2009/06/30

Asics Viral Video Campaign

Asics(アシックス)が欧州でブランドキャンペーンを実施しているとThe Inspiration Roomが伝えている。

「アダムとイブ」「アップとダウン」「芸術と科学」「東と西」という4つのペアがフィーチャーされ、「What’s a left without a right?」というキャンペーンテーマへ落としこまれている。
ASICS Art and Science

オンラインはオランダ、仏、独、オーストリアで展開されている。オンラインも4つのシリーズでキャンペーンが展開されている。下は、「豊胸手術なしのPamela Anderson」をフィーチャーしたパート1だ。


Source:The Inspiration Room / Asics Left and Right

「豊胸手術なしのPamela Anderson」に加え、「McCartneyのいないLennon」、「KITTなしのKnight Rider」、そして、「(オランダサッカー界の伝説)John Cruijffが発音法を習ったら」という4つのバイラルビデオが5月19日から5月26日にかけてアップされている。

Viral Blogによると4本あわせて25万回以上視聴されているそうだ。パート1は視聴回数全体の60%、パート2は24%、パート3は14%、そしてパート4は3%となっている。

Source:Viral Blog / Asics: Imagine Pamela Without Plastic Surgery

YouTubeだけではなく、123video.nlKewego といったオランダローカルのビデオ共有サイトにもアップされ、オランダおよびベルギーのBlogで取り上げられたとは言うものの、合計で25万回の視聴回数は寂しい気がする。

Viral Blogは、「オランダで実施され、最も成功した他のバイラルビデオ例と比べ、世界的な露出が少なかった」と評価している。

ここがポイントだろう。特定国・地域をターゲットとしたバイラルであったとしても、どこから火がつくのかは神のみぞ知るだ。しかし、世界中のインターネットユーザはトップサイト、トップクオリティを持ったコンテンツサイトへアクセスしている。これらサイトでピックアップされ、多くの注目を集めることで、コンテンツは世界中に露出し、消費され、共有、再露出されてゆく。

ローカルサイトからグローバル化を目指すよりは、グローバルのトップサイトからのトップダウンがベストだ。

また、BlogやSNSでの露出も欠かせない。TubeMogulによれば、ユーザがビデオを見つけるのはYouTubeなどビデオ共有サイトへ行って、そこで検索するケースだ。これが45.13%に達している。

そして、リフェラルトラフィックに関して言うとどこがメインというものはないが、リフェラルトラフィックの80.88%はロングテールのBlogからだ。
  • 80.88% Blog
  • 11.18% 検索エンジン
  • 3.66% ソーシャルネットワーク
  • 3.19% ソーシャルブックマーク
  • 0.63% ビデオ検索エンジン
  • 0.05% Email/IM
Source:MarketingVox / Blogs Provide 80% of Referred Traffic to Online Videos
Source:TubeMogul / How do people discover videos online?

2009/06/29

National Geographic on Facebook

FacebookにおいてNational Geographic (全米地理学協会、NGと略)はPageを持っている。そのFanになっているユーザにはNGの新しいコンテンツがアップされれば、ユーザのホームページにそれが更新される。

最近、更新されたコンテンツに「Your Shot Special Edition」がある。NGには毎日、何百枚という写真が読者から送られてくる。その中から選りすぐりの写真を集めた特集号を初めて発行すること、そしてその特集号の表紙に読者の写真を掲載する申込を告知している。
(クリックでページへ。要Facebookユーザ登録)
「Your Shot Special Edition」をクリックすると、NG.comのプロモーションページへリンクされる。(クリックでサイトへ)
Source:Facebook / National Geographic
Source:NationalGeographic.com

FacebookにあるNGには48万人以上のFanがついている。NGが新しいコンテンツを追加すると、これら48万人のFacebookユーザのホームページに最初の画像のようにそれがアップデートされる。

NGにとって、48万人の読者を持つオンラインのアフィリエートメディアがFacebookということになる。そしてこのメディアは一方的な情報・コンテンツ提供だけではなく、そのエントリに対して「Like(お気に入り(いいよ[日本語インタフェースの場合])」と評価したり、
コメントを付け加えることもできる。
上で、「NGにとって、48万人の読者を持つオンラインのアフィリエートメディアがFacebookということになる」と書いたが、これはNGが600万以上(20年前であれば1,000万以上だったはず)の購読者を持つ既成マスメディアだからだ。

これをメディア系ではない一般の企業・ブランドのPageだとすると、アフィリエートではなく、企業・ブランドの自前メディアということになる。Fanであり、ブランドコンテンツを自発的に消費し、共有、拡散、再露出してくれるアドボケーター、サポーターのネットワークということになる。

それも無償のメディアであり、無償ネットワークだ。

Coca-Colaは347万人、Starbucksは324万人、Adidasは195万人、McDonald'sは187万人、Disneyは178万人、Nikeは146万人、Nokiaは65万人のFanを抱えている。一方、日本の企業・ブランドは、Sony PS3、Nintendo Wiiなどごく一部を除き全くと言っていいほどFanがいない。ま、Page自体を持たず、持っていたとしてもコンテンツなし、あるいは1年以上更新のないページではFanに集まってくれとは言い難いのが現状だ。

Source:Inside Facebook

2009/06/27

RIP MJ

まったくこのBlogの趣旨とは関係ないが、Michael Jacksonが亡くなったことについて書く。

6月27日午前7時、Viral Video Chartの「Top in 24 hours」にランクされる20本のビデオのうち20本すべてがMJのビデオだ。Viral Video Chartは、MJのビデオをそれぞれを「Spreading across the interweb like Wildfire!」と形容している。
(クリックでサイトへ)
Source:Viral Video Chart / Top 2o Viral Videos

Sillicon Alley Insiderは、MJのオフィシャルなミュージックビデオの視聴回数をグラフ化している。昨日以前は21.6万回の平均視聴回数だったが、昨日から1,000万回以上に跳ね上がっている。TubeMogulによると、24時間で1,145本のMJ関連ビデオがYouTubeにアップされ、1,460万回視聴されているようだ。

Source:Silicon Alley Insider / Chart of the day : Michael Jackson Lives On YouTube

一番思い出のあるビデオは何と言っても「Thriller」だ。友人の自宅でビデオを見た記憶がある。もう20年以上前の話で聴いたのはCDでも、DVDでも、HDD DVDでも、BluRayでもなかった。そんな時代だった。

