2009/11/30

Social Media in Inc. 500

マサチューセッツ大学ダートマス校のマーケティングリサーチセンターからInc.500に選出された急成長の未上場企業のソーシャルメディア対応に関するデータが出ている。

まず、どれくらいソーシャルメディアを知っているかと訊いている。SNSが75%、Blogが67%、そして今年から調査が開始されたTwitterが62%だ。掲示板とオンラインビデオの比率が下がっているだけで、その他は全て2007、2008、そして2009年と認知が上ってきている。
次にどのソーシャルメディアを実際に活用しているかを訊いている。SNSがトップの80%、Twitterが二位で52%、そしてBlogが45%だ。掲示板、オンラインビデオ、Wikis、Podcastの活用率が下がってきている。
そして、今使っていないとしたら、これから使おうと考えているのは、Blogがトップで44%、オンラインビデオが36%、掲示板が32%、TwitterはPodcastと同じで27%となっている。
そして、使っているソーシャルメディアがうまくいっているかどうかを訊いている。WikisからTwitterまで80%以上がうまくいっていると答えている。評価が落ちたのはオンラインビデオだけだ。
ただし、これらソーシャルメディアがビジネスやマーケティング戦略に関してどれくらい重要かという判断になると、まだ不明だったり、それほど、ほとんど重要ではないと答えている企業もいる。
しかし、非常に重要、あるいはそこそこ重要だと判断している企業が多いことは間違いがない。
最後に、「ソーシャルメディアで企業名、あるいはブランドをモニタリングしてますか?」もっとも重要な質問をしている。
Inc. 500に選出される企業の68%が「モニタリングしている」と答えている。2007年に50%だったものが68%にまで伸びている。
Source:UMASSD / Social Media in the 2009 Inc.500 (pdf)

どのように「モニタリング」しているのか、その中身は分からないが、少なくとも68%の企業はソーシャルメディアで自社・ブランドがどのように語られているのか「聞き耳」を立てている。

マスメディアキャンペーン後にフォーカスグループからある意味でコントロールされたフィードバックをもらうより、企業・ブランドコンテンツそのものがどのように味付けされ、焼かれたのか、煮られたのか、蒸されたのか、あるいはどんなソーシャルコネクションをたどってそこへ行きついたのかを知る方がよっぽどましだ。そのためには、「聞き耳」戦略しか使いようがない。

Inc.500に選出された未上場企業だからフリーツール・サービスを使っているのが大半だろうが、一部は有料ツール・サービスを使い、深堀しているのだろう。それは自社の潜在顧客、アドボケーター、インフルエンサーを知るというもっとも基本的なマーケティングを行っているだけだ。だが、この「聞き耳」は、予算をかけたレガシーマスメディアキャンペーン効果に匹敵する。

2009/11/27

Early Adopter and Influencer in the World

「State of the Internet with a focus on Asia Pacific」というcomScoreのWebinarが19日にあった。

その中に次のスライドがある。

スライドの説明によれば、「世界中のオーディエンスは自国語のコンテンツ消費を望む」となる。豪、ニュージーランド、インド、シンガポール、マレーシア、英国、アイルランド、カナダ、プエルトリコ、南アなど英語圏、あるいはそれに近い国々を除くと、全て自国語のコンテンツ消費が過半数を占めている。
Source:comScore / Press Release

しかし、このスライドの本質は別にある。

それは韓国、日本、中国などのアジア諸国、デンマーク、ノルウェーなどの欧州諸国、コロンビア、メキシコ、ブラジルなど中南米諸国においても英語コンテンツ消費があることだ。

世界を駆け巡ったMichael Jacksonの突然死、Susan Boyleの歌声、他にも英語で発信されるコンテンツに世界中のユーザが群がっている。それはIT、ビデオ、映画、ミュージック、ネットワーク、PC、スポーツ、財務、経済、政治など自国、自社、自分に関連する、影響するニュース、情報、コンテンツが英語で発信されるケースが多いからだ。また、自国語で入手できるニュース、情報、コンテンツにも翻訳コンテンツが多い。

だから、英語くらいできる世界のアーリーアダプターは英語コンテンツを目指す。国内ユーザよりもいち早く、最新ニュース・情報を仕入れ、上手を取るために。そして、Facebookは言うに及ばず、LinkedIn、あるいはNingを使い自分でSNSを作り、各国に英語での個人的なネットワークを広げている最先端アーリーアダプターもいる。加えて、彼らは、最新ニュース・情報を自国語に訳して国内のアーリーマジョリティへ供給するインフルエンサーでもある。

彼らは欧州やアジア諸国、北米、南米に住んでいるかもしれないが、どこに住んでいるかは問題ではない。国境もなく、ビザもいらないインターネットがある限り、彼らは英語コンテンツを求めて最新、最先端のグローバルサイトへアクセスしている。彼らを国境で区切るテリトリ単位でマネージすることはできない。欧州支社や米国販社、南米営業所が、担当するテリトリにあるWebサイト経由で訴求できるわけはない。そんなことをしても彼らがテリトリ外の英語サイトから持ち込む、翻訳するコンテンツに影響を及ぼすことはできない。

彼らを担当できるのは企業・ブランド本社でしかない。

米国のグローバル企業なら意識することなく米国でレガシーメディア、オンラインメディア、ソーシャルメディアを使ったキャンペーン、プロモーションなどにより、英語コンテンツ、米国サイトへアクセスしている世界のアーリーアダプター、インフルエンサーに訴求できる。対話できるし、エンゲージすることができる。それを他国に本社をおく企業の米国販社がやろうにも予算も、人員も、権限もない。

それを担当できるのは企業・ブランドの本社でしかない。

2009/11/26

Police 2.0

以前、White Houseだとか、KremlinだとかがWeb 2.0化、Web 2.0対応してきたことを書いた。

参考:White House Web 2.0 -2 (Online Ad 2009/07/02)
参考:White House Web 2.0 (Online Ad 2009/02/17)
参考:Kremlin Open YouTube Channel (Online Ad 2009/09/16)

