2006/10/24

Web 2.0 vs. Web 1.0

PEWの新しい調査というよりは、Backgrounderというメモに「Web2.o」がある。

HitwiseのデータからPhotobucketsKodakgalleryWikipediaとEncarta、MySpaceGeocityのカテゴリごとのマーケットシェアを出している。

KodakgalleryとPotobucketの場合、2004年末までは均衡していたシェアが、2005年から離れ始め、2006年に入ると一桁違うシェアの差になっている。「All」カテゴリでWeb2.0系のPotobucket(シェア0.2%)が、Web1.0系の伝統的ブランドであるKodakgallery(シェア0.03%)を大きく引き離している。

それよりも劇的なのはWikipediaだ。コンテンツが世界中のユーザによって編集されている百科事典は、MSNのフリーバージョン、Encarta Encyclopediaが低迷するにもかかわらず、「Education - Reference」カテゴリで20.81%のシェアを獲得している。
Wikipediaの年齢構成を見ると、18-24歳でEncartaよりも10ポイント%もユーザを多く集め、逆に35歳以上はEncartaのほうが4ポイントも多くなっている。

          Wikipedia  Encarta
   18-24歳  24.25%    14.92%
   25-34歳  23.25%    26.48%
   35-44歳  24.01%    25.28%
   45-54歳  17.11%    18.93%
   55歳+    11.38%    14.40%

最後に、「All」カテゴリでMySpaceとGeocityを比べると、4.88%のMySpae、0.1%のGeocityとなり、その差は歴然だ。
Geocityは町、隣人、ホームページといった場所を仲立ちとする世界の話、そしてMySpaceはプロファイル、Blog、ビデオへのリンクなど個人を仲立ちとする世界の話だ。Geocityは個人の世界への入り口として自分の町や隣人を作るのだが、MySpaceは個人への直接、および友人や家族といった社会生活へのアクセスを可能とした。

PEWは、現状をWeb2.0、あるいは10.0であろが、なかろうが、今日のインターネットは将来世代へのポジティブなベータであることに疑義はないと結んでいる。

Source:PEW / Web2.0

PEWのWeb2.0の基本的な論調は、参照しているSlate、Slateが言及しているNews Weekと同様に、あやふやな定義のWeb2.0に踊らされるな。基本的にWeb1.0でも、10.0でも構わない。次世代のベータ版インターネットが今、ここにあるという説だ。そのための結びと、副題として、「More than a buzzword, but still not easily defined」がある。

参考:Slate
参考:News Week

しかし、英語既成メディアの両雄であるCNNおよびNYTと、Web2.0の旗手であるYouTubeWikipediaMySpaceのリーチをAlexaholicを使って比較したのが下のグラフだ。
2003年まで影も見えなかったWikipediaMySpaceが、2004年末から大きく立ち上がり、2005年に立ち上がったYouTubeと共に2006年から高く飛翔しているのが明白だ。NYTは2005年当初、CNNは2006年始めには2サイトに追い抜かれ、その2サイトも年半ばにはYouTubeに抜かれている。

これはPEWが示すように、若者が主体で主導するブームではない。MySpaceの最大デモグラフィックは35-54歳で、40.6%を占めている。若者ではなく、アーリーマジョリティとレイトマジョリティが殺到しているのがMySpaceだ。

参考:SNS Demographics Continue To Shift, Getting Older

また、毎月何日サイトへアクセスするかを米国のトップWeb(グループ)サイトを見ると、Time Warner、MSといった大ブランドサイトは昨年比アクセスが減っているのに対し、MySpaceFacebookといったSNS系サイトのアクセスが増えている。(Source:eMarketer)

技術、マーケティング戦略によってWeb1.o/2.0を区別したり、誰もが飛びつく魔法の言葉として線を引いているのではない。ここにあるのは;
  1. CNN、NYTといった既成ニュースメディアの確立したブランド、オン・オフラインの総合露出から誘導されるリーチを、ユーザが創造するコンテンツメディアへのリー チが上回っているということ、
  2. 膨大なコンテンツを誇るブランドサイトへのアクセスより、市民メディアが創造するコンテンツサイトへのアクセスが多くなっていること、
  3. 既成メディアからの一方的な情報提供、すなわちWeb1.0時代から、コンテンツの発信、共有、流通、受信のコンテンツフローすべてを一般ユーザが仕切るというWeb2.0時代へ大きくメディアがシフトしつつあるということ、
  4. ANAで多く聴かれたように、使い古されたトップダウンではなく、グラスルーツ、ボトムアップのマーケティングが必要なこと、
  5. そしてこれを前提として、マーケティング戦略の大変革が必要なことだ。
これがWeb2.0と1.0の違いではないだろうか?

2006/10/23

Behavior Targeting with Frequency

前回、紹介したBlueLitiumの新しいBT 調査データは、Next Century MediaとTacodaが先に発表した調査とも整合性があると言及していた。今年1月付けのTacodaのデータを見てみる。

このデータは、初めて視線トラッキングを用いて、行動ターゲティングと文脈ターゲティングを比較したもので、広告する製品・サービスと関連するコンテンツに掲出された広告よりも、関連しないコンテンツに掲出された広告のほうが17%も視線(LOOKS)を集めていることを証明している。また、最初の露出以降、フリーケンシーをかけることで17%の優位性が54%にまで跳ね上がることも示している。

視線トラッキングのPreTestingを使い、2005年12月のNew JerseyとLos AngelsエリアのEmailから、PlasmaTV、新車、コンピュータの調査に協力してくれる18~64歳を抽出。同じ広告を入れた2つのCDを作成。ひとつには行動ターゲティングベースの広告が最初に掲出され、もうひとつのCDには文脈ターゲティングベースの広告が最初に見られるようになっている。最終的に、行動ターゲティング、そして文脈ターゲティングを行った同じ広告が表示される。この調査に参加したのは、PanasonicのPlasma TV、車メーカーX、コンピュータ企業Yの3社。

計測指標は、Webページ内の広告が見られた回数として「LOOKS」、見られた累計時間として「SECONDS」が用いられた。(下は文脈ターゲティング(左)、行動ターゲティング(右)されたPanasonic のPlasma TVの広告例)

3社の広告を平均すると、行動ターゲティングは、文脈ターゲティングと比べ、LOOKS差異で17%増し、SECONDSではほぼ同じ結果となった。
フリーケンシーの結果を見ると、行動ターゲティングはLOOKSで4回のうち3回、SECONDSで3回のうち2回(原文のまま:最初の露出をカウントし ていないようだ)、文脈ターゲティングを上回っている。3社の文脈ターゲティング広告は、フリーケンシーをかけるごとにLOOKSが下がっていくが、行動ターゲ ティングの広告は、フリーケンシーをかけるごとにLOOKSが上がっていく。
ここで、最初の露出を除外すると、行動ターゲティングの平均LOOKS差異は17.4%から、54.3%増しにまで跳ね上がる。(行動:0.66、文脈:0.43、差異:54.3%)
加えて、最初の露出以降、行動ターゲティングは文脈ターゲティングより、12.5%増しのSECONDSを獲得している。(行動:1.44、文脈:1.28、差異:12.5%)
行動ターゲティングにフリーケンシーをかけることで大きな効果を得られることになる。
脳学者によると、ある脳波(P300)は驚いたときに現れる。この脳波は期待に反するものが出現すると生成される。脳に入ってくるデータは比較され、フィルターされて脳の中で知覚モデルが生成される、これが期待だ。この知覚モデルに反するものに対して注意、興味が生成される。
明らかに行動ターゲティング広告は、驚きファクターにより、期待した場所(文脈)で見た広告よりも注意を引き、文脈ターゲティング広告がフリーケンシーとともに注意(効果)が減衰するのに対して、フリーケンシーをかけることで効果が減衰しないことになる。

Source:Tacoda

Tacodaはこの調査の背景として、次のように書いている。
  • 何年にもわたり、広告主・広告代理店は車の広告は車専門誌に掲出するというように、すべてのメディアにおいて文脈ターゲティングを評価してきた。
    なぜなら
  • 文脈ターゲティングを行うことで、オーディエンス内に製品のターゲットが集中している度合いが高い
  • 製品広告と関連する(編集)内容のメディアで掲出されるほうが消費者の高い注意を引く
と信じてきたからだ。

しかし、インターネットによって、別の環境にいる消費者にリーチすることができるようになった。それはターゲットとするユーザがどんな環境にいても、行動ターゲティングを行うことで、ユーザの行動を追跡、解析し、どんなサイトへも送ることができるようになったからだ。この行動ターゲティングの優位性がありながら、まだ文脈ターゲティングの呪縛から抜け出せず、行動ターゲティングのCPMは文脈のそれよりも低い扱いを受けている。

だから、
  1. 同じ製品カテゴリの沢山の広告は消費者の眼を引くどころか、避けられるのではないか。消費者が製品購入目的でサイト調査をしていても、サイトに溢れる沢山の同様の広告メッセージではなく編集内容に集中するのではないか。
  2. 一方、まったく関連しないサイトで出会う広告に対して、消費者は期待していなかった驚きからその広告に注意を払うのではないか。
という仮説を検証すると書いている。

結果として、仮説は検証され、行動ターゲティングの効果が実証されたことになる。
行動ターゲティングは、2005年に米国で測定されたオンライン広告の8.3%しかない。Park Associatesの推測によると2005年に大・中堅企業の15%が行動ターゲティングをテストし、それは2004年の5%アップだそうだ。行動ターゲティングの効果と低いCPMを考慮すれば、もっと予算配分が必要で、キャンペーンには必ず実施されるべきだと結んでいる。

行動ターゲティングのオンライン広告比率が伸び、文脈ターゲティングの呪縛が解けたとき、オンラインではなく、オフライン、特にプリント媒体のターゲティングに変化は起こるのだろうか?オンラインとは別物の一言で片付けられてしまうのだろうか?

