2008/10/31

Lenovo Olympic Marketing -2

7月10日の「Olympic Marketing : Lenovo」で、Lenovoのマーケティングに大きな期待をかけたいと書いた。期待以上、想定以上の効果・結果が上がったようだ。

参考:Olympic Marketing : Lenovo (Online Ad 2008/07/10)

MarketingProfsのケーススタディによれば;
  • Voices of the Olympic Games(オリンピック出場選手Blogのアグリゲートサイト)とPodium(オリンピック関連情報サイト)合計のアクセスは;
    北米 100万
    EMEA 46万
    アジア・パシフィック 14.2万
  • 選手Blogへは合計5,000以上のコメント(インドで初の金メダルを獲得したAbhinav Bindra選手へは600コメント)
  • Facebook用選手応援アプリケーション:Team USAの視聴は180万回、ダウンロード25万回以上、アプリを通して160万回以上の招待が送られた
  • 携帯用選手応援アプリケーション:Team USAはダウンロード6万回
  • 今回のWeb/Blogキャンペーンに対するWeb 2.0メディアおよび既成メディアの引用、リンクなどは合計で1,000万回を突破
Source:MarketingProfs / Case Study (有料コンテンツ)

Blog/SNS/携帯/アプリ/Blog広告ネットワークを活用した今回のキャンペーン露出と、タッチポイントから再生産される数次にわたる複合露出の合計が1,000万を超えているということは素晴らしい結果だ。

LenovoのグローバルWebマーケティングのVP、David Churbuckは、「インタラクティブかつコミュニティベースのスペースをつくり、オーディエンスにコンテンツを消費、貢献、連携、そしてコメントする機会を提供すれば、予想以上の効果を得ることができる」と語っている。(ところで日本のグローバル企業に「グローバルWebマーケティングのVP」という肩書きの管理職はいつごろ誕生するのだろう?)

1964年にはSonyが東京オリンピックで、1988年にはSamsungがソウルオリンピックで、TV、印刷媒体などを動員してグローバルなブランド認知を獲得した。2008年の北京オリンピックは、インターネット、それもWeb 1.0ではなくWeb 2.0コンポーネントを動員したLenovoがグローバルなブランド認知を獲得した年、オリンピックとして記録されるのだろう。

2008/10/30

Click Fraud Update

とうとうGoogleもクリック詐欺を見過ごせなくなったようだ。クリック詐欺のインデックスを公表しているClick Forensicsと提携してクリック詐欺を撲滅する取り組みを始めたとMarketing Voxが伝えている。
下は2008年Q2
下は2008年Q3(下をクリックでClick Forensicsへ)Source:Marketing Box / Google, Click Forensics Join Forces Against Click Fraud
Source:Click Forensics / Click Fraud Index

ただし、この提携はクリック・クオリティレポートを自動生成するClick ForensicのFACTr(Fully Automated Click Tracking Reconciliation)サービスのデータをGoogleに提供するということだ。

Googleは、フィルタリング、オフライン解析、調査という三段階のクリック詐欺排除、探知システムを執っている。このフィルタリングおよびオフライン解析で問題ないとされたケースの場合、今までは広告主が独自にマニュアルで疑わしいデータを抽出しGoogle に調査を依頼するしかなかった。それがこの提携を受けて広告主の負担が軽くなるといったレベルだろう。

Googleが認めるクリック詐欺率は0.02%だが、Click Forensicsの2008年Q2のデータは27.6%、Q3は若干改善したが27.1%だ。クリック詐欺であろうがなかろうが、金になるGoogleがどこまで本腰を入れてクリック詐欺撲滅に取り組むのだろう。すでにYahoo!がClick Forensicsと提携している影響が打ち消せない。

参考:Click Fraud Q1 2007 (Online Ad 2007/04/23)

2008/10/29

Your Shot - Nikon USA Blog

4月17日に「Fortune 500 Business Blogs」を書いた中で、Nikon USAの「Your Shot」に触れた。

このサイト自体は2月27日にアップされているNikonのプレスリリースを見ると、リニューアルされたNikonusa.comのWebサイトに関するデザイン、レイアウト、コンテンツ表示、サイト改善のための提案・意見などを交換するフォーラムだったわけだ。

3月や4月にアクセスしたときは、エントリに対して数件のコメントがあったり、コメントへのレスポンスがあったりと、ユーザとのやり取りが見られた。

参考:Fortune 500 Business Blogs (Online Ad 2008/04/17)
Source:Nikon Press Release

ところが、先週、YourShotへアクセスすると「About Nikon」へリダイレクトされてしまった。どうやらYourShotは閉鎖されてしまったようだ。プレスリリースでは数ヶ月、数年にわたり、サイトコンテンツや利便性に対するフィードバックを受け付けると書いてあるが、8ヶ月で幕を下ろしたことになる。

実は、5月末ごろの「Let Us Know What You Want To Read」というエントリが最後のもので、その後の5ヶ月間でエントリも、コメントもなかった(はずだ)。終わるべくして終わったということも言えるが、いかにももったない。

一方、Kodakの「1000 words blog」は先月で2周年を迎えている。10数人のBloggerが代わる代わる記事を書き込み、日常生活や様々なイベントなどでKodakを使った記録写真、スナップショット、風景写真をアップしている。写真やビデオを撮るコツやヒントを教えてくれるし、時には数10件を上回るユーザのコメントに対しても丁寧にレスポンスを返している。

Bloggerの中でもJenny Cisneyはチーフブロガーとして北京オリンピックに参加し、会場や北京市内、万里の長城などでの写真を載せている。

写真を撮る楽しさや、写真を家族や友人達と見る楽しさも伝わってくる。

このBlogの活況や成功に気を良くして、KodaはBlogに加えてKodakTubeをYouTubeに開設している。

また、TwitterやFlickr、del.icio.us、そしてFacebookなどでもKodakのページ、スペースなどを活用し始めている。

Blogだけではなく、ユーザと情報やコンテンツを共有し、Kodakブランドやその製品を伝え、理解し、消費してもらうための努力を、他のWeb 2.0スペースへ拡大している。

