それによると彼は5、8、13メガピクセルカメラで子供の写真を撮り、プロのプリントで16 x 24インチのポスターサイズに引き伸ばし、それをマンハッタンのユニオンスクエアで道行く人々に違いを訊くという実験を行った。結果、3つの写真の違いを指摘できたのはたったひとり、他の人たちは違いを指摘できなかったり、あきらめたり、違いはないと認めた。
その結果をBlogにアップした翌日、450人からコメントやメールが殺到したそうだ。大半は彼の意見に賛成したが、少数が比較方法などに異議を唱えたりしたため、プロのカメラマン・編集者の助けを借りて追加テストを行うことになった。2回目のテストは7、10、そして16.7メガピクセルカメラで、鮮やかな背景、カーリーヘア、極彩色の刺青、そして毛むくじゃらの被写体を写真に撮り、前回同様に引き伸ばして50人に比較してもらった。結果は、3人だけが違いを指摘できたが、残りは違いを見分けることができなかった。
その結果を元に、一般のカメラユーザーにとって、「高画素数は写真の出来とは無関係」としていた。ただ、彼はメガピクセルのメリットなども書いていたし、一般のカメラユーザにとってメガピクセルが選択基準にならないとした場合、何を基準にすればいいのかについても言及していた。ただし、友人からのアドバイスや、CNETやDPREVIEW、DCRESOURCEなどのレビューを参考にしたらというものだが。
そして、2月15日に後日談が掲載された。「16 x 24インチに引き伸ばすには5、6メガのカメラで十分で、画素数神話はウソだ」という前回のコラムは大きな反響を呼び、多くのエキスパートやエンジニアを含む700通に達したEmailの大半は、「メガピクセル戦争は(カメラ販売店やカメラメーカーによって)プロモートされ、長いこと誤解を与えてきたマーケティングのカラクリだ」という点に同意したようだ。
しかし、まだ得心のいかない人たちがいるため、その人たちを納得させるため、そして前回のコラムで書ききれなかったカメラ・写真の良し悪しや購入を決めるポイントとして画素数を使う不都合を書き加えている。それは何かというと;
- 5メガピクセルより10メガピクセルは何倍大きくプリントできるか?
- 2倍、4倍と答えた人は間違い、縦横20%しか大きくならないが正解
- 一般ユーザがポスター大に引き伸ばしたとしても、その差はあまりない
- 画素集積の悪影響
- 画素を集積すればするほど写真品質を低下させる
- 画素集積が高まると集光能力が低下し、暗がりや停止した写真を撮る際、パフォーマンスが低下する
- センサーサイズ
- センサーサイズが写真の良し悪しに大きく影響
- プロユースのNikon D40 digital S.L.R.のセンサーは23.6 x 15.8mm
- 一般消費者向けカメラのセンサーは1/1.8"(対角線)程度とされ、集光能力に劣る
最初のコラムで彼はカメラを選ぶ際の基準として、画素数が適当でないなら何が基準になるかを考えあぐねていた。そこで2番目のコラムで彼にImatest Softwareの開発者から助言があったことを書き、それも書き出している。
Source:NYTimes.com / Breaking the Myth of Megapixels (Feb 8)
Source:NYTimes.com / Last Notes on the Megapixel Myth (Feb 15)
このコラムをベースにメガピクセルカメラの情報に接したユーザはPogueの記事を読み、コメントしたり、Emailを送った人だけだろうか?
当然、NYT.comのユーザ、コラムの常連、あるいはたまたまアクセスしたユーザもいれば、del.icio.usやredditのソーシャルブックマー クから記事を目にしたユーザもいるだろう。del.icio.usで「megapixcel myth」を見ると90件のブックマークが確認され、もっとも多い場合、362人がブックマークを保存していた。また、Technoratiで 「Megapixcel Myth」という書込みをチェックしてみると最初のコラムが出た翌日、2月9日に45以上の書込みがある。彼自身のBlog (www.davidpogue.com) には342Blogからリンクがある。その他、様々なサイトでの露出が統合されて数多くのユーザに露出したであろうことは疑いがない。
現在、企業やメーカーが公表、提供する情報に数倍する情報が存在するし、その情報にアクセスできる消費者は大勢いる。インターネット時代に入り、消費者は、企業が提供する情報だけに頼って製品を購入することはない。企業Webはもとより、プロやエキスパートのアドバイス、製品レビューをチェックし、個人のWeb/Blogのユーザレビューなども参考にしている。今回のコラム記事が非常に大きな反響を呼んだことから、企業が提供する情報に疑問を持つ潜在購入者もいるだろう。もはや一方的な情報提供や、マーケティング主体の高画素数プロモーションでは受け入れられないのだ。
また、大勢が注目するテーマの記事や書込みに関して、様々な人々が意見や、コメントを出し、アドバイスや助けの手を差し伸べてくれる。オープンなコミュニケーションと対話する姿勢があれば、テーマに沿って対話が広がってゆく。今回のケースでは追加テストの手を差し伸べたプロのカメラマン・編集者、元カメラメーカーのマネージャ、写真のシャープさやイメージのクオリティを測定するソフト開発者などが対話に参加している。彼らの参加により、Pogueのコラムに幅ができ、納得する正当性や真実性が追加され、より多くの人々に理解されたことだろう。
さて、カメラメーカーは消費者・ユーザに画素数を伝えるだけでいいのだろうか?消費者が使う目的に最適なモデルを選択してもらうには、あるいは、顧客満足度を最大化するには何を伝えるべきなのだろうか?高画素モデルが売れるからそれを大声で唱えるだけでいいのだろうか?
Pogueのように問題を提起し、それを他のユーザと共にコンテンツを増やし、膨らませ、共有することこそが必要ではないのだろうか。それこそがトップダウンマーケティングではなく、ブランドを消費者・ユーザと共有するボトムアップ、グラスルーツのマーケティングになるのではないだろうか。
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