2010/02/26

Digital Agency vs. Full Service Agency

RSW/USから「2010 Client's Perspective on Agencies Survey」が出ている。

一般的に考えて、フルサービス代理店のデジタルマーケティング・広告スキルをクライアントに評価させている。乱暴だが、10段階に分けた10~8を「大変良い」、7~5を「良い」、4以下を「ダメ」とした場合、フルサービス代理店の28%は赤点をもらうことになる。
過去3年間でクライアントの予算は、30%以上レガシーからデジタルへシフトしているのが66%にも達している。20%シフトしたのは17%、10%シフトしたのは15%だ。デジタル予算を取っていないのはたった1%(どんな企業なのだろう?)。
これだけクライアント予算がデジタル化してきた現在、代理店はクライアントの現状、戦略、方向性などを理解する必要がある。

クライアントが代理店を決めるポイントの上位には
 69% クライアント企業の方向性理解
 68% 市場動向理解
 66% クリエイティブ
 60% 新規提案
が来る。
デジタル化し、ソーシャルメディア化する市場環境にあって、レガシーマーケティング、レガシー広告の効果が希薄化し、ROI低下に悩むクライアント企業に対して、デジタル化せざるを得ないクライアントを理解し、市場・業界動向を把握した上で、新しいクリエイティブや新しい提案を行う必要が代理店にはある。この新しい提案が、レガシーマーケティングや、レガシー広告になるだろうか?あるいはソーシャルメディアを考慮しないレガシーマーケティングや、レガシー広告をオンライン化しただけのものになるだろうか?

最初の図にある赤点をもらっている28%のフルサービス代理店は、予算の30%以上がデジタル化しているクライアントの現状や方向性に沿って、自身の売上構成もデジタル化していないのだろう。デジタル化した上でのビジネスモデル構築が遅れているため、レガシーマーケティングや、レガシー広告しか提案していないのかもしれない。

しかし、クライアントが新規に代理店を決める際、最も影響を受ける上位3つのうち、2つは推薦だ。
 38% 同僚からの推薦
 37% 代理店からのタイムリーなアプローチ
 34% 他企業のマーケターからのアドバイス・推薦

特に、「他企業のマーケターからのアドバイス・推薦」が34%も占めている。 もう、フルサービス代理店が時代遅れの提案をしていても、クライアント側で様々なコンタクトから最新情報を仕入れている。

レガシーマーケティングや、レガシー広告ではない新しい提案が求められていることは間違いがない。
Source:RSW/US / 2010 Client's Perspective on Agencies Survey

2010/02/25

Trust + Recommendation = Success

Millward Brownから「Beyond Trust  Engaging Consumers in the post-recession world」というレポートが出ている。

企業に対する「信頼」だけではもはやブランドの成功は成り立たない。特に、懐疑的で貪欲でもない消費者が多い不況下の世界では。ブランドが成功するためには...?

ということで、「Trust + Recommendation = Success」という方式、TrustRスコアを提案している。TrustRスコアというよりも、「Trust + Recommendation = Success」という方式に注目したい。
企業が営々と築きあげてきた顧客からの「信頼」をより強固にし、拡張、あるいはその信頼を共有してもらう「推薦」、すなわち「クチコミ」がなければブランド価値も意味がない。これは、別に不況下であろうと、バブル期であろうと関係ない。

ブランドと顧客、消費者との絆を固く結びつけるものは、価格でも、機能・仕様でも、セレブを使った広告キャンペーンでもない。友人・知人、家族や同僚であ れ、その人間がそのブランドを評価・判断し、相手にその価値を伝えようとすることにブランドの信頼があり、ブランドの価値があり、第三者を介して固く結ばれることになる。その「推薦」、「クチコミ」 がなければブランドの成功は成り立たない。

「Trust + Recommendation = Success」、TrustRスコアの各国トップブランドは、
  • 10倍も平均的なブランドよりも絆が強い
  • 7倍も平均的なブランドよりも購買される可能性が高い
とそうだ。
Source:BtoB Online / FedEx, UPS are top trusted b-to-b brands
Source:MillwardBrown / Beyond Trust (pdf)

「推薦」や「クチコミ」を広めるマーケティングが行われているが、善意の第三者を介しないマーケティングは意味がない。逆に痛くもない腹を探られるのが関の山だ。善意の第三者を増やすことにこそ意味があるが、「推薦」や「クチコミ」を広めることがマーケティングの本質ではないし、大きく目的からそれてしまう。

善意の第三者を増やすための広告、広報、マーケティングをするには、企業・ブランドがオープン、対等、双方向でエンゲージしなければならない。エンゲージして信頼してもらわなければならない。自分の声を聞いてくれる存在であることをアピールしなければならない。信頼するに足り、聞く耳を持つ企業・ブランドであることを理解してもらわなければならない。

しかし、エンゲージするためには顧客、消費者、ユーザがどのような評価、判断をしているかをまず知らなければならない。

ところがモニタリングしていないブランドが46%もいる。やっている39%もフリーツールだ。何が拾えて何が拾えていないかもわからないフリーツールではモニタリングしていないのも同じだろう。39%はやっているだけましだが、46%のブランドは「信頼」+「推薦」=「成功」という方式には乗れない。
Source:Econsultancy (有料コンテンツ)

2010/02/24

Social Media Power of Samsung & LGE Customers

2009年Q3に世界中で販売されたTV(ブラウン管TVを含む)のトップシェアはSamsungで21.9%、LGEが12.9%だ。この2社に日本メーカー3社が続いている。

