2010/08/17

Open Letter to CEOs in Japan

日本企業の最高経営責任者の皆さま

本日は、インターネット、パラダイムシフト、ソーシャルメディア、そして、日本ブランドの危機について理解していただくために筆をとりました。これらファクターが絡み合い、既存の広報、広告、マーケティング戦略を大転換しない限り、日本のグローバルブランドが今後数年のうちにローカルなガラパゴスブランドに転落するという危機感を共有していただきたいと考えています。
  1. まず、インターネットがあります。

    InternetWorldStats.comによれば2010年6月30日時点で、世界の総人口は68.5億人、インターネットユーザ数は19.7億人、普及率28.7%に達しています。そのトップ20には、日本、欧米諸国などに加え、中国、ロシア、インド、ブラジル、イラン、トルコ、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどBRICsおよび途上国が顔を出し、2000年からの伸びが13,000%を越えるイラン、12,000%を越えるベトナムはもとより、BRICsは軒並み1,000%を越えています。OECD加盟国のインターネット普及がこれ以上見込めない中、BRICs、途上国は猛烈な勢いでインターネットが普及しています。
    Source:InternetWorldStats.com / Top 20 countries

    次にブロードバンド化があります。2008年に発表されたEUの世帯別ブロードバンド普及率ですが、蘭が77%でトップ、英独仏は47%、33%、 48%、EU27カ国の平均でも36%に達しています。調査されたのは2007年ですから今日までの3年間に平均普及率は40%をを越え、50%に迫って いるのではないでしょうか。
    Source:EU / E-Communications Household Survey 2008 (pdf)

    米国の最新のデータを見ると、こちらは世帯ではなく、インターネットユーザのBB普及率となっていますが、今年の5月時点でBB化は66%にまで進展しています。
    Source:PEW / Home Broadband 2010 (pdf)

    そして、中国の場合、BB化はもっと猛烈です。今年1月に発表されたCNNICのレポートによれば、3億4,600万人がBBユーザだとしています。これは全インターネットユーザの90.1%にあたり、前年比7,600万人が増加したとしています。
    Source:CNNIC / The 25th Survey Report (pdf)

    このブロードバンド化の進捗は世界で起こっています。

    インターネットは情報通信の基盤でもあり、媒体としての側面もあります。世界のどこにいても、インターネットにアクセスさえできれば、そしてブロードバンド化していれば、IP電話、ビデオ電話、email、chat、Web、Blog、SNSなどを使って地球の裏側にいる人と会話すること、つながることができます。インターネットにアクセスさえできれば、朝日新聞であれ、New York TimesやCNNであれ、BBCであれ、マスメディアのWebサイトへアクセスし、最新ニュースや情報を入手することができます。業界紙・誌のWebサイト、業界フォーラムなども同じですし、企業や団体のWebサイトへアクセスすることができます。

    今まで地理的、時間的、経費的な障害によってコミュニケーションを行うことさえ難しかった人々とコンタクトしたり、ビジネスを行ったり、一緒に社会貢献活動を行うことさえ可能になりました。今までのビジネスのやり方、仕事の仕組みを大きく変えたのがインターネットだと言えます。

    そのインターネット、ブロードバンドが先進国だけではなく、BRICsおよび途上国にも広く普及し始めています。これらは世界がひとつにつながるプラットフォームだと言うことができます。

  2. このインターネットユーザの増大とブロードバンド化がパラダイムシフトへとつながっています。

    上で見てきたように、世界中の一般市民、消費者が、インターネットへアクセスできるようになり、月額固定料金でのブロードバンド化が進捗することによって、常時インターネットにアクセスするユーザが増えてきました。

    その中の先端ユーザ達は独自ドメインを取得し、自分のWebサイトを立ち上げるものも出てきました。企業、団体、マスメディアのWebサイトへアクセスするだけに飽き足らず、自分でWebサイトを立ち上げ、様々な情報やコンテンツを発信するユーザが増えてきたのです。しばらくすると、Blogを書くユーザも出てきました。世界最初のBlogのひとつは1994年に始まったとされていますが、1999年にサービスを開始したBloggerなど無料でBlogサービスを提供するプロバイダーも現れ、2004年頃までには政治、経済面でBlogは大きな影響力を発揮するようになってきました。