NYTは、1971年から彼が出した曲のビルボードランキングを出している。いくつもピークがあるが、頂点は1983年から84年にかけてだろう。Billie Jean、Beat It、Say say sayとトップをとっている。が、Thrillerはトップをとっていないのをはじめて知って驚いた。
(クリックでサイトへ)
RIP(Rest In Peace)、MJ(Michael Jackson)

2009/06/26

Visit Japan 2009 -5

6月18日にSFでInside Facebookが開催したFacebook Marketing Breakfast Seriesというコンファレンスがあった。Facebookからはもちろんのこと、Nokia、Intel、Razorfish、Forresterからもスピーカーが参加していた。

Source:Facebook Marketing Breakfast Series

Facebookのブランドマーケティングマネージャ、Trista Handisidesが行ったプレゼン資料をInside FacebookのJustin SmithがSlideShareにアップしている。
この中にはFacebookユーザのホームページが「インターネットで最もエンゲージしているページ」だということを示すデータがある。Yahooは31.4億(分)@月、MSNは16.6億(分)、MySpaceは7.2億(分)のところ、Facebookユーザのホームページは月に合計59.4億(分)も消費されている。
Facebookユーザのホームページには、様々なコンテンツがリアルタイムでフィードされてくる。友人の書き込むコンテンツや、ファンになっている企業・ブランドが提供するコンテンツが供給されてくる。このコンテンツを消費し、コメントしたり、「Like(お気に入り、いいね)」と評価したり、「共有」している。だからこそ、Yahooの倍近く、MySpaceの8倍以上、Facebookユーザは自分のホームページに滞在し、供給されてくるコンテンツを消費している。

Facebookがポータル化しているのは言うまでもない。CNNであれ、NYTであれ、GMやPhilipsのストリームフィードを設定しておけば、YahooやGoogleへ行かずとも自分のホームページに自動的に供給されてくる。

そして供給されてきたコンテンツは、ユーザ自身で消費するだけではなく、その友人、そしてそのまた友人に拡散されてゆく。その露出インプレッションは一般的な一方通行ではなく、ユーザによるコンテンツの濃縮、追加や拡張が行われ、多方向へ広がってゆく。
昨日の「Visit Japan 2009 -4」で、「それらを統合し、相乗効果を最大化するハブとなるべきスペースが必要だ。そして、この中心スペースとして何を活用すべきかは明らかだ」と書いたが、それは当然、Facebookだ。

参考:Visit Japan 2009 -4 (Online Ad 2009/06/25)

本音を言えば、Facebookのブランドマーケティングマネージャがコンファレンスでプレゼンする資料としてはちょっと物足りない。多分、Inside Facebookが公表、公開していない資料・データがたくさんあるはずだ。しかし、Facebookが本格的に自身をブランディング用のチャネル、ビークルとして意識していること。そして、その意図を理解するブランドが存在していることは事実だ。

ということは、このチャネル、ビークルを使わない手はない。別に企業・ブランドでなくとも、ソーシャルメディアスペースのユーザとエンゲージしたい個人、団体、グループであればFacebookを使うべきだ。

ところで、話はちょっと横道にずれるが、Facebookでは6月13日からVanity URLとして、ユーザ名やブランド名をURLとする申請受付と承認が始まった。15日までの2日間で700万件のURLが交付されている。

例えば、
www.facebook.com/profile.php?id=07271d1cb152
といった自分のFacebookページよりは、
www.facebook.com/dram.roll
といったページのほうが他人にも分かり易く、使いやすいのは当然だ。

ところが日本の企業・ブランド(現法を含め)でブランド名URLを取得しているのは、Toyotaだけだったりする。それも画像だけ(最後にアップされたのは2008年の8月)、ファン数は135人(6月24日時点)、とさびしいページだったりする。(クリックでサイトへ)
Facebookをソーシャルメディアマーケティングのハブとして機能させようとする多くの企業・ブランドがいる中で、日本の企業・ブランドとの間に、あまりにも大きなギャップが存在している。

2009/06/25

Visit Japan 2009 -4

「2010年までに1,000万人の訪日外国旅行客を実現する」という大目標を掲げているVisit Japanキャンペーンに関していろいろと書いてきた。

参考:Vist Japan -1 (Online Ad 2009/06/22)
参考:Vist Japan -2 (Online Ad 2009/06/23)
参考:Vist Japan -3 (Online Ad 2009/06/24)

今日は、具体的な施策のヒントを挙げてみたい。

下にあるのはFlickrにあるJeepのグループ、そしてPhotoBucketにあるTravel & Placesのグループのページだ。(クリックで各サイトへ)
FlickrのJeepは公開グループとなっているので誰もが参加でき、自分の写真をアップすることができる。PhotoBucketも誰もが参加でき、写真をアップできる公開グループアルバムとすることができる。

中国の方だろうか、台湾の方だろうか、あるいは香港の方だろうか。昨年5月の北海道旅行を撮った写真をまとめてアップしているPhotoBucketのグループアルバムがある。ここのURLをemailなどで送っておけば、同行者や知人、親戚、会社の同僚などに日本・北海道旅行の思い出、食べたもの、出会った子犬、風景などを撮った写真を見てもらうことができる。
PhotoBucketには下にある15のソーシャルメディアスペースへアルバム・グループのコンテンツを追加、露出する機能があるので、友人などへemailすることができるし、このアルバムを見た他のユーザがソーシャルメディアスペースを経由して自分のスペースに取り込むこともできる。そしてのそのソーシャルメディアスペースでの友人が、また、彼らの友人にコンテンツを広めてくれる大きな可能性がある。
高名な写真家が撮った大げさな風景写真ではなく、どこの旅行パンフレットにもありそうな決まり切った写真ではなく、「Someone like me」の知り合い、友人がその土地を旅行し、触れ合った、見聞きしたリアルライフを共有してもらうことができるスペースがここにある。

もうひとつ、昨年の北京オリンピックにあわせて行ったLenovoのソーシャルメディアマーケティングがある。

参考:Olympic Marketing : Lenovo (Online Ad 2008/07/10)

下はLenovoが選抜したオリンピック出場選手100人のBlogをアグリゲートするサイト、「Voices of the Olympic Games」だ。
25カ国から30競技に参加した100人がオリンピック期間の前中(後)で書いたBlogが集められたサイトは、マスメディアが伝える情報・コンテンツとは違い、選手が自らを語っている。開催が迫る中での体重や健康管理、トレーニングの進み具合、対戦相手の情報収集、選手村の衣食住、開会式、競技や試合の様子がビビッドに描かれている。

