2006/12/12

E-Press Release

先日、「Fair Trade」で今後のPRについて取り上げたので、実際のところ、欧米企業のE-PR (Press Release)はどのようになっているのかを見てみる。

下はMultiVuのMultimedia News Releaseのサンプルとして挙がっているGAPのプレスリリース例だ。
通常のボディテキストは左側、右側にMediaplayer、Real Player用のストリーミングファイルを配している。
下のほうへ行くと、画像ファイルのダウンロード、del.icio.usへの投稿ボタン、コンタクト先と、関連リンク先が表示されている。
基本的なE-PRレターのサンプルだ。少なくともこれくらいのアイテムがなければ、受信側でいろいろと手間をかけなければデータが集まらず、それだけ掲載される可能性が低くなってしまう。

ただし、この例にしたところで、担当者の電話番号しか記載されておらず、Emailアドレスや企業BlogのURLもない。メールで転送させるボタンもないし、ストリーミングはユーザ個人で完結してしまい、YouTubeでバイラル化することもできない。折角、GAPのブランドクリエイティブディレクターやマーケティングのVPが顔を出し、その意図や目的を語っている価値が半減している。もったいない。

次に、Edelmanが提唱するソーシャルメディア版のニュースリリースを作成するStoryCrafterというプレスリリースウィザードを使ったニュースリリースを見てみる。
まず、Edelmanは、コアニュースファクト、引用、マルティメディア、リンク、RSSフィード、リソース、Technoratiタグ、発信者説明、コンタクト先、トラックバックとコメントという10アイテムを列挙している。
  • ニュースのコアとして、リンク付きで会社名、Wikiのタグ、Technoratiのタグ、開発部署、StoryCrafterのベータテスターなどを紹介
  • 引用

  • マルチメディアとしてPodcast、ベータテスト風景、StoryCrafterのスクリーンショットなどをリンク
  • リンクとしてGoogleグループ、Yahoo!グループへリンク
  • RSSフィードとしてEdelman自身のRSSフィードとTechnoratiのタグフィードをリンク

  • リソースとしてdel.icio.us、およびDiggへリンク
  • TechnoratiのEdelman、ソーシャルメディアニュースリリース、SMNR、ニューメディアリリースタグへリンク
  • Boilerplateとしてニュースリリース発信者を明示
  • コンタクト先として、電話、Emailアドレスを明示
  • トラックバックを明示し、コメント追加機能を提供
参考:PRNewsWire / Multimedia News Release Sample Page
参考:Edelman / Social Media News Releases
参考:Fair Trade

Edelmanはソーシャルメディア版ニュースリリースを、「ハイパーリンク、ソーシャルブックマーク、マルチメディア、コメントやトラックバックという ソーシャルメディア機能を搭載することで、従来からのニュースリリースと新しい通信フォームを合体させ、橋渡しを行う次世代ニュースリリース」としてい る。

さて、Edelmanのものは上記リンク先のコメントにもあるように現在、使われているものを全て集め、体裁よく配置しただけだが、アイテムとしては利用可能なものを網羅しており、雛形としてこれで不足はない。

紙、あるいはpdfベースで海外広報活動をまだ行っている日本のグローバル企業と、欧米企業とのオンラインPR露出ギャップはオンライン広告露出のそれよりも大きく、PRギャップは解消する糸口さえないのが現状だ。RSSフィードもなく、Podcastもなく、Webinarもなく、一時代前といわざるを得ない文字情報の提供だけでは、世界中のステークホルダーの情報収集網からこぼれ落ちてしまっている。情報を既成メディアに提供するのではなく、既成メディアに加え市民メディアにも受信、転送、発信してもらう仕組みを活用している欧米企業のトレンドも無視されているかのようだ。

今年のANA総会では「使い古されたトップダウン方式のマーケティングではなく、ボトムアップ、グラスルーツ方式のマーケティングへ変えていかなければならない」という声が溢れていた。この動きを加速させたのは、メディア消費を一層変革しつつあり、メディアを支配し、情報を垂れ流してきたブランドによる消費者支配にも影響を及ぼしているSNS、Blogといった市民メディアだ。

ブランド支配が消費者の手に移りつつあるように、PRも企業が一方的な出し手であり、そのフォームも十年一日変わらないといった形では情報を受け入れてもらい、消費してもらうことは難しく、世界中のステークホルダーに説明責任を果たすことはできない。

参考:Letting Consumers Control Marketing : Priceless
参考:Infection、Endemic and Pandemic

0 件のコメント: