2009/09/30

Ford Social Media Strategy

つい先日、「Ford: Online Monitoring」で、Twitterを使い、八面六臂の大活躍をしたFordのGlobal Digital and Multimedia Communications Manager、Scott Montyを紹介したばかりだが、その彼が、9月21日に開催されたOMMAの基調講演で発表したFordのソーシャルメディア戦略という資料がある。

参考:Ford: Online Monitoring (Online Ad 2009/09/17)

Source:SlideShare / Zero to 60: Social Media Strategy via Ford
Source:ViralBlog / Ford's Social Media Strategy - OMMA Keynote

詳細はスライドを見ていただくとして、中ごろに以下のスライドがある。
Strategy: to humanize the company by connecting consumers with Ford employees and with each other when possible, providing value in the process.
顔の見える企業・ブランドへ変革するという今、一番、重要で必要な認識と戦術だろう。

そして、FacebookにあるFordのエコ・グリーンキャンペーン用アプリも紹介されている。アクセスしたユーザ一人ひとりが自分にできるエコ・グリーン対策を書き込み、それを他のユーザが評価することができる。すでに24,000人以上が書き込んでいる。そして、それはユーザのプロファイルに表示することもできるため、彼らの友人コネクションへも広がってゆく、Fordのブランド、キャンペーンと共に。
(クリックでページへ)

昨日、「Social Media Tips from Kodak」を書いたばかりなのだが、Fordのソーシャルメディア戦略からも米国の大手グローバル企業が本格的にソーシャルメディアマーケティングを導入し始めていることが分かる。

参考:Social Media Tips from Kodak (Online Ad 2009/09/29)

上の参考資料でKodakは、ソーシャルメディアに関する3つの誤解、神話を挙げていた。
  • ソーシャルメディアはガキ向けだ
  • 米国では人気になっているが世界ではまだまだだ
  • ソーシャルメディアはビジネスで使えない
と、他国の企業・ブランドが思っている間に、米国グローバル企業・ブランドは後姿が見えないほど先へ行ってしまう。

2009/09/29

Social Media Tips from Kodak

Kodakから「Social Media Tips」という資料が出ている。サブタイトルは、「Sharing lessons learned to help your business grow」だ。

CMOでVPのJeff Hayzlettが巻頭に次のように書いている。
TwitterやFacebookといったソーシャルメディアになぜ時間を費やすのか?それは、今日のメディアシーンで、顧客がいる場所にいる(参加する)ことが絶対的に重要だからだ。Kodakはこのマーケティング哲学をいつも実践してきた。そして、今日、それは、ソーシャルメディア(スペース)でアクティブであることを意味している。

ソーシャルメディアが重要なのは、顧客と双方向での会話を行う機会を与えてくれることだ。顧客に最善を尽くす方法を知ることよりも、顧客から直接それを聞くこと以上に貴重な方法はあるだろうか?ソーシャルメディアは、会話をおこし、顧客からのフィードバックに対応し、そしてアクティブな会話を継続する新しい方法を可能にしてくれる。
内容的には、巻頭に続き、ソーシャルメディアスペースの現状として、Facebook、Twitter、YouTube、Blogを取上げて数字を挙げている。次に、「ソーシャルメディアってのは子供向け」、「米国では人気だが世界では?」「ソーシャルメディアはビジネスで使えない」といった神話を砕き、BlogやTwitterの秘訣10を挙げて、Kodakのメディア戦術を説明している。

それが下の図だ。
この戦術を説明する文としてKodakは次を入れている。
企業は製品、顧客・消費者・ユーザ、あるいはブランドに関する会話を「コントロール」することも、「利用する」こともできない。
この理解の上に、「コンテンツ制作」、「供給」、「エンゲージメント」、「測定」を核とした戦術がある。
戦術に続き、Kodakのソーシャルメディアポリシー、ソーシャルメディア活動の実例を挙げて、最後にKodakのソーシャルメディア展開を示している。
Source:Kodak / Social Media Tips (pdf)

Kodakと言えば、4月にFacebookの戦略を紹介した。

参考:Kodak Facebook Strategy (Online Ad 2009/04/17)

今年初めからソーシャルメディアマーケティングを新しい段階に引き上げていたKodakが、「ソーシャルメディアの秘訣」「企業ビジネスの拡大を支援するため経験を共有する」という資料を公開したということだ。

「Sharing lessons learned to help your business grow」という資料を日本のグローバル企業が出せるのだろうかと考えてしまう。

そして、Kodakが参加しているTwitter、Facebook、YouTube、Flickr、そしてBlogを活用したマーケティングを日本のグローバル企業がやっているだろうかと考えてしまう。

ソーシャルメディアスペースに参加しているのは米国ユーザだけではないし、米国ユーザ向けに制作、供給され、エンゲージし、そして測定されるコンテンツは世界のソーシャルメディアスペースのユーザに共有され、再露出される。例えば、Starbucksのwallに非英語のコメントは7%ある。そして非英語圏ユーザが英語でコメントした数はそれを上回る。世界中のユーザがStarbucksの英語コンテンツを消費、共有、再露出している。この現状を見れば、日本のグローバル企業は米国の一部先進企業を追い抜く勢いでソーシャルメディアスペースに参加する必要がある。

しかし...?

2009/09/28

Did You Know? Version 3.0/4.0

随分ご無沙汰していたSteve RubelのLifestreamサイトにアクセスしたところ、以前、紹介した「Shift Happens」「Did You Know 2.0」シリーズの最新作、Version4.0が上がっていることを紹介していた。

参考:Shift Happens & Did You Know 2.0 (Online Ad 2008/11/04)

Digital Inspirationへ行くと、Version4.0に加えてVersion3も上がっていたので合わせてどうぞ。

Version 3.0
Ver 1.0/2.0と同様に過去との比較から現状を説明。

Version 4.0
米国のメディア、広告、モバイル、そしてソーシャルメディアをまとめている。

Source:Digital Inspiration / Interesting Facts About the Internet and Social Web
Source:The Steve Rubel Lifestream / Stats: The Internet in Charts

Version 4.0の頭に次の3枚が来る。
  1. 新技術の台頭とソーシャルメディア革新が「(マス)メディア」を変革している

  2. 大多数にリーチするのは今まで以上に容易だが、本当の意味でコネクトするのは今まで以上に困難だ。

  3. これらの変化が人々の行動に影響を与えている。未来への準備は?
新技術の台頭とソーシャルメディア革新が「(マス)メディア」を変革している証拠は明らかだ。デジタルがレガシーメディアを喰らい、ソーシャルメディアがすべてを惹きつけている。
準備はお済ですか?それとも...?