オリンピック出場選手という個人の体験をBlogで拡散する仕組みに加え、各国、各地域、各競技出場選手を集合した体験を拡散する仕組みがここにある。アグリゲートされたコンテンツが、個人やグループのネットワークを超えて、世界へ広がることになる。

また、昔からフリーの旅行Blogサービスを提供しているTravelPodといったサイトもある。
ここには6月20日から7月3日まで日本に滞在し、学生大使として日本の中学生達(?)と交流する米国からの28人を引率する先生のBlogがあった。23日には国会議事堂や相撲博物館へ行くようだ。
追加:
23日は国会議事堂ではなく都庁を訪問したようだ。明治神宮(?)、皇居を訪問。24日は5:30に起床、3時間のバス旅行で富士山へと息つく暇もない忙しさだ。その時々の出会い、出来事、日本の中学生との交流が、引率する先生のBlogからだけではなく、学生自身のBlog、Email、チャット、電話、SNSなどから広がってゆく。

写真・ビデオ共有サイト、Blog、旅行SNS等々、こういったソーシャルメディアスペースがいくつもある。そしてこれらスペースを個別、独立した形で露出しても縦割りサイロの壁を超えることはできない。それらを統合し、相乗効果を最大化するハブとなるべきスペースが必要だ。そして、この中心スペースとして何を活用すべきかは明らかだ。

追加:
6月24日、5月までの訪日外客数の速報が出た。発表された12カ国のうち仏を除く11カ国で前年同月比減の入国者となって累計では26.9%減だ。4月よりも悪化してきた。4月は前年増だった中国も18.8%減と沈んだ。

Source:日本政府観光局(JNTO) 2009年(推計値) (pdf)

2009/06/24

Visit Japan 2009 -3

今まで2回にわたり、Visit Japanキャンペーンを取り上げてきた。

参考:Visit Japan 2009 -1 (Online Ad 2009/06/22)
参考:Visit Japan 2009 -2 (Online Ad 2009/06/23)

ポイントは
  • オンライン露出による効果がWebトラフィックや検索実績につながっていない
  • YouTube(ソーシャルメディアスペース)での一方的な露出がコンテンツの消費、共有、拡散、再露出につながっていない
ということだ。この理由はソーシャルメディアが今までの常識や仕組み、機能や評価基準を変革しているのにも関わらず、出来合い、一方的な押し付けコンテンツの消費を促そうとしているからだ。

Visit Japanキャンペーンは訪日外国人旅行者を増やすのが目的だ。しかし、訪日してもらうために日本の良さ、美しさ、伝統、自然、人々を知ってもらうだけで良いのか?一方的にコンテンツを供給し、旅行パッケージをつくり、業界関係にプロモーションし、それに乗ってもらう形で良いのか?

これまでのメディア戦略、マーケティング戦略が、Web2.0と言われてから久しいオンラインにも通じるだろうか?

私たちが一番納得するのは、知人・友人・家族・同僚など「Someone like me」からの話、アドバイス、推薦、WOMだ。これはB2Cでも、B2Bの製品・サービスの購入決定でも同じだ。行ったことがある、使ったことがある、見たり聞いたりしたことがある知識・経験に勝るパンフレット・カタログ・案内書や提案書はない。そしてオンラインWOMが対面WOMに浸透している今、その知識・経験を語ってもらうことこそメディア戦略、マーケティング戦略となる。

さて、CouchSurfing(CS)というWebサイトがある。(クリックでサイトへ)
CSは世界中に約120万人の会員を抱え、会員が世界中を旅行する際、会員同士でその宿泊場所を無償で提供したり、土地のガイドを提供したり、会員の友人たちと一緒にイベントに参加したりと、人々の国際的なネットワークを構築し、その国の伝統・文化の理解、総体的な意識向上、相互理解を促進するコミュニティ、非営利団体だ。

その中に「Lupo Solitario」というイタリア、トリノ在住の会員がいる。(クリックで彼のプロファイルへ)
彼自身のプロファイルに加えて、彼が所属しているCSのグループ(例えばトリノ、ギリシャなど)、彼が旅行した国、彼の友人になっている会員、彼の家に宿泊させてもらった会員からの推薦などがある。20件のレファレンスをすべて紹介するわけにはいかないが、UK、ポーランド、仏、スウェーデン、米から訪れた会員たちは口をそろえて彼の「もてなし」に感謝している。CSの会員であればこのプロファイルページから彼に直接メールして宿泊を依頼したり、コンタクトとして登録したり、メモしたりできる。

CSのミッション、「Lupo Solitario」という会員、彼の「おもてなし」や世話になった会員の生の声、これこそがVisit Japanキャンペーンが提供すべきスペースであり、コミュニケーションであり、機能だ。

そう考えれば
  1. 訪日したことのある外国人に「Visit Japan」のアドボケーター、サポーター、ブランドアンバサダーとなって日本を紹介してもらう
  2. ソーシャルメディアスペース、そしてそのユーザの助けを借りる
ということになる。つまり;
  1. 訪日したことのある外国人に日本を語ってもらえるスペースを複数用意する
  2. その複数スペースへの参加(あるいはコンテスト参加)を呼びかける告知をする
  3. その複数スペースに彼らと「Visit Japan」の共有できるコンテンツを混在させてもらう
  4. 彼らとオープン、対等に会話する
  5. 彼らのオンライン・コネクションからコンテンツの露出、消費、共有、再露出を行わせてもらう
  6. 複数スペース間のリンク、コンテンツを共有してもらう
ということだ。

実行するためにはインセンティブも必要だし、専従者も必要だろう。しかし、何をおいてもしなければならないのは、マインドセットをシフトすることだ。それなしには、どんな施策を行ったところでうまく行かない。と言うか、マインドセットのシフトなしに施策はできない。

UnileverのCMO、Simon CliftがMarketing Weekの6月17日のコラムで、「Digital era redifines brand identity」を書いていた。

本論に入る前の枕で彼はデジタル社会を、「我々多くの人間にとって、変革のスピードはブランドの管理者が追随する能力を大きく上回っている」と描写している。

また、「昔のトップダウンの世界では、一方通行のコミュニケーションを用いて、企業が消費者に聞いてもらいたいものを聞かせ、消費者はそれを受け入れるか、受け入れないかの選択しかなかった。しかし、透明性を備えた新しい世界は、およそすべての事柄に関して詳細な情報が驚くべき量ですぐ手に入る」とも語っている。

