2009/06/24

Visit Japan 2009 -3

今まで2回にわたり、Visit Japanキャンペーンを取り上げてきた。

参考:Visit Japan 2009 -1 (Online Ad 2009/06/22)
参考:Visit Japan 2009 -2 (Online Ad 2009/06/23)

ポイントは
  • オンライン露出による効果がWebトラフィックや検索実績につながっていない
  • YouTube(ソーシャルメディアスペース)での一方的な露出がコンテンツの消費、共有、拡散、再露出につながっていない
ということだ。この理由はソーシャルメディアが今までの常識や仕組み、機能や評価基準を変革しているのにも関わらず、出来合い、一方的な押し付けコンテンツの消費を促そうとしているからだ。

Visit Japanキャンペーンは訪日外国人旅行者を増やすのが目的だ。しかし、訪日してもらうために日本の良さ、美しさ、伝統、自然、人々を知ってもらうだけで良いのか?一方的にコンテンツを供給し、旅行パッケージをつくり、業界関係にプロモーションし、それに乗ってもらう形で良いのか?

これまでのメディア戦略、マーケティング戦略が、Web2.0と言われてから久しいオンラインにも通じるだろうか?

私たちが一番納得するのは、知人・友人・家族・同僚など「Someone like me」からの話、アドバイス、推薦、WOMだ。これはB2Cでも、B2Bの製品・サービスの購入決定でも同じだ。行ったことがある、使ったことがある、見たり聞いたりしたことがある知識・経験に勝るパンフレット・カタログ・案内書や提案書はない。そしてオンラインWOMが対面WOMに浸透している今、その知識・経験を語ってもらうことこそメディア戦略、マーケティング戦略となる。

さて、CouchSurfing(CS)というWebサイトがある。(クリックでサイトへ)
CSは世界中に約120万人の会員を抱え、会員が世界中を旅行する際、会員同士でその宿泊場所を無償で提供したり、土地のガイドを提供したり、会員の友人たちと一緒にイベントに参加したりと、人々の国際的なネットワークを構築し、その国の伝統・文化の理解、総体的な意識向上、相互理解を促進するコミュニティ、非営利団体だ。

その中に「Lupo Solitario」というイタリア、トリノ在住の会員がいる。(クリックで彼のプロファイルへ)
彼自身のプロファイルに加えて、彼が所属しているCSのグループ(例えばトリノ、ギリシャなど)、彼が旅行した国、彼の友人になっている会員、彼の家に宿泊させてもらった会員からの推薦などがある。20件のレファレンスをすべて紹介するわけにはいかないが、UK、ポーランド、仏、スウェーデン、米から訪れた会員たちは口をそろえて彼の「もてなし」に感謝している。CSの会員であればこのプロファイルページから彼に直接メールして宿泊を依頼したり、コンタクトとして登録したり、メモしたりできる。

CSのミッション、「Lupo Solitario」という会員、彼の「おもてなし」や世話になった会員の生の声、これこそがVisit Japanキャンペーンが提供すべきスペースであり、コミュニケーションであり、機能だ。

そう考えれば
  1. 訪日したことのある外国人に「Visit Japan」のアドボケーター、サポーター、ブランドアンバサダーとなって日本を紹介してもらう
  2. ソーシャルメディアスペース、そしてそのユーザの助けを借りる
ということになる。つまり;
  1. 訪日したことのある外国人に日本を語ってもらえるスペースを複数用意する
  2. その複数スペースへの参加(あるいはコンテスト参加)を呼びかける告知をする
  3. その複数スペースに彼らと「Visit Japan」の共有できるコンテンツを混在させてもらう
  4. 彼らとオープン、対等に会話する
  5. 彼らのオンライン・コネクションからコンテンツの露出、消費、共有、再露出を行わせてもらう
  6. 複数スペース間のリンク、コンテンツを共有してもらう
ということだ。

実行するためにはインセンティブも必要だし、専従者も必要だろう。しかし、何をおいてもしなければならないのは、マインドセットをシフトすることだ。それなしには、どんな施策を行ったところでうまく行かない。と言うか、マインドセットのシフトなしに施策はできない。

UnileverのCMO、Simon CliftがMarketing Weekの6月17日のコラムで、「Digital era redifines brand identity」を書いていた。

本論に入る前の枕で彼はデジタル社会を、「我々多くの人間にとって、変革のスピードはブランドの管理者が追随する能力を大きく上回っている」と描写している。

また、「昔のトップダウンの世界では、一方通行のコミュニケーションを用いて、企業が消費者に聞いてもらいたいものを聞かせ、消費者はそれを受け入れるか、受け入れないかの選択しかなかった。しかし、透明性を備えた新しい世界は、およそすべての事柄に関して詳細な情報が驚くべき量ですぐ手に入る」とも語っている。

彼がここで言っている「詳細な情報が驚くべき量ですぐ手に入る」のは、マスメディアが供給するコンテンツだけではない。企業・ブランドがマスメディア経由で供給する聞かせたいコンテンツに数倍、数十倍するほどの量に達する消費者・顧客がブランドを語っているコンテンツもある。そして、このコンテンツが世界中のソーシャルメディアスペースで消費、共有、拡散されている。

Source:MarketingWeek / Digital era redefines brand identity

マインドセットを変えない限り、ソーシャルメディアスペースのユーザに受け入れてもらうことはできない。

日本企業・ブランドが世界中に渦巻くソーシャルメディア旋風に無策の今、「Visit Japan」キャンペーンには、是非とも、ソーシャルメディアを活用し、2010年までに1,000万人の訪日を実現してもらいたい。

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