2008/09/19

Strategy of NYT

現地、9月16日のNYTimes.comの一面トップ、そしてビジネスセクションのトップ記事はAIGに850億㌦の緊急融資が行われていることを伝えている。
しかし、注目すべきは右側のGMのバナーの上にあるセクション、「News for Media Professionals」だ。先週くらいからBusinessおよびTechnologyセクションに表示されるようになってきた。

これは7月にNYTおよびLinkedInからプレスリリースが出ていたように、両社が提携し、LinkedInユーザのプロファイルに応じて、NYTimes.comのビジネスとテクノロジーセクションでそのユーザに適したヘッドライン(例えば、「News for Media Professionals」)、プロファイルに応じた最新ニュース5本を表示するものだ。

例えばLinkedIn登録メンバーの業種がコンピュータであれば「News for Computer Professionals」というヘッドラインが生成され、それに応じたニュース5本が表示される。

また、NYT画面にある「SHARE」を開き、Linkedinをクリックすると、ユーザのコネクションにNYTの記事を転送することができる。

Source:NYT / The New York Times and LinkedIn Form Strategic Relationship
Source:LinkedIn Blog / The New York Times Get LinkedIn
Source:PaidContent.org / Aiming At BtoB, NYTimes.com Rolls Out Business, Tech Sub-sections; Handful Of Hires
Source:NYTimes.com / Fed's $85 Billion Loan Rescues Insurer

LinkedInは現在2,500万人のユーザを擁し、月に100万人ずつメンバーが増えている世界最大のビジネスSNSだ。LinkedInのパワーは下のスライドを見るだけで一目瞭然だ。

既成マスメディアがWeb 2.0時代に即応するため、各メディアでそれぞれの対応を行っている。記者Blog、記事へのコメント、記事を引用するBlogの表示、記事・記者などへの質問、読者ビデオの掲載、ビデオのWeb/Blogへのエンベッディング、フォーラム、ユーザのマイページ作成、記事のemail転送、ソーシャルタグマーク、SNSへの記事転送・投稿などなど盛り沢山だ。

これまではメディア側でサービス・機能・ツールを追加してWeb 2.0的雰囲気を作り出していたわけだ。しかし、今回はWeb 2.0側の代表的なサイトと戦略的な提携を行って、自サイトユーザとWeb 2.0サイト側ユーザとの統合、融合を図り、広告ターゲット層をより明確化して、訴求力を向上させようとしている。NYTとすると、世界最大のビジネスSNSであるLinkedInを引き込んで、LinkedInユーザの中でもビジネスエグゼクティブ、デシジョンメーカー向けの広告を大きく膨らませる戦略だろう。

世界の新聞といっても過言ではないNYT、全世界から様々な階層のユーザがアクセスするNYT、その記事は世界中のメディアが引用する大きな力を持つNYTが、ここまでWeb 2.0対応を進めている。

さて、翻って各企業、ブランドのWeb 2.0対応を見たとき、その対応の浅さ、低さ、実のなさが鮮明だ。今、訴求すべきユーザが集まるスペースはレガシーメディアではないし、それと同様のWeb 1.0スペースでもない。ブランドのコントロールの及ばないところで、ネガティブ、ポジティブにブランドが語られているところ、それがWeb 2.0スペースだ。

プッシュではなく、プルなのだ。ダイナミックなコンテンツを発信し、共有してもらい、露出を拡散してゆくことが重要なのだが...。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

New York TimesはWeb2.0対応にもっとも積極的なマスメディアかなと思います。米国では、コンテンツをできるだけオープンにするなどコンテンツ流通の方法を変えています。一方、日本ではまだまだコンテンツを囲い込むことで、オーディエンスを囲いこもうという動きが主流です。日本のマスメディア(特に新聞)系Webサイトが年々存在感が小さくなっているような気がするのは、このあたりに理由があるのかもしれません。

笠井孝誌 さんのコメント...

存在感が小さくなっているのは日本国内でのマスメディアだけではなく、海外での日本ブランドも同じでしょうね。