2008/01/18

Customer Affinity : New Measure of Marketing

CMO (Cheif Marketing Officer) Council が新しいマーケティング指標として「Customer Affinity」を出してきた。

今日、大手企業のマーケティングに主要な位置を占めているのは顧客だということに疑義をさしはさむ人間はいない。マーケターは猫も杓子も顧客コミュニティ、CRMシステム、顧客分析に大規模予算を投下し、顧客の理解を促進し、エンゲージしようとしている。

が、旧来からのブランドメトリックス、すなわちブランド認知やブランド満足感といった指標は、顧客の意思そして特定企業あるいはブランドとビジネスを行おうとする意思を形成するパワーや要因を的確に提示していない。ブランド認知それ自体は、戦略的で、信頼され、継続されるベンダーとの関係を構築する顧客のベンダーへの愛着や選択傾向の決定要因としては脆弱だ。そのため、この旧来からのブランドメトリックスをを越えて、顧客を中心とするビジネスを構築するため、顧客親近感といわれる新しいマーケティングパフォーマンスを探る時期だとしている。

そこでCMO Councilは米国で年間4,885億㌦、全世界で1.5兆㌦という市場規模に加え、顧客とベンダー関係の価値と重要性を顧慮し、また顧客と持続可能、かつ高収益の関係を構築するという問題を抱えるB2Bテクノロジー市場を調査している。そして、よく知られているInterbrandとBusienss Weekが出しているTop100 Global Brandsを念頭に置き、CAI (Customer Affinity Index:顧客親近感インデックス)を導き出している。

これは年間3.34億㌦以上を支出する大手ITバイヤーおよび購入決定権者、メーカー、ベンダー、テクノロジーマーケター、カスタマーリレーション専門家、流通業者、学識経験者などから以下の4つの主要カテゴリを抽出し、1,500人以上のステークホルダーを対象として調査している。
  • 役職レベルCIO ITバイヤー・仕様者
  • チャネルソリューションプロバイダー
  • ITメーカー・ベンダーのマーケター
  • 顧客関係、サービス、コールセンター管理職
調査は、
  • 需要に対する市場の理解と反応:
    顧客のエンゲージメント、洞察、新密度、そしてソリューション創造と仕様決定に関わる関係レベル
  • 製品あるいはサービスの経験:
    ベンダー直接、あるいは流通代表いずれかからの購買および所有ライフサイクル
  • ブランド認識と評判:
    認知、理解、専門誌などでの評価、クチコミ、顧客評価、業界位置、受賞歴、他
  • コミュニケーションクオリティと頻度:
    価値提案の反響、メッセージの明確性、コンタクト発生率、コンテンツの最適性、納品のモードおよび発生率
  • サポートの入手可能性と有効性:
    コールセンター、Webサイト、オンサイト、フィールド担当者、問題解決の効率性
  • 企業の信用、信頼、そして確実性:
    影響力リーダーシップ、知識仲介、企業文化、ビジネスの実践と方針、社会的責任、法令遵守および統治
の要因に関して行われている。

調査の結果として以下の項目が挙げられている。
  • ベンダーと顧客の断絶
  • ベンダーは顧客中心主義を過剰評価
  • 顧客はベンダーに囲い込まれている感じている
  • 収益性と顧客親近感
  • 共同開発の重要性
  • ベンダーの納期や提案に信が置けない
  • ベンダーおよび流通は自身の効率性をチームとして最大化できない
  • 同僚の意見は顧客の購入に強く影響
  • ブランド認知は顧客の購入決定にあまり関係しない
そして、「成すべきこと」として以下が挙げられている。
  • 顧客中心に再編成
  • 共同開発は顧客親近感の肝
  • 顧客ライフサイクルを通して流通との協力を改善する
  • ブランド認知を超えて
  • 顧客タッチポイントは顧客親近感構築の絶好のチャンス
  • 大法螺・納期遅れの罠を回避
  • 顧客中心主義の再構築
  • 信頼こそ顧客親近感の基本
上記の詳細はpdfを参照していだくとして、面白いのはブランド認知とCAIでの比較だ。

ブランド認知および認識:
さて調査結果を「ブランド認知および認識」という視点で見ると、顧客が組織内、そして組織外の企業の中で高く能力を評価し、他との比較で優位にあるとするトップ10は右の通りとなっている。上位5社は下位5社よりもかなり高い評価を受けている。11位以降の企業には、Verizon、Sun Microsystems、Linksys、Nokia、そしてSymantecが続いている。

どちらにしてもInterbrandとBusiness WeekのTop 100 Brandsと変わりない名前が上位を占めていることになる。

CAI(顧客親近感インデックス):
ところがCAIでのランキングを見てみると全く違う結果が出ている。巨大ブランドや、巨額の広告費を計上しているような企業よりも、顧客中心主義を取る企業が上位に顔を揃えている。

このCAIランキングを上位75社までリストアップしたものを見るとその違いがより一層鮮明だ。ブランド認知で上位10社に入っていた企業をCAI75で見ると、Ciscoは18位、Intelは19位、Googleは27位、Adobeは32位、Microsoftは34位、IBMは37位、Oracleは39位、Sonyは49位、HPは53位、そしてDellが63位となっている。どう見ても中堅企業以下といった評価でしかない。

反面、Riverbed、Red Hat、SAS、F5、Salesforce、Sonicwallなど専業企業の評価が高くなっている。
Source:CMO Council / Profitability from Customer Affinity (pdf)
注:ダウンロードにはユーザ登録必要

「成すべきこと」の「ブランド認知を超えて」に以下のように書かれている。
  • マーケターは時間、予算、そしてエネルギーをブランドキャンペーンに投じている。しかし、CMO Council の調査によれば、顧客の購買意思あるいは購買決定には取るに足りない効果しかないことがわかってきた。顧客は巧妙なブランドアイディアやイメージの受動的なターゲットになるつもりはなく、彼らは参加したいのだ。
  • マーケターは顧客と直接関わることや顧客からのフィードバックを受け入れるメカニズムを創造する先進的な活動に時間を投下したほうが効果があがる。それら協調的な活動は顧客に真の製品やサービスの開発に関する利害関係を提供するだけではなく、-難解なブランディングキャンペーンの目的でもなく-、マーケターが影響を及ぼそうとするその人々への直接的な道を開くことになる。
B2Bのブランディングは非常に難しい話だが、広告代理店、マーケターなど関係する人々がこのレポートをどのように評価し、対応をするのか興味が尽きない。

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