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2010/02/26

Digital Agency vs. Full Service Agency

RSW/USから「2010 Client's Perspective on Agencies Survey」が出ている。

一般的に考えて、フルサービス代理店のデジタルマーケティング・広告スキルをクライアントに評価させている。乱暴だが、10段階に分けた10~8を「大変良い」、7~5を「良い」、4以下を「ダメ」とした場合、フルサービス代理店の28%は赤点をもらうことになる。
過去3年間でクライアントの予算は、30%以上レガシーからデジタルへシフトしているのが66%にも達している。20%シフトしたのは17%、10%シフトしたのは15%だ。デジタル予算を取っていないのはたった1%(どんな企業なのだろう?)。
これだけクライアント予算がデジタル化してきた現在、代理店はクライアントの現状、戦略、方向性などを理解する必要がある。

クライアントが代理店を決めるポイントの上位には
 69% クライアント企業の方向性理解
 68% 市場動向理解
 66% クリエイティブ
 60% 新規提案
が来る。
デジタル化し、ソーシャルメディア化する市場環境にあって、レガシーマーケティング、レガシー広告の効果が希薄化し、ROI低下に悩むクライアント企業に対して、デジタル化せざるを得ないクライアントを理解し、市場・業界動向を把握した上で、新しいクリエイティブや新しい提案を行う必要が代理店にはある。この新しい提案が、レガシーマーケティングや、レガシー広告になるだろうか?あるいはソーシャルメディアを考慮しないレガシーマーケティングや、レガシー広告をオンライン化しただけのものになるだろうか?

最初の図にある赤点をもらっている28%のフルサービス代理店は、予算の30%以上がデジタル化しているクライアントの現状や方向性に沿って、自身の売上構成もデジタル化していないのだろう。デジタル化した上でのビジネスモデル構築が遅れているため、レガシーマーケティングや、レガシー広告しか提案していないのかもしれない。

しかし、クライアントが新規に代理店を決める際、最も影響を受ける上位3つのうち、2つは推薦だ。
 38% 同僚からの推薦
 37% 代理店からのタイムリーなアプローチ
 34% 他企業のマーケターからのアドバイス・推薦

特に、「他企業のマーケターからのアドバイス・推薦」が34%も占めている。 もう、フルサービス代理店が時代遅れの提案をしていても、クライアント側で様々なコンタクトから最新情報を仕入れている。

レガシーマーケティングや、レガシー広告ではない新しい提案が求められていることは間違いがない。
Source:RSW/US / 2010 Client's Perspective on Agencies Survey

2010/02/04

Mass Marketing to Engagement

Alterianの2009年版調査、「Alterian Annual Survey」がある。サブタイトルは「Are You Ready to Engage?」となっている。

全世界といっても北米が62%、欧州が36%、アジア・パシフィックが2%と大きなバイアスがかかっているが、マーケター(ブランド側)、代理店、MSP(マーケティングサービスプロバイダー)、SI、他など1,068人の専門家を対象に、マーケティング業界に起こっている変革、現在と近い将来を見ている。

さて、最初に「デジタルマーケティング、DBマーケティング、クリエイティブ、戦略コンサルティング、Web解析、Emailマーケティング、統計解析など各種マーケティングサービスを何社が提供しているか」と聞かれた結果は、約7割が3社以上、7社以上が23%となっている。
デジタル時代、ソーシャルメディアマーケティング時代を迎え、多様なサービスを提供するプレイヤーが増えれば増えるほど、ブランドやメッセージを統一していく摩擦が増える。プレイヤーそれぞれがビジネスを拡大するため付加価値を提案し、プレイヤー同士の連携、足の引っ張り合い、果ては自己売上増加だけのために(ブランド側)マーケターが必要としない機能・仕様も提案に含めてくる。

ということで、新しいタイプのパートナーシップが誕生してきていると、Alterianは言う。

それはCEA (Customer Engagement Agency)だ。CEAは、解析、戦略、クリエイティブ、キャンペーン実施、そしてバックボーンとなる技術などをまとめてマーケターに提供する。CEAは、単一的な得意分野での顧客アプローチではなく、クリエイティブ能力、技術的ノウハウ、データ重視の知見を統合して、すべてのマーケティングチャネルに対してコスト効果が高く、リッチ、最適な顧客アプローチをマルチチャネルで提供する。

例えば、既存の10マーケティングチャネルを10社にそれぞれを任せるのではなく、複数チャネルをCEAに任せることになる。各チャネルへのアプローチを統合し、相乗効果を上げさせることになる。

こういったCEAが誕生してきたことで、ブランド側マーケターや広報コミュニケーション部門が従来からのプラットフォームを使って顧客にメッセージを配信したり、コミュニケーションを行う形が変わらざるを得ない。複数の縦型サイロをそれぞれ単独で運用するための組織から、複数の縦型サイロを横断する統合サイロを運用する組織、人材、予算、戦略が必要となる。

インタラクティブ代理店、マーケティングサービスプロバイダー、メディアや顧客リストプロバイダー、そしてレガシー代理店は、この動き、フロー、衝撃を理解しているのだろうか?今までの単独サイロでビジネスを行ってきたプレイヤーは、縦型横断統合サイロビジネスへ転換することができるのだろうか?

