2009/04/30

Beyond Advertising

昨年、「The End of Advertising」というIBMの資料を紹介した。

参考:The End of Advertising (Online Ad 2008/08/29)

その「The End of Advertising」に連なるシリーズ第二段的な資料、「Choosing a strategic path to the digital consumer」というサブタイトルがついた「Beyond advertising」というレポートがIBMから出ている。

中で一番目を惹いたのは下の図だ。

2002年にTV、Print、ラジオ、OOHなど既存マス媒体広告費のシェアは47%、2007年に41%に落ち、2012年には32%へダウンすると予想している。
反面、オンライン広告、ブランドエンタテイメント、クチコミマーケティングなどの代替・インタラクティブチャネルの予算シェアは2002年の7%が、2007年には13%へ、そして2012年には27%へアップすると予想している。

この予想の背景は、「企業の広告予算がインタラクティブで、効果計測が可能なフォーマットへシフトしている」ということにある。

Source:IBM / Beyond advertising: Choosing a strategic path to the digital consumer

2008年のデータを基に予想されたようなので、金融危機、世界同時不況も考慮された予想のはずだ。そして、2012年であれば不況から回復しているはずだ。にも関わらず既存マス媒体広告費のシェアは沈下が止まっていない。

これは、今年から来年にかけて削減される既存マス媒体広告費は、景気回復時にも回復しないということだ。インタラクティブで、広告効果が可視化でき、計測できるオンライン広告・マーケティングに配分された予算を、広告効果が可視化できず、計測できない既存媒体に戻す理由はないということだ。

その時期にもまだ、既存マス媒体に固執するマスメディア、代理店、そしてクライアントさえも蚊帳の外になる他はない。

今こそ、考え方を変える時期だ。昔から獲得してきた経験知を、そして期待値をすべて消し去らなければパラダイムシフトを理解することはできない。後戻りすることを期待するほど非生産的な行為はない。

今どきの若いものはと嘆き、昔を懐かしむ老人は時代の移ろいを理解できない個人の存在としてあったが、業界、あるいは企業・ブランドとしてもあるのだろうか?インターネットが存在しない時代に戻りたいと考える業界、マルチタスクの消費者が消え去り、一家そろって家に一台しかないTVの前で力道山やジャイアント馬場がヒールの外人レスラーをやっつけるプロレス中継を親子三代で視聴する懐かしい時代に戻りたいと考える業界、企業・ブランドがあるのだろうか?

2009/04/28

Online Exposure Spillover

先日、「Samsung LED TV Campaign」を書いた。

参考:Samsung LED TV Campaign (Online Ad 2009/04/16)

22日にまた、SamsungからEmailニュースレターが届いた。今度は、LCD、Plazma、LEDと3タイプのTVをフィーチャーし、「Go green in high-def」と名打ったプロモーションだ。(下をクリックでEmailコンテンツのページへ)
今回も、前回同様に、Diggなどのソーシャルメディアマーケティングツールを装備している。

さて、これはSamsung USAのEmailプロモーションだが、登録ユーザは米国とは限らない。そのため、Samsung USAに登録している世界のインターネットユーザには同じEmailが配信されている。そして、筆者のようにコンテンツの一部をローカル化し、ドメスティックユーザに露出を拡散するケースもある。ということは、USAのコンテンツが世界に露出しているということになる。

こういったケースは何も特異なケースではない。

日本の有名なBlogで米国ソースの情報、ニュース、データ、レポートを紹介していないところを探すほうが難しい。独や仏のトップBloggerが配信するエントリには、当然のごとく、米国ソースの情報、ニュースがかなり含まれている。

また、英語が苦手な日本人とは違い、アジア、欧州、アフリカ、中近東、南米諸国のユーザにとって英語が情報入手に障害とはならない。だからこそ、米国、英語のカテゴリトップWeb/Blog/SNSなどのユーザは米国ユーザを大きく上回っている。

いい例が、FacebookにあるSusan Boyleのプロファイルだ。Wallに続々と書き込まれるコメントには英語だけではなく、仏・西語が見えるし、日本語もある。(なお、下の参考で、Twitterアカウントがあると書いたが、どうやら削除されたようだ。Facebookアカウントもtalent.itv.comが押さえたようで、金のなる木に大勢が群がってきた)

参考:Susan Boyle -2 (Online Ad 2009/04/21)

アーリーアダプターからの英語情報のローカライズ化と拡散、マジョリティが行う英語情報入手によって世界的なコンテンツ消費、拡散が行われている。

この状況を把握すれば、グローバルなブランディングができる。しかし、米国企業・ブランドは無意識のうちにその効果が出てはいるが、今のところ、それを意識した企業・ブランドはまだ存在していない。

数歩先を行くインターネットユーザを理解せず、従来からのコミュニケーションメッセージを担当テリトリごとに発信し続ける企業・ブランド、代理店がいるだけだ。ユーザとの会話ギャップが大きくなるばかりだ。

2009/04/27

Susan Boyle -3

しつこいかもしれないが、Susan Boyleに関してもう一度書く。

参考:Amazing Voice : Susan Boyle (Online Ad 2009/04/20)
参考:Susan Boyle -2 (Online Ad 2009/04/21)

下のグラフは、Technorati、Google Blog、Twitter、Flickr、Photobucket、Google Images、Facebook pages、MySpace、Ning、Bebo、SkyRock、YouTube、YouTube channels、Vimeo、DailyMotion、Digg、Del.icio.us、Yahoo、Google、LinkedInなどソーシャルメディアスペースでの、Susan BoyleとMadonnaの露出量を比較したものだ。

大きく色分けされているのは、上からGoogle、Yahoo!、そしてGoogle Imageだ。それ以外は桁が3つ、4つも違うため、この累積グラフでは明らかに描ききれない。
80年代からポピュラー音楽のメインストリームを歩み、全世界で2億5000万枚以上のシングルを売り、音楽だけではなく映画、舞台、児童書の執筆や映画監督まで幅広く活躍するMadonnaと、4月11日、まったく唐突に世界に躍り出たSusan Boyleのソーシャルメディアスペースでの露出は、Madonnaが409,850,486、Susanが216,600,504ということだ。(4月26日時点)

Source:Wikipedia / マドンナ+各サイト

SusanはMadonnaの約半分の露出しかない。ところが、Susanは、Twitter(30,000対11,300)、Google Images(58,700,000対9,100,000)でMadonnaを上回っている。

参考の「Susan Boyle -2」でも紹介したが、「ブランドバズ」に必要な3つの「信頼相互作用」がある。
参考:Susan Boyle -2 (Online Ad 2009/04/21)