Twiceが伝えていたDisplaySearchの予想では2009年、LCD TVの年間出荷台数は1.27億~1.3億台だそうなので、上のシェアをそのままLCD TV出荷台数に乱暴に引用すると、Samsungは約2,860万台、LGEは約1,690万台を販売することになる。
そして2009年Q2の携帯出荷台数は合計で2.696億台、シェアトップはNokiaで1億台以上を出荷して38.3%を占めている。が、それに続くのはSamsungが5,230万台で19.4%、LGEが2,980万台で11.1%となっている。韓国の2社シェアはその他を除き唯一前年比アップしている。
2009年通期の出荷台数も乱暴にQ2の4倍、約10億台とし、Q2のシェアをそのまま通期シェアと仮定するとSamsungは約3.8億台、LGEは1.9億台ということになる。

Source:DisplaySearch
Source:Twice / DisplaySearch Hikes LCD TV Unit Forecasts
Source:MocoNews

乱暴な話だが、Samsungは2009年にTVと携帯電話で約4億人以上、LGEは約2億人以上の顧客を獲得したことになる。

これら膨大な顧客は、インターネットユーザであり、SNSユーザ、Blogユーザ、FlickrやTwitterユーザでもある。こういったソーシャルメディアスペースに参加するユーザが自分の日常生活や学校、職業に関すること、興味のあるトピック、そしてブランド関連コンテンツを共有している。このコンテンツ共有ネットワーク、コネクション、リレーションズに参加する人々がブランドWOMを拡散している。

そう考えた場合、1年間に4億とか2億といったサイズの顧客を獲得する両社はとてつもない可能性を抱えていることになる。例えば、2007年と2008年の販売台数=既存顧客数を合算すると10億とか5億超といったサイズになる。このサイズのソーシャルメディアスペースのユーザが一斉にブランド関連コンテンツを発信し始めたとしたら...!!!

これら既存顧客をブランドアンバサダーとして活動してもらうマーケティングを考えると夜も寝られない。

2010/02/23

Mobile SNS

以前、Mobile Web Explosionを書いた。

参考:Mobile Web Explosion (Online Ad 2010/02/02)

その際、
この見たこともないような巨大ネットワーク、メディアとSNSが合体し始めている。
と書いたが、そのモバイルとSNSのつながりの一部を示してくれるデータがOfcomから出ていた。

2009年12月にリリースされた「ICMR 2009 Charts」によると、欧米6各国の中でモバイルSNSアクセスの最も高いのは英国で30.9%。すなわちモバイルユーザの30.9%、350万人がSNSへアクセスしている。次いで米国の30.1%、1,750万人、スペインが16.7%、110万人となっている。
Source:Ofcom / The International Communications Market 2009

そして、2月11日、Facebookのモバイルユーザは1億人を突破している。ユーザ数が4億人だから25%ということになる。

Source:Facebook Blog / 100 million and Growing

米英はモバイルSNSがモバイルユーザの30%を越え、世界最大のSNS、Facebookのモバイルユーザは25%を越えている。このモバイル率はこれからも一層上昇してゆく。

音声から、SMS、MMSへ移行する世界のモバイルユーザは、PCで慣れ親しんだSNSへも当然、アクセスすることになる。そして、In the field、On the moveというデバイス属性は通常メディアの域を越える。

モバイルコネクション、モバイルユーザ、そしてデバイス属性を意識したコンテンツクリエイティブ、コンテキスト、そしてまったく新しいアプローチ、コネクションが必要となる。今までのオンラインマーケティングを拡張したとしても筋違いになる可能性が高い、そんなスペースが待ち受けている。

2010/02/22

LinkedIn 2010

Dynamic LogicからAdReaction 2009というレポートが出ている。

様々な角度から、ブランド、消費者、ソーシャルメディアの結びつき、広告との関係などを調査したものだが、中からいくつか紹介する。

まず、Emailなどオンライン活動の参加度合いを見ている。95%のユーザが積極的に参加・利用するのはemailだが、ニュース・最新情報が76%、3番目にショッピングが来て、7番目、59%がソーシャルネットワーキングに積極的に参加している。これは音楽ダウンロードやBlogよりも高い。
ソーシャルネットワーキングの担い手はだれかと言うと、もう一部のアーリーアダプターやアーリーマジョリティだけではなく、レイトマジョリティの大半にまで及んでいる。下図のように年齢が上がれば上がるほど、2007年比で参加度合いが上っている。45-54歳の67%、55歳以上の55%というのは、ラガードの一部をも取り込んでいそうだ。
Facebook、Facebookと草木もなびく今日この頃だが、ユーザは何もFacebookだけにアクセスしているのではない。MySpaceにも、LinkedInへも行っている。2サイト以上アクセスしているユーザは44%もいる。
ただし、Facebookの優位は増すばかりだ。「6か月前よりもアクセス・利用が増えた+同じ」で見るとFacebookは93%。Twitterが90%に比べるとMySpaceは69%にしか過ぎない。
Source:DynamicLogic (pdf)

以降、DynamicLogicの資料は広告がらみのデータを上げているので、そちらはpdfを参照いただきたい。

上の図にある「Sites Visited」の三番目、42%のユーザがアクセスするLinkedInがある。そして、「利用頻度が同じ」で60%を上げているのもLinkedInだ。FacebookやTwitterに注目が集まるのは当然だろうが、LinkedInは見逃せない。

全世界200カ国に6,000万人のユーザを抱えるLinkedInは、単なる求職、求人募集サイトではない。Cレベルから中間管理職、同窓から専門職グループ、ソーシャルメディアマーケティングからバイオテックネットワークまで様々なプロが登録し、ネットワークを広げている。彼ら自身を消費者ととらえれば高学歴、高収入、そしてアーリーアダプター率が高いと見ることができる。彼らのネットワーク、コネクションに露出してゆくことは非常に意味がある。だからFacebook、Twitterだけではなく、LinkedInも同じ、あるいはそれ以上の評価をすべきだろう。