2006/10/20

BT Targeted Ads Work Better Out of Context

BT (Behavioral Targeting) に関して新しい調査データが出た。

様々なサイトやキャンペーンで露出された4億impression以上を調査し、CTR、コンバージョン率、ATR (Action Thru Rate) を行動および文脈カテゴリについて評価、解析したものだ。
1,000万impression以上が露出された9つの行動カテゴリを、様々な文脈カテゴリと照らし合わせて調査したものだ。

行動ターゲティングされた広告を比較すると、掲出ページの「文脈に合ったもの」と、「文脈に合わないもの」で違いが明らかとなった。
  • 108%高い
    行動ターゲティングされた広告を見ると、文脈に合ったものよりも、文脈に合わないもののほうがCTRが108%高い

    行動ターゲティングされた広告は、広告自体の内容とは違う文脈内容のページのほうがクリックされる。

  • 19%高い
    行動ターゲティングされた広告のコンバージョン率やATRは、広告自体の内容と同じ文脈内容ページよりも、違う文脈内容のページのほうが19%高い

  • ユーザカテゴリごとの違いも大きい
    • 「ビジネス+金融」というカテゴリのユーザは、同じ文脈のほうが、CTRは109%、ATRは128%高い
    • しかし、「エンタテイメント」というカテゴリのユーザは、同じ文脈では、CTRは92%、ATRは66%低い

  • 重 要
    パックになったオーディエンスセグメントや自動化されたルールベースのターゲティングでは、行動ターゲティングのメリットを最大限に生かせない。むしろ、行動ターゲティングのメリットを生かすには、独自セグメント化、リアルタイムでの人的データ解析が必要だ。
Source:MarketingVox
Source:BlueLithium (pdf)

なお、iMedia Connectionの「Why You Should Put Consumers In Control」は、日を改めて掲載します。

2006/10/19

Wal-Mart Enlists Bloggers in P.R. Campaign

「Wal-Marting Across America」というBlogがある、いや実際にはあったというべきか。
JimとLauraというペアがWal-Martの駐車場にタダでキャンプさせてもらいながらRV車で全米を旅し、行く先々のWal-Martで出会った素敵な人々や、見聞きしたことをBlogに書き込んでいた。

このWal-Marに肩入れしたBlogにWal-MartのPR会社、Edelmanが資金援助をしていたことが明らかになり、集中砲火を浴びたJimとLauraは、10月12日に最後の書き込みを行ってBlogを停止した。

(以前のトップページ)       
話は、今年始めに遡る。3月7日付けのNYTの記事が、「Wal-Mart寄りの複数のBloggerの記事と、Edelmanから多くのBloggerへ送られたEmailの内容が同一」だと指摘したのが発端だ。

Wal-Martは、低賃金や厚生年金充実不足、地方進出による零細小売業者圧迫など、様々な点で一般メディアから批判されている企業だ。そのため、企業イメージアップのため、一般メディア以外のBloggerに触手を伸ばし、プレスリリースを送ったり、本社へ招待したりしている。

Wal-MartはBloggerへ提供している情報のソースを明確にしているし、金も払っていないとEdelmanは言っているが、問題は、独立して独自の意見を表明していることに誇りを持っているBlogger達が何を読者に明らかにするかだ。

というわけでNYTは、Edelmanからのリリースと同一、あるいはちょっと手を加えただけの記事を書いたBloggerに取材し、苦しい言い訳を引き出している。また、GEやMSがBloggerに対して取ったアプローチを紹介し、製品投入前のプロモーションと、薄汚れたイメージを改善するための手段の違いを明らかにしている。

Source:NYTimes.com

そして10月8日付けのBusiness Weekが第二幕を上げた。

それによるとJimは58歳、Lauraは42歳。Wal-Martに立ち寄った際、駐車場をタダでRV車に開放していることを知り、アイディアを思いつく。RV車で遠くにいる子供に会いに行こう。行く先々のことをRV関連雑誌に記事を書けばお金も入る。
ところが彼らは、まず、Working Families for Wal-Martに相談した。この組織は労働団体などの攻撃からWal-Martを防衛するため、Wal-MartのPRエージェンシー、Edlemanが立ち上げた組織だ。
Working Families for Wal-Martにすれば渡りに船、スポンサーとなることを決定し、さっそくこの2人をミントグリーンのRV(Working Families for Wal-Martのロゴ入り)が待っているLas Vegasへアゴ足つきで呼び、そこから彼らのWal-Marting Across Americaという旅が始まったというのだ。

Source:Business Week

(現在のトップページ)
この話が明らかにされるや否や、様々なメディア、Bloggerから批判、非難の集中砲火を浴びた結果、Wal-Marting Across AmericaというBlogは、Business Weekの説明とは若干違う、言い訳を残して停止した。

そして、10月17日付けでようやくPRエージェンシー、EdelmanのCEOが謝罪することになった。謝罪といっても、「当初から2人のBlogger のIDを明らかにしていなかったのはこちらの誤りで、クライアント(Wa-Martという名称は出さず)ではなく、100%我々の責任だ。今後は、WOMMA (Word of Mouth Marketing Association) の透明性ガイドラインを遵守する」というコメントだけだが。

参考:Richard EdelmanのBlog

Paid Publicityの範疇も超えて、Wal-Martのイメージ回復、向上のためにBlog、Bloggerを利用したというこのケースは、非常に特異なケースだ。Wal-MartのSVP、S. F. Quinnが、ANA総会で、「今日、消費者が手綱を握っている」、「消費者にうまく手綱を握らせることができる者が全ての金を稼ぐ」と述べているが、『手綱を取り戻すため、Bloggerを仕込み、金を稼ぐ』という算段を裏でやっていたとしたら強く糾弾されるべきだ。

なお、今回の教訓により、偏向した情報操作をやろうという企業はそう出てはこないだろうし、それらしい、おかしなBlogにはチェックがもっと入るようにもなるだろう。オンラインでの市民メディアが確立する産みの苦しみかもしれない。

また、GEがEcomaginationキャンペーンを開始する前に、幹部が環境関連Bloggerに会ってサポートを要請したり、MSやCingular WirelessがXboxや新型携帯電話の投入に際して、Bloggerへプロモーションを行ったように、Blog、Bloggerの力を無視できないのも事実だ。BlogやBloggerを操作するのではなく、コンテンツを提供し、ブランドとの関係性を深化させるべきだ。それがブランディングだという理解もまだ時間がかかるのだろうか?

(注:本記事のタイトルを、Wall-MartからWal-Martsへ変更:2008/7/7)

2006/10/18

Mazda seeks movie makers

Yahoo!のCMO、Cammie Dunawayは、第96回ANA年次総会で「私はこれを参加型マーケティングと呼んでいる。消費者に参加してもらい、ブランドとの接点を形作る手助けをしてもらう」と語っている。

そこにマツダが、少なくとも6ヶ月はTV広告なしで行うUGC (User Generated Content) ベースの新キャンペーンを実施するという話をMedia Guardianが伝えている。このコンセプトは、ムービークリップからハリウッドスタイルのミニムービーをつくり、それをオンラインで共有してもらおうというものだ。

ウエスタン、無声映画など4つのジャンルから、マーシャルアート、キアヌリーブのマトリックスばりのキャラクターまで4つの登場人物を選択することができる。これらを選択してユーザ独自の12秒スリラームービーを作っちゃいましょう。できたらお友達にも紹介してね。そしてフィーチャーされているMX-5コンバーチブルも見ちゃいましょう、というサイトになっている。
(詳細は左をクリック)

これは、マツダが主力車種で初めて投入するオンラインキャンペーンだそうで、総予算の5.5%から12.5%へと倍以上に積み増されている。「我々は、25~45歳の男性というターゲットオーディエンスにうまく訴求し、効果計測もでき、最も効果的なオンラインに予算をシフトする」

