2009/10/30

Listen, Participate and Engage

10月27日付けeMarketerのニュースレターに「American Brands that Inform」がある。

「ブランドが実行できる米国インターネットユーザにとって最も適した、受け入れられやすいアクション」として以下が挙げられている。当然、「値引き」が五段階評価の3.9でトップ、2番目から5番目まではブランドがやらなくても済む話だが、6、7、8、9、11番目になると、如何にユーザがブランドとエンゲージしたいかが分かる。
  • 6位:ユーザに適した場所に広告する
  • 7位:ユーザが企業・ブランド、あるいはスタッフとやり取りできるプラットフォームを作る
  • 8位:ユーザが製品を使えるライブイベントを開催する
  • 9位:オンラインコミュニティを作る
  • 11位:ユーザが他のユーザと会えるリアルなコミュニティを作る
そして、「米国インターネットユーザが製品購買意思決定のために情報を収集した信頼できるソース」として以下が挙げられている。ここでも当然、家族が五段階評価の4.2でトップ。親友が4.1、業界エキスパートが3.8と来て、「ソーシャルネットワークのコンタクト」が隣人の3.2と同率で4位になっている。基本的に顔の見えない「ソーシャルネットワークのコンタクト」が、顔の見える隣人と同率の信頼を獲得するところまで来ているのが分かる。
Source:eMarketer / American Brands that Inform

プラットフォーム、イベント、コミュニティを作って、ユーザとエンゲージしてくれと言われている企業・ブランドに「聞き耳」戦略がなければ、これらユーザの要望を知ることもできない。それらのスペースで語られるお金に代え難いユーザの意見、アドバイス、批判を無視し、見逃すことになる。

そして、そうこうしている間に、製品購買意思を決定する情報収集プロセスに大きな比重を占めつつある「ソーシャルネットワークのコンタクト」からブランドが語られている。この「ソーシャルネットワークのコンタクト」は、どこからそんな情報を仕入れているかというと、マスメディアもあれば、ソーシャルメディアもある。対面WOMもあれば、オンラインWOMもある。ただ、企業・ブランドがソーシャルメディアスペースに参加し、Facebookファンページでユーザとエンゲージしていたり、Twitterでつぶやいていればいるほど、そのコンタクトがブランド情報を仕入れやすくはなる。

Susan BoyleのファーストアルバムをTweet/RTしたり、Southwestのバックパック話をリレーしている数多の「ソーシャルネットワークのコンタクト」を考えると、対面WOMよりも各種制限がなく、世界中に広がるオンラインWOMが一層、パワーを持ってくることは明らかだ(本BlogでWOMとは、Word of MouthやWorld of Mouthではなく、Web of Mouthを言う)。

参考:Susan Boyle Debut Album: Online WOM (Online Ad 2009/08/28)
参考:Southwest: Brand Royalty (Online Ad 2009/10/26)

そして、ソーシャルメディア専任担当者がいる企業・ブランドは、Facebookでも、Twitterでも、ユーザと対話しながら、ブランド体験を広めてゆくことになる。

2009/10/29

Online Consumer Behavior 2009

先週、Top Brands by Social Mediaを書いた。

参考:Top Brands by Social Media (Online Ad 2009/10/20)

そこで引用したReadWriteWebの記事末尾に、次のような記述がある。
ところで、ソーシャルメディアスペースにおけるMcDonald's、Marlboro、そしてToyotaに関するコメントは一概に否定的だ。

WildfireがTealeaf向けに行った別の調査によると、英国成人の74%は、製品やブランドに関する否定的なコメントは、その会社に注文する見込みに否定的に影響すると応えている。
Source:ReadWriteWeb / The Top 3 Brands by Social Media Presence

ということで、Tealeafの調査データを見てみると、この74%というのは、「オンライン注文時にWebトラブルを経験した成人1,651人」のうち、「オンラインで否定的なコメントを読むと74%は、その会社に注文する見込みに影響する」ということだった。
そして、
  • 78%はオンライン注文時にトラブルを体験した場合、それを他人と共有する
  • ユーザは、特にソーシャルメディアスペースでの友人・知人を信頼する
  • 56%は悪いレビューを読んだ後、そのベンダーへの注文をやめる
ただし、悪いことばかりではない。
  • 52%は良いレビューを読んだ後、そのベンダーへ注文した。
アドバイスとして;
  • 企業Webを顧客がどのように利用しているか、なぜ顧客がトラブルにあうのかモニターしろ
  • 顧客の声を聴き、Webサイトに何を望んでいるのか話すように仕向けろ
  • いかなるWebサイトの問題にも迅速に対応し、大多数の顧客に影響が及ぶ前に問題を解決しろ

  • ソーシャルメディアスペースで体験を共有する際、33%はベンダーからのレスポンスを期待している
最後の一枚に3つのキーワードがある。
Source:Tealeaf / 2009 Survey of US Online Consumer Behavior

この頃は、どうやらどこを見渡しても「オンラインモニタリング」から逃げ出せそうにない。

モニタリングしていなければ、どれくらい否定的なコメントがソーシャルメディアスペースに充満しているのか、どのルートで拡散しているのか、そして、一体全体、何が原因なのかも分からない。また、どのような対処を行うべきかも分からない。

最もクリティカルなのは、ベンダーからのレスポンスを期待する33%のユーザを無視、拒否していることも分からないことだ。なぜなら彼らはブランドとエンゲージしようと待っていてくれるからだ。

2009/10/28

Social Search Impact

AltimeterのCharlene Liと、Jeremiah Owyangが「Social Search: Customers Influence Search Results Over Brands」というポストを上げている。

GoogleおよびMSとTwitterとの契約、MSとFacebookとの契約を紹介し、このトレンドこそ、企業・ブランドがマーケティング、サポート、戦略構築を行うために一層、リアルタイムおよびソーシャルメディアスペースに注目すべきだとしている。

そして、エコシステムへのインパクトを挙げている。
  • Deal Fills In Technology and Relationship Gap for Twitter
  • Social Search to Serve Results Based On Time, Authority
  • To Compete, Facebook Must Make More Content Public
  • Twitter's Future: Seamless Integration with the Web
  • Consumers Influence Search Results
Deal Fills ...は言わずもがなだし、Social Search ...で言う、様々な属性が付加されてくるのも同様。Twitter's Future: ...もそうだろう。ただし、To Compete ...はどうなるか不明だ。そして、最後のConsumers Influence ...が、本当の意味での「Social Search」を代表するものとなる。

今、Google.comを使って「Hudson River」を検索すると、Wikipedia、Map関連、ニュース関連、そしてHudson公園、団体、観光名所、Blogポストなどが結果として上がってくる。しかし、数ヵ月先には、携帯で撮った不時着機の画像、映像を発信したTwitterコンテンツが登場することを想像するだけでいい。企業・ブランド名を検索した時、Twitterコンテンツが登場することを想像するだけでいい。

