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2011/02/07

Global Head of Digital Marketing and Social Media

Pete BlackshawAd AgeによるとFMCGジャイアントのNestleが、NielsenとMcKinseyが共同出資しているNM InciteのCMOであるPete Blackshawをデジタルマーケティング+ソーシャルメディアのヘッドとして3月1日から迎えると伝えている。

今後、彼はMarketing & Consumer Communication部門長のTom Buday、そして、Corporate Communications部門長のRudolf Ramsauerの下で活動し、報告するそうだ。

Source:AdAge / Nestle Hires Pete Blackshaw as Global Digital Chief

Nestleと言えば昨年4月に取上げたGreenpeaceのキャンペーンが記憶に新しい。

参考:Greenpeace Campaign Against Nestle (Online Ad 2010/04/19)

株主総会に合わせて、会場周辺での実力行使、Email、Twitter、Facebook、YouTubeなどで行われていたパーム油の使用禁止キャンペーンにより、サプライチェーンの見直し、パーム油円卓会議への参加、果ては会長によるビデオ声明にまで追い込まれたNestleが、1年かけて出した答えがこれだ。

YouTubeにアップされたビデオの削除要請、Facebookのコメント削除警告など、火に油を注ぐ対応しかできなかったNestleが出した答えが、部門新設と彼だ。


それまでNestleに「Digital Marketing & Social Media」といった部門はなかったはずだ。新しい部門を立ち上げて、そのトップに昔PlanetFeedback.comをやっていたBlackshawを据えるわけだ。

既存のMarketing & Consumer Communication、Corporate Communicationsに数多あるであろう下部組織・部門では昨年のブランド危機に対処できないことが証明された。その後、Nestle社内で行われたのは、まず、新しいメディア=オンライン、ソーシャルメディアのパワー、波及力、拡散力の分析であり、1対Nとは真逆に近いP2Pといったコミュニケーションチャネルや信頼・共感・協力を増幅するチャネルの把握、そして既存レガシーメディアのOne Wayに対するTwo wayコミュニケーションとの対比、ソーシャルメディアを構成するP2Pの人間つながりを把握した上で、今後の見通しやあるべき対応・組織・リソースが議論されたことだろう。

その結果、部門新設が決定され、Blackshawが選ばれた。1年という長いようで短い期間にどれだけの時間が費やされたのだろう、マーケティングや広報といった上位部門だけではなく、経営層で。

Nestleは、巨額の広告・マーケティング予算を支出し、どこにもでも顔を出すP&GやUnileverと比べると、あまり姿の見えないブランドだ。だから、まずGreenpeaceがパーム油で最初に標的にしたのもUnileverだった。Unileverは2009年にさっさと問題視されたSinar Masとの取引を中止したため、二の矢に選ばれたNestleが火だるまになってしまった。

この危機意識のなさはマーケティングや広報といった上位部門だけではなく、経営層が火種なのだから。パラダイムシフトを理解、把握するブランドと、していなかったブランドの差は途方もなく深く、広い。また、火傷から学ぶブランドと、学ばないブランドの差はこれからも開いてゆく。担当部署ではなく、経営層の理解が不足し、危機意識のない場合はとくに。

ツール主導で先走りがちな担当部署を抑え、組織的な改革と外部からのリソース注入により風通しのよい横断組織、あるいは組織新設に至るまで、企業の根幹を変えるのは経営層、CEOでしかあり得ない。いくら担当部署を監督する役職者が理解を示していたとしても、CEOの理解、決断がなければ、その企業はこれからのビジネスに脆弱性がついて回る。理解を示す役職者がいても、彼がCEOを動かさなければ企業は何も変わらない。

特に、担当部署が実施するOne Wayコミュニケーションのオンライン化、ソーシャル化を目指すだけの施策を見るにつけてもそう感ぜざるを得ない。例えば、企業広報部、グローバルブランド管理部、広告宣伝部、コーポレートなんとかといった組織そのもの、あるいはその下部組織を、根幹から変革し、担当分野や上下関係を変え、名称もデジタルとか、インタラクティブとか、ソーシャルメディアへと変えるのはCEOしかいないと思うのだが...。

それとも、やはり、他山の石ではなく、Domino Pizza、UA、Nestleのように業績やブランド価値・評価が実際に傷つかない限り、学ばない、学べないものなのだろうか、中でも日本企業と、そのCEOは...?

参考:Open Letter to CEOs in Japan (Online Ad 2010/08/17)

2010/07/22

Crisis Management

Goldman Sacksであれ、BPであれ、Toyotaであれ、いかなる企業も企業としての存在が危ぶまれる危急存亡の時を迎える可能性がある。

そしてその対応を間違えると以下のようなビデオの餌食になってしまう。


つい先日、ソーシャルメディア対応を紹介したばかりのJohnson & Johnsonだが、小児用タイレノールのリコール問題で揺れている。

参考:Johnson & Johnson in Social Media (Online Ad 2010/05/06)

J&JのCEOは米議会の公聴会で証言させられたし、CNNによれば刑事告発、起訴の可能性もあると伝えている。なんだか、ついこの間、Toyotaのリコールに関連して演じられたシーンが再現されているような気がする。

Source:Pharmalot / How Can J&J Recover From The Recall Scandal
Source:CNN / Tylenol recalls referred to FDA crime division

さて、IPR (Institute for Public Relations)から、Crisis Management and Communicationsというレポートが出ている。2007年10月30日付けなのでもう3年も前のものだが、基本中の基本が列挙されている。

その中に、「コミュニケーションチャネル」というセクションがある。危機発生時には専用Webサイトを立ち上げて必要情報を供給し、社員などに情報提供するイントラネットを立ち上げ、そして、社員および他ステークホルダーに情報提供するマス通知システムを準備することが挙げられている。
そして、「初期対応」セクションの中には、「インターネット、イントラネット、そしてマス通知システムを含み、利用可能な全てのコミュニケーションチャネルを利用すべし」とある。
Source:Institute for Public Relations / Crisis Management and Communications

3年前に作成されたため、このレポートにはソーシャルメディアが考慮されていない。揚げ足取りのビデオ、悪意のこもったSMやBlog、Facebook、Twitterなどでの書込み。それらが共有されるスピードや広がりが考慮されていない。そして、それら膨大な露出と共有により、生起されるブランド価値の毀損、ブランド損失の大きさが考慮されていない。