「12秒スリラー」というキャンペーンWebサイトの名前は、MX-5コンバーチブルがルーフを開閉するのにかかる秒数にかけてあり、マツダによれば世界で最も早い開閉時間だそうだ。

ユーザはこのムービーを友人にEmailしたり、Webサイトへゲストを招待することもできる。また、キャンペーンの認知を高めるため、3つのバイラルフィルムをYouTube、MySpaceといった人気サイトへ埋め込むそうだ。

マツダは近年、デジタル戦略を非常に重視しており、MX-5回りのオンラインコミュニティを開発し、Web2.0スタイルのフィーチャーを追加するためのエディターを雇い入れたところ。

Resource:Media Guardian

Yahoo!のCMOが参加型マーケティングと呼ぶ戦略がここにある。マツダUKのマーケティングディレクター、Mark Cameronが言うように、ターゲットに最適に訴求でき、他メディアとは違い効果測定が可能で、広告効果が高いアプローチを使い、ユーザの自発参加と、オリジナルコンテンツ作成に手を貸して、コミュニティを盛り上げていこうという戦略に、既存メディアを使ったブランドからの一方通行はない。
また、半年間はTV広告を出さないということは、いかにUGCに期待をかけているかを示している。UGCの潜伏期間を考慮したうえで、一気に地方流行と感染爆発を目指しているかのようだ。

参考:Blog and RSS for B2B
参考:Infection, Epidemic and Pandemic

ところで、最近発表されたYahoo!の売上見通しに影を投げかけていたのは、車と金融部門の広告だったわけだが、バナー広告というオフライン的な一方通行の広告手法に限界があるのかもしれない。だからこそのMySpace、YouTube、Facebookだったのだが、どうもYahoo!は煮え切らず、踏み出せていない。最近、52週ぶりの最安値$24を記録したYahoo!株価が持ち直す気配はまだ先か?

最後に、マツダだが、4つごとのジャンルと登場人物の組み合わせで作るミニムービーのコンテンツとしての魅力が、どれだけ自発的な感染を誘発するのかは別の問題。お仕着せではなく、ユーザがより参加、イメージを膨らませることができるかどうかがポイントだ。
また、もうひとつ、作ったミニムービーを友人にEmailで知らせる前に、Disclaimerを読み、承認したということでチェックボックスをクリックしてから送るのだが、このDisclaimerを表示させるリンクが10月17日時点では切れていた。多分、いろいろクレームが届いたのだろう。18日にはちゃんと表示される。

2006/10/17

Letting Consumers Control Marketing: Priceless

Infection」、「Epidemic」、そして「Pandemic」というフローがメディア消費を一層変革しつつあり、メディアを支配し、情報を垂れ流してきたブランドによる消費者支配にも影響を及ぼしている。そんな中、記録破りとなる1,000人近くの参加者を集め、先々週開催されたAssociation of National Advertisersの第96回年次総会をNYTが伝えている。

そこに満ち溢れていたのは、「使い古されたトップダウン方式のマーケティングではなく、ボトムアップ、グラスルーツ方式のマーケティングへ変えていかなければならない」という声だ。
  • P&GのCEO、A. G. Lafley:
    パワーは消費者が握っている
    「マーケターおよび小売業者は、消費者にしがみついて後れないようについて行っている」
    P&Gは長い間、消費者がどのように商品を理解、使用すべきかを教えてきたが、
    「DVRや衛星ラジオなどの技術を使った広告を、いつ見たり、いつ消すかを消費者が選択している今日、小売側は消費者とともに学んでいる段階だ」
    消費者があらゆる意味で我々のブランドを所有し、ブランド創造にも参加している
    「我々は、消費者や好きな製品の回りに築かれるオンラインコミュニティによってコマーシャルが創造されるこのトレンドを認めるべく学習すべきだし、それを歓迎すべきだ」
  • Wal-MartのSVP、S. F. Quinn:
    今日、消費者が手綱を握っている
    「消費者にうまく手綱を握らせることができる者が全ての金を稼ぐ」
  • BMW傘下、MiniのManaging Director、J. L. McDowell:
    「我々は、ブランドの完全なコントロールを手にしたことは無い」
  • YouTube、MySpace、ビデオゲームやiPodといったニューメディアを使ったブランドキャンペーンで、長い間、いたずらで遊び好きな人物像を作り上げてきたBurger KingのPresident of Global MarketingのRuss Klein:
    消費者が企業のブランド管理主義者からコントロールをもぎ取るのなら、そうさせろ。なぜなら、消費者にブランドを渡すことこそがブランドをコントロールすることだ。もしそうすれば、消費者はもっとよい形にして戻してくれる

  • MasterCardのEVPでCMOである、L. Flanagan:
    「我々は、そこで起きることを管理できない。ブランドは、それ自身でその命を育む」
    「消費者にブランドや製品の一部のコントロールを任せるのなら、良い所も悪い所も受け入れる必要がある」
Source:NYTimes.com / Oct 9
(注:NYTの記事は1週間前後でアーカイブ行きとなり、有料購読契約が必要となるケースもある)

どこのCEO、SVP、EVP、CMOの話も、ブランドのコントロールがブランド自身の手を離れ始めていることを強調している。ここで語られているのは、もはやコントロールを取り戻そうという話ではなく、どうしたらこのトレンド、フローを理解し、消費者と一緒にブランドビルディングに参画していけるかだ。そして、そのテリトリは既存メディアではなく、オンラインメディアであることも明らかだ。
  • YahooのCMO、Cammie Dunaway:
    「私はこれを参加型マーケティングと呼んでいる。消費者に参加してもらい、ブランドとの接点を形作る手助けをしてもらう」
    コンテンツはブランド側がプッシュしていくものではなくなった。コンテンツはブランドと関係を持ってもらうための招待だ
とNYTの記事は結んでいる。

さて、消費者に手綱を渡すときがきたということで、次回からiMedia Connectionの「Why You Should Put Consumers in Control」を紹介する。

2006/10/16

Infection, Epidemic and Pandemic

GoogleによるYouTubeの買収話が少し落ちついたと思ったところ、今度は著作権侵害の補償交渉が開始されるようだが、Videoユーザデータを比較してみた。

まず、comScoreの9月27日のデータだが、これは米国内のみのストリーミングビデオサイトのデータだ。それによれば、今年7月、合計で
  • 1億人以上の米インターネットユーザがビデオを視聴し、
  • 合計71.8億ストリーム、67.4ストリーム@人
  • 3,790万人のストリーマーを集めたYahoo!がトップ
  • 3,740万人のMySpaceが続き、
  • 3,050万人のYouTubeが3位だとしている。
しかし、ストリーム回数になると
  • 15億弱のストリームを提供したMySpaceがトップ、
  • 8億強のYahoo!が2位、
  • 6.5億のYouTubeが3位だとしている。
Source:comScore / Press Release (Sep 27) 

しかし、Hitwiseの各サイトごとのユニークビジターのシェアデータ、週ごとの各サイトへのユニークビジター数の全カテゴリに対するマーケットシェアを見ると、8月5日の週、(Hitwiseのデータは注釈なしのため全世界と仮定
  • YouTubeは0.25%、
  • MySpaceが0.13%、
  • Googleが0.054%、
  • Yahoo!が0.034%のシェアとなっている。
Source:Hitwise Intelligence / Analyst Weblogs

comScoreが全米のみ、Hitwiseが全世界(仮定)というデータを単純比較すると、
  • 米国内のユニークユーザ数はYahoo!、MySpace、YouTubeの順
  • 全世界のユニークユーザ数はYouTube、MySpace、Google、Yahoo!の順
  • 米国内で力を持つYahoo!、世界で力を持つYouTubeとMySpace
  • YouTubeは世界でダントツの集客力を持ったビデオ共有サイト
という構図が見えてくる。

そこに、YouTubeに関してだけだが、comScoreから新しく世界と米国の比較データが出た。10月11日のcomSocreのデータによれば、今年7月のYouTubeはユニークビジターを
  • 米  国 1,608万人(平均158.6万人@日)
  • 全世界 6,341万人(同620.5万人@日)
集め、ストリーミング回数は
  • 米  国 6.49億回(平均2,100万回@日)
  • 全世界 29.75億回(同9,600万回@日)
だとしている。

Source:comScore / Press Release (Oct 11)

やはり、YouTubeが、ユーザ数、ストリーム数のいずれでも世界で最大のビデオ共有サイトということになる。

さて、Hitwiseのグラフが示すようにYouTubeが他サイトを尻目に、急激な右肩上がりを続ける原因は、ユーザ数で75%、ストリーム数で78%を占める全世界のユーザにあるのは明らかだ。当然ながら、面白ビデオ、人気TV番組や音楽、ビデオクリップなど、非英語圏ユーザでも障害なしに楽しめ、かつ、自身のクリップをアップでき、他のユーザと共有できるというメカニズムが全世界からユーザを集めているのは確かだ。