    Source:Wikipedia / Blog

    その後、専門家だけではなく、一般ユーザ・消費者が自分の日々の出来事をつづったり、ニュース、映画、ミュージック、セレブ、ブランドに関する意見・評価などをBlogから発信し始め、多くのインターネットユーザがBlogにコメントしたり、購読を始めるようになりました。

    2009年1月時点で、2002年以降にインデックスされたBlogの数は1.33億件、世界でBlog記事を読むユーザ数は3.46億人(2008年3月)に達しています。

    Source:The Future Buzz / Social Media, Web 2.0 and Internet Stats

    これだけBlogやその読者が増えてくると、トップBlogの中には読者数が数万人、数十万人を越えるケースも出てくるようになり、小規模な既存マスメディアサイトのトラフィックを上回る規模のものもあります。Blogによって個人の発信力が飛躍的にアップしてきたため、既存のマスメディアや企業、団体が行う情報発信のボリュームおよびクオリティと肩を並べてきました。

    そして、既存のマスメディアと違い、オープン、対等な関係でコメントしたり、違う意見を戦わせたり、友人や同僚を巻き込んで自分のBlogに発表するといった会話が成り立ってきました。

    また、WebやBlogだけではなく、情報発信の一部として、一般ユーザ・消費者が独自に制作したビデオをYouTubeなどに投稿する例も出てきました。

    中でも下のビデオは2006年6月、二人の知り合いがダイエットコークにメントスを入れた噴出実験を撮影したものです。同様の噴出実験ビデオをいくつも投稿していますが、世界中のユーザが飛びつき、それぞれ数10万回から数百万回も再生されました。
    Source:YouTube / Experiment #10

    彼らだけではなく、ビデオを視聴した他のユーザが同じような実験ビデオを投稿したり、WebやBlogに記事を書き、それを見たり読んだりした他のユーザが友人・知人に話すといったクチコミが広まりました。そのクチコミ露出に後を押され、まず、メントスが彼らのサポーターとなりました。その後もしばらくはだんまりを決め込んでいたコカ・コーラでしたが、売上が5~10%も伸びた結果を無視できず、彼らの実験を支援し始めました。コカ・コーラ本社前、米国各都市、果ては欧州のオランダで噴出実験を披露するキャラバンを展開しました。名にしおう世界のコカ・コーラ社がどこの誰とも分からないポット出のタレント、ビデオクリエイターの力を借りてグローバルなマーケティングを実行したのです。

    企業が大規模予算をかけて製品・サービスのプロモーションを行っている傍らで、たった数十㌦程度の撮影費用しかかけていないユーザのオリジナルビデオが米国や世界のユーザのマインドに刺さり、マスコミも追随して報道することで、商品が飛ぶように売れてゆく。企業がコントロールしていたはずのブランドコントロールが一般消費者の手に渡ったことを示す典型的なビデオだと言えます。

    一般消費者が投稿するビデオが、企業のマーケティング活動に大きく影響するだけではなく、企業のレピュテーションを毀損する例も出てきました。

    下は、ドミノピザ従業員が、唾を吐きかけたり、鼻くそをピザに塗り込めたりした様をビデオで撮影し、投稿したものです。このとんでもないビデオはあっという間にインターネットユーザに広まり、USドミノピザの社長がYouTubeに謝罪ビデオ投稿し、異例の顧客対応を余儀なくされました。

    Domino Pizzaの該当四半期の売上に対して1%から2%の影響があったと決算報告書に記載があります。それほど一般ユーザが作成したビデオは、企業業績に大きな損害を与えるほどの影響力があるわけです。
    Source:DailyMotion / Domino Pizza

    これら以外にも乗客の手荷物取扱を巡り、United Airlinesなどが糾弾された例があります。個人が制作したコンテンツにより、企業が営々と築き上げてきたブランド評価やレピュテーションはもちろん、業績にまで多大な影響を与えるケースもでてきています。そしてのその影響は、例えば米国内だけに止まるのではなく、世界中に露出し、企業・ブランドのレピュテーションを粉々にしてしまうほどのパワーを秘めているのです。

