彼は昨年秋口、コンサルタントとしてSamsungのソーシャルメディア取り組みについてインタビューするため、@SamsungTweetsにコンタクトしたそうだ。他にも何社かインタビューしたそうだが、Samsungとの接触はその後も続き、年末に彼はSamsungに入る決心をしたそうだ。それは、Samsungがソーシャルメディアを本格的にやることを知り、もっといい会社、もっとソーシャルな会社に変身するには自分が必要だと思ったからだそうだ。
今年1月から彼はSamsungのソーシャルメディアマネージャとして腕をふるっている。
現在、Samsung.com/us/のトップページにはTwitter、Facebookへのリンク、Wonderコンテストへのリンクボタンが大きく配置され、ページ底には「My Samsung」として、ユーザ登録・ログイン、検討中の製品、閲覧履歴、製品比較ができるようになっている。
(注:日本からアクセスするとIPフィルタリングによってsamsung.com/jp/にリダイレクトされてしまう。SamsungのemailニュースレターなどからUSサイトへアクセスできる)
Webページの機能拡張に加え、Emailニュースレター受信登録をすると送られてくるemailにモバイル版、「Share This」といった追加機能が付き始めたのは春以降だっただろうか。
彼がソーシャルメディアマネージャになってから3カ月たつか、たたないかのうちにWebページ、Emailニュースレターのソーシャル化が加速してきている。
Samsungのソーシャル化加速を目の当たりにしたUsefulSocialMediaは、入社してから半年目のContrerasをCorporate Social Media Summitに呼び、Samsungの取り組みを紹介したわけだ。
その中にこれから導入するツール、サービス、プラットフォームのモックアップがあった。これはSeesmicをベースに開発しているSamsungチャネルで、統合的なTwitter管理スペース、プラットフォームのようだ。
参考:Samsung Customer Centric (Online Ad 2010/07/29)
さて、SeesmicのLoic Le Meurと言えば知る人ぞ知る、いや、誰でも知っているような有名人だ。その彼が7月22日、下のTweetをしている。
Source:Twitter / Loic
Contrerasは現在、SamsungTweetsを個人的に管理しているようなので、ContrerasとLoci Le Meurが二人して、韓国のSamsung本社においてCEOのイ・ゴンヒ始め、居並ぶ100人以上の役職者を前にSeesmic Lookのプレゼンをしたようだ。
たった一人が組織に加わっただけで、Samsungの最大市場である米国のWebサイト、Emailニュースレターなどのソーシャル化が向上し、Facebook、YouTube、Twitterといったソーシャルメディアスペースにおけるプレゼンスが増強され、消費者・ユーザとのコミュニケーションが改善されてきた。それもたった7カ月かそこらでの話だ。そして、ソーシャル化の次のステージへ進展するための新しいプラットフォームを、本社においてCEOに直接プレゼンする処まで突き抜けている。このスピーディーな動きには目をみはるばかりだ。
ところで、北米や欧州消費者のニーズ、コミュニケーションチャネルが変化してきたことはその地域だけだと思うかもしれない。だから、社外からヘッドハントしてきたContrerasをソーシャルメディアマネージャに据えて、北米対応を行っているのだと。
しかし、その北米や欧州と、その他の国々、特にBRICsの消費者ニーズ、コミュニケーションチャネルに起こっている大変革に違いはない。インターネットユーザ数のトップ10、携帯ユーザ数のトップ5に BRICsは入っている。また、Webアクセストラフィックのシェアを見るとロシアやブラジルはその50%近くがソーシャルメディアスペースになっている。モバイルでのソーシャル化は世界トップかもしれない。北米や欧州と同じように、あるいはそれ以上にソーシャル化が進んでいるのがBRICsなのだ。そして、その後をその他の国々が追っている。
世界中でインターネット、ソーシャルメディア、デジタルネイティブといったキーワードが、今まであった既存のコミュニケーションチャネルを揺り動かし、新しいコアチャネルとして確立してきている。その変化に即してマインドセットを切り替え、Samsungが新しいコアチャネルに適応している典型が北米、米国の対応だ。そして、その対応は何も米国、北米に止まらない。BRICsであろうと、それ以外の途上国であろうと、デジタルネイティブは存在し、アーリーアダプター、クリエーター、インフルエンサーとして力をふるう。その彼らにソーシャルメディアスペース経由でまず、各国子会社がコネクトするようになり、そして、本社がグローバルブランディングを開始するだろうと予想するのは、そんなに難しいことでもない。あるいは、北米対応だけを目指していたにも関わらず、世界各国のユーザがターゲットになっている、できるということを学習するのにそう時間はかからない。だから、本社のグローバルブランディングを実施するまたとないチャネルがソーシャルメディアだと理解するのはもうすぐ先だ。
さて、Samsungは2009年、40周年ミーティングで「ビジョン2020」を発表した。これからの10年間で売上高を400兆ウォンにすること、IT分野 でグローバルリーダーとなり、トップ10に入るグローバル企業になり、トップ5のブランディングパワー、尊敬される企業のトップ10になると宣言した。 Samsungのコアターゲット地域は北米と欧州だが、重点戦略地域として当然、BRICsもあり、 特に中国、インドなどで活動を活発化させている。
そのSamsungがまず北米、米国でソーシャル化を進めている。そして、上の簡単な予想が当たれば、世界のユーザをターゲットとしたグローバルなブランディングが始まる。
このまま、Samsungが北米での対応をトリガーとして、欧州、BRICs、その他途上国でのコミュニケーションをソーシャル化させてきた場合、対抗できる日本のグローバルブランドはいるのだろうか?あるいは、後をついていけるブランドはいるのだろうか?Contrerasをヘッドハントしてから半年やそこらで、米国Webサイトなどを改修、増強し、社内(あるいは社外も含めた)コミュニケーションプラットフォームを本社CEOにプレゼンできる環境が、日本のグローバル企業・ブランドにあるのだろうか?そして、なりよりもまず、社外のリソースをソーシャルメディアマネージャとしてヘッドハントするキャパがあるだろうか?