誰も読まないメルマガしかできない日本官公庁とのギャップがひどいことを目の当たりにしたのだが、英国ではもっと先を行っていた。

BBCが伝えるところでは、10月からノース・ヨークシャー警察のEd Rogerson巡査は受け持ち地区を巡回しながら、Twitterし始めたそうだ。住民へのアドバイス、事件発生や犯人逮捕、住民が外出中でも警官が巡回していることを伝えるために。
(クリックで彼のTwitterへ)
Screengrab of Pc Ed Rogerson's twitter page, Ed Rogerson
同じノース・ヨークシャー警察はFacebookのファンページも始める予定だそうだ。

一方、住民側から警察へコミュニティ情報を提供したり、警察の対応のまずさを指摘したりするサイトも立ち上がっている。(クリックでサイトへ)

また、ウェスト・ミッドランド警察はソーシャルメディアとうまく関連できるようにWebサイトを改善したし、Facebookページもあるし、幹部はBlogしたり、Twitterもしているそうだ。

Source:BBC / Police Open up to social media

ウェスト・ミッドランド警察の報道担当官は、
我々は人々と話し合いたいし、我々警察組織を変革するよう人々に話してもらいたい。

印刷メディアは縮小しており、今までのオーディエンスを失っている。

伝統的手段を放棄するのではないが、

より多くの人々がソーシャルメディアを利用している今、そのスペースが人々が話しあう場所ならば、我々はそこにいなければならない。
と語っている。

さて、なぜ、ウェスト・ミッドランド警察がソーシャルメディアに注意を惹かれたかと言うと?
それは、事件に関係するビデオがYouTubeにアップされ話題になっていた
からだ。

モニタリング、聞く耳、対話、オープン、対等、双方向といったキーワードが英国ではよく理解されているようだ。そして、ソーシャルメディア対応に必要な組織改革にも幹部の理解があるようだ。

2009/11/25

Social Media Monitoring Funnel

先週、SM2というソーシャルメディアモニタリングアプリ、サービスを提供しているAlterianのWebinarがあった。そこから2枚スライドを紹介する。

最初のものは、「エンゲージメントの新法則」。
既存マーケティングで金科玉条とされてきた数多くの神話が崩れ、今まで誰も考えもしなかった新しい法則が並べられている。

曰く、「一方通行から対話へ」、「ブランド想起からユーザが創るブランド価値へ」、「デモグラフィックから行動へ」、「ミシュランガイドからAmazonユーザレビューへ」、「パブリッシャーがコントロールするチャネルからパブリッシャーのリレーション構築へ」、そして最後に「CPMから計測可能なROI」が挙げられている。

パブリッシャーがコントロールするチャネルからパブリッシャーが構築するリレーションへ」で言われる最初の「パブリッシャー」は出版社などのマスメディア側、次の「パブリッシャー」は企業・ブランド、一般消費者と読み替えるべきだろう。

次のスライドは、ソーシャルメディアモニタリングファネルを示したものだ。これ自体は今年の2月、ignite social mediaで「The Social Media Monitoring Funnel」としてアップされていたものだ。
世界中に毎日、発生し続けるオンラインのバズは土砂降りのように降ってくる。このバズのうち3割~4割はブランドを取上げている。そのブランドバズをモニタリングし、フィルターしてキーワードを抽出。ターゲティングからノイズを削除し、修正、最適化を図り分析から行動へつなげるというファネルだ。

Source:ignite social media / The Social Media Monitoring Funnel

「エンゲージメントの新法則」、「ソーシャルメディアモニタリングファネル」を理解した場合、必ず、新しい組織が必要となる。既存組織のマインドセット、今までのカビの生えたような固定観念では何も新しいことを実行できないからだ。

そして、「エンゲージメントの新法則」、「ソーシャルメディアモニタリングファネル」を理解できない場合、今までどおりのマーケティング、広告、PRを単純にデジタル化するまでで終わってしまう。既存メディアに投下する予算が無駄になるだけではなく、オンラインメディアに投下する予算も無駄にしてしまう。

最後に、Web 1.0の墓碑銘に名を刻まれることになるのは、どの企業・ブランドだろう?
Source:SlideShare / Web 2.0 and the online conversation

2009/11/24

Credibility of Greenpeace

11月10日に、「Greenpeace Cool IT Challenge」を書いた。

参考:Greenpeace Cool IT Challenge (Online Ad 2009/11/10)

グローバルなIT企業の社長14人を
  • Public Climate Speech  10ポイント
  • Political Advocacy     25ポイント
  • Climate Solutions     50ポイント
  • Own Emissions Target  10ポイント
  • Renewable Energy Use  5ポイント
で評価した成績表をランキングしているものだ。

しかし、その中で10位にランクされたToshiba、東芝のCEOとして、A. Nishidaが挙げられている。東芝のCEOは今年6月、西田氏から佐々木氏へバトンタッチされている。(3位にランクされたFujitsu、富士通のCEOとしてK.Nozoe、野副氏が挙げられているが、こちらも9月に間塚氏へバトンタッチされている)
それをGreenpeaceにメールしたところ、10日には下の回答があった。
Thanks for taking the time to write to us. We'll be updating the Toshiba CEO page imminently.
しかし、24日になる今日まで、ランキングの似顔絵、CEO氏名は修正されていない。

Greenpeaceの「Greenpeace Cool IT Challenge」は、今年5月に初めて発表され、10月のランキングは2回目だった。5月のデータをそのまま使っているわけだ。

「上手の手から水が漏れる」とはよく聞く言葉だが、こんなところからでも名にし負うGreenpeaceの行動、情報収集、評価、分析、そして消費者対応にケチがつく。

また、一般の企業・ブランドの評価、評判も同じように毀損される可能性があるということだ。マスメディアしか大きな声にならなかった拡声器は、Blog、YouTube、Twitter、Facebookなど様々なソーシャルメディアスペースが代替してくれる時代になった。