2009/09/25

Email Gone Viral

Silverpopから「Email Gone Viral: Measuring 'Share to Scoail' Performance」という資料が出ている。

B2B/B2C企業合計108社から5,400万人に対して発信された562通のemailが装備しているソーシャルメディア機能を調査したものだ。

すでに米マーケターはEmailに必ず、Facebookへのリンクを装備している。それに続くのはMySpace、Twitter、そしてDiggだ。LinkedInは5位だが、B2Bに限った場合、83%が装備している。
Emailの装備されたソーシャルメディアへのリンクについて、それぞれのリンクに対するクリック比率、Email共有比率を見ると、Facebook、MySpace、Twitterの装備率は高いのだが、クリック比率ではReddit、Bebo、Del.icio.us、LinkedInの方が高くなっている。

SilverpopはReddit、Bebo、Del.icio.us、LinkedInの装備率は低いが、装備された際、email受信者のソーシャル行動やネットワークの目的とマッチしている場合、クリック比率が高くなることをポイントとして挙げている。
全体の平均的なソーシャルEmailのCTRはばらついている。
  • 調査全体の平均CTRは0.5%
  • 最も低くて0.1%以下から38.7%の範囲
  • ソーシャルEmailの8.1%はCTR1%以下
  • ソーシャルEmailの49%はCTR0.1%以下
  • 通常EmailのFTAF転送率(Forward to a Friend)が0.01%から0.1%とすると平均CTRはその5倍以上
全体のEmailクリックに占めるソーシャルクリックはというと;
  • 全体平均で8.7%
  • 中央値は3.1%
  • 最も低くて0.1%から100%の範囲
何が何でもソーシャルメディア機能を付ければクリックしれくれるわけではない。また、約半分は通常のバナー広告と同様の0.1%以下のCTRしか稼げていない。また、ソーシャルクリックはemailクリックの8.7%にしか過ぎないが、emailによってはソーシャルクリックが100%のケースまである。

そこでソーシャルクリックされたEmailメッセージがFacebookなどにアップされた場合、どれくらいの人が追加で閲覧してくれるかというアップリフトを見ると;
  • 平均は1%、中央値は0.06%
  • 上位グループの場合、平均3.9%、中央値は0.6%
  • 最大アップリフトは292%
そして、どのネットワークがアップされたEmailを最も閲覧しているかというと、これは上位グループであろうと、平均であろうとFacebookが断トツだ。
Source:Silverpop / "Emails Gone Viral: Measuring 'Share To Social' Performance"

Samsungを例に挙げるまでもなく、海外メーカーはemailレターにソーシャルメディア機能を装備してきている。

参考:Samsung LED TV Campaign (Online Ad 2009/04/16)

ただし、めったやたらに数打てば当たるというものではない。まだ、大きなばらつきがあるが、ものによっては5%を超えるCTRや、最大292%のEmail閲覧アップリフトをたたき出すことも見えてきた。

これは多分、Emailを送信したB2B/B2C企業がどのソーシャルメディアスペースにどのように参加しているか、どのようにコンテンツを発信し、どのようにユーザとオープンな対話を行っているかが分かれ道になっているということだ。自分はソーシャルメディアスペースに参加せず、Emailにだけリンクを装備し、ユーザのソーシャルネットワークでのコネクションをタダで使おうという安易なアプローチを取る企業がまだ多いからだ。

ただし、こういった安易な輩であったとしても少なくともソーシャルメディアスペースのパワーは理解している。安直な仕掛けでは期待通りの成果が上がらないと学習すれば、当然、ソーシャルメディアスペースに参加することになる。その上で、本格的なソーシャルメディアマーケティングを開始することになる。

ということで、日本のグローバルブランドとの差は開くばかりだ。

2009/09/24

Social Media CTR from Vitrue

CTRというと以前はともかく、現状では0.1%以下が通り相場だ。

参考:Rich Media CTR (Online Ad 2009/02/16)
参考:EU CTR 2008 (Online Ad 2009/03/18)

しかし、Vitrueから出てきたデータによれば、FacebookのWallポストに対するCTRはとんでもなく高い。

Vitrueは6.49%だと推測しているとAdAgeが伝えている。ただし、これはVitrueが認めるように推測の域を出ていない。

それは、友人やファンのニュースフィードを表示するWallポストに何人が露出されているか不明だし、アクセスしていないときにWallポストにフィードが流れてしまい、見ることがないこともあり得るからだ。だからCTR算出の根拠となる母数が不確かだ。100人のファンがいるブランドページが5クリックをゲットすればCTRは5%だが、20人しかWallポストを見なければ20%となるということだ。

そこでVitrueは3つの仮定で話をしている。
  1. Facebookの米オーディエンスの十二分の一がある特定日時にアクセスしていると仮定した場合、CTRは6.49%
  2. Facebookの米オーディエンスの八分の一がある特定日時にアクセスしていると仮定した場合、CTRは4.32%
  3. Facebookの米オーディエンスの五分の一がある特定日時にアクセスしていると仮定した場合、CTRは2.12%
また、年代および性別でのCTRを推測している。曰く、
  • 13-17歳 40%
  • 18-24歳 30%
  • 25-34歳 14%
  • 35-44歳 10%
  • 45-54歳 4%
  • 55歳以上 2%

  • 女性:56%
  • 男性44%
Source:AdAge / Facebook's Click-Through Rates Flourish ... for Wall Posts

AdAgeが伝えた第一報に続けてVitrueは続報を出してきた。それが5ヶ月間の2億impressionをモニターした結果としての曜日毎のCTRだ。

平均すると6.76%で、火曜日が9.89%、水曜日が9.87%、そして月曜日が9.40%と週前半は9%を超えている。一方、木曜日以降土曜日までは5%、あるいは3%を切っている。

それにしても、オンラインバナー広告どころではなく、EmailのCTRも軽く超える反応がある。
http://vitrue.com/images/wpimg/2009/09/vitrue_srm-social_ctr_by_day_of_the_week-data.png
Source:Vitrue / SRM Findings
Source:MediaPost / Tuesday Super For Facebook Brand Pages

これはVitrueが新規リリースしたVitrue Social Relationship Managerの販促用に出してきたデータだし、そのデータ収集方法や処理の推論・推測に突っ込みを入れる必要はある。

しかし、
  • ユーザが参加するソーシャルメディアスペースに参加するブランドからのポストであること
  • 自分の友人、あるいはファンになっているブランドからのニュースフィードであること
  • 他ユーザがブランドと行う会話がオープンに、透明に開示されていること
  • 自分がブランドとの会話をイニシエートし、友人を巻き込むこともできること
そして、
  • 一方的な売らんかなの押しつけマーケティングチャネルに落とし込まれることはないだろうという期待があること
を考えれば、バナー広告のCTRよりも高いのは当然だ。