Source:Kodak / A Thousand Words (Jenny Cisney)
Source:KodakTube

この2社のWeb 2.0対応の違いは;
  • Blog開設目的の違い

    Nikon USA:新しくリニューアルしたWebサイトに対してだけのスペースとして開設

    Kodak:写真を撮る楽しさを伝え、ユーザとのオープンな会話を広げるためのスペースとして開設
に集約される。

目的が大きく違うため、Nikon USAの場合はコーポレート・インターネットコミュニケーションマネージャのJoeのみ(最後にひとつエントリを書き込んだFrancesも参加)が対応し、Kodakの場合はチーフブロガーのJenny Cisney以下、様々な国、部署の10名以上が執筆していた。Nikonの場合はWebサイトというスタティックな話題に限定されているため盛り上がらず、Kodakは新鮮、豊富で広範なコンテンツがトラフィックを呼び、コメントを書き込むユーザ達とも、KodakのBlogを引用したり、リンクを張るBlogger達とも多様な会話が成立している。

Blogを開設すれば予想以上の反応があり、目的に沿った結果がいとも簡単に得られるわけではない。また、Blog自体が自己増殖してくれるわけでもない。

Nikon USAは、リニューアルしたWebサイトに対するフィードバックではなく、リニューアル前にユーザの意見、アドバイスを募るスペースを開設し、それらをリニューアルに活かすと同時にリニューアル後のユーザとの会話スペースを構築するベースとするべきだった。ユーザからのフィードバックという貴重な情報を入手できるチャネル、それらアーリーアダプターであり、インフルエンサーであるユーザとのオープンな会話チャネルを確保するべきだった。

Kodakに限らず、成功している企業Blogは「Push to Pull」、「Publish Content」、「Brand Become Media」というフロー、システムに乗っている。「Push to Pull」の入り口まで進んだNikon USAがアクセスが少なく開設目的に役立っていないとか、目的を達成したからといった理由でYour Shotを閉鎖したのではなく、次のステップへ歩を進める準備段階へ入ったのだと期待したい。

参考:Global Online Branding Presentation (Online Ad 2008/09/24)

2008/10/28

EBRS 2008

Ipsos MoriのEBRS、名称が変更となり今回からは「BE:Europe (Business Elite Europe)」となったデータが公開されている。これは2年ごとに行われるヨーロッパ全土を対象にした非常に大掛かりの調査だ。前回、2006年の結果も合わせてでているので紹介する。
Source:M&M / BE: Europe - How to influence the key influencers
Source:Ipsos Mori / Business leaders’ readership of international titles increases
Source:Ipsos Mori / BE:Europe 2008 Survey Data (pdf)

単純に2006年の数値と2008年の数値を比較すると国際紙誌の購読率があがってきたと思わせる。しかし、以下の2002年と2004年のデータを見ていただくと別な絵が見えてくる。
2002年に47.3%あった国際紙誌の購読率は、2004年に43.1%へ下がり、2006年に36.6%へ落ち込んでいたことになる。そして2008年にそれがようやく40%にまで回復したということだ。

Ipsos Moriは、2006年の調査と比べると国際紙は6%も購読率が上がり、日刊紙、週刊誌、月刊誌も購読率が上がっていると伝えている。しかし、実態はどん底の購読率低下を様々な営業努力で押し留めているというのが現実だろう。まさか、Timeのような購読料タダといったキャンペーンまでしているところはないだろうが?

参考:TIME Mag Subscription Offer, $0? (Online Ad 2008/07/17)

それはさておき、今回の調査結果で注目すべきは;
  1. 10人中7人はインターネットでニュースを入手
  2. 10人中5人はemailによるニュースアップデートを受信
  3. 4人中3人はBlogを読み、
  4. 19,000人のエグゼクティブは自分のBlogを書いている
ということだ。

なお、2006年に2004年版を紹介し、2006年版を見たいと書いていた。当時、何度も検索したが調査結果はインターネットにアップされていなかった。それが今回はアップされている。これほど重要な調査結果を公表しないメリットは何もないことにようやく気づいたのだろうか。

参考:Free Paper Home Delivered in Europe (Online Ad 2006/10/11)

2008/10/27

Targeting to SNS in UK

4月に「Social Networking Profile by Ofcom」というエントリを書いたが、サマリではなく本編の一部を紹介する。

その前に「Ofcom」を「情報通信省」としていたがまったくの誤りだった。Ofcomは、通信と放送を管轄する独立規制機関で2003年12月に創設されている。訂正します。

さて、本編では簡略化したSNSのタイムラインを上げている。
英国で最初にスポットライトを浴びたのは
  • 2000年に立ち上がった「Friends Reunited」、特に2005年に入ってITVが買収したことで注目を集めた。
  • 2002年に世界的に名前を売ったFriendsterが出て、
  • 2003年にLinkedIn、MySpace、Hi5がスタート、
  • 2004年にFlickr、Piczo、Facebook (当時はHarvardのみ)が産声をあげ、
  • 2005年にBebo、Facebook (学校ネットワーク)が続き、
  • 2006年にFacebookが紹介なしのアクセスに扉を開き、
  • 2007年にはSagaがSagazoneという50歳以上を対象にしたSNSをオープンしたという状況だ。
そして、2007年8月時点におけるSNSの年齢構成は以下のように35歳未満(51%)と35歳以上(49%)が拮抗している。
ただし、SNSに自分のページやプロファイルを持っているのは全体の27%にしか過ぎないし、
その年齢構成を見ると、これは圧倒的に35歳未満だ。
2007年に開始されたSagazoneは2008年1月時点で3万のプロファイルが登録されている。今後も中高年のSNS詣では増えるだろうが、ハードユーザ率が伸びるのには時間がかかるかもしれない。

次にSNSユーザの国際比較がある。英国はカナダの53%に次いで2番目で、成人ユーザの39%がSNSへアクセス経験がある。他の欧州諸国と比べるとドイツの3倍、フランスの2倍だ。
そして、どのSNSにプロファイルを持っているかというとFacebookが一番になっている。
参考:Social Networking Profile by Ofcom (Online Ad 2008/04/04)
Source:Ofcom / Social Networking

