。このメディアは「マインドセットをシフト」したのだと思う。

参考:Mindset Shift Required (Online Ad 2007/03/07)
参考:Agencies Unsatisfatory (Online Ad 2008/10/22)

2008/12/10

Marks & Spencer - Responsible Packaging

以前、「Green Message or Greenwashing」で紹介したPatagoniaがある。ウェアやシューズの原材料調達国、製造国、物流などでの二酸化炭素排出量合計やエネルギー消費量合計などを示して「グリーン」を強烈にアピールするブランドだ。(下をクリックでサイトへ)
参考:Green Message or Greenwashing (Online Ad 2008/04/02)

こういったケースとは違い、物流に大量のエネルギーを消費し、多くの国の原材料に大きく依存するマルチナショナル・ブランドもおり、特にパッケージされた食品・惣菜、日用品、化粧品などはグリーンアプローチ方法が異なる。

英国の小売大手、Marks & Spencerは下のPlan Aのトップページにあるように、5つの柱、すなわち、
  1. 気候変動対応
  2. 廃棄物削減
  3. 持続可能な原材料資源
  4. フェアなパートナー
  5. 健康増進
を掲げ、2012年までに達成すべき合計100個のコミットメントを公表し、積極的にCSR、持続可能性 (Sustainability)、グリーンを推し進めている。(下をクリックでサイトへ)
例えば、気候変動対応の柱には、1)Carbon Nerutral、2)Energy Efficiency (Stores)、Energy Efficiency (Warehouses and offices)、4)Business Travelなどがリストアップされている。

さて、その成果だが5本柱のうちの「廃棄物削減」を見ると、2007年4月から2008年5月までに以下の3商品だけで1,402㌧(「象255頭分」と原文にある)のパッケージ資材を減らしている。
  • 伝統的なアップルクランブル包装を完全箱型からスリーブ型に変更してパッケージ資材の70%を削減。

  • インゲン(?)のトレーをなくして92%削減。

  • 生肉パックをスキンパックに変更して69%削減。

これ以外にもニンジン、ピッザ、ラザニア、チキン、ポテトなどで削減した例があげられている。

M&Sは、これら個別商品のパッケージだけではなく、サプライチェーンにおいてダンボール箱から繰り返し使用できるトレーに変更することで、年間27,000㌧にも及ぶ使用済みダンボール箱を減らしている。

Source:Marks & Spencer / Plan A
Source:MarketingProfs (有料コンテンツ)

通常パターンであれば、わが社はこんなに二酸化炭素排出量、廃棄物、エネルギー消費を減らしましたとCSRセクションのPDFファイルに明記しているケースが多い。しかし、期限を区切り、何をどうやって、どれくらい減らすといった話はあまり目にしないし、聞かない。単にこの製品・商品はこんなにエコです、グリーンですというだけで、それらを製造・販売するために消費したエネルギー、排出した二酸化炭素などを明らかにすることはない。

しかし、Patagoniaのようにサプライチェーンでの排出・消費量を示しながら削減努力を明示する企業・ブランドもいれば、M&Sのようにコミットメントを公表して削減を実行する企業・ブランドもいる。そしてこういった取り組みがグローバルスタンダードになる日はそう遠くはない。

また、Havasの調査にあったように
  • 52.7% 環境に影響を与える製品・サービスは購入しない
  • 40.5% エコフレンドリーな製品・サービスを購入する
という世界の人たちの意識は確実に大きくなってくる。

参考:Havas Global Climate Change Survey (Online Ad 2008/05/19)

2008/12/09

NYT Facebook Campaign

11月5日にFacebookを使ってNYTがキャンペーンを実施した。

これはNYTの社長、Scott Heekin-Canedyによると、FacebookでNYTのファンを増やし、インタラクティブ・ニュースセンターとしてのNYTimes.comの認知を向上させ、Facebookコミュニティ・ユーザとの間で大統領選挙結果に関してエンゲージメントを確立することが目的だった。

ということで、Obama氏が次期大統領に選出された後、「大統領として最初に何をすべきか?」という質問を投げかけたところ、40万人以上が回答し、それまで4.9万人だったNYTのファンは16.4万人以上(現在は、18.4万人)増加した。
それに加え、NYTはFacebookのフロントページにロードブロックを仕掛け、Obama氏のビデオをフィーチャーした下の広告を出稿している。ここでも「大統領として何をすべきか?」という問いに対するコメントを募集している。この広告は6,830万回視聴され、34,000件以上のコメントが寄せられた。この視聴回数だけで広告費支出の4.3倍の価値があるとHeekin-Canedyは語っている。
FacebookのNYTのページ
Source:Facebook / The New York Times
Source:NYT / Times 3 Highlight from The NYT Business (pdf)
Source:MarketingVox / NYT Fan Figures