そんな時代にマスメディアしかモニタリングしていないとしたら、毀損されるのはGreepeaceの名声だけではない。

2009/11/20

Razorfish FEED 2009

RazorfishのFEED 2009が出ていた。

まず、Forrester ResearchのNorth American Technographics Benchmark Surveyのデータを引いている。すなわち、「消費者はメディア消費時間の34%をオンラインに費やし、TVには35%。45歳未満の消費者はTVよりもインターネットで時間を消費している」ことから、「Digital Primacy(消費者はまずインターネットに手を伸ばし、動き、コネクトし、そして世界を知る)」という「デジタル最優先」というトレンドに入ったとしている。

Razorfishの調査では、消費者の57%は自身のホームページをカスタマイズし、フィード受信その他をしており、84%は友人とリンクやブックマークを共有している。そして55%はRSSフィードを受けている。

だから、オンラインニュースソースにレガシーニュースメディアサイト以外にも、Facebook、Twitter、その他が入ってきている。
加えて、消費者の84%はニュースソースとしてオンラインに依存し、76%はオンラインビデオを視聴、73%はSNSへアクセスし、62%は音楽を聴取している。また、56%はモバイルでもニュース配信を受けている。モバイルはローケーションベースアプリ、サービスという新しいビジネスを開こうとしており、「Digital Primacy」にモバイルを上乗せすると、「Connected Consumer」という姿が見えてくる。

この「Connected Consumer」をRogersのDiffusion of Innovationに重ねて、レイトマジョリティまでをカバーするとしている。
他にもデータはあるが、ちょっと面白いものがある。それは「どうしてTwitterでブランドをフォローしているのか」だ。

消費者はゲンキンだから、「特売や安売りをゲットするため」が43.5%でトップだが、「今使っている、持っているから」が23.5%、「コンテンツに興味や関心がある」が22.7%、そして、「自分の知っている人がファンだから」が6.3%となっている。
そして、それは「どうしてFacebookやMySpaceでファンや友人になるのか?」を見ても、同じ結果だ。

ここでも「ゲンキンな消費者」が36.9%だが、「今使っている、持っているから」が32.9%、「コンテンツに興味や関心がある」が18.2%、そして、「自分の知っている人がファンだから」が6.2%となっている。
Source:Razorfish / FEED 2009 (pdf)

ブランドへのロイヤルティや個人のソーシャルコネクションからフォローしていたり、ファンになっている消費者が多い。マスのレガシーメディアではできないことが、TwitterやFacebook、MySpaceというソーシャルメディアで実現できる糸口がある。が、それを理解しない限り、下図にあるように、ブランド認知、購買意思、購買決定、ブランド推奨がアップすると言った画は、食べられない餅でしかない。
しかし、大多数がまだ食べられない餅を夢見ている現在、すでに食べられる餅を口にしている先端企業・ブランドも存在する。多くの企業・ブランドは競合情報を競って仕入れているはずだ。しかし、こと、ソーシャルメディアマーケティングのケーススタディ、コスト、ROI、必要要員、予算などは仕入れる情報には含まれていないようだ。

2009/11/19

UK Search Engine Performance 2009Q3

昨日の、「US Search Engine Performance 2009Q3」に続いてUKの同じく、Efficient Frontier のデータから傾向を見てみる。

USとは違い、支出におけるQ2、ROIにおける2008年Q4のでのへこみはあるが、2008年Q3以降、順調と言えなくもないフローだ。特に前年比で支出も12%、ROIも10%アップしている。リーマンショックなんてどこであったのかしらと思うほど順調だ。
また、個別検索エンジンにおいてUSと明らかに違うのは検索広告費支出シェア、クリックシェアだ。USではそれぞれシェアを落としていたが、UKでは支出もクリックシェアもGoogleが伸ばしている。そして、Yahoo!もBingもじり貧だ。
そして、CPCもQ1から上昇傾向にあるBing、Yahoo!、下落傾向にあるGoogleというUSとは違い、UKではYahoo!を除きBingもGoogleも下げ止まっていない。Googleはキーワード単価が前年同期で30%も下落している。Bingは31%も落ちている。
Source:Efficient Frontier / UK Search Engine Performance 2009Q3

UKにおいてGoogleを使った検索広告はリーマンショックを跳ね飛ばし、他社を圧倒している。CPCが30%もダウンしようとGoogleだけは前年同期比で42%もインプレッションが上昇しているので、わが世の春だ。

それにしてもUKにおけるBingは勢いがない。そしてそれはUKだけかというとそうではない。ま、下の日本、豪、仏、独の各国における検索エンジンシェアは、Efficient Frontierの顧客実績ベースだから実勢とは少し離れているところがあるが、Bingの顔が見えるのは仏のみだ。

Bingの各国におけるプレゼンス、営業、パートナーシップ、ビジネスアライアンスに疑問符がつくような状況を打開しない限り、米国パターンが各国でも実現するのは難しそうだ。

2009/11/18

US Search Engine Performance 2009Q3

Efficient Frontierの顧客データからUS検索エンジンの傾向を見てみる。

まず、SEM支出は前四半期から5%アップしているが、前年同期ではまだ5%下回っている。ただ、ROIは前四半期から7%もアップし、前年同期とほぼ肩を並べるところまで回復してきた。
3大検索エンジンごとの売上シェアとクリックを見ると、Googleの売上シェアが落ちている。前四半期も、前年同期も下回り、73.7%だ。クリックシェアも前四半期を下回り70.65%になっている。
どうやらBingのシェア上昇が確実になってきた。Q2で4.3%だったシェアはQ3で1ポイントもアップして5.3%だ。クリックシェアもQ2の4.1%からQ3には4.8%まで上昇している。このシェア上昇分はGoogleから奪い取っている。
それは各検索エンジンのCPCを見ればわかる。Bing、Yahoo!ともにCPCがQ1から上昇傾向にあるが、Googleは下落傾向にある。特に対前年比でGoogleのCPCは25%も下落している。それだけCPCコストが高かったわけだ。キーワード競り合いに疲れた、敗れた企業がBingやYahoo!にシフトしたということだろう。ただし、CPC支出で前四半期を上回っているのはBingのみだ。
Source:Efficient Frontier / Search Enging Performance 2009Q3

