2010/12/28

Global Friendships

FacebookのインターンであるPau Butlerが世界中のFacebookユーザの交友関係を図式化したものをあげている。

CNNなどは中国が空洞になっている点を取上げているが、本質は別の処にある。

それは世界中のFacebookユーザが、英語圏であれ、非英語圏であれ、Facebookというコミュニケーションチャネルを通してつながっているということだ。

世界には英語を学んでいる学生や社会人が10億人いる。日本を除き、どんな国であれ、今時、幼稚園児や小学生だって英語くらい話すのは常識だ。英語さえ理解できれば、Facebookというコミュニケーションチャネルに参加するだけで世界中のユーザとつながることができる。非英語圏のユーザは、英語を理解する国内のアーリーアダプターが翻訳する英語コンテンツを消費することで、英語圏ユーザとつながってゆく。

ここに国境や言語による制限は少ない。米国や欧州で発売されたローカル製品が、様々な交流チャネル、タッチポイントを経由して、アフリカ、南米、東南アジアのFacebookユーザに露出する可能性がある。逆に、インドや中近東、あるいは韓国のニュースが英語圏ユーザに露出、共有される可能性もある。
Source:Facebook / Visualizing Friendships
Source:CNN Japan / フェースブックの世界地図

だから、Volkswagen Internationalは、Das Auto.というFacebookページのInfoタブのMissionにこう書いている。
This is the official Facebook Page of Volkswagen International. We bring “Das Auto” to all Facebook fans and drivers around the world. This is the place to check out for the latest Volkswagen news and entertainment. It is also the place to share your thoughts, pictures or videos of your personal Volkswagen experiences and moments. In order to reach out to a widespread audience, the official language of this page is English.
Source:Facebook / Volkswagen International

Volkswagen本社が各国のFacebookページに加え、本社ページを英語で公開、運用していることを、Facebookの全世界交流つながり図と重ね合わせれば、その意味や目的が良く見えてくる。

と、すると、交流のつながりが空白で漆黒の闇に包まれているかのような中国を問題にするよりも、非英語圏でありながら世界中から太く、明るい交流関係のつながりがある国々と比べ、見方によっては消えそうに弱く、細いつながりしかもたない日本の現状を考えた方がましだ。

日本のグローバル企業が本社予算で現法の広告キャンペーンを支援すること以上にやらなければならないことがあると思うが、いかがだろうか?

2010/12/22

Profitability of Groupon Promotions

最近、Grouponのオンライン広告がこれでもかというほど出稿されている。例えば下のようなやつだ。
このバーガーが97%割引なのかはともかく、消費者にとって見るととにかく安いのがいい。少なくとも半額で欲しいもの、やりたいこと、食べたいものが手に入る。店にとってもそうだ。名前の知られていない店、ショップにとって、自慢の品やサービスをとにかく試してくれさえすればその良さは分かってもらえるはずだが、如何せん、お客に知ってもらえる道がない。そこをGrouponの吸引力で大勢のお客に知ってもらえるわけだ。最初は赤字覚悟の低価格で出すしかないが、お客さんが何度も通ってくれれば、通常価格で買ってくれれば元は取れると踏んでいる。

ということで、Grouponもせっせと自身を露出して吸引力拡大に努めている。

ところで米、ライス大学のUtpal M. Dholakiaが、Grouponを使ったプロモーションの効果に関する面白い調査を報告している。

それによると、
  • Grouponを使った店、ショップの66%は利益が出たが、32%は赤字
    (レストランの場合、42%が赤字)
  • クーポン額面金額以上の売上があったのは、利益が出た店で50%、赤字店では25%
    (赤字店で25%も額面以上に買ってくれたのにそれでも赤字ということは...)
  • 再び店、ショップを訪れて定価で買ってくれたのは、利益が出た店で31%、赤字店では13%
    (利益が出た店でもクーポン客の69%は二度と来ない一過性の売上になる)
  • もう一度、Grouponを使おうというのは、利益が出た店で82%、赤字店ではたったの8%
    (利益が出た店の18%は二度とやらないというのは...)