これはブランドとの接触により、1)満足を得、2)情報共有、3)アドボカシー(積極的な情報共有および露出拡散)という分岐でもあり、3レベルの構図、フローだ。

Madonnaは20数年間でこの構図、フローから露出を累積してきた。しかし、Susanはたった2週間で信頼と満足を獲得し、ソーシャルメディアスペースで情報共有され、彼女の歌声を積極的に友人、知人、同僚に伝えて、同じ満足を得てもらいたいという人々の輪が広がったことで露出を爆発させてきた。

企業・ブランドは1)満足を得させるまでは確実に行っている。しかし、パラダイムシフトを理解していない企業・ブランドは、2)のソーシャルメディアスペースで情報共有を促進する取り組みを実施できていない。そして、3)のアドボカシーレベルまで実装できている企業・ブランドはまだない。

中年メタボおばさんの特異なケースと、我社の製品・サービス・ブランドとは比較、参考にもならないとするなら、まず、ソーシャルメディアスペースで御社のブランドがどれほど語られているかを調査してはいかがだろう?そして、すでにソーシャルメディアスペースでの情報共有を促進しようとしている、たとえば、SamsungのEmailプロモーションレターを調査してはどうだろう?

参考:Samsung LED TV Campaign (Online Ad 2009/04/16)

最後に、単にSamsungがやったようなバイラルビデオ、Emailプロモーションレター、ソーシャルメディアツールというマーケティングミックスを真似したところで、ソーシャルメディアスペースに参加していない企業・ブランドに効果はない。

追加:

Susanの昔のビデオをアップデートした。

参考:Susan Boyle -4 (Online Ad 2009/05/02)

2009/04/24

7 Tips for Mom Bloggers

Ogilvy PRのBlog、Fresh Influenceに「女性Bloggerが彼女たちに接するPR担当者に知っておいてほしいこと7つ」が上がっている。

タイトルにある7のつポイントに1つボーナスが追加されて合計8つが上げられている。
  1. Get to know me
  2. Stop asking for free coverage
  3. Tell me who else is involved
  4. Remember I have kids
  5. Kids come in different ages
  6. Don't try to tell me what to write
  7. Keep a relationship after your campaign
  8. Bonus : Don't assume we want your stuff
Source:Fresh Influence / 7 Things Mon Bloggers Want PR People To Know

ま、「女性Bloggerに関係なく、誰にも当てはまるものがある」とお考えかもしれないが、1)から8)まで、すべて女性ならではのポイントが挙げられている。

Quantcastのサイトへ行ってUSユーザのデモグラフィックス、特に女性比率を見ることをお勧めする。上位20サイト中、50%となっているYouTubeを除くと13サイトは女性が多い。
  • Yahoo! 52%
  • Live 51%
  • MSN 51%
  • YouTube 50%
  • Facebook 55%
  • MySpace 58%
  • AOL 55%
  • Amazon 52%
  • Ask 57%
  • About 55%
  • Answers 52%
  • Mapquest 54%
  • Photobucket 54%
  • Windows 51%
Source:Quantcast.com

インターネットユーザの中でも女性は男性を押さえているし、女性のクチコミパワーは男性の比ではない。彼女たちに何らかの広報支援を期待するPR関係者だけではなく、広告ターゲットとしても非常に重要だ。

昨日、「New Early Adaptor Model」で、若年層だけではなく中高年のネットワークパワーや購買力を放置できず、企業・ブランドがソーシャルメディアスペースに進出し始めていると書いた。

参考:New Early Adaptor Model (Online Ad 2009/04/23)

そしてもうひとつ、新しいアーリーアダプターモデルとして検討すべきは女性、女性Bloggerだ。例えばハイテク製品を買うのは何も、若年・男性だけではない。個人の趣味に走りがちな男性と比べ、日常生活でハイテク製品・家電を使いこなす女性をターゲットから外す必要はない。趣味という狭い範囲での露出拡散よりも、日常生活というより幅広い局面で多様な露出を考えれば女性が中心となる。

HPにしても、LGにしても女性Blogネットワークに露出を始めている。

2009/04/23

New Early Adaptor Model

米国のTwitterユーザの大半は、35歳以上で、18~24歳は10.6%しか占めていないという記事をReutersのBlogger、Alexei Oreskovicが書いている。

comScoreのBlogでもそれを取り上げながら2つグラフを示している。

2月のTwitterへのトラフィックは、全世界から前年比700%増の1,000万ビジター、米国からはそれよりも多い前年比1,000%増の400万ビジターというほど爆発している。

しかし、それを年代別にみると面白い事実が見えてくる。18~24歳という従来から考えられてきたアーリーアダプター層はインデックスで見ると88でしかない。ということは標準からすると12%もTwitterへアクセスしないことになる。反面、25~54歳は標準よりも多いインデックスが得られている。45~54歳は136なので、標準より36%もアクセスしていることになる。
http://www.marketingcharts.com/wp/wp-content/uploads/2009/04/comscore-twitter-age-distribution-users-april-2009.png
Source:Reuters Blogs / Twitter older than it looks
Source:comScore Blog / Twitter Traffic Explodes... And Not Be Driven by the Usual Suspect!

結論として、Reuters、そしてcomScoreが導き出したのは、「従来からのアーリーアダプターモデルの再検討が必要なのでは」ということだ。

MySpaceにしても、Facebookにしても最初は大学生や十代の若者が人気を先導したが、今、その中心層は中年層に移ってきているからということではなく、Twitterの場合、人気の出始めの初期段階で、すでに中高年も参加しているという事実がある。この事実は「従来からのアーリーアダプターモデル」とは相いれないからだ。

すでにインターネットを長年にわたって使ってきた相当数のユーザが存在している。10年、15年と利用してきたユーザが何億人といる。仕事で使い始め、退職後をインターネットで豊かな生活を送っているユーザもいるだろう。彼らはBlogをやるだけではなく、SNSで友人、知人、親戚、同窓生など若年層とは比べ物にならないネットワークパワーを駆使している。

彼らの購買力を考えると企業・ブランドもSNSを若年層だけのニッチなメディアスペースとして放って置くことはできなくなっている。既成メディアWebサイトへ露出するだけではなく、ターゲットユーザが参加するメディアスペース、ソーシャルメディアスペースに企業・ブランドも参加し始めている。

パラダイムシフトが進行しつつあると思う。

参考:Paradigm Shift (Online Ad 2009/02/02)
参考:Kodak Facebook Strategy (Online Ad 2009/04/17)