Alterianは、Forrester Researchを引用して最初の調査項目を締めくくっている。
Source:Alterian / Annual Survey 2009

大金を稼いできた既存ビジネスモデルを死守するため、オンライン、デジタル、ソーシャルメディアといった香辛料をふりかけ、最新のトレンドにマッチした新企画、あるいはトレンドを先取りする(はずの)革新的な提案を出す各種プレイヤーがいる。しかし、彼らのビジネスモデルが既存チャネルの最大活用になっている限り、メッセージをプッシュし続けるだけで、顧客コネクション育成へ舵を切ることにはならない。だからビジネスモデルを変革できないプレイヤーは長続きしない。

「データマネージメント、解析、聞き耳、ソーシャルメディア展開・実施、そして戦略構築が欠如しているプレイヤーのビジネスは枯渇する」というForrester Researchからの警告が響き渡る。

2010/01/27

Agency Creative ROI

MarketingExperimentから「Maximize your Agency ROI」というレポートが出ている。サブタイトルは、「How adding science to the creative process revelas a 26% gain」となっている。

EmailのクリエイティブデザインがどれくらいCTRに影響を及ぼすかを調査したレポートだ。

まず、AAA (American Automobile Association)の例がある。下は、30日以内に会員期限の来るメンバーに送られたemailだ。シングルクリックでメンバーシップを延長できる。
次に代理店Aと代理店Bが制作したemailがある。どちらも上と同様に故障した車を背景に、Aは大量テキスト、Bは水平視線上に会員メリットを上げている。どちらも赤の更新ボタンを用意している。もちろん、主要コンテンツはホールドの上にあることは当然だ。

参考:Critical Ad Placement :Above or Below Folds (Online Ad 2008/04/30)
参考:Critical Ad Placement -2 (Online Ad 2008/07/25)
参考:Critical Ad Placement -3 (Online Ad 2009/04/06)
さて、最後に代理店Cが制作したemailがある。こちらは大胆なデザインを取り入れている。赤線枠エリアが通常emailで表示されるエリアだ。普通なら下へスクロールすることになるが、このemailは右へスクロールすることになっている。
さて、コントロール、代理店3社が制作したemailの結果はというと、コントロールが4.18%のCTRに対して、代理店Cのそれは5.25%、コントロール対比25.6%ものアップをたたき出している。
クリエイティブひとつで26%もCTRが向上するわけだ。予算枠内で最大効果を上げるには、こういったA/B/C/Dテストが必要だ。

もうひとつ重要なことがある。

下は家具屋さんのemailの例で、コントロールと代理店A、B、Cが制作したemailだ。
結果として、コントロールemailのCTRが36.70%で最も高い。最低なのは代理店Aの17.68%、コントロール対比51.83%も低い。
この例から学ぶことは、何が最も効果を上げたかを特定することに加え、何が最も効果が低かったかを知ることが重要だということだ。

Source:MarketingExperiment / Email Marketing Strategy

今までのメディアではこんなA/B/C/Dテストも、効果を可視化することもできなかった。こういった土壌があると、テストの実施も、効果に応じてクリエイティブ(エージェンシー)を変更することも、データマイニングも、Email露出モニタリングも検討議題に上がってこない。加えて、このソーシャルメディア時代に即して、ユーザとの対話やコンテンツ共有を前提としたクリエイティブを制作できるエージェンシーもまだ少ないのかもしれない。

しかし、それでも今できることをやらなければ明日はない。

MarketingExperimentのレポートには、Forrester Researchのデータがある。2009年と比べて2014年には、モバイルは約3倍、ソーシャルメディアは約4倍、Emailマーケティングは約1.6倍の予算規模へ延びると予想されている。今まで手をつけてこなかったこれら領域はこれからもっと、もっとリソースと、能力・知識が必要とされるのだから。

2010/01/08

Samsung Twitter Press Conference

米現地時間1月6日、CESにおけるSamsungのプレスコンファレンスがあった。

目を惹いたのはTwitterを使い、リアルタイムでコンファレンスの内容を発信していたことだ。
SamsungTweetsをフォローしている筆者のTwitterアカウントには約1時間で60数個のTweetが入ってきた。
Source:SamsungTweets

それぞれのTweetには、やれ3D、Note PC、NetBook、デジカメ、Plasma/LED/LCD TV、eBook等など新製品やGoogle、DreamWorksなどとの提携話など盛りだくさんのメッセージがあった。

また、FacebookやCNETなどのコンテンツへのリンクや、#SamsungCESを使ったユーザコンテンツを合わせたアグリゲートも行えるようにしていた。

さて、今回のコンファレンスはTwitterを使ったリアルタイムのプレスコンファレンスとしては一応の意義があった。しかし、これは、レガシーメディアからソーシャルメディアのTwitterへメディアチャネルを変えただけ、今までどおりの一方通行メッセージの配信と若干のコンテンツへのリンク、コンテンツのアグリゲートを行っただけだ。

1、2か所はリアルタイムレスポンスも行われていたようだが、重要なのは、メッセージ配信とユーザへのレスポンスがパラでリアルタイムで行われ、会話を醸成、発展させ、次のステップにつなげるシーディングを行うことだ。

なぜなら、アグリゲートされているユーザには数百、数千のフォロワーを抱えるTwitterユーザがいるわけだ。そのフォロワーのフォロワーを考えると、ソーシャルメディアチャネルにつながっているユーザのソーシャルコネクションを活用して、初めてソーシャルメディアリレーションズとなるからだ。