Web 2.0コンポーネント中で一番、滞在時間が長いSNSは太く、広いタッチポイントだ。そして、こと34歳未満の英国インターネットユーザへの訴求チャネルとしてSNSを使うことができ、中でもFacebookということになる。

慈善活動、政治や社会活動グループがFacebookにページを持つだけではなく、企業・ブランドが積極的に活用し始めている。

2008/10/24

Chrysler 30% of ad budget goes Online

ChryslerのCMO、Deborah MeyerがIABのMixxコンファレンスでClickZのインタビューに対して、「広告費の30%をデジタルへ配分した」と語っている。

Ad AgeやB2B Onlineが伝える「GMやMSは2~3年かけて広告予算の半分をデジタル化する」という動きに競合他社も足並みをそろえてきたといったところだろうか。

自動車メーカーは消費者の信用収縮により大きな打撃を被っているし、マーケティング予算の締め付けも厳しくなっている。だからこそ、「すべての予算は以前の十倍は働いてもらわなければならない。だから、(デジタルへの移行は)途方もない急速なスピードで進んでいる。予算枠に聖域はない」とMeyerは語っている。

Source:Click Z / Chrysler CMO: 30 Percent Goes to Digital

ところでChryslerが活用するデジタルマーケティングのフォーマットのひとつとして、Vibrantのテキスト内ビデオ広告がある。Vibrantのフォーマットは3つある。
  1. 拡大ビデオ:文脈ターゲティングとあわせたビデオ広告(マウスオーバーで拡大)
  2. 標準ビデオ:文脈ターゲティングとあわせたビデオ広告
  3. 拡大Flash:文脈ターゲティングとあわせたビデオ広告(マウスオーバーで拡大)
Source:Vibrant

Vibrantは2000年に創設された企業だが、ロイターが伝える今年5月のcomScoreのデータによれば毎月、1.25億ユーザにリーチしているそうだ。今後とも目を話せないソリューションだ。

Source:Reuters

2008/10/23

Chinese Consumer Trends

Mckinseyから「What's new with the Chinese Consumer」というレポートが出ている。

それによると中国の消費者は、使ったことのない製品には二の足を踏みながら、ブランド決め買いではなく購買の最終段階でブランドを決定しているようだ。TV広告は威力があるが若干低下傾向で、印刷媒体は力がなく、スポンサーやオンライン広告の影響力が増している。

2007年ならブランド決め買いや候補を絞り込んでいた消費者が73%いたが、2008年には決め買いが22%へ低下し、合計で63%に落ち込んでいる。また、ブランドのプロモーションや特売セールで最終判断をする消費者が2007年の27%から37%へ増えている。
次に、月に5,000元以上の収入のある高額所得者セグメント(全体の15%)が、生活用品あるいは家電製品にどれくらいのプレミアムを支払うかを比較したデータがある。

例えばTV(CRT)なら通常価格が1,800元のところ、15%の消費者はその61%割増の2,900元まで支払うようだ。

中国の消費者全般ではどれくらいのプレミアムを払うかとなると、たった2.5%しか出さないという結果がありながら、家電製品で平均60%以上のプレミアムを払う高額所得者がいる。現在のところ全体の15%だが、2015年には過半数に届くと予想されている。
さて、中国の消費者への訴求チャネルだが、世界共通で家族・友人のWOMがトップ、次にTV広告が29%で続いている。2007年と比較するとWOMは6%、TVCFは4%インパクトが向上している。

ところが伸び率で見ると、インターネット広告が36%、インターネットでの製品記事が30%、インターネットフォーラム・Blogが27%もアップしている。インターネット関連のコミュニケーションチャネルが他を圧倒している。

煽りを受けているのは雑誌が17%ダウン、新聞が11%ダウンだ。
Source:McKinsey / What's new with the Chinese consumer (要登録)

TVCFに関して重要なポイントがある。中国の消費者はまずTVでCFを見なければ製品購買の検討リストにあがってこないということだ。41%がそう答えている。ただし、2007年の数字は56%だった。特に、LCDなどのフラットスクリーンTVの場合、18%ポイントも下がり38%にまで落ちてきている。

生活用品とは違い、相応の価格であるフラットTVの場合、TVCFの影響力が極端に落ちているということだ。フラットTVを購買できるほどの消費者層であればインターネットは必須メディアだ。その影響がTVを上回りつつあるということだ。

これは何も中国だけに限った話ではない。7月に取り上げたHarris Interactive/Fleishman-Hillardの調査によれば、仏はすでにメディア消費時間でインターネットがTVを上回っているし、購買決定への影響力は英独仏ですべてインターネットがTVを上回ってトップになっている。

参考:Digital Influence Index Study (Online Ad 2008/07/02)

そしてインターネットは国境のあるメディアではなく、世界をつなぐグローバルメディアだということを理解する時期はもう始まっている。

2008/10/22

Agencies unsatisfactory

ANA年次総会のCMO円卓会議におけるHPやCharles SchwabのCMO達のコメントを拾ってみる。
  • Steve Sullivan, SVP, Liberty Mutual Group
    「マーケティングとは消費者にメッセージをプッシュするのではなく、消費者と共同で体験を創造することだ」
  • Gary Elliott, VP, Corporate marketing, HP
    「マーケターとしてコミュニティを持たずに会話を行うのは難しい」
  • Becky Saeger, CMO, Charles Schwab
    「投資家や金融関係者としてではなく、彼らの生活している世界で消費者として彼らを考えることが私のミッションだ」
彼らには、一方的に既成マスメディアを経由したメッセージを提供する限界はすでに見えている。インターネットが開いたWeb 2.0というスペースは対等でオープンな会話しか消費されない。だからオープンなコミュニティに参加を募り、そこで消費者の洞察を得ようと努力するしかない。金のなる木ではなく、一人の人間として同じ高さの目線で考えようとしている。

という背景があるので、Ad Ageが取り上げているGary Elliott (HP)のコメントは、その背景を理解していない広告代理店と、その限界を克服するために媒体社との直接取引きを試験的に行うことまで言及している。

