2010/12/28

Global Friendships

FacebookのインターンであるPau Butlerが世界中のFacebookユーザの交友関係を図式化したものをあげている。

CNNなどは中国が空洞になっている点を取上げているが、本質は別の処にある。

それは世界中のFacebookユーザが、英語圏であれ、非英語圏であれ、Facebookというコミュニケーションチャネルを通してつながっているということだ。

世界には英語を学んでいる学生や社会人が10億人いる。日本を除き、どんな国であれ、今時、幼稚園児や小学生だって英語くらい話すのは常識だ。英語さえ理解できれば、Facebookというコミュニケーションチャネルに参加するだけで世界中のユーザとつながることができる。非英語圏のユーザは、英語を理解する国内のアーリーアダプターが翻訳する英語コンテンツを消費することで、英語圏ユーザとつながってゆく。

ここに国境や言語による制限は少ない。米国や欧州で発売されたローカル製品が、様々な交流チャネル、タッチポイントを経由して、アフリカ、南米、東南アジアのFacebookユーザに露出する可能性がある。逆に、インドや中近東、あるいは韓国のニュースが英語圏ユーザに露出、共有される可能性もある。
Source:Facebook / Visualizing Friendships
Source:CNN Japan / フェースブックの世界地図

だから、Volkswagen Internationalは、Das Auto.というFacebookページのInfoタブのMissionにこう書いている。
This is the official Facebook Page of Volkswagen International. We bring “Das Auto” to all Facebook fans and drivers around the world. This is the place to check out for the latest Volkswagen news and entertainment. It is also the place to share your thoughts, pictures or videos of your personal Volkswagen experiences and moments. In order to reach out to a widespread audience, the official language of this page is English.
Source:Facebook / Volkswagen International

Volkswagen本社が各国のFacebookページに加え、本社ページを英語で公開、運用していることを、Facebookの全世界交流つながり図と重ね合わせれば、その意味や目的が良く見えてくる。

と、すると、交流のつながりが空白で漆黒の闇に包まれているかのような中国を問題にするよりも、非英語圏でありながら世界中から太く、明るい交流関係のつながりがある国々と比べ、見方によっては消えそうに弱く、細いつながりしかもたない日本の現状を考えた方がましだ。

日本のグローバル企業が本社予算で現法の広告キャンペーンを支援すること以上にやらなければならないことがあると思うが、いかがだろうか?

2010/12/22

Profitability of Groupon Promotions

最近、Grouponのオンライン広告がこれでもかというほど出稿されている。例えば下のようなやつだ。
このバーガーが97%割引なのかはともかく、消費者にとって見るととにかく安いのがいい。少なくとも半額で欲しいもの、やりたいこと、食べたいものが手に入る。店にとってもそうだ。名前の知られていない店、ショップにとって、自慢の品やサービスをとにかく試してくれさえすればその良さは分かってもらえるはずだが、如何せん、お客に知ってもらえる道がない。そこをGrouponの吸引力で大勢のお客に知ってもらえるわけだ。最初は赤字覚悟の低価格で出すしかないが、お客さんが何度も通ってくれれば、通常価格で買ってくれれば元は取れると踏んでいる。

ということで、Grouponもせっせと自身を露出して吸引力拡大に努めている。

ところで米、ライス大学のUtpal M. Dholakiaが、Grouponを使ったプロモーションの効果に関する面白い調査を報告している。

それによると、
  • Grouponを使った店、ショップの66%は利益が出たが、32%は赤字
    (レストランの場合、42%が赤字)
  • クーポン額面金額以上の売上があったのは、利益が出た店で50%、赤字店では25%
    (赤字店で25%も額面以上に買ってくれたのにそれでも赤字ということは...)
  • 再び店、ショップを訪れて定価で買ってくれたのは、利益が出た店で31%、赤字店では13%
    (利益が出た店でもクーポン客の69%は二度と来ない一過性の売上になる)
  • もう一度、Grouponを使おうというのは、利益が出た店で82%、赤字店ではたったの8%
    (利益が出た店の18%は二度とやらないというのは...)


ま、Grouponの評価が定まるには少し時間が必要な気がする。

しかし、Grouponは、とに角、新規顧客獲得に威力を発揮している。一時期ではあるが怒涛のように顧客が押し寄せて今まで見たことも、体験したこともないような大入り満員札度めセールを保証している。そして、少ないながら二度目、三度目といったリピーター達が、クチコミを広めてくれているわけだ。また、今年9月、最初のナショナルクライアントとしてGAPがGrouponを使っている。44.5万枚のクーポンが売れて1,100万㌦の売上をあげており、ローカル、リジョナルの小売だけではなく、ナショナル、あるいはグローバルへの展開もありそうだ。

ただし、バラ色の結果だけではなさそうで、Appendix 2を見ると、「Grouponユーザは要求だけ多くて金を使わない」「対象商品以外も割り引けと要求する」「彼らは二度と戻ってこない」といったコメントが並んでいる。

Source:How Effective Are Groupon Promotions for Businesses? (pdf)

それにしてもGrouponのコミッションは最大50%らしいので、そのコミッションを払い、定価の50%引きでも利益の出る店、ショップ、レストラン、ネイルサロンやスパがいるのはすごい。クーポン特別ディナーとか、特別セットとして最初から原価を半分以下にしていたのかもしれない。ま、定価が如何にぼったくりだったのかということでもあるし、如何に消費者はコケにされていたかということなのかもしれない。

Source:Groupon Business Model (SlideShare)

2010/12/21

Difference Between Advanced and Laggard

毎日、ソーシャルメディアというキーワードを聞かない日はない。とに角、ソーシャルメディアが喧しい。バズワードとして十二分に日本中に知れ渡ったようだ。

ただし、それはソーシャルメディアのごく一部である「ツィッター」が取上げられているだけで、ソーシャルメディアそのもの、その本質、現在及び今後への影響を理解した上でソーシャルメディアが語られていることはそう多くはない。

TwitterやUstreamを使って最先端マーケティングをやっていると思っているが、それは違う。新しいツールを使い、苔むしたコミュニケーションメッセージを垂れ流しているだけだ。担当者の自己満足と、上層部の無理解が大手を振って歩いているだけだ。デジタルとか、インタラクティブマーケティング、あるいはソーシャルメディアマーケティング部という部署がある米国企業と比べ、昔からの広報や、広告、製品マーケティングや営業部隊が新しいツールを担当している日本企業は、とてつもなく後れている。

それを端的に表しているものがある。ソーシャルメディア関連の求人数だ。

Google.co.jpで「求人 マーケティング」を検索すると1,160万件がヒットした。Google.comで「job marketing」を検索すると1億1,300万件ヒットした。単純に考えれば米国は日本の約10倍のマーケティング関連求人があると言える。人口、企業数、求職状況を考えれば妥当な差ではないだろうか。

次に同じように今度は、「求人 ソーシャルメディア」、「job social media」を検索すると、google.co.jpは66.5万件、google.comは9,840万件ヒットした。ということは、米国は日本の約150倍のソーシャルメディア関連求人があるということになる。マーケティング求人の15倍の差がついている。それだけ日本にはソーシャルメディア関連求人がないわけだ。企業自体が如何にソーシャルメディア担当者を必要としていないかが分かる。広報や広告、マーケティングのプロは必要だが、ソーシャルメディアのプロは要らないのだ。
(ここまでの検索結果は12月13日)

このソーシャルメディア関連求人の中身はどうなっているか調べてみると、12月18日にgoogle.comで「job social media」を検索すると1億1,300万件がヒットし、「job social media agency」では1,430万件がヒットした。これを単純に考えれば、ソーシャルメディア関連求人のうち12.65%が代理店のもののようだ。米国は企業、メーカー系のソーシャルメディア関連求人が中心になっていると見てもいいのではないだろうか。