それは、以下のようにLinkedInのPress Coverageを見るだけでもわかる。

LinkedIn Can Be One of Your Most Valuable Traffic Sources, WebProNews, February 18, 2010

LinkedIn Lands In Microsoft Outlook, PCWorld, February 17, 2010

LinkedIn Quick Tip: Integrate LinkedIn with Outlook, CIO, February 17, 2010

How To Use LinkedIn From Microsoft Outlook, Business Insider, February 17, 2010

Video: LinkedIn Demos Outlook Integration, PocketLint, February 17, 2010

LinkedIn Connects with Microsoft Outlook, 901am, February 17, 2010

LinkedIn Now 60 Million Strong, TechCrunch, February 11, 2010

LinkedIn Quick Tip: How to Reorder Profile Sections, Computerworld, February 9, 2010

First Aid for Your Résumé, The Wall Street Journal, February 7, 2010

What's It Like Working For LinkedIn?, Business Insider, February 4, 2010

LinkedIn Offers Users Increased Control Over Profiles, WebWorkerDaily, February 2, 2010

LinkedIn Quick Tip: Should You Upgrade to a Paid Account?, San Francisco Chronicle, February 2, 2010

Source:LinkedIn / Press Coverage

2010/02/19

Indifference to Paradigm Shift

Don't be Oblivious to the Dangers of Human Traffickingというビデオが上っている。

UKのStartFreedom.orgが2月12日から始めているキャンペーンで、国際的な人身売買を禁止しようと呼びかけている。


もうひとつある。


なぜ、このビデオを紹介する気になったかというと、企業・ブランド、広告・PR・マーケティングエージェンシーなどが見て見ぬふり、無関心を装い、今までの平穏なビジネスを送る傍らで、彼ら自身のレピュテーション、ブランド価値、ブランドロイヤルティといたものを伝えるはずのマスメディアがズタズタ、ボロボロにされていると見えたからだ。ビジネスのコアを形成していたマスメディアが、ソーシャルメディアスペースからの狼藉者、乱暴者によって、その席、位置から引きずりおろされ、目の届かぬ所へ連れていかれて袋叩きにされるのが予想できたからだ。

そして、そのもぬけの殻になったスペースに今までと同じように教科書、テスト用紙、食器、グラスが並べられたとしても、その席にいるはずのマスメディアが今までと同じようにクラスや家族の一員を構成し、今までどおりの会話が成立し、楽しく幸せな生活を送ることはできないと思えたからだ。

俺には、私には、うちの会社には関係ないと、パラダイムシフトから目をそむけている限り、ある日、突然、侵入してきた暴漢がクラスや家族の一員を拉致し、地の果てに売り飛ばしたとしても分からない。そんな気がした。

2010/02/18

Mobile Olympic

先週、カナダ、バンクーバーでオリンピックが開幕した。

iTunesへ行くと公式観戦ガイドアプリがあり、
Yahooはモバイルサイトを立ち上げ、
米NBCなどもモバイルアプリを用意している。
オリンピックに関係する組織委員会、ポータル、TV局などがこぞってモバイルによる情報・コンテンツ配信を行っている。

この動きは当然だろう。Morgan Stanleyによれば、
  • モバイルインターネット市場はデスクトップのそれの2倍以上
  • スマートフォンユーザは5年間に3倍増、2008年の2.88億から10億へ
  • 今のところモバイルインターネット・トラフィックはデスクトップ・トラフィックの9年遅れ
  • 2009年~2013年の伸びは2000年~2005年のデスクトップの伸びを上回る
Source:Morgan Stanley / The Mobile Internet Report

Morgan Stanleyだけではなく各社から各様の資料、レポートが出ているが、言っていることは同じだ。

これからは「モバイル」なのだ。In the field、あるいはOn the goのモバイルを語らずしてインターネット、ブランディング、マーケティング、エンゲージメントなどが語れなくなってきた。

だからUNICEFは、グローバルなモバイル戦略RFQを出したわけだし、オリンピックもモバイル対応を進めている。

参考:UNICEF RFQ for Global Mobile Strategy (Online Ad 2009/11/09)

まだ、どのグローバルブランドもモバイルブランディングを開始してはいない。しかし、少なくともその検討、可能性調査を開始すべき時期には入ってきた。

2010/02/17

HP Computer Racist?

あるショップでHPのMediaSmartとWeb camを使って顔認識・トラッキングをテストしたところ、黒人の顔を認識せず、カメラが動かないというビデオがYouTubeに上がっている。



このビデオは何もHPのコンピュータが人種差別をしていると糾弾しているのではなく、「何か変?」的なビデオなのだが、12月28日のViral Video Chartの10位にランクされていた。その時点で152万回視聴され、381のBlogが記事を書き、8,046個のコメントがあり、1,481のTweetがあった。

ちょっとした注目を集めていたわけで、いくつかのメディア系Blogでも取上げられていた。

そのひとつにLaptopmag.comのBlogがある。そこがビデオに対するHPのVoodoo Blogからのコメントを紹介していた。
Source:HP Voodoo Blog

まず、HPは日本、インド、南米、欧州など世界のHP社員と、世界中の全てのユーザ、多様な人種のユーザに最高の製品を提供するために協力していると書き出し、人種差別などまったくないことをソフトトーンで述べている。

その後、YouTubeのビデオに言及し、基本的な顔認識のしくみ、考えられる原因、HPがトラブル解決に当たっている間、Webcam利用のガイドも参照してほしいこと、そして、フォーラムやTwitterへフィードバックを送って欲しいことを書いている。

ビデオはHPを糾弾しているわけではないので、ピリピリした感じはないが、真摯にことに当たっている担当者の顔が見えてくる。メーカー側の認識、考え方やこう操作しろといった使い方を押し付けるのではなく、顧客・ユーザの意見、評価を対等に受け入れるスタンスが見えてくる。そしてユーザとのコミュニケーションがクローズドなスペースではなく、オープンなソーシャルメディアスペースで行うという当然の理解も見える。

ここにユーザは、企業・ブランド・メーカーの誠意、クオリティ、スタンスを見る。そして、YouTubeだけではなく他のソーシャルメディアスペースをモニタリングし、顧客サービス・満足度向上に努めているメーカー、言いたいことを言うだけの口だけではなく、耳も目もあるメーカーをユーザは見る。

売るための広告、PR、マーケティングや営業とは違うエンゲージメント、コネクション、リレーションズがある。そんな時代にいつまでも広告、PR、マーケティング、営業といった組織しか活用できないとしたら...?