ここにあるのは、「対等な立場でオープンにブランドと会話したいという消費者・顧客」の姿だ。これが広告というコミュニケーションメッセージをひっくり返す元になっていることを関係者はまだ理解していない。いや、そんなことはあり得ない。そんなことは理解したくないと思っている。

今年4月の宣伝会議サミットで、日産自動車の野口氏(グローバルブランドコミュニケーション、CSR部長)は、「一方的なコミュニケーションの時代ではない。(ユーザ・消費者と)一緒にやってゆく時代だ。その意識がないと振り向いてももらえない」と語っていた。新しい見かたを取り入れている関係者はいるが、そのサミットを特集した宣伝会議の号で野口氏の上のコメントは取上げられてはいなかった。

2009/09/18

American Airlines Online Monitoring

9月14日に「JAL Story」を書いたところ、

参考:JAL Story (Online Ad 2009/09/14)

当日の15:00近くにAmerican Airlinesからアクセスがあった。下は筆者が使っているSitemeterのログだ。
American航空の多分、日本の方がアクセスしてきている。

Americanではなく、JALをキーワードとしたBlogモニタリングに上がったので、ちょっと確認してみたといったところだろう。

ログを全て確認するわけにもいかず、全てのドメインが名前解決されているログでもない。そんなログの中で目についたのはMarriottのCEO、Virgin AmericaのTwitter、Cathay Pacificのマイクロサイト、そしてJAL Storyだ。これらのエントリには遅くても半日後、早ければ1~2分以内に該当企業からのアクセスを記録している。

参考:Corporate / CEO Blogging (Online Ad 2007/01/22)
参考:Virgin America and Twitter (Online Ad 2009/07/24)
参考:Cathay Pacific Face to Face (Online Ad 2009/08/11)

以前にも、Oracle、IBM、Dell、HPに関するエントリに対して該当企業からアクセスがあったが、そのレスポンススピードが上がってきた。数日以内だったのが、当日、そして数分後にアクセスがくるようになった。

どうやら欧米企業ではオンラインのバズモニタリングが本格的に導入されてきたようだ。当然だろう。広告や様々なキャンペーンを打つだけ打って、消費者・ユーザがそれをどのようにとらえているのかをチェックしないのは片手落ちもいいところだ。彼らが何を言っているのか聞かなければ裸の王様になってしまう。必ず、広告やキャンペーンに関するキーワードのモニタリングをするはずだ。

そして、ブランド名に関連する基本的、継続的なモニタリングも始まっているらしい。それはBlogだけではなく、SNS、Twitterや、YouTube、Flickrなどでのメッセージ、コメント、タグなども含まれている。

こうした本質的なマーケティング活動、それもソーシャルメディアマーケティング活動から企業・ブランドが学ぶのは、広告にどのようなクリエイティブにすべきかとか、どのマスメディアに広告を出すべきかといった話ではない。検索広告にどのキーワードを使うかといった話でもないし、LPOをどうしようかといった話でもない。

どうしたら企業・ブランドコンテンツを理解してもらえるか、共有してもらえるかだし、コンテンツ露出・発信を広告だけにするのか、それとも広報を中心に据えるのか、あるいは、今までの縦割り組織を改めてフラットな組織へ改革すべきかといった話にもなる。

ソーシャルメディアが変革するのものは深く、広い。しかし、その最初のステップはバズモニタリングだ。国内はともかく、海外のバズモニタリングを行っている日本のグローバルブランドは何社いるのだろう?

2009/09/17

Ford: Online Monitoring

先日、アップした「Twitter Report」の「Branding & Awareness」にFordを取上げた。

参考:Twitter Report (Online Ad 2009/09/11)

そのFordのケーススタディを詳しく見てみたい。
















まず、2008年12月9日、18:10、Ford RangerのファンサイトであるThe Ranger Stationから火の手が上がった。














その種火は、Fordの法務部門からサイトへ送られた「警告状」だ。これはサイトオーナー、Jim Oakesに対してWebを閉鎖、URLを返上し、5,000㌦を支払えというものだ。何が何だか分からないJimは、サイトのユーザフォーラムでうっぷんをぶちまけたところ、その後の22時間で916回のレスポンスを受けた。この火種はWeb、Blog、フォーラム、SNS、Twitterと様々なチャネルを通して延焼していった。

12月10日、5:30、Fordのグローバルデジタル・マルチメディアコミュニケーションマネージャ、Scott Montyは通常通り、Twitterをチェックしたところ、ひとつのTweetが1:30から待っていた。
上は、Jim OakesのオリジナルエントリをアップしているFordの別ファンサイト、FocalJetへリンクされている。別にScottには別のファンサイト、Mustang Evolutionにある類似エントリを知らせるDMもあった。野火がファンサイトからファンサイトへ飛び火、延焼していた。FordのカスタマーサポートセンターにはJimのオリジナルエントリを出火場所とする1,000通以上の苦情emailが殺到していた。

Scottは午前中一杯、内外の状況把握に努めていた。そのステータスをTwitterで発信している。
そして、彼は、ある程度、状況が把握できた時点で下のTweetを行っている。これが最初の消火活動となっている。それは「fordファンサイトに関する法的手段に関して関心を寄せる方へ:現在、法務と問題解決の交渉中」というメッセージもそうだが、画期的なポイントは、「RT乞う」というメッセージだ。
その時点でScottのフォロワーは5,600人。そのうち19人が彼の要請に応えてRTした。その19人が抱えていたフォロワーは13,400人。

その後も、Scottは法務からのフィードバックを供給し続けている。曰く、「法務からは全く別の話が分かってきた」、「サイトオーナーからチャンと返事がもらえていなかった。これにはもっと深い問題がある」「サイトで偽物が売られていたことが分かった。URLに関しては調査中」
ScottはTweetの間に社内の法務とコンタクトして、「サイトでFordのロゴを付けた偽物が売られていたという警告状送付の理由、URL返上・サイト閉鎖や5,000㌦要求は法的手段に訴えるという脅し」だったことを確認している。

ようやくここまで原因調査や火災消火の方法、今後の対処などが決まると、ScottはJime Oakesに直接、電話している。これまでの状況を説明し、これからの対処を説明し、Jim側の話も聴取している。双方が対処方法に納得したのち、ScottはTweetしている。
その後もTweetを続け、Scottが鎮火を宣言したのは翌日の2:29だった。Ranger Stationでの発火から鎮火まで、22時間26分かかったことになる。

Source:RonAmok / Ford, Fansites, and Firefighting
Source:RonAmok / The Ranger Station Fire: How Ford Motor Company Used Social Media to Extinguish a PR Fire in Less Than 24 Hours.

