6月に、Samsung 3D TV Promotionを書いた。
参考:
Samsung 3D TV Promotion (Online Ad 2010/06/03)
それ以降も、矢継ぎ早といったマーケティング、プロモーションが繰り出された結果、8月31日のDealers Scopeによると、Samsungはすでに全世界で発売以来6ヶ月間で100万台の3D TVを販売し、米国シェアの88.3%を握っているようだ。
Source:
Dealers Scope / Samsung Sells Millionth 3D TV, Eys Appsしかし、VentureBeatによれば、Sonyは7月までにSony Style Storeにおいて200万回以上の3Dデモを実施。300人の3Dスペシャリストを配置。今後、2~3ヶ月で20万回の3Dデモを予定。5,000回以上のマーケティングイベント開催を予定しているとのこと。
Source:
VentureBeat / Sony revs up the 3D TV sales pitch with millions of demos各社のマーケティング、プロモーションがこれからも加熱、加速してきそうだ。
ただし、今、目の前に無視できないほど大きく広がった明白なギャップがある。それは、Samsungと競合する4社、Panasonic、Sharp、LG、そしてSonyに関するオンラインバズ数だ。
下は、3月10日から始まる週を起点として9月1日から始まる週までの6ヶ月間における5社、Panasonic、Sharp、LG、Samsung、そしてSonyの3D、TVに関するオンラインバズの時系列グラフだ。累計ではPanasonicは3.12K、Sharpは1.15K、LGは1.12K、Samsungは47.1K、そしてSonyは6.61K個のバズが発生している。
そのシェアを見ると、もう圧倒的としか言いようのないギャップがある。Samsungはこの6カ月間の3D、TVバズシェアの80%を握っている。日本メーカーではSonyが11%、Panasonicが5%、SharpはLGと同じ2%でしかない。残り4社が束になってかかってもSamsungはその合計の4倍のバズを発生させている。
このバズをもう少し詳しく、カテゴリ別に見てゆく。
まず、Blogだ。Samsungが28.5Kのバズを発生させていて、次に続くのはSonyの4.87K個と一ケタ少ない状況だ。
BlogバズシェアはSamsungが75%を握っており、Sonyが善戦して13%、Panasonicも健闘して7%だが、LGは3%、Sharpは2%でしかない。
次にForumバズを見ると、ここでもSamsungが競合を圧倒している。累計で14.9KのSamsungに対してSonyは1.37Kでしかない。ForumではLGがもっともひどく48個のバズしか発生していない。
ForumバズシェアはSamsungが89%だ。Samsungは全4カテゴリでトップシェアを占めているが、89%はその中でもTwitterに次ぐ高いシェアだ。
次はTwitterだ。ただし、TwitterのAPI制限の関係でモニタリングできているTwitterバズ数は実数の10%から15%の間ということになる。Samsungに関する3D、TVがらみのオンラインバズが2.64Kなのに対して、他の4社はひどい。136件のSony、55件のPanasonic、23件のLG、そしてSharpに至っては13件しかない。
ということで、TwitterバズシェアでSamsungは92%という最高シェアをたたき出している。こうなってしまうと、如何にSonyが5%、Panasonicが2%のシェアといっても、LGの1%とそう変わりはない。4社ともにTwitterを考慮したマーケティングやプロモーションをまだ実施できていないということだろうが、今時、まだ実施できていないとすると、もうこれは大変、後れているということになる。担当者自体がTwitterを使った情報やコンテンツ発信をしていないということだ。競合がどんなマーケティングやプロモーションをやっているかも調査していないということだ。今、ユーザ、デジタルネイティブ、アーリーアダプターがどこにいて、何を使い、どんな会話を紡いでいるかを無視しているということだ。
最後に、News関連バズだ。ここもSamsungが累計1.12Kなのに対して、Sonyは231件、Panasonicが134件、LGが98、Sharpが65だ。
シェアもSamsungがトップの67%、Sonyが15%、あとは推して知るべしといったシェアだ。