さて、もう、ここにはPRエージェンシーの存在感は薄い。広告エージェンシーの影はない。

2009/12/28

2010: Year of Social Media Marketing

MarketingSherpaから「2010 Social Media Marketing Benchmark Report」が出ている。

Executive Summaryには、効果的なソーシャルメディアマーケティング戦略をマッピングしたものがある。まず、頭文字をとってROADというソーシャルメディアマーケティングの戦略ロードマップを示し、それぞれがフェーズ1:実作業なし、プラットフォーム選択時期、フェーズ2:非公式の実作業を不定期に実施、フェーズ3:公式の実作業を定期的に実施という3フェーズに分けてみている。
  • Research まずは何をおいてもモニタリング
  • Objectives ターゲットオーディエンスに沿った目的決定
  • Actions 戦略構築
  • Devices オーディエンス、目的、戦略をベースにプラットフォームを展開開始
それを前提に2,300人のマーケター達がどのロードマップ、どのフェーズにいるかを聞いたのが下の図だ。

すでにフェーズ1(トライアル期間)を過ぎて、フェーズ2(移行期間)に移っているマーケターが平均で40%に上っている。フェーズ3(戦略実行期間)に達しているのは23%だ。
また、ソーシャルメディアマーケティング予算を来年増やすのか、あるいは減らすのかを各業界ごとに示すグラフがある。

Social Connection to E-Commerceでも見たように小売・E-Commerceの流入トラフィックにソーシャルメディアスペースは大きな割合を示していた。

参考:Social Connection to E-Commerce (Online Ad 2009/12/16)

ということで、各業界の中でもマーケターの79%が予算を増やすと回答している小売・E-Commerce業界がトップだ。自分の首を絞めかねない出版・メディア業界も63%、旅行・レジャー業界も52%、そして教育・ヘルスケア業界でも43%が予算を増やすと回答している。
Source:MarketingSherpa / 2010 Social Media Marketing Benchmark Report

ソーシャルマーケティング予算の60%は、Blogを書いたり、コンテンツを制作したり、ソーシャルメディアスペースにおけるモニタリングを行う人件費に 充てられるようだ。また、20%は外部のエージェンシー、コンサルタント、その他サービスプロバイダーに支出されるようだ。

ここまで人件費シェアが高いということなので、MarketingSherpaの調査対象となった2,300人のマーケターの大半は中堅以下の中小企業に属していると見られる。

すそ野が広い中小企業のすでに40%がフェーズ2に入っており、乱暴に平均すると50%以上が来年、ソーシャルメディアマーケティング予算を増やすわけだ。しかし、中小企業なので予算が増えるわけではなく、他の予算から振り替えられることになる。当然、それは新聞・雑誌、ラジオ、あるいは展示会、印刷物、DM予算が削られてくることになる。

今年の春、紹介したIBMのレポートでは、2012年に伝統的、レガシー広告はマーケティング予算の32%へ落ち込むと予想されていた。また、DMやプロモーションと言った伝統的マーケティングも42%へ落ちるとされていた。
参考:Beyond Advertising (Online Ad 2009/04/30)

どうやらIBMの予想をはるかに超えるスピード、幅で伝統的、レガシー広告およびマーケティング予算が削られてゆく2010年になりそうだ。

ということは、伝統的、レガシー広告およびマーケティングに関係する代理店、エージェンシーにとってリーマンショックを上回るダメージを被る年にもなりそうだ。

2009/12/09

Social Media Expertise of Agency

売上500万㌦から5,000万㌦までの小規模代理店6,000社のうち212社が調査に協力して先ごろ、RSW/USから、「Agency New Business Survey」が出てきた。

代理店が新しいビジネスを開拓する困難度、その理由、新しいビジネスを獲得したリソース、新しいビジネスを獲得するための人員採用、採用した人員のスキル、なぜ人員を採用しないのかなどを訊いている。

その中で代理店が新しいビジネスを獲得するため、また代理店の経営陣がソーシャルメディアをどれくらい使っているかを訊いている。

10段階の図があるが、これを「常時(10-9)」「いつも(8-7)」「ときどき(6-5)」「たまに(4-3)」「まるで(2-1)」に分けると、21%が「常時+いつも」ソーシャルメディアを活用しているということになる。そして59%が「たまに+まるで」ソーシャルメディアを活用してない。
次に代理店がどんなソーシャルメディアを使っているか訊いている。代理店にとって新しいビジネスを開拓、推進する人材雇用の面もあるのでLinkedInが最も利用率が高く74%となっている。次にFacebookの67%、Twitterが57%、blogが56%だ。日本ではそこそこ人気のあるTumblrは2%でしかない。
Source:RSW/US

さて、中小規模の代理店は新しいビジネス開拓に大きな困難に立ち向かっているようだ。

コスト削減をセールストークに載せられなければ、既存ビジネスを新規代理店に任せる企業・ブランドはいない。代理店にとっても、企業・ブランドにとっても新しいビジネスとなるとソーシャルメディアぐらいしかない。

そのソーシャルメディアを提案する代理店の能力、習熟、実績、コストを含める提案書に上の図を載せられるだろうか?そしてCDO(Chief Digital Officer)の存在も必要となる。ただし、これは中小代理店に限った話ではない。59%が「たまに+まるで」ソーシャルメディアを活用してないのは中堅、大規模、グローバル規模の代理店にも当てはまる。CDOになると大手でもいる企業は限られてくる。

ソーシャルメディアスペースのスキルが高いだけではなく、ソーシャルメディアスペースを活用するメリット、アドバンテージを提示できない限り、中小代理店に生き残る道は少ない。逆にメリット、アドバンテージを体感できるまで活用が進んでいれば、新しいビジネスを開拓し、大規模代理店の牙城を突き崩す道は開けてくる。

2009/11/16

Auto Ad Outlook 2010

Borrell Associatetsが、「Auto Advertising : 2010 Outlook - Running On Empty」というレポートを出している。