2009/04/22

Social Media Experience

MarketingSherpaの「Chart of the Week」というEmailニュースレターに「Majority of Marketers Believe No Experience is Needed to be a Social Media Expert」というのがある。

下のグラフのように、「ソーシャルメディア経験のないマーケターにどれほどの知識があるのか?」と尋ねると、「とても知識が豊富」が9%、「ある程度」が58%もある。合計すると67%、三分の二のマーケターは自分に相応の知識があると信じている。
MarketingSherpa.com Chart of the Week
Source:MarketingSherpa / Social Media Experience

「これではTVを今までずっと見てきたからTVCFが作れると考えているようなものだ」とMarketingSherpaは切って捨てている。

調査対象の米国人マーケターでも、Facebookにプロファイルを持ち、Twitterアカウントでピーチクパーチク書き込んでいれば、それをベースに広告やPRを実施できるかというとそうではないからだ。

以前、「Social Media Marketing & PR」で紹介したように、「自社のソーシャルメディア導入に障害となるのは何か」という問いに対する回答のトップを占めているのは、「知識のあるスタッフがいない」が挙げられている。プロファイルを持っていたり、コメントしているだけでは広告やPR戦略を構築する力にはなりえないのだ。
参考:Social Media Marketing & PR (Online Ad 2009/02/26)

だから「本格的にやるのなら、専門の代理店やコンサルタントの力を借りろ」とMarketingSherpaは言っている。

が、その前に「出版メディアからソーシャルメディアへメディアシフトが起こっている」ことを書かなくてもいい米国と、それを書かなければいけないその他の国のマーケターとでは大きな差がある。また、「米国のメディアシフトは米国だけのものではない」と付け加えることも他の国のマーケターには必要かもしれない。

2009/04/21

Susan Boyle -2

昨日、Susan Boyleに関して書いたばかりだが、もう少しソーシャルメディア的な側面を掘り下げてみる。

参考:Amazing Voice : Susan Boyle (Online Ad 2009/04/20)

Facebookで「Susan Boyle」と検索すると結果が500以上も上がってくる。その中に、彼女自身が立ち上げたページではなさそうだが、128万人以上がファンになったページがある。そのWallには世界中から彼女の歌声に魅了された人々の書き込みがされている。ファンの数だけで一日で15万人以上増えている。
(追記:「クリックでFacebookへ」と21日に書いたが、24日時点でFacebookのアカウントはtalent.itv.comが押さえたようだ。「I am so overwhelmed by the kind messages of support I've been getting. My heartfelt thanks to one and all.」という彼女自身のコメントが上がっている)
Source:Facebook / Susan Boyle

Facebook内には彼女名のグループがいくつも立ち上がっているし、彼女の人気にあやかろうと、彼女の名前を入れただけのTシャツ販売をしていたりする。

彼女のファンサイトも立ち上がっているし、ちょっとおぼつかなさげだが彼女と飼い猫の名前をつけたTwitterアカウントもできている。(追記:「クリックでTwitterへ」と21日に書いたが、4月24日時点でアカウントは削除されている)
ところで、昨日の書き込みで
  • Viral Video Chartによれば、すでに彼女のビデオは5,500万回以上視聴され、5,600以上のBlogが取り上げ、コメントは22万回近くに達している。(4月19日時点)
と、19日朝のデータを取り上げたが、今朝は、もっととんでもないことになっている。
  • 視聴回数 74,034,004
  • 取り上げたBlog数 7,359
  • コメント数 281,329
たった2日ちょっとで視聴回数は1,900万回、彼女を取り上げたBlog数は1,700件、コメント数は6万件以上も増えている。

彼女の歌声はもちろんだが、何がこれほどの大ヒットにつながったのかを考えてはいかがだろうか。

競合他社が太刀打ちできないような画期的な新製品を開発、発表し、プレスリリースを各所・各地へ流し、セミナーやプライベートショーのキャラバンをうち、TV・プリントなど既成マス媒体で広告、TVや新聞・雑誌などの出版メディア系Webサイトでオンライン広告を実施してもこれほどの露出が獲得できるだろうか、コンテンツを消費してくれるだろうか。コンテンツ露出を拡散してくれるだろうか。

それも下図のような関係、仕組みやフローなしに?
Source:SlideShare / Case Study: The Barak Obama Strategy

今、ソーシャルメディアスペースに参加し、その中でコンテンツを共有、拡散してもらう仕組みがなければ予算枠内での露出しか獲得できない。広告という一方通行のメッセージ配信ではコンテンツを消費してくれるユーザはあまりいない。このパラダイムシフトを理解しない限り、理解し始めている競合各社とのマーケティング戦略に大きな差がつくことになる。そして、この差は何も米国だけに限った話ではない。

なお、画像は「I dreamed a dream」のままだが、彼女の「Cry me a river」もなかなかジャジーでいいので、ぜひ、どうぞ。

追加:
なお、Susan Boyle -3として、ソーシャルメディアスペースでのMadonnaと比較し、信頼相互作用を取り上げた。

参考:Susan Boyle -3 (Online Ad 2009/04/27)

2009/04/20

Amazing Voice : Susan Boyle

無職、48歳(ビデオでは47歳と言っているが、DailyRecord.co.ukでは48歳となっている)で、メタボ系、あまりシャープなお顔をお持ちではないSusan Boyleが世界を騒がしている。

Source:DailyRecord.co.uk / Exclusive: Susan Boyle's first ever song release revealed - listen to it here

UKのTV番組、Britain's Got Talentで、「Les Miserables」からの「I dreamed a dream」を歌いあげ、彼女は会場を揺るがす大喝采を浴びている。


Susan Boyle on Britain's Got Talent
Uploaded by dwarthy

Viral Video Chartによれば、すでに彼女のビデオは5,500万回以上視聴され、5,600以上のBlogが取り上げ、コメントは22万回近くに達している。(4月19日時点)

そのバズの6%は中国語だ。非英語圏の中国ユーザもYouTube、DailyMotionなどのビデオ共有サイトにアクセスし、最新コンテンツを消費している。そして、消費するだけではなく、中国語で国内ユーザにコンテンツを露出している。

Source:Viral Video Chart / Susan Boyle on Britain Got Talent

英語コンテンツだから英語圏ユーザだけに露出するわけではない。上にあるように中国語だけではなく、ポルトガル語、デンマーク語、スペイン語などでもバズが発生している。

世界中のインターネットユーザは個人的な目的だけではなく、ビジネス目的としても最新の政治、経済、財務、IT、PC、マーケティング、ネットワーク、音楽、ビデオ、映画情報を探しまくっている。こういったコンテンツがどこにあるかというと、自国Webサイトではなく、米国の各カテゴリトップサイトにしかない。だから、今回のビデオのように英語コンテンツでありながら世界中のインターネットユーザに露出することになる。