2009/11/17

Consumers Open to Branding

PerfomicsとROI Researchから「消費者が日常生活でソーシャルメディアネットワークをどのように使っているか、特に新しい製品を探すときの他のメディアチャネルとの関係」を調べたレポートが出ている。

「消費者の場所で、彼らの言葉で」メッセージを出すことができるマーケターは、消費者を獲得し、売上につなげることができるというレポートだ。

例えば、
  • 34% ソーシャルネットワークで広告を見た後、それら製品・サービス・ブランドを検索した
  • 30% ソーシャルネットワークで新しい製品、サービス、ブランドを知った
などが挙げられている。

ただし、最も注目すべきは、
  • 25% ソーシャルネットワーク経由で友人に製品・サービス・ブランドを勧めた
だろう。FacebookやTwitterは、友人やフォロワーの個人コネクションがある。ユーザは、どちらも平均すると120人前後の友人やフォロワーを持っているから、タッチポイントひとつで最大120人にコンテンツを共有してもらうことができる。こんなメディアはないわけで、そして、情報ソースとして信頼される上位に入る友人から勧められた製品・サービス・ブランドの価値はマスメディア経由の情報よりも価値が高いからだ。



他にもTwitter、Facebook、YouTubeユーザごとにトピックを挙げている。

Twitterユーザ
  • 48% Twitterで広告を見た後、検索した
  • 44% Twitterで製品を勧めた
Facebookでブランドとコネクトしたユーザ
  • 46% 製品について話したり、勧める
  • 44% 製品を買いたい
YouTubeユーザ
  • 36% ソーシャルサイトで知った後、オンラインショップやECサイトへアクセス
  • 31% 他のチャネルで広告を見た後、ブランドについて話した
Source:Performics / Consumers very open to branding, marketing messages on social media sites
Source:MarketingProfs / Social Media Users Open to Branding, Marketing

Twitter、Facebook、YouTubeユーザのいずれもが、ブランドとのタッチポイント後、そのブランドコンテンツを友人やフォロワーと共有している。共有されたユーザは自身でブランドを検索したり、SNSのブランドスペースへ参加したりする。そこがセカンドステージのタッチポイントとなる。そこから次の友人やフォロワーへコンテンツが共有されてゆく。そして、また......。

親ガメ、子ガメ、孫ガメへと次から次へコンテンツが共有されてゆく。カメが接触するタッチポイントにおけるブランド側の体制やコンテンツが前提ではあるが、このフローがソーシャルメディアそのものだ。

しかし、このフローではブランドがコンテンツをコントロールできない。そのため、二の足、三の足を踏んでいる多くのブランドがある。また、自社コンテンツのIPRにがんじがらめになり、折角、コンテンツに手を加えて、カメの背フローに載せようとしてくれるありがたいユーザを拒否するブランドもいる。

消費者は納得したブランドコンテンツを喜んで自分のコネクションに広めようとしている。そして、ソーシャルメディアスペースでブランドに対してオープンな対話を望んでいる。

まず、オンラインモニタリングをするべきなのだが...。

2009/11/16

Auto Ad Outlook 2010

Borrell Associatetsが、「Auto Advertising : 2010 Outlook - Running On Empty」というレポートを出している。

それによると2008年、新車販売に関る広告費は全米で221億㌦だった。それが2009年には184億㌦へ16.8%もダウンすると見られている。ただし、2010年には4.1%増の192億㌦へ回復すると見られているが、本当にそうなるだろうか?
内訳をみると2009年の実績予想でもっともひどいのは新聞が28.5%減、続いてTVが22.8%減だ。これらが2010年にはそれぞれ1.9%、3.8%も増えると予想している。その根拠を見てみたいがフリーのサマリでは高望だ。
さて、オンラインは2010年に11.4%増の43億㌦と予想されている。そして、Borrell Associatesは、オンラインに関して次のように書いている。
Webは自動車広告に関して、その他多くの業界と同様に、甚大な影響を与えている。オンラインでの自動車広告に関して、「古き良き時代にはもう戻れない」ということがメジャートレンドになっている。
今年、ディスプレイバナー広告、ポップアップ、案内広告は20%ダウンした。一方、「自動車メーカーによるソーシャルネットワークキャンペーンは20%もアップした」。
また、今年もっとも伸びたのはストリーミングオーディオ、ビデオで、2010年にはそれが爆発する。
Source:Borrell Associates / Auto Advertising : 2010 Outlook

「古き良き時代」とは、広告を出しても出さなくても車が飛ぶように売れた時代、一方通行のコミュニケーションだけでも車が売れた時代、あるいは車を持つことが何らかのステータスシンボルだった時代ということだろうか?

それはTVや、新聞、雑誌ももちろんだが20%もダウンした「ディスプレイバナー広告、ポップアップ、案内広告」を見ればわかる。一方的な押付けコミュニケーションメッセージを消費するか、それとも破棄するかの選択しかなかった時代が、「古き良き時代」だ。オフラインでもオンラインでもそんな時代はとうに過ぎ去ってしまったのだ。

今、ユーザは瞬時に様々なソースから情報を収集し、家族、友人、知人、同僚などの声も参考にし、仕様・機能・価格を比較し、試乗をオンラインで手配することもできる。「新しい時代」、「ソーシャルネットワーク時代」に入ったのだ。

一方通行のコミュニケーションを意味する「古き良き時代」を抜け出し、「新しい時代」へ足を踏み入れた、例えば、Fordなどが率先している「ソーシャルネットワークキャンペーン」が、「古き良き時代にはもう戻れない」ことを意味しているのだ。「ソーシャルネットワークキャンペーン」によりFordが獲得した実績、効果、コストを目の当たりにした他社は、「古き良き時代」にしがみつく根拠を失いつつある。