ま、Grouponの評価が定まるには少し時間が必要な気がする。

しかし、Grouponは、とに角、新規顧客獲得に威力を発揮している。一時期ではあるが怒涛のように顧客が押し寄せて今まで見たことも、体験したこともないような大入り満員札度めセールを保証している。そして、少ないながら二度目、三度目といったリピーター達が、クチコミを広めてくれているわけだ。また、今年9月、最初のナショナルクライアントとしてGAPがGrouponを使っている。44.5万枚のクーポンが売れて1,100万㌦の売上をあげており、ローカル、リジョナルの小売だけではなく、ナショナル、あるいはグローバルへの展開もありそうだ。

ただし、バラ色の結果だけではなさそうで、Appendix 2を見ると、「Grouponユーザは要求だけ多くて金を使わない」「対象商品以外も割り引けと要求する」「彼らは二度と戻ってこない」といったコメントが並んでいる。

Source:How Effective Are Groupon Promotions for Businesses? (pdf)

それにしてもGrouponのコミッションは最大50%らしいので、そのコミッションを払い、定価の50%引きでも利益の出る店、ショップ、レストラン、ネイルサロンやスパがいるのはすごい。クーポン特別ディナーとか、特別セットとして最初から原価を半分以下にしていたのかもしれない。ま、定価が如何にぼったくりだったのかということでもあるし、如何に消費者はコケにされていたかということなのかもしれない。

Source:Groupon Business Model (SlideShare)

2010/12/21

Difference Between Advanced and Laggard

毎日、ソーシャルメディアというキーワードを聞かない日はない。とに角、ソーシャルメディアが喧しい。バズワードとして十二分に日本中に知れ渡ったようだ。

ただし、それはソーシャルメディアのごく一部である「ツィッター」が取上げられているだけで、ソーシャルメディアそのもの、その本質、現在及び今後への影響を理解した上でソーシャルメディアが語られていることはそう多くはない。

TwitterやUstreamを使って最先端マーケティングをやっていると思っているが、それは違う。新しいツールを使い、苔むしたコミュニケーションメッセージを垂れ流しているだけだ。担当者の自己満足と、上層部の無理解が大手を振って歩いているだけだ。デジタルとか、インタラクティブマーケティング、あるいはソーシャルメディアマーケティング部という部署がある米国企業と比べ、昔からの広報や、広告、製品マーケティングや営業部隊が新しいツールを担当している日本企業は、とてつもなく後れている。

それを端的に表しているものがある。ソーシャルメディア関連の求人数だ。

Google.co.jpで「求人 マーケティング」を検索すると1,160万件がヒットした。Google.comで「job marketing」を検索すると1億1,300万件ヒットした。単純に考えれば米国は日本の約10倍のマーケティング関連求人があると言える。人口、企業数、求職状況を考えれば妥当な差ではないだろうか。

次に同じように今度は、「求人 ソーシャルメディア」、「job social media」を検索すると、google.co.jpは66.5万件、google.comは9,840万件ヒットした。ということは、米国は日本の約150倍のソーシャルメディア関連求人があるということになる。マーケティング求人の15倍の差がついている。それだけ日本にはソーシャルメディア関連求人がないわけだ。企業自体が如何にソーシャルメディア担当者を必要としていないかが分かる。広報や広告、マーケティングのプロは必要だが、ソーシャルメディアのプロは要らないのだ。
(ここまでの検索結果は12月13日)

このソーシャルメディア関連求人の中身はどうなっているか調べてみると、12月18日にgoogle.comで「job social media」を検索すると1億1,300万件がヒットし、「job social media agency」では1,430万件がヒットした。これを単純に考えれば、ソーシャルメディア関連求人のうち12.65%が代理店のもののようだ。米国は企業、メーカー系のソーシャルメディア関連求人が中心になっていると見てもいいのではないだろうか。

次にgoogle.co.jpで「求人 ソーシャルメディア」を検索すると74.5万件、「求人 ソーシャルメディア 代理店」では21.1万件がヒットした。ソーシャルメディア関連求人のうち28.32%が代理店のもののようだ。これを「求人 ソーシャルメディア 制作会社」とすると57万件なので、76.5%が外注系求人のようだ。少なくとも日本のソーシャルメディア関連求人は代理店系、外注先系の求人が多そうだ。