2010/02/16

World Digital Media Trend

WAN-IFRA(World Association of Newspapers and News Publishers)と言うところから昨年末に、World Digital Media Trendというレポートが出ていた。

世界的に見ると、メディア&エンタメ市場は2003年に1.21兆㌦、2007年に1.59兆㌦に達し、2009年に1.8兆㌦、そして2012年には2.1兆㌦を予想している。2009年に1,815億㌦のTV広告は2012年に2,158億㌦へ、そして771億㌦のインターネット広告は1,203億㌦へ伸びると予想している。

その間、TVCFは19%、インターネット広告は56%増となる。
そして、モバイルを含めたインターネット広告を地域別に見たものがある。2009年に米国は世界のインターネット広告の40%を占め、欧州は36%だ。

それが2012年には米国は43%増、欧州は67%増となり、欧州が世界シェアの38%、米国が37%と予想されている。
次に、デジタルホットスポットを示している。モバイル普及率が65%以上、かつインターネット普及率が40%以上のHottestに分類されるのは、欧米、韓国、日本、台湾、マレーシア、豪、乳、UAE、仏領ギアナなどだ。

次のHot in mobile、モバイル普及率65%以上、かつインターネット普及率40%未満に分類されるのは露、アフリカ、南米、中東諸国などがくる。
最後に、新聞とインターネットの広告費を比較している。2003年には大きく開いていた新聞広告とインターネット広告の差は2009年にシェア23%対14.6%にまで縮まり、2012年には21.6%対19%と、その差2.6%にまで接近すると予想されている。
Source:WAN-IFRA / World Digital Media Trend (pdf)

2012年、インターネット広告はTV広告の56%へ、欧州がインターネット広告で米国を抜き、ひょっとするとモバイル向けインターネット広告がPC向けを抜き、多分OECD諸国の大半ではすでに新聞広告をインターネット広告が抜いている。そんな年になる。

2012年というとあと700日くらいだろうか?

何年、何十年という積み重ねる年つきではなく、何日という単位で今までのメディアプラットフォームが音を立てて変化してゆく。そんな時代にいつまでもレガシーメディアにしがみつくしかない企業・ブランドと、オンライン、ソーシャルメディアに生きるユーザとのギャップは途方もなく大きくなる。

そして、広告、PRやマーケティングといったユーザアプローチではなく、エンゲージメントやコネクション、リレーションズといったピアアプローチが主流になる日があと700日に迫っている。

2010/02/15

Super Bowl and Pepsi

例によってUSA Todayで2010年のSuper BowlのAd Meter Trackがあり、今年はMars Snickersがトップに選出されている。
Source:USA Today / Super Bowl XLIV ads

63本のCFがあるが、常連の顔が見えない。Pepsiだ。

Pepsiは2月1日から「Pepsi Refresh Project」をスタートしている。2月4日、木曜日のAOLトップページにはバナー広告を掲出してトラフィックをサイトへ誘引していた。
今まで何十年にもわたり、「be sociable, have a Pepsi」と叫び続けてきたブランドが、今度はPepsiが行う社会貢献を一般消費に支援してもらう取り組みを始めたわけだ。Pepsiの新しいメッセージを広めるためにFacebookやTwitterを動員してくる。

福祉、芸術や文化、教育などに関して、Pepsiが支援すべき団体、グループ、目的などを一般から募集し、年間で2,000万㌦を拠出する予定だ。それもPepsiが決めるのではなく、一般ユーザの投票によって決めてゆく。

Source:NYT / Pepsi Invites the Public to Do Good

Pepsi Refresh Projectのページへ行くと、5,000㌦、25,000㌦、5万㌦、25万㌦の区分けがあり、様々な個人からのアイディア、団体からのアイディアが上っている。
Source:Pepsi Refresh Project

そして、Facebookにもファンページがある。すでに51万人以上がファンになっている。Pepsi-Refresh Everythingから何回となく書込みがあるが、そのほとんどに数百人が「like this」をクリックしている。
Source:Facebook / Pepsi - Refresh Everything

Super Bowlという年に一度のお祭りには常連に加え毎年新顔が加わるのが常だった。その中でも長年、顔見世の一角に必ず出ていた企業・ブランドが顔を見せない。その代わり、二段も、三段も消費者、ユーザに近付き、同じ目線から物を言い、同じ立場に立って経験を共有しようとしている。

そして、どんなアイディア、活動に資金を拠出するかは一般消費者、ユーザの投票によって決まることが、今までのCSR、社会貢献、慈善事業とまったく異なる点だ。企業・ブランドの独りよがりで決められ、その年だけはCSRレポートに仰々しく実績を書き連ねられるプロジェクトとは違い、貢献を受ける側が、いろいろなアイディアの中から、その目的、効果や波及を勘案し、そして自分自身がどのように貢献できるかをも含めて決めることができる。

参考:Donations for Haiti (Online Ad 2010/01/21)
参考:Travel Brands for Haiti (Online Ad 2010/01/26)

もう顔の見えない企業・ブランドがどんなに長く、多く、Super Bowlというお祭りに参加しても、残るのは宴のあとの寒々しさと、そこらじゅうに散らかり、くしゃくしゃになったパンフやカタログ、そして領収証の明細と合わない効果だ。

特に、今年以降のCSRレポートに、実施したイベント、プロジェクトの内容や参加者・団体数しか書けない企業・ブランドはどうするのだろう?