しかし、月間で米国以外から4,700万人ものユーザは、どうやってYouTubeを知り、やってきたのか?YouTubeが告知キャンペーンなど実施したためしはなく、既存メディア、Webメディアでの紹介があったとしてもこれほどの短期間でトップサイトとなりえたのは何が原因なのだろう?
それは、「Infection(感染)」「Epidemic(地方流行)」そして「Pandemic(感染爆発)」フローだ

Infectionをデジタルイノベーター、Epidemicをアーリーアダプター、そしてPandemicをアーリーマジョリティ+レイトマジョリティとすれば分かり易い。
ユーザがコンテンツを創造し、それを共有、転送といった初期感染が米国内で始まり、Email、Chat、Blogなどで海外へ流出。各国でも初期感染が発生し、その後、各国で地方流行が発生。そして、既存メディア、Webメディアでの紹介も合わさって、最終的な感染爆発へとつながってゆく。
米国のデジタルイノベーターが感染し、国内アーリーアダプター層への散発的な地方流行へつながる。平行して、各国のデジタルイノベーターにも感染したウィルスは、各国のアーリーアダプター層へ広がっていく。そして、アーリーマジョリティとレイトマジョリティが殺到する全世界的な感染爆発が起こる。

SNS、Blogが有効に機能するこのフローは確立しつつあるため、初期段階で必要だった既存メディアの介在は不要となってきている。逆に既存メディアがSNS、Blogを参照する機会も増え、自社のWebサイトにSNS、Blog風機能を追加し、このフローに後れをとらないよう努力している。

このフローが機能することで、ユーザ、消費者はBlogやコミュニティサイトが最新情報のソースであり、TV・新聞などが報道しない情報の窓口であることを知ってしまった。米国だけではなく、世界中のインターネットユーザはまったく新しいメディアを自らが獲得したことを知ってしまった。加えて、このフローは、コンテンツの作り手、流し手、受け手のすべてが一般ユーザ、消費者だということを意味する。このフローに乗らない限り、あるいは参加させてもらえない限り、HipでCoolな仲間入りをさせてもらえない。今まで、メディアを支配し、情報を垂れ流してきたブランドによる消費者支配に陰りがさしてきた。

そのため、企業側の意識が変わってきている。それが明らかにされた第96回ANA (Association of National Advertisers) 年次総会での内容を伝えるNYTの記事を次回紹介する。

2006/10/13

Save Darfur

ダルフールをご存知だろうか?

スーダン西部、フランス全土と同じ大きさのサバンナ地帯の地名だ。そこで2003年から今までに少なくとも40万人が殺害され、200万人が家を追われ、難民キャンプでの生活を余儀なくされている。現在、350万人以上の人々の生存が危機にさらされており、1994年のルワンダでの大量虐殺以来、このような規模での飢餓、強姦および集団虐殺は例を見ない。

スーダン軍と、支援する現地アラブ系民兵組織が、反政府武装闘争を続けてきたアフリカ系住民と地域住人を無差別に殺戮してきた。2003年以来、国連による休戦協定、武装解除要求、国連軍の派遣など手段を尽くしてきてはいるが、いまだにスーダン政府の支援を受けるアラブ系民兵組織は虐殺を継続している。

この大量虐殺に終止符を打つため、Washingtonpost.com、NYTimes.comなどに 「 Save Darfur 」 というオンライン広告が掲出されている。
ブッシュ大統領に対して、国連に平和維持軍派遣を強く要請するよう訴えるTVCFも最近、流されたようだ。

Source:Save Darfur

宗教関係団体、人権擁護団体、教育団体がコアのメンバーとなっているSave Darfurは、ついに人気映画俳優George Clooneyも担ぎ出し、9月14日、国連安全保障理事会で彼にDarfurの状況説明、21世紀最初の大量虐殺に対して国際社会の早急な行動を促すスピーチを行わせている。

Source:American Rhetric New Top 100 Speeches

日本ではあまり報道されないこのダルフールだが、驚くのは日本の女子中学生のBlogに登場することだ。彼女の英語の教師から「Save Darfur」のキャンペーンレターをもらい、驚くべき悲惨な状況を知り、自分で何かを起こさなければならないという思いのたけを綴っている。

そして、Geroge Clooneyを担ぎ出したことで、彼の動向をウオッチしている世界中のファンが、その国内に「Save Darfur」キャンペーンを広めていくことになる。

確かに既存メディアの存在感はあるが、それを凌駕する市民メディアと、その波及・浸透力を支えるインターネット、Blogが存在している。

今、マーケターが認識すべきは、ユーザ・消費者・オーディエンスが会話メディア環境にいるということだ。Blogやコミュニティサイトといった会話メディアで、人々はパーミッションを求め、会話への招待を受けることで動かされる。この状況下でマーケティングは、「顧客との最適な対話環境で関係付けを深める機会」を創造することだ。

2006/10/12

Blog and RSS for B2B

オンラインマーケティングは急激に普及したが、Emailマーケティング、検索エンジン、バナー広告など、オフラインで使われている一方通行の手段が先行している。

そこで、B2Bのテクノロジーマーケティングにどのようなオンラインアプリケーションがインパクトを持つのか、KnowledgeStormとUniversal McCannが新しいレポートを出した。
4,500人のビジネス、テクノロジーの専門家を対象にBlogとRSS、特に製品・システム購入決定権にかかわるBlog読者の行動、信用、価値、そしてインパクトを調査し、Blogが直面する問題も取り上げている。
  • 調査対象の45%は、企業内でのテクノロジーに戦術レベルで参画
  • 同55%は、テクノロジーの導入、管理に従事
  • 同42%は、IT調査や経験から社内の10人以上に頼られている
  • 同28%は、IT製品・システム購入、購入承認権限を持つ
それによれば、BlogおよびRSS (Real Simple Syndication) が以前考えられていたよりも普及しており、comScoreによれば昨年から56%伸びて2006年7月には5,870万人 がBlogへアクセスしている。これは米国インターネットユーザの三分の一(成人ユーザに限れば半分近いと見られる)ユーザにまで波及するメインストリーム メディアだ。
また、今年初めて、Blogは、無料トライアルデモ、Webセミナー、ホワイトペーパーなどと並び、質の高いプロスペクトを引き付けるコミュニケーション手段として認知されてきた。
(MarketingSherpaの2006 Business Technology Marketing Benchmark Guideによる)
  • Blogはすでに普及
    回答者の80%がBlog読者、51%は最低毎日1回、28%は毎月1回はBlogを読む
  • Blog読者は必要な情報を入手
    テクノロジーバイヤーは、ビジネスおよび技術情報をBlogから入手
    53%はビジネス情報、
    57%は技術情報を毎週、あるいは毎日、Blogから入手
  • Blog情報は信頼できる
    57%以上はBlog情報を、ニュース、業界誌、メーカーのホワイトペーパー、アナリストレポートなどと同等あるいはそれ以上に信頼
  • Blogへの不安・不便
    Blogに対する信頼性
    必要なBlogを見つけ、アップデート情報を入手するのが困難
  • BlogはIT購入決定に大きく影響
    53%はBlogコンテンツが製品購入決定に影響
    (前回調査では、27%がPodcastコンテンツが影響と回答)
  • バイヤーは特定技術Blogに大きな価値を見る
    49%は、CRM、セキュリティやストレージなど特定のトピックに関する質の高いBlogは非常に有用だと判断
  • プロによるBlogが望まれている
    67%は、テクノロジートピックをカバーしている専門Blogが少ないと感じている
  • 読者から書き手へ
    半分近い回答者は、読んでいるBlogにコメントなりを寄稿
    32%は、自分でBlog開設検討
    4%は、すでにBlog開始
  • Blogを推奨する
    バイヤーはBlogを同僚などへ推奨
    70%は適切と判断したBlogを最低、月に1回は転送
  • 31%がRSS利用
    86%はBlogに対して、「まあまあ」から「非常に」知っている
    59%はRSSに対して、「まあまあ」から「非常に」知っている
    31%がRSS(フィード)を理解して利用
  • RSSコンテンツのトップは業界、企業ニュース
    79%が業界、企業に関するニュースをRSSで取得
    58%が一般ニュースを取得
  • 日に1時間、RSSで消費
    25%が5~10RSS、半分が5RSSを購読
    90%が毎日1時間RSSを購読
Source:knowledgestorm
Source:PDF (注:pdfは上のリンクページ下部の「View this now」をクリック後、登録が必要)

ビジネス・テクノロジーの最新情報・アップデートを求める製品・サービスの購入決定権者は米国のみならず、世界中に存在する。その彼らのうち、少なくとも米国の決定権者の80%が重要な情報チャンネルとして認め、毎日のようにアクセスするBlogを活用するマーケティングが求められている。
彼らはビジネス・テクノロジーシーンでのデジタルイノベーター・アーリーアダプターを形成している。既存メディアではタイムラグのある情報収集も、インターネット、Blogであればリアルタイムに近い形で最新情報・アップデートを入手できる。そのため、最新情報チャネルであるBlogを活用しているわけだ。

