2006/10/19

Wal-Mart Enlists Bloggers in P.R. Campaign

「Wal-Marting Across America」というBlogがある、いや実際にはあったというべきか。
JimとLauraというペアがWal-Martの駐車場にタダでキャンプさせてもらいながらRV車で全米を旅し、行く先々のWal-Martで出会った素敵な人々や、見聞きしたことをBlogに書き込んでいた。

このWal-Marに肩入れしたBlogにWal-MartのPR会社、Edelmanが資金援助をしていたことが明らかになり、集中砲火を浴びたJimとLauraは、10月12日に最後の書き込みを行ってBlogを停止した。

(以前のトップページ)       
話は、今年始めに遡る。3月7日付けのNYTの記事が、「Wal-Mart寄りの複数のBloggerの記事と、Edelmanから多くのBloggerへ送られたEmailの内容が同一」だと指摘したのが発端だ。

Wal-Martは、低賃金や厚生年金充実不足、地方進出による零細小売業者圧迫など、様々な点で一般メディアから批判されている企業だ。そのため、企業イメージアップのため、一般メディア以外のBloggerに触手を伸ばし、プレスリリースを送ったり、本社へ招待したりしている。

Wal-MartはBloggerへ提供している情報のソースを明確にしているし、金も払っていないとEdelmanは言っているが、問題は、独立して独自の意見を表明していることに誇りを持っているBlogger達が何を読者に明らかにするかだ。

というわけでNYTは、Edelmanからのリリースと同一、あるいはちょっと手を加えただけの記事を書いたBloggerに取材し、苦しい言い訳を引き出している。また、GEやMSがBloggerに対して取ったアプローチを紹介し、製品投入前のプロモーションと、薄汚れたイメージを改善するための手段の違いを明らかにしている。

Source:NYTimes.com

そして10月8日付けのBusiness Weekが第二幕を上げた。

それによるとJimは58歳、Lauraは42歳。Wal-Martに立ち寄った際、駐車場をタダでRV車に開放していることを知り、アイディアを思いつく。RV車で遠くにいる子供に会いに行こう。行く先々のことをRV関連雑誌に記事を書けばお金も入る。
ところが彼らは、まず、Working Families for Wal-Martに相談した。この組織は労働団体などの攻撃からWal-Martを防衛するため、Wal-MartのPRエージェンシー、Edlemanが立ち上げた組織だ。
Working Families for Wal-Martにすれば渡りに船、スポンサーとなることを決定し、さっそくこの2人をミントグリーンのRV(Working Families for Wal-Martのロゴ入り)が待っているLas Vegasへアゴ足つきで呼び、そこから彼らのWal-Marting Across Americaという旅が始まったというのだ。

Source:Business Week

(現在のトップページ)
この話が明らかにされるや否や、様々なメディア、Bloggerから批判、非難の集中砲火を浴びた結果、Wal-Marting Across AmericaというBlogは、Business Weekの説明とは若干違う、言い訳を残して停止した。

そして、10月17日付けでようやくPRエージェンシー、EdelmanのCEOが謝罪することになった。謝罪といっても、「当初から2人のBlogger のIDを明らかにしていなかったのはこちらの誤りで、クライアント(Wa-Martという名称は出さず)ではなく、100%我々の責任だ。今後は、WOMMA (Word of Mouth Marketing Association) の透明性ガイドラインを遵守する」というコメントだけだが。

参考:Richard EdelmanのBlog

Paid Publicityの範疇も超えて、Wal-Martのイメージ回復、向上のためにBlog、Bloggerを利用したというこのケースは、非常に特異なケースだ。Wal-MartのSVP、S. F. Quinnが、ANA総会で、「今日、消費者が手綱を握っている」、「消費者にうまく手綱を握らせることができる者が全ての金を稼ぐ」と述べているが、『手綱を取り戻すため、Bloggerを仕込み、金を稼ぐ』という算段を裏でやっていたとしたら強く糾弾されるべきだ。

なお、今回の教訓により、偏向した情報操作をやろうという企業はそう出てはこないだろうし、それらしい、おかしなBlogにはチェックがもっと入るようにもなるだろう。オンラインでの市民メディアが確立する産みの苦しみかもしれない。

また、GEがEcomaginationキャンペーンを開始する前に、幹部が環境関連Bloggerに会ってサポートを要請したり、MSやCingular WirelessがXboxや新型携帯電話の投入に際して、Bloggerへプロモーションを行ったように、Blog、Bloggerの力を無視できないのも事実だ。BlogやBloggerを操作するのではなく、コンテンツを提供し、ブランドとの関係性を深化させるべきだ。それがブランディングだという理解もまだ時間がかかるのだろうか?

(注:本記事のタイトルを、Wall-MartからWal-Martsへ変更:2008/7/7)

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