    このセクションの最初にダイエットコークとメントスの噴出実験ビデオを取り上げましたが、同じ年の10月、ANA(全米広告主協会)総会においてP&GのCEO、A.G.Lafleyは、「パワーは消費者が握っている。彼らは考えられるすべての意味で我々のブランドを所有し、ブランドコンテンツ制作に参加し始めている」と語っています。また、Wal-MartのMarketing VP、Stephen F. Quinnは、「消費者が手綱を握っており、消費者にうまく手綱を握らせるものが勝者になる」とまで発言しています。

    Source:NYT / Letting Consumers Control Marketing: Priceless

    企業は、大規模予算を投下してマスメディアを使った一方通行のコミュニケーションを継続してきました。新雑ラテという四大マスメディアはもとより、屋外、DM、展示会、プライベートセミナー・展示会、イベント開催など、すべてのコミュニケーション・チャネルを総動員して露出、リーチ、訴求、認知、想起といった昔からのマーケティング理論を実践してきました。

    しかし、四大マスメディアの露出、訴求力には陰りが見えます。多メディア化が進展し、ユーザを情報洪水が呑み込んでいる現在、TVの視聴率、新聞・雑誌の購読者数、ラジオの聴取率も右肩下がりを続けています。今後、回復する道筋は見えません。

    一方、インターネット、ブロードバンドを手にした消費者は、オリジナルのコンテンツやブランド関連コンテンツを作成し、個人的なネットワーク内で発信、共有するだけではなく、Blogや画像・ビデオ共有サイトなどに投稿することで、世界中のインターネットユーザにコンテンツを提供しています。そして、そのコンテンツを消費し、他のユーザと共有する世界のユーザがいます。

    まさに、情報・コンテンツの出し手は企業やメディア、そしてその受け手は消費者といった今までの固定観念が崩れ、新しいパラダイムが沸き起こってきたわけです。すなわち、一般消費者も情報・コンテンツを提供する出し手となり、他ユーザの制作、発信する情報・コンテンツの受け手となっています。また、受け取った情報・コンテンツを、家族、会社の同僚、学校のクラスメート、地域の知り合いといったオンライン上にある自分のネットワークの人々と共有しています。ここで点から点へ転送されてきた情報・コンテンツが、面で共有されることになります。オープン、対等、双方向の会話が成り立ち、それを閲覧するユーザも巻き込んで会話が拡大してゆくことになります。

    そして、その効果、波及範囲は国内だけに止まらず、世界に波及するということです。

    え?

    「米国、英語のコンテンツは非英語圏のユーザには波及しないだろ!」

    そう考えられるのは無理もありません。

    しかし、そうではありません。下図は、各国のインターネットユーザがアクセスしたコンテンツの言語比率を表しています。当然、豪、ニュージーランド、インド、英、アイルランド、カナダ、南アといった英語圏は英語でのコンテンツ消費が主です。しかし、韓国、台湾、日本、中国、欧州諸国、南米、イスラエルといった非英語圏でも少なからず英語でのコンテンツが消費されています。

    皆さんだって、ご自分でNYT.comやBBC.co.uk、WSJ.comやBloomberg.comへアクセスされているように、英語は情報・コンテンツが世界へ拡散される障害にならないのです。
    Source:comScore State of the Internet, Nov 2009

    え?

    「非英語圏ユーザが英語でコンテンツを消費しているとしても、ほんの少ししかいないじゃないか!!」

    そうです。国によっては違いますが、控え目にみて10%未満といった処でしょうか。でも、この10%未満のユーザ達は、アーリーアダプターと呼ばれる人たちです。非英語圏であろうと英語くらい流暢に話せる各国のアーリーアダプターは、ビジネスや個人目的で最新ニュース、情報、コンテンツを探しています。政治、経済、財務、芸能、スポーツ、IT、ネットワーク、アプリの最新情報、もっとも影響のあるソースと言えば、米国の英語情報・コンテンツです。これらをいち早く入手するため、アーリーアダプターはアンテナを張っています。そして、かれらは自分のWeb、Blog、SNS、Twitterなどで最新情報を自国語に翻訳して国内ユーザと共有しています。

    点と点がつながって、そこから面に拡散されているのです。

    ここで大きな問題があります。

    各国、各地域ごとの営業・販促活動は現地子会社、販社の責任ですが、非英語圏のアーリーアダプターが国境や子会社のテリトリを越えて、英語コンテンツを入手し、国内に露出、共有しているのです。