Ron Amokは、
  1. Everything is Public
  2. Company don't talk: People do
  3. Without Support: New Media Fails
を挙げてまとめとしている。

Ron Amokは、上の3点を挙げ、下の7点を比較してROIを出せとしている。
  1. Scott Montyはこの問題解決にあたり19時間を費やした
  2. 彼は問題の原因調査を主導した
  3. 彼は複数のミーティングを開催した
  4. 彼は複数の電話をかけた(サイトオーナーJim Oakesへも)
  5. 彼は138回、今回の問題に関してTwitterにメッセージをアップした
  6. 彼はフォロワーに助けを請い、フォロワーは合計32,332人へメッセージを転送した
  7. 彼は今回の問題を24時間以内に完全鎮火、解決した
これらにかかったコストと、今回の問題が解決されず放置され、オンライン史上最大の大火となり、販売台数減少、ブランドイメージ・価値・評価が地に落ち、マスメディアを駆使した販売・イメージ回復キャンペーンに費やした総コストを比較した場合、そのROIはどうなるのかと。

彼の3点に
  1. ソーシャルメディアスペースにおけるリスク管理
  2. オンラインモニタリングの重要性
  3. RT (ReTweet)効果
  4. ソーシャルメディアマーケティングの人員・組織・予算化の必要性
を付け加えたい。

特に、リスク管理にソーシャルメディアを取り込んでいる米企業もまだ13%でしかない。ハドソン川の奇跡を伝えたTwitterが、企業に牙をむくのは今日かもしれない。
Source:Source:Russell Herder / EMBRACING THE OPPORTUNITIES,
AVERTING THE RISKS

2009/09/16

Kremlin Opens YouTube Channel

以前、ホワイトハウスのWeb 2.0化を取上げた。

参考:White House Web 2.0-2 (Online Ad 2009/07/02)
参考:White House Web 2.0 (Online Ad 2009/02/17)

そして、ABC Newsが伝えるところによれば、ロシアのクレムリンもYouTubeにチャネルを持ったようだ。当然、ロシア語だが、そのうちの一つはメドベーチェフ大統領から学生へのメッセージだそうだ。


先週の話だが、当然ながらすでにロシア関連カテゴリで7つのランキングに顔を出している。
Source:ABC News / Kremlin Launches YouTube Channel
Source:YouTube / Kremlin

クレムリンでさえ、YouTubeにチャネルを持ち、ロシア国民だけではなく世界中のロシア語ユーザに対して情報・コンテンツを発信し始めた。また、YouTubeを使い、世界のユーザにコンテンツを発信し、不十分ながら会話を行っている世界のブランドがいる。

一方、日本ブランド名をYouTubeで検索し、チャネルで見ると、オランダ、イギリス、アメリカの販社、あるいは子会社はチャネルを持っているが、日本本社でチャネルを持っているブランドを数えたことがおありだろうか?

「世界のユーザに本社から発信するコンテンツはない」と言い切るブランドはないはずだ。それでなくとも、あれも観てほしい、これも聞いてほしいコンテンツは膨大な量に達するはずなのだが...?
少子高齢化による人口減少が避けられない日本市場に物量を投入するよりは、先進国市場、新興国市場に本社から発信したいブランドイメージ、ブランド価値、ブランドメッセージは数限りないはずなのだが...?

さて、7月頭の「White House Web 2.0 -2」で見たWhite HouseのTwitterフォロワーは48万人だったが、現在、113万人にまで伸びている。ということは、たった2カ月やそこいらで65万人も増え、DellOutletの116万人に近付いているということだ。

これだけのフォロワーに対してWhite Houseはダイレクトコミュニケーションチャネルを持っていることになる。そして、これらフォロワーの数だけではなく、そのフォロワーもいること、そしてRTの効果、影響をお忘れなく。また、このコミュニケーションチャネルにメディアコストがかからないことも。

日本本社からTwitterでつぶやいているブランドを数えたことはありますか?

2009/09/15

Agent of Change

10年前、MITメディアラボのNicolas Negroponteは、「代理店と言われる会社はすべて滅びる」とコメントした。彼は正しかった。代理店-メディアとブランドオーナーの間に位置する仲介者-は、今日、単なる日用雑貨サプライヤーであり、我々の先達が以前そうであったようなクリエイティブなビジネスパートナーではない。簡単に言えば、代理店は昔ほど重要ではない。
と、非常に刺激的な書き出しから始まる「Stop Being an Agency and Start Being an Agent of Change」という文を、AdAgeにWayne Arnoldが寄せている。
代理店がビジネスを作りだし、ビジネスを大きく変えてきた昔と比べ、代理店が主としてTV広告から収入を得るようになると、売上額や利益の少ないビジネスは、ビジネスを変革するようなアイディアを出したり、実行する代理店の能力とともに横に押し出された。

だから、大企業のCEOがビジネスを大きくしようとするとき、誰に声をかけるかというと、それは代理店ではなく、コンサルティング会社や会計法人のコンサルティング部門だ。

それでは、クリエイティブなビジネスパートナーになるために代理店ができることは何か?

変革の代理店になるには?
と続けている。

そして末尾近くで、彼は、
変革の代理店はデジタル革命を取り込むべきだ。広告業界が初めてひっくり返された業界ではない。音楽ビジネスの大変身はその最たるものだ。デジタルが営業、マーケティング、物流、カスタマーサービスまで全てに影響を与えている。そして、それはビジネスを変革するアイディアを創造し たり、クリエイティブなビジネスパートナーとして代理店が信頼を再獲得する唯一のテコだと信じる。
と書いている。

Source:AdAge / Stop Being an Agency and Start Being an Agent of Change

Nielsenが発表した2009年上半期の対前年比の広告費を伝えるSilcion Alley Insiderのグラフを見ると、全体で15%超の前年比減だ。CPMが高そうなメディア広告費の減少幅が大きい。CATVだけが前年比増となっているだけでインターネットも例外ではない。

Source:Silicon Alley Insider / Chart of the Day

景気が回復すれば元に戻る(はずだ)と考える向きもある。しかし、デジタル革命は広告ビジネスそのものも変革しつつある。だから、Wayne Arnoldはデジタルを取り込めと言っている。しかし、残念ながら、彼は、広告そのものの存在意義を一片たりとも疑ってはいない。

だから彼が、IBMの「The End of Advertising」や「Beyond Advertising」を読んだ後で、どのような記事を寄稿してくれるのかが楽しみだ。

