2010/04/01

Leadership of Ford and Toyota in Social Media

実は3月17日のお昼頃、あるBlogに以下のようなコメントを書いた。
今年78歳になるBill Marriottは、2007年1月に初めてBlogを始める際、
「I know this is where the action is if you want to talk to your customers directly -- and hear back from them.」と書いています。http://www.blogs.marriott.com/marriott-on-the-move/2007/01/uncharted-territory.html
日本語だけではなく世界に向けて英語で発信されるのがベストではないでしょうか?
コメントを保存していないので正確には覚えていないが、多分、こんな内容だったと思う。

ここで引用したのは、Marriott Internationalの会長兼CEOであるBill Marriottだ。

参考:Marriott's CEO Blog Launched (Online Ad 2007/01/19)

そして、上のコメントを書き込んだのは、「モリゾウ」というスクリーン名でBlogが立っているトヨタの社長、豊田章男氏のBlogだ。
Source:Gazoo / ドライバーモリゾウ

ところが3月31日になっても、筆者のコメントはBlogのコメント欄に表示されていない。

今回のリコールに大きく影響を受ける欧米ユーザに社長として直接、対話を開始する必要性をコメントしたつもりだった。欧米に比べればその影響が非常に少ない日本ユーザに語るよりも、欧米をはじめとする世界のトヨタ車オーナーに語ること、対話のチャネルを開くこと、そして、フィードバックをオープン、対等、双方向に受けることが必要だと確信するからこそ、コメントしたわけだ。

しかし、一般的な公序良俗に著しく反しているとも、Gazooの利用規約、コミュニティ・ガイドラインに抵触しているとも思われないコメントを無視し、表示していない。(もし、抵触しているのなら、そう判断した理由をお聞きしたい)

これでは今まで同様に一方通行のコミュニケーションでしかない。送り手と受け手の対極しか存在していない。常時、送り手と受け手がその立場を替え、相手の立場を理解、尊重した上で対等なカンバセーションを行うチャネルではない。

一方、Fordの社長兼CEOのAlan Mulallyは、Washington Postの「On Leadership」で次のように語っている。紹介したいのは2つある。


Source:Washington Post / On Leadership : Ford CEO Alan Mulally on the "liberating clarity" of his mission

まず、ひとつめ。
我々は仕えるために存在しているといつも考えている。業界のリーダーとして選ばれる栄誉を与えられているが、実際のところ我々は顧客に仕えているし、従業員にも仕えているわけだ。もっと召使的な観点を持つか、あるいは召使的な体制を取れば、もっと(Fordを顧客に)取り込んでもらうことができる。また、他の人間のアイディアに対して尊敬の気持ちを持てば、他人に理解してもらおうとする前に他人を理解することができる。そして、人々のパワー、力がひとつになってゆく。ここがいつも私を驚かせている。
そして、もうひとつ。
我々はどこへ行くのか、どうやってそこへいくのか、そして我々一人一人に何が求められているのかを我々自身が理解すればするほど、進展は早まる。こういったコミュニケーションを私(Alan Mulally)が部下に指示するのではなく、そういった環境を創造することなのだ。

今何が起こっているかを全ての人間が知れば知るほど、個人のパフォーマンスが増大すると思う。また、それによってチームパフォーマンスも上がってくる。どのようなビジネスに自分がいるのか、対する顧客はどんな人なのか、世界中でベストな競争をするためには何が必要なのかを知れば知るほど、(今までの企業組織、担当といった)桎梏からどれほど解き放たれるかを考えてみてください。これら大きな決断がFordの創造性を解き放ったと考えている。
FordとToyotaは、同じ自動車メーカーだが数えきれない点で違う。単純に同じ地平線に乗せて比較することなどできはしない。しかし、その相違点を納得した上で、今、もっとも大きく、そして重要な違いは、ソーシャルメディアの理解ではないだろうか。

ソーシャルメディアを導入する、ソーシャルメディアスペースに参加するということは、今までの企業そのもの、既存組織、決定伝達フロー、予算執行優先度など様々な決まりを変更し、桎梏から脱するということだ。一方通行のメッセージを大量投下するのではなく、個々のユーザとエンゲージするということだ。彼らとの対話からフィードバックを受け取り、彼らの参加、協力を求めてオープン、対等、双方向のコミュニケーションを成立させるということだ。フォーカスグループなどの特定ユーザグループからのヒアリングではなく、前後左右、上下から降ってくる、湧いてくる硬軟とり混ざり、雑多な意見、フィードバックを受け入れるということだ。

そして、Bill Marriottが言うように、「今、顧客に直接話しかけ、彼らからフィードバックをもらうためには、どこで行動を起こすべきか」を知らなければならないリーダーは、企業・ブランドとしてソーシャルメディアを導入し、ソーシャルメディアスペースに参加するという、企業そのものを変革することになる意思決定、判断を下さなければならない。FordのAlan Mulallyが言う、サーブする視点、相手を理解する視点、ゴールを理解する視点の重要性を説き、そして、それらを新しい企業、組織、フローとして 社内環境、マインドセットを創造することが必要となってくる。なぜなら、企業・ブランドを取り巻く外環境には、「力になりたい」、「手を貸したい」、 「一緒に始めよう」という顧客、ファンが集っているのだから。「What/How can I help you?」というキーワードは、Haitiの例をひくまでもなくソーシャルメディアスペースに満ちているのだから。

ただし、トップ、あるいはトップを支えるチーム、そして企業自体のマインドセットには、相応以上のソーシャルメディア(スペース)に対する理解、把握、実績、そして展望がなければならない。FordのAlan Mulallyを支えるチームの中心には、Scott Montyがいるはずだ。そのScott MontyをOrangeからヘッドハントしてきた目利きの人間がFordにはいるわけだ。Bill Marriottにしても社内の情シス部門から長期間にわたったレクチャーがあった。パソコン音痴の彼の理解を広げ、(最年長?)CEO Blogを始めさせたプロがいたわけだ。

ひょっとするとここが最も大きな肝かもしれない。特に、今まで企業・ブランドとして経験したことのないスペースを導入、参加するに際して、BlogやForum、SNS、Twitter、YouTubeなどを経験したことのない人々や、既存組織から予算、担当テリトリ、意思決定フローなどがシフトすると危惧する人々から、吐き出されるネガティブセンチメントに対抗し、新しいマインドセットを伝道してゆくにはリーダーだけでは無理だ。リーダーを支える強力なリソースが是非とも必要になる。

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