また、企業・ブランドのファン、ロイヤルユーザといったホワイトナイトに活躍してもらうプランが見えない。Toyotaがリコールでやり玉にあげられていた時、米国のトヨタ車オーナーが何を言い、書いていたのか知っていますか?大半のオーナーはトヨタ車の信頼性、安全性、経済性、乗りやすさなどブランド体験を書き連ね、リコールは一部のものだとトヨタを擁護していた。金では買えないそんなオーナー、ユーザの声を危機発生時にどう活かせるのか、どう活かすべきかのプランが見えない。また、危機が鎮静化した後のブランドレピュテーション回復時にもこういったホワイトナイトユーザに活躍してもらうステージがあるはずだが、そういった面でのプランも検討されていない。

この3年間の間に起こったパラダイムシフトは、企業・ブランドが活用していたコミュニケーションチャネル自体を変革し、ソーシャルメディアチャネルの存在を大きくクローズアップした。このソーシャルメディアチャネルに対応する新しい危機管理計画が必要だ。そして、それは国内向けというよりも、日本国内以上にソーシャルメディアが席巻している海外市場を第一に考えたものであるべきだ。

2010/07/02

Reputation Management

PEWから、「Reputation Management and Social Media」というレポートが出ている。

まず、自分自身に関して、名前やどんな情報がインターネットに上がっているかを検索する率は2001年の22%から、2009年には57%にまで上昇している。

いろんなSNSに登録していたり、BlogやTwitterから発信していたり、Flickr、YouTubeなどにスペースを確保していたり、email登録、コンファレンス参加、ECサイトでのオンラインショッピング、そしてチャットやSNSなどでの会話、ブランドとのエンゲージメントまで、広い分野に参加し、個人情報を記入、登録してきたユーザは、インターネットに自分がどのように露出しているのか、そして、自分に対する人の声や評価を聞きたくなる。だから全体平均もそうだし、各年代別の検索率も上がってきている。
もはや、検索と日常生活は切り離せないパッケージになってきた。また、独り歩きしがちなオンラインの情報、評価がオフラインのそれを上回り、一般個人ユーザの懸念事項ともなっていることをうかがわせている。

そして、昔の知り合い、専門家、友人、家族に加えて、「同僚や競合」を検索する比率が2006年の19%から26%へと上昇している
また、他人を検索するものとして、一番伸びたのは33%から48%へ上昇した「ソーシャルメディアスペース、あるいは専門家ネットワーク(LinkedIn)」だ。
Source:PEW / Reputation Management and Social Media

ということで、PEWは、
  1. 個人が自身のレピュテーションマネージメントを行ってきている
  2. 個人の情報管理をしっかりしてきている
  3. 検索とソーシャルメディアスペースがオンラインレピュテーションを確立するスペース
  4. 関ってくる人たちのデジタルフットプリントをモニタリングしている
と言っている。

ここにあるのは、モニタリングとレピュテーションマネージメントだ。

個人がインターネット、検索、ソーシャルメディアを活用するにつれて、自分自身の価値、評価、つながっているネットワークを保護し、自分に関ってくる他人の評価を調査している。

このようにインターネット、ソーシャルメディアのパワー、影響力、訴求力を自覚するユーザは自分自身を守るために、そして、関ってくる他人をモニタリング、評価している。これこそ、今の時代の企業・ブランドが行うべきことだと考える。

昔通りに、一方通行のメガフォンマーケティングをソーシャルメディアスペースでやっている限り、レガシーマスメディアはコントロールできたとしてもソーシャルメディアの情報・コンテンツ・バズはコントロールできない。モニタリングとレピュテーションマネージメントはパラダイムシフトの第一ステップだと思うが、いかがだろうか?

2010/06/01

BP Reputation Management Challenged -3

BPGlobalPRを2度取上げてきた。

参考:BP Reputation Management Challenged (Online Ad 2010/05/26)
参考:BP Reputation Management Challenged -2 (Online Ad 2010/05/28)

上で紹介したようにWiredやAdAgeが@BPGlobalPRを取上げていたが、まだ限定的だった。しかし、グローバルで毎月2.8億impression(英1.7億)、3,337万ユニークブラウザ(英1,419万)を抱える英Guardianに飛び火した。こうとなると事は簡単ではない。

BPGlobalPRによれば、英Guardianから「PRに関して寄稿してくれと」話がきたそうだ。
そこで、BPGlobalPRは下のヨタ記事を寄稿している。
Source:Twitter / BPGlobalPR
Source:Guardian /A Crash course in PR from the folks at @BPGlobalPR

28日に5万弱だったBPGlobalPRのフォロワーは、31日には9万を越えている。そして、Guardianや他のマスメディアサイトが取り上げれば取上げるほど、この数字は急上昇してゆく。

Source:TwitterCounter / BPGlobalPR

フォロワーが増えてゆくということは、BPに対するネガティブセンチメントが世界中で増えることを意味し、あるいは少なくともBPというブランド価値が日々損なわれてゆくことを意味する。今まで放置し、累積したツケはこれからも増えてゆく、もし、このまま放置を続ければ...。

もはや1対1といった対処・鎮火可能状況ではなく、ソーシャルメディアスペースでの露出が、共有、消費されて、複雑にリンク、拡散され、マスメディアに飛び火した後に実施可能なPR戦略はない。

企業のFacebook、Twitterアカウントを確保していますか?企業・ブランド名だけですか?PR、マーケティング、イベント、キャンペーンアカウントはどうですか?類似アカウントの存在、コンテンツ、フォロワー数推移などをモニタリングしていますか?競合企業・ブランドの状況は把握していますか?LinkedInのCCネットワークなどでのディスカッションを聴いていますか?ソーシャルメディアクラッシュコース、トレーニングを実施していますか?

少なくとも、今回、BPGlobalPRが生起、提起した問題を検討していますか、していませんか?BPGlobalPRがBPブランドに与える損害、被害を算出してみますか、しませんか?

BPGlobalPRに対応できないから対応していなかったとしか見えないBPのPR、法務の責任は、どれほどのものだと考えますか?