彼がここで言っている「詳細な情報が驚くべき量ですぐ手に入る」のは、マスメディアが供給するコンテンツだけではない。企業・ブランドがマスメディア経由で供給する聞かせたいコンテンツに数倍、数十倍するほどの量に達する消費者・顧客がブランドを語っているコンテンツもある。そして、このコンテンツが世界中のソーシャルメディアスペースで消費、共有、拡散されている。

Source:MarketingWeek / Digital era redefines brand identity

マインドセットを変えない限り、ソーシャルメディアスペースのユーザに受け入れてもらうことはできない。

日本企業・ブランドが世界中に渦巻くソーシャルメディア旋風に無策の今、「Visit Japan」キャンペーンには、是非とも、ソーシャルメディアを活用し、2010年までに1,000万人の訪日を実現してもらいたい。

2009/06/23

Visit Japan 2009 -2

昨日、書いたように日本政府観光局(JNTO)は、2006年9月18日にはYouTubeにチャネルをオープンしている。早い取り組みだと言っていい。

参考:Visit Japan 2009 -1 (Online Ad 2009/06/22)

YouTubeの話へ行く前に、昨日開催されたVisit Japan Year実行委員会(第一回)に触れておきたい。

「2010年に外部環境が改善した際に確実に外国人旅行者を獲得すべく、またVJCの一つの区切りとして日本全国の機運を盛り上げるべく、2010年を 「Visit Japan Year」(VJY)として位置付け、訪日外国人向け集中キャンペーンの設定等を行い、民間企業、自治体、関係省庁等との連携により、なお一層の外国人旅行者の誘客促進を図ることとしております」とのことで、取り組み内容を検討する実行委員会が開催されたわけだ。

内容は以下の通り。

外国人向け集中キャンペーン用のプロモーションとして、
  1. 海外プリント媒体+OOH広告(オープン懸賞広告検討)
  2. 旅行博における情報提供
  3. 専用Webによる情報提供
  4. ガイドブック作成
が挙げられている。
どうやらオンライン広告やオンラインマーケティングは念頭にないようだ。

今、訴求ターゲットが消費しているコンテンツ、メディアは何なのかという理解がないと、読者が減り続ける媒体に広告を出稿し、消費も共有も、そして拡散もしてくれないコンテンツ・情報を提供することで終わってしまう。

ただし、今後のダイレクトプロモーションの基礎を構築し、「2020年、(訪日外客)2000万人に向けた基礎インフラとして活用」するため補正予算で約9.3億円が計上されている。「日本ファン層データベース整備事業」に7.3億円、「在住外国人を活用した親族・友人の呼び寄せ促進事業」に2億円が当てられている。旅行関係Webサイトに広告を出稿し、懸賞つきアンケートを実施し、200万人分のEmailアドレスを獲得したうえで、Visit Japan Community(仮称)を開設し、掲示板投稿、口コミ発信を考えているようだ。

しかし、これは2020年に向けての施策であり、2010年までになんとしても実現しなければならない1,000万人の助けにはならない。また、旅行関係Webサイトという縦割りマーケティングの壁を乗り越えて、200万人分の日本ファン層のEmailアドレスを懸賞広告だけで獲得できるかどうかは不明だ。

Source:観光庁 / 「Visit Japan Year」実行委員会(第一回)を開催!
Source:観光庁 / Visit Japan Year 概要 (pdf)
Source:観光庁 / 平成21年度補正予算 (pdf)

さて、YouTubeだが、今のところチャネルのSubscriberは1,893人、チャネル自体の視聴回数は10万回を超えたところだ。数値は6月21日時点。(クリックでチャネルへ)
このチャネルには194本のビデオがあり、最も視聴されたのは去年5月にアップされた新しい「Yokoso! Japan」で、16万回を超えている。(以前は小泉さんをフィーチャーした「Yokoso! Japan」などもあった)

これに対するVisit Britainのほうは2009年の2月にチャネルを開設したばかりなのでまだビデオは37本、Subscriberは95人、チャネル視聴回数も1,953とこれからだ。

YouTubeはもちろんソーシャルメディアの中心をなすサイトだ。ここから共有機能を使えば自分のBlogに貼り付けたり、友人にemailしたり、SNSのプロファイルに追加することも、ソーシャルブックマークすることもできる。

ただし、「Visit Japan」が先手を取り、「Visit Britain」を大きく引き離してはいるが、「Visit Britain」サイトへのトラフィックが「Visit Japan」へのそれを大きく引き離していること、そして検索実績も同様なことからすると、YouTubeを起点とした「Visit Japan」コンテンツの露出拡散、共有はサイトへのトラフィック誘引や検索誘発の面ではあまりうまく機能していないようだ。

参考:Visit Japan 2009 -1 (Online Ad 2009/06/22)

さて、下は「Intel:Sponsors of Tomorrow」で紹介したIntelがYouTubeに持っているチャネルだ。(クリックでチャネルへ)

参考:Intel:Sponsors of Tomorrow (Online Ad 2009/05/20)

今後3年間ブランドキャンペーンを計画し、膨大なマスメディア露出を開始したIntelと、Visit Japanのチャネルでは、Subscriber数やビデオ視聴回数の桁が違う。そんな比較は無意味だと考えられる方が多いだろうが、この2つのチャネルの差異の本質はそれではない。

多分、2006年にYouTubeにチャネルを開設して以降、YouTubeのインタフェースが変更になった際、Privacy設定機能を使っていない(と思われる)Visit Japanのチャネルは「Connect with」「Playlists」「Videos」セクションしか設けられていない。しかし、チャネルに「Recent Activity」「My Recent Ratings」「My Recent Comment」「Favorites」「Subscribers」「Friends」セクションを装備しているIntelとの差異は、途方もなく大きい。
  • 定期的に更新したコンテンツを「さあ、見ろ」と一方的に供給するVisit Japan。
  • チャネル管理人が行った「コンテンツ更新」、「お気に入りのビデオ」、「友人になったチャネル・サイト」の行動履歴を表示し、「評価したビデオ」、「コメント」などで「チャネルの顔」が見えるアプローチをとるIntel。
  • そしてユーザから「お気に入り」をもらったビデオや、チャネルの購読者(Subscribers)や友人として登録したユーザを紹介するIntel。
どちらがソーシャルメディアスペースでのルールに則っているかは明白だ。