2010/02/12

Social Media for Visit Japan Campaign

2009年の訪日外客数は679万人にまで落ち込んだ。金融危機、円高、新型インフルエンザなど悪材料が出尽くした中で訪日客が減少した。二桁の減少は1986年以来23年振りだ。
Source:日本政府観光局(JNTO)

UNWTO(World Tourism Organization)のデータでも2009年は全世界で8.8億人の旅行者、4%の減少を記録している。
ただし、地域別にみるとアジア・パシフィックは前年比1.9%減で、各地域中最も減少幅が少ない。欧州、中東、米州と比べれば軽傷だった。
Source:UNWTO / World Tourism Barometer (pdf)

それにも関らず日本への訪日客が18.7%も減り、679万人になってしまったわけだ。「日本政府観光局(JNTO)は2010年までに訪日外国人旅行者数1000万人を実現します」とWebサイトなどで高らかに謳っているから、何としても今年1,000万人の訪日客を達成するのが至上命題だ。

さて、旅行業界、各種キャリアなどとの提携、ユーザ参加コンテスト開催、TVCF、雑誌広告、オンライン広告キャンペーンなど様々な施策が検討されているはずだが、昨年比50%増の訪日を促進するためには予算を増額するだけではなく、
outsmart rather than outspend our competitors
するヒントは2012年にオリンピックを開催する英国にある。
Facebook、Twitter、その他SNS、そしてBlogが、2012年ロンドンで開催されるオリンピックへ旅行者を誘致するマーケティングキャンペーンのコアになる。

SNSおよびBlogにより、潜在的訪英旅行者が英国社会に親近感を持つようになることを期待している。
と、Visit Britainの担当者はセミナーで語っている。

Source:Independent / Toursims chiefs bid to cash in on 2012 Games

昨年の落ち込みを今年から挽回しようと予算を2倍、3倍にする各国もいるだろうし、バンクーバーオリンピック、バンクーバーパラリンピックが閉幕するや否や、Visit Britainや各国の旅行業界が2012年のオリンピックに力を入れ始める状況がある。

その中でVisit Japan Campaignが注目され、関連コンテンツが露出、消費、共有、再露出され、Visit Britainなど優勢な競合に伍してゆくため、
競合より多く支出するのではなく、(頭を使い)競合を出し抜く
には、単純にSNSやBlogにバナー広告を出稿するといった企画ではなく、ソーシャルメディアマーケティング戦略全体企画のRFQを再度出すべきではないだろうか。UNICEFがモバイル戦略で行ったように。

参考:UNICEF RFQ for Global Mobile Strategy (Online Ad 2009/11/09)

2010/02/10

Disaster Management

Decker BlogのBert Deckerが昨年末の22日に、「The Top Ten Best Communicators of 2009」と、「The Top Ten Worst Communicators of 2009」をアップしている。

Best Communicator of 2009として彼が選んだのは、ほぼ1年前、「ハドソン川の奇跡」を起こしたSully Sullenberger機長だ。

彼の「Best Communicator」としての資質は、彼が地元に帰った時、そしてCBSの60 MinutesでKatie Couricがインタビューをしているビデオからもうかがえる。



Watch CBS News Videos Online

状況が配置した乗員チームが、やるべき業務、要求される業務、訓練された業務を遂行しただけだ。極限状況下の機長として要求される業務を遂行するにあたり、(定期的に行われる厳しい訓練をベースとして、)沈着冷静、正確な状況判断、対応と指示を行っただけだと語っている。

彼の言葉には誇張や修飾、暗示はない。自身の判断を間違いのない事実として理解し、それを正確に伝える単純明快な単語を選んでいる。全幅の信頼が置けるといった形容ができる存在だ。

結果として「Best Communicator」として彼が選ばれたのは、様々な状況下において最適、最善、最速の判断を下すための訓練があったからだ。その訓練がなければハドソン川の藻屑として消えただろうし、生還したとしても各メディアが挙って彼のコメントやインタビューを争うこともなかったろう。

今、企業・ブランドのレピュテーションはリアルタイムの危機にさらされている。Facebookであれ、BlogやTwitterであれ、リアルタイムで世界中のインターネットユーザに露出、共有され、再露出されてゆく。こんな時代に、最悪状況を前提としたソーシャルメディアトレーニングがなければ、刻々と変化する状況に即して、最適、最善、最速の判断を行うことはできない。

既存レガシーメディアを前提としたマインドセットを転換しない限り、現在のリアルタイムリスクに対応することはできない。また、一朝事ある時に、既存レガシーメディアを前提としただけの危機管理、トレーニングで対応することは不可能だ。

2010/02/09

Another PR Nightmare for McDonald's

LinkedInのCorporate Communications Executive Networkに、「McDonald'sにとりPR悪夢になりかねない状況がシカゴで発生している。彼らはどのように行動するべきか?」という議論があり、24本もコメントが行き交っている。

それはChicago Sun-Timesによるとこうだ。

ボストン大学の学生で19歳のLauren McCluskyは、2007年から年一回、高校や大学のバンドを集めシカゴでMcFestというチャリティコンサートを主催し、知的発達障がい者の自立や社会参加を助けるスペシャルオリンピックに貢献してきた。2年間で3万㌦を集めたそうだ。ところが2008年に彼女が商標登録をしようとしたところ、昨年8月、McDonald'sがMc関連商標をすでに登録しているとして異議申し立てを行った。



