2009/03/25

P&G Digital Hack Night

イベントに先立ち、何週間も前に1通のemailが送られた。詳しい内容は明らかにされていないが、あるイベントに参加してくれというemailだ。

3月初めの夕方、Cincinnatiの会場にはMySpace、Facebook、Google、広告代理店、マーケティング会社、Ad Age、Forrester Researchなど業界の名だたる150近い企業の人間が集められた。その時、初めて、与えられた4時間の中でチャリティのためにTシャツを何枚売るかというコンテスト、「Digital Hack Night」というイベントに参加してもらうという内容が告げられ、即刻、実施された。

このコンテストイベントを仕掛けたのがP&Gだ。参加者を数人づつのチームに分けて、チームごとに何枚Tシャツを売るかの競争をさせたわけだ。
More than 2,000 Tide T-shirts were sold for charity at P&G's 'Digital Hack Night.'
この4時間の間、P&Gが用意したメディアを使った参加者もいたし、自分自身のコネや能力を売り物にした参加者もいた。例えば、Googleのマーケティング役員は非営利団体に対して社会貢献マーケティングのアドバイスを1時間することでTシャツ100枚を売り込み、他社の人間も同じようにコンサルティングサービスをバーターする申し出を行ったり、コンテストイベント自体をWebcastしたり、別セミナーのチケットと交換を申し出た参加者もいたようだ。

ただ、大半は自分や会社のソーシャルメディアネットワークを駆使したようだ。SNS、Blog、Email、Twitter、その他諸々のサービスやツールが活用された。

結果として4時間で一枚20㌦のTシャルが合計2,000枚以上売れて、Feeding Americaにはこの収益5万㌦と同額がP&Gから拠出されて合計10万㌦が寄付された。

Source:Ad Age / P&G Gives Its Marketers a Crash Course in Social Media
Source:Logic Emotion / Turning The Tide: An Insider's Perspective
Source:Logic Emotion / Make A Difference. Now.

コンテストイベント担当者でP&Gのデジタルビジネス戦略チームのLucas Watsonは、「P&Gのマーケティング役員に今まで学んだことがないようなやり方でデジタルメディアを学ぶ経験をしてもらい、彼らを鼓舞し、デジタルメディアに曝したかった」と語っている。

代理店やマーケティング会社の発案ではなく、P&Gという企業・ブランド自体が、自社担当役員、関係部署の人間に対して、「いかにソーシャルメディアがパワーを持っているか、ソーシャルメディアを活用して何ができるか、そのスピードと効果を明らかにする」ためのイベントを開催したことに驚く。

顧客、消費者がどこで、どのように、何を見て、聞いて、話しているかを近い立場で感じている、理解しているP&Gだからこそだし、社内の意識、理解を統一、向上させて次につなげようという高いレベルにいるP&Gだからこそなのだろう。

これはもはや実験段階ではない。年内中に、次のステップも計画され、承認されているかのようだ。

もうここには広告の「こ」の字もない。社会貢献であろうと、Tシャツ販売が目的であろうと、広告ではなく、ソーシャルメディアマーケティングが行われたわけだ。

Ad Ageの記事末尾で、8年前までパンパースのブランドマネージャだったNielsen OnlineのCEOが「今、企業はこの種マーケティングをもっと多く採用し(始め)ている」とコメントしているが、この種マーケティングは広告ではないという点に関するコメントはなかった。参加者の中にはそんな声もあっただろうと推測するが、まだ、誰もそれを声に出して言わないだけなのだろうか?

広告が終焉を迎え、今は、「送り人」、あるいは「納棺士」が脚光を浴びているということなのか?

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