参考:The End of Advertising (Online Ad 2008/08/29)
参考:Beyond Advertising (Online Ad 2009/04/30)
参考:The End of Advertising-2 (Online Ad 2009/06/04)

2009/09/14

JAL story

先週、「Lufthansa Twitter Campaign」で、
ところで、日本のキャリアはどうするのかしら?
参考:Lufthansa Twitter Campaign (Online Ad 2009/09/04)

と書いたところ、先週末にJALがDeltaと提携交渉をしているという報道があった。また、今朝にはAmericanが食指を動かしているという話も飛んできた。

Source:Asahi.com / 日航、デルタ航空と提携交渉 生き残りへ出資仰ぐ
Source:Asahi.com / アメリカン航空、日航支援に名乗り デルタと争奪戦か

Centre for Asia Pacific Aviationに「Japan Airlines and Air Arabia at opposite ends of airline spectrum」という記事が8月に上がっている。

JALとUAEのAir Arabiaを比較している。

曰く、JALは第二四半期で10億㌦の純損失、売上は32%減、国内線乗客数は13%、国際線は17%減。Air Arabiaは第二四半期は利益10%増、上半期乗客数20%増の195万人。

曰く、JALは大規模なリストラ中、路線廃止、減便、機体交換、ファーストクラス廃止など。Air ArabiaはJVで第二ハブであるカサブランカを基点とするAir Arabia (Maroc)を就航させ、ゴア、インド、ギリシャ路線も開始。

JALとAir Arabiaの違いは鮮明で、JALは今期6.5億㌦の純損失という非常に楽観的な予想をし、Air Arabiaは三番目のハブ開設をアナウンス予定で、今期も黒字が見込まれている。

新型インフルエンザへの対応も違う中、唯一、共通しているのは、「効率化の必要性」だけ。ただし、Air Arabiaよりも規模の大きいJALは、より一層効率化を適用できるエリアが多いのだが、利益を上げる段になると、他の主要キャリアと同様に(雪だるま式に膨らんだ)過去の負債に引きずられる、とまとめている。

Source:Centre for Asia Pacific Aviation / Japan Airlines and Air Arabia at Opposite Ends of Airline Spectrum

Ryanair、JetBlue、SouthWest AirなどのLLC(格安キャリア)が気を吐いているのは、極限まで乾いたタオルを絞るというコスト管理、機材集約、運航コスト・人件費削減、サービス簡素化などから生み出される格安チケットだ。長距離路線への参入は燃油高等による運航停止などで足踏みを余儀なくされているが、LLC、そして格安チケットはビジネスモデルとして確立している。

このビジネスモデルにフルフラッグキャリアのビジネスモデルがどこまで対抗、上手をとれるかという話だ。

さて、LLCは代理店を通さないチケット販売、オンライン予約、座席指定不可、販売日時による価格変動などコスト削減と収益アップを図っている。

代理店から苦情・不満・非難の大波が押し寄せるのはもちろんだが、少なくともチケットのオンライン直販を拡大、充実することはJALが必ずやらなければならない施策のひとつだろう。

同業ではないが、同じ旅行業界にあるホテルの直販予約と代理店予約販売比を見れば明らかだ。少し古いデータだが、経済が減速気味の昨年Q1におけるホテルのオンライン直販予約件数は一昨年比3.2%も上がっている。サプライヤー側がオンライン予約に本腰を入れ、一層、直販比率を伸ばしている。
参考:Hotel Booking and CEO Blogging (Online Ad 2008/06/06)

オンラインで顧客・予約客と直につながるこのご時世に代理店に依存したマーケティングをする必要はない。また、ホテルと同様にオンラインの直販比率を上げなければ、売上が伸びたところで利益率は上がらない。

そのためには、どうしてもオンラインマーケティングを充実するしかない。単純にオンライン広告を出すだけではなく、「Airline Branding」で紹介したように各社は各様に顧客・予約客とオンラインエンゲージメントを強化する施策を打っている。そこからオンライン予約への導線を引こうとしている。これを見習わなければ。
  • Virgin Atlantic  Facebookファン 1万人以上
  • AirFrance-KLM Bluenityラウンジ(SNS)開設
  • Lufthansa     GenFlyラウンジ(学生旅行客限定)
  • Malaysia Airlines Malaysian HospitalityというBlog開設
参考:Airline Branding (Online Ad 2009/02/12)

JALがDeltaと提携しても、Southwestが太平洋線に乗り出したとき、オンラインのファン、フォロワー、リンクや露出、エンゲージメントに劣る両社に勝ち目はあるのかしら。特に上のボタンなしで何ができるのだろうか?

2009/09/11

Twitter Report

Twitterに関してレポートをまとめた。

SlideShareとScribdそれぞれにファイルを上げたのでどうぞ。ご意見・ご感想などを是非お寄せください。

TwitterReport

2009/09/10

Inbound Traffic from Twitter and Facebook

BBCやCNETなどが報道しているようにPears Analyticsの調査によれば、Twitterで発信されているコンテンツの40.5%は「Pointless Babbles(意味のないおしゃべり)」だ。そして、価値があり転送されるようなコンテンツはたったの8.7%にしか過ぎないそうだ。

Source:BBC / Twitter tweets are 40% 'bables'
Source:CNET / Study: Twitter is 40 percent 'pointless bable'
Source:Pears Analytics / Twitter Study (pdf)

「やっぱり、Twitterとかいうツールは使えないな」と思われた方も多いのではないだろうか。しかし、その調査結果には、「Conversational」が37.55%、「News」が3.60%あることも示されている。
そして、「Conversational」や「News」にある「Pass along value」を見出して、RTされるコンテンツが8.70%あるということだ。

昨日、「Social Media Trends」で書いたように、一面識もない赤の他人のコンテンツを消費し、価値を認め、転送、リンク、RTなどでコンテンツを共有、再露出してくれるのがソーシャルメディアスペースのユーザだ。

彼らが新しいコンテンツの露出、共有、再露出チャネルを構築している。

参考:Social Media Trends (Online Ad 2009/09/09)

例えば、AlexaでWebサイトへのインバウンド(流入)トラフィックを見ると、Starbucksの場合、Twitterは3.16%を占めている。Amazonは0.75%、Zapposは3.37%、Whole Foods Marketは4.79%になっている。
Source:Alexa / Starbucks
Source:Alexa / Amazon
Source:Alexa / Zappos
Source:Alexa / Wholefoodsmarket

まだまだTwitterをソーシャルメディアマーケティングに導入して日が浅く、Twitterフォロワー数もそれほど多くもない企業が大半なので、例で挙げたのは特異な企業・ブランドかもしれないが、インバウンドトラフィックトップ10にTwitterが入ってきたケースが出てきている。

