2008/01/23

Chinese Search Engine Engagement

Enquiroが非常に気になる調査を公表している。

CNNICによれば中国市場での検索エンジンシェアは2007年1月でBaiduが62%、Google.cnは20%、その他が18%となっている。全世界で競合を押さえて検索エンジントップの座を獲得しているGoogleにしても中国市場は少しどころか、大きく勝手が違うようだ。

Googleがトップに躍り出ることができないのは2002年にGoogle.cnをハイジャックしてBaiduへリダイレクトするといった政府の介入、それ以降も続いているであろう政府による検閲がある。また、Baiduが許可しているMP3ダウンロード、政府による支援、「中国を誰よりも知っている」というマーケティングメッセージが大きく影響しているはずだ。しかし、オーガニック検索結果と広告を混在させているからだといっても前年比170%の伸びを記録しているBaiduの成長要因はそれだけだろうか?

そこで中国での検索エンジンの利用が違うためGoogleが2位に甘んじているのか、それとも中国でのビジネス自体が違うのかという質問に答えるため、EnquiroはEye Trackingシステムを使ってGoogle.cnとBaiduの検索結果ページにおけるヒートマップを示している。

当然ながら、Googleの検索結果は最初の3つまでのオーガニック結果周辺に視線やクリックが集中する「Golden Triangle:黄金の三角地帯」を形成している。Googleの場合、クリックの70%は最初の2つまでのオーガニック結果に集中し、リスティング広告には3%しか行っていない。逆にBaiduのヒートマップは結果ページ全体に分散している。
しかし、Enquiroが被験者にどちらの検索エンジンが期待する結果を提供したかを尋ねたところ、100%がBaiduを挙げている。

それは何故かと質問すると、帰ってきたのは「これが中国での検索だ」というものだ。これは中国のWebページがやたらめたらにコンテンツで充満し、色とりどりのリンクが張られ、アニメがそこかしこから登場し、欧米ユーザから見ればダンプカーの過積載に近い、「Hot & Noisy」というページデザインおよびレイアウトが好きだという理由が検索にも反映されているようだ。

Webデザインに関して言うと、いつもオーディエンスのニーズや嗜好に合わせてコンテンツをデザインすべきなのは言うまでもない。検索結果ページにも同じことが言えるわけだ。Baiduの最初の検索結果ページに最大のヒートマップが現れるが、ユーザは何ページも結果ページをスキャンする傾向があるようだ。「Hot & Noisy」なパターンは検索行動にも反映されている。

加えてBaiduの場合、最初のオーガニック検索結果3つまでのクリックは45%を下回り、リスティング広告のクリックは1%でしかない。また、Baiduの場合、検索結果ページ末尾の関連検索にユーザの視点およびクリックが集中する傾向も見て取れる。

さて、Enquioはその後、フリー検索、製品検索、製品購入、調査検索なども調査している。クレジットカードの普及が進んでいないとか、中国全土を結ぶ輸送網が未整備だとか、様々な背景があるが見えてくるのは同じだ。

中国と北米での検索行動比較
確実に言語の違いが大きく、中国では検索結果を読むのではなく、スキャンし、意味マップと情報の匂いを利用して、特定キーワードに視線を落とすことになる。そして今度はそれらキーワード周辺を読み、最適な結果かどうかの推論するようだ。ここが欧米言語ユーザとまっく違う点だ。

欧米であれば、検索結果ページの左上にあるオリエンテーションスポット(右図の左側にある白○)から垂直にスキャンすることで、検討するセット、通常は2つを確立してから、それぞれのセットを水平にスキャンするわけだ。これを「Fスキャン」と言う。

特にGoogleの検索結果は最適な情報をリストアップするため、垂直スキャンが比較的短く、その結果、「Fスキャン」ではなく、「Golden Triangle:黄金の三角地帯」となる。

しかし、中国では検討するセットによりエンゲージしている全く違うパターンがある。それが上図の右側のヒートマップだ。これはスポンサーリスティングが明白でないため(オーガニック検索結果と混在している)、北米のように検討するセットを明白に分割できない。そのため3つ、あるいはそれ以上の検討セットを確立することになる。

北米であれば、検討するセット2つのうち、検索結果トップにあるスポンサーリスティングに平均すると14%の時間を当てている。しかし、より詳細に時間をかけてスキャンするのは検討セットの2番目だ。64%の時間を消費している。検索ページでの平均スキャン時間は10秒だ。

ところが、トップのスポンサーリスティングがない(分かりにくい)中国の場合、検討する最初のセットにBaiduの場合38%、Google.cnの場合44%の時間を消費している。また、中国の場合、スキャン時間が長い。Baiduは55秒となっていて、Google NA(北米)の5.5倍を費やしている。中国ユーザは検索結果ページの内容を詳細に読んでいるのだ。彼らはBaiduの場合、検索結果の7~9番目まで詳細に見ているのだ。

最後に、Google US、Google China、Baiduを比べてみるとその違いが鮮明だ。
「Fスキャン」から発展した「黄金の三角地帯」がGoogle US(下図左)、その色を残しながら中国風に水平スキャンが増えているGoogle China(下図中央)、そして、検索結果ページ全体に視線やクリックが分散している「ボックススキャン」を行っているのがBaidu(下図右)だ。
Source:Enquiro / Chinese Search Engine Engagement
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中国語同様、いやそれ以上に漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベットが入り混じる日本語の場合、Googleが得意とする「黄金の三角地帯」検索が最適解を提供してくれているのだろうか?日本人の検索結果ページでのスキャンパターンはどうなっているのだろうか?

近い将来、Enquiroに日本での調査を期待したい。

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