    例えば、米国子会社にとって非英語圏のアーリーアダプターはターゲットではありません。彼らが如何に米国の英語コンテンツを入手したところで販売につながるわけではありませんから。一方、各国のアーリーアダプターに対して各国子会社、販社ができることはあまりありません。米国以外の子会社や販社が米国へアクセスする各国のアーリーアダプターに米国で何かすることはできませんから。しかし、世界中のインターネットユーザがひとつにつながり、各国のアーリーアダプターが最新の英語ニュース、情報、コンテンツを探しまくり、国内に供給している現在、どこが何をすべきでしょうか?

    企業やメディアが一方的に情報やコンテンツを押し付けている時代から、一般消費者が自分の意見、判断、評価などを発信し始めたこと、そしてそれが消費者間で共有され、点から面に拡散されていること。これが最初のパラダイムシフトです。
    そして、世界のアーリーアダプターが国境を越えて英語コンテンツを入手し、国内に共有し始めたことで、海外子会社や販社の責任や義務を超越した存在になっていること。この世界のアーリーアダプターに対応しなければいけないこと。これが2つめのパラダイムシフトです。

  3. このパラダイムシフトのバックボーンを支えているのがソーシャルメディアです。

    上で紹介したANA総会は2006年でした。2006年というと、今、もっとも注目を集めているFacebookがすべてのインターネットユーザに解放された年ですし、YouTube、Twitter、あるいはLinkedInといったソーシャルメディアサイト・サービス・ツール・プラットフォームが出揃った年でした。
    Figure 1. Distribution of work task interruption
    Source:Social Network Sites: Definition, History, and Scholarship

    それから4年たってみると、Facebookは世界で5億人、Twitterは1億人、LinkedInは0.75億人以上の登録ユーザを抱え、YouTubeでは毎日20億回以上もビデオが再生されています。

    米国の直近データを見ると、2010年6月に米国インターネットユーザがオンラインで消費した時間のうち、22.7%(前年比43%増)はソーシャルネットワークです。インターネットの創生期から幅広く使われてきたemailは8.3%(同28%減)AOLやYahooといったポータル系は4.4%(同19%減)、チャットとして親しまれているIMは4%(同15%減)となっています。
    Source:Mashable / Social Networking Dominates Our Time Spent Online

    情報・コンテンツの配信チャネルや共有スペースとしてもソーシャルメディアは上位を占めています。ニュースの配信を受けるチャネルとして、Twitter、FacebookがEmailを抜いて一位、二位を占めていますし、コンテンツを共有するスペースとしてFacebookが一位、Twitterが三位につけています。
    Source:Silicon Allery Insider

    如何に米国のインターネットユーザが、ソーシャルネットワークにアクセスし、情報・コンテンツを発信しながら、消費・共有・拡散しているかが分かります。

    こういったパターンは何も米国だけに起っているのではなく、全世界共通です。Facebookの登録ユーザ5億人のうち70%は海外ユーザで、Twitterの登録ユーザ1億人のうち60%以上は海外ユーザなのですから。

    このソーシャルメディアが企業のマーケティング戦略に大きな影響を与えています。今年6月、NYにおいてCorporate Social Media Summitが開催されました。ここに講師として参加した欧米各社の担当者21人中、Social Media、Digital、Online、Interactiveといった部門のディレクター、シニアマネージャという肩書がついている人は14人に及びます。三分の二の企業が、いままでの組織ではなく、エンパワーされた世界の消費者が活動しているソーシャルメディア(スペース)を担当する部署をすでに立ち上げているのです。また、既存の部署名のままであっても、Social Media、Digital、Online、Interactiveに関係するコミュニケーションを担当しているのは明らかです。

    それは、今までの仕組みが変わってしまったからです。ソーシャルメディアによってエンパワーされた消費者、ユーザ、顧客は、今までの組織が行っていた既存業務では収まりきらない行動をとり、その影響は他部門に複層して及ぶからです。また、エンパワーされた消費者に対して企業・ブランドからのメッセージを送るには、既存の広報、広告、マーケティングチャネルではうまく行かないからです。