長年にわたり営々と築き挙げてきた累積コンテンツ、リンク網、引用数を誇るコンテンツの上位に、例えば12歳の少女が暇つぶしに携帯から発信したTweetがひょっとしたら来ることになる。Enquiroが示したGoogleの黄金の三角地帯のトップに無名も無名のつぶやきが来ることになるかもしれない。

参考:Chinese Search Engine Engagement (Online Ad 2008/01/23)

今はまだベータだが、下のBing、そしてGoogleにTwitterコンテンツが表示されるようになる時、BingにFacebookコンテンツも表示されるようになる時、企業・ブランドのコンテンツ価値、そして検索価値は今とは比べようもなく下がることになる。
次に、お持ち帰りの重要項目として、「Customer Impact Brand Search Results Using Twitter」を挙げ、3つ詳説している。
  1. Develop a Listening Strategy That Starts With Roles and Process
  2. Change The Marketing Mindset - Legacy Methods Ineffective
  3. Develop Influence Marketing Programs
いずれも言わずもがなだ。

特に最初にある、Develop a Listening Strategy ...は、日常的なモニタリングに加え、迅速な危機管理・対応にも関ってくる。

AlterianのWebinarでForrester ResearchのSuresh Vitallがプレゼンした中にP&GのKim Dedeker、VP、Global Consumer and Market Knowledgeの言葉がある。
In 2009, P&G will ... focus on listening. Our goal is to reduce the amount spent on traditional research by half and to devote the remaining 60% to "listening" research.
"listening"の前に、"online" を入れるのが彼女の言葉の正しい理解になる。消費者の声、オンラインバズを聞かずして何も始まらないことを理解する企業・ブランドは、今までのレガシーメディア調査予算を半減しても、オンラインモニタリングに残りの60%を費やすわけだ。

そして、3番目のDevelop Influence Marketing ...は、今までのページランクではなく、個人のオーソリティがランクされることから今後、企業・ブランドが確実に導入すべきマーケティング戦略となる。

Source:Altimeter / Social Search
Source:Alterian

CharleneとJeremiahが2番目に挙げている、Change The Marketing Mindset ... は、検索マーケティングの技術論的ではあるが、Social Search、Consumer Influence、Develop a Listening Strategy を合わせると、「マーケティングの固定観念を変えろ」となる。

2009/10/27

Share of Global Online Time

Web 2.0サミットでMorgan Stanleyのアナリスト、Mary Meekerが行ったプレゼン資料がScribdに上がっている。
Mary Meeker's Internet Presentation 2009

Source:Scribd / Mary Meeker's Internet Presentation 2009

特に目を惹くのはYahoo、MSN、Google、YouTube、そしてFacebookの消費時間シェアだ。3年前にはYahoo、MSN、Google、そしてFacebookがほんの少し頭をのぞかせているだけだ。3年たってみると、MSNは見る影もなく、Yahooもシェアは半減している。しかし、YouTubeはシェア4%強、FacebookはYouTubeを上回っているようだと思っていると、
次のスライドがFacebookが消費時間でYouTubeを上回っていることを実証してくれる。
曰く、Facebookは毎日60億分以上が消費され、毎週20億個以上のコンテンツ、毎月20億枚以上の写真と1,400万本以上のビデオが共有され、35万本以上のアプリと100万以上のアプリ開発会社がいるトップサイトだとされている。

YouTubeのユーザ増加率が前年比35%増、Facebookは153%増となっているので、来年早いうちには、Facebookがユーザ数でも上回りそうだ。

さて、このFacebookにおいてソーシャル広告を出して公式Webサイトなどへのトラフィック誘引をするだけでは、コンテンツ消費も共有も起こらない。況や、自由で、自発的で、参加者を突き動かすようなムーブメントは起こりようもない。それは広告1.0でも、2.0でも、3.0でも変わらない。企業・ブランドのコンテンツを一方的に消費させるためのチャネルはソーシャルメディアスペースには存在しないからだ。

企業・ブランドがスペースに参加、ファンページを持ち、ユーザとオープン、対等、双方向の会話をしなければならない。それはTwitterでも同じだ。そして、一般ユーザがFacebookやTwitterから発信するメッセージ、コメント、コンテンツが他の人たちを動かしている。他の人たち、ユーザがそれらを消費し、共有している。このうねりは何も企業・ブランドだけが影響を受けるわけではない。

Googleにしても、Bingにしても、このコンテンツをインデックス化し、検索できるようにしなければ検索エンジンとしての存在意義が失われてしまう。だから、先週、GoogleおよびBingは、リアルタイムのデータストリームへのアクセス権をTwitterと契約している。BingはFacebookとも同様の契約をした。

そして、この動きは検索エンジンから企業・ブランドへ戻ってくる。そこら辺は明日。

2009/10/26

Southwest: Brand Royalty

San Francisco ChronicleのParentingというBlogを書いている記者、Peter Hartlaubは、例えばWest Virginiaへ出張する際、航空会社Aは直行便があり、Southwest Airlinesを使うと4回の乗り継ぎをしなければならないし、ひょっとしたホッケーの試合が終わったばかりで汗だらけの選手たちで満員の飛行機に乗らなければならないとしてもSouthwestを使うと書いている。

そのわけは、彼の4歳の男の子、Theoのバックパックを見つけてくれたからだ。

ことの始まりはUtahへ夏休みに出かけた際、Theoのバックパックをどこかに置き忘れてしまったことだ。Peterの伯父さんの誕生日に贈る50㌦の第二次世界大戦のドキュメンタリDVD、本とおもちゃが入っただけのバックパック。ただし、このバックパックは妻の友人からのプレゼントで男の子の名前が刺繍されている。飛行機の中なのか、空港なのか、それをどこで失くしたのかさえ分からない。

遺失物係に連絡した処で、回答があるとは誰も思わない。実際のところ、本当に調査してくれるのかさえ分からない。ま、電話だけはしてみるが、期待するほうがおかしいといったケースだ。

だから、旅行から二週間後にSouthwestのLouis Beginが電話をかけてきたのは、青天の霹靂以外の何物でもなかった。

さて、Louis Beginはどうやって彼の家まで辿り着いたかというと。まず、バックパックにあった本に残っていた書店の領収書から、本を買った女性、その女性が開いたタッパーウェアパーティのようなパーティ、そのパーティに参加した妻の名前、妻をパーティーに誘った参加者まで辿り着いたが、調査はここで一旦、途切れる(ここから先に進めなかったのは長い話があるようで彼のBlogでも「long story」とされている)。

それでもLouis Beginはあきらめずに調査を継続し、バックパックが見つかった搭乗機の情報からPeterの義理の母親の名前を見つけ出し、母親から娘の電話番号をゲットしたとのこと。

連絡から数時間後、小さなカードを添えてバックパックは持ち主に戻された。
We thought it was lost forever.If my knowledge of 20th century poets is right, the prose is by Maya Angelou.
Source:San Francisco Chronicle / Blog / My son's lost backpack, or why I'll be flying Southwest from now on

PeterはBlogの最初に、「大企業によいしょするような記事を書くのをためらった」。しかし、「書くことで予想される声などを考慮してもSouthwestの話を取上げることにした」と書いている。

そして、この心温まるエピソードを紹介した後に彼は次のように締めくくっている。
I've developed a fierce loyalty to businesses that are nice to my kids. I don't expect special treatment as a parent, but I greatly appreciate it and go out of my way to reward it.