次にgoogle.co.jpで「求人 ソーシャルメディア」を検索すると74.5万件、「求人 ソーシャルメディア 代理店」では21.1万件がヒットした。ソーシャルメディア関連求人のうち28.32%が代理店のもののようだ。これを「求人 ソーシャルメディア 制作会社」とすると57万件なので、76.5%が外注系求人のようだ。少なくとも日本のソーシャルメディア関連求人は代理店系、外注先系の求人が多そうだ。

米国の求人サイトはどうだろうということで、「social media」をキーワードとして検索してみると、
  • Monster 1,000件以上
  • Job Search 3,625件
  • Indeed 29,288件
  • Career Builder 3,626件
となった。

日本のハロワや転職サイトを見ると、 これはもう悲惨としか言いようがない。いずれも職種、業種、勤務地などは空白として、キーワードに「ソーシャルメディア」を入れて検索してみた。
  • ハロワ 5件
  • パソナキャリア 4件
  • デューダ 18件
  • JACリクルート 1件
  • リクルートエージェント 2件
  • マイコミエージェント 0件
これらすべてが企業、メーカーの求人だとすると、米国の求人サイトと比べると数百分の一、数千分の一以下の求人しかない。非公開の求人もあるだろうが、上記求人数の10倍、100倍になるとはとても思えない。

日本企業、メーカー系のソーシャルメディア関連求人はこれほどお寒い状況なのだ。

社内のアーリーアダプターが社内伝道しても頭の固い上層部は首を振るだけ、他部署に伝道しても固い縦割りサイロ組織の弊害は越えられない。コンサルタントとして自社にコンタクトしていたEsteban ContrerasをヘッドハントしたSamsungまで行くのは不可能だろうが、既存組織ではできないことがあることさえ分かっていないという状況があるからだ。

参考:Japanese Brands Left Far Behind While Samsung Accelerating (Online Ad / 2010/08/09)

他部署に複層して関るソーシャルメディアマーケティングを行う部署を新設することが必要なのだが、日本のグローバル企業にその動きはない。既存部署のマインドセットのままでは、また、今までのコミュニケーションチャネルと同じコンテンツを供給していてはダメなのだが、本質を理解していないから根本のマインドセットを変えられていない。

既存部署の有志が新しいツールを使って既存手法をソーシャル化したり、あるいは既存部署にツールの担当者を入れて情報発信を行ったとしても、マインドセットが同じなので発信されるコンテンツは、毎日、郵便受けに投げ込まれるポスティングと一緒だ。読まれることも、共有されることもなく、ゴミ箱行きだ。

最悪なのは、代理店、エージェンシーがあげてくるソーシャル提案を鵜呑みにして、昔のままのマインドセット、既存部署、そしてツール主導の広告やマーケティングをやっている企業だ。いや、もっとひどい処も沢山ある。

さて、下はB2Bバイヤーが購買プロセスの3段階で使うコミュニケーションチャネルを、利用頻度と影響力に応じてプロットしたものだ。 利用頻度が高く、影響力の強いチャネルはWOM、展示会・セミナー、サプライヤーWebがあげられ、利用頻度が低く、影響力の弱いチャネルには、DM、LinkedIn、Webinar、雑誌広告があげられている。
それを30歳までのバイヤーでプロットし直してみると、まるっきり画が違う。高頻度、影響大のセクションに展示会・セミナー、DM、そしてWeb検索が顔を出している。また、低頻度、影響大のセクションに入っていたソーシャル系のTwitter、Blog、Facebook、コミュニティサイトが概ね右上へ移動している。
Source:BaseOne / Buyersphere Report (pdf)

B2Bでさえも既存チャネルと違うアプローチが必要になってきている。そして、30歳未満のデジタルネイティブと、30歳以上のデジタルイミグラントとではこんなにも違う。この状況を理解する企業と理解しない企業がいる。古いマインドセットを切換え、新しいチャネルに対応しようとする企業がいるし、そうしない企業もいる。また、苔むした既存チャネルにしがみ付き、既得権を手放そうとしない組織があり、人がいる。
参考:Digital Natives and Immigrants (Online Ad 2010/04/02)

半導体、液晶パネル、TV、リチウムイオン電池と韓国勢にシェア首位を奪われてきた日本企業は、製造メーカーとしても、パラダイムシフトの理解においても二番手、三番手に落ちこぼれている。縮小するしかない国内市場をかかえる日本の企業本社が、グローバルなブランディング、マーケティングをやらない限り、SamsungやLGの後塵を拝するのは間違いのないところだ。なぜなら、デジタルネイティブとイミグラントの差さえ理解しない企業に2011年以降の流れなど読めないし、コミュニケーションさえできないからだ。

2010/09/10

Samsung Dominating 3D TV Buzz Share

6月に、Samsung 3D TV Promotionを書いた。

参考:Samsung 3D TV Promotion (Online Ad 2010/06/03)

それ以降も、矢継ぎ早といったマーケティング、プロモーションが繰り出された結果、8月31日のDealers Scopeによると、Samsungはすでに全世界で発売以来6ヶ月間で100万台の3D TVを販売し、米国シェアの88.3%を握っているようだ。

Source:Dealers Scope / Samsung Sells Millionth 3D TV, Eys Apps

しかし、VentureBeatによれば、Sonyは7月までにSony Style Storeにおいて200万回以上の3Dデモを実施。300人の3Dスペシャリストを配置。今後、2~3ヶ月で20万回の3Dデモを予定。5,000回以上のマーケティングイベント開催を予定しているとのこと。

Source:VentureBeat / Sony revs up the 3D TV sales pitch with millions of demos

各社のマーケティング、プロモーションがこれからも加熱、加速してきそうだ。

ただし、今、目の前に無視できないほど大きく広がった明白なギャップがある。それは、Samsungと競合する4社、Panasonic、Sharp、LG、そしてSonyに関するオンラインバズ数だ。

下は、3月10日から始まる週を起点として9月1日から始まる週までの6ヶ月間における5社、Panasonic、Sharp、LG、Samsung、そしてSonyの3D、TVに関するオンラインバズの時系列グラフだ。累計ではPanasonicは3.12K、Sharpは1.15K、LGは1.12K、Samsungは47.1K、そしてSonyは6.61K個のバズが発生している。
そのシェアを見ると、もう圧倒的としか言いようのないギャップがある。Samsungはこの6カ月間の3D、TVバズシェアの80%を握っている。日本メーカーではSonyが11%、Panasonicが5%、SharpはLGと同じ2%でしかない。残り4社が束になってかかってもSamsungはその合計の4倍のバズを発生させている。
このバズをもう少し詳しく、カテゴリ別に見てゆく。

まず、Blogだ。Samsungが28.5Kのバズを発生させていて、次に続くのはSonyの4.87K個と一ケタ少ない状況だ。
BlogバズシェアはSamsungが75%を握っており、Sonyが善戦して13%、Panasonicも健闘して7%だが、LGは3%、Sharpは2%でしかない。
次にForumバズを見ると、ここでもSamsungが競合を圧倒している。累計で14.9KのSamsungに対してSonyは1.37Kでしかない。ForumではLGがもっともひどく48個のバズしか発生していない。
ForumバズシェアはSamsungが89%だ。Samsungは全4カテゴリでトップシェアを占めているが、89%はその中でもTwitterに次ぐ高いシェアだ。
次はTwitterだ。ただし、TwitterのAPI制限の関係でモニタリングできているTwitterバズ数は実数の10%から15%の間ということになる。Samsungに関する3D、TVがらみのオンラインバズが2.64Kなのに対して、他の4社はひどい。136件のSony、55件のPanasonic、23件のLG、そしてSharpに至っては13件しかない。
ということで、TwitterバズシェアでSamsungは92%という最高シェアをたたき出している。こうなってしまうと、如何にSonyが5%、Panasonicが2%のシェアといっても、LGの1%とそう変わりはない。4社ともにTwitterを考慮したマーケティングやプロモーションをまだ実施できていないということだろうが、今時、まだ実施できていないとすると、もうこれは大変、後れているということになる。担当者自体がTwitterを使った情報やコンテンツ発信をしていないということだ。競合がどんなマーケティングやプロモーションをやっているかも調査していないということだ。今、ユーザ、デジタルネイティブ、アーリーアダプターがどこにいて、何を使い、どんな会話を紡いでいるかを無視しているということだ。
最後に、News関連バズだ。ここもSamsungが累計1.12Kなのに対して、Sonyは231件、Panasonicが134件、LGが98、Sharpが65だ。
シェアもSamsungがトップの67%、Sonyが15%、あとは推して知るべしといったシェアだ。