こんな単純明快なルールだが、それを踏襲しない限り、ソーシャルメディアスペースにおけるYouTubeはコンテンツ消費スペースとしてしか機能しない。どんなに爆発的に視聴回数が増えたところで、YouTubeだけに留まることになり、他のソーシャルメディアスペースでの露出拡散は非常に限定的だ。Visit Japanの新しい「Yokoso! Japan」にしたところで16万回以上も、ただ視聴されただけで外へ広がっていかない。

「Extreme Sheep LED Art」を思い出してほしい。

直近ではSamsungのバイラルビデオは約900万回も視聴されているが、それだけではない。バズが発生したころを見計らってSamsung USAに登録しているユーザにはemailニュースレターが発信されていた。そしてニュースレターにはDigg、Facebook、LinkedIn、MySpace、Twitterなどのツールを活用したソーシャルメディア対応がなされていた。ここには、YouTubeで視聴されるだけに終わらせない仕組みがある。
参考:Extreme Sheep LED Art (Online Ad 2009/03/24)
参考:Samsung LED TV Campaign (Online Ad 2009/04/16)
Source:ViralVideoCharts / Extreme Sheep LED Art

Visit Japanのソーシャルメディア対応は修正すべき箇所がある。それは広告を出稿したり、コンテンツを一方的に供給するだけの体制では不十分だということだ。コンテンツを露出するだけでは、また供給側がソーシャルメディアスペースへ参加しないのであれば、コンテンツ消費も共有も起こらず、拡散もなく、Webトラフィックも検索実績も増えないということだ。

コミットメントである「1,000万人の訪日外客を実現する」2010年が来年だというVisit Japanキャンペーンには、Intelのように大がかりのクロスメディアキャンペーンをする予算的、時間的余裕もなく、残された選択肢が少ない。それにも関わらず、膨大な予算をマス(レガシー)メディアに投下して一大キャンペーンを行うのか、それとも多様なソーシャルメディアスペースを最大活用し、ソーシャルメディアスペースの相互連携からコンテンツ露出を拡散し、コンテンツ消費、共有を行ってもらうのか?

YouTubeにおけるIntelの単なる物真似だけにはならないソリューション提示は次回へ。

2009/06/22

Visit Japan 2009 -1

もうずいぶん昔、「Visit Britain, Visit Korea, Visit Japan」を書いたことがある。

参考:Visit Britain, Visit Korea, Visit Japan (Online Ad 2006/09/08)

それから3年近く経って見ると、Visit Japanキャンペーンの効果もあり、昨年、日本を訪問した外国人旅行者は835万人に達している。

ところが昨年の金融危機以降、世界同時不況、円高などが影響し、訪日客が減ってきている。4月の訪日外客数は9カ月連続で前年同月比19.7%減の62.7万人にとどまっている。4月までの累計で前年比25%も減っている。

訪日トップの韓国が4月までの累計で48.9%減の45.8万人、台湾も29.4%減の32.3万人、香港も18%減の14.4万人。主要国で増えているのは5%増の38万人強が訪日した中国だけだ。
Source:日本政府観光局(JNTO) / 2009年4月推計値 2月暫定値 (pdf)

日本政府観光局は、「2010年までに訪日外国人旅行者数1,000万人を実現します」と大きな目標を掲げ、2003年以降、様々なオン+オフラインの広告・広報施策、プロモーションを実施し、今では世界13カ国にWebサイトを展開している。また、現在、Baidu.comでは「日本旅游」をキーワードとした検索連動型広告を実施中だ。

通年で前年比25%減ということにはならないだろうが、仮に15%減となった場合でも710万人前後だ。2010年に1,000万人を実現するには300万人増を果たさなければならない。ということは、2008年の通年であわせて338万人が訪日した韓国と中国クラスの国を増やさなければならない勘定だ。
訂正:「通年で344万人が訪日した中国クラスの国をもうひとつ増やさなければならない勘定だ」と書いたが、344万人は日本から中国への訪問者数だったので、上記のように訂正します)

これはとてつもなく大きなチャレンジになる。景気回復は国・地域単位で違うし、秋口以降の2009年新型インフルエンザの影響も考慮しなければならない。Visit Japanと競合する各国の旅行者獲得キャンペーンもある。従来からのチャネルパートナー経由のプロモーションは最大活用しているだろうから、何かやれるとするとオンラインマーケティング・プロモーションしか残っていないのではないだろうか。

ただし、オンラインで何をやるにしても、まず、オンライン露出やトラフィック、検索実績を見なければ先に進めない。そこで上の参考でも比較した、Visit Britain、Visit Korea、Visit JapanにJNTOを加えてWebトラフィックをAlexaで見ると、大差でVisit Koreaへのトラフィックが多い。JNTOはVisit Britainと肩を並べる所にはあるが、Visit Japanはまるでリーチがない。
国によってはVisit JapanではなくJNTOであったり、JapanTravelInfoのWebであったりと、トラフィックが分散しているので、単純な比較はできない。しかし、Yokoso Japanキャンペーンの本丸であるVisit Japanへのトラフィックが少ないことは事実だろう。

それはGoogle Insightsで、Japan、UK、USA、China、Franceという検索キーワードの出現を「Travel」カテゴリに絞った比較をしてみると明白だ。
Franceが「45」の検索実績に対して、Japanはたったの「5」でしかない。Chinaの「10」にも後れを取っている。実績値は6月21日時点。(クリックでGoogle Insightsへ)
これを「Visit Britain, Visit Korea, Visit Japan」というキャンペーン名で比較すると、「Visit Britain」が72で断トツだ。
ま、英語で検索しない国のユーザは拾えていないのは事実だ。

ただし、少なくとも中国や韓国、その他一部の国を除くとGoogleが検索エンジントップだし、Googleからのアップストリーム(流入)トラフィックがどのWebサイトもトップを占めているのが基本だ。

そのGoogleにおいて英語による国名検索で最下位を走るJapan、またVisit Britainに大差をつけられている検索実績からしてもWebサイトへのトラフィックはあまりないということになる。

また、AlexaでVisit BritainとVisit Japanへアクセスする国別シェアを見ても、自国からのアクセスはそれぞれ20%台後半で同じくらい。ところがVisit Britainはアジア、パシフィック、欧米、南米と満遍なく世界中からアクセスがあるが、Visit Japanはアジア諸国からのみのようだ。
Source:Alexa / VisitJapan
Source:Alexa / VisitBritain