I've always liked Southwest, mostly because it's a fairly low-maintenance airline, the people are friendly and they have an entire terminal at my airport of choice.
--中略--
Now I'll be going out of my way to fly with them, and telling other people to do the same.
ブランドがブランドレピュテーションやロイヤルティを作るのではなく、人々が作るものであること。ブランドを所有しているのはブランド自体ではなく、彼のような一般の消費者であることが明らかだ。

そして、彼のおかげでバックパックが戻ったTheoはもちろん、Peterや、その家族・親戚、友人、知人、PeterのBlogやTwitter読者にも伝わるのは、Southwestという企業・ブランドの価値と、それを支えるLouis Beginの人となりだ。

そして、このエピソードを伝えたMarketingProfs、1to1 Media、American Copywriterなどから米国ユーザはもちろん、果ては、まるで関係のない日本のBlogユーザにも伝わってゆく。

Source:MarketingProfs / Lesson Learned From a Backpack
Source:1to1 Media / Everyday Customer Champion
Source:American Copywriter / How a lost backpack found Southwest found lot more loyal customers

この話を心温まる良い話だとするだけなのか、それともこれをドリルダウンして例えば広告・広報コストとして試算してみるのか、あるいはBlog、Twitterセンチメントへの貢献を計測するのか、はたまた、ソーシャルメディアを使い顧客・ユーザにもっとブランドを語ってもらおうと計画するのか、いずれがベストだと考えますか?

2009/10/23

Ford Social Media Marketing

このところ立て続けにFord、Scott Montyを取上げていたが

参考:Ford: Online Monitoring (Online Ad 2009/09/17)
参考:Ford Social Media Strategy (Online Ad 2009/09/30)
参考:Scott Monty Video (Online Ad 2009/10/14)

BusinessWeekでも、Fordのソーシャルメディアマーケティングについて伝えている。

それによれば、Fordは、今年、マーケティング予算の25%をデジタル分野へ投下(これは業界平均の2倍)している。J.D. Powerによれば業界は平均で9%をデジタル分野へ投下、2012年には12%へ上昇(TVやプリント媒体予算の削減分が当てられる)するようだ。

という前ふりがあり、J.D. PowerのコンファレンスでFordのCMO、James Farleyが語った言葉を紹介している。
我々が行っているように、会社を最初から作り直していることをコミュニケートしたいのなら、それを言うだけでは十分ではない。人々がそのことを他の人たちに伝えるようにしなければならない。
そして、ブランドイメージや購買意思に関する計測指標が上がり続けていることに関して、Scott Montyの言葉を紹介している。
Fordは、デジタル、そして特定のソーシャルメディアが重要な推進力になっているという仮定を持っている。

今年に入り、公的資金を唯一受けなかった自動車メーカー、株価上昇、J.D. Powerによる高い製品評価、Consumer Reportのレポートなどのニュースが、ブランド認知を向上させている。しかし、デジタルコミュニケーションがそれらニュースを増幅させ、消費者の間にこだまさせている。我々が今、享受している機会を広告に帰するのは難しい。
Source:BusinessWeek / Ford Spending 25% of Marketing on Digital and Social Media

「会社を最初から作り直していること」とは、広告あるいはPR、マーケティング戦略を単純にデジタル化しているということではない。企業・ブランド、マスメディア、消費者というゴールデントライアングルを固定観念とすれば、そこから脱却し、観念を転換することを意味する。その前提には、ブランドを所有しているのが企業・ブランドから、消費者に移ったという厳然たる事実を甘受する冷静な認識が必要だ。その認識があって初めて、広告あるいはPR、マーケティングをデジタル化するのではなく、何をデジタル化すべきかが見えてくる。

BusinessWeekの記事でFordのソーシャルメディアマーケティングの一例として広告費「ゼロ」のFiesta Movementが取上げられている。Fiesta Movementが潜在購買(予定)者5万人を獲得しているということは、その10%が実際に購買したとしても数十億円規模以上の売上を上げることになる。Dell_Outlet以外にも、広告費「ゼロ」のソーシャルメディアマーケティングが新しい金字塔を打ち立てることになる。

いや、ソーシャルメディアマーケティングのROI的な話よりも、そこで共有されているのが企業・ブランド側からの固定観念の共有ではなく、個人消費者のリアルな体験だということに注目すべきだろう。そして、その体験が他の人たちに伝えられているということも。

なお、今、Scott Montyの担当テリトリは北米だが、これがグローバルに拡大されるようだ。

2009/10/22

LinkedIn reached 50 million

LinkedIn参加メンバーが5,000万人を超えたようだ。2008年の4月に2,000万人を突破したと書いたから、おおよそ1年半で3,000万人増えたことになる。

参考:LinkedIn passed 20 million users (Online Ad 2008/04/25)

2003年にスタートした時点では100万人増えるのに477日かかったそうだが、今では100万人増えるのに12日しかかからないそうだ。5,000万人の半分は米国以外のユーザで、1,100万人は欧州、インドは300万人、オランダのユーザは人口の30%にも達している。

LinkedInのAboutに下のビデオが上っている。(ちょっとおかしい日本語版もあるので、そちらはAboutへ)



Source:LinkedIn blog
Source:LinkedIn/About

Facebookが3億人、YouTubeが多分3.3~3.5億人、そしてLinkedInが5,000万人と、世界中のユーザがソーシャルメディアスペースに集っている。このパラダイムシフトを受けて、一部ではFacebookをマーケティングの核に据えようとする動きもあるが、まだ、今までの広告中心のマーケティングから完璧に抜け出したケースはない。ただし、Facebookをグローバルなブランディングに活用するため、19の国・地域向けのインタフェース、タブを用意しているブランドはある。

さて、B2B/B2Cであれ、CSRや慈善事業であれ、FMCGやITであれ、もはやソーシャルメディア抜きに語れないところまで来ている。そして、モニタリングしていないと、どの国のユーザがブランドに対して何を言っているか分からず、競合ブランドがどんな新しいマーケティングを行っているのかさえ分からない。