それによると2008年、新車販売に関る広告費は全米で221億㌦だった。それが2009年には184億㌦へ16.8%もダウンすると見られている。ただし、2010年には4.1%増の192億㌦へ回復すると見られているが、本当にそうなるだろうか?
内訳をみると2009年の実績予想でもっともひどいのは新聞が28.5%減、続いてTVが22.8%減だ。これらが2010年にはそれぞれ1.9%、3.8%も増えると予想している。その根拠を見てみたいがフリーのサマリでは高望だ。
さて、オンラインは2010年に11.4%増の43億㌦と予想されている。そして、Borrell Associatesは、オンラインに関して次のように書いている。
Webは自動車広告に関して、その他多くの業界と同様に、甚大な影響を与えている。オンラインでの自動車広告に関して、「古き良き時代にはもう戻れない」ということがメジャートレンドになっている。
今年、ディスプレイバナー広告、ポップアップ、案内広告は20%ダウンした。一方、「自動車メーカーによるソーシャルネットワークキャンペーンは20%もアップした」。
また、今年もっとも伸びたのはストリーミングオーディオ、ビデオで、2010年にはそれが爆発する。
Source:Borrell Associates / Auto Advertising : 2010 Outlook

「古き良き時代」とは、広告を出しても出さなくても車が飛ぶように売れた時代、一方通行のコミュニケーションだけでも車が売れた時代、あるいは車を持つことが何らかのステータスシンボルだった時代ということだろうか?

それはTVや、新聞、雑誌ももちろんだが20%もダウンした「ディスプレイバナー広告、ポップアップ、案内広告」を見ればわかる。一方的な押付けコミュニケーションメッセージを消費するか、それとも破棄するかの選択しかなかった時代が、「古き良き時代」だ。オフラインでもオンラインでもそんな時代はとうに過ぎ去ってしまったのだ。

今、ユーザは瞬時に様々なソースから情報を収集し、家族、友人、知人、同僚などの声も参考にし、仕様・機能・価格を比較し、試乗をオンラインで手配することもできる。「新しい時代」、「ソーシャルネットワーク時代」に入ったのだ。

一方通行のコミュニケーションを意味する「古き良き時代」を抜け出し、「新しい時代」へ足を踏み入れた、例えば、Fordなどが率先している「ソーシャルネットワークキャンペーン」が、「古き良き時代にはもう戻れない」ことを意味しているのだ。「ソーシャルネットワークキャンペーン」によりFordが獲得した実績、効果、コストを目の当たりにした他社は、「古き良き時代」にしがみつく根拠を失いつつある。

そして、「古き良き時代」にしがみついている企業は、自動車メーカー、ディーラー、ディーラー団体に限らず、一方的コミュニケーション予算が削減されるとともに淘汰されるしかない。

2009/09/15

Agent of Change

10年前、MITメディアラボのNicolas Negroponteは、「代理店と言われる会社はすべて滅びる」とコメントした。彼は正しかった。代理店-メディアとブランドオーナーの間に位置する仲介者-は、今日、単なる日用雑貨サプライヤーであり、我々の先達が以前そうであったようなクリエイティブなビジネスパートナーではない。簡単に言えば、代理店は昔ほど重要ではない。
と、非常に刺激的な書き出しから始まる「Stop Being an Agency and Start Being an Agent of Change」という文を、AdAgeにWayne Arnoldが寄せている。
代理店がビジネスを作りだし、ビジネスを大きく変えてきた昔と比べ、代理店が主としてTV広告から収入を得るようになると、売上額や利益の少ないビジネスは、ビジネスを変革するようなアイディアを出したり、実行する代理店の能力とともに横に押し出された。

だから、大企業のCEOがビジネスを大きくしようとするとき、誰に声をかけるかというと、それは代理店ではなく、コンサルティング会社や会計法人のコンサルティング部門だ。

それでは、クリエイティブなビジネスパートナーになるために代理店ができることは何か?

変革の代理店になるには?
と続けている。

そして末尾近くで、彼は、
変革の代理店はデジタル革命を取り込むべきだ。広告業界が初めてひっくり返された業界ではない。音楽ビジネスの大変身はその最たるものだ。デジタルが営業、マーケティング、物流、カスタマーサービスまで全てに影響を与えている。そして、それはビジネスを変革するアイディアを創造し たり、クリエイティブなビジネスパートナーとして代理店が信頼を再獲得する唯一のテコだと信じる。
と書いている。

Source:AdAge / Stop Being an Agency and Start Being an Agent of Change

Nielsenが発表した2009年上半期の対前年比の広告費を伝えるSilcion Alley Insiderのグラフを見ると、全体で15%超の前年比減だ。CPMが高そうなメディア広告費の減少幅が大きい。CATVだけが前年比増となっているだけでインターネットも例外ではない。

Source:Silicon Alley Insider / Chart of the Day

景気が回復すれば元に戻る(はずだ)と考える向きもある。しかし、デジタル革命は広告ビジネスそのものも変革しつつある。だから、Wayne Arnoldはデジタルを取り込めと言っている。しかし、残念ながら、彼は、広告そのものの存在意義を一片たりとも疑ってはいない。

だから彼が、IBMの「The End of Advertising」や「Beyond Advertising」を読んだ後で、どのような記事を寄稿してくれるのかが楽しみだ。

参考:The End of Advertising (Online Ad 2008/08/29)
参考:Beyond Advertising (Online Ad 2009/04/30)
参考:The End of Advertising-2 (Online Ad 2009/06/04)

2009/07/15

Google's Ad Innovation

筆者がemail購読している中に「SmartBrief on Social Media」がある。7月10日のemailにGoogleのバナー広告が掲載されていた。
で、これをクリックすると以下のページにリンクされる。
(クリックでサイトへ)
Source:Google for Advertisers