Heekin-Canedyは、最後に「FacebookのNYTファンはその後も継続して増加を続けており、将来のマーケティングメッセージを飛躍させるパワフル、無料のWOMになる」と記している。

紙媒体の購読・広告売上が減少する中、世界の新聞とも称されるNYTにしてもオンラインを強化してはいるが光明は見えない。しかし、メディアがシフトしている現状を見れば、紙に留まっていても結果は見えている。とするとオンライン戦略を強化するしか術はなく、それもWeb 1.0では時代遅れ。当然、Web 2.0的アプローチを取らなければならない。コミュニティ、ユーザと直接、会話チャネルを構築し、EpidemicやPandemicを発生させるソースと手段を獲得する必要がある。

参考:Infection, Epidemic and Pandemic (Online Ad 2006/10/16)

自分の首を絞めかねない戦略をとらざるを得ないレガシーメディアの代表格、NYTだが、少なくとも今、ユーザ・ターゲットがどこに存在し、何を消費し、何をリンク、共有、参加しているかは把握している。このスペースに参加しなければならない必要性も理解している。ところが、自身がオンラインメディア化しなければならないはずの大半の企業・ブランドには、まだNYTほどの危機感はない。

Tribuneが破産法適用申請を検討しているとWSJが報道している。この話は何も米国に限った話ではない。日本でも、欧州でも同じだ。危機感のない既成メディアはCSMのようにオンラインでしか生き延びることができず紙は消滅するしかない。

Source:WSJ / Tribune Co. Taps Lazard,Weighs Filing for Chapter 11
Source:Christian Science Monitor / Monitor shifts from print to Web-based strategy

2008/12/08

CTR 2008

comScoreがJEGI (Jordan Edmiston Group) のコンファレンスで基調講演を行っており、その際のプレゼン資料があがっている。この資料には
  1. Eコマーストレンド
  2. オンライン広告市場の現状
  3. ロングテールの拡大
があるが、その中の「オンライン広告市場の現状」に「CTR低下」というスライドがある。2008年、comScoreが計測しているところではCTRは0.1%以下に落ち込んでいる。
Source:comScore / JEGI Growth (pdf、要登録)

オンライン広告が市民権を獲得し、広告費全体の中でシェアを拡大し、検索・ディスプレイ広告がロングテールやブランド認知に活用されてきた。SOHO、中小零細、中堅のみならず、MSやGMが数千億円の広告・マーケティング予算の半分をオンライン・デジタル・1to1化すると宣言するほど大企業、グローバル企業にもオンライン広告は浸透して来た。

しかし、やっていることは既存のレガシーメディアを使ったマーケティングメッセージの配信と同じことをオンラインでやっているだけだ。TV、新聞、雑誌の視聴者、購読者が減少する分、予算枠がオンラインへシフトされては来たが、手法・戦術は昔のままだ。だから、TVCFがスキップされ、新聞・雑誌広告は見られることもなく次のページがめくられるように、Webサイトに氾濫するオンライン広告も注意、注目を浴びることなく見過ごされる。以前なら何%もあったCTRが0.1%以下に落ち込んでいるのも当然だ。

検索広告も同様だ。米国IT大手はキーワード上位3個を買って数~数十㌦払ってもそれに見合うリターンはないから、ROIが低い検索広告は中止しろという指令を各国現法に出しているようだ。試しに関連するキーワードで検索しても出てくるリスティング広告は販売ベンダー系だけで、メーカー系はない。

企業・ブランド→PR・広告→メディア→消費者・ユーザという既成メディア図式で送り出されるメッセージは、Web 2.0時代に入ったユーザに消費され、共有され、再発信されることがない。一般ユーザがメディア化して一方通行のメッセージ配信ではなく、双方向のコンテンツ共有、オープンな会話、参加が企業・ブランドと消費者のエンゲージメントを強化するWeb 2.0時代が、広告そのものの姿、効果を変革している。Web 2.0は、マスを対象とした広告ではなく、プッシュでもなく、One to Oneのプル型へ変換を迫っている。

参考:The End of Advertisng (Online Ad 2008/08/29)

だから、欧米各社はWeb 2.0/Marketing 2.0を実験、実証し始めている。そしてこのWeb 2.0は一カ国だけで閉鎖的に波及するものではない。全世界のユーザ、物心ついたときには家庭にPCがあり、学校へ行けばPC・インターネットを使った教育を受け、携帯や、オンラインゲームで世界とつながり、個人のWeb・Blogを立ち上げ、複数のSNSに参加している14億を超えるインターネットユーザに波及している。

グローバルなオンラインマーケティング戦略がなければ、国境を越えて最新情報・ニュース・コンテンツを消費・共有するインターネットユーザに、どんなコンテンツを提供することができるのだろうか?

