参考:Visit Japan 2009 -1 (Online Ad 2009/06/22)
YouTubeの話へ行く前に、昨日開催されたVisit Japan Year実行委員会(第一回)に触れておきたい。
「2010年に外部環境が改善した際に確実に外国人旅行者を獲得すべく、またVJCの一つの区切りとして日本全国の機運を盛り上げるべく、2010年を 「Visit Japan Year」(VJY)として位置付け、訪日外国人向け集中キャンペーンの設定等を行い、民間企業、自治体、関係省庁等との連携により、なお一層の外国人旅行者の誘客促進を図ることとしております」とのことで、取り組み内容を検討する実行委員会が開催されたわけだ。
内容は以下の通り。
外国人向け集中キャンペーン用のプロモーションとして、
- 海外プリント媒体+OOH広告(オープン懸賞広告検討)
- 旅行博における情報提供
- 専用Webによる情報提供
- ガイドブック作成
どうやらオンライン広告やオンラインマーケティングは念頭にないようだ。
今、訴求ターゲットが消費しているコンテンツ、メディアは何なのかという理解がないと、読者が減り続ける媒体に広告を出稿し、消費も共有も、そして拡散もしてくれないコンテンツ・情報を提供することで終わってしまう。
ただし、今後のダイレクトプロモーションの基礎を構築し、「2020年、(訪日外客)2000万人に向けた基礎インフラとして活用」するため補正予算で約9.3億円が計上されている。「日本ファン層データベース整備事業」に7.3億円、「在住外国人を活用した親族・友人の呼び寄せ促進事業」に2億円が当てられている。旅行関係Webサイトに広告を出稿し、懸賞つきアンケートを実施し、200万人分のEmailアドレスを獲得したうえで、Visit Japan Community(仮称)を開設し、掲示板投稿、口コミ発信を考えているようだ。
しかし、これは2020年に向けての施策であり、2010年までになんとしても実現しなければならない1,000万人の助けにはならない。また、旅行関係Webサイトという縦割りマーケティングの壁を乗り越えて、200万人分の日本ファン層のEmailアドレスを懸賞広告だけで獲得できるかどうかは不明だ。
Source:観光庁 / 「Visit Japan Year」実行委員会(第一回)を開催!
Source:観光庁 / Visit Japan Year 概要 (pdf)
Source:観光庁 / 平成21年度補正予算 (pdf)
さて、YouTubeだが、今のところチャネルのSubscriberは1,893人、チャネル自体の視聴回数は10万回を超えたところだ。数値は6月21日時点。(クリックでチャネルへ)
このチャネルには194本のビデオがあり、最も視聴されたのは去年5月にアップされた新しい「Yokoso! Japan」で、16万回を超えている。(以前は小泉さんをフィーチャーした「Yokoso! Japan」などもあった)
これに対するVisit Britainのほうは2009年の2月にチャネルを開設したばかりなのでまだビデオは37本、Subscriberは95人、チャネル視聴回数も1,953とこれからだ。
YouTubeはもちろんソーシャルメディアの中心をなすサイトだ。ここから共有機能を使えば自分のBlogに貼り付けたり、友人にemailしたり、SNSのプロファイルに追加することも、ソーシャルブックマークすることもできる。
ただし、「Visit Japan」が先手を取り、「Visit Britain」を大きく引き離してはいるが、「Visit Britain」サイトへのトラフィックが「Visit Japan」へのそれを大きく引き離していること、そして検索実績も同様なことからすると、YouTubeを起点とした「Visit Japan」コンテンツの露出拡散、共有はサイトへのトラフィック誘引や検索誘発の面ではあまりうまく機能していないようだ。
参考:Visit Japan 2009 -1 (Online Ad 2009/06/22)
さて、下は「Intel:Sponsors of Tomorrow」で紹介したIntelがYouTubeに持っているチャネルだ。(クリックでチャネルへ)
参考:Intel:Sponsors of Tomorrow (Online Ad 2009/05/20)
今後3年間ブランドキャンペーンを計画し、膨大なマスメディア露出を開始したIntelと、Visit Japanのチャネルでは、Subscriber数やビデオ視聴回数の桁が違う。そんな比較は無意味だと考えられる方が多いだろうが、この2つのチャネルの差異の本質はそれではない。
多分、2006年にYouTubeにチャネルを開設して以降、YouTubeのインタフェースが変更になった際、Privacy設定機能を使っていない(と思われる)Visit Japanのチャネルは「Connect with」「Playlists」「Videos」セクションしか設けられていない。しかし、チャネルに「Recent Activity」「My Recent Ratings」「My Recent Comment」「Favorites」「Subscribers」「Friends」セクションを装備しているIntelとの差異は、途方もなく大きい。
- 定期的に更新したコンテンツを「さあ、見ろ」と一方的に供給するVisit Japan。
- チャネル管理人が行った「コンテンツ更新」、「お気に入りのビデオ」、「友人になったチャネル・サイト」の行動履歴を表示し、「評価したビデオ」、「コメント」などで「チャネルの顔」が見えるアプローチをとるIntel。
- そしてユーザから「お気に入り」をもらったビデオや、チャネルの購読者(Subscribers)や友人として登録したユーザを紹介するIntel。
こんな単純明快なルールだが、それを踏襲しない限り、ソーシャルメディアスペースにおけるYouTubeはコンテンツ消費スペースとしてしか機能しない。どんなに爆発的に視聴回数が増えたところで、YouTubeだけに留まることになり、他のソーシャルメディアスペースでの露出拡散は非常に限定的だ。Visit Japanの新しい「Yokoso! Japan」にしたところで16万回以上も、ただ視聴されただけで外へ広がっていかない。
「Extreme Sheep LED Art」を思い出してほしい。
直近ではSamsungのバイラルビデオは約900万回も視聴されているが、それだけではない。バズが発生したころを見計らってSamsung USAに登録しているユーザにはemailニュースレターが発信されていた。そしてニュースレターにはDigg、Facebook、LinkedIn、MySpace、Twitterなどのツールを活用したソーシャルメディア対応がなされていた。ここには、YouTubeで視聴されるだけに終わらせない仕組みがある。
参考:Extreme Sheep LED Art (Online Ad 2009/03/24)
参考:Samsung LED TV Campaign (Online Ad 2009/04/16)
Source:ViralVideoCharts / Extreme Sheep LED Art
Visit Japanのソーシャルメディア対応は修正すべき箇所がある。それは広告を出稿したり、コンテンツを一方的に供給するだけの体制では不十分だということだ。コンテンツを露出するだけでは、また供給側がソーシャルメディアスペースへ参加しないのであれば、コンテンツ消費も共有も起こらず、拡散もなく、Webトラフィックも検索実績も増えないということだ。
コミットメントである「1,000万人の訪日外客を実現する」2010年が来年だというVisit Japanキャンペーンには、Intelのように大がかりのクロスメディアキャンペーンをする予算的、時間的余裕もなく、残された選択肢が少ない。それにも関わらず、膨大な予算をマス(レガシー)メディアに投下して一大キャンペーンを行うのか、それとも多様なソーシャルメディアスペースを最大活用し、ソーシャルメディアスペースの相互連携からコンテンツ露出を拡散し、コンテンツ消費、共有を行ってもらうのか?
YouTubeにおけるIntelの単なる物真似だけにはならないソリューション提示は次回へ。
0 件のコメント:
コメントを投稿