もう、3D TVと言えばSamsungしかあり得ないといったレベルのオンラインバズギャップが4社との間に存在している。Sonyだけではなく他の競合各社も様々なプロモーション、イベント、キャンペーンを仕掛けてくるだろうが、一朝一夕にこの途方もないバズギャップを埋めることは不可能だ。特に、従来からの一方通行キャンペーンではもう何も期待できない。

さて、このように見てきたオンラインバズは何かと言うと、Blog、Forum、Twitter、そしてNews関連サイトに書き込まれ、発信され、共有され、再露出されているブランドに関連する情報、コンテンツだ。

これらオンラインバズが、ブランド認知、想起、好感度、優先度などを向上させて、購買意思に大きく影響してくる。それもただ単に声が大きいだけとか、態度がでかいだけで俺は偉い専門家だと思っていユーザではなく、自分と同じようなピアが体験したブランドの評価、使い勝手や競合製品との比較、そしてブランドの本当の価値を伝えてくれるのがオンラインバズだ。

そのオンラインバズの80%をSamsungが牛耳っている。

Corporate Social Media Summitに参加していたSonyのChristina Stahler、Head of Consumer InsightsのPodcastを聴くと、今年、SonyはベンチマークするためNielsen BuzzMeticsとRadian6を使ってモニタリングしているそうだ。

参考:Corporate Social Media Summit (Online Ad 2010/04/15)
Source:UsefulSocialMedia / Podcast - Sony Christina

彼女のカバーするテリトリからは離れるが、訊いてみたい。Samsungとのこの途方もないバズギャップをどう考えているのかと。そして、このギャップを埋めるためにどのようなマーケティング、プロモーションを予定しているのかと。

この膨大なオンラインバズギャップを把握せず、対抗もせず、ただ、昔からの広報、広告、プロモーション、マーケティングをやっている企業・ブランドは何も見ていないし、聴いてもいないし、感じてもいない。昔からの業務をこなしているだけで、消費者がどこを向いているかも調べていない。

このギャップを埋めるには、「Samsungと同額以上のメディア費を投下すべきだ」と、昔からの自分たちのビジネスモデルをベースとして考える一部の特異な人たちは存在するが、それに何の意味があるはずもない。誰も見ていない、読んでいない、聴いていないTV、新聞、雑誌、ラジオ広告。封を開けられもしないDM。クリックされることもないポータルサイトでのオンライン広告。不達率の異常に高いEmailニュースレター(それもテキストメール)。Facebookへのオンライン広告。提案してくるのは、バケツをひっくり返したような大量露出、大音量のメガフォン広告キャンペーンだ。

ここにあるのは、企業・ブランドや代理店・エージェンシーにとって手離れの良いマーケティング、キャンペーンだ。効果など二の次で、広告エビデンスがちゃんと取れればそれでいいといった類の話だ。なんで、私たちが汗をかかなきゃいけないんだとうそぶき、消費者のことや、彼らにどうやってメッセージを届け、共有してもらうかといったマーケティングの肝が欠落している施策だ。

今、もっとも必要なのは、「消費者にブランドを語ってもらうこと」だ。2006年のANAでP&GのCEOは、「消費者がパワーを握っている」と語っている。それからすでに4年もたってしまった今年、企業・ブランドが如何に大声を張り上げたところでメッセージが届く消費者の数は少ない。彼らは、レガシーマスメディアを使った企業・ブランドからのメッセージを信頼するよりは、自分と同じピア達のメッセージを聴き、情報・コンテンツを消費、共有、再露出しているのだから。彼らにブランドを語ってもらわずして、何も伝わらない。何も共有してくれない。

今、彼らのスペースに参加し、メッセージを届け、共有してもらうべきユーザはデジタルネイティブしかいない。インフルエンサーとして、クリエイターとして、Blog、Facebook、Twitterに多くの読者、友人、フォロワーを抱える彼らにブランドを語ってもらい、彼らの読者、友人、フォロワーにも語ってもらうことしかない。

なぜ、Samsungが圧倒的なオンラインバズを握っているのか、何が、競合各社と違うのか、なぜ、消費者はバズを生成し続けているのか、なぜ、SamsungのCEOはLoicと会ったのか、そして、なぜ、あなたの企業は公式Blogを持っていないのか、また、なぜ、あなたの企業に関するバズが少ないのか、考えたことがありますか?

もし、ご興味があれば、お問い合わせください。

2010/08/17

Open Letter to CEOs in Japan

日本企業の最高経営責任者の皆さま

本日は、インターネット、パラダイムシフト、ソーシャルメディア、そして、日本ブランドの危機について理解していただくために筆をとりました。これらファクターが絡み合い、既存の広報、広告、マーケティング戦略を大転換しない限り、日本のグローバルブランドが今後数年のうちにローカルなガラパゴスブランドに転落するという危機感を共有していただきたいと考えています。
  1. まず、インターネットがあります。

    InternetWorldStats.comによれば2010年6月30日時点で、世界の総人口は68.5億人、インターネットユーザ数は19.7億人、普及率28.7%に達しています。そのトップ20には、日本、欧米諸国などに加え、中国、ロシア、インド、ブラジル、イラン、トルコ、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどBRICsおよび途上国が顔を出し、2000年からの伸びが13,000%を越えるイラン、12,000%を越えるベトナムはもとより、BRICsは軒並み1,000%を越えています。OECD加盟国のインターネット普及がこれ以上見込めない中、BRICs、途上国は猛烈な勢いでインターネットが普及しています。
    Source:InternetWorldStats.com / Top 20 countries

    次にブロードバンド化があります。2008年に発表されたEUの世帯別ブロードバンド普及率ですが、蘭が77%でトップ、英独仏は47%、33%、 48%、EU27カ国の平均でも36%に達しています。調査されたのは2007年ですから今日までの3年間に平均普及率は40%をを越え、50%に迫って いるのではないでしょうか。
    Source:EU / E-Communications Household Survey 2008 (pdf)

    米国の最新のデータを見ると、こちらは世帯ではなく、インターネットユーザのBB普及率となっていますが、今年の5月時点でBB化は66%にまで進展しています。
    Source:PEW / Home Broadband 2010 (pdf)

    そして、中国の場合、BB化はもっと猛烈です。今年1月に発表されたCNNICのレポートによれば、3億4,600万人がBBユーザだとしています。これは全インターネットユーザの90.1%にあたり、前年比7,600万人が増加したとしています。
    Source:CNNIC / The 25th Survey Report (pdf)

    このブロードバンド化の進捗は世界で起こっています。

    インターネットは情報通信の基盤でもあり、媒体としての側面もあります。世界のどこにいても、インターネットにアクセスさえできれば、そしてブロードバンド化していれば、IP電話、ビデオ電話、email、chat、Web、Blog、SNSなどを使って地球の裏側にいる人と会話すること、つながることができます。インターネットにアクセスさえできれば、朝日新聞であれ、New York TimesやCNNであれ、BBCであれ、マスメディアのWebサイトへアクセスし、最新ニュースや情報を入手することができます。業界紙・誌のWebサイト、業界フォーラムなども同じですし、企業や団体のWebサイトへアクセスすることができます。