サイトへ行くとOnline、TV、Mobileとカテゴリ分けされている。

例えばOnlineの場合、検索広告、ディスプレイ広告、YouTube広告、広告マネージメント、フリーマーケティングと区分けされ、検索広告のキーワード選択、ターゲティングなどから、ローカルビジネスセンターなどを使って顧客がどうして店にやってきたかを知ることができるフリーのダッシュボード提供まで説明している。

Mobileであれば、モバイルキャンペーンのキーワード選択、ターゲティング、広告作成ウィザードなどなど必要最低限のツールは何でもそろっている。

そして「Pet Stick: A 'Worst case' case study」というケーススタディもある。これは新しいキーワード選択、キーワードテスト、キャンペーンフィードバックなどの戦略、ウイジェットなどサイトコンテンツの追加、YouTubeへの展開、リッチメディアなどのクリエイティブ、そして、キャンペーンの最適化などが詰まっている。

ちょっとした総合代理店から検索やマーケティング会社が提供する資料、データ、業務、クリエイティブ、フィードバックなどがすべて手に入るスペースとなっている。ちょっと見ると、これ以外の業務を代理店が提供できるスペースはあまり残っていないように見える。

こんなサービス、スペースを提供された企業・ブランドが、今までの代理店が提供してきたサービス・業務の見直しをしないことは考えられない。今の経済状況ならそういった動きに拍車がかかる。固定費を削りながら、なんとか今まで同様の露出を継続したいと考える企業・ブランドが、このGoogleのサービスを持ち出しながら、予算削減を代理店に迫るということもありそうだ。

代理店ビジネスを脅かす大きな揺れが世界中で起こりそうだ。

ただし、このGoogleのサービスが持つ意味と、可能性を理解する企業・ブランドの存在は欠かせない。それがなければ左うちわの代理店ビジネスも続いてゆく。

さて、このバラ色のGoogleのサービスだが、まったくカバーされていないエリアがある。それはブランド構築、そしてソーシャルメディアスペースでのマーケティングだ。

Googleが提供しているのは、Web 1.0のマーケティングであり、オンライン広告手法・戦略にとどまっている。それがGoogleにとってのビジネスモデルであるだけに、そのリソースを最大活用するツール、スペースとして提供しているわけだ。しかし、このビジネスモデルで何もかもが解決できるわけではない。

Web 1.0、直販、ダイレクトレスポンスというエリアを離れた時、Googleの標準化されたビジネスモデルから提供できるソリューションが解決できる部分はあまりない。

2009/07/13

Michael Jackson on Facebook

以前、「RIM MJ」を書いた。

参考:RIM MJ (Online Ad 2009/06/27)

その絡みでちょっとFacebookを確認したところ、Michael JacksonのFacebookにあるPageには、すでに780万人以上(7月9日時点)のFanがついている。今朝はもう877万人を超えている。あっという間にObama大統領を追い抜いてFacebookで最もFanを抱えているページになっている。

InsideFacebookによれば、7月8日だけで90万人以上、1週間で454万人以上がFanになっている。チョー強烈な伸びだというほかはない。
MJのWallには、ライブ追悼式の件、追悼式の告知、無料ギフトなど上がっている。
そして、MJのFanになった筆者のFacebookページには、他のFanや友人が書き込んだコンテンツと一緒にMJコンテンツも反映されている。
ということで、Facebookは世界中に友達の輪が広がってゆくネットワークであり、コンテンツの流通チャネルであり、露出増幅マシーンでもある。

また、Facebookをメディアと捉えるとMJの場合、877万人もの読者、聴取者、視聴者がいる自前メディアを持っていることになる。自前メディアなのでコストはかからない。

既成レガシーメディアであれば双方向のコミュニケーションはもちろん存在しないし、ワンウェイのコミュニケーションを行ったところでそれを他人が知る術はない。最初から会話が成立するベースは存在していない。また、メディアから押し付けられるコンテンツを受け入れるか、あるいは拒絶するかの選択肢しかない。

ところがオンラインのソーシャルメディアスペースで最大であるFacebookのページ、Wallであれば、MJからのコンテンツも、Fanからのコンテンツもオープン、透明に供給され、消費され、共有され、再露出されているし、会話が成立する。

こういったコミュニケーションチャネルこそ、企業・ブランドが昔から、広告というメッセージを発信した時から希求していたものだ。いや、最初はマスメディアを使うことで露出を稼ぎ、押し売りするメリットを最大化しようとしていただけなのかもしれない。

しかし、2006年のANA総会でP&GのCEO、A. G. Lafleyが、

パワーは消費者が握っている
「マーケターおよび小売業者は、消費者にしがみついて後れないようについて行っている」
P&Gは長い間、消費者がどのように商品を理解、使用すべきかを教えてきたが、
「DVRや衛星ラジオなどの技術を使った広告を、いつ見たり、いつ消すかを消費者が選択している今日、小売側は消費者とともに学んでいる段階だ」
消費者があらゆる意味で我々のブランドを所有し、ブランド創造にも参加している
「我々は、消費者や好きな製品の回りに築かれるオンラインコミュニティによってコマーシャルが創造されるこのトレンドを認めるべく学習すべきだし、それを歓迎すべきだ」

と述べているように、「トップダウン方式のマーケティングからボトムアップ、グラスルーツ方式のマーケティングへ変えていかなければならない」という理解は広まり、実践するケースが増えこそすれ、少なくなったり、消えてゆくようなことはない。そして、現在、ボトムアップ、グラスルーツ方式のマーケティングの中身が変化してきている。