そして、「古き良き時代」にしがみついている企業は、自動車メーカー、ディーラー、ディーラー団体に限らず、一方的コミュニケーション予算が削減されるとともに淘汰されるしかない。

2009/11/13

Pull PR

The Future BuzzのAdam Singerが、「Shift Your PR From Push To Pull」で、
企業が抱えるPRエージェンシーが、SEOやソーシャルメディアに関して分かっていのかどうかを判定するため、次の質問をした

そして、この質問に対する回答がPRエージェンシーがプルPRを理解しているかどうかを判定することになる。
として、10個の質問を挙げている。
  1. Are you implementing social media marketing, but not SEO?
  2. Do your social media and SEO efforts work together?
  3. How do you measure the return on investment of your social media engagement efforts?
  4. Is social media something you do in your spare time, or is it a core function that requires a dedicated resource?
  5. How much effort is put toward managing the search and social media friendliness of your corporate website?
  6. How strategic are the recommendations for the company blog?
  7. What is your company’s approval process for micro-blogging?
  8. Is your current PR agency effectively optimizing your news content for search and social media?
  9. What is your PR firm’s true core competency: traditional PR or social media and SEO?
  10. Have you considered hiring a social media specialist?
Source:The Future Buzz / Shift Your PR From Push To Pull

PRというと伝統的マスメディア向けのコンテンツ、メッセージ配信、そしてメディアリレーションズだった時代は遠い昔のようだ。マスのレガシーメディアは購読者数、発行部数減少にたたられ、オンライン上でのプレゼンスにも大きな影が差している。その上、SEOやソーシャルメディアを考慮しないプッシュPRではどんな効果もないという話だ。

彼が挙げた10個の質問の内、赤くした
  • 「ソーシャルメディアは片手間対応か、それとも専従を必要とする基幹業務か?」、
  • 「PRエージェンシーは検索およびソーシャルメディア向けにニュースコンテンツを最適化しているか?」、そして
  • 「PRエージェンシーの実際の能力は、伝統メディアか、それともソーシャルメディア、あるいはSEOに強いのか?」
に対して、どれほどの欧米企業が「YES」と回答したのだろうか?

そして、上の質問に以下を付け加えなければならない。
  • オンラインにおけるモニタリングをしているか?
  • データ分析をしているか?
  • インフルエンサーマーケティングを実施しているか?
欧米企業のPR戦略がプッシュからプルに移行する中、日本のグローバル企業・ブランドのPR戦略も見直しを迫られている。

2009/11/12

Involve me and I'll understand

以前、P&GのDigital Hack Nightで引用したLogic Emotionを書いているDavid ArmanoがBlogworld09でのプレゼンをアップしている。

参考:P&G Digital Hack Night (Online Ad 2009/03/25)
Source:Logic Emotion / Insights & Opinions From Blogworld09

スライドの初めに来る下の中国の諺、その中でも「Involve me and I'll understand.」は現在のマーケティング、PR、広告など全てに関ってくる金言だ。
多くの企業・ブランドがソーシャルメディアを活用して、消費者・ユーザと対話、エンゲージしようとしている。今までの広告、PR、マーケティングによるコミュニケーションという固定観念を払しょくし、新しいコミュニケーションチャネルと役割、立場を確立しようとしている。それはプッシュでも、プルでもなく、参加型であり、共同型であり、供創型でもある。また、それは「聞き耳」型でもある。ユーザの声を集め、それに対応する、口火を開く「対話」型でもある。

言われたことは忘れるかもしれないし、見たことは覚えられるかもしれない。が、一緒にやれば必ず分かりあえる」という立場は、対等、オープン、双方向の対話という作業を一緒に行う共同参加者を意味する。こちらの思い通りにコンテンツを消費してくれる参加者ばかりとは限らない。逆に思いとは反対のコンテンツを作成して広める困った参加者もいる。そんなスペースでやり取りをしなければならなくなった時代だ。昔の流儀は今、通用しないことを理解しない限り、昔の流儀に予算をつぎ込むだけに終わってしまい、今のユーザからはそっぽを向かれる。そんな時代だ。

だから、昔の流儀に染まった人達は今の流儀を理解できない。組織として昔の流儀に染まっている組織は生き残れない。それを理解した先進企業・ブランドは新しい組織を作っている。昔の組織のどこに、Social Media Marketingだとか、Social Communicationだとか、Social Marketingだとか、Communities and Coversationといった部や課があり、果てはCheif Bloggerがいるだろうか?

現行組織のまま、今の流儀を業務に落とし込むのは無理だ。縦割りではなく、横断組織でなければ行えない業務ばかりだから。法務、財務、ブランド、広報、広告、マーケティング、ユーザサポート、その他の部署が行う業務をつなげる形で行わなければならないからだ。既存組織の縦割りサイロに穴を穿たなければならない。そして、それを行う担当者がいない。そんな企業・ブランドに明日はない。

なお、諺を筆者流に訳したが、きちんとした日本語訳をご存知の方、ご一報ください。

2009/11/11

Samsung Viral Videos for Olympic

Samsungのバイラルビデオといえば、「Extreme Sheep LED Art」が有名だ。

参考:Extreme Sheep LED Art (Online Ad 2009/03/24)

それに続いて新しいバイラルビデオ2本がYouTubeにアップされている。



いずれも、「Experience the Unexpected」、「Become a Samsung Mobile Explorer」というタグが付き、www.samsung.com/vancourver2010へトラフィックを誘導するようになっている。
(クリックでサイトへ)
Source:YouTube / Awesome ice skating warm-up routine
Source:YouTube / Hardest hockey shot ever!!!!