    例えば、Heather Armstrong、別名dooceという女性Bloggerがいます。昨年、彼女は購入したばかりにも関らず故障続きのMayTag洗濯機のトラブルで堪忍袋の緒が切れ、「MayTag製品は決して買わないで。MayTag製品は悪夢よ」というTweetをしました。通常であれば、これはカスタマー・サービスの守備範囲です。根気強く顧客の苦情、トラブルに電話対応をするわけですが、時代が違います。顧客はWeb、Blog、SNS、Chat、SMS、そしてTwitterで顧客対応の一部始終をオープンに公表することができますので、メーカー対顧客のコミュニケーションが青天白日、全世界のインターネットユーザが注視の元に対応しなければなりません。また、悪いことに彼女のTwitterには当時でも100万人以上のフォロワーがいたのです。彼女が行ったTweetは100万人以上のタイムラインに表示されるわけです。小さな通信社、あるいは中堅の地方新聞社に匹敵する露出力がある彼女にカスタマーサービスが対処すべきでしょうか、対処可能でしょうか。すでに発信された彼女のTweetを見たユーザ達への対応はどこが、どうすべきでしょうか。

    この場合、最終的にはMayTagの親会社、WhirlpoolのTwitterアカウントが彼女に対応しました。ここはWhirlpoolのコーポレートコミュニケーション部が管理し、Tweetを行っているアカウントです。企業情報を発信するTwitterアカウントが個別顧客のクレーム対応を行ったことになります。しかし、それも当然です。そのままでは、企業のブランド価値、評価を急落させかねないことになりますし、ひいては販売にも影響が出るかもしれないからです。
    Source:Twitter / WhirlpoolCorp

    ソーシャルメディアパワーを身にまとった消費者に対応するため、企業はまず、新しい組織を作りました。その上で、ユーザ達が自分のブランドに対してBlogやTwitterで何を語っているのかモニタリングを開始しました。上のWhirlpoolがいい例です。自社関連ブランド名、あるいは@dooceをモニタリングしていなければ、傷はもっと深かったはずです。

    また、企業の公式Webサイトにアクセスするユーザにサイトの分かりやすやコンテンツを評価してもらいサイトの改善につなげるためWebビジター調査も開始しています。

    加えて、ブランド情報・コンテンツを共有してもらうため、WebサイトにFacebookやTwitterへのリンクボタンをつけたり、Facebookなどのソーシャルネットワーキングサイトに企業の公式ページを持って、ユーザと会話を始めています。
    Source:Samsung.com/us/

    ソーシャルメディアは一般消費者に力を与えています。インターネットおよびパラダイムシフトがもたらした変革をベースに世界中の消費者が、企業、メディアに匹敵する質と量のニュース、情報、コンテンツの制作、発信を、Blog、Facebook、Twitterなどのソーシャルメディアスペースで行っています。その制作、発信されたニュース、情報、コンテンツを他のユーザ達が消費、共有し、その次のユーザ達につなげています。

    そのため、インターネットおよびパラダイムシフト、そしてソーシャルメディアは、企業そのものの体制、組織、マーケティング戦略をも変革しています。

  4. 最後に、日本ブランドの危機を取上げます。

    インターネット(+ブロードバンド)、パラダイムシフト、ソーシャルメディアが提供するもの、すなわち、
    • オープンで
    • フラット、対等な
    • 双方向のコミュニケーション、エンゲージメントをすること
    から
    • ブランド関連情報が発信され、共有、消費、再露出されている
    • それがひとつの国内だけではなく、世界へ波及する
    • 世界のインターネットユーザはひとつにつながっている
    ことを理解した先進企業はソーシャルメディア戦略を構築し、実行に移しています。

    ソーシャルメディアマーケティング戦略のトップランナーのひとつである米Fordは、一昨年から消費者をソーシャルメディアスペースに巻き込んだFiesta Movementキャンペーンを行っていました。キャンペーンが終了した昨年末時点でFiestaが米国内で販売されれば購買すると8万人が回答していました。もし、Fiesta1台を200万円だとすれば、1,600億円の売り上げにつながるという結果を出しています。また、Explorerの最新モデルをFacebook内で発表したりと積極的にソーシャルメディアを活用しています。

