2010/05/06

Johnson & Johnson in Social Media

「Ford: Online Monitoring」で引用したRonAmokに、Johnson & Johnsonのソーシャルメディア化を取上げたホワイトペーパーがある。今年で創業124年目を迎え、11.8万人の社員を抱え、関連企業250社、売上高640億㌦の超巨大企業であるJ & Jがどのようにソーシャルメディアスペースに参加したのかを解説している。

参考:Ford: Online Monitoring (Online Ad 2009/09/17)

世界中に名の知れたビッグブランドにありがちなように、「うちにソーシャルメディアは関係ない、そんなことをする必要はない、やるにしても社内調整が大変でできっこない」と、Johnson & Johnsonは考えなかった。

ただし、1996年にオープンした初めてのWebサイトは、まったく良いところはない。薬の説明書きをWeb化したかのように見出しとクリッカブルがあるだけだ。
その後、インターネットが次第に影響力を増すにつれて、Webサイトのコンテンツも改善されてきたのは当然だ。

マスメディア系Webサイトからの情報・コンテンツだけではなく、一般のユーザも情報・コンテンツの発信・制作を行うようになり、Blogが存在感を増してきた2006年7月、Kilmer Houseという最初のBlogを立ち上げている。これはJ&Jの最初のサイエンスディレクター、F. B. Kilmerの名を冠したBlogで、J&J創業当時の会社、働く人達を取上げて医療、衛生、健康、予防など幅広いトピックを紹介している。FDA(米食品医薬局)が出てくるまでもなく、J&Jが過去から培ってきた、過去に行った、人々の記憶に残っている事柄を分かりやすく説明している。

Blogという新しいメディアチャネルを企業としてどのように利用、活用できるのか、このBlogへのユーザの反応、評価といったものを時間をかけて理解しようというスタンスが見えてくる。
Source:Kilmer House

次に2番目のBlog、JNJ BTWを2007年7月に立ち上げている。こちらはJ&Jが今やっていること、自社に関するニュースへのコメント、公式発表の補足、その他を6人のスタッフが記事を書いているし、寄稿も受け付けているようだ。コンテンツを充実させ、多面的な情報を提供しようとするスタンスが見える。
Source:JNJ BTW

これら二つのBlogから多くのことを学んだのだろう。2008年7月には、YouTubeにチャネルを開設している。
Source:YouTube / Johnson & Johnson health channel

そして2009年3月にはTwitterアカウントが走り始め、
Source:Twitter / JNJComm

2009年4月にはFacebookのグループを立ち上がった。ただし、現在、グループはないようで、Johnson & Johnson + NetworkページとSafe Kidsなどのページがある。
Source:RonAmok / J&J Does New Media (pdf)

このようにJ&Jは、情報・コンテンツをデジタル化し、一般ユーザが集うスペース、ソーシャルメディアに参加し、対話を積み重ねてきている。最先端とは言わないが、標準的で模範的なソーシャルメディア戦略だと言える。いや、J&Jのような大企業、グローバル企業とすれば十分以上の対応だろう。

ただし、J&Jのように、初めてBlogを立ち上げた時点で、今何が起きているかを理解していた企業・ブランドは幸せだ。手探りながらも先進企業から半歩遅れ程度のギャップを意識しながら、トライ&エラーをやれる体制と組織が持て、予算が計上できた。だから、何年か経ってみると社内での意識も経験、実績もそこそこ累積している。2008年、2009年と立て続けに新しいステップを踏み出せているのがその証拠だ。

今、J&Jのように時間をかけ、トライ&エラーでやろうとしてもなかなかそうはいかない。あまりにも開いてしまった欧米企業とのギャップをどうやって埋めようかと検討しても、埋められる部分が少なく、小さくなってしまった競合の背中しか見えない分野ばかりといったケースもある。また、既存の広告、広報、マーケティング、戦略ブランディングといった部署だけでは手を出せない分野が多いことが明らかだ。既存の縦型サイロ組織に横串をささなければならないのだが、その音頭をとる人間にタスクが集中してしまい狙い通りに複数部署のコラボは動かない。猫の手も借りたいほどなのだが、外部支援エージェンシーはあまり頼りにならない。それどころか今まで通りの提案を持ってくるだけといった状況が続く。

そんな時、社内の有志を募るしか方法は残っていない。

今時、どんな企業・ブランドにもソーシャルメディアに詳しい人間が一人や二人、いや数百人、数千人のレベルでいるだろう。しかし、そういったエキスパートが企業・ブランドとしてのソーシャルメディアへの取り組みを他人事(ひとごと)としてとらえている。自分の担当ではない、部署ではない。いろいろな理屈、理由を持ち出してきて、自社がソーシャルメディアの潮流から遅れ、渦に巻き込まれ、海の底に沈んでいくのを黙って見ている。

このエキスパート達に現状を理解してもらい、積極的な参加、協力を募り、Cokeのようなカウンシルを立ち上げるしか、広がるばかりのソーシャルメディア対応ギャップを埋める手立てはない。欧米グローバル企業には、Social Media、Digital、Online、Interactiveという名称のついた部署があり、部長クラスが旗を振っているが、それは今までの既存組織と同様に孤立した組織ではないはずだ。風通しのいい情報・コンテンツの社内共有が前提にあることは明らかだ。

参考:Insights from Coke (Online Ad 2010/04/13)
参考:Corporate Social Media Summit (Online Ad 2010/04/15)

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