    今まで地理的、時間的、経費的な障害によってコミュニケーションを行うことさえ難しかった人々とコンタクトしたり、ビジネスを行ったり、一緒に社会貢献活動を行うことさえ可能になりました。今までのビジネスのやり方、仕事の仕組みを大きく変えたのがインターネットだと言えます。

    そのインターネット、ブロードバンドが先進国だけではなく、BRICsおよび途上国にも広く普及し始めています。これらは世界がひとつにつながるプラットフォームだと言うことができます。

  2. このインターネットユーザの増大とブロードバンド化がパラダイムシフトへとつながっています。

    上で見てきたように、世界中の一般市民、消費者が、インターネットへアクセスできるようになり、月額固定料金でのブロードバンド化が進捗することによって、常時インターネットにアクセスするユーザが増えてきました。

    その中の先端ユーザ達は独自ドメインを取得し、自分のWebサイトを立ち上げるものも出てきました。企業、団体、マスメディアのWebサイトへアクセスするだけに飽き足らず、自分でWebサイトを立ち上げ、様々な情報やコンテンツを発信するユーザが増えてきたのです。しばらくすると、Blogを書くユーザも出てきました。世界最初のBlogのひとつは1994年に始まったとされていますが、1999年にサービスを開始したBloggerなど無料でBlogサービスを提供するプロバイダーも現れ、2004年頃までには政治、経済面でBlogは大きな影響力を発揮するようになってきました。

    Source:Wikipedia / Blog

    その後、専門家だけではなく、一般ユーザ・消費者が自分の日々の出来事をつづったり、ニュース、映画、ミュージック、セレブ、ブランドに関する意見・評価などをBlogから発信し始め、多くのインターネットユーザがBlogにコメントしたり、購読を始めるようになりました。

    2009年1月時点で、2002年以降にインデックスされたBlogの数は1.33億件、世界でBlog記事を読むユーザ数は3.46億人(2008年3月)に達しています。

    Source:The Future Buzz / Social Media, Web 2.0 and Internet Stats

    これだけBlogやその読者が増えてくると、トップBlogの中には読者数が数万人、数十万人を越えるケースも出てくるようになり、小規模な既存マスメディアサイトのトラフィックを上回る規模のものもあります。Blogによって個人の発信力が飛躍的にアップしてきたため、既存のマスメディアや企業、団体が行う情報発信のボリュームおよびクオリティと肩を並べてきました。

    そして、既存のマスメディアと違い、オープン、対等な関係でコメントしたり、違う意見を戦わせたり、友人や同僚を巻き込んで自分のBlogに発表するといった会話が成り立ってきました。

    また、WebやBlogだけではなく、情報発信の一部として、一般ユーザ・消費者が独自に制作したビデオをYouTubeなどに投稿する例も出てきました。

    中でも下のビデオは2006年6月、二人の知り合いがダイエットコークにメントスを入れた噴出実験を撮影したものです。同様の噴出実験ビデオをいくつも投稿していますが、世界中のユーザが飛びつき、それぞれ数10万回から数百万回も再生されました。
    Source:YouTube / Experiment #10

    彼らだけではなく、ビデオを視聴した他のユーザが同じような実験ビデオを投稿したり、WebやBlogに記事を書き、それを見たり読んだりした他のユーザが友人・知人に話すといったクチコミが広まりました。そのクチコミ露出に後を押され、まず、メントスが彼らのサポーターとなりました。その後もしばらくはだんまりを決め込んでいたコカ・コーラでしたが、売上が5~10%も伸びた結果を無視できず、彼らの実験を支援し始めました。コカ・コーラ本社前、米国各都市、果ては欧州のオランダで噴出実験を披露するキャラバンを展開しました。名にしおう世界のコカ・コーラ社がどこの誰とも分からないポット出のタレント、ビデオクリエイターの力を借りてグローバルなマーケティングを実行したのです。

    企業が大規模予算をかけて製品・サービスのプロモーションを行っている傍らで、たった数十㌦程度の撮影費用しかかけていないユーザのオリジナルビデオが米国や世界のユーザのマインドに刺さり、マスコミも追随して報道することで、商品が飛ぶように売れてゆく。企業がコントロールしていたはずのブランドコントロールが一般消費者の手に渡ったことを示す典型的なビデオだと言えます。

    一般消費者が投稿するビデオが、企業のマーケティング活動に大きく影響するだけではなく、企業のレピュテーションを毀損する例も出てきました。

    下は、ドミノピザ従業員が、唾を吐きかけたり、鼻くそをピザに塗り込めたりした様をビデオで撮影し、投稿したものです。このとんでもないビデオはあっという間にインターネットユーザに広まり、USドミノピザの社長がYouTubeに謝罪ビデオ投稿し、異例の顧客対応を余儀なくされました。

    Domino Pizzaの該当四半期の売上に対して1%から2%の影響があったと決算報告書に記載があります。それほど一般ユーザが作成したビデオは、企業業績に大きな損害を与えるほどの影響力があるわけです。
    Source:DailyMotion / Domino Pizza

    これら以外にも乗客の手荷物取扱を巡り、United Airlinesなどが糾弾された例があります。個人が制作したコンテンツにより、企業が営々と築き上げてきたブランド評価やレピュテーションはもちろん、業績にまで多大な影響を与えるケースもでてきています。そしてのその影響は、例えば米国内だけに止まるのではなく、世界中に露出し、企業・ブランドのレピュテーションを粉々にしてしまうほどのパワーを秘めているのです。

    このセクションの最初にダイエットコークとメントスの噴出実験ビデオを取り上げましたが、同じ年の10月、ANA(全米広告主協会)総会においてP&GのCEO、A.G.Lafleyは、「パワーは消費者が握っている。彼らは考えられるすべての意味で我々のブランドを所有し、ブランドコンテンツ制作に参加し始めている」と語っています。また、Wal-MartのMarketing VP、Stephen F. Quinnは、「消費者が手綱を握っており、消費者にうまく手綱を握らせるものが勝者になる」とまで発言しています。

    Source:NYT / Letting Consumers Control Marketing: Priceless

    企業は、大規模予算を投下してマスメディアを使った一方通行のコミュニケーションを継続してきました。新雑ラテという四大マスメディアはもとより、屋外、DM、展示会、プライベートセミナー・展示会、イベント開催など、すべてのコミュニケーション・チャネルを総動員して露出、リーチ、訴求、認知、想起といった昔からのマーケティング理論を実践してきました。

    しかし、四大マスメディアの露出、訴求力には陰りが見えます。多メディア化が進展し、ユーザを情報洪水が呑み込んでいる現在、TVの視聴率、新聞・雑誌の購読者数、ラジオの聴取率も右肩下がりを続けています。今後、回復する道筋は見えません。

    一方、インターネット、ブロードバンドを手にした消費者は、オリジナルのコンテンツやブランド関連コンテンツを作成し、個人的なネットワーク内で発信、共有するだけではなく、Blogや画像・ビデオ共有サイトなどに投稿することで、世界中のインターネットユーザにコンテンツを提供しています。そして、そのコンテンツを消費し、他のユーザと共有する世界のユーザがいます。

    まさに、情報・コンテンツの出し手は企業やメディア、そしてその受け手は消費者といった今までの固定観念が崩れ、新しいパラダイムが沸き起こってきたわけです。すなわち、一般消費者も情報・コンテンツを提供する出し手となり、他ユーザの制作、発信する情報・コンテンツの受け手となっています。また、受け取った情報・コンテンツを、家族、会社の同僚、学校のクラスメート、地域の知り合いといったオンライン上にある自分のネットワークの人々と共有しています。ここで点から点へ転送されてきた情報・コンテンツが、面で共有されることになります。オープン、対等、双方向の会話が成り立ち、それを閲覧するユーザも巻き込んで会話が拡大してゆくことになります。

    そして、その効果、波及範囲は国内だけに止まらず、世界に波及するということです。

    え?