上のマイクロサイトへ行くと、「Discover your every WOW MOMENT」とあり、ユーザに自分の「とっておきの瞬間」をビデオに収めて投稿するように呼び掛けている。その作品に対して投票が行われ、バンクーバーへの旅行、宿泊、携帯電話やいろんなものが当たるようだ。すでに400人近い人たちがエントリしている。しかし、応募要項を読んでいないらしく、中国、韓国、その他の国のユーザが多い。残念ながら応募できるのはカナダ在住のユーザに限られている。

それ以外にも「Team Samsung」、「OR@S」など他の仕掛けも用意されている。

しかし、世界を巻き込むスポーツイベントにしてはカナダだけをターゲットにしたキャンペーンのようだ。オリンピックに参加する世界の国々のユーザを巻き込む仕掛けはこれから出てくるのかもしれないが、もし、カナダに限定されているとすると、ちょっともったいない気がする。

ただ、少なくともウィンタースポーツのスピード感を味わえる動きのあるサイト作りと、カナダの山々を背景にしたサイトデザインは納得の出来栄えではないだろうか。

2009/11/10

Greenpeace Cool IT Challenge

10月13日に、「Greenpeace IT Climate Campaign Survey」を書いた。

参考:Greenpeace IT Climate Campaign Survey (Online Ad 2009/10/13)

そこでは取り上げなかったが、Greenpeaceは「Cool IT Challenge」というキャンペーンをやっている。

これは、IT産業が排出する温室効果ガスが気候変動に与えるインパクトが大きく、その影響が広く認識されてきたため、IT産業のグローバル企業に対して排出ガス削減と気候変動ソリューション提供を求めるキャンペーンだ。特徴的なのは以下の5項目に関して、各企業のトップ、CEOの成績表をつけてランキングするLeaderboardを出していることだ。全項目を合わせて100ポイント中、何ポイントを獲得しているのかを示している。
  • Public Climate Speech  10ポイント
  • Political Advocacy     25ポイント
  • Climate Solutions     50ポイント
  • Own Emissions Target  10ポイント
  • Renewable Energy Use  5ポイント
現在、14社がランキングされており、トップを飾っているのはIBMのS.J.Palmisanoだ。最も評価されているのは、自社の排出ガス規制の目標値を出して厳しく削減に努力していることだ。しかし、全項目を合計しても43ポイントにしか達していない。
Greenpeaceは成績表をつけるだけではなく、各社トップに対するアクションもリストアップしている。IBMのPalmisanoに対しては、
  1. IBMのSmarterPlanetBlogにコメント、フィードバックをしよう。
  2. Samuel Palmisanoページに対して、自分のWebやBlogにSamuel Palmisanoというリンクテキストを使ってリンクしよう。(GoogleでSamuel Palmisanoを検索するとGreenpeaceのページが検索上位に来るように)
  3. WebやBlogがないなら、参加しているSNS、FacebookやLinkedInの自分のページでIBMのページを共有しよう。
  4. Google、IBMそしてMicrosoftに対する誓願書に署名してEmailを送ろう。
と呼びかけている。

Source:Greenpeace / Cool IT CHALLENGE

ランキングされている14社の中には、当然、日本のグローバル企業・ブランドも5社ランクされている。Fujitsu、Toshiba、Sharp、 Sony、そしてPanasonicだ。残念ながら、5項目中、ポイントをひとつも上げられない項目を抱えている企業が多い。

ただ、今回のランキングは2回目で、5月の1回目ではSonyが7、Sharpが5、Toshibaが2ポイントしか獲得していなかったころからすると3社ともポイントをアップさせてきている。FujitsuとPanasonicは今回からランキングされているので次回、来年の2月の3回目に期待したい。
(追加:Fujitsuは初めてのランキングだが堂々の3位に入っているので、Panasonicに大いに期待したい)

さて、こういったGreenpeaceのキャンペーンに対して日本企業・ブランドはどんな対応を取るべきなのだろう?Greepeaceとともに世界中の賛同者、一般消費者を無視するのが最善の策なのか、それとも?

PRの専門家はどうお考えだろうか?ご意見、コメントをお待ちします。

2009/11/09

UNICEF RFQ for Global Mobile Strategy

10月27日付けでUNICEFが、グローバルなモバイル戦略を求め、RFQ(Request For Quotation)を出している。

背景に以下の説明がある。
UNICEFは、アドボカシー、資金調達、若人とのエンゲージメント、そしてリアルタイムデータの収集など、国単位でのモバイルキャンペーンには十分な実績がある。

しかし、我々がまだ実行していないのは、「これら国単位の多様なプロジェクトが、UNICEFが活動する世界規模でどのようにコネクト(連携)できるかを調査することだ

近年、モニタリング、評価、情報収集の革新や、それらとプログラムや供給機能との連携により、モバイル技術を活用する可能性が開けてきた。そのため、我々はこの知識を統合し、モバイル技術を活用したエンゲージメントを行うためフレームワークの基礎を構築したい。
ということで、「(NYにある)本部から効果的に各国ごとの活動を調整するため、UNICEFはコンサルタント、あるいはコンサルティング会社に対して以下を求める」としている。
  1. 国ごとのプレゼンス、戦略的な調整などを含んだ視点から、多様な携帯電話サービスプロバイダーの活動を図示する。
  2. 現在までのUNICEFのモバイル戦略を分析する。
  3. グローバル、リジョナル、そして国レベルでのステークホルダーをターゲットとした戦略を提案する。
Source:UNICEF RFQ
Source:Mobile Marketer / UNICEF seeks outside help for mobile strategy

11月6日が締め切りだったが、何人、何社が提案書を提出したにしても、そのモバイル戦略にはSNS、Twitterなどが入ってくることは間違いがない。パーソナルなインターネットデバイス、ダイレクトなエンゲージメントデバイス、そしてコンテンツの拡散デバイスである携帯を起点として、個人のコネクションを活用する戦略の中にSNSやTwitterは欠かせないスペースになるからだ。

提案書では、このコネクションの中でコンテンツがダイレクトにリレーされ、消費され、次のコネクションへ再露出されてゆく画を描くことになるはずだ。

UNICEF、国連児童基金とは、「全ての子どもたちの権利が守られる世界を実現するために活動する組織」だ。

Source:ユニセフとは

営利を目的としないこういった団体までも、活動の効果、効率を上げるためグローバルなモバイル戦略を模索している。UNICEFが出したRFQこそ、世界のグローバル企業・ブランド、そして日本のグローバル企業・ブランドが出すべきRFQではないだろうか?

