デジタルメディアがどのように消費者の購買判断に関与しているかを明らかにするDoubleClickの調査データ、Touchpoints IVが出ている。
この調査は過去4年にわたり、消費者の購買判断を決定するプロセスに影響する様々なメディアとファクターを特定し、定量化してきた。重要な点は明らかに、Webサイト、検索エンジン、広告、Email、専門家や消費者自身の評価といった広範な形を取るインターネットが、最初の認知から最終的な判断決定までのプロセスにおけるすべてのステージで高い影響力を及ぼしていることだ。
事実、オンライン、オフラインの両方での購買にWebがどのファクターよりも影響を及ぼしているとしている。
消費者購買漏斗のキーステージ
初期認知、情報収集、購買判断という製品・サービスの購入意思決定プロセスの全てで企業Webサイトがもっとも影響している。これは前回、3回目のTouchpoints IIIの結果と同じだ。
Webサイトは購入決定に最大の影響
18%が新しい製品やサービスを購入する際、Webサイトでの調査がもっとも購入に影響したと回答している。製品やサービスをショップなどで実際に見たという15%よりも高い影響力を及ぼしていることがわかる。3番目にWOM (クチコミ) が入っているのが注目される。
消費者はオンライン広告をクリックするよりもショップやWebサイトへ行く
67%がオンライン広告を認識し、ショップなどで実際にその製品を見ると回答している。また、61%はオンライン広告を認識し、クリックスルーではなく、後でビュースルー(その時点で広告をクリックせず、後で直接広告主Webサイトへアクセス)するとしている。
オンライン広告をクリックすると回答したのは30%で、ビュースルーはクリックスルーの2倍に達している。DoubleClickは、実際の多くのキャンペーンでの結果と同じだとしている。
消費者は初期認知時よりも、調査時のソースとして広告に価値を見出す
例えば、回答者の0.75%はラジオ広告を最初に製品を知ったタッチポイントとして挙げ、3%が製品をより知ろうとして使ったタッチポイントしてラジオを挙げている。このことは、製品を初めて知ったタッチポイントとしてより、より知ろうとして使ったタッチポイントとしてラジオ広告を4倍も評価していることを表わしている。
この最初の認知時と次の調査時の比率差が大きなものを左から並べている。
同様に検索エンジンも初期認知時よりも、調査時に4倍の価値を見出している。3倍の価値があるのはセールスマン、そして2倍以上の価値があるのがWebサイトとオンライン広告となっている。
TV広告、WOM (クチコミ)、DMは初期認知時も、次の調査時にも同じような評価となっている。
しかし、絶対値から見ると初期認知時のトップは、実際のショップ、Webサイト、WOMが続き、調査時にはWebサイト、実際のショップ、検索エンジンが続いている。
Source:DoubleClick / Touchpoint IV : How Digital Media Fit into Consumer Purchase Decisions
さて、企業Webサイトは製品・サービス・ブランド情報の宝庫だ。企業のプロファイル、M&A、開発、海外展開網、Sustainability・CSR・Corporate Citizenship・Community、ニュースなど、ありとあらゆる情報が詰まっている。それは消費者も理解しているから購入目的の製品を調査する際、一番向かうのは企業Webサイトになる。そして最終的な購入判断にもWebサイトが最大の影響を与えているわけだ。
初期認知(露出)時にどのメディアであれ、タッチポイントであったとしても、そのブランド・製品・サービスなどが十分に認知、理解されていれば、情報調査時には企業Webサイトへ行くことになる。また、オンライン広告を露出された時点で興味がなくても、そのブランドなどが十分に認知、理解されていれば、後でWebサイトへアクセスする。だからクリックスルーよりもビュースルーするユーザ比率が2倍も高いことにうなずける。