Technoratiによれば、2006年6月、英語のBlogは全体の39%を占め言語別でトップの地位を占めている。31%の日本語、12%の中国語が続いているが、他の言語ともあわせ、海外へは波及せず、国内で消費されるコンテンツが多い。

ビジネスやテクノロジーの最新情報・アップデートは欧米、特に米国から発信される。そのため非英語圏のユーザは英語のトップニュース・Blogサイトへアクセスすることになる。英語Blogであれば、米国は勿論のこと、非英語圏へも波及、伝播することになる。そして、最新情報を持ち帰ったデジタルイノベーター・アーリーアダプターは、それを自国語へ翻訳し、同僚、上司、業界の知人などへ転送、普及に拍車をかけていくことになる。

Web2.0時代にグローバルなViral Marketingの核のひとつとなるのは、Blogをおいて他にない。

2006/10/11

Web video search site Blinkx signs MS pact

Blinkx とはWebビデオ検索で重要性を増しつつあるメジャープレイヤーで、すでにAOL、Lycos、Times Onlineなどに検索サービスを提供している。BBC、Fox、MTV、Sky News、Reuters、YouTubeなどが提供している600万時間のオーディオ、ビデオ、TV番組をインデックスし、検索可能としている。

Blinkx は通常のテキスト検索ではなく、音声認識、画像、内容解析によってコンテンツ検索が可能で、ユーザはビデオ中に使用された言語によって検索ができる。通常 の検索エンジンではビデオのタイトルやテキスト情報をベースに検索するが、ビデオを見ても何がなんだか判断できない。しかし、Blinkxはオーディオト ラックに録音されている言葉をベースに検索することができる。

このBlinkxと契約したMSは、自身のWebサイトやLive.comにBlinkxの技術を導入してゆく。
YouTubeは笑い声の渦に包まれているのかもしれないが、観たい何か特別なものを見つけるのは、また別な話だ。また、GoogleやYouTubeとは違い、Blinkxはビデオに関する検索情報を集めるのであって、ビデオそのものを集めてくるわけではないので、著作権問題やストレージの話は出てこない。

Source:Reuters
Source:MarketingVox

Web上のビデオを視聴するユーザはBB接続の急増により爆発している。バイラルビデオもあっという間に世界へ伝播していく。

YouTube とGoogleの話で騒がしいが、Googleが単純テキスト検索エンジンとして地歩を固め、飛躍してきたのはWeb1.0の世界。コンテンツの発信、共 有、転送、マッシュアップによるコミュニティーやグループが自然発生、拡大してゆき、BBユーザが各国でアーリーアダプター域を超えつつある中、コンテン ツに最大情報を詰め込めるビデオによるWeb2.0時代に、ビデオコンテンツ解析をベースとする検索エンジンはWeb2.0の盟主となるのだろうか。

日本では経産省が音頭をとり、「情報大航海プロジェクト・コンソーシアム」が7月に発足している。映像や音声データでは優れた技術を持っている国産メーカー、検索関連技術研究を進めてきた大学などが参加している。数十億円の予算が確保され、2~3年で結果を出す計画だ。

Blinkxは2004年創立、1,200~1,300万㌦の出資を受け、すでにAOL、Lycosなどにサービスを提供し、出資金の四分の三を使った時点でMSとの契約に至っている。
BlinkxのCTOは、「我々はWeb上でただひとつ、最大のビデオ検索エンジンになる」と語っているが、日本製次世代検索エンジンは間に合うのだろうか。

Free Papers Home Delivered in Europe

12年前、Metro Internationalがヨーロッパで先陣を切ったフリーペーパーが、WANによれば現在、全世界で毎日3,250万部が発行、配布されている。これは全世界の新聞発行部数の7%を占めている。
米国とカナダの場合、8%を占め、ヨーロッパでは新聞紙市場の20%をフリーペーパーが占めている。

このフリーペーパー市場に新たな激震が走った。フリーペパーが65%の新聞紙市場を押さえているデンマークでフリーペーパーの宅配サービスが始まるというのだ。実際のところ、今春、365 Media Scandinaviaがその計画を明らかにするや否や、デンマークの既存新聞社2社がフリーペーパー宅配を計画し、8月から開始していた。
そこに3紙目として、365 Media Scandinaviaが加わることになる。既存2紙のフリーペーパーは365 Media Scandinavia迎撃用のものだから、本格的なフリーペーパーは365 Media Scandinaviaが初めてとなる。

3 紙ともに42.5万~50万部の発行部数を持つが、365 Media Scandinaviaは高級紙として100人の記者、700人の専従配達員を擁し、3大都市での宅配と交通要所での配布を行う。ポイントは郵政省と提携 し、DMなどと一緒にフリーペーパーを配達してもらう戦略だ。

宅配そのものは365 Media Scandinaviaが数年前にアイスランドで試験的に開始していたし、米国でもPhilips AnschutzがExaminerをサンフランシスコ、ワシントン、ボルチモアで行っている。

デンマークでの宅配が順調に推移すれば、他の欧州地域へ拡大されるだろうし、スウェーデンで次の宅配サービスが開始されるだろうという噂も飛び交っている。

Source:Media Life

さて、このフリーペーパーの宅配トレンドが欧州全域に拡大していけば既存新聞、雑誌、他の印刷物への影響は少なくない。
すでに新聞のメディアとしての消費はインターネットに押されている。既存新聞の読者がフリーペーパーに流れることで新聞社の収益構造が脆弱化していく。一層、欧州の新聞社はオンライン戦略を構築、確立する必要に迫られている。

参考:EIAA Europe Online
参考:The net benefit of digital publishing

雑誌も同様だ。古い資料で恐縮だが、IpsosのEBRS 2004を見ると、モニターされている18の国際ビジネス紙誌中、読者数が減ったのは14紙誌に上っている。全体の読者数として2002年の47.3%か ら2004年には43.1%へ下落している。(古い資料、かつ、Ipsosのリンクが消滅しているためSourceとして提示不能)

Ipsos によれば、58%が国際ニュースに関して最も信頼できるソースとして新聞および雑誌を挙げ、36%がTV、20%がラジオ、18%がインターネットよりも 先を行っているとしている。そのため国際ビジネス紙誌は欧州の最もシニアなビジネスプロフェッショナルにリーチする力のあるツールだと結論づけている。

しかし、一方では2002年の48%から2004年の58%へ上昇したオンラインの存在がある。16%は有料のオンラインコンテンツを購読しているという事実もある。

実態は、国際ビジネス紙誌の読者減少がよくここまでで止まったということだ。EUが進める「Broadband for All」の影響がひたひたと地歩を固めている欧州で、どこまでプリント媒体が存在を堅持してゆけるのだろう。EBRS 2006がすでにスポンサーなどには開示されているようだが、ぜひ、最新のEBRSデータを見たいものだ。

参考:Broadband for All

2006/10/10

Living the Promotional Life

北米Nissanが面白いキャンペーンを開始したようだ。
30歳のコンセプチュアルアーティスト、Marc Horowitzを起用して2007年型Sentraで1週間生活してもらい、それをBlogやWebisodesで流すというものだ。

ター ゲットは都会派の20代、30代、彼らがアクセスするMySpace、TiVo、videoクリップ、Webisodesなどを動員し、口コミで情報共 有、拡散を目指している。6社の代理店がコラボし、2005年の12万台をかなり上回る販売を期待している。「次世代Sentra、車内で生活できます (“The next generation Sentra. You could pretty much live in it.”)」というテーマはおくとしても、4,000~5,000万㌦の予算規模、TV、プリント、屋外広告など既存メディアも使われているが、それらは キャンペーンのコアではなく、キャンペーンの一部だ。

若年消費者の変わりつつある行動パターンを反映すべく、メディア選択を再構築せざるをえないマーケターの必死の努力を象徴している。

北米NissanのマーケティングVP、Jan Thompsonは、「我々が考えているように、人々がどのようにメディアを消費すべきかではなく、人々がどのようにメディアを消費するかを見守ってい る」と語り、また、「ノンリニアなコンテンツアプローチをするのは初めてだ」と加え、「TV依存からの脱却」を示唆しているとNYTは書いている。

こういった動きはNissanだけではなく、FordもRocketboom.comで人気のあったAmanda Congdonを起用したvblog (video blog) をサポートしている。

Source:MarketingVox
Source:NYTimes.com

「リ ニアなTVなどの既存メディアよりEngagementを得られる。impression、interaction、view throughを計測でき、ニューメディアエレメントが機能しているか判断できる」とJan Thompsonが言う背景には薄れ行くTVの視聴者とその広告効果がある。

