12月14日にYouTubeにアップされ、現在(1月7日時点)までに11万回視聴されているビデオがある。もともとは社内向けに作成されたものだが、従業員をはじめあまりの人気の高さにどこからか秘密裏にアップされたKodakのWinds of Changeというビデオだ。
3分を超える長尺ビデオは、白髪の男性が演壇に立ち、創業以来100年を超えるEastman Kokakは記憶であり将来であったという歴史を語るところから始まる。彼は静かに、長い間人々の生活を切り取り、記録し、コダックの瞬間(Kodak Moment)と呼ばれた時代、業界のパイオニアとしてきらびやかなKodakの歴史を語る。
その後、一転し、もうそんな昔の話ではうまく行かないと切り捨てる。演壇を離れ、エネルギッシュに声を荒げ、聴衆に身振り手振りを交えながら話し始める。いや、叫び始める。
現在はデジタル、多機能、無線などを備えて21世紀へ向かうときだ。それをKodakがやっている。影に隠れていると思っているのか?
Kodakは今、顔認識、GPS機能、メタ知識による被写体認識、画像共有など多くの機能を備えた製品を開発している。「昔、Kodak Momentだった。そして今度も同じ瞬間となる。しかし、今度はデジタルだ」
「オー、ヤー」という雄たけびでビデオは終わる。
ビデオは昨年5月のWall Street Journalが開催した「All Things Digital Conference」に招待されたKodakが内部向けのプレゼンとして準備されたもので、いくつものバージョンがあるらしい。
Source:Ad Age / Kodak's Self-Deprecating In-house Video Goes Viral
前半の終盤から一種自虐的、後半はデジタル化にまい進するKodakを強く印象付けるビデオだ。Kodakはデジタル化に遅れ、デジカメではCanon、Sonyに続く3位、2006年Q3のシェアは14%(前期21%)に落ち込み、「昔は良い製品を作っていたが、今は遅れている」といったブランドイメージを隠さずありのままに伝えている。ここに笑いのファクターがある。自虐的ともいえるコンテンツを正直でオープンに示す企業姿勢が見える。これに好感を覚えるビデオ視聴者のコメントが多く見られる。また、YouTubeにはKodakに期待するコメントも多く上がっている。
「新しい技術面でのリーダーシップを製品やサービスで実現しなければならない。時間はあまり残されていない」のも事実だが、「厳しい現実に直面しながらも、バイラルビデオの成功で、Kodakが消費者の注目を集め、デジタル化を推進するマーケティング戦略をプッシュしてゆくことは間違いない」とAd Ageは結んでいる。
キューブリック監督による「Dr. Strange Love (博士の異常な愛情)」の終盤に見るドクターストレンジラブの演説が持つファナティックさとは違うが、信念を持ちKodak社内の全員にモチベーションを高く持てと鼓舞するパワーは、冷笑ではなく、社内の団結を強め、目標に向かって進もうという強烈なメッセージを与えている。社内向けだったこのビデオをYouTubeに投稿したことで、結果的にオープンなコミュニケーションによって消費者と対話を始めようとする姿勢が見えるし、応援したくなる。これほど感情や情緒に訴えてくるCFはあるだろうか?また、これほど消費者の注目を集める露出をコストをかけずに獲得できるだろうか。
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