    Fordのソーシャルメディア戦略、キャンペーンから学習した競合、例えばVolkswagenは、2011年モデルのPolo GTIのキャンペーンをFacebookだけで開始しました。また、その公式ページの言語は英語だと宣言し、全世界の消費者に向けてFacebookをタッチポイントとする戦略を開始しています。BMWも同じです。Facebook内に本社管理のページを設け、全世界20カ国の子会社が開設しているFacebookページへのリンクページとして機能させています。BMWの本社ページも英語となっていますので、全世界の消費者に向けたポータルページなのです。

    これら2社が開設しているFacebookページは、独本社が全世界のインターネットユーザに向けたゲートウェイとなっています。ここから世界の消費者にブランド関連ニュース、情報、コンテンツを発信し、彼らに消費、共有してもらい、彼らの友人・知人達に再露出してもらうための場所となっています。また、世界中の消費者が体験したブランド経験、画像でも、ビデオでも、コメントでも、それらを共有してもらうためのスペースとしても機能させています。

    もう、昔と同じように既存マスメディアに広告を出しても、広報記事を掲載してもらっても、それらの情報・コンテンツを消費、共有してくれる消費者がいません。いや、正確には消費者はいるのですが、広告や広報記事を信用してくれる消費者がいないのです。消費者は、企業の広告や広報よりも、専門家の声や判断、社員との会話で得られた情報、あるいは自分と同じような人の意見や評価を信じているのです。Fordを含め、これら企業はそれを理解しています。

    各社は、ターゲットとなる消費者が集うソーシャルメディアスペースにブランド自身が参加し、ファンやフォロワーになってくれる消費者とオープン、対等、双方向のコミュニケーションを行おうとしています。そうすることで、消費者の信頼を獲得しようとしています。

    FordのGlobal VP-MarketingのJim Farleyは、Ad AgeのDigital Conference 2010において、
    15秒のTVCFで我々が聞いてほしいストーリーを話すことはできるが、我々が求めているのは顧客に我々のストーリーを語ってもらうことだ。顧客の信頼をどのように得るかを示してくれたのはデジタルだ。
    と語っています。


    Source:Ad Age / Digital Conference 2010

    また、彼は以前の新車発表・発売に焦点を当てた既存メディアキャンペーンではなく、
    メディアキャンペーン開始前から、そして終了後も継続されるソーシャルメディアスペースでの会話、エンゲージメントの重要性を指摘しています。
    キャンペーンに合わせた一時的な広告や広報活動ではなく、ソーシャルメディアスペースでユーザと、一から会話を紡ぎ、育て、垂れた稲穂をユーザの個人的コネクション、ネットワークに共有してもらう。その中で新しい接ぎ穂が出れば、それも大事に育ててゆく、そのなかで消費者の信頼を獲得するという、Fordの全く新しいパラダイムを惜しげもなく公表しています。

    Ford自体、まだグローバルな展開を見せていませんが、VolkswagenやBMWが学習成果を基にちゃっかりと一歩先のステップを踏み出しているように見えます。

    こういった事例が自動車メーカーだけではなく異業種でも学習されてゆきます。B2C企業だけではなく、B2B企業も同じように学習してゆきます。各国現法はFordをお手本に、本社はVWやBMWをお手本にして、各社の広報、広告、マーケティング戦略にソーシャルメディアが取り入れられてゆきます。そして、世界中の消費者、顧客、ビジネスパートナー、サプライヤーを巻き込んだ会話、エンゲージメントが活発化してゆきます。

    唯一、日本の企業を除いて...。

    日本企業も国内では相応にソーシャルメディア対応を行っていますが、海外、あるいはグローバルな展開は非常に遅れています。

    Facebook、Twitter、YouTubeのファン、フォロワー、購読者を集計し、Famecountというランキングを発表しているサイトがあります。
    Source:Famecount

    Facebook、Twitter、YouTubeというソーシャルメディアスペースの中心に、海外向け、あるいはグローバルな公式ページ、アカウントを持っている日本企業は数えるばかりです。とてもFacebookだけで1,200万人以上のファンをもっているStarbucks、Twitterに150万人以上のフォロワーがいるJetBlue、Dellとは比べられません。