Journalism.org が、The State of The New Media 2006 をアップしている。
そ の中のNetwork TV(夕方ニュース視聴者)、Cable TV(プライムタイム視聴者)を見ると、年々視聴者数が継続して低落ているTVの状況が見て取れる。地上波TVの視聴者だけではなく、Fox Newsを除くCNN、MSNBCは伸び悩む中、イメージ、メッセージキャリアとしてのTVはその地位を落としている。

分散、細分化されたメディア消費、かつ、共有、転送されるメディア状況に最適のマーケティング戦略は何かと探るTry and Errorの時代は過ぎ、大企業のブランドマーケティングにもインターネット、バイラルマーケティングが組み込まれてきた。

し かし、北米Nissanであれ、Fordであれ、こういった露出の影響は、米国内にとどまらない。MySpace、Youtubeなど世界トップのSNS へは世界中のユーザがアクセスするし、こういった記事を発信するトップのニュースサイトへも世界からユーザが来ている。米国内のマーケティング、ブラン ディング戦略によるコンテンツが世界のステークホルダーに消費され、露出が蓄積されてゆく。各国のディジタルイノベーター、アーリーアダプターがアクセス したコンテンツが、各国内のSNSへアップされ、自国語化されたコンテンツが国内に波及して行く。

とてつもないクロスメッシュリーチが創 造されて行く。すでに10億を超え、先進工業国ではクリティカルマスをはるかに上回るインターネットユーザが存在し、世界共通語としての英語が世界中の国 々のユーザに情報流通、共有、拡散を増進している。メディアの創造者であるインターネットユーザはその力を自覚し、グループ化、コミュニティ化を進め、一 層クロスメッシュを進めている。

世界に進出した日本のグローバル企業はこの現状をどう把握、理解、解析しているのだろうか。米国子会社に この新しいメディア局面を乗り切る責任と権利、予算を与え、米国ベースのプロモーションを遂行するのだろうか。IBM、HPなど米国グローバル企業が本社 ドメインとして、インターネットでの企業広告も、Blogマーケティングも開始している中、現地子会社に予算だけを割り振り、事業領域外の北米以外のテリ トリも、世界を対象とするグローバルなCSRまでも、そして本社のみが可能なグローバルなコーポレートブランディングも負わせようとするのだろうか。

日本本社のグローバルWebサイトには無味乾燥なコンテンツしかなく、海外メディアへの露出も少ないため、メディアシーンの先頭を行く世界のデジタルイノベーター・アーリーアダプターがアクセスすることもなく、日本に住む外国人向けの内容としての意味しかない。

2006/10/07

Profitable SNS with GEN Y, GEN X and BB?

Universal McCannの資料にcomScoreの2006年3月のデータがある。MySpaceの12~24歳のビジターは1,600万人、3,680万人の44.4%にリーチし、サイトのユニークビジターの39%を占めている。

2005年の7月にNews Corp.による買収が発表されても、8月時点では44.3%(昨日の資料データ)だった。それが2006年の3月では39%、そして8月のデータでは30%(同)だから、1年間で14.3ポイント、5ヶ月間で9ポイントも落ちたことになる。
その結果、今年3月まではGEN Yと呼ばれるデモグラフィックがMySpace.comのコアだったわけだが、35~54歳のGEN Xデモグラフィックがコアになったことになる。

もうひとつ比較できるFacebookの場合、2006年3月に55.8%だった比率が8月には48%へ、7.8ポイント落ちている。その分、同様に35歳以上の比率が上昇しているのだろう。

Source:Universal McCann / Social Networking

GEN Yとは幼児期からデジタル化生活を送ってきた世代で、1977~1997年生まれの7,000~8,000万人。GEN Xはそれ以前の世代、そして、それ以前にBB (Baby Boomer) がいる。

実数的にはGEN Yも増えているわけだが、それ以上にメインストリーム化することでGEN Xのユーザが増え、構成比率で見ると高年齢化している。SNSの初期段階で中心となるGEN Yが、デジタルイノベーター・アーリーアダプターとすると、その後、メインストリーム化段階でGEN Yの遅れてきたグループと35歳以上のGEN Xの一部がアーリーマジョリティとして、そしてGEN Xの遅れてきたグループがレイトマジョリティとして殺到している様相だ。

GEN Yのデジタルイノベーター・アーリーアダプターがCoolだとして挙ったSNSが、商業化されていくにつれて彼らはどのような反応を示すのか?バナーが氾濫するスペースから何時集団逃亡するのか?メインストリーム化したことで大挙するGEN X、あるいはBBがSNS自体をどのように変貌させるのか?収益の上がるビジネスモデルを作りえていないSNSは、遅れてきたGEN X、あるいはBBをターゲットとし、SNSを単なるE-Commerceへ変貌させていくことで投下資金を回収しようとするのか?そしてその影響は?

MySpaceはGoogleとの提携により、Google Local、Google CheckoutでE-Commerceの準備万端だが、果たして...。

50代前半の女性が書き込んだBlogを読むと、彼女の子供から誘いを受けてMixiを始めたそうだ。GEN Yの遅れてきたアーリーマジョリティやGEN Xの先頭が到着すると、GEN Xの本体およびBBの影がちらついてくる。そして、メインストリーム化後の収益モデルはどこもこれからでは?

2006/10/06

SNS Demographics Continue To Shift, Getting Older

comScoreによれば、MySpace.comおよびFriendster.comは25歳以上の比率がそれぞれ68%、71%と高年齢化している。
一方、Xanga.comは12~17歳が20%を占め、合計インターネットユーザの同年齢区分の2倍となっている。
学生のソシアルネットワークとして出発したFacebook.comも、同年齢が14%を占めている。18~24歳は34%と比較した4SNSの中では最も高い比率となっている。この年代では合計インターネットユーザの同年齢区分の3倍近くにも上っている。

comScoreの解析では、MySpace.comは全年代に広範なアピール力があり、Facebook.comは学生ユーザのニッチ、Friendster.comは成人中心、Xanga.comはティーンズに最も人気がある。SNSがティーンズ中心のドメインだとする誤解があるが、SNSのアピールはより広範だとしている。

次にMySpace.comを詳しく見ると、まず急激な膨張が印象的だ。2005年8月の2,200万人から、2006年8月は5,6000万人へと倍以上増加している。
最も特徴的なのは12~17歳の比率が昨年は24.7%だったが、今年は11.9%へ落ちている。逆に35~54歳の比率が昨年の32.4%から40.6%へと上昇している。

「SNSはメインストリームになり、MySpace.comのデモグラフィックはかなり変わってきている。昨年サイトへアクセスした半分は少なくとも25歳だったが、今年になりアクセスユーザの三分の二は25歳以上となっている」、「全年代にドアを開放した結果、起こるであろうFacebook.comのデモグラフィックをモニターするのが興味深い」と結んでいる。

Source:comScore Media Metrix / Press Release

話は変わるが、このcomScoreのデータは、Home/Work/Universityロケーションとなっている。それと比べるとNielsen//NetRatingがWebサイトなどで公表しているデータはHome、あるいはWorkパネルとなっている。Web1.0の世界で依然としてデータ収集しているのがNielsen//NetRatings、Web2.0にも手を出しているのがcomScoreともいえる。現状、特にSNSの中でも動きの早い高校生、大学生といったティーンをより映しているデータはどちらなのか明白だ。
しかし、インターネットユーザは、小中学校、高校、図書館、港湾、駅、空港、飛行機、ホテル、街中のホットスポットなど等、まだまだユビキタスに存在する。

2006/10/05

Sony seeks agency for Corporate Branding Campaign

Ad Ageが伝えるところによると、Sonyはここ何年かで初めてのコーポレートブランディングキャンペーンを検討しているようだ。

すでにSonyのCMO、Andrew HouseはInterpublic、Omnicom、そしてWPPなどと話し合いを持っているらしい。中でもOmnicomはグローバルブランド解析を依頼され、関連のBBDOはクリエイティブビジネスを狙っているようだ。

「Omnicom のWolff Olinsによる包括的グローバルブランド解析に続き、新しいブランドキャンペーンを検討する」、また、「Sonyブランドは最も大きな資産であり、この プロジェクトを通し、Sonyの個別ビジネス、および総合的なビジネスを最大限にてこ入れしたい」とSonyのスポークスマンが語っている。

Sony Electronics、SCEA、音楽、映画と、それぞれ個別の製品・サービスを積極的にマーケティングしているため、全体を傘で包み込むコーポレート キャンペーンは実施されてこなかった。しかし、Wolff Olinsが、「Sonyのサイズとグローバルリーチにもかかわらず、消費者向けエレクトロニクスメーカーといったイメージと縦割り事業部制に縛られてい たが、新しく、生まれつつあるディジタルワールドのリーダとしての地位を確保する」と言うように、ちょうど1年前に初めてのCMOとして着任した Andrew Houseの戦略が開始されるようだ。

メディア予算、期間は不明。

Source:Advertising Age

さて、Sonyが各部門に傘を差し掛けるようなコーポレートキャンペーンを開始するとして、どのようなキャンペーンになるのだろうか?