いや、ソーシャルメディアスペース・ユーザのパワーを認識し、マインドセットを切り替える必要を自覚された方はどれくらいおられますか?また、ソーシャルメディアスペース・ユーザに対するエンゲージメントは、外部エージェンシーを活用して従来通り、手離れよく、対応できるものだと考えている方はどれくらいおられますか?

2010/05/28

BP Reputation Management Challenged -2

一昨日アップした「BP Reputation Management Challenged」のアップデート。

参考:BP Reputation Management Challenged (Online Ad 2010/05/26)

25日までTwitterCounterが、BPGlobalPRをカウントしておらずBP_Americaとの比較グラフが描けなかったが、26日から可能となったので比較してみる。

TwitterのBP_Americaアカウントは、26日昼ごろで4,751人のフォロワーを持ち、25日から275人増、Twitterランクは33,430位となっている。27日には5,547人、26日から796人増となって30,263位に上昇してきた。

一方、BPGlobalPRは5月19日にTwitterアカウントを開設したばかりにも関らず、すでに26日に3.3万人、そして27日には4.6万人以上のフォロワーを抱え、これからの30日間で35万人以上になると予想されている(TwitterCounterは26日からカウントしているため、この予想は大幅に割り引く必要がある)。そして、そのTwitterランクは26日で12,148位、27日で5,414位だ。

この2つのTwitterアカウントのフォロワーを比較すると下図のようになる。低空飛行を続けていたBP_Ameriaを横目に、BGGlobalPRは1週間やそこらであっというまに5万人に手が届くレベルまで増えている。BP_Ameriaもその影響で今週から増加傾向が見られる。(クリックで拡大)
そして、BPGlobalPRアカウントへアクセスしたTwitterユーザには以下のような人達がいる。米、伊、蘭の彼ら、彼女たちには最低261人、最大で54,000人以上のフォロワーがついている。彼らが肯定、否定、中立的なTweetをするだけでBPGlobalPR自体が露出してしまう。
BP_Americaアカウントにアクセスしたのは一昨日の彼女だけ。
Source:TwitterCounter / BPGlobaPR+BP_America

どちらが注目されているかは一目瞭然だ。BPGlobalPRが行うTweetをパロディとして捉えるユーザもいるし、性質の悪いいたずらと捉えるユーザもいる。一方、ブランド価値を毀損させるテロと捉えるべき企業・ブランドもいる。

ところがAdAgeによれば、
BPは、BPGlobalPRアカウントの存在を認識しているが、今のところ何らの対応を行ったこともない。BPGlobalPRアカウントが最初のようにBPと同じロゴを使っているわけでもなく、TweetもBPが特に目障りだと認識するものでもない。
そうだ。
ただし、このBPの対応の前提にあるのは、
(原油流出事故の)対応に対して人々がどのように感じるかは人々次第で、BPはそれを受け入れるしかない。今起こっていることに人々は不満を募らせているわけで、それを表現する方法のひとつだ(と認識している)。
ということだ。

Source:AdAge / Why BP Isn't Fretting Over Its Twitter Impostor

すなわち、BPはBPGlobalPRアカウントにかかずりあっている暇はないということだ。BPGlobalPRに関っているくらいなら原油流出をなんとかしろと言われるのは当然だとわかっているということだ。

しかし、平時に同じ対応を取れるだろうか?自社ロゴに類似したロゴを掲げ、Twitterの「なりすまし」、「パロディ」ガイドラインに抵触しているBPGlobalPRアカウントをそのままにしておけるだろうか?PRはともかく、法務が黙っていられるだろうか?法務が黙っているとしたら、それは職務怠慢、あるいは職務放棄と見なされるのではないだろうか?

さて、BPGlobalPRは、healthygulf.orgに「bp cares」Tシャツの収益を寄付すると宣言した。社会貢献団体に利益を寄付する「いいひと」なんですよというポーズをとっている。なかなか一筋縄ではいかない手強さが見て取れる。

揚げ足取り、パロディ、おふざけなど多様なTweetがこれからも発信されそうな状況だが、こんなイシューマネージメントを想定している企業・ブランドはいるだろうか?

2010/05/26

BP Reputation Management Challenged

4月20日に爆発、その後沈没したBPの石油掘削プラットフォームのおかげでメキシコ湾での原油流出は今も続いている。いつ流出が止まるか分からない現状からすると、環境被害、漁業被害は天文学的な数字になるかもしれない(?)。

その当事者、BPのグローバルサイトは事故の最新情報、追加コンテンツ、ビデオアップデート、ダウンロードファイル、ツール、コンタクト先、プレスリリースなど、これでもかといった具合にコンテンツを供給している。
Source:BP.com

そして、Twitterはどうなっているかというと、BPで検索するとBPGlobalPRというアカウントがトップにきている。しかし、このアカウントはとても世界に冠たるBPとは思えないTweetを重ねている。

例えば、
  • I'm sorry, are people mad at us for drilling in the ocean?!? Maybe God shouldn't have put oil there in the first place. DUH. #bpcares
  • Please do NOT take or clean any oil you find on the beach. That is the property of British Petroleum and we WILL sue you.
といった具合だ。

「BPは事故を起こし、メキシコ湾全体にとてつもない影響、被害を及ぼしているのに、何だこのTweetは、とんでもない企業だ」と思うユーザがいるかもしれない。
しかし、BP_Americaという別なアカウントもある。こちらはまともなTweetだし、ちゃんとグローバルWebサイトへのリンクもある。
Source:Twitter / BPGlobalPR
Source:Twitter / BP_America

BPGlobalPRというアカウント名からして、BP_Americaといった現地子会社ではなく、BP本社の広報が運営しているアカウントのように見られなくもない。しかし、このBPGlobalPRというアカウントは、「bp cares」というロゴのインクがにじんで汚いTシャツも売ろうとしているStreetGigant.comというサイトがBPの揚げ足を取り、おふざけ的に、あるいは実利を兼ねてやっているようだ。

こんなアカウントがとんでもないTweetを重ねている。そしてBPGlobalPRのフォロワー数は25日時点で約18,000、約4,600のBP_Americaより4倍近くも多い。今朝は28,000以上となっている。一日で1万人以上のフォロワーが増えている。また、BPGlobalPRのTweetはいずれも100回以上RTされている。これがどんなことかわかるだろうか?