この係争が裁判所に持ち込まれれば、すでに5,000㌦を支払っているLaurenは新たな出費を負担しなければならない。

McDonald'sは、彼女のコンサートを中止させたいと思っているわけでもなく、彼女と円満に解決するため協議を重ねている。広報担当者、Ashlee Yinglingは、彼女に別の新しい名前をコンサートにつけてほしいと語っている。「別の名前をつけてくれればコンサート費用を負担するといった代替案」をだしている。

この話がLinkedInのCC部門で議論されている。

Source:LinkedIn / Corporate Communications Executive Network
Source:Chicago Sun-Times / McDonald's in beef over trademark with Chicago teen

自分の名字をコンサート名の先頭につけ、スペシャルオリンピックに貢献してきた10代の学生の社会貢献を巨大資本がひねりつぶそうとしているようにも見える。また、一方、すでに「Mc」を前置した単語を登録しているMcDonald'sからすると、とんでもないという話のようにも見える。

さて、あなたはどう考えるだろうか?

McDonald's自体、社会貢献を長年続けている。Ronald McDonald House Charitiesがつとに有名だ。このサイトのトップページに書かれている文章そのものが答えだろう。
Source:Ronald McDonald House Charities

「あなたの支援なしに2009年50万㌦を集めることはできなかった」、「あなたなしに、Lance Kopplinの大きな笑顔、きれいな髪、奇跡の回復はなかった」。

社会貢献をひとつの柱として長年、顧客の力、支援を借りながら実績を上げてきた企業・ブランドは、一方で同じ目的を目指す個人、グループ、団体の行動を支援してきたことになる。双方向で支援と協力、情報の共有などを行ってきたわけだ。

いかに巨大な資本だと言ってもできることには限りがある。限りがあるからこそ、できる範囲とできない範囲の棲み分けを個人、グループ、団体と行ってきた。至極当然なことだ。

しかし、ここで、登録済み商標を個人、グループ、団体が社会貢献目的で使う際に資本側の理論を押しつけようとした場合、結局、資本側の狙いは社会貢献ではなく、社会貢献を行う善良な企業・ブランドだというイメージ、販促、売上につながる効果だけだということが見透かされてしまう。今までの社会貢献が色あせてしまう。

異議申し立てを却下し、かかった費用を弁償するべきだ、あるいはPR部門に抗議のemailを送ろうとか、LinkedInでは議論が活発だ。

ただ、商標登録を共有すべきだというコメントは見られない。そんな解決策もあるかとは考えるが、あなたはどう考えますか?

2010/02/08

Corporate & CEO Blog

このBlogを始めた年、2006年にSun MicrosoftのCEO、Jonathan Schwartsを取上げ、「CEOがBlogを好きにならなければならない理由」としてエントリを書いた。

参考:Why CEOs should learn to love the blog (Online Ad 2006/11/28)

その彼が、先週金曜日(現地木曜日)、Twitterで俳句をひねってSun Microsystem最後の日を伝えている。

金融危機後
投資減衰となり
CEO停止

Source:Twitter / OpenJonathan

Fortune 500のCEOとして初めて、最初に2004年6月26日からBlogを始めたShwartsへの感慨はある。
2004年6月28日に初めてBlogを開始した際、彼はこう書いている。

「範を示す」
上場企業のトップがBlogを始めてはなぜいけないのだろう。ある意味、論理的には米国のRegFD (Regulation Fair Disclosure :公平開示規則)により、企業情報の排他的提供を禁じられているわけだが、Blogを始めることで外部とコミュニケートすることが我々のやり方だ。

-中略-

だからまず私から責任を果たすべきだと考えた。次に 私の言葉が文書化されるフォーマットとその正確性を変更するためだ。文中に識者のコメントなしでストレートに伝えるためだ。そしてコミュニティからフィル ターのかかっていないフィードバックを受けるためだ。
参考:Sun CEO's Blog (Online Ad 2006/12/14)

率先した彼に刺激され、あるいは社内に説得され、あるいは自らBlogを始めたCEOや、企業Blogがある。

2006年11月に40だったFortune 500の公式Blogは、2009年12月17日時点で79にまで増えた。およそ倍増している。

Source:Fortune 500 Business Blogging Wiki

この間にYouTubeでのチャネル、Facebookファンページ、Twitterアカントなど様々なチャネルを通して企業・ブランドは、外部とコミュニケートし、フィードバックを受け取るためにエンゲージメントを始めている。

企業・ブランドがオープン、対等、双方向のコミュニケーションチャネルを開く端緒ともなった彼の功績は消えることはない。いや、彼の功績が消えるどころが、彼のスタンスがどのグローバル企業・ブランドにも必要とされている時は今をおいて他にない。

米国では、Toyota Motor Salesの社長、Jim LentzがDiggでユーザの質問を募集し、直接、ユーザに応えようとしている。リコールだけではなく、組合活動、次世代車、スポーツ車、電気自動車など多岐にわたる質問がある。ユーザからの質問をオープンに募集し、もっとも多くのユーザが聞きたいとして投票した質問にライブで答えるようだ。
Source:Digg / Dialog with Jim Lentz

こんなことは彼がBlogを始めた2004年には誰も予想していなかった。さざ波が集まり、大きなうねりとなり、津波にまで成長するきっかけともなった彼のCEO Blogに感謝。

2010/02/05

E-Reader Comparison Chart

あまりデバイスに立ち入ったエントリは書いたことがないが、iPadの登場でそうもいかなくなってきた。

単純な電子書籍リーダー、携帯とNetbookの間にくるE-reader、あるいはMP3視聴デバイス、単純なWebサーフデバイスといった基本的に単機能デバイスとしてあったものが、ビデオプレイヤー、ミュージックセンター、インターネットポータルなどの機能が追加された複合デバイスとしてiPadが登場した。

デバイスとしてのインパクトよりも、これらデバイスが今後与えるであろうインパクトを見るためにもベンチマークが必要だと思っていたところ、mocoNewsから比較表が出ていたので紹介する。
(クリックで拡大)
この比較表に抜けてはいるがCESでデビューしたSamsungのReaderも今年中にはお目見えする。また、英IntereadのCOOL-ER Readerもある。


Source:mocoNews / How Do E-Reader Stack Up with iPad In The Mix?