どうやら日本企業・ブランドのグローバルWebサイトと同じ傾向のようだ。

オンライン露出コンテンツが少ないというわけではないが、キャンペーンWebサイトのトラフィック、そしてキャンペーン関連検索実績が少ない。ということは、インターネットユーザにキャンペーンのコンテンツが露出していない。コンテンツが消費されず、共有もされず、ユーザによって友人たちに再露出されていないということになる。また、一方的な情報提供を目的としたコンテンツがバラバラに露出されているだけだ。

訪日外客1,000万人を2010年に達成するには、積極的なオンラインマーケティングが求められる。しかし、検索連動広告だけではコンテンツの消費、共有、拡散、再露出は為し得ない。クリック詐欺もあれば、14%しか検索広告をクリックしてくれない現実もある。
参考:Search Syndication and Traffic Quality (Online Ad 2008/09/09)

となると、検討すべきはソーシャルメディアマーケティングだ。実は、Visit JapanはYouTubeにチャネルを持っている。そこら辺は次回へ。

2009/06/19

Sharing Tips, Advice and Suggestion

LinkedInにeMarketing Association Networkというグループがある。そのDiscussionにCharlotte Flemingが「GreenPrint」を紹介していた。
(クリックでサイトへ:要ユーザ・グループ登録)
Green PrintとはブラウザなどからWebページを印刷する際、不要なページ(下図の右側、赤く表示されている部分)、画像などを削除し、印刷用紙の無駄を省き、CO2削減、木材の有効利用を目指すソフトウェアだ。すでにWSJ、CNBC、CNN、CNET、TreeHuggerなどでも紹介されている。
Source:LinkedIn / eMarketing Association Network
Source:Green Print

LinkedInの同じeMarketing Association Networkというグループに所属するユーザからの紹介に対して23人のコメントがある。このDiscussionを見たユーザ数は分からないが、確実にネットワークに情報・コンテンツとして伝わっている。それは、少なくともeMarketing Association Networkに所属する12万人以上のユーザのホームページにはグループアップデートとして表示されるからだ。

これをe-WOMとも言えるし、マス・レガシーメディア不在のマーケティングチャネルとして見ることもできる。そして、大企業の管理職・役員を含め4,100万人を越えるLinkedInユーザはマーケティングターゲットの宝庫だとも言える。また、SNS全般として考えても同じ事が言える。

だから先進的な企業・ブランドはSNSにも、ビジネスSNSにも進出、参加している。取り残されるのはSNSを検討、調査もしていない一握り、あるいはその他多くの企業・ブランドになるだろう。

2009/06/18

Consumer Email Study

全世界13カ国、4,084人の回答結果をまとめたEpsilonの「Global Consumer Email Study」がある。

まず、オンラインのコミュニケーションツールとしてのEmailの位置を出している。個人的なオンラインコミュニケーションにおいてもっとも使うツールにEmailを上げている。北米で87%、APACでも63%がEmailを上げている。

ただ、ちょっとおもしろいのはAPACで8%がSNSだとしている。SNSが社会的なネットワークとしてだけではなく、個人的なコミュニケーションツールとしても認識されてきている。
次にEmailが代替しつつあるマーケティング手法を上げている。
  • 個人宛の電話セールス
  • 小売の安売り案内
  • テレマーケティング
  • 請求書・各種通知
  • 安売りチラシ
中でもAPACは、どの手法でも「すでにEmailが代替している」と回答する率が高い。44%から59%がそう回答している。次に来るのは北米だ。

そして、「Opt-in Emailを開封した後、何をしますか?」という設問がある。「懸賞・大安売り応募」を除くと、どの行為でもAPACが図抜けている。
Source:BtoB Online / Global use of e-mail and SMS marketing varies
Source:Epsilon / Study

APACでOpt-in Emailを送るリストを充実させている企業・ブランドと、そうではない所では大きな差が開いていそうだ。APACの場合、日本本社がパン戦略を遂行しているケースが多い。どれくらいのEmailアドレスがあるのだろうか?それとも…?

Opt-in Emailを開封した後、取る行動の中でオンラインだけで完結する行為は次のものだ。
  • Websiteへアクセス
  • 懸賞・大安売りに応募
  • ビデオクリップを視聴
  • オンラインで購入
  • 詳細情報入手にサインアップ
  • 広告リンクをクリック
  • ゲームをプレイ
  • オーディオクリップを聴く
  • Emailを転送
  • 会社の別のEmailに登録
  • 有料購読登録
これだけのオンライン付属行為を生起させ、マーケティング効果があるのはEmailをおいて他にないことは事実だ。だからバイラルビデオを流し、バズを発生させた後で、Emailプロモーションをかけるのは常套手段だといえる。そして、それさえもできないのでは満足なオンラインマーケティングを遂行することは不可能だ。

まだ、テキストとリンクのみでEmailニュースレターを送っている企業・ブランドは化石時代をいつまで生きるのだろうか?

参考:Samsung LED TV Campaign (Online Ad 2009/04/16)

2009/06/17

Adobe Facebook Campaign

AdobeがFacebookに持っている「Adobe Student」というPageがある。
(クリックでPageへ)
「Real or Fake」というゲーム、「学生向けにAdobe製品を最大80%オフで買えますよ」というアナウンス、インタラクティブな会話、「Adobeスキルを必要とする現在の職」を示して求人会社へリンクするアプリなどが詰まっているページだ。

6月11日時点でFanは29,960人で、Inside Facebookによれば6,724位となっている。

「Real or Fake」は2008年11月から1ヵ月公開され、14,000人がプレイした。最初の週だけで約5,500人がプレイし、6%がシェアボタンを押し、6%がゲーム終了時に「購入」ボタンを押している。

ゲーム公開前の週と比べると、3,000人の新しいFanができ、10倍以上の53,000ページビューが得られた。

2週目にも「購入ボタン」を推したのは6%だ。

Source:MarketingProfs / How a Facebook Game Attracted 10 Times the Traffic, New Fans, Real Sales (要有料登録)
Source:Inside Facebook

昨年末までのキャンペーンだったわけだが、80%オフという破格の価格設定をしただけの結果は出たようだ。新しいマーケティングチャネルとしてFacebookが期待通りに機能している。

ただし、その後のページメンテナンスはいただけない。ここ31日間の累計Fan数、毎日のFan数増減を見ると停滞気味だ。というよりは右肩下がりに落ち込みそうだ。

ソーシャルメディアマーケティングには、特にFacebookには専属の担当者が必要なのだ。

2009/06/16

P&G Budget Shift

2009年のQ1が終わり、いろいろな統計データが出てきている。AdAgeがP&Gのマーケティング予算を2008年同期で比較している。
ヒスパニック向け新聞、OOH、日曜(マガジン)紙、新聞が50%以上削減されている。TVも44%の削減だ。