Gary Elliottは、
広告代理店を中抜きして媒体社との直接取引きをする魅力
と、
自身が崩壊していると見なす広告代理店モデルを修復するための実験
を熟考したと語っている。

なぜなら「ある程度の実験を行うことなく、今までの(広告代理店との)関係を継続するほど十分に満足しているわけではないと言わざるを得ない」からだ。

Source:The Advertiser Magazine online / Adjusting to a New Landscape
Source:Ad Age / CMO Annoyed by Agencies, Ad Networks

今までの関係は、単純化すれば「スペース枠」や「時間枠」を売ること、すでに隅々まで検証され、構築されたメカニズムを活用したメディアミックスを提案をするだけだった。広告主にとっても、広告代理店にとっても既成マスメディアに広告を出稿することは非常に効果があり、手離れが良く、利益率も高いビジネスだった。

しかし、その効果に陰りが射し、ブランドのコントロールがブランド以外の手に移りつつある現在、膨大な露出を投下し、GRPを獲得するといった今までのマインド思考では追いつかない。ところが昔の夢が覚めるには時間がかかる。一発で何億円、何百万ドルといった商売をしてきた広告代理店は、やれ、PVだとか、CTRだとかを説明しなければならず、一桁も二桁も売上の少ないオンライン広告を提案したがらない。提案するとしてもマスメディアの刺身の妻的提案だ。また、虎の尾を踏むことになりそうなWeb 2.0の現状説明もしたがらない、というかわからないのでしない。また、広告主側もあまりそういった説明を要求してこない。

周りが見えない広告主側は、広告代理店が持ってくる提案をそのまま承認するだけだ。特に海外広告という一種、ニッチなセグメントの場合、昔からの出稿媒体を踏襲しているだけで仕事ができてしまう(と思っている)。

しかし、周りが見える、周りを見なければビジネスが立ち行かない、周りの一歩も二歩も先を見据えてビジネスを行う企業、ブランドはそうは行かない。HPであれ、どこであれ、新しい時代に入ったことを認識し、その時代に最適なコミュニケーション戦略を必要とする企業は、新しいパートナーを求めている。今までの既成マスメディアやWeb 1.0時代をともに歩いてきた広告代理店が、新時代に適応できない限り、パートナーとなることはできない。

それでなくても将来的に中堅、あるいは大企業までも代理店を中抜きした発注システムができるかもしれないというのに、その危機感を持っている広告代理店の人たちはどれくらいいるのだろうか?

参考:Self-Service Ad Boosting (Online Ad 2008/10/15)

広告代理店には冬の時代が到来しつつあるし、広告主も新時代に沿った戦略を打ち出せない限り、そのブランドは消えるだけだ。そして消える日本ブランド数は多いのかもしれない。

2008/10/21

IBM Viral Marketing - Fight Carbon

IBMは10月1日から、YouTube、Facebook、DailymotionなどのSNS、そしてBehind the buzz、AdrantsなどのBlogを含む数言語のWeb 2.0スペースで「Fight Carbon」キャンペーンを開始している。
キャンペーンサイトには
  1. Reduce Carbon. See the benefits.
  2. Energy worries. Climate worries.
  3. Green IT. Green world.
という3つのテーマがあり、それぞれIBMのエネルギー&環境フレームワーク、資源節約&代替エネルギー活用、グリーン用システム・ソフトウェア・サービスを説明している。

このキャンペーンは欧州の全セクターにおける影響力のあるCレベル管理職をターゲットとして、バイラルビデオを使い、企業が持続可能なグリーン戦略を構築する支援を行うキープレイヤーとしてIBMを確立するために行われる。

Source:B2B Markeing Online / IBM goes viral with YouTube and Facebook for green message

このバイラルキャンペーンは今夏行われた統合メディアキャンペーンの後追いとして実施されている。こういったマスメディアとオンライン広告、そしてオンラインのバイラルキャンペーンを統合したキャンペーンが、コンポーネントの順序は別として今後の可能性を示しているのかもしれない。

それにしてもB2Bキャンペーンとして、グリーンが華々しい脚光を浴びている中、Ciscoに投げつけられたNortelの「Cisco Energy Tax」にしても、IBMの「Fight Carbon」にしても頭ひとつ抜け出すようなインパクトがある。

参考:Cisco Energy Tax (Online Ad 2008/09/16)

2008/10/20

Search Engine Q3 2008

Efficient Frontierから2008年Q3の検索エンジンレポートが出ている。

Efficient Frontierは20カ国、200社を顧客に持ち、SEMサービスを提供している。2007年Q3から2008年Q3まで、Efficientの特定クライアントの600億impression、4.28億クリックをベースに各検索エンジンの成果をレポートした最新版からまずCTRを見る。

非金融、金融の両カテゴリでMS LiveのCTRがトップ。これはYahoo!やGoogleが抱えるシンジケーションのないMS Liveの質の高いトラフィックが貢献している。ただし、CTRは低下している。
次にCPCおよびROIを見る。
CPCはGoogleが非金融で0.61㌦、金融で2.98㌦で3社中最も高い。前年比で4.7%アップしている。それを反映してGoogleのROIは3四半期連続で低下している。ROIで見る限り、MSが両カテゴリでトップの結果を残している。

Source:Efficient Frontier / Search Engine Performance Report Q3 2008 (pdf)
(要登録)

それにしても非金融カテゴリにおいて、Yahoo!にしても1%前後、MS Liveにいたっては3%を越えているというCTRは脅威的だ。上に書いた特定クライアントの600億impression、4.28億クリックから単純に計算すればCTR は「0.71%」だ。それでもまだ高い。通常のCTRであればYahoo!のそれの十分の一、0.1%前後ではないだろうか?

Efficientの非金融カテゴリには、旅行、小売、自動車、B2Bが含まれているが、どのようなSEMを行えば単純平均の「0.71%」をたたき出すことができ、MS Liveを使って3%を越えるCTRを出すことができるのだろう?