下にあるのはCNN.com (あるいはInternational)に昨年後半から掲出されている、あるいは今年前半に掲出されたニコン、三菱電機、ホンダの広告だ。

































ニコンはCNN Internationalのトップページ下、Daily Snapshotのスポンサーとしてボタンを掲出し、リンク先である別ウィンドウでリーダーボードを出している。ロゴボタンの最終ランディングはhttp://nikonimaging.com/global/というNikon Imagingのグローバルサイト、リーダーボードはhttp://home.nikon-asia.com/というNikon Imaging Asia Pacific、Asiaへのゲートウェイへ飛ばされる。

三菱電機もCNN Internationalへスカイスクレーバーなどを掲出し、http://global.mitsubishielectric.com/info/possibleというグローバルサイト内のセクションへ飛ばしている。

ホンダはCNN.comにスカイスクレーパーなどを掲出し、http://world.honda.com/capというグローバルサイト内のセクションへ飛ばしている。

3社に共通するポイントは次の6つ。

◆世界中のユーザがアクセスするサイトを活用
◆最も露出インパクトの高いトップページ(ROS、セクション指定ページもありえる)に掲出
◆TVとのタイアップ(単独の場合もありえる)を計る
◆Flashを活用
◆グローバル、リジョナルサイトへ誘導
◆コーポレートブランドを構築

3社3様に、米国あるいはアジアといった地域向けのターゲティングがあるかもしれないが、少なくともCNN (Internationalも含む) へアクセスする世界中のユーザに対して、ブランドを露出した企業広告だといえる。
以前、Sharp Aquosの「There's more to see」を取り上げ、オンラインでのグローバルなブランドマーケティングの一例ではないかと紹介したが、これら3社のキャンペーンもそれに当てはまる。

Sonyが今後、開始するキャンペーンは特徴のある事業部を包括するようなものになるだけに単純な比較はできない。しかし、「新しく生まれつつあるディジタルワールドのリーダー」としての地位を獲得するために、
  • オンラインと既存メディアをより一層タイアップさせ、
  • 世界の消費者、ビジネスパートナー、従業員、金融機関、地域社会など様々なステークホルダーに継続してオンライン露出を継続し、
  • 欧米企業との総合的な露出ギャップ(特にオンライン露出)を解消させ、
  • グローバル・リジョナルWebサイトのコンテンツを消費させ、
  • ブランドの認知と理解を促進し、
  • 個別販促は各国ローカルWebサイトへダウンリンクさせ、
  • トータルな製品・サービス、ブランドのファンを増やす
ことが必要ではないだろうか。

Secure the Trust of Your Brand - 3

CMO Councilが発表した「ブランドの信頼を確保」せよという資料の紹介:3回目。

<Emory大学による調査>
様々な調査やデータが相反する結論を出している。情報流出・機密漏洩が重大な財務ロスを発生させるという報道もあれば、情報流出が起こってもセキュリティシステムが効果的に流出を制限し、被害を軽減させるという調査もある。
そこでCMO CouncilはEmory大学に補足調査を依頼。結果として、株式相場での株価下落など、ビジネスパフォーマンスに直接的インパクトがあることが証明されたとしている。また、様々な学術研究によれば、情報流出は株価にネガティブなインパクトを与え、平均すると0.63%から2.10%の株価下落が記録されている。

情報流出・機密漏洩の影響は同じではなく、漏洩カテゴリに応じて株価下落が次のように変動するという結果も出している。
  • 従来型企業と比べるとインターネット関連企業での情報流出は、よりマーケットへのインパクトが高い
  • 大企業と比べると小規模および急成長を遂げている企業での情報流出は、より対応コストがかかる
  • 情報流出が大規模であれば、株価の下落圧力は高まる
  • 過去10年間に何度となく情報流出を繰り返している企業に対して、市場は過酷な評価を下す
  • 情報流出が企業自身ではなく、第三者によるものであれば株価下落圧力は軽減される
<結論>
企業にとり、情報の取り扱いにどのような手段を講じているかを明確に知らしめることが肝要だ。
消費者の10人のうち9人は「はっきりと明確で分かりやすい企業のセキュリティ保護の実態」が重要、あるいはとても重要だと答えている。
セキュリティ意識が高まり企業への期待度が高い消費者の動きを背景とし、マーケターは自社のセキュリティ保護の実態は堅牢で顧客データが安全であることを保証するため、予算獲得に努めている。また、一端、事件・事故が発生した際、メディア、顧客、ビジネスパートナー、そしてその他のステークホルダーに対して会社幹部がどのように状況を説明すべきかという準備を進めているマーケターもいる。

しかし、前述したように危機管理計画があるのは30%のマーケターに止まっている。だから、マーケターは、自社ブランドを守るため、現存する脅威へ対処をすべきことを認識すべきだと強調している。
ポイントとして次を上げている。
  • 情報流出によるブランドへのインパクト見極め
  • 情報流出時の対応
  • セキュリティポリシーの消費者への告知
  • 流出防止、被害軽減、顧客への賠償計画
信頼されているブランドは消費者との関係を深化させる基礎となる。進んで企業の製品・サービスを使おうとしたり、個人情報を提供したり、製品・サービスにプレミアムを払ったりという消費者の行動が、企業への信頼を示している。
信頼がなければ全てのビジネスは立ち行かない。信頼がなければ消費者は情報を出さず、より深い関係を構築することも、ビジネスを拡大してゆくこともできない。

Source:CMO Council / Secure the Trust of Your Brand (Exec. Summary) (pdf)
(注:ダウンロードするには氏名、会社名、Emailアドレスなど必要)

Exec Summaryとは別に、Consumerのデータもある。その中に、「顧客セキュリティを保護する点で最も信頼され、評価が高い製品、あるいはサービスブランドは?」という問いがある。
米国も欧州の消費者も、製品を購入したり、サービスを利用している企業は、彼ら自身の個人情報や財務情報などを十分に保護していると信じている。しかし、顧客のセキュリティを保護することで「信頼する評価」を勝ち取っているブランド名を挙げることができる消費者は少ない。
同様に情報流出などで報道されたブランド名を挙げることができる消費者も少ない。

回答上位には、銀行(不特定)、Norton、セキュリティソフト、金融機関、クレジットカード、McAfee、MS、医療機関、Visaなどが顔を出している。USではトップの銀行にしても9%の信任しか獲得していないが、欧州では銀行は19%、セキュリティソフトが8%の信任を得ており、USとの違いが大きい。(Nortonは今回の調査のスポンサーなので、若干、割り引く必要があるかもしれない)

非常にばらついた回答だが、これは逆に堅牢なセキュリティポリシーや情報流出防止戦略を通して、ブランドの信頼を改善、強化するチャンスがあることを示してもいる。

2006/10/04

Branding Lexus Luxury Through Email

Meade Automotive Groupというのはデトロイト地区で創業30年以上の車ディーラーだ。全米トップ100にランクインするDodgeディーラーとしてDodgeを長く販売してきた。それを評価され、1989年からはLexusの販売もやってきたようだ。

そのMeadeが、eROIと組んでLexusのブランド認知と販売プロモーションに初めてEmailを採用した結果レポートがiMedia Connecitonで公表されている。

Meadeは、eROIのベンチマークを採用、Email開封、クリック、コンバージョン、実販売を勘案し、300%のROIでキャンペーンを実施。

ク リエイティブには、Lexusブランドを感じさせる上品、しゃれたデザインを採用し、Lexusブランドのワイン、あるいはサービス費用10%割引を提供 するというキャンペーンクーポンを用意し、あらゆる部署、システムからかき集めた3,390のEmailアドレスへキャンペーンEmailを発信した。

キャンペーン前にMeadeが設定したゴールは実販売高2万㌦、300%のROIだったわけだが、実販売高は17.5万㌦を超え、ROIはゴールの11倍以上の3,417%となった。

今回Emailを発信したのは3,390人だが、そのうち、17.5万㌦の実販売に結びついたのは291人。発信リストの9%以下だということで、今後も、まだまだ可能性が大きいことを示している。
また、Emailの利便性や魅力的な質に賞賛の声が多かったようだ。

Source:iMedia Connection

MeadeというベンダーによるEmailを使ったブランド認知と販売促進キャンペーンだが、eROIのBlog、The Email Wars(Source: eMarketer/Forrester Research)によればEmailマーケティングは米マーケターが採用しているインタラクティブマーケティングチャネルのトップ、リッチメディアの Emailは5位となっていることからもその効果がうかがい知れる。
また、インタラクティブメディアゆえに、ほぼリアルタイムでの広告効果測定が可能で、キャンペーンへのフィードバックができる点でもMeadeが採用したのだろう。

