2011/05/10

Detailed Findings of Groupon Promotion

昨年、「Profitability of Groupon Promotions」に

参考:Profitability of Groupon Promotions (Online Ad 2010/12/22)

引用した米ライス大学のUtpal M. Dholakiaが、新しいレポートを発表している。

それによると、2011年末には数十億㌦規模と見込まれる「クーポン共同購入」市場は、様々な思惑が絡み合い、利用しようとするビジネス側、そして利用する消費者側にもポジ、ネガ面で多様な議論がある。

ポジ面
  • パパママストア、零細・中小企業に与える膨大な露出
  • 新規客獲得から中長期ビジネス形成へのフロー
  • 広告とDMを兼ね備えたクーポンキャンペーンの可能性
ネガ面
  • クーポンキャンペーンがパパママストア、零細・中小企業を脅かす多大なコスト
  • 再訪率の低さ、定価販売の下げ止まり
  • 極端な安売りによるブランド毀損
などがある。

そこで、昨年紹介した調査に続いてUtpal M. Dholakiaが、ヒューストンにあるGPM(Gourmet Prep Meals)の開店2010年7月15日から2011年4月14日までの9ヶ月間における売上、利益、販売当たりの利益、他割引との売上・利益比較、クーポン交換率など、クーポン共同購入キャンペーンの実態を調査したものだ。

さて、PGMは開店から2ヶ月半経った9月末、通常25㌦の「お持ち帰り、さっと調理するだけで食べられる」パックを12㌦で販売するクーポンを600枚以上販売し、客は3月末までクーポンと交換することができるキャンペーンを開始した。

まず、GPMの累積売上と利益を見ると、ビジネスを開始した2ヶ月半は店が知られていないこともあり、緩やかなカーブを描いている。そしてGrouponキャンペーンが始まると急激にカーブが上昇している。ただし、50%割引クーポンなので累積利益は売上カーブから乖離し、低空飛行のままといった状況がキャンペーン終了直前まで続いている。そして終了直前になって売上、利益とも跳ね上がっている。そして、キャンペーン終了後の売上、利益とも開始前のなだらかなカーブに戻っている。
次に、Grouponキャンペーンをしなかった場合をキャンペーン前の2ヶ月半の累積から推測したカーブを重ね合わせて比較している。それによると、キャンペーンをしなかった場合と比べて売上は140%も伸びている。これはGrouponキャンペーンがもたらした「露出価値」と分類することができる。

キャンペーンをしなかった場合、無名の新ビジネスがたたき出す売上も利益も緩やかな上昇カーブを描くことになる。その利益カーブに近似したカーブをキャンペーン期間中にたたき出していることから最低限の利益は確保できていたようだ。これがあるからこそ、ある意味で豊富な回転資金で仕入れを行いキャンペーン期間中を乗り越えられたということだろう。

キャンペーン終了直前に駆け込み需要があり実際の利益は推測利益を30%も上回るカーブをたたき出している。ここは、キャンペーン企画に際してひとつのポイントになるだろう。
そして、販売当たりの利益を見ている。ここに関しては、クーポン利用企業ごとのコスト、利益率、定価、割引率、販売クーポン数、期間など多くの変数があるので一概に断定することはできない。しかし、GPMの場合、赤にはなっていないが、キャンペーン開始前の2ヶ月半の利益からするとキャンペーン期間中は半分以下、三分の一程度の利益しか出ていない。平均するとキャンペーン前の60%ダウンというレベルだ。ただし、日によって、週によって大きく変動していたキャンペーン前と比べれば、低空飛行ではあるが安定した利益をもたらしていたと言えないこともない。
上の売上はクーポン利用客だけではなく定価販売客やその他の割引販売客も含めている。ということで客ごとの売上と利益も分析している。

定価販売客の売上をインデックス192とすると、クーポン客は71、その他割引き客は156。利益でみると定価販売客は617、クーポン客は-60、その他割引き客は405となっている。

ということは、クーポン客は定価販売客の半分以下の売上しかなく、当然ながら利益は赤だ。クーポン客は仕入れなどの回転資金に全く貢献していないのが明らかだ。
とどのつまり、「クーポン客だけ」では商売にならないのだ。ただし、下図に示されているようにキャンペーン期間中のクーポン客だけの利益と来店頻度の関りを見ると、クーポン客の60%は赤字だが、20%は利益を比較的多く稼げている。そのため、キャンペーン期間中の利益は赤字を免れているわけだ。