英語コンテンツが世界中のインターネットユーザに露出、各国のアーリーアダプターはそれをローカル化、そのローカル化されたコンテンツがドメスティックユーザに露出してゆく。グローバルなオンラインブランディングとして検討すべきなのだが…。

参考:Lingua Franca & Internet/Online Marketing (Online Ad 2006/08/29)

追加:(2009/04/21 08:39)

Susan Boyleのソーシャルメディア的な側面に関して;Susan Boyle -2 (Online Ad 2009/04/21)

2009/04/17

Kodak Facebook Strategy

先ごろ、Facebookのインタフェースが変更された。

それに呼応してKodakが積極的にコンテンツ配信を開始している。多分一番注目されたのは4月1日に配信された「Today only, Kodak announces the KODAK eyeCamera4.1!」だろう。下の画像では4月2日となっているが、これは時差の関係だ。それと元ネタはKodakのBlog、「A Thousand Words」から来ているからだ。
それは別として、新しいインクジェットプリンターの広告、Earth Dayの写真、CNETでレビューされたビデオカメラ、そしてKodakのCMO、Jeff Hayzlettが「Print & Prosper」キャンペーンを説明するビデオなど矢継ぎ早にコンテンツを発信している。
FacebookのPagesを企業公式Webサイトとは別に、新しいコンテンツ配信スペースとして機能させている。そしてこの配信スペースは、企業側からの一方的な情報・コンテンツ配信ではない。

次のWall書き込みと、それに対するコメントが、企業と顧客とのコミュニケーションが変わっていることを如実に物語っている。以下は、補聴器を初めてつけた少年が「音」を聴いた時の表情をとらえている写真だ。そして、ユーザから「妹が初めて補聴器を付けた瞬間と同じだ。母はそれを見て泣いていた」というコメントが入っている。
Source:Kodak Facebook Pages

上の写真とコメント以外にも各国のファンからコメントが書き込まれている。こんなライブリーな会話を企業公式Webサイトで同じことがやれるわけはない。Kodakはソーシャルメディアの活用方法を確立しつつある。

それにしてもKokakの「Print & Prosper」キャンペーンで、競合として挙げられているEpson、Lexmark(Ricoh)、Canon、HP、Brotherの各社は「グーの音も出ない」のではないだろか?プリンタメーカーのビジネスモデル、インクカートリッジで利益を上げるパターンが壊されそうだ。

2009/04/16

Samsung LED TV Campaign

3月24日に「Extreme Sheep LED Art」を書いた。あれはSamsungのLED TV用のビデオだったわけだ。

参考:Extreme Sheep LED Art (Online Ad 2009/03/24)

その後、Samsung USAのユーザ登録をしている筆者にEmailが届いた。「Extreme Sheep LED Art」でフィーチャーされているLED TVのプロモーションレターだ。
(クリックでEmailコンテンツのページへ)
3月18日前後で39万回だった「Extreme Sheep LED Art」の視聴回数は、4月8日時点で578万回を超えている。このバイラルビデオでバズを生成し、クチコミが広まった頃を見計らって4月の頭に上のEmailが配信されている。

そして注目すべきは、上の画像にあるマーケティングツールだ。

上部に「forward to a friend」、そして底部にDigg、Facebook、LinkedIn、MySpace、そしてTwitterのボタンが装備されている。Emailを受け取ったユーザは当然、これらソーシャルメディアを利用しているという前提で、ユーザのアカウントを活用して露出を拡散し、コンテンツの消費を増加させる目論見だ。

今回のようなバイラルビデオ、Emailプロモーションレター、ソーシャルメディアというオンラインのマーケティングミックスは、様々な派生マーケティングとともにこれから主流になってくる。しかし、このマーケティングの根底には、クライアント自体が
  1. インターネットの動き
  2. ユーザシフトの動き
  3. オンラインメディアシフトの動き
を理解した上で、かつ、自身がソーシャルメディアスペースに参加していることが大前提となる。

最初の1番目から日本のグローバルブランドと大きなギャップがありそうだ。

2009/04/15

Ad Spend Forecast

日本では朝日広告社が加盟しているWorldwide Partners Inc.が、全世界の加盟各社のうち7割、83社が回答した調査レポートを出している。

不況だと認識している比率は南米を除き、深刻だ。
  • 世界 67%
  • アジア・パシフィック 54%
  • EMEA 70%
  • 南米 25%
  • 北米 76%
「この不況がいつまで続くのか」との問いに;
  • 世界 47%が12ヶ月、35%が18ヶ月
  • アジア・パシフィック 60%が12か月、20%が18ヶ月
  • EMEA 57%が12ヶ月、35%が18ヶ月
  • 南米 30%が12ヶ月、40%が18ヶ月
  • 北米 42%が12ヶ月、39%が18ヶ月
と予想している。80%前後が不況からの脱出に12ヶ月以上かかると答えていることからも不況の深刻さがわかる。

そして、広告予算の削減幅は以下の通りだ。

大手広告代理店が予想する5%といった生易しいものではなく、15%、20%、果てはそれ以上の削減を予想している。全体で20%の削減を見込むのが40%と最大で、EMEAはことに深刻で62%にも達している。
それでは、どの分野がこれから伸びとみているかというと、当然、これはデジタルだ。全体で49%、北米で62%、EMEAで57%、アジア・パシフィックで46%となっている。
B2Bの場合も、クライアントの広告費削減幅は全体と似たり寄ったりだ。ここでもEMEAは最悪で、20%削減が57%、20%以上が14%もいる。
Source:Media Week / Ad Spend Forecast Bleaker Still
Source:Worldwide Partners Inc / Ad Spend Forecast Bleaker Still (pdf)

ま、中堅規模の広告代理店の広告費予想だが、「他の(大手)代理店は5~6%の削減を予想しているが、2009年における米国の広告費は15~20%の削減を予想するしかない」とWPIのCEO、Al Moffattが語っているが、当たらずとも遠からずではないだろうか?

さて、Varietyが2008年の欧州TV広告費をレポートしている。

それによるとスペインが大打撃を受けていて前年比11%減の30億ユーロ(39億㌦)だ。それ以外はそれほど酷くはないが、伊が0.7%減、独が1.3%減、仏が2.4%減で、UKは5.4%減となっている。

Screen Digestの予想では、UKは今年7.7%減、伊が4%減、独が8%減、仏が9%減だ。ただし、2010年のワールドカップで持ち直すと期待している。

Source:Variety / Bleak forecast for Euro adspend

ワールドカップで持ち直すと期待しているが、本当にそうなるだろうか?

