「The Future of Shopping」というビデオがある。YouTubeだけで視聴160万回を越え、Viral Video Chartによれば234のBlogが記事を書き、138件のコメントがあり、2,600のFacebook Shareをたたき出している。
ブティックで店員さんを横に、前後、左右、上下に右手を振りまわしている女性を見ると、ちょっと大丈夫かと思うが、少しすると合点が行く。鏡のようなディスプレイに向かい、バーチャルに服を試着したり、色違いを試したりした後、非接触カードで支払を済ませるまでを描いているビデオだ。
Source:YouTube / The Future of Shopping
Source:ViralVideoChart / The Future of Shopping
このビデオはBtoB OnlineがInteractive Marketing Guide 2010の中で、優秀バイラルビデオの最終候補としてHPとCiscoを選出しているが、そのCiscoのビデオだ。他にも「The Future of Healthcare」、「The Future of Education」があり、3本まとめて選出されている。
Source:BtoB Online / Interactive Marketing Guide 2010 (pdf)
Ciscoのバイラルビデオは、いずれも医療、教育、お買い物といった一般消費者の身近にある近い将来を描き出し、そのバックボーンを支えるCiscoのCatalystスイッチ、TrustSecセキュリティソリューション、G2ルーターを紹介するボーダレスネットワークのプレゼンへトラフィックを誘引している。
Ciscoによればビデオから6,000人がプレゼンへ誘引されたそうだ。SamsungのExtreme Sheep LED Artならいざ知らず、B2Bの総本山的なCiscoのバイラルビデオからIT・ネットワーク系の決定権者6,000人が誘引されたとすると大変な数字だ。
参考:Extreme Sheep LED Art (Online Ad 2009/03/24)
なぜ、「IT・ネットワーク系の決定権者6,000人が」と書いたかと言うと、簡単にプレゼンを見せてくれるわけではないのだ。氏名から始まり、所属部門、職位、業界、予算規模、世界の従業員数、職務詳細などを入力した後でなければプレゼンは見られないのだ。そこまで情報を入力してもプレゼンを見ようとする決定権者なのだ。
さて、3つのバイラルビデオを合計して約165万回の視聴、6,000回のアクセスからすると直接的CTRは0.36%ということになる。間接的にはFacebookユーザの平均友人数は130人なので2,600のFacebook ShareがあったことからするとFacebookだけで約34万人にビデオが露出した可能性があるし、234のBlogが記事を書いた露出も加えねばならない。BtoB Onlineのようなメディア系での露出もある。
従来からのB2Bマーケティングをやっている限り、こういった新しい試みは試されることもなく、先進企業・ブランドの後塵を拝するだけだ。この新しい試みとはバイラルマーケティングということではない。ターゲットにより近いスペースにタッチポイントを設置し、コンテンツやリンク、引用の共有や拡散を図り、ターゲットに自発的に独自コンテンツを作成してもらうことだ。その独自コンテンツをターゲットの個人的コネクション、リレーションズ、ネットワークで共有してもらうことだ。
B2Bというと対面営業・プレゼン、展示会、電話・Email、DMといったところがマーケティング上位を占め、ソーシャルメディアマーケティングの取り組みはまだまだ遅れている。そして、B2BやB2Cといった分類ではなく、広報、広告、総務、人事、CSR、環境・グリーン、顧客対応・サービスといった企業そのものの各部署の取り組みも遅れている。
デジタル化しただけではターゲットに届かないのだから、CSRレポートをpdf化してWebにアップしてもターゲットに近いスペースに置いたことにはならない。プレス・ニュースリリースをデジタル化し、共有ボタンや画像・動画を張り付けただけではソーシャルメディア化したことにはならない。コンテンツを消費してくれるターゲットが行動する範囲にそれは存在していないのだから。そして、以前からの広報や広告のように、リリースを発信したり、出稿したら手を出さなくてもいいのものではなく、出した後の方が手間暇をかけてメンテナンスをしっかりとやっていかなければならないものなのだから。
0 件のコメント:
コメントを投稿