今、ソーシャルメディアスペースの調査さえしないのでは、これからの5年、10年先に、そのブランドが存在しているかどうかさえ怪しいと思える。

2009/10/21

Social Media for PR

Susan PaytonがMashableに「How to: use Social Media in Your PR Pitch Plan」を書いている。
パブリックリレーションズが変化している。ジャーナリストにemailを送ればメジャーなニュースチャネルのカバーに記事が載るなんてことはなくなってきた。いまどきのジャーナリストは山のようなプレスリリースに埋まって、「削除」をクリックしながら前に進んでいる。
どうすれば騒音をかき分け、売り込みを聞いてもらえるのか?
それは会話、エンゲージメント、インタラクションだ。
と書き出し、彼女は以下を挙げている。
  1. Social Media is Key in Your Pitch
    今時のメディアのコンタクトがうろつき、記事のアイディアを探っている場所はソーシャルメディアスペースだから
  2. Social Media as a Learning Tool
    ソーシャルメディアスペースはコンタクトしようとするメディア、ジャーナリストを知ることができるから(記者、ジャーナリストはBlog、SNS、Twitterでプロファイルを公開している)
  3. Be A Resource
    ソーシャルメディアスペースをモニタリングすることで、特ダネ、記事ネタを探しているメディア、ジャーナリストに情報を提供することができるから(直接的な製品売り込みにはならなくても、情報提供の報酬が期待できる)
  4. How to Pitch Properly
  5. Forming Your Overall Strategy
Source:Mashable / How to : use Social Media in Your PR Pitch Plan

彼女のポストに対して、1,260回のTweetsと、45回のSharesが記録されている。
Mashableのポストに対して毎回、数百のTweetsや数十のSharesが記録されるのは珍しいことではない。しかし、1,000Tweetsを超えるのは1週間に1本か2本だろう。彼女のソーシャルPR記事は、その1本になっている。

これだけの注目を集めたということは、いかにソーシャルメディアをPRに導入しているケースが少ないかを物語っている。

ある意味で、広告よりもPRのオンライン対応、ソーシャルメディア対応は遅れているのかもしれない。PRと言えば、メディアリレーションズが最初に来るほど、メディアとの関係構築が重要視されている。しかし、ソーシャルメディア時代に入り、関係を構築すべきメディアはマスメディアだけではない。人々、グループ、ファン、友人といった個別存在と人的コネクションそのものがメディア、ソーシャルメディアとなっている現在、このソーシャルメディアを活用しない、できないPRは存在意義そのものが問われていると言っても過言ではない。

2009/10/20

Top Brands by Social Media

ReadWriteWebが、Sysomosのソーシャルメディアプレゼンスをベースにしたトップブランドランキングを伝えている。

ReadWriteWebも書いているように、このランキングはInterbrandが採用している財務データだとか、経済的な付加価値だとかは関係ない。Blog、フォーラム、ニュースサイトなどのソーシャルメディアスペースにおけるプレゼンスから判定している。

だからInterbrandランキングでトップのCoca-Colaは11位だし、7位のGoogleはSysomosではトップになっている。
なお、Sysomosはセンチメント判定もやっていて、そのトップにはSamsungが座り、Nokia、Intel、IBM、そしてCiscoが続いているそうだ。

Source:ReadWriteWeb / The Top 3 Brands by Social Media Presence

家電メーカーとしてSamsungがランキング9位に顔を出し、センチメントでトップに座っているということは非常に大きな意味を持つ。FacebookやTwitter、フォーラム、BlogなどのソーシャルメディアスペースでSamsungブランドが語られているのだ。そして、肯定的なポスト、コメント、エントリ、メッセージにおいてSamsungがトップなのだ。

下の参考で書いたようにソーシャルメディアを意識したマーケティングを行っているSamsungだからこそ、ソーシャルメディアスペースにおける露出、共有、再露出も当然のごとく増えてゆく。

参考:Extreme Sheep LED Art (Online Ad 2009/03/24)
参考:Samsung LED TV Campaign (Online Ad 2009/04/16)

そして、この露出は何も米国に限った話ではない。YouTubeに上がっているExtreme Sheepのビデオは全世界のユーザが視聴しているし、バズの30%は非英語になっている。

すぐにでも手を打つ必要がある状況だ。


Source:YouTube
Source:ViralVideoCharts

なお、Interbrandのランキングの重要性や意味は変わらないだろうが、Sysomosなどが提供するソーシャルメディアにおけるブランドランキングの重要性や意味はこれから一層、重きを増してくることは間違いない。

2009/10/19

US TV Ad Spending in 2009 Q2/1H

TVBから2009年Q2および1HのTV広告費データが出ている。

Q2は全体で前年比12.8%(14億㌦)減の96億㌦だ。上半期も前年比12.3%(28億㌦)減の201億㌦だ。
カテゴリ別に1H実績を見ると、マイナスもあるがプラスもあるといった昨年の1H時点とは違い、25カテゴリ中、プラスになっているのは2カテゴリのみ。他はすべてマイナスだ。中でも自動車が前年比53.3%(7.3億㌦)マイナスの約64億㌦でしかない。
(注:下図の2008、2009は左右逆になっているようだ)
広告主トップ25を見ると前年比で増えたのはVerizon、Time Warnerなど4社だけ。72.5%も減らしたNissanを筆頭に、Toyotaが60.9%減、Chryslerが51.8%減、Fordが39.4%減となっている。
(注:下図の2008、2009は左右逆になっているようだ)
Source:TVB Online / Ad Revenue Track

広告主トップ25を何度も見直したがGMが顔を出していない。4月のChryslerに続き、6月に経営破たんしたGMだが、Chryslerは前年比51.8%だが7,192万㌦を支出している。しかし、GMはトップ25に顔さえも出していない。

昨年のデータを取上げた際、
Ad Ageの3月18日に「GM Roars Forward Into Digital Ad Channels」という記事があった。それは今後2~3年間のうちに、年間30億㌦の広告予算の半分を、TVおよび印刷媒体からデジタルおよび消費者ダ イレクトチャネルへ移行するというものだ。GMは過去数年間で数億㌦をTVおよび印刷媒体から引き上げ、デジタルおよび消費者ダイレクトチャネルへ投下し ている。
と書いた。

ブランド廃止・売却、経費削減、組織統廃合など、まだまだ再建途上だし、個々のメディア予算がどうなっているのか不明なので確定的なことは言えないが、少なくとも一部ではそれが実行されているようだ。

参考:US TV Ad spending in 2008 Q2/H1 (Online Ad 2008/08/25)

そして、ReutersによればGMのQ3の米国内シェアは19.5%だ。TVCFなしでもこれだけのシェアを取れると見るか。あればもっとシェアは高くなると見るか。どちらだろう?

Source:Reuters / GM assumes 19 percent-plus U.S. market share-director

なお、よく、他社が広告費を削減している際には広告費を増やしてシェアを取れとか、景気が減速している今だから広告を出すべきだなどという声が聞こえてくる。しかし、こういった声にマーケティングの本質、真実はあるのだろうか?