2009/11/06

Social Media PR Disaster

9月10日、YouTubeに「Danish Mother Seeking ...」というビデオがアップされた。
9カ月の女の子、Augustを抱えた若い母親、26歳のKarenが切々と訴える。「コペンハーゲンで知り合い、一晩を過ごした旅行者、Augustの父親を探してほしい」と。

このビデオはたった4日で100万回以上視聴され、Karenに対して親身になったコメントが書き込まれていた。しかし、このビデオは13日(あるいは14日)にはVisit Denmarkの要請によって削除されている。

以下が、「Danish Mother Seeking ...」へのリンク、http://www.youtube.com/watch?v=4-kKQKgMZxY&feature=player_embedded#t=21 をクリックした際、表示される。
This video is no longer available due to a copyright claim by VisitDenmark. 」と。


なぜ、Karenが投稿したビデオをVisit Denmarkが削除要請できるのか?

というのは、このビデオはVisit Denmark キャンペーンの一環で、Greyが制作したものだったからだ。

このビデオはデンマークで強く批判された。しかし、それはデンマーク国内で賛否両論の混乱を招いたからでも、デンマークを一種の性的観光地としてプロモートしたからでもなく、「嘘の広告」を制作したことについてだ。「嘘をついて、人々の気持ちをもてあそぶべきではなかった」ということらしい。

このビデオは、一時期、世界中を駆け巡った「The Best Job in the World」の向こうを張って世界中にバズを広めるのが目的だったようだ。VisitDenmarkのManaging Director、Dorte Kiilerichによれば、このビデオは「我々が行ったマーケティングの中でも最も効果を挙げた」そうだ。しかし、代償は高くついた。Kiilerichが辞任したとCopenhagen Postが25日に報じている。

Source:Viral Blog / Danish Mother Seeking ...
Source:Marketing Safari / Who's your daddy?
Source:Copenhagen Post / VisitDenmark director resigns

もし、このビデオがデンマークに対する注目を集めたとして、一体、どんなコストを払った上でかを検証しなければならない。その意味で、このビデオがもたらしたのはマーケティング効果ではなく、PRディザスターだろう。

2006年、Sony、MS、Wal-MartなどがやらせBlogで叩かれたのは記憶に新しい。それからこの種、ヤラセ、ガセの噂を聞くこともなくなっていた。Blog、Blogger達などを意図的に、あるいは悪意により操作してといったマーケティング手法は固く封印されたはずだった。

ただ、「The Best Job in the World」の成功を横目に、VisitDenmarkが誘惑に負けて禁断の蓋を開けたともいえる。しかし、VisitDenmarkが開けたのは単なるパンドラの箱ではない。2006年当時ならいざ知らず、Blog、SNS、Twitter、YouTubeなどのソーシャルメディアが咲き誇る2009年だ。

ビデオが投稿された直後から、真贋を疑うBlog、Twitterがあり、YouTubeにはリプライビデオとして揚げ足取りのビデオも投稿されていた。デンマークへの注目を集めるよりも、背後にある目的探しの方が注目を集めていた面もあった。

さて、ソーシャルメディアが咲き誇る2009年という現状認識が欠落したマーケティングが引き起こしたPRディザスターをどうやって終息するか、ブランドレピュテーション被害を軽微にとどめ、早急な回復をどうやって目指すか。そんな危機管理戦略がVisitDenmarkにはないように見える。VisitDenmarkどころか、どのブランドもソーシャルメディアを念頭に置いた危機管理戦略がないように見える。責任者の首を切るだけでは意味がない。

現在のパブリックリレーションズには、マスメディアよりもソーシャルメディアリレーションズの方が重要ではないだろうか。マスを凌駕する質と量で吐き出されるソーシャルメディアスペースのコンテンツ、そのコンテンツを作りだすオーサー、オーソリティに対してコネクションを築くことが重要ではないだろうか。以前のブランド危機はマスを押さえておけば済んだかもしれないが、今はそうではない。そして、危機は国内だけで発生するものではない。

なお、どうしてもオリジナルビデオに近いものを見たい方は以下をどうぞ。

2009/11/05

Stupid press release SPAM

My Photo
マーケティングやリーダーシップ戦略に関するBlog、Webinknowを書いているDavid Meerman Scottが怒っていた。

彼は、「The New Rules of PR」という小冊子を書いているくらいだから、プレスリリースの価値を認めているし、人々の興味を惹きそうな事柄に関するアラートを個人的なメッセージとして送ることも認め、そういったメッセージを受け取ることも意味があるとしている。

そんな彼にしても、「その人がカバーしてもいない領域に関するプレスリリースを送ってくるのはSPAMだ。SPAM、Spam、spam」と連呼している。

Source:Webinknow / Stupid press release SPAM

そして、彼は受け取ったSPAMプレスリリースをいくつかリストアップしていた。どんな所から来ているのかと見ていたら、Mediabeaconが誰それを雇ったとか、Emma Thompsonが何やら賞を受賞したとか、SaaSベンダーのNetSuiteがフィリピン事業を拡大したとか、まるで関係のないプレスリリースのオンパレードだ。

最後に日本企業の名前が出てきた。
Stylesight and Itochu Fashion System Co., Ltd. Team Up to Provide Localized Japanese Trend Information Service: B2B Trend Content and Software as a Service (SaaS) Provider is First to Address and Fulfill Global Client Demand for Growing Japanese Market
ま、これはプレスリリース発信プロセスのどこかに顔を出している代理店が持っているメーリングリストに彼のアドレスが入っていたということだろう。