そして、もうひとつ見逃せないのはFacebookからのインバウンドトラフィックだ。こちらはTwitterに比べればマーケティングに活用されてから日も長く、多数の企業・ブランドが実績を上げているだけにトラフィックシェアも高い。上の例でいけばStarbucks、Amazon、Zappos、Whole Foods Marketはそれぞれ14.04%、2.48%、2.99%、3.71%を占めているし、Twitterがトップ10に入らなくてもFacebookは必ず顔を出している企業・ブランドは多い。

検索エンジンやポータルサイトからのインバウンドトラフィックが多いのは当然だ。しかし、FacebookやTwitter、あるいはYouTubeといったソーシャルメディアスペースからのトラフィックが上位に進出してきている。

新しい露出、共有、再露出チャネルがソーシャルメディアスペースに構築されつつある。そのトリガーの一つがTwitterなのだ。

最後に、Twitterの40.5%が「Pointless bubble」だとしても、それは世界中にあるWebやBlogの「Pointless bubble」と大差ない比率ではないだろうか。どんなブランドでもいい、Googleで検索すると1億とか2億、Yahooなら3億とか4億の結果が返ってくる。まず、どんなにブランドが努力してもそんな数のコンテンツを作ることはできない。あちらこちらで善意に引用、コピーされたとしてもそんな数になるだろうか。検索結果の大半はアフィリエートや、リンク集合ページであったり、意味もなくブランドリストがあるだけだ。多分、WebやBlogの「Pointless bubble」の方がもっと多いはずだ。

2009/09/09

Social Media Trends

IAB Europeが6月にGlobal Web Indexというところのプレゼン資料をアップしている。

その資料の中で特に目を惹いたのは、下のスライドだ。年を取るにつれて友人関係はしぼんでゆく。18-24歳時の対面友人が32人、職場の対面同僚が28人だとすると、45-54歳時には友人が17人に減っている。
しかし、そこにソーシャルネットワークやマイクロブロギング(Twitter)の友人、知人を加えると世界が大きく変わってくる。18-24歳時のデジタルコネクションは88+43=131人。45-54歳時は31+45=76人と、リアルライフでの友人、知人を大きく上回ることになる。
これは、対面の友人、知人だけではなく、デジタルコネクションで知り合ったユーザを対面の友人、知人と同等に信頼するということだ。

それは、下のスライドに出ている。「小売Webサイトでレビューしている消費者」「SNSで知り合ったコンタクト」「よく閲覧しているBlog」といったデジタルコンタクトが、家族や対面友人、マスメディアセレブといった信頼順位に食い込んできている。若年層のほうが中年層よりも、赤の他人を信頼しているが、これは若年層がよりデジタルネイティブだということだ。
そして、下のようにまとめている。
  • 一面識もない全くの赤の他人を信頼
  • ユーザの存在、信頼関係は世界規模
  • 赤の他人が我々の知識、アイディア、そして判断を決める
こういった状況下でブランドが果たすべき役割として、以下の3つを挙げている。
Source:IAB Europe
Source:IAB Europe / Social Media 2009
Source:SlideShare.net

ソーシャルメディアスペースのユーザ、住人は一面識もない赤の他人の書き込み、リンク、RTを消費することで、彼らを信頼できる、するようになる。それは自分たちのスペースに参加している同じユーザ(Someone like me)だという意識を持っているからだ。この信頼関係は国内だけにとどまらずソーシャルメディアスペースに参加する世界のユーザに広がっている。今までマスメディアからの情報、学校・企業・団体の知己が我々の判断に少なからず影響してきたが、それにソーシャルメディアスペースで知り合った一面識もない赤の他人も加わってきたということだ。

そして、ブランドには一方的な情報・コンテンツの押しつけをせず、自分と同じ土俵に上がり、そこで会話することを望んでいる。24%はソーシャルメディアスペースでブランドにフィードバックしたいし、22%はソーシャルメディアスペースのコメント(声)を聞いてほしいと望み、6%は友人になってほしいとまで考えている。

もうマスメディア経由のコミュニケーションだけでは立ち行かないと理解した欧米企業・ブランドはソーシャルメディアスペースに参加し始めている。

2009/09/08

Online Spending in India

Webchutneyからインドにおけるデジタルマーケティングに関する調査、「Digital Media Outlook 2009」という資料が出ている。

インドの広告費の三分の二を支出している500の企業・広告主・マーケターを対象として、デジタルマーケティングの現状を調査している。

まず、インドのインターネット人口を4,700万人、普及率4.2%としている。が、これには口を挟みたい。

下の参考で紹介したようにIAMAI (Internet & Mobile Association of India)が今年の1月に出したI-Cube 2008で、2008年9月時点で都市部のインターネットユーザは5,700万人(アクティブユーザは4,200万人)を超えている。また、InternetWorldStatsが伝えるように、2008年11月のITUの推計では8,100万人となっている。8,100万人とすると普及率は7%となる。

参考:Internet in India 2008 (Online Ad 2009/03/11)
Source:InternetWorldStats.com

さて、2008-2009年の広告支出シェアだが、TVと印刷媒体が圧倒している。ただし、500マーケターの内82%がオンラインに予算を支出し、それは全体の5.4%にあたる。
トップ500のマーケターからすると、インターネットを利用する目的は、とに角「引合い生成、迅速対応、そしてコンバージョン」だ。次に「認知、可視化、ブランド構築」が来る。とに角、マーケティングのコミュニケーションチャネルとしてではなく、ダイレクトマーケティングチャネルとして活用しているわけだ。
そこで、どんな展開をしているかというと、ブランド専用サイトとかは当然としても、すでにソーシャルメディアを試行しているようだ。また、モバイルやバイラルもやっている。ここら辺が上の図とちょっとずれてくる。
そして、来年の広告費を予想している。2008-2009年の513.6億ルピーから10%減少し、2009-2010年は465.3億ルピーに落ち込むようだ。しかし、トップ500マーケターは前年比44%増の39.9億ルピーをデジタル部門に予定しているようだ。

これだけでも今年の5.4%から来年はシェア8.6%へ伸びることになる。

そしてトップ500マーケターが全体の三分の二を占めたままだとすると全体では62.5億ルピーに達すると見られている。
最後に各メディアごとのリーチを出している。
Source:Webchuntney / Digital Media Outlook 2009
Source:AdAge / Consumer-Goods Brands Likely to Triple Online Spending in India Next Year

最後の図に似たような図を、昔、よくご覧になったような記憶はありませんか?オンラインがどんなに逆立ちしたところで、マス4媒体にかなうわけがないと誰もが思っていた、そんな遠くない昔があった。