2009/10/16

Philanthrophy for New Consumer

BBMGから、「From Legacy to Leadership: Is Philanthropy Ready for the New Consumer?」というホワイトペーパーが出ている。

昨年のリーマンショック以降、経済状況の変化は、個人や企業だけではなく、慈善活動・団体にも重大な変化を及ぼしている。米国の著名団体、Nature Conservancy、AmeriCares、Red Cross、Boys and Girls Clubなどはレイオフやサービス縮小などがアナウンスされている。

そんな中、消費者が重要だと感じる項目にも変化が及んでいる。自身の健康、教育、安全な飲み水といった個人的な事柄がトップ3となっている。その後、疾病、代替エネルギー、労働、貧困など他者、社会、地球など自分から少し離れた事柄、「社会的な意義」が続いている。
こういった変化は何も経済状況にだけ応じておこるものでもない。消費者の意識、消費者を取り巻く環境そのものが変わって来ているからだ。

消費者が社会的な意義を見出す活動そのものが、どのようなメリットを生み出すのか、どのようなインパクトを自身にもたらすのか、そしてそれがどのように見られるかを可視化しなければ、企業が行う慈善活動に賛同し、参加するアクションを起こす消費者は少なくなってきているということだ。

そこでBBMGは、Philanthropy 1.0から、期待される、あるいは、あるべきPhilanthropy 2.0への変化を示している。
Source:BBMG / Whitepaper

あるべきPhilanthropy 2.0として示されているもののうち、
  • 啓発された自己興味
  • 賛同者のコミュニティへ
  • ボトムアップ
  • 多数の声
少なくとも上の4つを生起させているのは、今、消費者に大きな変化、影響を与えているもの、すなわち、ソーシャルメディアスペースではないだろうか?

例えば、FacebookにあるKellogg Careのページがやろうとしていることに上の4つは組み込まれているはずだ。
参考:Cone Summer 2009 Cause Trends Report (Online Ad 2009/10/09)

Kelloggのケースがベストではないが、少なくとも変化する消費者、賛同者、支援者が集うスペースに参加し、そこでの露出と共有を行っている。以前の ままのCSR、慈善活動では立ち行かない状況が見える中、社会、環境を変えつつあるソーシャルメディアスペースを活動に組み込んでいかなければ期待される効果は上がらない。そういうことではないだろうか。

自社Webサイトで様々な慈善活動、社会貢献を紹介している企業・ブランドは多い。しかし、そのコンテンツを紹介しているだけでは変化する消費者の価値観、意識からは離れたものになってしまう。ということは、コンテンツを消費も共有もしてくれないということだ。

Philanthropy 2.0とは、コンテンツ・意義を共有してもらい、可能な形で活動の支援を要請し、活動を広め、支援者やサポーターを育成し、彼らに主導権を取らせるまでに権限を委譲してゆくことを意味する。企業・ブランド、マスメディア、消費者のフレームワークで起きていること、パラダイムシフトを意味している。

2009/10/15

Online Travel Update

最近、HitwiseとExperianが、Global Online Travel Update Webinarをアップしている。

下はUK、豪、USにおけるオンライン消費時間シェアを2006年8月から2009年8月までを見たものだ。3年前と比べると半分には落ちているがUKユーザは3%強の時間を旅行関連で消費している。豪、USは2%前後ということになる。
次に検索エンジンから旅行サイトへのインバウンドトラフィックは3カ国ともに35%を超え、豪は45%近くにまで達している。
UKにおける旅行目的地別の検索シェア、トレンドを見ると、EUおよびUS関連検索シェアが下がり、その他およびUK国内向け検索シェアが上がっている。特にその他が3.4%も伸びている。
そして、旅行サイトへのトラフィックのうち、UKでも3%前後、豪は4%、そしてUSは6%程度がemailから生成されている。
また、旅行サイトへのトラフィックのうち、ソーシャルメディアサイトからはUKおよび豪で4%前後、USは5%程度となっている。
Source:Hitwise / How do people search for travel in the UK?
Source:Webinar / Global Online Travel Updatge

検索、email、SNSといったところがポイントになっている。中でもUK、豪、USの3カ国ともにインバウンドトラフィックのソースとしてシェアが基本的に右肩上がりで来ているSNSだろう。

Hitwise/ExperianのWebinarには、ソーシャルメディアを活用してトラフィック誘引に成功しているケースが3つ、4つ紹介されている。いかにソーシャルメディアスペースへの参加と、オープン、対等、双方向でのエンゲージメントが重要かが分かる。

しかし、何も成功例を参考にするのは旅行関係である必要はないのだが...。

2009/10/14

Scott Monty Video

先日、紹介したFordのScott Montyだが、

参考:Ford Social Media Strategy (Online Ad 2009/09/30)

彼のビデオがVimeoに上がっていたのでこちらも紹介する。

Zero to 60: Ford’s Social Media Story, by Scott Monty; presented by GasPedal and the Social Media Business Council from GasPedal on Vimeo.

Source:Vimeo / Zero to 60: Ford's Social Media Story

彼のプレゼンには次のスライドがある。
この明確なソーシャルメディア戦略があり、多様、複層した露出・タッチポイントにおいて、顔の見えるブランドとして、ソーシャルメディアユーザとエンゲージすることが可能となる。

戦略があれば、ステップを踏みながらモニタリングから入り、ソーシャルメディアスペースでのプレゼンスを拡大することも可能だ。しかし、戦略なしに一番、導入しやすいという理由だけで、例えばYouTubeに参加したところで会話に参加してくれるユーザが増えることはない。

昨年、Scott Montyが請われてFordに入ってから半年前後の調査データを見ると、北米におけるソーシャルメディア活動のトップ10にFordが早くも顔を出している。戦略の正しさが証明されている。
Source:eMarketer

2009/10/13

Greenpeace IT Climate Campaign Survey

先日、Greenpeaceから「IT Climate Campaign Survey」というメールが来た。
クリックすると以下のページへ飛んだ。(クリックで質問ページへ)

どうやらGreenpeaceが計画している次の大きなキャンペーン用調査のようで、IT業界から温室効果ガス排出について聞いたことがあるかとか、IT業界(IBMのSmarter Planetなど)の気候変動ソリューションについて聞いたことがあるかとか、ソリューションを謳っている企業には大きな責任があると思うかとか訊いている。
Source:Greenpeace / letter

今、GreenpeaceはBayerのGM Rice(遺伝子組み換え米)をターゲットとしたキャンペーンを実施している。どうやら温室効果削減とか、二酸化炭素排出削減を謳う企業の広告やキャンペーンが次にやり玉に挙げられそうな、風当たりが強くなりそうな様子だ...。
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なお、以前、紹介したGuardianにあるGreenwashセクションを見ると;
  • BMW
  • Virgin Atlantic
  • easyJet
  • Lamborghini
  • Total
  • Formula 1
  • E.On
  • Ikea
  • Disney
等など多くのブランドが最近も血祭りに挙げられている。

参考:Greenwash List (Online Ad 2009/01/20)

どうやらGuardianのGreenwashだけではなく、Greenpeaceのキャンペーンからも血しぶきが飛びそうな様子だ。

さて、もし、Greenpeaceが次の目標に刃を振り下ろす際、当然、目標にならないことが一番だが、その場所にいないこと、その刃を避けること、あるいは他からの血しぶきを浴びない必要がある。