これはEfficient Frontierが抱える特定クライアントが、オフラインの露出が膨大なビッグブランドで、オンライン露出量が半端なボリュームではなく、オフラインとオンライン露出のシナジーがうまく機能しているからなのかもしれない。また、オンライン露出を行うサイト選択がポイントなのかもしれない。

しかし、どうしても眉に「○○」をつけたくなるような数値だ。

2008/10/17

Social Media in Africa

ReadWriteWebがアフリカを取り上げてシリーズ記事を書くようだ。10月3日にはその第一弾として、アフリカのSNSを取り上げている。

アフリカで最も知られている3大ソーシャルメディアプロジェクトとして、Afrigator、Zoopy、そしてUshahidi(スワヒリ語で証拠、証言)をあげている。

Afrigator:アフリカのBlogおよびニュースのアグリゲーター
Zoopy:YouTubeおよびFlickrと類似のサービス
Ushahidi:クライシス情報の報告およびマッピングエンジン
Source:ReadWriteWeb / Social Media in Africa, part-1

上記以外にも以下をリストアップしていた。
  • Muti.co.za (Diggに似た南アのニュースサイト)
  • Sokwanele.com (Ushahidiに似たSMS/マッピングアプリケーション)
  • Amatomou (南アのニュースおよびソーシャルメディアアグリゲーター)
  • BlogSpirit (ウガンダのBlogアグリゲーター)
  • Mzalendo (ケニヤ国会の動きをトラッキングするポータル)
Web 2.0の動きは先進国に留まらない。世界中でメディアパワーを持ったユーザ達が発信、共有、消費するスペースを持ち始めている。

2008/10/16

China #1 Broadband country

Point Topicのニュースによると、とうとう中国が米国を抜いて世界最大のBB大国になった。

2008年Q2までは米国がトップだったが、
8月末で米国および中国のBB回線数は7,800万で並び、Q3の推定では中国が米国の2倍以上にBB回線数を伸ばすため、中国が世界一になったと推定している。
Source:Point Topic / China overtakes the USA to be world broadband number 1
Source:Point Topic / World Broadband Statistics Q2 2008 (登録必要)

これで中国は世界最大のインターネット大国であり、世界最大のBB大国になったことになる。
Source:InternetWorldStats.com

さて、2008年Q2時点で年間のBB伸び率トップ10カ国にインドネシア、パキスタン、ベトナム、フィリピンが入っている。
80%~100%以上の伸びを示すこれらのアジア諸国のBBユーザは、email、IM、Chatをやり、Webだけを見ているのではない。Blogを書き、SNSに参加し、YouTubeやFlickrもやり、ストリーミングビデオを見ている。そして国内サイトに必要な情報、コンテンツがなければ海外サイトへアクセスすることになる。

Alexaで見るとYouTubeの国別アクセス比率で米国ユーザはたったの25.4%だ。四分の三近くがその他の全世界からアクセスしてくるユーザなのだ。

海外サイトへアクセスしたユーザは最新情報、コンテンツを国内に持ち帰り、国内へ再露出してくれる。再露出されたコンテンツは各国内で拡散してゆく。なぜ、渋谷でFree Hugキャンペーンがあったのかそれ以外の理由があるのなら教えてほしい。

参考:Fee Hug Campaign : Global Viral Effect (Online Ad 2006/12/05)

2008/10/15

Self-Service Ad Boosting

つい先日、「Strategy of NYT -3」でNYTがSMB向けにセルフサービスの広告サービスを開始したと書いたが、Msnbc.comも同様サービスを開始したようだ。(下をクリックでサイトへ)
Media Postによると、NYTimes.comも、Msnbc.comもAdReadyを採用しているようだ。2サイト以外にもMySpace、Facebook、LinkedIn、NaturalPath Media、Zillow、そしてTruliaがAdReadyを採用している。AdReadyは2006年に設立されたばかりの会社だ。

Source:MediaPost / Msnbc.com Offers Self-Service Via AdReady
Source:AdReady.com
参考:Strategy of NYT -3 (Online Ad 2008/09/26)

Msnbc.comはSMBに加えて、地場・ローカルな広告主にもニュースサイトへの広告門戸を開くことになる。広告主は、車、娯楽、金融サービス、旅行など16業界向けのドラフト広告原稿が用意されているので、10分で広告が作成できるそうだ。

AdReadyの営業・ビジネス開発のSVP、Mark Feldmanは、「隣近所の小売店からネットワークメディアまでのすべての人がゲームに参加できることになる」、「これによってまったく新しい戦場が開発されることになる」と語っている。

それに続いてFederated Mediaも中堅・大企業向けに行っていたSelf-service ad platformを中小、零細、SOHOなどすべての規模の広告主に開放したとMarketing Voxが伝えている。(下をクリックでサイトへ)
Source:MarketingVox / Federated Media Broadens Ad Platform, Launches Idea Exchange

これらのシステムが米国から欧州、アジアへ進出してくると既存広告代理店の仕事は、今のところ一部はなくなる。そして2年後、5年後に広告代理店の仕事はどれほど残っているのだろうか?

2008/10/14

Brand Visibility in Web 2.0 -2

1週間前に「Brand visibility in Web 2.0」を書いた。

そのサマリをSlideShareにアップしたのでどうそ。このサマリはWeb 2.0スペースでの露出をウェートをかけてスコア化したものをまとめたものだ。

ここに見えているのは広告露出だけではWeb 2.0スペースの住人、ユーザとのエンゲージメントが困難だということだ。一方的なコンテンツ提供だけでは、コンテンツを共有、消費、再発信してもらうことはできない。広報、宣伝という部署だけではWeb 2.0スペースへ参加することができないということだ。

そして、従来からの体制ではこのWeb 2.0スペースへ参加することや、コンテンツを共有してもらう必要性を理解することも、説明や提案を受けることもできない。このままでは日本発ブランドの海外での存在は危うくなる可能性がある。CMOがいない日本ブランドに中長期的な危機が忍び寄っている。


参考:Brand visibility in Web 2.0 (Online Ad 2008/10/07)