参考:HP - Social media Marketing (Online Ad 2008/12/01)

2008/12/05

Social Media Marketing

MENG (Marketing Executives Networking Group) からソーシャルメディアマーケティングに関するマーケターの調査が発表されている。

それによると、ソーシャルメディアマーケティングに関して「非常に重要」が20%、「魅力的だがさほど重要ではない」が25%、「魅力的」が44%とマーケターが感じている。
が、ソーシャルマーケティングの習熟度、練達度となると初心者レベルが33%、それよりもちょっとましな初心者レベルが34%となっていて、まだまだ心もとない状況のようだ。
しかし、マーケティング予算の20%以上をソーシャルマーケティングに投下している企業が13%、15-20%を投下している企業が7%もいる。
Source:BtoB Online / Marketing execs group says most marketers beginners at social media
Source:MENG

MENGは2008年初めから「Social Media University」というWebinarシリーズを始めている。当然、ソーシャルメディアは何ぞやから始まり、カテゴリごとのメディア・サービス・ツールの紹介、各メディア・サービスの利用ユーザ数、利用頻度など等、盛り沢山のコンテンツが提供されているのだろう。

そして毎回、大勢のマーケターがオンラインで参加していることを聞くと、マーケターとして今、ソーシャルメディアを理解し、活用戦略を構築する必要に迫られている状況が見えてくる。マーケティング予算の15%以上をソーシャルメディアにつぎ込んでいる企業が20%もいるのだ。知らないでは済まされないし、Dell、Lenovo、Kodak、IHG、HP、Oracle、IBMなどが成功事例を積み重ねている脇で、「使えない」と切り捨てるわけには行かない状況なのだ。

参考:HP - Social Media Marketing (Online Ad 2008/12/01)

もはや一部の若者やオタク達だけのニッチなスペースではなく、企業・ブランドのマーケティング戦略の一部を構成しつつあるソーシャルメディアマーケティングだが、日本のグローバル企業が必要に迫られて開始するまでに欧米企業とのギャップはとてつもなく大きく開いていることだけは確かだ。

2008/12/04

TVB Revised 2009 Forecast

11月11日、TVB (Television Bureau of Advertising) が9月に出した2009年の予想を改訂した。TVBが過去に予想を改訂したのは2002年の予想を改訂したときだけだ。それは2001年9月11日のあの事件があったからだ。

さて、TVBは2009年の総スポットTV収入は、今年の7%から11%のダウンと見ている。
加えて、TVBは2008年のTV収入を昨年比7.1%ダウンと予想した。ということは、2007年を100とすると2009年は84から87のレベルということになる。TV収入が急降下してゆく。

9月予想時点のデータ(上半期)を見ると、トップ10カテゴリの中で前年比減となっていないのは、Telecom、Gov、Propertyだけ。中心である自動車は13.5%も落ちている。
自動車カテゴリの中でリストアップされている13メーカーの中で広告費が増えているのはBMW、Daimler、Volkswagenのドイツ系のみ。Big3はもとより日系メーカーも軒並み減らしている。
そして、TVスポットのほうもがた落ちだ。
Borrel AssociatesによるTV局のWeb広告収入は、年々増加してゆくが2010年の予想でもまだ全体の8.8%にしか過ぎない。
Source:TVB / 2009 Forecast (Sept 2008)
Source:TVB / Revised 2009 Forecast
Source:MarketingCharts / TVB Revises 2009 Forecast to Reflect Larger Declines

新聞、雑誌などが購読者数減、広告収入減の板ばさみにあって何とかオンラインで穴埋めをと考えてもまだまだその一部にしかならない状況がある。その状況がTVにも起こってきそうだ。