どのメディアにしても露出がなければ、引き合いも、製品販売もない。露出による自然想起や他の複合露出などによる助成想起がなければ認知、理解されない。情報収集される候補にもならない。それだからこそビュースルーの前提はページビュー(PV)であり、投下したPI(ページインプレッション)、すなわち露出量ということになる。露出することによりクリックスルーも、ビュースルーも生成されるわけで投下するPIがすべての起点、初期認知ということになる。オンライン広告効果の本質は、クリックスルーだけではなく、ビュースルーもあわせて影響を及ぼすPIだといえる。
最近はCTR (Click Through Rate) が低下することに不満を募らせる広告主もいるらしい。しかし、露出サイトに投下するPIはどれほどなのだろう。例えば、2005年のYahoo.comは3,000億PIを集めていた。単純計算すると月間で250億PIだ。1ヶ月キャンペーンでYahooに1,000万PIを投下したとしてもサイト全体の0.04%にしかならない。どこに出ていたのか分からないほどの露出量だし、これでは競合の膨大な露出の影に隠れてしまい、自然想起の種になるのも難しい。
オンライン広告に投下される膨大な露出に伍して期待するCTRを獲得するには、相応のPIが必要だ。相応のPIによる露出を蓄積していかなければCTRは生まれてこない。例えば、Dellは2003年Q4から2005年Q3までの2年間に約520億PIを投下、露出している。この膨大な蓄積された露出の上に2006年の露出がある。また、TVなどその他の媒体での複合露出もある。それを考慮せず、ほんの一握りにしか過ぎない露出量でCTRが低いと言うのは、他企業の露出を無視し、自社のオンライン蓄積量と露出量を過信している。
ところで最近、MicropersuasionでSteve RubelがAjaxやFlashなどによりページビューがカウントされないとして、ページビューに差し迫る危機という記事を書いている。GmailやGoogle ReaderなどのようにWebページの遷移なしでユーザがあれこれできるサイトの場合、ページビューはそれに適した測定方法を提供できない。GoogleやMSは、インタラクティブでページをめくる必要を減らすプラットフォームをプッシュしているし、ESPNやNYTはMyTimesなど独自のインタラクティブなプラットフォームを導入している。これから広告費を獲得するためページビューを代替する測定方法をみんなが探しまくる。お楽しみにと書いている。
ここがどうも理解できない。NYTのMyTimesにしても、GoogleのPersonalized Homeにしても見出しを呼び込んできてはいるがコンテンツへのアクセスはオリジナルサイトへアクセスすることになっている。
Google Readerにしたところで、Expanded Viewにしても第一文節の40文字くらいまでしか表示していない。オリジナルコンテンツを読むにはクリックし、別ウィンドウを開くことになり、ページビューを生成することになる。また、「GoogleやMSは、インタラクティブでページをめくる必要を減らすプラットフォームをプッシュしている」とは思えない。
メディアサイトであるESPNやNYTがPVを減らすシステムを導入することは自分の首を絞めることになる。そんなことをするTV、新聞、雑誌社、ポータルサイトがいるだろうか。
Ajaxはページ更新をするためWebページ全体をリロードする必要性を減らしているだけだ。それがPV減少につながるとしているが、ユーザはリロードとは無関係に必要なコンテンツはクリックして消費し、PVを生成するだけだ。
PVが低下しているとしても、それはなにもAjaxやFlashによるものではない。既成メディアサイトへ行っていたトラフィックがSNSやBlogへ向かっているということだ。インターネットユーザが10億を超えたとは言っても、10月時点で5,700万を超え、半年くらいで総数が倍増しているBlogへ向かうトラフィックが増えているということだ。オンラインコンテンツが豊富となり、一部特定メディアサイトへ集中していたトラフィックが分散しているというだけだ。特に中小サイトであれば、SNSおよびBlogへのトラフィック影響を大きく受けて、PVが激減していてもおかしくない。
独立系最大手PR会社、EdelmanのSVPであるRubelの記事を、オンライン広告に比べ比率の低いPRに向けようとした意図だと変な邪推はしないが、彼の記事に納得がいかない。
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