これら全てをモバイルに括ることなどできないが、モバイルに少なからず影響するはずだ。ということは、モバイルデバイスとして、ユーザと企業・ブランドをつなぐ架け橋の一部ともなる。あるいは、まったく新しいコネクション、リレーションを開発、拡張してくれるデバイスになるのかもしれない。

なぜなら今のモバイルデバイスでは、あまりにもできることが限られているからだ。紙のように薄く、ビニールのように折りたためるデバイスは無理としても、PC同様の表示と操作性を希望するユーザは多い。彼らが殺到するデバイスが誕生した時、モバイルの可能性も大きく広がるはずだ。

2010/02/04

Mass Marketing to Engagement

Alterianの2009年版調査、「Alterian Annual Survey」がある。サブタイトルは「Are You Ready to Engage?」となっている。

全世界といっても北米が62%、欧州が36%、アジア・パシフィックが2%と大きなバイアスがかかっているが、マーケター(ブランド側)、代理店、MSP(マーケティングサービスプロバイダー)、SI、他など1,068人の専門家を対象に、マーケティング業界に起こっている変革、現在と近い将来を見ている。

さて、最初に「デジタルマーケティング、DBマーケティング、クリエイティブ、戦略コンサルティング、Web解析、Emailマーケティング、統計解析など各種マーケティングサービスを何社が提供しているか」と聞かれた結果は、約7割が3社以上、7社以上が23%となっている。
デジタル時代、ソーシャルメディアマーケティング時代を迎え、多様なサービスを提供するプレイヤーが増えれば増えるほど、ブランドやメッセージを統一していく摩擦が増える。プレイヤーそれぞれがビジネスを拡大するため付加価値を提案し、プレイヤー同士の連携、足の引っ張り合い、果ては自己売上増加だけのために(ブランド側)マーケターが必要としない機能・仕様も提案に含めてくる。

ということで、新しいタイプのパートナーシップが誕生してきていると、Alterianは言う。

それはCEA (Customer Engagement Agency)だ。CEAは、解析、戦略、クリエイティブ、キャンペーン実施、そしてバックボーンとなる技術などをまとめてマーケターに提供する。CEAは、単一的な得意分野での顧客アプローチではなく、クリエイティブ能力、技術的ノウハウ、データ重視の知見を統合して、すべてのマーケティングチャネルに対してコスト効果が高く、リッチ、最適な顧客アプローチをマルチチャネルで提供する。

例えば、既存の10マーケティングチャネルを10社にそれぞれを任せるのではなく、複数チャネルをCEAに任せることになる。各チャネルへのアプローチを統合し、相乗効果を上げさせることになる。

こういったCEAが誕生してきたことで、ブランド側マーケターや広報コミュニケーション部門が従来からのプラットフォームを使って顧客にメッセージを配信したり、コミュニケーションを行う形が変わらざるを得ない。複数の縦型サイロをそれぞれ単独で運用するための組織から、複数の縦型サイロを横断する統合サイロを運用する組織、人材、予算、戦略が必要となる。

インタラクティブ代理店、マーケティングサービスプロバイダー、メディアや顧客リストプロバイダー、そしてレガシー代理店は、この動き、フロー、衝撃を理解しているのだろうか?今までの単独サイロでビジネスを行ってきたプレイヤーは、縦型横断統合サイロビジネスへ転換することができるのだろうか?

Alterianは、Forrester Researchを引用して最初の調査項目を締めくくっている。
Source:Alterian / Annual Survey 2009

大金を稼いできた既存ビジネスモデルを死守するため、オンライン、デジタル、ソーシャルメディアといった香辛料をふりかけ、最新のトレンドにマッチした新企画、あるいはトレンドを先取りする(はずの)革新的な提案を出す各種プレイヤーがいる。しかし、彼らのビジネスモデルが既存チャネルの最大活用になっている限り、メッセージをプッシュし続けるだけで、顧客コネクション育成へ舵を切ることにはならない。だからビジネスモデルを変革できないプレイヤーは長続きしない。

「データマネージメント、解析、聞き耳、ソーシャルメディア展開・実施、そして戦略構築が欠如しているプレイヤーのビジネスは枯渇する」というForrester Researchからの警告が響き渡る。

2010/02/03

Future of Ad Platform

インターネット、Email、Web、IM、オンラインニュース、YouTube、Podcast、Webinar、Blog、Twitter、SNS、そしてモバイルと我々の日常生活、会社生活をデジタルメディアが取り巻いている。

反面、新聞、雑誌、ラジオ、TVといったレガシーメディアは、そのメディアとしての位置が崩れ、視聴者・購読者が減り、広告収入も激減していくのを目の当たりにしてきた。廃刊、休刊した印刷媒体は世界中でどれくらいに上るのだろう。

デジタルメディア以前にメディアシーンを独占していたレガシーメディアは、様々な対応をしている。が、その効果はレガシーメディアの臨終を大幅に伸ばすまでには至っていない。しかし、唯一、デジタルメディアの負の洗礼を受けていないレガシーメディアがある。

それはOOHだ。
New York Billboards by muhawi001.