    「米国、英語のコンテンツは非英語圏のユーザには波及しないだろ!」

    そう考えられるのは無理もありません。

    しかし、そうではありません。下図は、各国のインターネットユーザがアクセスしたコンテンツの言語比率を表しています。当然、豪、ニュージーランド、インド、英、アイルランド、カナダ、南アといった英語圏は英語でのコンテンツ消費が主です。しかし、韓国、台湾、日本、中国、欧州諸国、南米、イスラエルといった非英語圏でも少なからず英語でのコンテンツが消費されています。

    皆さんだって、ご自分でNYT.comやBBC.co.uk、WSJ.comやBloomberg.comへアクセスされているように、英語は情報・コンテンツが世界へ拡散される障害にならないのです。
    Source:comScore State of the Internet, Nov 2009

    え?

    「非英語圏ユーザが英語でコンテンツを消費しているとしても、ほんの少ししかいないじゃないか!!」

    そうです。国によっては違いますが、控え目にみて10%未満といった処でしょうか。でも、この10%未満のユーザ達は、アーリーアダプターと呼ばれる人たちです。非英語圏であろうと英語くらい流暢に話せる各国のアーリーアダプターは、ビジネスや個人目的で最新ニュース、情報、コンテンツを探しています。政治、経済、財務、芸能、スポーツ、IT、ネットワーク、アプリの最新情報、もっとも影響のあるソースと言えば、米国の英語情報・コンテンツです。これらをいち早く入手するため、アーリーアダプターはアンテナを張っています。そして、かれらは自分のWeb、Blog、SNS、Twitterなどで最新情報を自国語に翻訳して国内ユーザと共有しています。

    点と点がつながって、そこから面に拡散されているのです。

    ここで大きな問題があります。

    各国、各地域ごとの営業・販促活動は現地子会社、販社の責任ですが、非英語圏のアーリーアダプターが国境や子会社のテリトリを越えて、英語コンテンツを入手し、国内に露出、共有しているのです。

    例えば、米国子会社にとって非英語圏のアーリーアダプターはターゲットではありません。彼らが如何に米国の英語コンテンツを入手したところで販売につながるわけではありませんから。一方、各国のアーリーアダプターに対して各国子会社、販社ができることはあまりありません。米国以外の子会社や販社が米国へアクセスする各国のアーリーアダプターに米国で何かすることはできませんから。しかし、世界中のインターネットユーザがひとつにつながり、各国のアーリーアダプターが最新の英語ニュース、情報、コンテンツを探しまくり、国内に供給している現在、どこが何をすべきでしょうか?

    企業やメディアが一方的に情報やコンテンツを押し付けている時代から、一般消費者が自分の意見、判断、評価などを発信し始めたこと、そしてそれが消費者間で共有され、点から面に拡散されていること。これが最初のパラダイムシフトです。
    そして、世界のアーリーアダプターが国境を越えて英語コンテンツを入手し、国内に共有し始めたことで、海外子会社や販社の責任や義務を超越した存在になっていること。この世界のアーリーアダプターに対応しなければいけないこと。これが2つめのパラダイムシフトです。

  3. このパラダイムシフトのバックボーンを支えているのがソーシャルメディアです。

    上で紹介したANA総会は2006年でした。2006年というと、今、もっとも注目を集めているFacebookがすべてのインターネットユーザに解放された年ですし、YouTube、Twitter、あるいはLinkedInといったソーシャルメディアサイト・サービス・ツール・プラットフォームが出揃った年でした。
    Figure 1. Distribution of work task interruption
    Source:Social Network Sites: Definition, History, and Scholarship

    それから4年たってみると、Facebookは世界で5億人、Twitterは1億人、LinkedInは0.75億人以上の登録ユーザを抱え、YouTubeでは毎日20億回以上もビデオが再生されています。

    米国の直近データを見ると、2010年6月に米国インターネットユーザがオンラインで消費した時間のうち、22.7%(前年比43%増)はソーシャルネットワークです。インターネットの創生期から幅広く使われてきたemailは8.3%(同28%減)AOLやYahooといったポータル系は4.4%(同19%減)、チャットとして親しまれているIMは4%(同15%減)となっています。
    Source:Mashable / Social Networking Dominates Our Time Spent Online

    情報・コンテンツの配信チャネルや共有スペースとしてもソーシャルメディアは上位を占めています。ニュースの配信を受けるチャネルとして、Twitter、FacebookがEmailを抜いて一位、二位を占めていますし、コンテンツを共有するスペースとしてFacebookが一位、Twitterが三位につけています。
    Source:Silicon Allery Insider

    如何に米国のインターネットユーザが、ソーシャルネットワークにアクセスし、情報・コンテンツを発信しながら、消費・共有・拡散しているかが分かります。

    こういったパターンは何も米国だけに起っているのではなく、全世界共通です。Facebookの登録ユーザ5億人のうち70%は海外ユーザで、Twitterの登録ユーザ1億人のうち60%以上は海外ユーザなのですから。

    このソーシャルメディアが企業のマーケティング戦略に大きな影響を与えています。今年6月、NYにおいてCorporate Social Media Summitが開催されました。ここに講師として参加した欧米各社の担当者21人中、Social Media、Digital、Online、Interactiveといった部門のディレクター、シニアマネージャという肩書がついている人は14人に及びます。三分の二の企業が、いままでの組織ではなく、エンパワーされた世界の消費者が活動しているソーシャルメディア(スペース)を担当する部署をすでに立ち上げているのです。また、既存の部署名のままであっても、Social Media、Digital、Online、Interactiveに関係するコミュニケーションを担当しているのは明らかです。

    それは、今までの仕組みが変わってしまったからです。ソーシャルメディアによってエンパワーされた消費者、ユーザ、顧客は、今までの組織が行っていた既存業務では収まりきらない行動をとり、その影響は他部門に複層して及ぶからです。また、エンパワーされた消費者に対して企業・ブランドからのメッセージを送るには、既存の広報、広告、マーケティングチャネルではうまく行かないからです。

    例えば、Heather Armstrong、別名dooceという女性Bloggerがいます。昨年、彼女は購入したばかりにも関らず故障続きのMayTag洗濯機のトラブルで堪忍袋の緒が切れ、「MayTag製品は決して買わないで。MayTag製品は悪夢よ」というTweetをしました。通常であれば、これはカスタマー・サービスの守備範囲です。根気強く顧客の苦情、トラブルに電話対応をするわけですが、時代が違います。顧客はWeb、Blog、SNS、Chat、SMS、そしてTwitterで顧客対応の一部始終をオープンに公表することができますので、メーカー対顧客のコミュニケーションが青天白日、全世界のインターネットユーザが注視の元に対応しなければなりません。また、悪いことに彼女のTwitterには当時でも100万人以上のフォロワーがいたのです。彼女が行ったTweetは100万人以上のタイムラインに表示されるわけです。小さな通信社、あるいは中堅の地方新聞社に匹敵する露出力がある彼女にカスタマーサービスが対処すべきでしょうか、対処可能でしょうか。すでに発信された彼女のTweetを見たユーザ達への対応はどこが、どうすべきでしょうか。

    この場合、最終的にはMayTagの親会社、WhirlpoolのTwitterアカウントが彼女に対応しました。ここはWhirlpoolのコーポレートコミュニケーション部が管理し、Tweetを行っているアカウントです。企業情報を発信するTwitterアカウントが個別顧客のクレーム対応を行ったことになります。しかし、それも当然です。そのままでは、企業のブランド価値、評価を急落させかねないことになりますし、ひいては販売にも影響が出るかもしれないからです。
    Source:Twitter / WhirlpoolCorp

    ソーシャルメディアパワーを身にまとった消費者に対応するため、企業はまず、新しい組織を作りました。その上で、ユーザ達が自分のブランドに対してBlogやTwitterで何を語っているのかモニタリングを開始しました。上のWhirlpoolがいい例です。自社関連ブランド名、あるいは@dooceをモニタリングしていなければ、傷はもっと深かったはずです。