米国の求人サイトはどうだろうということで、「social media」をキーワードとして検索してみると、
  • Monster 1,000件以上
  • Job Search 3,625件
  • Indeed 29,288件
  • Career Builder 3,626件
となった。

日本のハロワや転職サイトを見ると、 これはもう悲惨としか言いようがない。いずれも職種、業種、勤務地などは空白として、キーワードに「ソーシャルメディア」を入れて検索してみた。
  • ハロワ 5件
  • パソナキャリア 4件
  • デューダ 18件
  • JACリクルート 1件
  • リクルートエージェント 2件
  • マイコミエージェント 0件
これらすべてが企業、メーカーの求人だとすると、米国の求人サイトと比べると数百分の一、数千分の一以下の求人しかない。非公開の求人もあるだろうが、上記求人数の10倍、100倍になるとはとても思えない。

日本企業、メーカー系のソーシャルメディア関連求人はこれほどお寒い状況なのだ。

社内のアーリーアダプターが社内伝道しても頭の固い上層部は首を振るだけ、他部署に伝道しても固い縦割りサイロ組織の弊害は越えられない。コンサルタントとして自社にコンタクトしていたEsteban ContrerasをヘッドハントしたSamsungまで行くのは不可能だろうが、既存組織ではできないことがあることさえ分かっていないという状況があるからだ。

参考:Japanese Brands Left Far Behind While Samsung Accelerating (Online Ad / 2010/08/09)

他部署に複層して関るソーシャルメディアマーケティングを行う部署を新設することが必要なのだが、日本のグローバル企業にその動きはない。既存部署のマインドセットのままでは、また、今までのコミュニケーションチャネルと同じコンテンツを供給していてはダメなのだが、本質を理解していないから根本のマインドセットを変えられていない。

既存部署の有志が新しいツールを使って既存手法をソーシャル化したり、あるいは既存部署にツールの担当者を入れて情報発信を行ったとしても、マインドセットが同じなので発信されるコンテンツは、毎日、郵便受けに投げ込まれるポスティングと一緒だ。読まれることも、共有されることもなく、ゴミ箱行きだ。

最悪なのは、代理店、エージェンシーがあげてくるソーシャル提案を鵜呑みにして、昔のままのマインドセット、既存部署、そしてツール主導の広告やマーケティングをやっている企業だ。いや、もっとひどい処も沢山ある。

さて、下はB2Bバイヤーが購買プロセスの3段階で使うコミュニケーションチャネルを、利用頻度と影響力に応じてプロットしたものだ。 利用頻度が高く、影響力の強いチャネルはWOM、展示会・セミナー、サプライヤーWebがあげられ、利用頻度が低く、影響力の弱いチャネルには、DM、LinkedIn、Webinar、雑誌広告があげられている。
それを30歳までのバイヤーでプロットし直してみると、まるっきり画が違う。高頻度、影響大のセクションに展示会・セミナー、DM、そしてWeb検索が顔を出している。また、低頻度、影響大のセクションに入っていたソーシャル系のTwitter、Blog、Facebook、コミュニティサイトが概ね右上へ移動している。
Source:BaseOne / Buyersphere Report (pdf)

B2Bでさえも既存チャネルと違うアプローチが必要になってきている。そして、30歳未満のデジタルネイティブと、30歳以上のデジタルイミグラントとではこんなにも違う。この状況を理解する企業と理解しない企業がいる。古いマインドセットを切換え、新しいチャネルに対応しようとする企業がいるし、そうしない企業もいる。また、苔むした既存チャネルにしがみ付き、既得権を手放そうとしない組織があり、人がいる。
参考:Digital Natives and Immigrants (Online Ad 2010/04/02)

半導体、液晶パネル、TV、リチウムイオン電池と韓国勢にシェア首位を奪われてきた日本企業は、製造メーカーとしても、パラダイムシフトの理解においても二番手、三番手に落ちこぼれている。縮小するしかない国内市場をかかえる日本の企業本社が、グローバルなブランディング、マーケティングをやらない限り、SamsungやLGの後塵を拝するのは間違いのないところだ。なぜなら、デジタルネイティブとイミグラントの差さえ理解しない企業に2011年以降の流れなど読めないし、コミュニケーションさえできないからだ。