おふざけ的に受けてくれるだけならいいが、そうも行かないかもしれない。真に受けたユーザが憤慨してTweetやRTしたり、別ユーザが輪をかけた悪さをTweetすることでネガティブセンチメントが累積してゆく。そして、どうやら@Wiredが@BPGlobalPRの誘いに乗ってしまったようなので、マスメディア系への露出もこれから急増してゆくだろう。にもかかわらず、BP側からの対処はないようでBPGlobalPRのアカウントはまだ生きている。モニタリングをしていない企業・ブランド側が風評被害を見過ごし、レピュテーションマネージメントが危機に瀕している。

そして、そんな状況に輪をかけるのが、BPのグローバルサイトだ。前述のように一見すると、最善、最適、最新のニュース・情報・コンテンツを供給しているようだが、ソーシャルメディアスペースにおける共有機能は皆無だ。

辛うじてRSSフィードだけはあるが、Share This、Add Thisはもちろん、ユーザのFacebook、Twitter、YouTubeアカウントを利用してコンテンツを共有する機能、また、Email転送などの機能はWebサイトに装備されていない。

これでは、ソーシャルメディアスペースに参加するのではなく、我々のコンテンツを見たいのなら、Webサイトへアクセスしろと言っているということになる。あるいは、Webサイトに全ての情報・コンテンツを供給しているから、これで我々の責任と義務は十二分に履行されていると胸を張っているということになる。また、情報・コンテンツを制作・発信するパワーがユーザにシフトしたにも関らず、ソーシャルメディア時代以前に企業・ブランドが持っていた一方通行コミュニケーションを踏襲しているだけだということにもなる。

Nestleの株主総会を揺るがした原因はGreenpeaceかもしれないが、Nestleに抗議のEmailを送ったり、Facebookを乗っ取ったのはGreenpeaceの賛同者だけではない。ソーシャルメディアスペースで情報・コンテンツを消費、共有したその他大勢のユーザが参加したからこそ、NestleのCEOは対策を発表しなければならなかったわけだ。旧態依然の対処ではもう立ち行かない時代なのだが...?

参考:Greenpeace Campaign Against Nestle (Online Ad 2010/04/19)

なお、ToyotaやNestle、BPとは違い、わが社は人身事故の危険もなく、熱帯雨林の違法伐採を行うサプライヤーと取引もなく、一旦大規模事故が起これば未曾有の被害をもたらすような事業はやっていないと他人事を決め込んでいる企業・ブランドはいるだろう。

しかし、こんなブランドレピュテーションの危機を迎えることは絶対ないと断言できる企業・ブランドは存在し得ない。自社の故意、過失の別なく事件、事故は起こるし、BPGlobalPRのように火事場泥棒を決め込む輩はどこにでもいるのだから。彼らにとって、企業・ブランドに責任のない事件、事故であったとしても、それを利用、悪用することさえできればいいわけだ。そして、そんな輩は世界中に掃いて捨てるほどいる。今も、彼らはBPとBPGlobalPRのケースからせっせと学んでいる。一方、企業・ブランドはただBPから学ぶこともなく...。

2010/05/17

Negative Tweet on Whirlpool washing machine

ちょっと古い話になるが、Heather Armstrong、別名dooceをご存じだろうか?
pic
今はTwitterに160万人以上のフォロワーを持ち、自分のWeb・Blogサイト (dooce.com)には平均3万人がアクセスしているスーパーBloggerだ。Forbesの選ぶ「The Most Influential Women In Media」にも選出されている。

が、2009年8月時点ではまだ100万人程度(!!!)のTwitterフォロ ワーしかいなかった彼女に何があったのか、Forbesが詳しく伝えている。

昨年の8月頃、2児の母である彼女は1,300㌦も払って古 い洗濯機を新品のMaytag洗濯機に取り換えたが、あっというまに故障してしまった。何度も何度も修理を依頼し、サービスマンが訪問して修理を試みたが 直らない。カスタマーサービスに電話してもラチがあかず、電話でとうとう最後の台詞を口に出した。

「Twitterってご存知?あたしは Twitterに100万人以上のフォロワーがいますのよ」

カスタマーサービスはそんなことは関係ないといった対応をしたようだ。

そ こで彼女はキーボードに打ち込んだ。

「I had exhausted all avenues and I had given them chance after chance to make it right」
「(I hope) the right person would hear it and help me so that you may not have to suffer like we have」
「DO NOT EVER BUY A MAYTAG. I repeat: OUR MAYTAG EXPERIENCE HAS BEEN NIGHTMARE.」

彼女がTweetして3分たつか経たないうちに、「私もMaytagでとんでもない目にあったわ」という別ユー ザからのTweetが来た。続いてもう3件同様のTweetが飛んできた。数時間すると、家電ショップから修理を請け負うというTweetも何件か飛んで きた。

そして、Maytagの親会社、WhirlpoolのTwitterアカウント、@WhirlpoolCorpからTweetが来 た。
翌朝、 Whirlpool本社のJeff Pirainoから新しいサービスマンを手配中だと言う電話があり、その翌日には彼女の洗濯機は完ぺきに修理された。

Source:Forbes / A Twitterati Calls Out Whirlpool

この ケースの属性・影響や波及・インサイトを、Twitterフォロワーを100万人以上も抱え、Maytag洗濯機故障に関するBlogに2,500件以上 のコメントを受け、Forbesの「The Most Influential Women In Media」に選出されているHeather ArmstrongというスーパーBloggerの特異性に求めるのも可能だろう。

しかし、自分のTwitterアカウントに一人のフォ ロワーがいなくても、自分のBlogに日に一人のビジターも来ないような一般のユーザであったとしても、Heatherやほかのパワフルな影響者、インフ ルエンサーにコンタクトすることができる。あるいは単純に、「Help me」と助けを呼べば、おっとり刀で駆けつける人助けを自分の使命だと思うユーザは数多存在する。彼らの声、Tweetが集まれば同じ効果、影響力を発揮 することができることになる。