参考:Letting Consumer Control Marketing : Priceless (Online Ad 2006/10/17)

話をFacebookに戻すと、ボトムアップ・グラスルーツ方式から、参加、共有、コラボ、拡散、再露出というソーシャルメディアマーケティングへ移行してきた状況で、そのメディア・コミュニケーションシーンのトップに立つFacebookを活用することで、既存メディアの存在意義が薄まってくる。

なにしろコストのかからないメディアなど今まで存在していなかったのだから。レガシーメディアへの広告がなくなることはない(だろう)が、そのシェアは減るしかない。
参考:Beyond Advertising (Online Ad 2009/04/30)

新聞や雑誌広告、TVCFに金をかけ、仰々しく額装丁されたエビデンスプレートをオフィスに飾るステータスとしてのレガシーメディアが全てを牛耳っていた時代から、一般消費者・ユーザ・顧客が手綱を握るソーシャルメディアへ参加することで初めてコミュニケーションが成立する時代へ変わってきている。

こういった時代にレガシーメディアに広告を出しているだけで、ソーシャルメディアスペースで露出することもできないし、参加することなど全くできはしない。今こそ、マインドセットをシフトする時なのだが...。

2009/07/03

Client-Agency Economic Outlook

昨年のXmasイブに「Client's Perspective on Agencies」で一度、紹介したことがあるReardon Smith Whittaker (RSW) からまた新しい資料、「The 2009 1/2 Client-Agency Economic Outlook Report」が出ている。

参考:Client's Perspective on Agencies (Online Ad 2008/12/24)

eMarketerも6月25日付ニュースレターで、同じ調査結果から下の2点を取り上げていた。
  1. マーケター(メーカー側)とマーケティング(広告)代理店から見た経済状況がビジネスに及ぼす影響
  2. マーケターのメディア戦略
Source:eMarketer / What Ad Agency Clients Think

さて、eMarketerが紹介していない部分に「2009年上期に人員削減があったか」というものがある。クライアント側では「大量解雇」が10%、代理店側は8%だ。「ある程度の人員削減」はクライアント側も代理店側も43%となっている。相当程度の痛みを伴った対応がクライアント、代理店の双方でなされている。
RSWは人員削減に関して、「メーカー側人員削減により代理店への業務委託が増える。また固定費削減により予算が広告およびマーケティングに復活する」と楽観的な解説をしている。本当かしら?

そしてマーケティング予算に関してのデータがある。クライアント側マーケターの80%は予算が削減されたと回答している。11%以上の予算削減は40%にも及んでいる。代理店側も同様だが、21%以上の予算削減を食らったというケースが29%にもなっている。

21%以上も予算を削減されたのではどんな代理店にとっても大きな打撃だ。
Source:Reardon Smith Whittaker / The 2009 1/2 Client-Agency Economic Outlook Report (要ユーザ登録)

クライアント側で10%以上予算が削減されたケースが40%ということは、今までの業務形態が変わってくる。マーケティング戦略が変わってくるはずだ。

既存メディアに費やされていた業務時間・労力・リソースが空いてくる。また、「Doing More With Less」という方針はどこにも適用されているだろうから、コストのかからない露出を様々なフェーズで検討しているはずだ。

となると、早ければ今年下期、あるいは来年上期に実行を検討しているマーケティングは、既存レガシーメディアの再活用だろうか?そんなことはないはずだ。今年上期、まったくと言っていいほど抜けてしまったレガシーメディアでの露出による売上への影響が明白でない限り、レガシーメディアの効力・効果に関する話題が再沸騰する。売上が半減したところで、それは悪化、低迷した市場のせいであって広告のせいではない。

現在、検討され、近い将来実施されるだろう施策が、レガシーメディアの再活用でないとすると、それは何だろう?

下のグラフは、「マーケティング戦術ごとの予算変動」を示している。今後の予算が「Significantly lower」、および「Somewhat lower」として、大幅カットされたり、相応にカットされる部分をネガティブにとらえて「マイナス」とした。「Significantly higher」「Somewhat higher」「No change」は、そのまま「プラス」として積み重ねグラフを描いてみたものだ。
「Significantly higher(大幅増)」「Somewhat higher(ある程度増加)」を合わせて最も高いのは「Social Media」、次に「Email」「SEO」の順だ。

「No change(現状維持)」が最も高いのは「モバイル」。続いて「バナー広告」、「SEO」「TV」「RAdio」だ。

「Significantly lower(大幅減)」、および「Somewhat lower(ある程度減少)」を合わせて最もひどいのは「Print」、続いて「Radio」「TV」となっている。

これにマーケティング・広告による効果の可視性を合わせてみると、答えは明らかだ。

2009/03/05

SEM agencies

Media Postに「10 Reasons Why SEM Agencies Don't Win New Biz」という記事があった。

クライアント、SEMエージェンシー、RFP、両者の関係性、そして担当者のスキル、両社の社内体制・ステータス、両社の戦略などが絡み合った環境で、オンライン業界の先頭を走る(と思っている)SEMエージェンシー担当者の先走った声がそこかしこで聞こえてくる。
ただし、SEMエージェンシーが「なぜ新しいビジネスが獲得できないのか」ということで次の10ポイントを挙げている。
  1. They don't build personal relationships.
  2. They talk about themselves.
  3. They let their technology do the talking.
  4. They focus on features, not benefits.
  5. They don't include the right folks in the pitch process.
  6. They don't go deep enough on the prospect's business.
  7. Their pitch is littered with buzzwords and jargon.
  8. They don't demonstrate that they've done this before for a client with similar needs.
  9. They don't disclose conflicts up front.
  10. They weren't a good fit.
Source:Media Post / 10 Reasons Why SEM Agencies Don't Win New Biz