もう、3D TVと言えばSamsungしかあり得ないといったレベルのオンラインバズギャップが4社との間に存在している。Sonyだけではなく他の競合各社も様々なプロモーション、イベント、キャンペーンを仕掛けてくるだろうが、一朝一夕にこの途方もないバズギャップを埋めることは不可能だ。特に、従来からの一方通行キャンペーンではもう何も期待できない。
さて、このように見てきたオンラインバズは何かと言うと、Blog、Forum、Twitter、そしてNews関連サイトに書き込まれ、発信され、共有され、再露出されているブランドに関連する情報、コンテンツだ。
これらオンラインバズが、ブランド認知、想起、好感度、優先度などを向上させて、購買意思に大きく影響してくる。それもただ単に声が大きいだけとか、態度がでかいだけで俺は偉い専門家だと思っていユーザではなく、自分と同じようなピアが体験したブランドの評価、使い勝手や競合製品との比較、そしてブランドの本当の価値を伝えてくれるのがオンラインバズだ。
そのオンラインバズの80%をSamsungが牛耳っている。
Corporate Social Media Summitに参加していたSonyのChristina Stahler、Head of Consumer InsightsのPodcastを聴くと、今年、SonyはベンチマークするためNielsen BuzzMeticsとRadian6を使ってモニタリングしているそうだ。
参考:
Corporate Social Media Summit (Online Ad 2010/04/15)
Source:
UsefulSocialMedia / Podcast - Sony Christina彼女のカバーするテリトリからは離れるが、訊いてみたい。Samsungとのこの途方もないバズギャップをどう考えているのかと。そして、このギャップを埋めるためにどのようなマーケティング、プロモーションを予定しているのかと。
この膨大なオンラインバズギャップを把握せず、対抗もせず、ただ、昔からの広報、広告、プロモーション、マーケティングをやっている企業・ブランドは何も見ていないし、聴いてもいないし、感じてもいない。昔からの業務をこなしているだけで、消費者がどこを向いているかも調べていない。
このギャップを埋めるには、「Samsungと同額以上のメディア費を投下すべきだ」と、昔からの自分たちのビジネスモデルをベースとして考える一部の特異な人たちは存在するが、それに何の意味があるはずもない。誰も見ていない、読んでいない、聴いていないTV、新聞、雑誌、ラジオ広告。封を開けられもしないDM。クリックされることもないポータルサイトでのオンライン広告。不達率の異常に高いEmailニュースレター(それもテキストメール)。Facebookへのオンライン広告。提案してくるのは、バケツをひっくり返したような大量露出、大音量のメガフォン広告キャンペーンだ。
ここにあるのは、企業・ブランドや代理店・エージェンシーにとって手離れの良いマーケティング、キャンペーンだ。効果など二の次で、広告エビデンスがちゃんと取れればそれでいいといった類の話だ。なんで、私たちが汗をかかなきゃいけないんだとうそぶき、消費者のことや、彼らにどうやってメッセージを届け、共有してもらうかといったマーケティングの肝が欠落している施策だ。
今、もっとも必要なのは、「消費者にブランドを語ってもらうこと」だ。2006年のANAでP&GのCEOは、「消費者がパワーを握っている」と語っている。それからすでに4年もたってしまった今年、企業・ブランドが如何に大声を張り上げたところでメッセージが届く消費者の数は少ない。彼らは、レガシーマスメディアを使った企業・ブランドからのメッセージを信頼するよりは、自分と同じピア達のメッセージを聴き、情報・コンテンツを消費、共有、再露出しているのだから。彼らにブランドを語ってもらわずして、何も伝わらない。何も共有してくれない。
今、彼らのスペースに参加し、メッセージを届け、共有してもらうべきユーザはデジタルネイティブしかいない。インフルエンサーとして、クリエイターとして、Blog、Facebook、Twitterに多くの読者、友人、フォロワーを抱える彼らにブランドを語ってもらい、彼らの読者、友人、フォロワーにも語ってもらうことしかない。
なぜ、Samsungが圧倒的なオンラインバズを握っているのか、何が、競合各社と違うのか、なぜ、消費者はバズを生成し続けているのか、なぜ、SamsungのCEOはLoicと会ったのか、そして、なぜ、あなたの企業は公式Blogを持っていないのか、また、なぜ、あなたの企業に関するバズが少ないのか、考えたことがありますか?
もし、ご興味があれば、お問い合わせください。