それにしてもHeather ArmstrongがTweetした時点で12回、先週の5月14日時点でも55回しかTweetしていないWhirlpoolCorpがよく察知したも のだ。ForbesにWhirlpoolのスポークスマンが答えている。
  1. 我々はソーシャルメディアサイ トを継続的にモニタリングしている。
  2. Heather Armstrongの書込みを発見した際、我々は迅速に彼女にコンタクトし、通常手続きを通して問題を解決した。
し かし、モニタリングしていたとしてもリアルタイムにネガティブバズを探知するのは困難だ。最大過去3カ月のフォロワーしか分からないが、今年の2月頃で 850人程度、多分、昨年の8月頃は4~500人程度しかいなかったフォロワーの誰かがHeatherのTweetを受け、WhirlpoolCorpに 「大変なことになるよ」とDMしたのだろう。あるいはHeatherをフォローしていたWhirlpool社内の人間が通報したのかもしれない。

Source:TwitterCounter / WhirlpoolCorp

ソーシャルメディアスペースに参加することと、モニタリングする ことが最低必要条件だと理解している企業・ブランドがおり、そうではないケースもある。また、社員を含むブランドファンからのアドバイスやアラートを受ける体制がある企業・ブランドがあるし、そうではないケースもある。

このネガティブセンチメントを修復するために要する時間、コスト、手間 を計算してみたことがありますか?ブランドファンからの救いの手を見過ごすコスト、影響、被害を計算してみたことがありますか?

2010/04/20

Ford Reputation Soars

今回で11回目になるReputation QuotientをHarris Interactiveが出している。

このReputation Quotientは、6分野の20属性を指標として各社を評価している。
  1. エモーショナル(尊敬、信頼など)
  2. 製品&サービス
  3. 職場環境
  4. 財務パフォーマンス
  5. ビジョン&リーダーシップ
  6. 社会的責任(社会貢献支援、環境責任、コミュニティ責任)
まず、2008年版のトップ10に入っているのは、J&J、Google、Sony、Coca-Cola、Kraft Foods、Amazon、Microsoft、General Mills、3M、そしてToyotaだ。

2009年のトップ10には、Berkshire Hathaway、J&J、Google、3M、SC Johnson、Intel、Microsoft、Coca-Cola、Amazon、General Millsが入っている。

調査が行われたのは、2009年12月29日から2010年2月15日まで、29,963人を対象にしたインタビューが行われている。

明らかなのは新顔が3社入り、Sony、Kraft Foods、Toyotaがトップ10から陥落している。Sonyは3位から16位へ、Kraft Foodsは5位から13位へ、Toyotaは10位から20位へ落ちた。

しかし、中でも2008年から2009年にかけてとてつもなくRQ上昇を見せた企業・ブランドがいる。Harrisが11年間行ってきた毎年の調査の中でも最も大きな伸び、11.28アップをたたき出したのがFordだ。2008年の51位から2009年は37位まで順位を上げている。
Source:Over the Wire / Company Reputation is as Good as its Communication
Source:Harris Interactive / Reputation Quotient 2009 (pdf)

Fordと言えば、Fiesta Movement、Scott Monty、Online Monitoringなどに絡めて、数多く書いてきたようにソーシャルメディア戦略、マーケティングで最先端を走っている企業・ブランドだ。1月にはPRWeekの「Best Use of Social/Digital Media」を受賞している。

参考:Social Media Policy Tool (Online Ad 2010/03/15)
参考:Ford: Social Media Monitoring (Online Ad 2009/09/17)
参考:Ford Social Media Strategy (Online Ad 2009/09/30)
参考:Leadership of Ford and Toyota in Social Media (Online Ad 2010/04/01)

ビッグスリーの中で唯一、政府から支援を受けずリーマンショックを乗り切り、ソーシャルメディアスペースでユーザとの対話を進めるFordであれば、エモーショナルも職場環境も、財務パフォーマンスも、製品・サービスやビジョン、そしてSRも評価が上るのは当然だろう。

さて、Harrisだけではなくいろいろなブランドランキングがあるが、KPIとしてソーシャルメディアスペースにおけるユーザとの対話の有無、その体制、評価などを追加してもいい時期ではないだろうか。それなしにはコミュニケーションや対話が成り立たなくなりつつあるのだから。

2010/03/05

Toyota Risk Management -2

先月末にBigResearchのFebruary Big Call (Webinar)があった。

消費マインド、雇用状況などに交じって、「購買意思...Toyota Recallの影響」というスライドがあった。

今年2月、これから半年間に自動車を購入しようと計画しているのは10.6%。昨年よりも回復してはいるが、2008年以前とはまだ開きがある。そんな中、トヨタのリコールの影響で40.2%は、最初、あるいは二番手の車として検討するブランドからトヨタを外している。

その結果、購入を検討する車ブランドのトップにFordが座り、Chevrolet、Honda、Nissanと続いてToyotaは最下位の7番手になっている。Source:BigResearch / February Big Call (Webinar)
参考:Toyota Risk Management (Online Ad 2010/01/25)

さて、米Toyotaは、社長のJim LentzがDiggを使って顧客からの質問に直接答えたり、プレスルームを拡張し、「Recall Information」セクションを充実させている。そこへ行けば10本のビデオが上っており、ETCの説明から、品質、急停止操作、フロアーマットの説明までしている。

参考:Corporate & CEO Blog (Online Ad 2010/02/08)
Source:Toyota.com/recall

そして、2月、米Toyotaは、下のような広告を大手新聞に掲載していたし、米公聴会前にはWSJに豊田章男社長が寄稿していた。
Customer.Letter.2また、Tweetmemeを使い、「Toyota Conversations」といったサイトを立ち上げ、トヨタ、リコールなどに関するTweetsをアグリゲートしている。
Source:ToyotaConversations.com

矢継ぎ早という形容がぴったりなほど迅速に対応している。

ただし、Jaff Juiceが言うように新聞を購読している読者向けではなく、トヨタ車オーナーおよびトヨタ車購入を検討している潜在顧客に伝えるには、レガシーメディアだけではなくソーシャルメディアスペースでの告知が必要だ。

