Experiment #214におけるDiet CokeとMentosのバイラルビデオ効果に気を良くし、Coca-Colaが「Holiday Wishcast」を開始した。YouTubeと初めて提携し、ホリデービデオの投稿をユーザに呼びかけている。また、Cokeが用意したビデオ、あるいはLisaNova、Geriatric1927、RenettoなどYouTubeで最もポピュラーなビデオBlogger6人が作成するビデオをEmailで友人などへ送ってもらい、グリーティングビデオとして使ってもらおうと言う計画だ。当然、EmailがCokeのブランディングとなる。
Coca-ColaのグローバルインタラクティブマーケティングのVP、Tim Koppが、YouTubeで「Wishcast」を説明している。わざわざマーケティングのVPがビデオに出演し、ビデオグリーティングカードを世界中のみんなと共有しましょうと語っている。Coca-Colaが本腰を入れてマーケティング戦略にバイラルビデオを取り入れてきたことが分かる。
Ad WeekでKoppは、「人々とつながることがブランドにとって重要だ」、「マーケティングの観点からすると、我々は的確なリスクとリターンを計りにかけてきた」と語っている。
Source:Ad Week / Coke Uses YouTube Stars for Holiday Campaign
参考:Coca-Cola / Wishcast
参考:YouTube : Coca-Cola Holiday Wishcast
Fritz GrobeとStephen Voltzが行ったDiet CokeとMentosの噴出実験は、まずMentosが飛びつき、ようやくそのバイラルビデオ効果を無視できずCokeも「Expeiment #214」で追随した。Mentosが飛びついた後も、しばらくは自サイトをYouTube似のCGM (Consumer Generated Media) サイトへ改修してはみたものの、10月になりFritz GrobeとStephen Voltzを招いてChallengeというコンテストを開始していた。そして、10月30日、RevverとGoogle VideoでExperiment #214が公開され、Googleだけで約320万回視聴されるヒットとなった(視聴回数は12月12日時点)。
参考:Crowdsourcing
参考:Coca-Cola Challenge
Koppが語るようにBlogやSNSをブランディングプロモーションに使うリスクとリターンがある。それは何を書かれ、言われ、何が多くの人々に伝播、広がっているのかブランド側でコントロールできないからだ。Cokeのような企業でもMentosの対応、Experiment #214の実績を見た後でなければ、なかなか踏み出せなかった理由もわかる。
しかし、Cokeはそのリスクとリターンを天秤にかけた結果、バイラルビデオを積極的に推進し、今年のホリデーシーズンのキャンペーンに取り入れてきた。そこにあるのは、やはり、トップダウン方式のマーケティングではなく、ボトムアップ・グラスルーツ方式のマーケティングに変えていかなければならないという判断ではないだろうか。コントロール不能のCGMによりブランドイメージを損なうリスク、CGMという新しいプラットフォームでブランドを生かすことによるリターン、そして既成メディアを凌駕する市民メディアのパワーを活用するメリット。その他、既存マーケティング戦略との調整、Webサイト改修・管理、ユーザDB構築など等、コスト面やその他を検討した結果が「Wishcast」になったわけだ。
さて、Cokeの判断、戦略を側面から支援、補強するデータがある。これはKeller Fay Groupが出している「Single Souce WOM Measurement」という調査データだ。
人々がブランドについてどう言っているかを調査したところ、消費者の62%はブランドに対して肯定的なコメントを発している。否定的な10%の6倍もの消費者は、使いやすいとか、格好いいとか、可愛いとか、長持ちだとか、とにかく良い点や気に入った点をクチコミするのだ。業界別ではCPG(Consumer Packaged Goods)が特に肯定的で、最も肯定的ではないのは通信機器だそうだが、平均すると消費者は否定的なコメントよりももっと肯定的なコメントを発している。
Source:Keller Fay Group LLC / Single-Source WOM Measurement
どのようなグローバル企業にしても、否定的なコメント、クチコミ、悪評はあるだろう。しかし、ユーザビリティ、機能、価格、サポートなどでユーザの信頼を勝ち取ってきた企業が、一部の全否定主義者を恐れることはない。それに数十倍するファンがブランドを広めてくれるのだ。
また、すでに企業がコントロールしようが、しまいが、消費者・ユーザはブランドを取り込んだコンテンツを製作し、発信、共有、交換、普及している。もう誰も止めることはできない。この現状に目をつぶり、殻に閉じこもったままで過ごすのか、新しいブランドマーケティングの核として取り組んでいくのか、戦略が問われている。
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