基本的にSEMだからという固有のポイントはない。どの業種、業界の営業局面、マーケティング局面でもおなじみのポイントばかりだ。

ただし、付け加えるとすると、「SEMの価値がどこにあるのか、そのROIは他のマーケティング戦術とどう比較できるのか、そしてどういった結果が期待できるのか」という根源的な問いに答えることが必要だということだ。また、「他のマーケティング戦術とどのような整合と相乗効果を得られるか」という問いにも答えが必要だ。

2009/01/30

Ogilvy Innovation Labs

Ogilvyは2007年、シンガポールに最初のDigital Innovation Labを開設し、2008年にはNY、LDN、Beijing、Sao Pauloに展開している。

Digital Innovation Labは、デジタルマーケティングにおける最新の技術や展開をクライアントが体験できる環境を備え、クライアントのコミュニケーション戦略にどのように活かしていくかを理解してもらう場所だ。
ogilvy_target-original.gif
  • NY - モバイル、ゲームおよび全面的なメディア
  • シンガポール - モバイルおよびデジタル小売・OOH
  • LDN - ロケーションベースのサービスおよびモバイル
  • 北京 - ソーシャルメディア
  • Sao Paulo - ビデオでの説得
ogilvy_bp.gifLabで最新技術を体験したクライアントの中にBP (British Petroleum)がいる。体験後、モバイルアプリおよびBluetoothを使い、BPのワールドラリーチャンピオンシップで非常に革新的なモバイルキャンペーンを実施している。そして、来年にむけて面白いキャンペーンを計画中だ。

Guinessは、シンガポールのLabが開発した「Rugby 7 Tournament Guide」を使ったキャンペーンを実施している。

Unileverは、Lab訪問し、最新技術を体験したことに感激し、独自のLabを開設することになった。

Source:MobiAdNews / Ogilvy Media Labs - Engaging Clients in the Digital Future

Ogilvy UKモバイル部門の責任者、Scott Seabornはブランドに対するLabの価値を、「船に乗り遅れないため、テストしたり、勉強したりしなければいけないと理解しているブランドはたくさんいる。Ogilvyは必要なテストをすべて一堂に集めて実施でき、そしてブランドの全体戦略の枠組みの中でできるのだ」とまとめている。

北京には、ソーシャルメディアを実体験できるLabがあるらしいが、日本の企業は招待されたことがあるのかしら。

2009/01/19

Online Video 2009

Permission TVからオンラインビデオに関する調査が昨年の12月に出ている。

まず、現在(昨年12月)どのような状況にあり、2009年Q2時点でどうあるべきかというデータがある。

現在は「オンラインビデオ戦略を検討中」が24.5%で最大。次に「オンラインビデオプロジェクトを実施中」が22.6%だ。昨年中はどうしたらオンラインビデオを効果的、効率的にマーケティング戦略に組み込むかを検討していた企業と、試験的あるいはより本格的にオンラインビデオを使ったマーケティングを実行中の企業を合わせて半分近くいたわけだ。

それに比べ2009年Q2には「オンラインビデオプロジェクトを実施中」が33.3%、「過去のオンラインプロジェクトを拡大中」が19.8%、「オンラインビデオキャンペーンの効果評価中」が15.1%だ。そういうレベルになっていたいと予想なのだが。昨年の戦略検討から、Q2までにはキャンペーンを実施していたいという希望が大きいし、試験段階からもう一歩進み、キャンペーンを拡大したり、効果検証までは行っていたいわけだ。

これらメインストリームの企業と比べると、「オンラインビデオ戦略を検討中」といった他社に大きく遅れをとっているのは9.8%になるようだ。一握りの企業はまだ踏み出せないらしい。
ここまでオンラインビデオが注目を集めているのは、「2009年、オンラインビデオが企業にとって重要な戦略目標」だからだ。「強く同意する」と「同意する」を合わせると約80%に達している。
それは2009年のデジタルマーケティング予算の配分を見ると良く分かる。オンラインビデオへの予算配分にフォーカスするというマーケターは67%にも達している。検索広告の倍近い予算が投下されようとしている。
ここまで注目を集めるオンラインビデオだが、クライアントにオンラインビデオを推奨する代理店側の自信のほどを見ると対照的だ。伝統的、あるいはフルサービス、総合広告代理店で「完全に自信がある」というのは38%、デジタル・インタラクティブな広告代理店の62%から大きく引き離されている。
Source:BtoB Online / Survey: Interactive video marketing to gain wide adoption this year
Source:PermissionTV / Adoption of Interactive Video in 2009

下の参考で取り上げたように「2008年、総合代理店を選ぶ比率は48%にまで下落」している。手間隙がかかるタスクをアウトソースしているうちに、ビッグビジネスから見放されてしまう代理店も出てくる。ただ、こういったトレンドを理解しないクライアントがいるうちは、まだまだ左団扇なのかもしれない。

参考:Client's Perspective on Agencies (Online Ad 2008/12/24)

2008/12/26

themediaisdying

Twitterのアカウントに、「themediaisdying」がある。15人の匿名グループがメディア業界の人員削減や新しいポストへの就任に関する最新情報を提供している。
スタートから3週間ほどで7,000人弱のフォロワーがおり、書き込みは347(12月19日時点)に達している。

中身はというと、わずかに新任ニュースもあるが、OMNICOMグループの3,500人削減、METRO Franceの記者12人削減、カナダのSUN Mediaの600人削減などと人員削減ニュースが満載だ。

