2008/04/10

Overwhelming exsposure and Spillover

最近、大きな動きがビッグブランドであった。

Ad Ageによれば、GMは今後3年間で年間30億㌦の広告予算の半分をデジタルへ移行させるし、BtoB OnlineによればMSも今回のWindows Server 2008、Visual Studio 2008、SQL Server 2008ではTVを使っていない。1億5千万㌦の大半をオンラインへ振り向けている。
GMはビッグ3の中でもオンラインをやっていたほうだが、それでも年間予算の半分をオンラインへ移行させるのはただ事ではない。MSは総予算の10%程度しかオンラインに使っていなかったので、これも大転換だ。

このビッグブランドの流れは止まらないだろう。当然、GMやMSの後に業界全体が引きずられてくる ことになるから、中途半端なオンライン露出ではあっという間に打ち消され、期待する、あるいは目標とする効果は出ない。

Source:Ad Age / 2008/03/17 (ユーザ登録必要)
Source:BtoB Online / 2008/03/10

もうひとつ新しいニュースがある。8日に配信されたNYTのニュースレターによれば、PhilipsがFunaiにTVブランドのライセンスを販売し、ロイヤルティを受け取る契約をしたそうだ。今後5年間はFunaiがPhilipsブランドのTVを製造し、米国でマーケティング、販売することになる。昨年、2,082㌦だった42inのLCDTV価格は今年、1,544㌦まで下落している。メーカーにもよるが利益率は9~16%らしい。下位メーカーになれば利益率は下がり、Philipsとしては利益を出せないという判断のようだ。

また、Wal-Martなど小売での展示スペースから締め出されたことも、その背景としてありそうだ。小売としてもオン+オフラインの各種メディアで露出される売れ線のTVを展示したいわけだから露出量が重要だ。だが、その露出が中途半端ならビッグブランドに打ち消されることになる。とてつもない激戦が戦われている。

Source:NYTimes.com / Philips Ending Production of TVs for U.S. Market

米グローバル企業がオンラインを中心に据えてきた場合、最重点ターゲットである米国の主要サイト、ニュース・情報、ポータル、IT、ビジネス、ファイナンス、音楽、ビデオ、ヘルスケア、旅行サイト等が彼らのバナー広告で埋め尽くされることになる。また、このオンライン露出はオフラインでの累計露出に重なってくるわけだから日本企業の米国子会社がどんなに予算を注ぎ込んでも圧倒的な露出ギャップを抱えることになる。

Aquos-world.comのトラフィックから始めた話だが、方向を変えざるを得ない。日本企業としてB2CやB2Bであれ、この膨大な露出ギャップを企業や単体ブランドとして解消するにはどうしたらいいのだろう。

その前に、この露出ギャップは米国 内だけのものだろうか?
以前、comScoreのリリースを紹介したが、米トップ25サイトのうち14サイトは米国内よりも海外からのアクセスが多いの だ。
参考:Global Online Marketing and Branding Avilable (Online Ad 2006/11/09)

Yahoo、Amazon、CNET、Monsterなどに掲出されたバナーは世界に露出していることになる。国内向けに出稿したバナーが世界からこの種サイトへアクセスする世界中のインターネットユーザに露出している。

また、この傾向はこういったブランドメディアサイトを経由しただけのものだけではなく、各国のアーリーアダプターがアクセスする米国サイトも同じだ。例えば、Facebookの海外ユーザは78%近く、Aboutの海外ユーザも64 %近くいる。カナダ、英国、豪など英語圏はあるが、中国、仏、トルコ、マレーシア、インドネシア、ブラジルなど世界各地の非英語圏からのユーザがアクセスしているのだ。

comScoreの2月のリリースではFacebookのUSユニークビジターを3,200万としていた。もしcomScoreが示すYahooと似たようなパターンだとすると、全世界で1億近いユーザがいることになる。とてつもなく巨大なメディアだといえる。
一方、日本のメディア、例えば朝日新聞のサイトや日経BPのサイトは、海外分はそれぞれ13%、8%前後しかいない。どう考えても現地の日本人がアクセスしているぐらいだろう。米国サイトであったとしても世界に訴求するサイトとは大きく違う。
Source:Alexa.com / Facebook
Source:Alexa.com / About
Source:Alexa.com / Asashi
Source:Alexa.com / NikkeiBP