WSJや大新聞だけでは足りない。また、FacebookやTwitterでの発信もまだ物足りない。

Source:Jaff Juice / How Toyota can Flip the Funnel

BigResarchの調査データにあるように企業・ブランドへの信頼感が崩壊した時、それを回復させるのはWSJや大新聞、TV、雑誌、ラジオなどのレガシーメディアだけでは足りない。それらレガシーメディアよりもユーザが集うソーシャルメディアスペースを活用しない限り、とても時間のかかる作業となる。一方通行のコミュニケーションだけではなく、オープン、対等、双方向のコミュニケーションに価値を見出しているユーザが増えているだけにソーシャルメディアスペースを活用しなければエンゲージメントも、新しいピアコネクション、リレーションズ、ネットワークはできない。

ソーシャルメディアスペースにおいて、Toyotaに対して好意的なコメント、書込みをしている多くの顧客、ユーザがいる。彼らの助けを借りずして、彼らのブランド体験を共有してもらわずして、企業・ブランド側の資金力に任せたコミュニケーションを行ったところで、競合コミュニケーションとの差し引きになるだけだ。

今回のケースでToyotaが復活する最も重要なポイントはソーシャルメディアスペースの活用如何にかかっていると見るが、いかがだろうか?

2010/02/10

Disaster Management

Decker BlogのBert Deckerが昨年末の22日に、「The Top Ten Best Communicators of 2009」と、「The Top Ten Worst Communicators of 2009」をアップしている。

Best Communicator of 2009として彼が選んだのは、ほぼ1年前、「ハドソン川の奇跡」を起こしたSully Sullenberger機長だ。

彼の「Best Communicator」としての資質は、彼が地元に帰った時、そしてCBSの60 MinutesでKatie Couricがインタビューをしているビデオからもうかがえる。



Watch CBS News Videos Online

状況が配置した乗員チームが、やるべき業務、要求される業務、訓練された業務を遂行しただけだ。極限状況下の機長として要求される業務を遂行するにあたり、(定期的に行われる厳しい訓練をベースとして、)沈着冷静、正確な状況判断、対応と指示を行っただけだと語っている。

彼の言葉には誇張や修飾、暗示はない。自身の判断を間違いのない事実として理解し、それを正確に伝える単純明快な単語を選んでいる。全幅の信頼が置けるといった形容ができる存在だ。

結果として「Best Communicator」として彼が選ばれたのは、様々な状況下において最適、最善、最速の判断を下すための訓練があったからだ。その訓練がなければハドソン川の藻屑として消えただろうし、生還したとしても各メディアが挙って彼のコメントやインタビューを争うこともなかったろう。

今、企業・ブランドのレピュテーションはリアルタイムの危機にさらされている。Facebookであれ、BlogやTwitterであれ、リアルタイムで世界中のインターネットユーザに露出、共有され、再露出されてゆく。こんな時代に、最悪状況を前提としたソーシャルメディアトレーニングがなければ、刻々と変化する状況に即して、最適、最善、最速の判断を行うことはできない。

既存レガシーメディアを前提としたマインドセットを転換しない限り、現在のリアルタイムリスクに対応することはできない。また、一朝事ある時に、既存レガシーメディアを前提としただけの危機管理、トレーニングで対応することは不可能だ。

2010/02/09

Another PR Nightmare for McDonald's

LinkedInのCorporate Communications Executive Networkに、「McDonald'sにとりPR悪夢になりかねない状況がシカゴで発生している。彼らはどのように行動するべきか?」という議論があり、24本もコメントが行き交っている。

それはChicago Sun-Timesによるとこうだ。

ボストン大学の学生で19歳のLauren McCluskyは、2007年から年一回、高校や大学のバンドを集めシカゴでMcFestというチャリティコンサートを主催し、知的発達障がい者の自立や社会参加を助けるスペシャルオリンピックに貢献してきた。2年間で3万㌦を集めたそうだ。ところが2008年に彼女が商標登録をしようとしたところ、昨年8月、McDonald'sがMc関連商標をすでに登録しているとして異議申し立てを行った。



この係争が裁判所に持ち込まれれば、すでに5,000㌦を支払っているLaurenは新たな出費を負担しなければならない。

McDonald'sは、彼女のコンサートを中止させたいと思っているわけでもなく、彼女と円満に解決するため協議を重ねている。広報担当者、Ashlee Yinglingは、彼女に別の新しい名前をコンサートにつけてほしいと語っている。「別の名前をつけてくれればコンサート費用を負担するといった代替案」をだしている。

この話がLinkedInのCC部門で議論されている。

Source:LinkedIn / Corporate Communications Executive Network
Source:Chicago Sun-Times / McDonald's in beef over trademark with Chicago teen

自分の名字をコンサート名の先頭につけ、スペシャルオリンピックに貢献してきた10代の学生の社会貢献を巨大資本がひねりつぶそうとしているようにも見える。また、一方、すでに「Mc」を前置した単語を登録しているMcDonald'sからすると、とんでもないという話のようにも見える。

さて、あなたはどう考えるだろうか?

McDonald's自体、社会貢献を長年続けている。Ronald McDonald House Charitiesがつとに有名だ。このサイトのトップページに書かれている文章そのものが答えだろう。
Source:Ronald McDonald House Charities

「あなたの支援なしに2009年50万㌦を集めることはできなかった」、「あなたなしに、Lance Kopplinの大きな笑顔、きれいな髪、奇跡の回復はなかった」。

社会貢献をひとつの柱として長年、顧客の力、支援を借りながら実績を上げてきた企業・ブランドは、一方で同じ目的を目指す個人、グループ、団体の行動を支援してきたことになる。双方向で支援と協力、情報の共有などを行ってきたわけだ。

いかに巨大な資本だと言ってもできることには限りがある。限りがあるからこそ、できる範囲とできない範囲の棲み分けを個人、グループ、団体と行ってきた。至極当然なことだ。

しかし、ここで、登録済み商標を個人、グループ、団体が社会貢献目的で使う際に資本側の理論を押しつけようとした場合、結局、資本側の狙いは社会貢献ではなく、社会貢献を行う善良な企業・ブランドだというイメージ、販促、売上につながる効果だけだということが見透かされてしまう。今までの社会貢献が色あせてしまう。

異議申し立てを却下し、かかった費用を弁償するべきだ、あるいはPR部門に抗議のemailを送ろうとか、LinkedInでは議論が活発だ。

ただ、商標登録を共有すべきだというコメントは見られない。そんな解決策もあるかとは考えるが、あなたはどう考えますか?

