2008年(注)にISOはSR(社会的責任)ガイドラインをリリースする予定だ。これによって、共通理解と社会的責任に対する自発的なコミットメントと、社会的責任の概観、定義、評価方法などのガイドラインを提供することになる。
- それに先立ち、1999年に国連のアナン事務総長が提唱したGlobal Compact (GC) は、現在、全世界で3,810の団体、企業、都市などが参加している。人権、労働、環境、そして途中で追加された腐敗防止の10原則を掲げ、「各企業に対してそれぞれの影響力の及ぶ範囲内で、人権、労働基準、環境に関して、国際的に認められた規範を支持し、実践するよう要請」している。
- その後、ISOで企業の社会的責任の標準化が持ち上がり、水面下でGCとISOで綱引きに近いやり取り、多分主導権の取り合いが行われていた。GCは自己申告制だから、評価にまで踏み込めていなかった点が弱かったし、ISOにしても標準化ビジネスを推進することでの巨大化を危ぶむ声も出ていた。最終的に双方が歩み寄り、どちらの顔も立てて折衷案に持ち込んだように見られる。
そしてGCは、ISOの標準化作業に対してコメント、ワーキンググループへの参加を通したコラボレーションを提供するとしている。
Source:LOHAS Newsletter
Source:Global Compact / GC and ISO sign Memorandum of Understanding (pdf)
参考:グローバル・コンパクトの10原則
ところで、ISOのプレスリリースを見ると、GCのpdf内容と違い、ISO 26000のターゲットは2009年第一四半期となっている。まだ、GCとISOの共同作業はうまく機能していないようだ。
(注):ISO / Press Release
ISO 26000により、メセナでもなく、コーポレートガバナンスでもなく、国際標準化機構による評価をベースとしたお墨付きがついた新しい企業価値が作られることになる。そしてこれが当然のごとく、全世界のステークホルダーの評価ベースとなっていくだろう。
話はちょっと遡るが、2004年にEUとEABIS (European Academy of Business in Society) が開催した「"Business Case For CSR: Reflections On Research and Experience"」というセミナーがあった。これはCSRは持続可能な開発に貢献し、競争力を後押しし、ビジネスの財務状況を改善することにより、CSRがビジネスとして成り立ち、ビジネスに必要な戦略であることを、業界横断のマクロレベルの解析や、企業レベルのビジネスケースから説明したものだ。
プレゼン資料の中からいくつか拾ってみる。
- Shell
SD (Sustainable Development) レンズを通してみると、7つのブロックが見えている。
CSRは人材、効率化、リスク低減、革新、ポートフォリオ、顧客ロイヤルティ、ブランド評価の7ブロックに効果があるとしている。
- Unilever
CSRは、事業継続の許認可、ブランド構築・評価、人材、行政介入最小化、リスク管理強化に役立ち、ビジネスの可能性を創造するとしている。
- Dow Jones Sustainability IndexDJSIに組み込まれた株価と、それ以外の株価推移を見れば一目瞭然に、CSR貢献を評価されている企業群の株価は高評価となっている。
Source:Shell Input
Source:Unilever Input
Source:Investors and the Business Case
プレゼンに参加した企業はどこも、CSRに倫理的なメセナやコーポレートガバナンスの影や形もなく、ニュースビジネスの可能性や、ブランド評価、質の高い人材募集、顧客ロイヤルティなどを掲げ、高株価による企業価値向上を訴えている。
また、以下のようにCSR 06 「How Does CSR Affect Brand Reputation?」というセミナーが、先週の11月23・24日の両日、ロンドンで開催されたばかりだ。その内容も、以下のように非常に実践的なものばかりだ。(詳細はバナーをクリック)
- 顧客に企業を信頼させるものは?
- CSRをいかにブランドに組み込んで行くか?
- どのようにCSR、ブランド評価、企業戦略をリンクさせるか?
- CEOを活用したCSRメッセージ強化策
彼らが様々なメディアチャネルをどう活用するとしても、幹細胞として使われるのはインターネットだ。ボーダレスでユビキタスのネットワークを活用した情報発信、共有、交換、転送などによる累積露出を獲得するオンラインでのブランドマーケティングが実施される。
昨日取り上げたSunのCEO、Schwartzではないが、例えば人間味溢れ、顔の見えるCEOのオンライン露出が様々なオンラインメディアを通して世界へ波及する効果は計り知れない。
さて、日本のグローバル企業はどこまで、このCSRマーケティングに対応することができるだろうか。
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