    また、企業の公式Webサイトにアクセスするユーザにサイトの分かりやすやコンテンツを評価してもらいサイトの改善につなげるためWebビジター調査も開始しています。

    加えて、ブランド情報・コンテンツを共有してもらうため、WebサイトにFacebookやTwitterへのリンクボタンをつけたり、Facebookなどのソーシャルネットワーキングサイトに企業の公式ページを持って、ユーザと会話を始めています。
    Source:Samsung.com/us/

    ソーシャルメディアは一般消費者に力を与えています。インターネットおよびパラダイムシフトがもたらした変革をベースに世界中の消費者が、企業、メディアに匹敵する質と量のニュース、情報、コンテンツの制作、発信を、Blog、Facebook、Twitterなどのソーシャルメディアスペースで行っています。その制作、発信されたニュース、情報、コンテンツを他のユーザ達が消費、共有し、その次のユーザ達につなげています。

    そのため、インターネットおよびパラダイムシフト、そしてソーシャルメディアは、企業そのものの体制、組織、マーケティング戦略をも変革しています。

  4. 最後に、日本ブランドの危機を取上げます。

    インターネット(+ブロードバンド)、パラダイムシフト、ソーシャルメディアが提供するもの、すなわち、
    • オープンで
    • フラット、対等な
    • 双方向のコミュニケーション、エンゲージメントをすること
    から
    • ブランド関連情報が発信され、共有、消費、再露出されている
    • それがひとつの国内だけではなく、世界へ波及する
    • 世界のインターネットユーザはひとつにつながっている
    ことを理解した先進企業はソーシャルメディア戦略を構築し、実行に移しています。

    ソーシャルメディアマーケティング戦略のトップランナーのひとつである米Fordは、一昨年から消費者をソーシャルメディアスペースに巻き込んだFiesta Movementキャンペーンを行っていました。キャンペーンが終了した昨年末時点でFiestaが米国内で販売されれば購買すると8万人が回答していました。もし、Fiesta1台を200万円だとすれば、1,600億円の売り上げにつながるという結果を出しています。また、Explorerの最新モデルをFacebook内で発表したりと積極的にソーシャルメディアを活用しています。

    Fordのソーシャルメディア戦略、キャンペーンから学習した競合、例えばVolkswagenは、2011年モデルのPolo GTIのキャンペーンをFacebookだけで開始しました。また、その公式ページの言語は英語だと宣言し、全世界の消費者に向けてFacebookをタッチポイントとする戦略を開始しています。BMWも同じです。Facebook内に本社管理のページを設け、全世界20カ国の子会社が開設しているFacebookページへのリンクページとして機能させています。BMWの本社ページも英語となっていますので、全世界の消費者に向けたポータルページなのです。

    これら2社が開設しているFacebookページは、独本社が全世界のインターネットユーザに向けたゲートウェイとなっています。ここから世界の消費者にブランド関連ニュース、情報、コンテンツを発信し、彼らに消費、共有してもらい、彼らの友人・知人達に再露出してもらうための場所となっています。また、世界中の消費者が体験したブランド経験、画像でも、ビデオでも、コメントでも、それらを共有してもらうためのスペースとしても機能させています。

    もう、昔と同じように既存マスメディアに広告を出しても、広報記事を掲載してもらっても、それらの情報・コンテンツを消費、共有してくれる消費者がいません。いや、正確には消費者はいるのですが、広告や広報記事を信用してくれる消費者がいないのです。消費者は、企業の広告や広報よりも、専門家の声や判断、社員との会話で得られた情報、あるいは自分と同じような人の意見や評価を信じているのです。Fordを含め、これら企業はそれを理解しています。

    各社は、ターゲットとなる消費者が集うソーシャルメディアスペースにブランド自身が参加し、ファンやフォロワーになってくれる消費者とオープン、対等、双方向のコミュニケーションを行おうとしています。そうすることで、消費者の信頼を獲得しようとしています。

    FordのGlobal VP-MarketingのJim Farleyは、Ad AgeのDigital Conference 2010において、
    15秒のTVCFで我々が聞いてほしいストーリーを話すことはできるが、我々が求めているのは顧客に我々のストーリーを語ってもらうことだ。顧客の信頼をどのように得るかを示してくれたのはデジタルだ。
    と語っています。


    Source:Ad Age / Digital Conference 2010

    また、彼は以前の新車発表・発売に焦点を当てた既存メディアキャンペーンではなく、
    メディアキャンペーン開始前から、そして終了後も継続されるソーシャルメディアスペースでの会話、エンゲージメントの重要性を指摘しています。
    キャンペーンに合わせた一時的な広告や広報活動ではなく、ソーシャルメディアスペースでユーザと、一から会話を紡ぎ、育て、垂れた稲穂をユーザの個人的コネクション、ネットワークに共有してもらう。その中で新しい接ぎ穂が出れば、それも大事に育ててゆく、そのなかで消費者の信頼を獲得するという、Fordの全く新しいパラダイムを惜しげもなく公表しています。

    Ford自体、まだグローバルな展開を見せていませんが、VolkswagenやBMWが学習成果を基にちゃっかりと一歩先のステップを踏み出しているように見えます。

    こういった事例が自動車メーカーだけではなく異業種でも学習されてゆきます。B2C企業だけではなく、B2B企業も同じように学習してゆきます。各国現法はFordをお手本に、本社はVWやBMWをお手本にして、各社の広報、広告、マーケティング戦略にソーシャルメディアが取り入れられてゆきます。そして、世界中の消費者、顧客、ビジネスパートナー、サプライヤーを巻き込んだ会話、エンゲージメントが活発化してゆきます。

    唯一、日本の企業を除いて...。

    日本企業も国内では相応にソーシャルメディア対応を行っていますが、海外、あるいはグローバルな展開は非常に遅れています。

    Facebook、Twitter、YouTubeのファン、フォロワー、購読者を集計し、Famecountというランキングを発表しているサイトがあります。
    Source:Famecount

    Facebook、Twitter、YouTubeというソーシャルメディアスペースの中心に、海外向け、あるいはグローバルな公式ページ、アカウントを持っている日本企業は数えるばかりです。とてもFacebookだけで1,200万人以上のファンをもっているStarbucks、Twitterに150万人以上のフォロワーがいるJetBlue、Dellとは比べられません。

    しかし、Red Bullが3位、Zaraが15位、H&Mが20位、Lacoste、PUMA、BlackBerry、Adidas、Louis Vuitton、Nokiaなど世界の錚々たるブランドがちゃんと顔を出しています。こういった現状では、日本の企業・ブランドはソーシャルメディアスペースに存在していないに等しく、それでなくとも大きい欧米各社との露出ギャップは大きくなるばかりです。

    幸いなことに今のところ、VWやBMW本社のようにFacebookをグローバルブランディングに活用しようとしている企業は限られています。しかし、Best Practiceは様々な場所、スペースでオープンに共有されるものですから、あなたの企業の競合メーカーがいつ、VWやBMW本社のようにソーシャルメディアを活用したマーケティング戦略を開始してもおかしくありません。

    あなたの競合メーカーがソーシャルメディアを活用したグローバルなマーケティング戦略を開始した時、あなたの企業はそれに対応することができますか?すでに対応するための組織、予算、戦略を準備されていますか?

    上述のSamsung.com/us/は、昨年末にヘッドハンドした人間をソーシャルメディアマネージャとし、今年1月のCESにおけるプレスコンファレンスをTwitterで同時中継したことから始まり、WebやEmailニュースレター、Facebook、YouTube、Twitterなど各種タッチポイントのソーシャル化を推進しています。彼は、今年、6月のCorporate Social Media Summitに講師として招かれプレゼンしていますし、7月には韓国Samsung本社においてCEOおよび100人以上の上層部に次のコミュニケーションプラットフォームのプレゼンをしています。これほど大きな動きをあなたの企業は同じように遂行することができますか?