今年、広告費、特にかさ張るTV広告費が大きく削減され、印刷媒体予算からの削減枠と合計されてデジタル分野に回されるのは確かだろう。となると、デジタルマーケティングが全体の中でも大きな位置を占めてくる。レガシーメディアのROI、Accountability、Measurabilityとデジタルメディアのそれが比較されてくる。その結果が今年から来年にかけて蓄積されてくる。ということは、デジタルメディアを活用する広告やマーケティングによって様々な情報、データが次のマーケティング戦略構築に生かされてくることになる。

このデータに太刀打ちできるものをTVや印刷媒体が持ちえるのだろうか?

単純に景気が回復したからとか、あるいはワールドカップで世界中からの注目を集めるからといった理由で、一度削減された予算がTVや印刷媒体に戻るのだろうか?それほどナイーブな広告人がいるのだろうか?

ただし、その予算を既成メディアのオンラインサイトにバナー広告、あるいは検索リスティング広告に投下するだけでは高いROIどころか、期待する露出さえも獲得できないだろう。

それはなぜかというと、ユーザが既成メディアのオンラインサイトから離れているからだ。ユーザはSNS、Blog、ビデオ共有サイトへ流れている。このソーシャルメディアサイトを活用しない限り効果はない。

2009/04/14

Top Digital Marketing Tactics

Online Marketing Blogで、2009年のデジタルマーケティング手段のトップ10を発表していた。

「2009年に採用する、重きを置くデジタルマーケティングチャネル&戦術を3つ上げろ」という11日間の調査に対して、36,114人がアクセスし、532人が1559票を投じたものだ。
  • Blogging (34%, 183 Votes)
  • Microblogging (Twitter) (29%, 155 Votes)
  • Search engine optimization (28%, 151 Votes)
  • Social network participation (Facebook, LinkedIn) (26%, 137 Votes)
  • Email marketing (17%, 90 Votes)
  • Social media monitoring & outreach (17%, 88 Votes)
  • Pay per click (14%, 73 Votes)
  • Blogger relations (12%, 64 Votes)
  • Video marketing (10%, 51 Votes)
  • Social media advertising (7%, 39 Votes)
Source:Online Marketing Blog / Social Media Marketing Tops Digital Marketing Tactics for 2009

既成メディア予算が削減され、デジタルマーケティングに予算が回ってきたとき、何をおいても始めるのはBlog、そしてTwitter、SEO、SNS参加という形だ。

このトップ10の中で日本のグローバルブランドが世界のインターネットユーザに対して今、できることはあまりない。

BlogやTwitterしようにも人がいない。SNS参加も無理。日本からEmailを出そうにもリストがない。できるのはPPC、Video、そしてソーシャルメディア向け広告ぐらいだ。

欧米の競合企業・ブランドが積極的にデジタルマーケティングを展開していることからすると、これまでの単純なオンライン露出ギャップに加えて、この不況が続く限り、ソーシャルメディアスペースでの露出、会話、参加、共有、拡散というフローから全くと言っていいほど、置いていかれるのは明らかだ。

不況脱出時にレガシーメディアを駆使したマーケティングをやったところで、そのメディアスペースにもう人はいない。

2009/04/13

Search Ad Spend Slows

ハイテク、エレクトロニクス企業を顧客に持つCovarioから、世界同時不況の影響を受けて検索広告も伸び悩み、落ち込み気味だという調査結果が出てきた。

Covarioの顧客が支出する検索広告総額は世界45カ国で2.5億㌦。ハイテク、エレクトロニクス企業の一部の傾向を映し出すデータだろうが一見に値する。

Executive Summaryとして4つ上げられている。
  • Covairoの顧客による検索広告は、2009年Q1は2008年Q4から1.4%のダウン
  • 検索広告の削減はEMEAが中心で2008年Q4から15.9%ダウン。米は0.8%アップ、APACも7.4%アップ
  • EMEAのシェア95%以上というGoogleが影響を最も受け、初めて6%のダウンを記録。
  • CPCは継続して下落
Covarioの顧客によれば、2009年上半期の予算は下りており、下期まではこのまま行く。いかし、その多くは90日以上の予算執行はせず、5月あるいは6月に予算の見直しがあるようだ。当然、承認されていた下期予算が変更されないという確約はないそうだ。

さて、詳しく見ていくと四半期ごとの検索広告費は初めて前期比1.4%のダウン。地域的に見ると米は0.8%アップだが、EMEAが15.9%も落ちているが、これはドルがユーロ・ポンドに対して5~7%高くなったからだ。それを計算に入れても落ち込んでいる。
次に検索エンジンごとに四半期ごとの売り上げを見ると、Googleが初めて前期比6%落ち込んでいる。EMEAで95%以上のシェアを持つGoogleが最もEMEAの落ち込みの影響を受けたわけだ。

反面、Yahooは前期比25%アップ、MSNは16%アップしているが、EMEAの影響をあまり受けなかったこと、そしてGoogleを最大限活用しているCovarioのハイテク、エレクトロニクス企業がインベントリの関係でYahooやMSNを使わざるを得ないという状況もあるようだ。
目を惹いたのはAPACでの検索広告シェアだ。Googleがシェアを79%に伸ばしている。YahooとBaiduのシェアが食われている。Yahooは日本では安泰かもしれないが他のAPACでは苦しくなっているようだし、Baiduもうかうかとはしていられないようだ。

特にBaiduは英文ドキュメント不足、必要情報が不足するAPIなどでCovarioは苦労しているようだ。
CovarioはCPCとCTRも見ている。

景気後退、世界同時不況によって需要が落ち込んだためCPCはこの2年間で最も下がってきた。2009年Q1は平均で0.8㌦だ。2007年の0.98㌦、2008年の1.14㌦から大きく落ち込んでいる。この元凶はGoogleだ。2008年Q4の0.89㌦から0.82㌦へ落ちている。また、MSNの落ち込みが激しい。2008年通期で1.60㌦が、0.82㌦へと急落している。(Covarioはこの原因を不明としている)
GoogleのCTRが0.68%にまで落ち込んでいる。これはGoogleのインベントリが飽和状態に達していることを物語っている。2007年通期で2.39%、2008年通期で2.19%だったものが、2009年Q1で0.68%だ。
Source:BtoB Online / Search ad spending by tech, electronics companies slows
Source:Covario / Global Search Spending Analysis

Covarioの顧客を前提としてはいるが、最後のデータにあるように検索広告を露出されたユーザは検索広告をクリックしなくなっている。

インターネットユーザが増え続け、検索行為、回数が増え続けてはいるが、3倍増にでもならない限り、三分の一に落ち込んだCTRでは検索会社の売上が落ち込むことは確実だ。

バナー・リッチメディア広告のCTRも0.1%を切っている。

参考:CTR 2008 (Online Ad 2008/12/08)
参考:Rich Media CTR (Online Ad 2009/02/16)

そして検索広告のCTRも下がってきている。なぜ人々はクリックしなくなったのか?

様々なことが考えられるが、2つ上げると;
  • 広告に耐性ができた
  • Web 1.0の限界
がある。

「広告に耐性ができた」とは言わずもがなだが、「Web 1.0の限界」とは、一方的な情報提供を行う企業・ブランドのWebサイトと、実行した検索活動に応じて提供される検索広告が同じだということだ。

スタティックな企業・ブランドのWebサイトと、検索広告をクリックしてリダイレクトされるLP(Landing Page)は同じだ。Call to action機能があろうが、なかろうが、ブランドとクライアント間で会話を醸成することも、スペースを共有することも、コンテンツを拡散することもない。

もう単純にバナーや検索広告を掲出して、マイクロサイトや公式Webサイトにトラフィックを誘引するという広告戦術は古く、機能する部分が少なくなってきた。それはTVや印刷媒体など既成レガシーメディアに広告を掲出するパターンと何ら変わりがないからだ。

しかし、最先端の企業は、すでにオンライン広告の形を変えてきている。オンライン広告の掲出サイト、トラフィックの誘引先、誘引先のコンテンツが変わってきている。スペースを共有し、会話を行い、コンテンツを拡散するメカニズムにトライしている。同じオンライン広告ではあるけれど、新聞やTVなど出版メディアWebサイトに掲出する広告の効果とは格段に差があることは明白だ。

さて、日本のグローバル企業は自身でこんな動きをモニターしているだろうか、現地や代理店からそんなレポートをもらっているだろうか?

2009/04/10

Digital Marketing World Spring 2009

先月、「Refung for Conference」という書き込みをした当日に、「IBMのystem xおよびBladeCenterサーバに関するバーチャルカンファレンスの案内emailが届いた」と書いた。

参考:Refund for Conference (Online Ad 2009/03/27)

それとは違うが、先日、参加したMarketingProfsが主催した「Digital Marketing World」というバーチャルカンファレンスがある。
上をクリックして拡大してみると分かり易いが、Auditorium、Exhibit Hall、Resource Center、Networking Loungeが見える。

Auditoriumでは基調講演などが行われ、Exhibit Hallでは右側のディレクトリにあるマーケティング各社が出展している。
各ブースで担当者とChatもできる。

また、Resource Centerへ足を運べば、各社・カテゴリ毎にホワイトペーパー、調査資料、製品・サービスブロシャーをダウンロードすることもできる。
参考:Online Exhibition (Online Ad 2008/04/14)
参考:Online Exhibition -2 (Online Ad 2008/04/15)

景気回復は2010年末まで期待できない状況で、時間とコストがかかるリアルの展示会より、オンデマンドの展示会が訴求するメリットは大きい。

ある程度以上、機能しているオンライン展示会をプライベートショーで使わない手はない。リアルのプライベートショーと並行してバーチャルショーを各国ごとにキャラバンを組むという話も、「あると思います」。

2009/04/09

Social Media Marketing Industry Report

MS、HPなど130以上の企業に関するホワイトペーパーを著しているMichael A. Stelznerが「Social Media Marketing Industry Report」を出している。

マーケターがビジネスを伸ばすため、どのようにしてソーシャルメディアを利用しているかを調査したものだ。ただし、回答者880人の70%は従業員100人以下の中小企業経営者(このうちの7割=全体の49%は自営)だ。かなりバイアスがかかっていると感じられるかもしれないが、ソーシャルメディアへの取り組みに中小も大企業、グローバル企業も関係ない。あるのはタテ割り組織、サイロ同士の風通しが悪いことぐらいだ。

それは下の10項目を見れば一目瞭然だ。これはマーケターが答えてもらいたい10の質問をリストアップしたものだ。ここに企業規模の大小は全く関係ない。
  1. ソーシャルメディアの最善戦術は?
  2. ソーシャルメディアの効果測定方法は?
  3. まず何から始めれば?
  4. ソーシャルメディアでの処し方は?
  5. 利用できる最善のサイトおよびツールは?
  6. ソーシャルメディアマーケティングにかかる時間にどう対処すれば?
  7. ターゲットオーディエンスを見つけ、集中するには?
  8. ソーシャルメディアマーケティングをちゃんとした有形の結果へ転換するには?
  9. 各ソーシャルメディアマーケティング同士の連携方法は?
  10. ソーシャルメディアマーケティングは効果があるのか?あるとするとどれくらい?
最後にボーナス質問もある。
  1. 部外者に価値を理解させ、協力してもらうには?
  2. これからの見込みは?
  3. 複雑なソーシャルメディアマーケティングの管理方法は?
  4. トラフィック誘引策は?
  5. コスト効果はあるのか?
ということで調査対象者にいろいろと尋ねている。

ソーシャルメディアマーケティングを利用しているのは88%、従業員100人以下の中小企業経営者の場合は90%を超えている。

これまでのソーシャルメディア利用期間を尋ねると、72%が始めたばかり、あるいは始めてから2~3か月のマーケターだ。始めたばかりのうち、30.2%は自営マーケターで、初めて2~3年のうち、従業員100人以下の中小企業経営者は29.3%となっている。
次にマーケターがソーシャルメディアを利用している時間だが、64%が週に5時間以上、39%が週に10時間以上費やしている。20時間以上という兵も9.6%いる。
これを「ソーシャルメディアマーケティングを始めたばかり」「始めてから2~3か月」「始めてから2~3年」で比較すると、それぞれ週に2時間、週に10時間、週に20時間以上と分かれてくる。

さて、誰もが聞きたいであろう「ソーシャルメディアマーケティングのメリット」は何かという問いだが、トップに来るのは「自社(自営)ビジネスの露出増大」だ。「トラフィックなど増加」「パートナー獲得」などに続き、「検索ランキングアップ」が入っている。