2008/10/10

Online Reputation Management

9月7日、Florida Sun SentinelのWebサイトに、「United Airlinesが破産申請した」という2002年の記事へのリンクが「Popular Stories Business : Most Viewed」というセクションに掲載された。それをGooglebotが釣り上げ、Google Newsがその記事を取り上げ、それらをピックアップしたBloomberg経由でWall街へ伝わり、United Airlines株価が取引停止になる前に75%も下落してしまったという事件があった。

下はNYTimes.comの「A Stock-Killer Fueled by Algorithm After Algorithm」という記事に掲載されていた画像だ。左からSun SentinelのPopular Stories Business : Most Viewedセクション、Google News、そしてBloombergのターミナル画面だ。
Source:NYTimes.com / A Stock-Killer Fueled by Algorithm After Algorithm
Source:MarketWatch / Tribune Findings on United Airlines Story From December 2002
Source:United Airlines Statement

Sun Sentinelの親会社であるTribuneによれば、トラフィック量が原因だと言ってはいるが、昔の記事が突然、日曜日の朝のWebサイト画面に現れ、6年前の亡霊がインターネットをさ迷いだしたおかげで、インターネットの隅々に目を光らせているGoogleがその亡霊にスポットライトを浴びせ、株価が急落してしまったわけだ。

企業が提供するコンテンツ、ユーザ・顧客などが提供するコンテンツ、そしてメディアが提供するコンテンツなどインターネットに露出されるコンテンツ様々だ。企業・ブランドがコントロールできるコンテンツはその何割、あるいは何十分の一、何百分の一にしか過ぎないのかもしれない。クレーマーなどが理不尽に書き込むBlogエントリやコメントなどコントロールできないコンテンツによって、企業・ブランドにネガティブなイメージを与えることもある。が、今回のように企業・ブランドの価値(株価)を下落させることもあるわけだ。

今回のようなケースに対応するリスク管理をやっている企業・ブランドはいるのだろうか?

SearchViewのNoah Mallinがアドバイスしている。

United Airlinesは広報担当者からステートメントを発表させるなど既成のリスク管理対応をしたが、誤報のソースおよびそのプラットフォームであるインターネットに対しては何も対応していない。混乱した投資家はまずインターネットで最新情報を探るわけだが、ごちゃ混ぜになった情報が錯綜した状況で何が真で、何が誤なのか判断する時間がない。となると、投資家は損切を考えて株を売ることになる。

そこでステートメントのコンテンツだけに絞ったランディングページを用意し、「United bankruptcy」や「UAL bankrupt」といった検索キーワード広告を打つか、United Airlines(ランディングページ)のURLを下につけた「"United Airlines bankruptcy story false - see the truth"」といったスポンサー広告を出すだけで、混乱した投資家を正しい情報へ誘導することができる。

そして重要なのは、この作業はほんの数分でできるということだ。

Source:SearchViews / Online Reputation Management : United Misses Flight on SEC and Paid Search

以前、『「65万台のPS3が回収」というガセネタがDiggのトップを飾り、数百人がそれをクリックしてしまった』という話を紹介した。
参考:Fake News Story Games Thousands of Digg Users (Online Ad 2006/11/23)

現在、世界中を席巻する金融危機は、疑心暗鬼の塊となった投資家、企業、金融機関の動きで大きく揺れている。誤報、あるいはガセネタや対抗企業が流す悪意のある虚報などをコントロールするために必要な情報、知識、作業を準備しておくことは重要だろう。

なぜなら企業・ブランドがコントロールできるコンテンツ・情報は少なく、インターネットというメディアを消費、コントロールしているのは一般のユーザだからだ。

2008/10/09

Free Paper

WAN(World Association of Newspaper)のデータを見るとフリーペーパーに関するものがある。

それによると
  • 2007年、312紙のフリー日刊紙が発行され、
  • 4,104万部が毎日発行され、
  • 発行部数は前年比20%増、
  • 発行部数は5年間で173.2%増となっている。
また、
  • 全世界の新聞発行部数の7%をフリーペーパーが占め、
  • 欧州では23%、米国で8%、アジアで2%を占めている。
代表的なフリーペーパーは
  • Metro 英国 137万部
  • Leggo イタリア 105万部
  • 20 Minutos スペイン 100万部
  • Metro カナダ 99万部
  • Que! および ADN スペイン 96万部
となっている。

Source:WAN (pdf)

WANは2007年に新聞の発行部数が2.57%も伸びたとしている。が、伸びたのは南米が6.72%、アジアが4.7%で、欧州は1.87%減、北米は2.14%減となっている。23%のシェアを持つフリーペーパーが、欧州の既存新聞を危うくしている。

2008/10/08

US Department of State in Web 2.0

昨日、「Brand Visibility in Web 2.0」でブランド可視性について書いたが、Web 2.0スペースへ進出しているのはなにも一般企業だけではない。

米国の国務省はFacebook、Twitter、Flickrにページを持ち、様々なコンテンツ・情報を発信・露出している。
Facebookのページ(以下をクリックで、それぞれのサイトへ)
Twitterのページ:
Flickrのページ
参考:Brand Visibility in Web 2.0 (Online Ad 2008/10/07)

コンテンツを消費するユーザが今、いる、場所はどこなのかが分かっていれば当然の話だが、ブランドコンテンツを消費してくれるユーザや顧客、アドボケーター、アーリーアダプターがどこにいるのかも調査せず、既成レガシーメディアに予算をつぎ込むだけの企業・ブランドが多い。

それに比べると米国務省は日本企業・ブランドの数歩先を行っている。米政府機関が米国サイトに露出しているだけだと考える向きには「Global Online Branding」のプレゼン資料を参照していただきたい。

参考:Global Online Branding (Online Ad 2008/09/21)

2008/10/07

Brand Visibility in Web 2.0

Web 2.0スペースには様々なサイト、サービス、ツールがある。その中でもコアなタッチポイント22箇所でのブランドの可視性をスコア化して出してくれるサービスをHowsociableが提供している。

22タッチポイントには、Technorati、Blogger、Twitter、Facebook、MySpace、LinkedIn、del.icio.us、YouTube、Yahoo!、Google Search、Flickr、Beboなどがある。それらでの露出件数を検索し、スコア化し、それぞれにウェートをかけて総合的なブランド可視性スコアを出している。