エネルギー・食料価格高騰、信用収縮、不動産価格下落、DVR普及、オンラインビデオ、モバイルWeb、オンライン検索広告、そしてソーシャルメディアマーケティングとそろってくると、今回の金融危機およびメディアシフトによるTVへの影響は長期間にわたる。この間、企業・ブランドは効果、効率の良いメディア、マーケティング手法へ移行してゆく。そして、この道は不可逆のルートになるから、メディアシーンは大きく変わることになる。

2008/12/03

New Influencer for PR

マーケターやPRのプロ達は、次から次へと生まれて来る新しいコミュニケーションチャネル、Blog、Podcasts、オンラインビデオ、SNSなどのソーシャルメディアツール・サービスの波に翻弄されている。従来からの既存メディアは情報の拡散に主要な位置を占めているが、そのメディア自体がオンラインの会話に大きく影響されている。「New Influencer」が、100年にもわたり存在してきたマーケティング手法、戦術、戦略などの効果をかく乱し、その存在を切り裂いてゆく。

マーケターはマーケティングメッセージのコントロールがユーザの手に移りつつある点に危惧しながらも、メディアの介在なしに直接、消費者・ユーザと会話が可能なことに期待をかけている。

そこで、どのように影響パターンが変化し、どのようにコミュニケーションのプロ達がその変化に対応するためソーシャルメディアを導入しているかを明らかにする調査を実施した。

ということで、Society for New Communications Researchが、「New Media, New Influencer & Implimentation for Public Relations」という資料を出している。

その中からいくつか拾ってみると、まず、少なくともひとつのキャンペーンで使ったことのあるオンラインツールのうち、Blogが80%近い高率で利用されている。そしてSNSも50%を超えている。調査対象者の57%は、多くの消費者やInfluencerが利用するソーシャルメディアがますます重要なツールになってきたと認識している。
その効果はというと、オンラインビデオに続いてBlogが2位、SNSが4位だ。バーチャルワールドが最下位ではあるが、否定的な判定ではない。既成メディアではない、ソーシャルメディアが確実に効果を上げている。
こういったソーシャルメディアツール・サービスを利用してマーケティング・PR活動効果を行う企業・ブランドがその影響を測定する指標として重要だと認識しているのは、「検索エンジンランキング」、「ヒット・ユニークユーザ数」が上位を占め、「ターゲットオーディエンスのプログラム認知」が3位となっている。通常であれば、ターゲット認知がトップに来るべきなのだが、認知効果を目に見える数字で補完しようということだろう。
次に「New Influencer」とコミュニケートする際の効果を測定する指標として最も重要なのは、当然ながら「キーとなるオーディエンスとの関係強化」、「(企業・ブランドの)評判向上」が上位となっている。
Source:Society for New Communications Research
Source:New Media, New Influencer & Implication for Public Relations (pdf)

「キーとなるオーディエンスとの関係強化」、「(企業・ブランドの)評判向上」といった面で、企業・ブランドのマーケター、PRのプロ達がソーシャルメディアを活用し始めている。ということで、このpdf資料には8本のケーススタディが添えられている。

その中で米国赤十字のケーススタディがある。下は赤十字のBlogだ(下をクリックでサイトへ)。
2005年のハリケーン、カテリーナがもたらした大災害は米赤十字にも影響を及ぼした。オンラインのソーシャルメディアスペースでは赤十字の対応に対して非難の声も上がっていた。そこでソーシャルメディアスペースの声をモニターし、オープンな双方向対話を促進するため新しいスタッフを採用した。続いて組織内のPRカルチャーを変革し、ソーシャルメディア対応を進めた赤十字は今、ソーシャルメディアマーケティング・PRが大きな力になりつつある。

すでにBlog、Flickr、YouTube、LinkedIn、Facebook、Twitter、Podcastなどに進出しており、Windows Live Messengerと提携した「I'm」キャンペーンなども進めている。

Source:American Red Cross / Social Media

従来からのマーケティング、PR、広告・宣伝スタッフだけで、現在の消費者・ユーザとコミュニケートすることは不可能だと言っていい。オンラインの会話をモニターしていない限り、悪口も良い噂も企業・ブランドの耳には聞こえてこない。ステークホルダーの声を拾えていないことになる。また、ソーシャルメディアスペースに存在していない限り、会話に参加することもできない。企業のマーケティング・PRカルチャーを変更することが必要だ。

2008/12/02

SPAM Email

2006年とちょっと古いが、SPAM Emailの統計がある。これはGoogle、Brightmail、Jupiter Research、eMarketer、MailShell、Harris Interactive、Ferris Researchなどのデータを集めてきたものだ。
全世界で毎日送られるEmailのうちSPAMくさいのが40%で、その総数は124億通(日)だとしている。2007年にはSPAM Email比率が63%にアップすると推測されている。