こ こで、ひとつ疑問が出てくる。

米国子会社や欧州統括会社は、そのテリトリで担当事業領域の責任を負っているわけだ。米国企業が米国内の有力Webサイトを活用 したオンラインプロモーションを行った場合、そのブランド、製品・サービスは米国内ユーザだけではなく、海外からカテゴリトップのWebサイトへアクセス している全世界のインターネットユーザ、各国でのアーリーアダプターにも露出している。米本社とすれば国内向けの露出が海外へ流出してもOKだ。グローバルなブランディングとして世界へブランド認知向上が行えている。

しかし、日本などの現地法人が米国予算で米国内向けのキャンペーンを実施 しても、Geoターゲティングしていなければ、欧州や南米、アジアのアーリーアダプターに露出してしまう。Geoターゲティングはプレミアムがつくので実 施していないケースがほとんどだろう。企業全体としてはそれでいいのかもしれないが、米子会社はたまらない。折角、担当テリトリのターゲットに対して露出し、認知向上、トラフィック誘導、販売促進をかけているにもかかわらず、その露出が担当外のユーザに流出している。

今、 個人ユーザであれ、企業ユーザであれ、B2CあるいはB2Bマーケター、およびバイヤーは、IT、インターネット、ビジネス情報、コンテンツをどこから入手しているのだろう。日本や中国、サウジアラビアかアルゼンチンだろうか?そんなことはない。やはり、米国のWebサイトだろう。SaaSにしても、RFIDにし ても、SNSやBlogにしても、ビデオ共有サイトやTwitterにしても米国だ。米国の経済・ビジネストレンド、株価・為替情報は世界の経営者にとって必要不可欠の情報だ。こういったユーザ層が各国のアーリーアダプターを形成している。自国のWebサイト、コンテンツに満足できず、世界トップのコンテンツを持つWebサイトであれば、どこの国のサイトであれアクセスするグループだ。

こういったユーザは米国サイトから入手した情報を国内へ伝播、流布、拡散するから、米国グローバル企業が意図する以上にグローバルなブランディングが行える。いまどき、既成マスメディアよりもBlogの情報が早い時もあるし、既成マスメディアがBlog情報を引用していることもある。彼らの存在や、影響は今までのメディアではトレースできない。

整理すると;
  • 既成オン+オフラインメディアでの膨大な露出ギャップが累積
  • Web 1.0での露出ギャップに加え、Web 2.0での露出ギャップも拡大
  • GM、MSを先頭に業界全体がオンラインへ殺到
  • B2Cでは露出が小売の展示スペースに影響
  • 世界のアーリーアダプターは米国、カテゴリトップサイトへアクセス
  • 各国のアーリーアダプターは国内へ情報を伝播、流布、拡散
  • 米国露出は世界へ流出
  • 米グローバル企業は国内向け+海外へも露出し、認知向上
  • 米国現法は限られた予算の中で露出が海外へ流出、効果が減少

    それだけではなく、

  • 米国内向けオンライン露出のSpilloverが、世界各国に流出し、
  • 米国内の現法の問題だけではなく、欧州、南米、アジア、アフリカ、中近東など各地の子会社にも影響
が出るということになる。

事は大事になってきた。米国からの露出流出が世界へ影響するというグローバル化の時代なのだ。テリトリにこだわった現地主義でこの露出流出を何とかできるわけもない。グローバルなブランディングを検討する必要がある。

また長くなったので、続きは次回以降で。

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