IHG (Intercontinental Hotel Group) といえば、日本ではホリディ・インとか、溜池にあったANAホテルを買収してANAインターコンチネンタルホテル東京としたことなどを思い出す。
「Online Hotel Booking and CEO Blogging」で、comScoreのオンラインホテル予約額データを紹介した中で、IHGも前年比0.4%増で健闘しているホテルグループのひとつだ。
そのIHGが、今年4月にバイラルなマーケティングプロモーションを実施した。ただし、これはロイヤルティの高い顧客のアドボカシー効果をテストするためのもので、本格的なバイラルキャンペーンというよりもトライアルの性格が強い。
IHGのプライオリティクラブに参加している4,000万人の中から、もっともアクティブにホテルを利用している130人、そしてもっとも利用していない20人、合わせて150人にキャンペーンemailが発送された。5月1日から6月15日までに、インターコンチからホリデイインエクスプレスまでのIHGグループのホテルに3泊すれば3ポイントが与えられるというものだ。本人に送られるキャンペーンの優待券に加えて、家族・友人や知人へ転送できる3本の優待券もつけられていた。
さて、この150人へのバイラルキャンペーンの効果はどんなものだっただろう?
参考:
Online Hotel Booking and CEO Blogging (Online Ad 2008/06/06)
IHGには「Social Marketing Manager」という職種がある。Cassandra Imfeld Jeyaramがそうで、彼女によると、このキャンペーンの目的は「もっともロイヤルティの高い顧客が、旅行コミュニティ内でのインフルエンサーかどうかを確認するため」だった。
結果として、「旅行業界でも、ストーリーを語り、経験を共有し、喜んでキャンペーンに参加する」インフルエンサーはいたし、その影響力は大きなものだった。
バイラル(トライアル)キャンペーン結果:- キャンペーンemail受信者は平均17人に転送
- 4,200室の宿泊予約獲得
- プライオリティクラブメンバーは720万ポイントを獲得
- キャンペーンはあっというまに30カ国に波及(サウジアラビア、シンガポール、リトアニア、マレーシアなど)
- 6週間で25万㌦の売り上げ増
メンバーがゲットした720万ポイントがいくらのコストになるかは知らないが、たった150人へのemailキャンペーンで25万㌦の売り上げ増というROIは驚異的だ。
Source:
1to1 Media / Intercontinental Hotels Mines Customer for Advocacy人、ユーザ、顧客がメディアとしてコンテンツを広めてくれる。特に米国で開始されたキャンペーンが海外の友人・知人、あるいは会社の関係者に広がっている。ホテルの優待クーポン券だからというわけではない。コンテンツに言語は関係ないのだ。
アドボカシー的にも、インフルエンサー的にも、自分にとって、友人・知人、関係者にとってメリットがあるのか、ないのかだけだ。その意味のある、メリットのあるコンテンツを家族・友人・知人、会社の同僚・上司・部下、業界の関係者に知らしめることに意味があるだけだ。
しかし、ここにLingua Francaが出てくる。サウジアラビア、シンガポール、リトアニア、マレーシア、あるいはその他の国に転送されたコンテンツの言語が、Lingua Francaではない場合、ここまでの地球規模での露出拡散はありえない。
そして、このキャンペーンに広告ビークルはない。企業と顧客の間に仲介する存在はない。
参考:
The End of Advertising (Online Ad 2008/08/29)
最後に
- Kodakには、Chief Bloggerがいる
- Dellには、VP-communities and conversationsがいる
- IHGには、Social Marketing Managerがいる
日本の企業に同様の職種はいつになったらできるのだろう?
参考:
VP and Chief Blogger (Online Ad 2008/06/17)