その「自社(自営)ビジネスの露出増大」だが、ソーシャルメディアマーケティングの利用期間によって大きく差が出ている。これを従業員100人までの会社経営者からすると、ビジネスの露出増大に役立ったと84.8%が「強く同意」している。
そして、ソーシャルメディアマーケティングが商談をまとめる役に立ったかどうかを「ソーシャルメディアマーケティングを始めたばかり」「始めてから2~3か月」「始めてから2~3年」のグループで比較すると、「始めてから2~3年」は61.62%も「強く同意」している。が、「始めたばかり」はたったの2~3%しかいない。また、16時間以上ソーシャルメディアを利用している層は50%以上が「強く同意」している。

これ以外にも「ビジネスパートナーの獲得」、「可能性の高い引き合い獲得」、「マーケティングコスト削減」に役立ち、「検索ランキングアップ」、「トラフィックなど増加」などにソーシャルメディアマーケティングが役立ったと「強く同意」する回答者が多い。

そして彼らマーケターたちが使っているツールは以下の通り。「ソーシャルメディアマーケティングを始めたばかり」「始めてから2~3か月」「始めてから2~3年」のグループで見ても、上位4ツール、Twitter、LinkedIn、Blogs、Facebookの順番は変動するが同じだ。
そして彼らが学びたいと思っているツールは以下の通り。この点は、「ソーシャルメディアマーケティングを始めたばかり」「始めてから2~3か月」「始めてから2~3年」のグループで若干違ってくる。初心者はTwitter、中級者はソーシャルブックマーク、上級者はFriendFeedやStunbleUponがトップに入ってくる。
Source:DirectNews / Online Marketer Turning to Social Media
Source:Marketing Whitepapers (pdf)

マーケターは自営であろうが、零細・中小・中堅・大企業であろうと今、最善の戦略、戦術を常に求めている。そして新しいツール、サービス、ユーティリティを勉強しようとしている(はずだ?)。

そこに違いはないが、あるのは流れを理解できない、あるいは流れを止めてしまうサイロの壁だ。この壁が厚く、高いほど、今の消費者、ユーザ、顧客が集うスペースを理解し、そこで彼らが何を語っているかに聞き耳を立て、会話に参加しようとするスタンスからはほど遠くなる。

さて、グローバルブランドを全世界のインターネットユーザが語っている。上にあるようにTwitterを使ったコミュニケーションが最も盛んかもしれない。が、日本のグローバルブランドでTwitter(英語)アカウントを本社で持っている企業はいない。アカウントがあったとしても英、米、独、蘭などの現法、あるいはユーザ会やディーラーが持っているだけだ。本社は顧客の声を聞く気がないのかしら?

参考:Twitter for Customer Service and Branding (Online Ad 2009/03/30)

Razorfishの「Digital Outlook Report 09」にTrends to Watchという章があり、その3番目に「Social Influencer Marketing will go mainstream」が挙げられている。トレンドをウォッチするのではなく、検討する時期だと思うが…。

Source:Razorfish / Digital Outlook Report 09

2009/04/08

Mobile Marketing

米、欧の6カ国で2億人が第3世代携帯を使っている。

その60%はこれからの2年間で音声通信サービスよりも、EmailやMMSといったデータ通信サービスを使用したいと答えている。米国ユーザの71%はモバイルインターネットを毎日でも利用したいそうで、欧州ユーザは41%だ。
その理由は簡便さとユーザの生活を向上させる点だ。
Source:Nielsen Wire / Desire For Convenience, Features Drives Phone Innovation

第3世代携帯、あるいはPDAなど、非常に個人的なインターネットデバイスとして利用が高まってくる。そしてそれを活用できる道がある。

Nielsenが言うように、簡便性(ショッピング、クーポンなど)に絞ったモバイルマーケティングアプリケーション、そしてエンタテイメント系サービスが大きな可能性を開いている。

ただし、この可能性は何もローカルな可能性だけではない。グローバルなブランディングにも可能性は開かれている。

2009/04/07

Top 100 UK Advertisers

2008年のUKにおける広告トップ100社のリストが上がっていた。

オンラインとDM広告を除外したプリント、ラジオ、TV、OOH、映画広告費をまとめたもので前年比4.8%減の総額87億ポンドだ。

中でもプリント広告の落ち込みが6.07%で一番だ。広告費としては一番大きいTVは3.95%減となっている。(クリックでサイトへ)
景気悪化によって車、小売、メディア、テレコム、FMCGブランドが広告費を大幅にカットした。昨年8月まではなんとか持ちこたえていたが、リーマンショック後は急下降し、今年は最大15%までの下落が予想されている。

Source:MarketingMagazine / Marketing's Top 100 UK Advertisers 2009

日本ブランドとしてはNintendo、Toyota、Nissan、Honda、Sony、Panasonicなどがトップ100入りしている。

そこでSamsungとPanasonicを比較してみる。

Samsungは前年比60%増の2,564万ポンド。OOHが41%増(887万ポンド)、プリントが71%増(937万ポンド)、TVが65%増(681万ポンド)。

Panasonicは前年比48%増の1,649万ポンド。OOHはなし、プリントが28%増(563万ポンド)、TVが59%増(999万ポンド)。

オンラインとDMは除外されているが、どちらもオンラインは活用しているだろうから、オンラインとの統合マーケティングを考えるとPanasonicからOOHが抜けているというのはちょっと腑に落ちない。特に携帯のSMSを考えるとOOHは欠かせないはずだが。

2009/04/06

Critical Ad Placement -3

以前、「Critical Ad Placement : Above or Below Folds」、「Critical Ad Placement -2」というエントリを書いた。

下の黒線がfoldsだ。これより上と下の広告の可視性について書いたものだ。

そして最近、CNN.com Internationalへ久しぶりにアクセスしたところ下のようにデザインが若干変更されている。黒線を引くまでもなく、たとえばNikonのスポンサーセクションはFoldよりも上に配置されている。
参考:Critical Ad Placement : Above or Below Folds (Online Ad 2008/04/30)
参考:Critical Ad Placement -2 (Online Ad 2008/07/25)

ま、CNNのデザイン変更は全く別な理由によるものだろう。が、万万が一、こちらのエントリが何らかの影響を与えたとしたら…

ちょっとうれしい(そんなことはないだろうが?)。

2009/04/03

Spiceworks for SMB IT Pros

SpiceworksというSMBのIT・ネットワークエンジニア向けに統合管理ツールを無料で提供するベンダーがいる。たかだか2006年にテキサス州のオースティンで産声を上げたばかりの企業だが、すでにユーザベースが50万人を突破している。

5か月前のスライドを見ると、今後の12ヶ月間でユーザベース100万人突破も視野に入っているようだ。

この企業のプロフィットストリームは何かというと下の画面のようにHPなどITベンダーからの広告だ。2007年に27社だった広告主が、2008年には72社に伸びてきている。
NYTによれば、MS、HP、Dell、Intel、ADM、Sonyなどグルーバル企業が名を連ねている。