Source:Flickr / muhawi001 New York Billboards

モバイル端末を常時携帯している消費者、顧客、ユーザに対して、On the move中のトリガーとなり、ユーザコネクションのゲートウェイを提供できるOOHは、固定看板であれ、デジタルサイネージであれ、レガシーメディアの中で唯一、デジタルメディアとの親和性が高い。OOHと、Bluetooth、SMS、CSCなどとの組み合わせは、移動、屋外、個人、SNS、Twitter、ビデオ、写真、ソーシャルコネクションといったキーワードと味よくからみ合わさるからだ。

いつまでもブランド名だけのOOHは論外だが、多様な仕掛けを可能とするOOHをデジタルマーケティング戦略のコアのひとつとして検討すべき時期に来ている。

2010/02/02

Mobile Web Explosion

昨年の8月とちょっと古いのだが、モバイルWebに関する様々な調査データや予想を集めたエントリが、MobiThinkingにある。

曰く、
  1. モバイルユーザは急増中。Portio Researchは2013年には58億人と予想。他のいかなるメディアチャネルもこの規模のリーチを提供できるものはない。
  2. Gartnerによれば2009年Q2、モバイル端末の販売は6%減少したがSmartphoneは27%増加。Ovumによれば2014年にはモバイル端末の29%がSmartphoneとなる。モバイルWeb体験がリッチメディア化する。
  3. IE Market Researchによれば、2009年Q2に出荷されたデバイスの60%は3G対応、そのうち33%はHSDPA対応、8%はHSUPA対応。いずれも次世代の高速パケットアクセス技術。高速ダウンロード可能。
  4. 全世界人口の60%が次世代HSPA対応モバイルでカバーされている。
  5. モバイルデータは急激に膨張する。a)2011年には音声データを上回る(Pyramid Research)、b)モバイルユーザがひと月に送受信するデータは2008年の総量を上回る(ABI Research)。
  6. 経済状況に関らず、モバイルサービス売上は増加する(ABI Research)。
  7. モバイルWebが成長するにつれ、モバイル広告は2009年のSMSマーケティング額を上回り、2014年には4倍に達すると予想されている(Juniper Research)。
Source:MobiThinking / Mobile Web

インドのモバイルユーザ数は、昨年12月に1,900万人増えて合計5.25億人、前年同月比51.4%増だ。また、2013年には10億人に伸びると予想されている。そして、インドのインターネットアクセスのうち、90%がモバイルだ。

Source:Independent / India adds record 19 million mobile users in December

これに中国のモバイルユーザが加わる。China Mobileだけで昨年11月時点で5.2億人のユーザがいる。このうちインターネットアクセスユーザはいくらいるのだろう?

Source:Yahoo News / China mobile users risks SMS ban in porn crackdown

この見たこともないような巨大ネットワーク、メディアとSNSが合体し始めている。

参考:Top Priority of Digital Marketer (Online Ad 2010/02/01)

2010/02/01

Top Priority of Digital Marketer

Society of Digital Agenciesというところから、「SoDA 2010 Digital Marketing Outlook」というレポートが出ている。

世界中のマーケティング関連の役員レベルを調査した処、今年のデジタル予算は大幅に増えそうだ。デジタル広告・マーケティング代理店を10数%とすると、レガシー広告代理店は20%弱も「大いに増える」と予想している。そして、ブランドは70%前後も「増える」と予想している。

特に注目すべきは、デジタル広告・マーケティングもレガシー広告代理店も数%「大いに減る」と回答している。が、ブランドは0%だ。
現在の経済状況で「長期的にデジタルマーケティングが増える」と考えているのは、ブランドで60数%だが、それ以外すべての調査対象で70%を超えている。
だからデジタルマーケティングに対応できる人材が必要となる。デジタルマーケティング部門の人員を増やしたのはデジタル広告・マーケティング代理店の25%前後、レガシー広告代理店は30数%もすでに人材を雇用し、まだ募集中のようだ。
最後に、2010年のトッププライオリティを訊いている。

9カテゴリの中で「トッププライオリティ」だとされたのは、「ソーシャルネットワーク・アプリ」がトップで45.4%。僅差で「インフラ」が44.5%だ。そしてゲームを除く、残る7カテゴリともに「重要」とされている率が高い。
Source:Society of Digital Agencies / SoDA 2010 Digital Marketing Outlook

トッププライオリティに挙がっているソーシャルネットワーク・アプリと合体するのはモバイルだ。モバイルのPVが70%程度になっているMixiの例を引くまでもなく、Facebookであれ、MySpaceであれモバイルアクセスが増えている。

今年はごく一部の企業・ブランドにとって、ソーシャルメディアマーケティングを本格化し、モバイルSNSマーケティングを立ち上げてくる年になる。

ただし、それ以外の企業・ブランが活用しようとしているマーケティング戦略は従来からのマーケティング手法をソーシャルメディア化、あるいはモバイル化しただけのものだ。今までの手段、法則、指標で全く違うユーザをターゲットにしている。

与えられた牧草を食み、牧羊犬の指示通りにLEDシートを背負わされ、あっちこっちと動かされて羊文字や絵を描いた、もの言わぬ羊さん達はもういない。籠から逃げ出し、あちらの枝、こちらの枝へと飛びまわり、ピーチク、パーチクとかしましい鳥さん達は、企業・ブランドが振る旗には目もくれず、集団となって駅前に糞を撒き散らす。羊さん達なら牧羊犬の出番もあるが、勝手気ままに空を飛びまわる鳥さん達を先導するのはThought Leader(実践的先駆者)しかいない。牧羊犬で鳥さん達に指示して、こちらの思い通りの巣箱へ誘導することなどできはしない。

SNSとモバイルが合体する時、レガシーマーケティングの終焉は早まる。