もうひとつある。それはクーポンで来た客が定価販売客として再訪し、期間中の定価販売客数を3倍に押し上げていることだ。それによって利益を黒に押し上げている。
次に累積利益率(累積利益÷累積売上)を見ると、販売当たりの利益と似通ったカーブを描いている。ひとつ違うのはキャンペーン終了直前に見られる跳ね上がりだ。この駆け込み需要が利益率を大きく押し上げている。このパターンは多分、他ビジネスにも反映されるとだろうから、終了直前には相応の仕込みが必要になる。
最後にクーポンの交換率を見ている。これもビジネス、業態ごとに多様だ。だから基本的な参考程度のデータではあるが、ここまで切り込んでいる初めての調査として価値は低くはない。

Source:Social Science Research Network / A Startup'S Experience with running a Groupon Promotion

この調査の結論は、上を参照していただくことにして、日本でもいろいろとお騒がせニュースが飛び交っているGroupon(グルーポン)だが、なにもパパママストア、中小・零細企業だけに利用させておく手はない。ナショナルクライアントであるGAPが利用したように大企業、グローバル企業であっても活用するチャンスはいくらでもあるはずだ。

この調査レポートを物売りビジネスだけに反映するのか、あるいは、サービスなど他ビジネスに展開する戦略を検討するのか、そこがマーケターの能力次第になる。

2011/05/02

Pitney Bowes Twitter Case Study

さて、Twitterアカウントを開設し、ピーチクパーチクとつぶやき始めたB2B/B2C企業の多くは、発信すべきコンテンツに関して何も考えて はいない。広報系プレスリリース、ニュースリリースをTweetしているだけで既存メディアを使ったマーケティングと何ら変わることはない。昔から変わら ないコンテンツをただ、チャネルを変えて発信しているだけだ。

ユーザがエンゲージメントや共有するコンテンツを判断、コントロールしていることに考えは及んでいない。

昔と同じコンテンツ、やれ、「どこそこのランク100に選ばれた」とか、「いくら寄付した」だとか、「新製品を発表した」といった、聴いて欲しい、知って欲しい、評価してもらいたいことのオンパレードだ。そんな情報やコンテンツを社員以外の誰が共有してくれるのだろう?そんなお手盛りコンテンツを共有しているユーザを誰が信頼するのだろう?

ユーザやオーディエンスが共有してくれるコンテンツにかけるマーケティング予算は2010年にすでに33%に達していた。そして、2011年の今年は、コンテンツが王様になる年だ。そんな年にTwitterアカウントを開設し、価値のないコンテンツを垂れ流しているだけの企業の多いこと、多いこと。当然、効果指標なり、目標とするROIなりがあるわけでもない。

そんな中、ユーザ・オーディエンスに価値を提供している事例として、Pitney BowesのTwitter事例をまとめてみた。
B2B企業ではあるが、Pitney Bowesが行っているコンテンツマーケティングはB2Cにも適用されるべきものだ。

そして、コンテンツマーケティングの核を成し、次のステップへ押し上げるのはコンテンツキュレーションということになる。ユーザ・オーディエンスに彼らが認める価値を提供できるかどうかは、この「コンテンツキュレーション」にかかっている。

しかし、そんなことは考えもせず、気にもせず、「俺が俺が」的や「我社が我社が」的なコンテンツ、社内の誰も、あるいは海外現法社員の誰もアクセスしたことのないURLへのリンクを発表するTweetしかしないのがWeb -1.0(ウェブマイナス1.0)企業となる。

担当者は最新ツール、サービスをよく理解しているが、彼らのマインドセットは昔のままだ。担当者はツール、サービスを活用したマーケティングを考えるが、発信するコンテンツは昔のままだ。ここに上流コンサルティングの必要性がある。結局、縦割りサイロ組織に横穴を開けなければコンテンツ・キュレーションが必要とするコンテンツは入手、制作、発信できない。

そうそう、もう少しで忘れそうになったが、ここでいうコンテンツとはSEOがらみで語られるコンテンツではないことだけは誤解なさらないように...。 キーワードとか、検索実績数とか、タグとか、メタデータとか、リンク構築とか、そういった担当者レベルの話ではない。ここでいうコンテンツとはユーザ・オーディエンスが認める価値を持ったコンテンツであって、企業・ブランド側が認める、認めて欲しい価値のあるコンテンツではない。