Source:NYTimes.com / Reaching Tech Folks on Their Turf

NYTがいうように、SpiceworksはGoogleや業界紙・誌ではカバーできないポイントがある。それはIT・ネットワークエンジニア・専門家が業務に従事している最中に露出することができるということだ。それも雑多なデモグラフィックではなく、IT・ネットワークエンジニア・専門家だけがオーディエンスだということだ。

SpiceworksはFacebookにPagesもある。ここでニュース、コミュニティ会話、製品やベンダーのアップデートを行っているそうだ。 
こういったバーチカルなユーザスペースを活用するマーケティングは、本国からでもできるはずだ。Spiceworksだけではなく他にも、IT系の管理職・経営者層をターゲットにしたバーチカルサイトやネットワークが存在する。

既成レガシーメディアやそのオンラインサイトだけではなく、こんなユーザスペースやバーチカルネットを活用することもできるのだが?もったいない。

2009/04/02

Ideas from IBM

Mashableに「26 Charities and Non-Profts That Tweet」というエントリがあり、Twitterアカウントを持って活動をしている慈善団体および非営利団体をリストアップしている。

そのページにIBMがバナーを貼っていた。
そこからリンクされるのは、Smart Planetというページだ。(下をクリックでサイトへ)
Source:Mashable / 26 Charities and Non-Profits That Tweet
Source:IBM / Smarter Planet

このSmarter xxxというキャンペーンは、Smarter Planetに続き、水、都市、医療、原油掘削、通信、グリッド、金融、インフラ、知識、小売ソリューション、食糧、交通などIBMが関わるソリューションがフィーチャーされている。

ソリューションごとにDeeper View(IBMの詳細ソリューション)、Wider View(世界の動き・報道とIBMの対応)、そしてYour View(Smarter PlanetというBlog)が紹介されている。どこかの企業とは違い、自社ソリューションの説明だけではなく、世界の動きを集めてIBMの対応を説明するだけではなく、Blog会話の三段階でコンテンツ消費、共有、参加を目指している。

ここまでやったとしても、IBMのソーシャルメディア対応が万全といえるものでは決してない。が、少なくともソーシャルメディアを使う広告のツボは心得ている。Federated Mediaがネットワーク化するMashableにバナーを掲出しているということは、その他のBlogにも出しているのだろう。

ただし、Mashableからのリンク先がSmarter Planetのトップページというのはどうなのだろ?Smarter PlanetというBlogからのボトムアップストリームを目指したほうがベターではなかっただろうか?あるいはバナー掲出Blogのユーザプロファイル、デモグラフィックに応じたリンクがベターだったかもしれない。

2009/04/01

ROI on Social Media Marketing

Aberdeenグループから「ROI on Social Media Marketing: Why it Pays to Drive Word of Mouth」という資料が出ている。

クチコミの力を借りていかに企業が、ブランド認知やROMI(Return on Marketing Investment)を向上させ、顧客獲得を増加させ、その他のメリットを享受しているかを調査したものだ。企業を「Best-in-Class」「Industry Average」「Laggard」の3つに分け、「Best-in-Class」に焦点を当てている。

先頭を走るBest-in-Classは、全体の20%を占め、好感度、ROMI、顧客獲得率が大多数で向上している。それに比べるとLaggardsは悲惨だ。好感度はたった2%、顧客獲得率は6%、ROMIに至っては0%の達成度だ。
金融危機、世界同時不況により、どの企業も予算は削減されている。ソーシャルメディアマーケティングも例外ではなく、調査対象の59%は戦略の再検討を迫られているが、39%は変更なしらしい。特に、Best-in-Classでは63%が予算を増やし、変更なしは34%、そして削減するのは3%でしかない。
これだけの成果と、今後の予算に裏打ちされた積極性を見せられるとLaggardだって黙ってはいられないが、「一体どうしたらいいのか?」という問いに答える第3章、「Required Actions」がある。
まずその前に、事実として次の数字が挙げられている。
  • Laggardのうち21%しか、ソーシャルメディアから実行できるヒントや洞察を導きだしたり、引き出すための最適事例を定義していない
  • Best-in-Classの41%に対して、15%のLaggardしかブランドアドボカシー・カスタマー引用を計測する効果測定基準を定義していない
  • Best-in-Classの74%に対して、38%のIndustry Averageしかインフルエンサーを特定する能力に満足していない
ということでLaggardが取るべきステップは何かというと;
  • ソーシャルメディアから活用したり、実行できるヒント・洞察を引き出す最適事例を定義する
    現在でも、Laggardの21%しかこれを定義していない。同じ業界、あるいは別業種・業界企業の事例から学習すべきだ。
    (ケーススタディならいやというほど転がっている)
  • 顧客とのオンライン会話に従事する社員を選抜し、訓練する
    Aberdeenの調査によると、顧客とのオンライン会話に多様な関係者を任命している。製品マーケティング部門、コーポレートコミュニケーション部門、顧客対応部署、PRエージェンシー、デジタルメディア部門、マーケット調査部門など多くの関係会社や社内部署を動員すべきだ。
  • ソーシャルメディアマーケティングキャンペーンの予算を確立し、プロセスの承認を取る
    ソーシャルメディアキャンペーンは企業のマーケティング目的を達成するための切り札になりえるかもしれないが、必要な情報、知識が欠けているため社内調整が困難だ。そのため、ソーシャルメディアマーケティングは他のマーケティング戦略とは別計画とし、他との差異を説明して、想定される成果に対する期待を排除するべきだ。
Source:BtoB Online / Marketer Increase Social Media Budgets
Source:Aberdeen / The ROI on Social Media Marketing

最後の「他のマーケティング戦略とは別計画とし、他との差異を説明して、想定される成果に対する期待を排除するべきだ」というのは意見が分かれるはずだ。

ただし、既成メディアを使ったマーケティングに対して、過去数年、いや、ここ1、2年ほどで名前が浮上してきたソーシャルメディアマーケティングを同じ尺度で測ることはできないという説明をすべきだ。企業がコントロールできないメディアを使うのだという理解をしてもらわない限り、想定される成果自体を設定するなとは言えない。また、上のソーシャルメディアマーケティングの成果を享受しているBest-in-Classをフィーチャーしたケーススタディを理解してもらう必要もある。

Laggardに対する行動ステップだが、グローバルマーケットに対してオンラインのブランディングが必要だと考えている日本ブランドがあれば、ぜひ、検討してもらいたいところだ。