しかし、GreenpeaceにはFacebookに約29万人のファン、YouTubeに12,683人の購読者、Twitterに19,783人のフォロワー(各国ごとのGreenpeaceフォロワーも合計数万人はいる)がいる。そして彼らの友人・知人コネクションでメッシュにつながっているサポーターや活動家の数は100万人は軽く超えるはずだ。ひょっとして数100万人規模かもしれない。

こういった世界規模の運動、活動団体・家が一斉に行動を起こした場合、ターゲットとなった企業・ブランドは何ができるだろう。彼らと会話していなければ、少なくとも聞き耳を立てていなければ、彼らの次の目標がなんなのかさえ分からない。どこに刃が振り下ろされるのか分からないし、飛んでくる血しぶきを避けることもできはしない。

ソーシャルメディアリレーションズはPR 2.o/3.0に必須だが、マスとは違い、全く新しいリレーションズが求められていることは間違いない。

2009/10/09

Cone Summer 2009 Cause Trends Report

Coneが「2009 Spring-Summer Cause Trends」を出している。

これは、今年上半期に注目された社会貢献活動・キャンペーンを収集し、10個のグループトレンドとしてまとめたものだ。
  1. Cause Lite
  2. Seasonal
  3. Home Grown
  4. Feeding America
  5. A la carte cause
  6. Bogo
  7. Ready set activate
  8. Service with a smile
  9. Cause renaissance
  10. Make your mark
Source:Cause Marketing Forum / Cone Summber 2009 Cause Trends Report
Source:Cone / Cause Trends - Spring/Summer 2009

4番目の「Feeding America」に、Kellogg、Snickers、V8、Mottが行っている活動が紹介されている。Kelloggは、Feeding Americaに5㌦以上寄付した顧客に5㌦のクーポンを提供し、加えて一日のシリアル製造量、5,500万食以上をFeeding Americaに寄付。Snickersは2.5万㌦の寄付に相当する300万食を提供する目標を掲げ、V8は100万㌦相当の3,000万食分の新鮮野菜を提供。Mottは、1回1㌦の「お早う、目覚ましコール」で100万食分の食料を提供する活動を行っているようだ。

KelloggはFacebookにページを持ち、20万人以上がファンになっている。
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こういった活動は何もConeや、マスメディアが取り上げるだけではなく、活動をサポートする慈善団体、ボランティア、彼らの友人・知人ネットワーク、そしてソーシャルメディアスペースで露出されてゆく。一緒に活動を行う手助けにもなり、寄付にもつながり、そして活動自体の認知も上がってゆく。

社会貢献、慈善事業をソーシャルメディアスペースに組み込んでいる企業・ブランドが増えてきている。対価やROIでは決して計れない、消費者・顧客・ユーザへのコミットメントはマスではなく、ソーシャルメディアスペースでこそ表明し、発揮すべきなのかもしれない。

2009/10/08

Facebook War Between Ryanair and SAS

Simpliflyingが、RyanairとSASが戦った「喚き合い」を紹介している。

それによると、
数週間前、RyanairはSASの役員、取締役にRyanairの北方100ルートのタダチケットを提供すると表明し、SASのDirector of Communication and EVPであるClaus Sonbergがオスロからロンドンへの便に搭乗した。その模様をFacebookやTwitterで報告した。
そうだ。

ありふれたRyanairのフライト体験報告だったはずのものが、Ryanairはそんなに安くないから始まり、物売りの機内放送はうるさい、コーヒーの不味さ、Ryanairのプレスリリースに載っているロンドンへの航空券価格は嘘だへ発展し、Ryanairの肩を持つユーザも会話に参加してFacebookやTwitterでメッセージやコメントが行き交い、ゴタゴタに輪をかけたようだ。
この「喚き合い」から学ぶべきこととして、SimpliflyingのShashank Nigamは、次の5点を挙げている。
  1. Integrate new media and old media
  2. Don't just talk. Listen, then respond
  3. Add insights from analytics for targeted responses
  4. Give power to the listener
  5. Don't just let the traditional PR team handle it
Source:Simpliflying / Five lessons in crises handling from the Facebook war between Ryanair and SAS Scandinavian Airlines

5番目に挙げられている「Don't just let the traditional PR team handle it」で以下のように解説されている。
伝統的なPRおよびコーポレート・コミュニケーション・チームはレガシーメディアの扱いはうまいが、ニューメディアに関してはそうでもない。もし、危機がソーシャルメディアで起こった場合、ソーシャルメディアのプロに手助けしてもらうことが基本だ。
ソーシャルメディア担当部門がない航空会社の場合、コーポレート・コミュニケーションが対応するべきだが、その場合でも、少なくとも一人や二人、ソーシャルメディアを熟知している人間に補完させるべきだ。
YouTubeにしても、FacebookやTwitterにしてもサービスが開始されてからある程度以上の期間が達ち、欧米企業は様々なマーケティング、広告、PRに本格的に導入し始めている。当然、新しいメディア、ソーシャルメディアでの危機管理もプログラム化されているはずだ。

しかし、実情はたった13%でしかない。
参考:Ford: Online Monitoring (Online Ad 2009/09/17)

だから、Simpliflyingが書くようにPRのソーシャルメディア対応は後れているのかもしれない。本当なのだろうか?

そこで、この解説に対して、PRの専門家からコメントをいただきたい。特に日本のグローバル企業・ブランドの海外向けPRを担当されている方々からのコメントをお待ちします。

2009/10/07

Korea: 100 Sparkles

先日、YouTubeをうろついていたら、右下の広告があり、クリックするとKorea: 100 Sparklesというチャネルへ飛ばされた。
Korea: 100 Sparklesチャネル
Source:YouTube / Korea: 100 Sparkles

これはVisit Koreaキャンペーンの一部のようで、観光名所でも面白出来事でも、韓国に関係したビデオあるいは写真を10月11日までにアップし、12日から20日までは投票、30日に優勝者発表という「観光客誘致」キャンペーンとなっている。

英語、日本語、中国語(繁体字)のビデオアップロード用にグループがあり、それぞれ59人、8人、13人がメンバーになっている。それにしても、最大の参加国として見込んでいた日本からの参加が期待を大きく裏切っている(ようだ)。なお、簡体字は、http://www.korea100sparkles.com/cnへ飛ばされるがうまくビデオアップロードへは行けない(ようだ)。

コンテストは9月8日から開始されているので、それ以前からレガシーマスメディア、旅行業界誌・サイト、トラベルサイト、その他で広告、PRなどのマーケティングが行われてきたはずだ。が、YouTubeの各グループに参加しているメンバーの数を見るとちょっとどころではないくらい物足りない。
  1. それはソーシャルメディアスペースを有効に活用していないからだ。

    Facebook、Flickrにはプレゼンスがなく、557人のフォロワーを持つTwitterアカウントはあるが、8月19日に「Korea: 100 Sparkles」の告知が1本あるだけ。いまどき、1本のコミュニケーションチャネルで全てのターゲットに露出されるわけもない。マルチタスクのマルチチャネルユーザを前提とすべき視点が抜け落ちている。