それに引き換え、インターネットは200%を超える大幅な増加となっている。

ただし、四半期で6.72億㌦(計測ベース)の予算の中でオンライン・ディスプレイ広告はまだ4%でしかない。計測された以外にもオンライン関係の予算支出はあることから5%前後ではないかと推測されるようだ。

Source:AdAge / 'Passion for Digital' Pumps P&G's Spending

P&Gといえば「Digital Hack Night」で紹介したように、最先端に近いソーシャルメディア実験を行っている企業・ブランドだ。

参考:P&G Digital Hack Night (Online Ad 2009/03/25)

その企業・ブランドがオンラインへ予算をシフトしてきている。まだ5%程度ではあるけれど、このシフトは後戻りすることのない変革だ。そして、ソーシャルメディア実験を行い、様々な効果検証ができてくる今後、このシフトは加速する。

2年、あるいは3年後を見据えると、今、実験も検証していない企業・ブランドとP&Gのような先進ブランドとの差は埋めようもなくなる。この差は何も米国内の話ではない。レガシーメディアが消滅するわけではないが、いつまでレガシーメディアにしがみついているのだろうか?

2009/06/15

2009 Women and Social Media Study

Compass Partners、BlogHer、iVillageの共同調査、「2009 Women and Social Media Study」が公開されている。

まず、米国の18-77歳の女性人口は1億900万人。これに米国のインターネット普及率72.5%を合わせて、7,900万人の米国女性がインターネットユーザとしている。

これを年代・世代別の人数に分け、ソーシャルメディアスペースに参加している女性を出している。18-26歳(ミレニアル世代)は、1,330万人のうち73%、970万人がソーシャルメディアスペースに参加している。27-42歳のGen Xは62%の1,540万人、44-62歳のブーマーでも46%の1,330万人ということになる。
これを参加しているソーシャルメディアごとに分類すると、SNSが75%の3,150万人、Blogの閲覧・書き込みなどが55%の2,300万人、近況報告(Twitter)が16%の670万人となっている。
その他、いろいろな調査項目があるが、目を惹いたのは「女性インターネットユーザが興味を持つトピックに関する情報のソースは?」という項目だ。BlogとSNSのそれぞれに関してトピックのソースを上げさせている。

興味を持つトピックは、女性ならではの妊娠、ファッション、食などを押さえて、政治・ニュース、ハイテク・ガジェット、車、ビジネスがインデックス上位を占めている。そして、興味のあるトピックのインデックストップの政治・ニュースのソースとしてはBlog、ハイテク・ガジェットの場合も61%がBlogとなっている。
Source:BlogHer / 2009 Women and Social Media Study (pdf)

「興味を持つトピック」のインデックス上位に来るのは女性特有のトピックではない。男性とまるで変わりがないトピックが並んでいる。そして、これらトピックのソースとするはどうやらBlogのほうが多いらしい。

ま、この調査がBlogHerユーザ・読者を対象としている点を考慮してもややBlogのほうが影響力がある(かもしれない)ということだろうか。あるいは、Blogの影響力とのギャップを埋めてきたSNSの影響力が上がってきたと見ることもできる。

この調査レポートの最後に「The State of the Social Media World」として、次のサマリがある。
  • 展開:ソーシャルメディアおよびBlogの主流採用が継続中
  • 影響:Blogは、情報、アドバイス、そしてお勧めのソーシャルメディアソース
  • メディアシフト:ソーシャルメディアは既成メディアを代替中
  • 女性Blogger:最もエンゲージし、ソーシャルメディアユーザの中の最先端
少なくとも、「ソーシャルメディアは既成メディアを代替中」という点は確かだ。

2009/06/12

Disney and Twitter

昨日、「Twitter Value」で、MarketingProfsの「Twitter Success Stories」を引用したが、掲載されている11のケーススタディの中からDisneyを紹介する。

参考:Twitter Value (Online Ad 2009/06/11)

Disneyは、DVDとBlu-Rayで出すピノキオの70周年記念プラチナ版の販売促進に従来手法ではなく、「消費者に作品を語ってもらう」新しい手法を採用した。その新しい手法とは、「Converstational Marketing(会話マーケティング)」だ。
通常ならBloggerにピノキオに関するエントリを書いてもらうところだが、DisneyはMelanie Notkinを選んだ。彼女は「PANKS(Professional Aunt, No Kids)」というWebサイトを運営し、Twitterユーザでもある。

下は、Disneyからオファーがあったことを伝える彼女のWebサイトのページ、「When You Wish Upon a Star...」。
彼女のTwitterページ。
Source:MarketingProfs / Twitter Success Stories (要有料登録)

基本的には彼女がピノキオに関して、21日間Tweetし、Disneyは彼女のWebにバナー広告を出してTwitterとリンクするという形だ。その他、無料のDVDとBlu-Rayの2枚組ピノキオパックがあたるコンテスト、Disneyのビデオクリップへのリンク、ピノキオのマイクロサイトへのリンクなどが行われた。

彼女は期間中に300件Tweetし、フォロワーは1,000人以上増えて8,000人以上となった。彼女がピノキオに関してTweetするたびにそれだけのフォロワーにコンテンツが発信されていたということになる。また、3月24日には、WSJが彼女のプロモーションを取り上げてTweetしたことも追い風としてあったようだ。

MarketingProfsがTwitterのケーススタディの一つとして取り上げるほど成功した例だろう。

ただし、MarketingProfsは「通常ならBloggerにピノキオに関するエントリを書いてもらうところだが」と書いているが、Blogや他のソーシャルメディアスペースもキャンペーンの一翼を担っていたはずだ。

それは別として、このケーススタディから学ぶべきことは、「公明正大、透明性をきっちりと確保」するということだ。彼女のWebサイトを見ればよく分かる。Disneyが彼女にコンタクトした時から、キャンペーンの構成、内容の確認、コメントする際のIDやDisneyからROSでバナー広告が出ることなどを明らかにしている。

なお、Disneyからのアプローチを伝えた「When You Wish Upon a Star...」には23件のコメントがある。1件を除き、他は彼女が透明性を確保していることをたたえたり、Disneyからのオファーを自分のことのように喜んだりしている。そしてこの匿名で書き込まれた1件に対しては他のユーザから「匿名さん、匿名コメントからは正直な会話はできないと思うよ」と突っ込まれている。

