2008/10/22

Agencies unsatisfactory

ANA年次総会のCMO円卓会議におけるHPやCharles SchwabのCMO達のコメントを拾ってみる。
  • Steve Sullivan, SVP, Liberty Mutual Group
    「マーケティングとは消費者にメッセージをプッシュするのではなく、消費者と共同で体験を創造することだ」
  • Gary Elliott, VP, Corporate marketing, HP
    「マーケターとしてコミュニティを持たずに会話を行うのは難しい」
  • Becky Saeger, CMO, Charles Schwab
    「投資家や金融関係者としてではなく、彼らの生活している世界で消費者として彼らを考えることが私のミッションだ」
彼らには、一方的に既成マスメディアを経由したメッセージを提供する限界はすでに見えている。インターネットが開いたWeb 2.0というスペースは対等でオープンな会話しか消費されない。だからオープンなコミュニティに参加を募り、そこで消費者の洞察を得ようと努力するしかない。金のなる木ではなく、一人の人間として同じ高さの目線で考えようとしている。

という背景があるので、Ad Ageが取り上げているGary Elliott (HP)のコメントは、その背景を理解していない広告代理店と、その限界を克服するために媒体社との直接取引きを試験的に行うことまで言及している。

Gary Elliottは、
広告代理店を中抜きして媒体社との直接取引きをする魅力
と、
自身が崩壊していると見なす広告代理店モデルを修復するための実験
を熟考したと語っている。

なぜなら「ある程度の実験を行うことなく、今までの(広告代理店との)関係を継続するほど十分に満足しているわけではないと言わざるを得ない」からだ。

Source:The Advertiser Magazine online / Adjusting to a New Landscape
Source:Ad Age / CMO Annoyed by Agencies, Ad Networks

今までの関係は、単純化すれば「スペース枠」や「時間枠」を売ること、すでに隅々まで検証され、構築されたメカニズムを活用したメディアミックスを提案をするだけだった。広告主にとっても、広告代理店にとっても既成マスメディアに広告を出稿することは非常に効果があり、手離れが良く、利益率も高いビジネスだった。

しかし、その効果に陰りが射し、ブランドのコントロールがブランド以外の手に移りつつある現在、膨大な露出を投下し、GRPを獲得するといった今までのマインド思考では追いつかない。ところが昔の夢が覚めるには時間がかかる。一発で何億円、何百万ドルといった商売をしてきた広告代理店は、やれ、PVだとか、CTRだとかを説明しなければならず、一桁も二桁も売上の少ないオンライン広告を提案したがらない。提案するとしてもマスメディアの刺身の妻的提案だ。また、虎の尾を踏むことになりそうなWeb 2.0の現状説明もしたがらない、というかわからないのでしない。また、広告主側もあまりそういった説明を要求してこない。

周りが見えない広告主側は、広告代理店が持ってくる提案をそのまま承認するだけだ。特に海外広告という一種、ニッチなセグメントの場合、昔からの出稿媒体を踏襲しているだけで仕事ができてしまう(と思っている)。

しかし、周りが見える、周りを見なければビジネスが立ち行かない、周りの一歩も二歩も先を見据えてビジネスを行う企業、ブランドはそうは行かない。HPであれ、どこであれ、新しい時代に入ったことを認識し、その時代に最適なコミュニケーション戦略を必要とする企業は、新しいパートナーを求めている。今までの既成マスメディアやWeb 1.0時代をともに歩いてきた広告代理店が、新時代に適応できない限り、パートナーとなることはできない。

それでなくても将来的に中堅、あるいは大企業までも代理店を中抜きした発注システムができるかもしれないというのに、その危機感を持っている広告代理店の人たちはどれくらいいるのだろうか?

参考:Self-Service Ad Boosting (Online Ad 2008/10/15)

広告代理店には冬の時代が到来しつつあるし、広告主も新時代に沿った戦略を打ち出せない限り、そのブランドは消えるだけだ。そして消える日本ブランド数は多いのかもしれない。

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