2010/01/25

Toyota Risk Management

以前、「Toyota Floor Mat Campaign」というエントリを書いた。

BrandChannelの記事を、
400万台以上のリコールを行っているToyota USAのWebサイトには、大量リコールをうかがわせるものはなく、ただ、「NEWS ALERT Important Information on Floor Mat Campaign」とページ左下に、あくまでも目立たなく小さな告知があるだけだ。
また、昔、FordのPinto/Explorerがメカニカルな問題を隠ぺい、軽視、あるいは危険性公表を怠ったために受けたダメージを例に引き、Toyotaはデトロイト、大昔のデトロイトの流儀に危険なほど似ているとまで書いている。
と紹介した。

参考:Toyota Floor Mat Campaign (Online Ad 2009/12/14)

ところが、先週、Toyotaはまず、米国で230万台のリコールを発表、欧州でもリコールの準備をしているという報道があった。

Source:NYTimes.com / Toyota Issues a 2nd Recall
Source:朝日新聞 / トヨタ、米で新たに230万台リコール

以前、12月14日前後では「NEWS ALERT  Important information on Floor Mat Campaign」だったが、
今回、1月23日は、「NEWS ALERT Imporant information On Safety Recall Campaign」となっている。
そこで上の赤セクションをクリックすると、1月21日付の「Toyota Files Voluntary Safety Recall on Select Toyota Division Vehicles for Sticking Accelerator Pedal」というリリースが読める。今回のリコールを(あくまでも当局の強制ではなく)自発的に行うこと、限定された車種だけに適用され、ごく稀にしか起こらないと説明している。

Source:Toyota.com / Toyota Consumer Safety Advisory

ところがJust-Autoによれば、Toyotaのリコール発表は、ABC Newsがプライムタイムで「意図しない加速問題」を番組で取り上げる数時間前に出されたとのことだ。このABC Newsは、「ニュージャージーに住むKevin HaggertyというToyota車オーナーが車のアクセルの電気系統不具合をToyotaのディーラーに見せ、ディーラーはセンサーとアクセルを取り換えた」ことを伝えたらしい。

Source:Just-Auto / US: Toyota recalls 2.3m more cars as media eyes acceleration claims

今まで構造的な不具合はないとしていたToyotaに、エレクトロニクス系統の不具合の可能性があることを認めさせるような番組が報道される数時間前に、やっと、リコールを発表したというのが真相のようだ。

Facebook、Twitterにおける対応も同じだ。リコールが公表され、顧客・ユーザがFacebook、Twitterに書き込みだして、初めててリコールを告知している。その後、殺到している顧客からの問合せ電話回線がつながりにくいための「謝罪」が来ているが、リコール関係で公式Web以上の情報はない。


こう見てくると、まず企業・ブランドの公式Webサイトで顧客対応や危機管理はできないのが自明だ。顔の見えない者同士が建前だけで言いたいこと、聞かせたいこと、見せたいことを並べ立てるだけの公式Webサイトにおいて、わざわざ突っ込みを入れられかねない事柄、リコール情報を大仰に掲示するわけにはいかない。Web担当も法務、広報、財務など社内組織の複数から許可、承認を受けた上で公式Webページを改訂、更新するしかないわけだ。

しかし、ソーシャルメディアスペースにおいて、そんな建前は成立しない。製品・サービスを購買し、利用している既存顧客にCレベルから語れる言葉はない。製品・サービスを開発、検証、販売、保守している担当者の言葉がなければ既存顧客に届く言葉とはならない。対応を受けた顧客がそのコンテンツを他ユーザと共有するだけに、オープン、対等、双方向のメッセージでなければ意味がない。

また、オープンなソーシャルメディアスペースでは、企業・ブランドがアナウンスする前に情報感度の高いユーザは最新情報を複数サイトにあっという間に書き込む。そのユーザの友人やフォロワーは、自分のフォロワーに転送、共有する。全体トレンドの方向性を決めかねないほどのパワーが発揮されるスペースだ。そのスペースで後出しでは、告知効果もしれている。

だからこそ、FacebookやTwitterといったスペースで真摯に顧客・ユーザと直接対応しなければならないはずだが...?

2010/01/20

B2C/B2B Twitter Effectiveness

先日、MarketingProfsのオンラインセミナー、Naked Truthがあった。

中にB2C、B2BのTwitter利用に関するデータがあったので紹介する。

B2CとしてのTwitterを利用し、効果ありと判断したのは、
  1. リアルタイムのPR・広報トラブルをTwitteでモニター 46.9%
  2. ブランドに否定的Tweetするユーザにコンタクト 44.0%
  3. リンククリックを促進する挑発的な書き込み 40.6% 
そして、B2Bとしては以下が挙げられている。
  1. リアルタイムのPR・広報トラブルをTwitteでモニター 40.7%
  2. Twitterのみを使ったイベント勧誘 37.4%
  3. ブランドに否定的Tweetするユーザにコンタクト 36.7%
Source:MarketingProfs / Nake Truth (有料コンテンツ)

B2Cであれ、B2Bであれ、ブランドの評価・評判・リスクマネージメントにTwitterは欠かせないようだ。当然、Twitterアカウントを持ち、メッセージ、コンテンツを発信し、RTしたり、ハッシュタグを使ったTweet、引用したTweetなどをモニターしているのは言わずもがなで、いずれであれマーケターの40%以上がTwitterでブランドをモニターしている。

そして、露出を最大化するためにTweetする時間帯を選択するといった細かいところまで手を入れている。

ただし、まだTwitterユーザとのエンゲージメントは初歩段階だ。Twitterユーザとのコンタクトから、「ブランドに対する好意的なTweetをさせるために何をするか」ではなく、Twitterをゲートウェイとしてブランド体験をしてもらう仕組みが必要だ。その上でTwitterユーザに自発的なTweetをしてもらう仕組みだ。今までどおりのフローでTwitterを使っても効果は先が知れている。