  2. それはサイロ型の縦割り組織の弊害があるからだ。

    多分、担当が違うのだろう。広告担当とPR担当の間で調整されていないので、Twitterメッセージにティーザーもじらしもなく、ステップごとのトリガーにもなっていない。公式Webサイト、YouTube、Twitterの間に統合マーケティングが見られない。

  3. それはまだまだ一方的なメッセージ配信だからだ。

    Twitterのメッセージに「@xxx」、「RT」といったものが見られない。韓国観光公社の公式Webサイトのメッセージを配信するTwitterアカウントとして存在し、フォロワーとの会話、会話の起爆剤や会話から次の会話を引き出すフォームにはなっていないからだ。
さて、Visit Japanに関して何度か書いた。

参考:Proposal to Visit Japan -1 (Online Ad 2009/07/28)
参考:Proposal to Visit Japan -2 (Online Ad 2009/08/12)
参考:Visit Japan 2009 -5 -4 -3 -2 -1 (Online Ad 2009/06/26-06/23)

今回のKorea: 100 Sparkles、Visit KoreaキャンペーンはYouTubeを使い、観光客の目線で韓国を捉えたビデオや写真を募り、そのコンテンツを起爆剤として韓国訪問観光客を増やそうと企画されたはずだ。まだ手探りでトライアル的なソーシャルメディアスペース(SMS)活用だが、少なくとも、SMSユーザの存在を意識し、対象としたキャンペーンを企画し、オンライン広告・Twitter・YouTubeをからめたキャンペーンを実施している。この経験、実績、評価が次につながることは間違いない。

それを考えると、Visit JapanがKuroshio Seaを有効に活用できなかったり、YouTubeにあるVisit JapanチャネルのUIがアップデートされていないことと比べると、Visit Koreaに軍配を上げたくなる。

2009/10/06

Social Media Revolution -2

OPAは、Nielsen Onlineと提携して、IAI (Internet Activity Index) というContent、Communications、Commerce、Community、Searchといったカテゴリごとにインターネットユーザの消費時間、一人当たりのページ数、ページビュー、ユニークユーザ数などを毎月出している。

そのカテゴリごとの消費時間シェアを2008年7月から2009年7月まで図にしてみた。
2008年7月にContent(OPAに加盟しているメディアサイト)カテゴリは43.3%の消費時間だったが、2009年7月には39.6%へと沈んでいる。検索も5.3%の消費時間が4.5%へ落ち込んでいる。その中でひとり気を吐いているのはCommunity (Facebook、MySpaceなど) だ。9%にしか過ぎなかった消費時間が20.6%にも伸びている。

対前年比でグラフを描くと下図のようになる。OPAがモニターしているカテゴリ内で前年比増となったのはCommunityのみ。その他のカテゴリはCommerceが23%減で最大の落ち込み。Searchが15%減、Communications (Mail、AIMなど)が13%減となっている。
Source:OPA / IAI

どのカテゴリも消費時間は増えている。例えば、検索の合計消費時間は2008年7月で1.3億時間、2009年7月で1.68億時間なので29%も伸びて いるのだが、如何せん、Communityは2008年8月が2.2億時間、2009年7月は7.7億時間へと3.5倍も伸びているので勝負にならない。

Facebookなどのソーシャルメディアスペースに参加するユーザが増えているので当然、Communityカテゴリの消費時間は長くなる。まだContentカテゴリが39.6%を占めているので差は大きいが、上のような前年比の伸びが続けばすぐにも追い越しそうな勢いだ。

これが100年に一度の大変革だ。この大変革は情報・コンテンツの出し手と受け手という構図を変え、情報・コンテンツの送受信という仕組みも変えている。

マスメディアから送られてくる情報・コンテンツを唯々諾々と受け取るしかなかった消費者・ユーザが情報・コンテンツを逆に発信するようになり、それを共有することで自分の友人・フォロワーに再露出する消費者がいる。

ということは伝統的なメディアというコンセプトそのものが変化してきている。消費者・ユーザも(ソーシャル)メディアとして存在し、そのリーチがマスメディアに迫ってきていることになる。当然、伝統的なメディアコンセプトを基盤にしていた広告にも、パブリックリレーションズにも変革の波が押し寄せてくることになる。

現在は、伝統的なメディアを使った既存の広告やパブリックリレーションズの手法をそのままソーシャルメディアへも踏襲しているのが現状だ。しかし、これは伝統的メディアで期待されている効果と同じ効果を挙げられるだろうか?

決してそんなことはない。100年、200年に及び構造、仕組み、効果などが検証されてきた伝統的メディアを使った広告やパブリックリレーションズの手法は、そこでしか機能しない。単にメディアを変え、ソーシャルメディアスペースへ移し替えただけでは期待される機能、効果を発揮しないのは明らかだ。

だからKodak、Fordでも、Dellでも、ソーシャルメディアスペースのユーザを意識したマーケティング、対応を進めている。もし、伝統的なメディアを使った既存の広告やパブリックリレーションズの手法が使えるのなら、彼らの戦略は大きな間違いを犯していることになる。

2009/10/05

Domino Pizza Lesson -2

以前、Domino Pizza Lessonを書いた。以下のビデオにあるように客に出すピザに唾を吐きかけたり、鼻の穴に突っ込んだチーズをピザにトッピングしていたわけだ。

参考:Domino Pizza Lesson (Online Ad 2009/05/7)

この事件をケーススタディとしてMarketingProfsが取上げていたので、紹介する。

まず、Domino Pizzaが執った対策は
  1. 犯人を捜し出して訴える
    全米のチェーン店へ通知し、ビデオに出ている男女2人を特定。チェーンオーナーに解雇を要請。保健所および警察に犯人を通報。
  2. YouTubeからビデオを削除する
    著作権者の要請が必要なため、犯人のうち女性の署名を警察署でもらいYouTubeにビデオ削除を要請。
  3. 顧客に対応する
    プレスリリースを出したり、ニュースカンファレンスを開くのはビデオ視聴を増やすだけで逆効果と判断し、会社への問合せは個別対応とした。しかし、結局、バズはTwitterで広がり始めたため、DominoはWebサイトに事件を公表、Twitterエントリをサイトへ誘引した。直後、YouTubeでのビデオ視聴回数は50万回へ到達した。
  4. バイラルビデオを消火する
    ビデオが投稿されてから3日後、Dominoは社長のPatrick Doyleが事件の顛末を説明するビデオをアップした。TwitterおよびFacebookページにはビデオへのリンクを装備した。
その結果
  1. Dominoからのビデオ投稿3時間後、オリジナルビデオの視聴は100万回を突破。当日、「Domino's」が「Paris Hilton」を検索キーワードで上回る。
  2. Dominoからのビデオ投稿後、米国メインストリームメディアが報道。その後、BBC、中国国営TV、オーストラリアやペルーなどDominoが出店していない国々でも報道された。Dominoによれば合計6,000万のメディアインプレッションとなった。
  3. 月曜日にオリジナルビデオを視聴した10万人は「Dominoのひどい奴らを見ろよ」と感じ、「Dominoは(これに対して)何か対策をしているのか?」へ変わり、Dominoからのビデオがアップされた後は「YouTube世界でどうやれば企業が自分を守れるのか」へ変化した。
この後、MarketingProfsは、Lessons Learnedとして
  1. Line up your ducks ahead of time
  2. Do what you can to curb the propagation
  3. Be honest and state your case
  4. Continue with 'business as ususal'
を挙げている。