しかし、今、日本では新聞広告をオンラインが上回り、TV広告の次に位置するのも時間の問題だと見られている。そして、日本と同様にモバイルがリーチでもTVに肉薄しているのがインドだ。加えて、インドではすでにモバイルトラフィックの48.9%がSNSへ向かっているというデータもある。

参考:Mobile SNS (Online Ad 2008/06/05)

日本よりも時間は少しかかるかもしれないが、米国で起き、日本でも、欧州でも起きた同じパターン、レガシーメディアの衰退がインドでも確実に始まっている。

2009/09/07

Lufthansa Twitter Campaign

最近、Lufthansaに関して、「Cash Back for Rainy Holidays」で、€20のキャッシュバックを行うキャンペーンを紹介したばかりだが、

参考:Cash Back for Rainy Holidays (Online Ad 2009/08/17)

先週、独在住の読者から「LufthansaのTwitter」キャンペーンに関する情報をいただいた。

それは何かというと、下のTwitter画面にあるように、「フォロワーになってくれた皆さまに感謝して全員に20ユーロのルフトハンザの商品券を進呈。こちらをクリックしてお受け取りください」というものだ(そうだ。筆者は独語不如意)。
(クリックでTwitterへ)
いただいた情報によれば、
FAZ(Frankfurter Allgemeine Zeitung)の9月1日の記事に「ドイツの大手企業、ソーシャルメディアにようやく注目」があり、Lufthansaが紹介されていた。

Twitterアカウントへアクセスすると上のエントリがあり、リンク先には「Lufthansaは8月31日までにフォロワー1万人を獲得する目標を設定していた。達成できなかったが、フォロワーになってくれた感謝の気持ちとして20ユーロの商品券を差し上げます」
と、あったそうだ。

そこで独語はちんぷんかんぷんの筆者もTwitterからリンク先へ飛んでみた。
(クリックでサイトへ)
そして、クーポンコードをゲットしてみた。
Source:Twitter / Lufthansa_DE
Source:Lufthansa / Mehr als 7.700 Follower für den Lufthansa Twitterkanal

ま、残念ながら、クーポンコードを使うには独在住者でなければならないし、使えるのは9月30日までらしい。

欧州は今、超格安航空会社Ryanairに席巻されている。事前購入で0.01ユーロといった運賃では、どんなにサービスが良く、機内食がタダであろうと、便のいい空港を利用できようと太刀打ちできない航空会社ばかりだ。

だから、「雨の日キャッシュバック」や「地球儀回して航空券ゲット」といったキャンペーンをやらざるを得ない。

参考:Cash Back for Rainy Holidays (Online Ad 2009/08/17)
参考:SAS Globe of Fortune (Online Ad 2009/09/01)

そして、Ryanairのカウンター攻撃はもっと凄い。というのは9月3日までに予約すれば10月、11月の500路線のチケットがタダになる「1 Million 'Yes to Europe'」キャンペーンをやっていた。(ただし、アナウンスされたのは9月2日)

Source:Ryanair / 1 Million 'Yes to Europe'

この戦いはRyanairの圧倒的な勝利に終わるかというとそうでもない。

機内の空気以外はすべて有料と揶揄されるくらいだから、機内食・飲料、預かり荷物、搭乗順などは有料。マイレージなし、新聞・雑誌・毛布なし、リクライニング・シートテーブル・シートポケットなしと、格安航空券ですし詰めにされる乗客の不満も高まっているし、安全面でも心配されている。

Twitterでの書き込みをNegative、Neutral、Positiveと判定してくれるTwendzでRyanairを見ると、一目瞭然だ。全体としての否定的なTwitterが33%、辺鄙な空港から都市までのバスに67%、フライトに43%、路線(?)に50%、座席に22%が不満を抱いている。
Source:Twendz / Ryanair

遅かれ早かれRyanairも顧客、乗客の待遇を改善し、顧客サービスを向上しなければならない。

そうなってきた時こそ、ソーシャルメディアスペースでのプレゼンス、モニタリング、対応が問題となる。

話がずれてしまったが、今、Lufthansa_DEのフォロワーは約8,000人、5月12日には697人、6月26日には3,271人だったから順調に伸びてきている。TwitterholicがモニターしているTwitterアカウントの中でフォロワー数は5,974位、ドイツ国内ではトップとなっている。

Source:TwitterHolic.com

匿名個人ユーザのアカウントかもしれないが、Lufthansaは英語アカウントも用意しているようだから、Twitterマーケティングがグローバルに開始される日も近いのだろう。

ところで、日本のキャリアはどうするのかしら?

2009/09/04

Social Media Opportunities and Risks

Russell HerderとEthos Business Lawというところから、「Social Media: Embracing the opportunities, averting the risk」という資料が出ている。2009年6月に米国の438人のマネージメント、マーケティング、人事担当役員に調査を行ったものだ。

それによると、81%は「ソーシャルメディアが消費者・顧客との関係強化」、そして「企業のブランド構築」に価値があると答えている。
次によく使われているソーシャルメディアとしてFacebookが80%、Twitterが66%となっている。Yammer(企業向けマイクロブロギング)も11%使われているのでTwitterと合わせてマイクロブロギングは77%となる。Facebookと肩を並べる利用率だ。
そして、なぜソーシャルメディアを使うかというと、「自社に対して消費者が何を言っているかを知る」が52%、「競合企業のソーシャルメディア利用をモニターする」が47%だ。ソーシャルメディアスペースのユーザが何を語り、競合が何をしているのかを知ろうとしている。どちらも聞き耳を立てる話だ。
さて、今後、ソーシャルメディア利用を増やすのか、維持するのか、減らすのかも訊いている。「増やす」のは73%、「維持する」が25%だ。
Source:InternetNews.com / Survey: Business Lack Social Media Policy
Source:Russell Herder / EMBRACING THE OPPORTUNITIES,
AVERTING THE RISKS


このように米国企業は、ソーシャルメディアを活用してブランド構築や消費者との関係強化を目指している。もちろん、競合他社の動向をチェックすることも忘れてはいないし、自社ブランドに対して何を言われているかを聞こうとしている。

今週の初めに「Online Monitoring」で書いたように、兎にも角にもモニタリングが重要なことは間違いない。

参考:Online Monitoring (Online Ad 2009/08/31)

2009/09/03

Gap campaign without TVCF

Gapの「Born To Fit」というキャンペーンが始まっているとClickZが伝えている。

新しいキャンペーンにTVCFは含まれず、Gap始まって以来という規模でのオンライン広告とソーシャルメディア、特にFacebookを活用したものになるそうだ。オフラインとしては印刷媒体、映画館、屋外広告で、全てがFacebookにあるGapのページへトラフィックを誘引するものとなる。キャンペーンは8月13日に始まっている。