Source:TopTenREVIEWS / Spam Statistics 2006

そして、今年の7月に出たSophosのリリースによれば、28通のうち1通しか普通というか、SPAM Emailではないとのことだ。とすると、28通のうち27通、すなわち96.5%がSPAM Emailということになる。今年最初の三ヶ月のSPAM比率は92.3%だったから、また上昇している。2006年時点で予想された2007年のSPAM Email比率63%から、その五割増にまで膨らんできている。

また、SPAMはemailだけではなく、SNS、SMSにも広がりを見せているそうだ。Facebook、LinkedIn、Beboも標的になったそうだ。また、今年4月、ダブリンの動物園はSNSメッセージに引っかかった5,000人の電話が殺到して大騒動になった。

Source:SOPHOS

多分、今年は毎日500億通前後のEmailが世界中を飛び交っているのではないだろうか。その96.5%がSPAM Emailだとすると482.5億通がSPAMだ。まっとうなEmailは17.5億通しかない。B2Bマーケターが良く使う戦術のトップはEmailだが、このSPAMの洪水の中ではまっとうなEmailは見つけてもらうだけでも大変だ。B2Cも合わせて戦術の再検討が必要ではないだろうか。

蛇足だが、筆者にもYahoo.comから日本語のエロメールが届く。Yahoo.comに報告したが、なしのつぶてだ。Yahoo.comに限らず、フリーメールをサービス提供している事業者が広告収入を当てにしている分、改善すべき余地は大きい。

2008/12/01

HP - Social Media Marketing

HPの「Dragon」というニックネームが付いているHDXというPCをご存知だろうか?

2007年半ばに発売されたNotePCだ。20.1インチの広角ディスプレイ、HDTVチューナー、サブウーファ、4個のAltec Lansingスピーカー、Webカメラ、ATI HD26000 TXグラフィックカード、指紋認証システムを装備したモンスターマシーンだ。(下をクリックでサイトへ)
このモンスターハイスペックにふさわしく、価格は3,000㌦からだ。ターゲットも25-34歳で可処分所得に余裕のあるニッチ層をターゲットにした製品だ。

当然、ハイテクコミュニティでは発売当初から高い評価を受けていたが、価格の高さが障害となってなかなか期待するほどの売上はあがっていなかった。

そこでHPパーソナルシステムグループのVP兼GM、Scott Ballantyneが執った戦略とは?

Source:HP / HDX Premium Notebook PC

TVCFや業界誌広告でも、オンライン広告でもなかった。彼がやったのはニッチターゲットに影響力のあるBlogger31人を選抜し、31人それぞれが独自にコンテスト・キャンペーンの企画から実施、優勝者の選考を行い、31人の優勝者にHPのHDX(ソフトなど込みで5,000㌦相当)を優勝賞品として渡す「31 Days of the Dragon」というプロモーションを実施することだった。

HPはこのコンテスト・キャンペーンを支援する広告、マーケティングは一切行わず、企画・実施・選考などはすべて31人のBlogger達が全責任を負っていた。Blogger達は自身の読者コミュニティに対して様々な企画を立てて、コンテスト・キャンペーンを行った。

今年5月から6月にかけて行われたコンテスト・キャンペーンの結果は;
  • HDX Dragonの販売は84%増加
  • HPのPC販売全体も10%増加
  • HP.comへのトラフィックは10%増加
  • 「31 Days of the Dragon」に参加したBlogサイトの合計トラフィックは5,000万以上
  • 全世界40以上の言語、123カ国からアクセス
  • 1万本以上の関連する自作ビデオが共有サイトなどにアップされ
  • コンテスト参加者自身のWeb/Blogへのトラフィックも500万以上
が記録された。

HPが支出したのは31人分のHDXだけ、25万㌦だ。Scott Ballantyneは、「結果は抜群だった」、「販売は想定をはるかに超えた」と語っている。

Source:MarketingProfs / HP Case Study (有料コンテンツ)

このケーススタディで言えること、示していることは、
  1. 広告・メディアコストなしのオンラインマーケティングが可能
  2. オンライン広告なしでもBlog社会、ニッチなターゲットグループに訴求可能
  3. ソーシャルメディアマーケティング(SMM)は既成メディア・広告を超える効果がある