    あるいは、社内にこういった世界の動きをウォッチし、警鐘を鳴らしている組織、担当者はいますか?

    もし、社内で準備がされておらず、世界の動きをウォッチすることもなく、社内に警鐘が鳴り響いていないのであれば、世界に誇る日本ブランドの価値、評価はとてつもない危機に直面していると言えます。
さて、インターネット、パラダイムシフト、ソーシャルメディア、そして、日本ブランドの危機を説明してきましたが、おさらいの意味でもここでお聞きしたいことがあります。

それは、
  • 世界中の消費者がインターネット、パラダイムシフト、ソーシャルメディア、そして英語と言う共通語でひとつにつながっているということは全くないと考えますか?

  • 広報、広告、マーケティング部といった既存の組織が、ソーシャルメディアによりエンパワーされ、情報・コンテンツの制作・発信力を増し、共有・拡散力も以前とは比べ物にならないほどパワーを持つようになった消費者に対応できると考えますか?

  • 海外のことは海外の子会社、販社に任せておけばよく、各国のアーリーアダプター、インフルエンサーが翻訳し、国内に露出・共有する英語の情報・コンテンツなど気にする必要はないと考えますか?

  • 競合メーカーが各国市場やグローバルブランディングにおいてソーシャル化を進める中、今まで通りの広報、広告、マーケティング戦略を踏襲していても、企業価値、評価、消費者の信頼などは下落しないと考えますか?

  • WSJ、 NYT、WPなど一流マスメディアに広告を出稿し、PR WireやBusinessWireからプレスリリースを流し、CNNやSky、EurosportにCFを出し、Googleに検索広告、Yahooに ディスプレイ広告を出すことから、ソーシャル化、顧客の信頼獲得へと比重を移しているFordの戦略に全く危機感を感じませんか?

  • 物やサービスを売るというマーケティングが、消費者あるいは顧客やユーザとの会話を醸成し、点から面へ広げてゆくマーケティングへ移行しているとは考えませんか?
ということです。

日本航空の破たん原因を調べているコンプライアンス調査委員会が管財人に報告する内容には、組織の肥大化と経営者の 経営判断や全社的な危機意識の欠落が含 まれています。具体的には、営業や経営企画、運航本部といった組織が「縦割り」で横のつながりが乏しく、現場と上層部との間で風通しがわるくなっていたと 指摘しています。その結果、経営者が経営破綻に陥るような重大な事態に気づくのが遅れたとしています。

Source:Asahi.com / 日航破綻「歴代経営者の不作為が要因」

企業規模が大きくなればなるほど「親方日の丸」に近い意識が存在する可能性が高くなり、また、企業規模に慢心したグローバルな「危機意識の欠落」も存在可能性が高くなり、「ガラケー」といったひとつの製品だけではなく、企業全体が日本ローカルなガラパゴスブランドに陥ってしまう危険性が一層、高くなると恐れています。

この危険性を少しでも低くするためには、また、上の6点において少しでも不安や心配の種がおありなら、既存広報、広告、マーケティング戦略を見直し、新しいパラダイムを前提とした戦略への転換を強くお勧めします。


長文になりましたが、是非、厳しい現状を認識いただき、最善、最適な戦略を打ち出されることを願ってやみません。

笠井孝誌
株式会社パワーレップ


追記:Scribdにpdfをアップしました。
Source:Scribd / Dramroll - Open Letter to CEOs in Japan

2010/08/16

One World with Early Adopters Circulating Content

先週、「Japanese Brands Left Far Behind While Samsung Accelerating」を書いた。

参考:Japanese Brands Left Far Behind While Samsung Accelerating (Online Ad 2010/08/09)

そうした処、9日の午後1時頃、日本大手メーカーの韓国支社の方がアクセスされ、韓国語に翻訳して30分以上閲覧された後、ご自身のTwitterから Tweetされていた。しばらくすると、そのTweetから韓国の方が何人がアクセスし、また、少し時間をおいて今度は、韓国Samsung、そしてLG からアクセスがあった。

そして、10日には、iblur's Communicationsという韓国のBlogで取り上げていたらしく、11日にそこをリフェラルとしてアクセスがあった。
Source:iblur's Communications / Social Media의 방향을 정한 Samsung, 어떠한 결과를 보여 줄 것인지.

世界は狭いと思いませんか?言葉や地理的な壁はないと思いませんか?世界はひとつにつながっていると思いませんか?
最初のアクセスがアーリーアダプターであり、彼が140文字以内に要約したTweetを発信し、彼をフォローしている韓国ユーザから日本語Blogへアクセ スがあった。そして、そのBlogに取上げられていたSamsung、そして競合するLGからアクセスがあったということになる。また、最初のTweet からBlog記事を書いたユーザもいて、そこからもアクセスが来たということだ。

これから分かることは二つある。

ひとつめは、前々から言っている「アーリーアダプターから国内ユーザへのコンテンツ共有、再露出」という情報・コンテンツのフローがある。今回は日本語から韓国 語への共有、再露出だが、これは例外と言っていい。基本は「世界中のアーリーアダプターが注目する最新の英語ニュース、情報、コンテンツから各国語への共有と再露出」だ。この基本が世界中で行われている。だから、それをベース として英語コンテンツを世界のアーリーアダプターに露出し、それを消費、共有してもらい、自国語に翻訳してBlog、SNS、Twitterなどで国内へ 再露出してもらうことができる。そのフローが証明されたことになる。そして、グローバルに全世界のアーリーアダプターに情報・コンテンツを提供するのは日 本本社のテリトリーだと言い続けてきた。グローバルにマーケティングを行うのが米国子会社や欧州販社ではない限り、それは日本本社の責任となる。

ふたつめは、Samsungにしても、LGにしてもちゃんとバズモニタリングをしていることだ。最初にTweetしたアーリーアダプターをフォローしていた わけではなく、自社ブランド名や競合ブランド名をモニタリングしていたからこそ、韓国ユーザのTweetをキャッチし、このBlogへアクセスしてきたわ けだ。ソーシャル化を進めるための基本として、各種情報収集、戦略構築、社内体制整備、要員トレーニング、モニタリングやWebビジター調査など様々なも のがある。その中でも基本中の基本であるモニタリングを2社ともにやっているということだ。

2社ともに国内においてBlog、SNS、Twitterなどをモニターしており、2社ともバズのリンク先までトレースしている。それが国外、日本であったとしても。

基本に忠実な韓国ブランドに比べ、日本のグローバル企業は...???

ひょっとして日本国内においてTwitterを使った拡販、販促だけしか考えていないのかもしれない、世界はひとつにつながり、世界中のユーザがブランド体験を共有しているにも関わらず...。

2010/08/13

Digital Teens Worldwide

13歳から17歳の米国ティーン達のオンライン行動を調べたレポート、The Secret Online Lives of TeensがMcAfeeから出ている。
  • 調査対象(10-17歳の1,357人)の半分は5年以上インターネットを使っている。58%は自分をヘビーユーザだと思っている。
  • コミュニケーションとダウンロードがインターネットの主要な役割。
  • 16-17歳の81%は少なくともひとつのSNSに参加している。13歳から17歳の73%はSNSにアカウントを持っている。(2008年時は59%)
そして、女の子は
  • 42%が頻繁にステータスアップデートを行う(男子は29%)
  • 25%がチャットする(16歳から17歳は43%)
Source:LastWatchDog / McAgee Teens Online (pdf)

ソースがMcAfeeなのでセキュリティに注意し、ウィルスソフトを使いましょうという結論はさておき、デジタルティーンズ、デジタルネイティブのプロファイルの一部が垣間見える。

17歳までのティーンズの半数が5年以上インターネットを使っている。当然、80%は学校の宿題をインターネットを使ってやっているし、61%はオンラインゲームに夢中だ。そして、Facebookやチャットでああでもない、こうでもないとしゃべっている。