例えばTVメーカー11社のブランド可視性を比較してみると、Sonyがトップで可視性スコア2,266、Sharpが1,539、LGが1,529、そしてSamsungが1,473となっている。飛びぬけているSonyを三強が追っているといった形だ。以降は、Pioneer、Philips、Panasonicと続き、最下位はHitachiの442となっている。(このスコアは露出数、リンクなどが増減するため日々、変動している)
それをタッチポイントごとの合計スコアで見ると、Sonyは「del.icio.us」での大量露出が大きい。タッチポイントごとの合計スコアではLGが33,659、Sharpが32,237となっているが、上の総合スコアでは順位はSharpが2位、LGが3位となっている。LGが高スコアをたたき出しているPhotobucket、Magnoliaのウェートはそれほど重くなく、NingやUpcomingenventsのウェートが高いようだ。
サマリご希望の方は詳細プロファイルの連絡先へ

Source:Howsociable.com

Universal McCannの資料によれば、16-54歳で毎日、あるいは一日おきにインターネットにアクセスするアクティブなユーザは4億7,500万人いる。Blog閲覧、SNS参加、写真・ビデオサイトへアクセスするユーザは2~3億人いるわけだ。これらのユーザはWeb 2.0スペースでのブランド露出を消費しながら、自分のWeb/Blogからブランド露出を拡散してくれている。

このブランドアドボケーターにブランド、コンテンツを提供するチャネルとして典型的な22チャネルでどのように露出を行っていく戦略を構築しているブランドはまだない。

Source:Universal McCann / Wave III
参考:Blog Write and Read (Online Ad 2008/06/10)

2008/10/06

Internet in South America

InternetWorldStats.comが南米のデータをアップデートしていた。

OECD加盟30カ国のインターネット普及率は約61%だが、南米のインターネット普及率はそれ以外の地域と比べると高い。世界平均の約22%を大きく超える27%だ。
といっても驚くにはあたらない。

以前、Global Mobile Mindsetで紹介したが、[南米の携帯電話、MP3/iPod(西欧と同率)、スマートフォーン普及率がトップ、そしてBlackberryなどのPDAは西欧に次ぎ2位、米国の 10%を上回っている。また、南米、アジア、東欧諸国の人々は、北米や西欧諸国の人々より携帯端末を使いこなしている考えており、米国の50%、西欧の 58%と比べ、南米で73%、東欧で69%、アジアで63%の人々が携帯テクノロジに熟練していると答えている]のだから。

南米の人はPCを通り越して携帯でネット接続するのが主流なのかもしれない。
参考:Global Mobile Mindset (Online Ad 2007/03/16)

そして国ごとのユーザ数を見ていくと、ブラジルがダントツだ。
Source:InternetWorldStats.com / South America

Ciscoの調査を伝えている人民網(英語版)によると、ブラジルは今年半ばにBBユーザが1,000万を超え、前年比48%増となっている。BB世帯は13%、固定BBおよびモバイルBBユーザはそれぞれ872万、131万となり、それぞれ前年比33.24%、464%増だ。

Source:人民網(英語版) / Brazil's boradband and internet subscribers reach 10 million by mid 2008

BRICsとは云われるが、すでに中国は米国を抜き、世界最大のインターネットユーザ(2億5,300万)を擁し、インドは6,000万で日本に次いで4位、ブラジルが5,000万でドイツに次いで6位だ。それに比べるとロシアのインターネットユーザは3,270万人で11位と遅れている。

2008/10/03

Cisco Human Network

Ciscoの「The Human Network」というキャンペーンの2段目、2年目のキャンペーンが開始されたとBrandweekが伝えている。

このキャンペーンは、インターネットのネットワークが人々やビジネスに与えるインパクトを示すことで、スイッチやルーターといったネットワーク機器のサプライヤーというCiscoのイメージを、コミュニケーションと情報を提供するプロバイダーという位置づけへ変更することが目的だ。

CiscoはこのキャンペーンにTVCF、オンライン、プロダクトプレースメントを活用し、印刷媒体は除外している。最初のTVCF、「save money, travel less effct」に続き、「the new collaboration effect」、「the break down barriers effect」、「the power when you need it effect」、「the launch products faster effect」、「save the planet effect」、「the knowledge is power effect」というシリーズが予定されている。

下は「save money, travel less effct」のTVCF。


Ciscoは、昨年7,900万㌦のメディア予算を投下しているが、IBMの1億2,300万㌦、HPの2億4,800万㌦と比べると見劣りする。しかし、IBMが2位、HPが12位の中、Interbrandのランクは18位から17位へアップした。ブランド価値が上がってきているというところだろうか。

Nortelも今年の6月から「Business Made Simple」キャンペーンの予算を三倍の600万㌦に引き上げたそうだ。

Source:Brandweek / Cisco Evolves the 'Human Network'
Source:Interbrand / Best Global Brands 2008 Ranking

Ciscoは何も広告キャンペーンだけにマーケティング予算を使っているわけではない。TV、オンライン露出からのアクセスを誘引するHuman Networkというスペースを構築している。(下をクリックでサイトへ)
:「参考」では「Ciscoはすでに独自にSNSを立ち上げている」と書いたが、Human Networkのコンテンツが変更されたようだ。以前は「Share Your Story」や、Bloggerのエントリなどを紹介するセクションがあったが、現在は存在しない。
参考:Strategy of NYT -2 (Online Ad 2008/09/25)

スポーツ、仕事、コミュニティなどでのICT、通信機器、ヒューマンネットワークを活用した事例紹介や、TV番組内の製品プレースメントを一箇所にまとめたHuman Networkがなければコンテンツの消費やブランド理解は深まらない。ブランドとの親近感も醸成されない。

単純にトラフィックをWebサイトへ誘引し、コンバージョンやROIを計算する直販・ダイレクトマーケティング的な戦術では、ブランドは確立しない。

すべてとは云わないが、ネットワーク機器もコモディティ化が進んでいる現在、ブランド認知向上とトラフィック誘引および販促プロモーションに加え、ブランドイメージ・コンセプトを変換しようとするCiscoのブランド戦略が着実に成果をあげているようだ。