だが、業界では名の知られたDavid Meerman ScottのBlogにおいて、Stupid press release SPAM呼ばわりされるのはいかにも痛い。

そして、今後、ソーシャル検索が本格化すると、David Meerman ScottとFacebookやTwitterでコネクトしているユーザ(Twitterには約3万人のフォロワーがいる)の検索結果末尾、あるいは上位に上のようなエントリが表示される(かもしれない)ことになる。

参考:Social Search Impact (Online Ad 2009/10/28)

「Share of Global Online Time」で書いたように、MSやGoogleがFacebookやTwitterと契約して、リアルタイムデータストリームやソーシャルメディアコンテンツへのアクセスを確保したことは、単に検索ビジネスに関わるのではなく、企業・ブランドに戻ってくるのだ。

参考:Share of Global Online Time (Online Ad 2009/10/27)

それにしてもオンラインモニタリングをしていなければ、どこで、どのように、自社が取上げられているのか全く分からない時代になりました。

2009/11/04

IAB Social Media Research

一昨日、「Online Friends & WOM」でGlobal Web Indexのデータを取上げたばかりだが、もうひとつGlobal Web Indexの資料を紹介する。

参考:Online Friends & WOM (Online Ad 2009/11/02)

それは10月22日のIAB Europe Councilで行われたプレゼンだ。2010年というのは2009年のミスだと思う。

国ごとにインターネットを利用する理由を聞いたところ、いずれの国も、「友人と連絡を取り合う」がトップだ。中でもロシアは50%を超えている。
そして、ソーシャルネットワークのプロファイル編集とBlog書き込みを見ると、欧州各国の中では英国とロシアのソーシャルネットワーク関与が高い。それにしても中国、韓国、日本のBlog漬が高いというか、ひどい。また、メキシコ、インド、ブラジルといった国でもBlog関与が高い。国や地域でこれほどの違いがあるのはちょっと驚く。
ソーシャルネットワークとBlogに、TwitterとWebを加えてみると、スペイン、イタリア、ロシアと他の欧州諸国では前者がTwitterおよびWebでの活動も盛んに行われていることが分かる。特にイタリアとロシアのTwitter利用は10%を超えている。
Source:SlideShare / Gobal Web Index - IAB Social Media Research

欧州も米国同様にソーシャルネットワークとTwitterということになる。国によってはBlogもということになる。どのソーシャルメディアスペースにしたところでユーザが連絡を取り合い、近況報告に加えて様々なコンテンツを共有していることは間違いがない。

そして、そのコンテンツの中心になるのは、ユーザの身の回りを取り巻くインターネット、携帯、PC、Google、Facebook、ゲーム、ビデオ、音楽などのデジタル関連コンテンツだ。

2009/11/02

Online Friends & WOM

9月に「Social Media Trends」でGlobal Web Indexのデータを紹介した。

参考:Social Media Trends (Online Ad 2009/09/09)

あれば、6月にアップされたものだったが、そのGlobal Web Indexが9月にFuture WebというデータをSlideShareに挙げている。

その中に特に目を惹いたデータがいくつかある。

まず、ブラジル、中国、ロシア、英国のTVとWeb消費時間を比較したものだ。スライドのヘッドラインとして、「UK - less time online」とはあるが、それはブラジル、中国、ロシアと比較しただけの話だ。英国でも毎日オンラインの消費時間がTVでの消費時間が上回っている。ロシアなどはTV消費時間が119分なのに対して、オンラインは217分、82%も上回っている。中国もTV消費時間は146分に対してオンラインは232分、59%も上だ。ただし、ブラジルはTV消費時間が223分に対してオンラインは219分。若干、TVが上回っている。

また、対面友人よりもソーシャルネットワークの友人の方が多いというデータもある。中国は24.1人の対面友人に対して51.5人のソーシャル友人。国土の広さを考えれば中国特有のパターンとも言えなくもないが、英国でも対面21.4人に対して49.3人だ。どの国でも対面より、ソーシャル友人の方が多い。
次にもうひとつ面白いデータがある。Facebook、LinkedIn、Twitterのコネクションに対して、「今日、ビールでもどう?」と電話するのはFacebookで9%、LinkedInは3%、Twitterに至っては、0.3%しかいないという事実だ。
そして、最も正確な情報を提供してくれるソースとして信頼する3番目にソーシャルネットワークのコンタクトが入っている。

:先週末、紹介したeMarketerの元ネタがGlobal Web Indexだ。先週は
「ソーシャルネットワークのコンタクト」が隣人の3.2と同率で4位になっている。
と書いたが、どうやら3.0にも届いていないし、同率でもない。

参考:Listen, Participate and Engage (Online Ad 2009/10/30)

なお、彼のスライドの9ページめに以下がある。「Sony Ericsson w960iで検索すると10個中、10個はソーシャルメディア系だ」と検索結果を示している。

そんなことはない。Google.comであろうと、Google.co.ukであろうと最初に来るのは、Sonyericsson.comだ。他にもソーシャル系ではない結果が出てくる。どうしてこんな説明をするのだろう。それとも、Sonyericsson.comサイトそのものがソーシャルサイトだとでも言うのだろうか?と、先週末にSlideShareのページにコメントしておいたが、今日時点で、まだ返事はない。
Source:SlideShare / Global Web Index - Future Web

TV消費時間よりもオンライン消費時間の多い消費者が増え、対面友人よりもソーシャルネットワークでの友人の方が多く、そのソーシャルネットワーク内でのコンタクトの大半は顔も知らない赤の他人だ。そして、その顔も知らない赤の他人の言葉は、家族や親友の次に信頼できるとされている。

もうカビの生えた固定観念は払拭しなければならない。カビで覆われた目から見えるものはない。カビで隠された耳から聴けるものはない。そして、カビで包まれた身体では新しい歩みを踏み出すことはできない。