「Susan Boyle - Final」でも書いたが、ここでも彼女の「サポーター」が彼女のブランドを守るため行動している。この行動を起こさせたのは、彼女のオープンな会話姿勢であることは言うまでもない。

参考:Susan Boyle - Final (Online Ad 2009/06/01)

2009/06/11

Twitter Value

MarketingProfsから「Twitter Success Stories」というレポートが出ている。

これは11のケーススタディをまとめたものだが、その前にMarketingProfsのTwitterフォロワーなど213人を対象にTwitterのビジネス利用を調査したデータを出している。調査対象者の66%は50人以下の従業員を持つ企業に所属するTwitterユーザ、8%は100人未満の企業、14.6%は1000人未満の企業、11.3%が1,000人以上の企業ユーザだ。

調査対象者がTwitterを利用する目的は;
  1. 84% ブランド認知 
  2. 78% ネットワーキング
  3. 77% コミュニティ構築
  4. 51% ブランド評価マネージメント
  5. 44% カスタマーサービス
  6. 30% 顧客調査
  7. 20% 販売
となっている。

さて、「ビジネスにTwitterがどれくらい重要か?」という質問に、45%が「重要」、20%が「とても重要」と回答している。
「今後6ヶ月間にTwitter利用がどうなるか」を聞いたところ、45.5%は「すごく増える」、37.5%は「増える」と回答している。合計83%が増えるとしている。
そして、Twitterは企業Blogに次いで2番目に「企業価値を提供する」ソーシャルメディアサイト(ツール)だとされている。5段階評価で、Twitterが「大きな価値」を提供すると回答したのは41%、LinkedInとしたのは25%、Facebookは17%で、企業Blogが52%となっている。それにしてもMySpaceは「価値なし」と判断するTwitterユーザが多い。
Source:MarketingProfs / Twitter Success Stories (要有料登録)

ソーシャルメディアにまだまだ及び腰の企業・ブランドが多い中、Twitterという一種、最先端のツールを活用するマーケティングを実施している企業がある。

その理由のひとつは、MarketingProfsも挙げているように1年半で100万㌦の売り上げをたたき出したDellOutletの存在だろう。昨年、下の参考で取り上げたときにはたった2,475人のフォロワーだったが、今、そのフォロワーは57万人を超えている。

参考:Twitter drives real revenue (Online Ad 2008/12/25)

ユーザ、顧客と直接、つながるチャネルが存在し、DMを使うことで直接会話も可能だ。また、そのチャネルを企業・ブランドに対して開いているユーザが存在する。そして、そのチャネルを活用することでビジネスにつながっている。

上にあるように何も製品販売だけがTwitter利用の目的ではない。それぞれの目的の効果が出ているからこそ、今後のTwitter利用が増えると回答している。

ソーシャルメディアを検討もしていない企業・ブランドと、新しいツール・サービスのメリットを活用しようとする積極的な競合企業との差は開いてゆく。

2009/06/10

Social Media Press Release -2

昨日、「Social Media Press Release」を書いた。

参考:Social Media Press Release (Online Ad 2009/06/09)

その最後にHubSpotの資料を引用した。

Source:HubSpot / How to Be Smarter Than Your PR Agency (pdf:要登録)

この資料の中でHubSpotは、以下の表にある4つのニュース配信会社とフリーサービスを使い、伝統的なプレスリリースと、ソーシャルメディア型ニュースリリースを出した結果を比較している。
まず、伝統的なニュースリリースは、下の左側。ソーシャルメディア型ニュースリリース(SMNR)は右側になる。拡大しても詳細なところは分からないが、この違いは以下の5つだ。
  1. 伝統(アンカーテキストなし:例、http://www.hubspot.com)、SMNR(あり:例、inbound marketing
  2. 伝統(文節形式)、SMNR(箇条書き形式含む)
  3. 伝統(リリース内部での引用)、SMNR(リリース末尾への引用)
  4. 伝統(マルチメディアなし)、SMNR(ビデオエンベッドあり)
  5. 伝統(共有機能なし)、SMNR(共有ボタンあり)
さて、結果として、発信されたプレスリリースが配信を受けたメディア系Webサイトに掲載された数を見ると、伝統的なプレスリリースのほうが掲載された回数が多い。
また、プレスリリースを掲載したメディア系Webサイトへのリンク数を見ると、これも伝統的なプレスリリースのほうが多い。
ここでHubSpotは、ニュース配信会社が配信するプレスリリースを受け取るポータル側の属性も検討すべきだとしている。例えば;
  • Yahooなどはプレスリリースを再発行する
  • ポータルによっては掲載するプレスリリースを手作業で選ぶ
  • ReutersなどはURLリンクを掲載しない。
  • ポータルによってはアンカーテキストを削除し、独自のアンカーテキストを掲載する
  • Reutersなどは箇条書きなどの文書フォーマットをサポートしない。またXHTMLを承認しない
だから、
  • アンカーテキストは重要なURLの隣に置くこと(例:inbound marketing (http://www.hubspot.com))
  • 箇条書きはNG
  • マルチメディアエンベッドはNG(マルチメディアコンテンツを置いてある企業のWebサイトへリンクすること)
  • リリース末尾への引用
が一番だとしている。

この結果からHubSpotが言うようにソーシャルメディア系プレスリリースは伝統的なプレスリリースに及ばないのだろうか?

いや、そんなことはない。彼らが送ったSMNRは、PR-Sqauredが推奨するフォーマットを完全に踏襲しているわけではない。特にビデオのエンベッドコード、コメントやトラックバック機能が欠けている。また、プレスリリースのコンテンツ自体がどのような内容だったのかも不明だ。

彼らが調査したのは、プレスリリースを掲載したメディア系Webサイトだけで、ソーシャルメディアスペースでの露出を考えてはいない。

今どき、プレスリリースを配信会社だけに送る企業・ブランドはいないだろう。Emailレター登録者、RSSフィード、そしてemailアドレスがありOpt-inしているユーザには必ず配信するはずだ。そして、ソーシャルメディアスペースでの露出と共有が、コンテンツの拡散へとつながり、リンクを増やすことになる。

伝統的な配信会社に伝統的なコンテンツだけを送るのではコンテンツを消費、共有、拡散してくれるユーザはあまりいない。ただし、Emailレター登録者やRSSフィードを受けているユーザ、Opt-inユーザもいない場合、このSMNRは絵に描いた餅になる。