Source:MarketingVox / Twitter Account Tracks Media's Erratic Employment Pulse
Source:Twitter / themediaisdying

アカウント名は「The Media Is Dying」であるが、削減されているのはメディアだけではない。代理店も大幅な人員削減に着手している。

インターネットがメディアとして確立し、ユーザのメディアシフトが進行してきた。次に広告ビジネスにもその影響が出始めてきた。30秒スポット数十万~数百万㌦というビッグビジネスにほころびが目立ち始め、手間と暇がかかるオンライン広告へ誰もがなだれをうってきた。しかし、オンラインであろうと広告は広告で、CTRは0.1%以下と誰も見向きもしない状況だ。検索広告とて、名の売れているビッグブランドではなくロングテールが金融危機以降も下支えしてくれるかは不明だ。Googleも安泰ではないかもしれないし、代理店のビジネスが危機を迎えている。

言い古された言葉だが、「パラダイムシフト」が起こっている。そしてこのパラダイムシフトは企業・ブランドのマーケティング戦略・手法にも波及してきた。わざわざ高いメディア費を支出してマーケティングする必要のないケースも実証されつつある。自社メディア・リソースを活用することで社外のメディアを使う必要もない。

パラダイムシフトに対応するには、マインドセットをシフトしなければならない。

さてさて、来年はどんな年になるのだろうか?

少なくとも読者の皆さんを含め、筆者にも明るい年であることを願って今年の書き込みを終了します。
よいお年を!

2008/12/25

Twitter drives real revenue

Venture BeatがTwitterを活用したDellのマーケティングをInternetNewsの記事を伝えている。InternetNewsによると、「Dellは、過去1年半の間に特売情報を提供することで100万㌦の売上を上げた。DellをフォローするTwitterユーザはDellのアウトレットストアでの特売情報を受信することができ、直接購入することも、あるいはその情報を他の人たちに転送することもできる」そうだ。

下はDellのアウトレット関連のひとつのTwitterページ。Dellには65のTwitterグループがあり、Dell Outletには2,475人のフォロワーがいるそうだ。

Source:VentureBeat / Twitter has made Dell $1 million in revenue
Source:InternetNews / What Keeps Twitter Chirping Along

ところで、下のDellOutletのフォロワーは3,007だ。IntenetNewsが10日に記事にしてから2週間程度で600人近くが増えたようだ。
なお、USだけではなく、UKのDellもTwitterページをいくつか立ち上げている。

さて、Dellは、新聞折り込み広告・チラシの替わりにTwitterを利用して最新ディスカウント・特売クーポン情報を提供し、100万㌦の売上をあげていることになる。折り込み広告やチラシ印刷コスト不要のソーシャルメディアマーケティングということになる。

100万㌦の売上を上げるために必要なメディア費、制作費を考えてみるといい。代理店の手数料を考えてみるといい。今のところタダのTwitterと比べようもない。ソーシャルメディアを活用するマーケティングを企業・ブランドは確実に身につけてきている。

広告の販促効果に関して長い間、その是非が問われている。しかし、このTwitterは確実に非常に高い、ROIを示してその効果を実証している。このマーケティングに代理店は不要のように見える。メディアや代理店が指し示せない(ソーシャル)メディアで販促効果が確実になっている。広告を出すから品物が売れる時代ではなくなってきた。

さて、下は様々な特売情報を提供している「dealnews」のTwitterページ。ここにもDellなど多くのメーカーの特売情報が満載だ。Dellのように独自にTwitterをいくつも立ち上げなくともこんなTwitterに取り上げてもらえるだけでも販促効果はありそうだ。

2008/12/24

Client's Perspective on Agencies

クライアントから見た代理店の評価といった資料がReardon Smith Whittakerから出ている。年間100万㌦以上のマーケティング予算を投下する企業のCEO/CMO/VP Marketing、ブランドマネージャ達などを対象に調査したものだ。

代理店の仕事にどれくらい満足しているかとか、次の仕事にも使うかとか、期待した結果を出したかとかいろいろある。その中に総合(Full service)代理店の比率が下がってきているグラフがある。
2006年には60%弱あった総合代理店を選ぶ比率が、2008年は48%にまで下降している。その代わり、インタラクティブ代理店が10%、モバイルマーケティング代理店が1%、マーケティング調査代理店が8%などと業務が分散されてきているようだ。

また、クライアント側が最も興味のある新しいものとして次が挙げられている。
最も興味を引いているのは「Online Marketing」が69%、「Buzz & WOM」が58%、「Brand Experience/experimental marketing」が53%となっている。

Source:Ad Week / New Study Reveals What a Client Wants in a Agency
Source:Reardon Smith Whittaker (要登録、pdf)

総合代理店が既成マスメディアを使ってビッグビジネスを享受していた時代が過ぎつつあり、手離れが悪く、総合代理店からするとROIの低い「Online Marketing」や「Buzz & WOM」をインタラクティブ代理店が侵食しているといった格好だろうか。

これからソーシャルメディアマーケティングの効果、効率が理解されるに従って、インタラクティブ代理店のシェアはもっと増えてゆく。金融危機による広告費削減の影響をまともに受ける総合代理店の試練は続く。

一方、クライアント側は削減された予算の中で効果、効率を求められる。しかし、今までどおりに代理店の提案を受け入れているだけでは何も始まらない。だが、Full Service代理店以外にインタラクティブ代理店を追加する、あるいは業務のアウトソースをするといったことを検討しているのだろうか?マインドセットが変わらない限り、日本のグローバルブランドもWeb 2.0と今回の金融危機の嵐の中でブランドエクイティを下げざるを得ないのだろうか?