  4. Web 2.0/Marketing 2.0を実験し、絶大な効果を学習する企業・ブランドが誕生
  5. マーケティング戦略に占めるSMMの重要性拡大
  6. マーケティング戦略に占める広告費削減
  7. 英語Blogによるコンテストにも関わらず、世界へ波及するSMM
たった25万㌦でHPが獲得した露出、共有、再発信、バズを、既成のオフ+オンラインメディアをどう使おうが同じ効果を獲得することは不可能だといえる。ユーザおよび選抜されたBlogger達とのエンゲージメントがなければ、これほどの効果は生起されない。ここにIBMが言う「The End of Advertising」がある。

また、この終焉は何も米国だけの話ではない。40言語、123カ国のユーザに今回のコンテスト・キャンペーンが露出している。英語コンテンツが世界で露出、消費、共有、再発信されている。米国の英語サイトから世界へ波及させることができるのだ。

そして、この終焉を実感しているのはHPだけではない。MarketingProfsのケーススタディを閲覧せずとも世界のマーケターはそれを実感している。実感できないマーケターは、この金融危機にあたり、単純に既存マスメディアの予算枠を削減するだけで、オンラインでのトレンドを理解し、実験することもない。

もう昔には戻れないのだ。マインドセットをシフトしなければならない。組織を改革しなければならない。

参考:The End of Advertising (Online Ad 2008/08/29)
参考:Global Online Barnding Presentation (Online Ad 2008/09/24)

2008/11/28

Virtual World Update 2008Q3

11月19日にGoogle Livelyが閉鎖されるというニュースがあった。7月に「Online Healthcare -1」という書き込みをしたとき、「あまり期待できないだろう」と書いたが、それ以下の実績だったようだ。

Source:TechCrunch / Google Kills Lively
参考:Online Healthcare -1 (Online Ad 2008/07/31)

ということで、久々にKzeroをのぞいてみたところ2008年Q3におけるVirutal Worldの登録アカウント数があった。

まず、下は今年1月時点での登録ユーザ数を予想したものだ。Club Penguinが1,500万、SLが1,200万となっている。
それと比べ、今回のデータには、多数のVirtual Spaceが追加されている。ブルーのドットで示されているのは開発段階、あるいはプライベートベータ段階のサイトだ。さて、Club Penguinの登録アカウント数が1,900万、SLが1,500万となっている。前々回の予想や実績からすると順調に伸びているようだ。

そのほかに、Habboは1億、Neopetsが4,500万、Stardollが2,100万、IMVUが2,000万、Poptropicaが2,000万となっている。

拡大しなければよく見えないので直接サイトへどうぞ(あるいは下をクリックで拡大)。

次に各ブランドがどのVirtual Spaceに進出しているかだが、まず前回のケースを見るとToyotaを筆頭に複数のVirtual Spaceに進出しているブランドがいる。
それに比べ進出しているブランド数は増えている。ところがToyotaなど前回は5箇所に進出していたが、今回はThereとWOWの2箇所だけ。SLは撤退したようだ。また、There、vMTV、vSideなどの特定サイトへの進出が集中している傾向が見える。
これもわかりにくいのでサイトへどうぞ(あるいは下をクリックで拡大)。
Source:Kzero
参考:Virutal World Update (Online Ad 2008/02/06)

Park Associatesの最新データを見ると、YouTube、AIM、MySpaceなどと比べVirtual Worldへのアクセスは低い。しかし、アクセス頻度の高いコアなユーザが半数近いのが分かる。ただし、他のSNSのコアユーザ比率はもっと高い。
また、年代ごとにソーシャルネットワーキングサイトと比べるとVirutal Worldはまったくと言って良いほど重複している。
Source:Park Associates / Virual Worlds and Social Media

そこそこのコアユーザが存在し、年代構成はSNSと変わらないのにキッヅ向けの2D、2.5Dは繁盛しているが、リアル3DはSecond Lifeを除くとあまり盛況ではない。

Park Associatesは、利用頻度でSNSに遅れをとっているVirtual Worldには、住人の興味を維持しながら参加を促進する活動や目的が必要だとしている。キッヅ向けのWebkinzやToontownには親たちも参加しているようで2D、2.5Dの敷居の低さが貢献している。が、リアル3Dはまだちょっと敷居が高いのかしら。

Virtualというだけで名前の売れた時期は過ぎ、IBMのようにグリーンデータセンターをVirtual Worldで見せるといった本格的なマーケティングに組み入れられない限り、広告ベースでは限界があるようだ。