2009/10/05

Domino Pizza Lesson -2

以前、Domino Pizza Lessonを書いた。以下のビデオにあるように客に出すピザに唾を吐きかけたり、鼻の穴に突っ込んだチーズをピザにトッピングしていたわけだ。

参考:Domino Pizza Lesson (Online Ad 2009/05/7)

この事件をケーススタディとしてMarketingProfsが取上げていたので、紹介する。

まず、Domino Pizzaが執った対策は
  1. 犯人を捜し出して訴える
    全米のチェーン店へ通知し、ビデオに出ている男女2人を特定。チェーンオーナーに解雇を要請。保健所および警察に犯人を通報。
  2. YouTubeからビデオを削除する
    著作権者の要請が必要なため、犯人のうち女性の署名を警察署でもらいYouTubeにビデオ削除を要請。
  3. 顧客に対応する
    プレスリリースを出したり、ニュースカンファレンスを開くのはビデオ視聴を増やすだけで逆効果と判断し、会社への問合せは個別対応とした。しかし、結局、バズはTwitterで広がり始めたため、DominoはWebサイトに事件を公表、Twitterエントリをサイトへ誘引した。直後、YouTubeでのビデオ視聴回数は50万回へ到達した。
  4. バイラルビデオを消火する
    ビデオが投稿されてから3日後、Dominoは社長のPatrick Doyleが事件の顛末を説明するビデオをアップした。TwitterおよびFacebookページにはビデオへのリンクを装備した。
その結果
  1. Dominoからのビデオ投稿3時間後、オリジナルビデオの視聴は100万回を突破。当日、「Domino's」が「Paris Hilton」を検索キーワードで上回る。
  2. Dominoからのビデオ投稿後、米国メインストリームメディアが報道。その後、BBC、中国国営TV、オーストラリアやペルーなどDominoが出店していない国々でも報道された。Dominoによれば合計6,000万のメディアインプレッションとなった。
  3. 月曜日にオリジナルビデオを視聴した10万人は「Dominoのひどい奴らを見ろよ」と感じ、「Dominoは(これに対して)何か対策をしているのか?」へ変わり、Dominoからのビデオがアップされた後は「YouTube世界でどうやれば企業が自分を守れるのか」へ変化した。
この後、MarketingProfsは、Lessons Learnedとして
  1. Line up your ducks ahead of time
  2. Do what you can to curb the propagation
  3. Be honest and state your case
  4. Continue with 'business as ususal'
を挙げている。

Source:MarketingProfs / Case Study: How Domino's Managed a Viral Video Nightmare (要有料登録)

このようなケース、事件はこれからも起きる。その際、Dominoが行った危機対策・管理の前提として何があったのか考えてはいかがだろう。

それは;
  1. オリジナルのビデオが投稿された後、その他のビデオ共有サイトへもコピーがアップされ、The Consumeristでも取上げられたため、ビデオ投稿後数時間でDominoはビデオを知ることになった。ということは、モニタリングしていたということだ。
  2. Twitterで火の手が上がっていることを察知し、Webで公表し、誘引したということは、Twitterのリンク拡散力を理解していたということだ。
  3. その後もプレスリリースを流したり、ニュースカンファレンスを開かず、YouTubeに社長ビデオをアップしたということは、「真実を伝える顧客」はYouTube、すなわち、ソーシャルメディアスペースにいることを理解していたということだ。
そして、次を最後に付け加えなければならない。
  1. このソーシャルメディア時代に、自国対策だけでは不足・不十分
    米国内のビデオ共有サイトは対処できたかもしれないが、DailyMotionなど海外サイトまでは目が届いていない。(削除要請が受け入れられなかったのかもしれないが)
  2. このソーシャルメディア時代に、ブランド関連コンテンツを管理、コントロールすることは不可能
    この理解がない限り、従来型のマーケティング手法を繰り返してしまい、ソーシャルメディアスペースのユーザは離反する。
  3. ソーシャルメディアスペースに参加することが重要

2009/07/29

Bad Reputation Fly High

7月27日、「Real Time Search」で、
なぜなら今、ブランドをコントロールしているのは消費者、顧客、ユーザだからだ。彼らの声、意見、アイディアを聞き、疑問、苦情に応えなければ、本来比率 の低いネガティブコメントがオンライン会話の大半を占めてしまう。あるいは、シカトされたブランド価値が暴落してしまう。
と書いた。

参考:Real Time Search (Online Ad 2009/07/27)

上では書き忘れたとてもいいサンプルがある。

カナダのミュージシャン、Dave CarrollとUnited Airlinesの間に昨年起こった手荷物で預けたギターの弁償話だ。1年間、UAと交渉を続けてもラチがあかないと悟ったDaveは、UAとの最後の電話で「今回のことを歌にして世界中の人に知ってもらう歌を3曲作る」と宣言した。

その1曲目が下のビデオだ。まずUAの手荷物取扱のひどさ、ギターの弁償交渉などを歌にしたビデオをご覧いただこう。


Source:YouTube / United Breaks Guitars

7月5日にアップされたビデオは、7月28日までに426万回視聴されている。

そして視聴者は、カナダや米国だけではなく、欧州、南米、南ア、アジア、オセアニアにまで及んでいる。

企業・ブランド側からすると、言葉にならないほどのネガティブキャンペーンになったといえる。

これほどのパワーと影響を見せつけられたUAは白旗を掲げるしかない。下は、最初のビデオがアップされてから2日後にUAがコンタクトし、謝罪と弁償の話があったことを伝えるビデオだ。

Source:YouTube / STATEMENT

企業・ブランドが営々と築き上げてきたブランドレピュテーションがガラガラと音を立てて崩れていったのは、たった一人のビデオだ。それもビデオアップ後2日ほどでタオルを投げる羽目になるほど強烈なアッパーカットだった。これほど威力のあるメディアは他にない。にもかかわらず、ソーシャルメディアスペースを気にもせず、参加もせず、モニターもしないのは自殺行為に近いとしか言えない。

広告効果が可視化できないレガシーメディアに予算をつぎ込むだけでは、ブランド認知はおろか、ブランドレピュテーション・評価が向上する可能性は著しく低い。

Source:WARC / The Digital Divide in Customer Service
Source:DailyMail / United Breaks Guitars