このトレンドが米国だけの話なら米国販社、子会社に任せておけばいい。しかし、ことはそう簡単ではない。

なぜなら、日本でも、中国でも、欧州各国でも、そして途上国でも、彼らデジタルティーンズは家庭、地域、学校で英語を学んだり、すでに流暢に英語を話せる世代なのだ。インターネットを使うのは親や先生よりも慣れていて、国境を越え、販社のテリトリを越えて世界中のピアとつながる障害がひとつもない世代だ。

そして彼らディジタルティーンズ(12-19歳)は先進国だけで7,100万人、年間購買力2,68億㌦、途上国なら3.9億人、購買力は3,240億㌦にも達するという規模を持っている。

参考:Digital Teens Impact (Online Ad 2010/05/21)

彼らに話を聞いてもらわなければ、彼らの話に取上げてもらわなければ、彼らのマインドセットにブランドは存在し得ないし、これからのビジネスはひとつも先へ進まないことになる。

ところで、100㌦という低価格ラップトップを世界の子供たちの教育のために提供しようというOLPCがウルグアイ、インド、中国で配布を開始し、そして最近の発表ではアフリカ諸国に2015年までに2,000万台を提供することを宣言している。最終目標である5億台配布に向けて積極的に活動している。

OLPCがラップトップを提供する国々の子供たちは小学校のころからインターネットを使って勉強を始めている。離れた地域の子供たちとメールやチャットでお話しし、違う国の子供たちともメール、ビデオでつながるようになる。Blogを書くようになるだろうし、SNSに参加して違う国の子供たちと一緒に勉強したり、歌を歌ったりするようにもなる。

参考:One Laptop Per Child (Online Ad 2007/08/09)
Source:OLPC / XO roadmap updates

もし、Bill Gatesが主導する「giving pledge」に協力を表明した米富豪の資産の一部でもこの運動に寄付されれば、OLPCが貢献できる国、子供たちの数は飛躍的に増える。

となれば、思ってもいない国の子供たちと、米国、欧州、中国の子供たちが手を結ぶ日が近くなる。そして、本当に世界はひとつ、すべての人間がひとつにつながっている社会ができる。どこにも壁や仕切りや、縦割りサイロのない世界が誕生する。

その時、まだ縦割りサイロ、テリトリベースの考え方をしていたとすると、自分で建てた高い壁に頭をぶち当たるだけだ。その時、流した血は壁の向こうの誰にも見えない。誰も助けに駆けつけてくれない。

だって、壁のこっちにいるブランドや人間は存在していないに等しいのだから。

2010/08/12

Prosper in China July 2010

BigResearchのChina Quarterly SurveyのProsper in China - July 2010というプレゼンをBrightTalkでやっていた。

これからの半年の間に高額商品を購買する予定はと聞かれた、18-54歳までの中国人と米国人のグラフがあった。

中国人の最も購買意欲の高い製品は旅行(36.3%)だが、PC(33.2%)、モバイルデバイス(26.2%)、デジカメ(23.1%)が続いている。 家具、家電、TVなども購買意欲が旺盛だ。それにしても米国人の最も購買意欲の高い製品はPC(14.4%)で、TV(11.6%)、旅行(13.4%) が上位だが、中国との差はとてつもなく大きい。
次に今後90日間に新しい携帯電話を購買する予定はありますかと聞かれて、2009年Q2は45.2%が「Yes」と答えていた。それが2010年Q1に48.4%に上昇したのだが、Q2で約4%ポイントも落ち込んでいる。とはいっても、45%近い人間がこれからの3カ月間に買い替える、新規購買を予定しているというのは空恐ろしいほどのボリュームだ。
もうひとつ、車・トラックに関するデータがあった。今後半年間で車・トラックを購買する予定はと聞かれて、2010年Q2では「No」が60%強、「Yes」が20数%だ。前年同期比では「No」が減少し、「Yes」が増加している。ただし、「No」、「Yes」に重ねられている移動平均線はちょっと違うような気がする。

どのメーカーを検討しているかというと中国メーカーがトップだが、前年は48.2%だったシェアを欧州車、米国車に喰われてきている。
そして、製品購買に関るメディアの影響も調査しており、車と日用雑貨品を取上げている。
Source:BrightTalk / Prosper in China - July 2010

例えば車なら、TVCFが31.9%購買決定に影響を与え、(プリント)記事は24.8%、CATVなら21.3%となっている。

このメディアインフルエンスに関して、以前、紹介したTNSのレポートと直観的に相容れない気がする。それは、中国インターネットユーザの60数%はForum/BBSに参加し、50%弱はBlogも利用している。この発信・共有スペースでブランドが語られている。そのため、ソーシャルメディアスペースの影響をメディアインフルエンスに入れていないBigReseachのレポートは片手落ちだと思うからだ。

参考:Social Media in China (Online Ad 2010/06/15)

2010/08/11

Customer Service on Twitter

Conversation Agentが、Twitterのフォロワー数だけではなく、
  1. 顧客からの問い合わせにリアルタイムで対応しているか
  2. 顧客第一の考え方をしているか
  3. Twitterアカウントが何のためにあるのかちゃんと告知しているか
といった条件で、Twitterにあるカスタマー・サービスのベスト・アカウント12を選んでいる。

JetBlue

SouthWestAir

Comcast

Zappos

TwelpForce

HomeDepot

DirectTV

GMCustomerSvc

ATT

FordCustService

BlackBerryHelp

Ask_WellsFargo

Source:Twitter / ScottMonty
Source:ConversationAgent / Top Customer Service Accounts on Twitter

HomeDeptのクレーム対応、DirecTVのトラブル解決、GM、WellsFargoの顧客対応、RIMのちょっとしたコツ伝授、そして、ATTの週末お休み案内などの例が挙げられ、それぞれ数千から数万、果てはJetBlueのように150万を越えるフォロワーを抱えているアカウントまで多様だが、Twitterを使ったカスタマー・サービスが行われている。

Twitterを使った広報、広告、マーケティング活動だけが注目されているようだが、Twitterが最もよく機能するのはカスタマー・サービスだろう。トラブルに巻き込まれている顧客・ユーザが求めるリアルタイムのレスポンスを提供できるのはTwitterだけなのだから。メーカー、ベンダーのカスタマー・サービスの電話番号を調べるよりは、iPhoneなどで検索し、Tweetすればいいわけだ。

そして、企業の顧客対応がオープンにされているだけにメーカーは気の抜けない対応をしなければならない。また、「今度、何かイベントをやりますよ」といった従来型のマスへのコミュニケーション・メッセージではなく、「個客」、個人からのリクエストに応える必要がある。

参考:Twitter Customer for Service and Branding (Online Ad 2009/03/30)

上のように多くの大企業がTwitterを使ってカスタマー・サービスを開始している現在、Twitterユーザというか、世界のユーザがそれを見聞きし、企業の対応を体験している。その数は日々増えてゆく。そして、Twitterカスタマー・サービスを始める企業が増えれば増えるほど、それを体験するユーザも増えてゆく。Twitterでのカスタマー・サービスをやっていない企業にはユーザから「なんでやらないんだ」、「早く始めろ」といった声が届き始めることになる。

ということは、Twitterカスタマー・サービスが標準的な顧客対応になる日も来ると言うことだ。いや、すでに一部では始まっているということだ。

そんな時、カスタマー・セントリックではなく、マスメディアを使ったコミュニケーションをソーシャル化しただけ、注目を集めているTwitterを使って製品・サービスを紹介するといったメガフォンマーケティングをしているだけの企業・ブランドに下される評価は決まっている。

Dell_Outletの成果につられて、我も我もと売らんかなのTweetをしている企業の裏を見透かされるのに、どれくらい時間がかかるかの話だ。見透かされた企業・ブランドは、たとえ、Twitterフォロワー数が増えたところで死んだ子の年を数えるのと大差はないことになってしまう。フォロワーカウンターが増えたところで、顧客に提供する価値が増え、提供した顧客が増えない限り、企業は評価されないのだから。