しかし、ベースにあるのはLexus本体のTV、プリント、オンライン、屋外などでの総合露出の上に、Meadeの成功があることだ。それなくしては Meadeの成功はありえない。Lexusの露出が蓄積していたからこそ、日常生活に深く浸透しているEmailが決め手となった。
Web Marketing + Emailでも紹介したが、他の多メディア露出をベースにEmailを使ったコンタクトポイント獲得は非常に有効なようだ。

2006/10/03

Secure the Trust of Your Brand - 2

CMO Councilが発表した「ブランドの信頼を確保」せよという資料の紹介:2回目。
消費者調査、メディア報道を紹介する。
資料最後の結論は3回目へ。

<消費者調査>
企業側に加え、米・欧州の消費者それぞれ1,000人を調査した結果がある。セキュリティ問題や対処に関する消費者の関心の高さが、ビジネス環境を変革しつつある。また、米国と欧州で関心の高い項目に大きな違いがある。

当然のごとく消費者の関心が最も高いのは、欧米ともに「製品とサービスの質:が77%、74%だ。 
そして、「企業の顧客対応」、「企業の公正さ・倫理観」に続き、「企業が顧客に提供するセキュリティ」が欧米ともに4番目の項目となっている。

米国で33%、欧州で43%もの消費者は、企業と商取引を開始する前に検討する項目の4番目として、「企業が顧客に提供するセキュリティ」を挙げている。
何故なら、自分の個人、財務、医療情報を流出された経験を持つ消費者は:
  • 米 16%  
  • 欧 14%
もおり、自宅で情報を盗まれたり、侵入されたり、ハッキングされた経験を持つ消費者は;
  • 米 60%
  • 欧 70%
もいるからだ。

また、セキュリティの問題や不安からオンライン、電話、ショップでの取引を中止したことがある消費者は;
  • 米 43%  
  • 欧 37%
にも上っている。

前回、紹介したようにB2Bの場合、取引先が情報流出や機密漏洩すると49.1%が取引を中止したり、中止を検討するよう働きかけると答えている。消費者の場合、59%が取引を中止したり、中止するよう検討すると答えている。
企業間取引以上に、情報流出・機密漏洩事件に対する消費者の眼は厳しく、アクションを起こす消費者が多いという現実が明らかにされている。

さて、ここで欧米消費者の違いが際立っている、「企業の環境意識」、「企業のCSR」に注目したい。
  • 環境に対する企業の意識---- 米 11% 欧 25%
  • 企業のCSR取り組み---------- 米 11% 欧 17%
欧州の消費者は米国と比べ、製品やサービスの購入・利用を開始する前の選択基準として、環境とCSRに高い関心を払っている。

人権、労働、環境、そして腐敗防止の10原則を謳い、国連のアナン事務総長が提唱したGlobal Compactの参加団体・企業の過半数を欧州が占めている。北米は5.1%、米国だけなら159社で世界の6番目だ。しかし、仏の433社、西の362社、メキシコの200社などに比べると見劣りする。
欧州でビジネスを拡大してゆくには、セキュリティ問題は当然ながら、環境とCSR対応を充実させてゆくことが欠かせないようだ。

なお、日本は49社で、インドの127社、中国の73社よりも少なく、18番目だ。

<メディア報道>
消費者の関心や認知は、明らかに情報流出や機密漏洩を報道するニュースによって加速されている。2004年1月から2006年7月にかけて報道された17,000件以上の記事を調査した結果がある。
2004年は毎週、平均すると100件、2005年は200件前後、2006年は200件を越す記事が報道されており、結果として被害者数や金額もうなぎのぼりとなり、企業ブランドの信頼問題が消費者の注目を集めていることは想像に難くない。

また、情報流出を引き起こした企業の報道例を見ると、全ての記事報道の過半数が情報流出・セキュリティ関連記事となっている企業もある。
Bank of Americaは全報道記事の4%が情報流出・セキュリティ関連記事だが、Choice Pointは65%、Cards Systemsは68%、DSW Retail Venturesは53%にも達している。

守るべき顧客データなどを流出・漏洩することによる報道記事は、ネガティブブランディング以外の何物でもなく、ブランド自体、ブランドの信頼も崩壊させてしまう。

Source:CMO Council / Secure the Trust of Your Brand (Exec. Summary) (pdf)
(注:ダウンロードするには氏名、会社名、Emailアドレスなど必要)

2006/10/02

Secure the Trust of Your Brand -1

合計売上高5,000億㌦、合計マーケティング予算500億㌦以上に上る大企業の2,500人以上のCMO (Chief Marketing Office)が参加するCMO Councilがある。欧米のブルーチップ企業に加えて、日本企業では、Casio、Fujitsu、Hitachi America、Nikon、Nintendo、Sharp、Sony Electronics、Subaru of America、Yamahaなどが参加している。
また、日本でもCMOサミットが10月24日に開催される予定だ。

このCMO Councilが発表した「ブランドの信頼を確保」せよという資料を2回に分けて紹介する。
こ れは欧米でそれぞれ1,000人の消費者を抽出調査、250人の大企業CMOや取締役、そしてCMOの調査委員会に所属する25人のマーケティング担当役 員にヒアリング・議論し、副題にあるように「セキュリティとITの統合がどのように企業評価に影響するか」を明らかにしたものだ。

過去 18ヶ月間に企業からの個人情報流出、機密漏洩などでメディアが取り上げた例として、Time Warner (60万人が影響)、Bank of America (同120万人)、Citigroup (同390万人)、米退役軍人会(同2,650万人)などがある。
2005年には 5,200万、2006年は今までに3,000万アカウントが被害を受けている。2005年は、5,200万のうち900万人以上の米国人がID盗難に遭 遇し、合計すると540億㌦、平均一人当たり5,885㌦の被害を受けている。情報流出、機密漏洩してしまった企業は、法務費、顧客への通知郵送、個別顧 客への電話連絡、問い合わせが殺到するコールセンター増設、製品割引など、平均すると1,400万㌦を支出している。
より重要なのは、この種の事件を経験した企業はその顧客ベースの2.6%を失うことだ。

このような状況の中、セキュリティの意識は高まってはいるが、企業の対応は遅れている。
調査対象となったマーケターは以下のように回答している。
  • 83.9% : セキュリティに対する自社の関心が高まった
  • 83.1% : セキュリティに対する消費者の関心が高まった
  • 63.9% : セキュリティとITの統合は企業、あるいは製品ブランドに大きなインパクトがある
  • 75.6% : 情報流出、機密漏洩は企業のブランド評価にネガティブなインパクトがある
  • 58.9% : セキュリティとITの統合はブランド競争力強化のチャンス
  • 60.3% : 企業の広報・マーケティングでセキュリティが重大なテーマとなっていない
マーケターにとり、ブランドインパクトが増したセキュリティとITの統合のメリットを活かしたいのだが、推進するための理解や意識が共有されていないのが現状のようだ。
  • 52% : 企業セキュリティポリシー定義にあたり、マーケティングの役割と影響力が増える
  • 29% : 情報流出、機密漏洩に対処する危機管理計画がある (策定中:17.7%、ない:35.8%、わからない:27.4%)
今後、一層、マーケティングの重要性が増していくと考えているのだが、マーケターから見ると社内の対応状況は芳しくないという結果が出ている。

しかし、マーケティング担当以外の取締役は以下のように回答している。
  • 49.1% : 情報流出、機密漏洩に対処する危機管理計画がある (策定中:18.2%、ない:27.3%、わからない:5.5%)
マーケターの結果と相違する結果となっている。
これはマーケターの一部は現存する危機管理計画を知らされていないことを示し、企業組織の縦割り弊害を意味するのだろうか。

さて、もし取引先、特にB2Bの取引先が情報流出、機密漏洩を起こした場合、どう対応するかと訊かれた管理職(マーケティング担当以外)は、
47.3% が対応を見守るが、
49.1% が取引を中止したり、中止を検討するよう働きかけると答えている。

B2Bの場合、特にセキュリティの重要性が際立っている。

顧客のセキュリティをいかに重要だと捉えているかを最もよく示す3つの方策を問われて管理職(マーケティング担当以外)は:
29.1% がセキュリティ確保に必要な投資を実行する 
17.3% がセキュリティの問題やコツなどを頻繁に顧客に発信すると回答している。
厳しい予算環境の中でも、セキュリティに関して聖域扱いとされているようだ。
(注:上から2番目の棒グラフは27.3%となっているが、棒の長さからすると17.3%だと見られる。その逆もあるが...。CMO Councilに問い合わせており、回答があるとしても10月3日以降の予定)

Source:CMO Council / Secure the Trust of Your Brand (Exec. Summary) (pdf)
(注:ダウンロードには氏名、会社名、Emailアドレスなど必要)