それは「絶対ない」と確信を持って言える。
縦割りサイロ組織が壁を作り、情報が共有できず、社内にソーシャルメディアのパワーを伝道するアーリーアダプターだけがストレスを積み重ねる中、マインドセットが昔のままの人間は「他人事」、「自分の担当ではない」と横を向いたきり、手も貸してくれない。あるいは社外のリソース、代理店やエージェンシーは、苔むしたビジネスモデルをベースとした提案をするだけで、良くてメガフォンマーケティングをソーシャル化することだけ、本当に企業が必要とする現状認識や新しいアイディア、ソーシャルメディア戦略構築、実施のリソースにはなりえない。
ここで今から5年後の2015年を思い描いていただいた場合、
- あなたの企業・ブランドは、今のままのコミュニケーション戦略ですか?
- 既存組織の返り討ちにあってソーシャル化はまだ始まっていませんか?
- ようやく何年か続けた社内での啓蒙が取締役レベルにやっと上がった段階ですか?
- それとも既存組織のままで足りない要員、予算を前に何もできないと嘆息していますか?
- あるいは...
言えることは、このままであれば、5年後の2015年にSamsungは2009年に宣言した通りの企業・ブランドとして世界に君臨しているだろうが、日本のグローバルブランドは価値、そして評価が下落し、単なるローカルなガラパゴスブランドになっているかもしれないということだ。
また、これはエレクトロニクス業界に限らない。B2Cであれ、B2Bであれ、特定業界・業種に限らず海外へ進出している、進出を予定する企業すべてにかかってくる。Samsungであれ、Fordであれ、それぞれの業界、業種におけるBest Practiceがそこかしこでオープンに共有され、それを規模の大小に限らず多くの企業・ブランドが学習してくるわけだ。異業種の事例の中から自社に適用可能なコンセプト、コンポーネント、パーツを取り入れ、その上で新しいアイディアを載せた独自の取り組みが実施される。これはすべての業界に適用される。
そして、これから行われるそういったコミュニケーションと接触し、エンゲージし、価値を見出すユーザが増えてくると、ソーシャルコミュニケーションを前提とする消費者、ユーザ、顧客、ビジネスパートナーが大半を占めてくることになる。そんな状況で10年前のコミュニケーションをやったところで、刺さる処も、響く処もないし、ターゲットのマインドセットにブランドが存在しなくなってしまう。
それだけ、これからの5年は重要だし、動きはグローバルに加速する。海外子会社や販社が担当国や地域単位でやるべきことに加え、日本本社がグローバルにやるべきことがある。
それでは5年後、
- ローカルなガラパゴスブランドにならないためには、
- レガシーマスメディアに拘泥したままで効果のない広告、広報、マーケティングを続け、消費も共有もされないメッセージを流し続ける羽目にならないためには、
- 競合が数百人規模のソーシャル部隊を抱え、世界のユーザとダイレクトにエンゲージするスペースを運営している一方、数人規模のグループで対抗しなければならない羽目に陥らないためには、
- 各国子会社、販社の営業、販促活動をソーシャルメディアのグローバルスペースで日本本社が支援するためには、
- グローバルなユーザの声、評価、意見を聞き、それをブランドの価値向上、購買プロセスへの落とし込み、ロイヤル・リピートユーザの醸成に結びつけるためには、
- ポジティブな消費者・顧客・ユーザの声を育成、増強、拡散するためには、
- そして、世界中のソーシャルメディアスペースのユーザから総スカンを食わないためには、
- あるいは、Worst Practicesの上位に名を連ねないようにするためには、
CEOおよび役職者を対象としたクラッシュコース開催、Webビジター調査、オンラインモニタリング、そして、競合、同+他業界の動向、各種統計、最新事例を調査したり、米国や欧州、その他の国から広報、広告、マーケティング担当者を呼び集めてのヒアリングやクラッシュコース開催などやれることは山ほどある。
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