Source:MarketingProfs / Case Study: How Domino's Managed a Viral Video Nightmare (要有料登録)

このようなケース、事件はこれからも起きる。その際、Dominoが行った危機対策・管理の前提として何があったのか考えてはいかがだろう。

それは;
  1. オリジナルのビデオが投稿された後、その他のビデオ共有サイトへもコピーがアップされ、The Consumeristでも取上げられたため、ビデオ投稿後数時間でDominoはビデオを知ることになった。ということは、モニタリングしていたということだ。
  2. Twitterで火の手が上がっていることを察知し、Webで公表し、誘引したということは、Twitterのリンク拡散力を理解していたということだ。
  3. その後もプレスリリースを流したり、ニュースカンファレンスを開かず、YouTubeに社長ビデオをアップしたということは、「真実を伝える顧客」はYouTube、すなわち、ソーシャルメディアスペースにいることを理解していたということだ。
そして、次を最後に付け加えなければならない。
  1. このソーシャルメディア時代に、自国対策だけでは不足・不十分
    米国内のビデオ共有サイトは対処できたかもしれないが、DailyMotionなど海外サイトまでは目が届いていない。(削除要請が受け入れられなかったのかもしれないが)
  2. このソーシャルメディア時代に、ブランド関連コンテンツを管理、コントロールすることは不可能
    この理解がない限り、従来型のマーケティング手法を繰り返してしまい、ソーシャルメディアスペースのユーザは離反する。
  3. ソーシャルメディアスペースに参加することが重要

2009/10/02

JAL Story -2

先日、JAL Storyを書いたが、その後の報道によれば来年3月までに2,800億円、2011年3月末までには4,500億円の資金が必要となる状況で、国交相は破たん回避を明言したが、再建は非常に困難を伴うようだ。

参考:JAL Story (Online Ad 2009/09/14)

一方、Singapore Airlinesは、ユーザ・乗客・予約客のオンライン体験を向上させるため、Sapient Interactiveの力を借りて、Singaporeair.comを全面的に刷新するようだ。

Sapientのプレスリリースによれば、
Singapore Airlinesのオンラインブランドアイデンティティをリデザインし、
End-to-EndのECサービスを拡充し、
グローバルなカスタマー体験を強化する。

新しいグローバルなブランド体験はSingapore Airlinesのグローバルなレピュテーションを反映し、顧客に迅速で分かりやすく、使いやすいオンラインチャネルを提供する。
としている。

今はどこの航空会社ともあまり変わりのないWebサイトだが、これをどれほど変えてくるのか期待したい。(クリックでサイトへ)
Source:Sapient / Singapore Airlines Selects Sapient Interactive to Elevate Online Experience

Singapore Airlinesと言えば、昔からそのホスピタビリティは折り紙つきで、最近もロシアのAeroflotがAir Hostessの研修先に選んだほどだ。
Aeroflot said its current hostess uniforms 'evoke revulsion'
Source:Daily Mail / Aeroflot ditches 'revolting' hostess uniform and reveals: 'We will only hire attractive girls'

そのSingapore Airlinesが、オンラインマーケティングをもう一段ステップアップしてくる。

その理由をいくらか説明してくれる面白いデータが、最近、Nokiaが買収したDopplrにある。

頻繁に長距離便を利用する伝統的なトラベラーがSingapore Airlines、BA、Lufthansaを使うのに対して、デジタルネイティブで若く、高額所得者でより頻繁に旅行するトラベラーはBAがトップとな り、Virgin Atlanticが二位でSingapore Airlinesは三位に落ちる。
そして、旅行関係で航空会社やホテルを推薦されたのは90%。その方法は対面が88%だが、emailが62%、Twitterが28%、Facebookが25%もある。
Source:Dopplr / How the Dopplr Community Travels

このデータだけでSingapore Airlinesが新しいオンラインマーケティングを始めたわけではないが、どこのデータを見ても同じだろう。デジタルネイティブに即したマーケティング をする必要があるのだ。当然、これはその他のメガキャリアも同様の施策を検討しているはずで、今まで以上にオンライン(+携帯+モバイルデバイス)ユーザ を前提としたマーケティングの火花が散ることになる。

そして、その先には当然、FacebookやTwitterがくる。Virgin Atlantic、JetBlueやSouthWestだ けではなく、他のメガキャリアもソーシャルメディアスペースに大きなステップを踏みこんでくることになる。ソーシャルメディアスペースでのプレゼンスとエ ンゲージメントがカギになることは明らかだ。今後、ソーシャルメディアスペースにプレゼンスのないキャリアとあるキャリアのギャップは開くばかりだろう。

一筋縄ではいかないはずのJALの再建に、もうひとつ頭痛の種が増えそうな状況だ。また、この頭痛の種をなんとかする戦略がなければ、再建は...?

2009/10/01

Facebook Applications: Polls

polls-facebookFacebookにある数多のアプリケーションの中で最も人気の高いのはPollsだろう。毎月、346万人がアクセスし、様々な投票に参加している。

日本でも同様のアンケートはあるが、サイト側が出すテーマに即して投票するだけだ。FacebookのPollsはユーザが独自にテーマを決めてアンケートを取ることもできるので「中絶は殺人か?」とか、「神を信じますか?」といったものもある。9月27日、そのPollsに「Obama大統領は殺されるべきか?」というテーマが上げられた。

このPollはすぐさま、政治関連Blog、メインストリーム記者に広がり、報道された。そして大統領のシークレットサービスがFacebookに削除を要請するレベルに達した(要請される前にFacebookはPollを削除していた)ようだ。

該当Pollは削除されているが、その後が残っている。2番目に、「Should the Creator of "Should Obama be Killed Poll" be Arrested」というPollが見える。
(クリックでページへ。尚、ページ画像にはグリーンカードの広告があったので削除している)
Source:Facebook / Polls
Source:InsideFacebook / The Obama Assassination Poll

さて、英語でFacebookのPollsに特定企業・ブランドを取上げた悪意に満ちたテーマでの投票Pollがあった場合、Blogやメインストリームメディアが取上げる前、あるいはFacebookがPollを削除する前、あるいはユーザ・顧客・ビジネスパートナーが親切にも連絡してくれる前に何ができるだろう?危機管理プログラムにソーシャルメディアが含まれていない場合?

ま、これはないものねだりだろう。米企業でもまだ13%しか対応していないのだから。しかし、その事実が何らかの意味合いで日本のグローバル企業・ブランドに安心感を与えるものでもない。
参考:Ford: Online Monitoring (Online Ad 2009/09/17)