そのチャネルのひとつとしてNYTを使っているようだ。上の参考で書いたNYTのTimes Peopleだが、ユーザプロファイルの設定画面にCiscoはバナーを貼り、
Human Networkキャンペーンエリアへ誘引している。なお、一般的なアプローチであれば、ブランド企業側からの視線をベースにやれインフラだとか、複合システム構築だとか、やれ世界最速、世界最大といったタグラインがついたコンテンツを垂れ流すところだが、Ciscoはそれを避けている。消費者や顧客の生活、ビジネスを支援して何を可能にしているのかという点にフォーカスしている。

2008/10/02

Technorati - State of Blogosphere

TechnoratiからSifryがいなくなって今年はどうするんだと思っていたデータが出てきた。すでに他でも紹介されているが、ブランドとの関係を紹介してみたい。

ただし、その前にThe State of BlogosphereのDay 1に、下のようにUniversal McCann(UM)のデータが紹介されているが分かりにくいので少し説明を加える。
  • 184 million WW have started a blog | 26.4 US
  • 346 million WWW read blogs | 60.3 US
  • 77% of active Inernet users read blogs
UMは29カ国、17,000人を調査して16-54歳の中で、毎日あるいは一日おきにインターネットへアクセスしているアクティブなインターネットユーザのユニバースを4億7,500万人としている。
  • (その38.7%である)1億8,400万人がBlogを開設し、USユーザの26.4%がBlogを開設
  • (その72.8%である)3億4,600万人がBlogを閲覧し、USユーザの60.3%(あるいは6,030万人)がBlogを閲覧
  • アクティブなインターネットユーザの77%(3億6,600万人)がBlogを閲覧
としているが、その77%(3億6,575人)と2番目の3億4,600万人が合わない。UMのデータ自体、ちょっとおかしいと首を傾げざるを得ないところが他にもある(参考を参照のこと)ので、3番目は無視しておいたほうがよさそうだ。

Source:Universal McCann / Wave III
参考:Blog Write and Read (Online Ad 2008/06/10)

さて、Technoratiの方ではBloggerのオンライン会話の主要部分をブランドが占めているとしている。Blogエントリの五分の四以上(しばしば+たまに)でブランドが語られており、8割近く(同)はショップやカスタマーセンターなどでの日常経験を書き込むようだ。また、三分の一以上のBloggerは企業からコンタクトされているそうだ。
驚いたことにBloggerの37%は既成メディアにエントリを取り上げられているらしい。これはそれだけBlogの信頼性があがったということだし、ニュースソースとして確立してきたということだ。だから、Bloggerの半数は今後5年以内にはBlogがニュースやエンタメ情報の主要ソースになると信じている。

そしてアクティブなインターネットユーザ4億7,500万人のうちBlogを閲覧している72.8%(3億4,600万人)は、TVを見ていない。米国成人の平均が週24時間TVを視聴しているところ、たったの8時間、三分の一だ。逆にBloggerはインターネットを26時間利用しているが、Bloggerではない米成人は14時間しか利用していない。
Source:Technorati / State of the Blogosphere 2008
Source:Technorati / Day 5 : Brands Enter The Blogosphere

週26時間インターネットを利用している米国Bloggerは、TVを見ず、ブランドマーケティングのコントロールの及ばないところでブランドの好き嫌いをエントリで語り、インターネットWOMを拡散している。だからこそ、三分の一のBloggerはブランドからアドボケーターにならないかとコンタクトされている。

メディアシフトはすでに起こっているし、対岸の火事でもないのだが...。

2008/10/01

Nintendo Least Green Tech Firm

おなじみのGreenpeaceのGreener Electronics Guide9月版が出ている。

前回の6月ではSony EricssonとSonyがトップで、前々回のトップからNokiaが滑り落ちていた。
しかし、今回はそのNokiaが5点強から7点をたたき出してトップに返り咲いている。最下位は、これまたお馴染みのNintendoだ。
Source:Greenpeace / Greener Electronics Guide 2008 Sept

Nintendoが登場してから4回目のランキングだが、最下位が定位置となっている。

そういえば前回の結果に関してBBCが6月25日の記事に書いていた。「任天堂はもっともグリーンではないハイテク会社」だと。記事中に任天堂の対応が書かれている。
「グリーンピースは自発的な情報提供を行った企業の調査を行い、結果を公表している」、「Nintendoは調査に参加しないことを決定しているので、評価されてはいない」と。グリーンピースが勝手にランキングしているだけで、データは出してないからうちは関係ないと云っている。

Source:BBC / Nintendo 'Least green tech firm'

こういう話は前にも聞いたことがある。このグリーンネスガイドランキングを書き始めた最初にAppleの広報の話を紹介した。

Yahoo!によると、Appleの広報は、「このランキングを拒否する。(Green Electronics Councilによる、より技術的な評価では)当社の製品は市場でもっとも"Greennest"な製品」だと語っている。Green Electronics Councilによる評価ではAppleは、LenovoやDellよりも高い評価を得ている。

参考:Greenpeace Ranks Apple Last in Greenness (Online Ad 2007/04/09)

しかし、その後、AppleはSteve Jobsのオープンレターを出して対応を変えている。

参考:Panasonic and LGE Will Be the Worst in Greenness (Online Ad 2007/05/07)

NintendoもJobsのオープンレターにあるように、「製品からの有害化学物質排除、製品のリサイクルに関してAppleは、リーダーではないとある環境団体から批判され」たのであれば、リーダーであることを指し示すべきだろう。

このままNitendo、あるいは任天堂が、全世界あるいは国内においてGreenpeaceのランキングを拒否し続けた場合、Web 2.0スペースでのブランド価値は大きく損なわれることは間違いない。

以前、紹介したImmediate FutureによるとNintendoのソーシャルメディアでの評価はPositiveが大半だが、Negativeが増え始める前の対応は不要だろうか...?
参考:The Top 100 Brands In Social Media (Online Ad 2007/07/23)