Gapのデジタルエージェンシー、AKQAのディレクター、Julie Channingによれば、「消費者がファッションについて語っている場所(ソーシャルメディアスペース)でリーチ」することが大きな目的で、「ファッションに興味がある人にリーチし、オーディエンスに影響を与え、Gapに懐疑的な人にもGapがどうやってこのデニムを作り上げたかを話し始めてもらいたい」わけだ。

そのため、Facebookを今回のキャンペーンの中心に据えている。

(クリックでサイトページへ)
Source:ClickZ / The Gap Steps Up to Social Media in New Denim Campaign

何もファッションに限らず、ターゲットオーディエンスに訴求したいと考えているB2C/B2Bブランドは、そのオーディエンスが集う、見る、読む、観る、聞くメディアに予算を投下してきた。露出回数を稼ぎ、フリーケンシーを稼ぎ、アーリーアダプターに愁眉を送ってきた。

しかし、そのターゲットオーディエンスはレガシーメディアも消費してはいるが、そのメディア消費の大半がソーシャルメディアとなった今、どこに予算を配分するかは明白だ。

最後に、今回のGapのキャンペーンには成功度を測る数的なベンチマークは設定していない。逆に「ブランドと消費者がどれくらいやり取りをするか」を見守ることにしているらしい。

初めてソーシャルメディアスペースとそのユーザに対してブランドコンテンツを露出するわけだから、同業他社のケースをそのまま踏襲するわけにはいかない。それほどナイーブでも傲慢でもないのは当然だ。これはひとえにソーシャルメディアスペースが、今までのメディアスペースとその住人達とはまるで違うことを少なくとも認識していることを示している。単純に、露出チャネル・数、頻度、累積時間など従来のメディア指標で、新しいメディアを測ることができないことも理解していることを示している。

2009/09/02

Viral Video and Twitter

4分を超える長尺だが、「PSA Texting and Driving 'COW' taster 001」というビデオに注目が集まっている。



上のビデオの視聴回数は174万回を超えており、YouTubeには4分フルのものから1~2分に編集されたビデオがいくつも上がっている。Break.comでは「Don't text and drive」として上がっており、視聴回数は約69万回にも上っている(8月29日時点)。

Viral Video Chart(YouTubeだけではなく、Break.comなど他のビデオサイトもモニターしている)ではここ一週間はトップ10に入っており、総視聴回数は385万回を超えている。なにより746のBlogがこのビデオを取上げ、9,231個のコメント、1,692個のTweetsが記録されている。(8月29日時点)

Source:Viral Video Chart

このビデオは英国のGwent Police Authorityが、全てのドライバーの交通事故撲滅、特に若年層や初心者に運転中の携帯電話操作の危険性を強く警告するために作成したものだ。

Source:Gwent Police Authority

ところでこのビデオがバイラル化した原因として、まず考えられるのは、実際の事故かと思わせるほどのリアルで衝撃的な映像がある。しかし、どんなにコンテンツが素晴らしく、感動的で、あるいは衝撃的なものであったとしても、それを伝えるチャネルがなければ画に描いた餅に終わってしまう。

バイラルビデオに関するTubeMogulの調査ではリフェラルトラフィックの大半はBlogからとなっている。(この調査にTwitterは含まれていない)
  • 80.88% Blog
  • 11.18% 検索エンジン
  • 3.66% ソーシャルネットワーク
  • 3.19% ソーシャルブックマーク
  • 0.63% ビデオ検索エンジン
  • 0.05% Email/IM
参考:Asics Viral Video Campaign (Online Ad 2009/06/30)

だから今までビデオのバイラル化を目指す場合、いかにしてタッチポイントを増やすかに各マーケターは注力していた。いかにして多くのBlogに取上げてもらうかが主眼だった。そのため、746のBlogが取上げ、9,231個のコメントを獲得している今回のビデオもバイラル化したといえる。

しかし、それを上回る効果を上げたのはTwitterだろう。1,692回もTweetされたコンテンツは、それぞれのTwitter達が抱えるフォロワー達に広がる。数人のフォロワーしかいないTwitterもいれば、数千人、数万人を超えるフォロワーを抱えるTwitter達もいる。このコネクションの広がりは、ビデオを取上げたBlogの数を凌ぐ。

今後、ビデオのバイラル化にTwitterは欠かせなくなるし、ひょっとするとBlogの影響力を上回る効果を発揮する可能性が高い。

2009/09/01

SAS Globe of Fortune

SASがFacebook Connectを使ったオンラインゲームというか、オンラインコンテストというか、無料で航空券が当たる懸賞抽選サイトを立ち上げたとAdverblogが伝えている。

ただし、このゲームに参加し、航空券をゲットするには18歳以上でFacebookに25人以上の友人を持っていることが条件だ。また、出発地はSAS便が出ているところで、こちらで勝手に別なところを決められない。それと一緒に旅行するFacebookの友人が必要だし、二人で一緒に旅行する動機を書いて送らなければならない。
(下をクリックでサイトへ)
sas_global_fortune02.jpg
こんなに面倒でも、当たったら気の合う二人でタダ旅行を楽しむことができる。
ただし、受付は8月31日、そう、昨日までだったのだが。
sas_global_fortune03.jpg
Source:Adverblog / SAS Globe (Facebook) of Fortune

Facebookにページプレゼンスを持っていないSASにしてもFacebookを使ったマーケティングを開始している。というか、開始せざるを得ないのだ。

ターゲットがどこにいるかを考えると、それはTVでも、新聞・雑誌でも、メディアのWebサイトでもない。ターゲットはソーシャルメディアスペースにいるわけだ。そして、そのソーシャルメディアスペースはユーザの友人コネクションを通してコンテンツ露出を共有し、再露出してくれるスペースとなっているわけだ。

それさえ理解すれば、後は露出方法だけといってもいい。

なお、このAdverblogのエントリページ末尾にKorean Airが広告を載せていた。クリック先は言わずもがなのKorean Airの公式Webサイトだ。DoubleClickというかGoogleのアドネットワークによってKorean Airの広告が、SASのコンテストを書いているAdverblogに配信されたということだ。

SASのFacebookというソーシャルメディアスペースを活用したキャンペーンと比べると、正統派のトラフィック誘引広告だ。それでも広告さえ出していない、いや、出せない他国の航空会社と比べればまだ、いや、ずっとターゲットユーザがどこにいるかを理解しているということになる。