    しかし、Red Bullが3位、Zaraが15位、H&Mが20位、Lacoste、PUMA、BlackBerry、Adidas、Louis Vuitton、Nokiaなど世界の錚々たるブランドがちゃんと顔を出しています。こういった現状では、日本の企業・ブランドはソーシャルメディアスペースに存在していないに等しく、それでなくとも大きい欧米各社との露出ギャップは大きくなるばかりです。

    幸いなことに今のところ、VWやBMW本社のようにFacebookをグローバルブランディングに活用しようとしている企業は限られています。しかし、Best Practiceは様々な場所、スペースでオープンに共有されるものですから、あなたの企業の競合メーカーがいつ、VWやBMW本社のようにソーシャルメディアを活用したマーケティング戦略を開始してもおかしくありません。

    あなたの競合メーカーがソーシャルメディアを活用したグローバルなマーケティング戦略を開始した時、あなたの企業はそれに対応することができますか?すでに対応するための組織、予算、戦略を準備されていますか?

    上述のSamsung.com/us/は、昨年末にヘッドハンドした人間をソーシャルメディアマネージャとし、今年1月のCESにおけるプレスコンファレンスをTwitterで同時中継したことから始まり、WebやEmailニュースレター、Facebook、YouTube、Twitterなど各種タッチポイントのソーシャル化を推進しています。彼は、今年、6月のCorporate Social Media Summitに講師として招かれプレゼンしていますし、7月には韓国Samsung本社においてCEOおよび100人以上の上層部に次のコミュニケーションプラットフォームのプレゼンをしています。これほど大きな動きをあなたの企業は同じように遂行することができますか?

    あるいは、社内にこういった世界の動きをウォッチし、警鐘を鳴らしている組織、担当者はいますか?

    もし、社内で準備がされておらず、世界の動きをウォッチすることもなく、社内に警鐘が鳴り響いていないのであれば、世界に誇る日本ブランドの価値、評価はとてつもない危機に直面していると言えます。
さて、インターネット、パラダイムシフト、ソーシャルメディア、そして、日本ブランドの危機を説明してきましたが、おさらいの意味でもここでお聞きしたいことがあります。

それは、
  • 世界中の消費者がインターネット、パラダイムシフト、ソーシャルメディア、そして英語と言う共通語でひとつにつながっているということは全くないと考えますか?

  • 広報、広告、マーケティング部といった既存の組織が、ソーシャルメディアによりエンパワーされ、情報・コンテンツの制作・発信力を増し、共有・拡散力も以前とは比べ物にならないほどパワーを持つようになった消費者に対応できると考えますか?

  • 海外のことは海外の子会社、販社に任せておけばよく、各国のアーリーアダプター、インフルエンサーが翻訳し、国内に露出・共有する英語の情報・コンテンツなど気にする必要はないと考えますか?

  • 競合メーカーが各国市場やグローバルブランディングにおいてソーシャル化を進める中、今まで通りの広報、広告、マーケティング戦略を踏襲していても、企業価値、評価、消費者の信頼などは下落しないと考えますか?

  • WSJ、 NYT、WPなど一流マスメディアに広告を出稿し、PR WireやBusinessWireからプレスリリースを流し、CNNやSky、EurosportにCFを出し、Googleに検索広告、Yahooに ディスプレイ広告を出すことから、ソーシャル化、顧客の信頼獲得へと比重を移しているFordの戦略に全く危機感を感じませんか?

  • 物やサービスを売るというマーケティングが、消費者あるいは顧客やユーザとの会話を醸成し、点から面へ広げてゆくマーケティングへ移行しているとは考えませんか?
ということです。

日本航空の破たん原因を調べているコンプライアンス調査委員会が管財人に報告する内容には、組織の肥大化と経営者の 経営判断や全社的な危機意識の欠落が含 まれています。具体的には、営業や経営企画、運航本部といった組織が「縦割り」で横のつながりが乏しく、現場と上層部との間で風通しがわるくなっていたと 指摘しています。その結果、経営者が経営破綻に陥るような重大な事態に気づくのが遅れたとしています。

Source:Asahi.com / 日航破綻「歴代経営者の不作為が要因」

企業規模が大きくなればなるほど「親方日の丸」に近い意識が存在する可能性が高くなり、また、企業規模に慢心したグローバルな「危機意識の欠落」も存在可能性が高くなり、「ガラケー」といったひとつの製品だけではなく、企業全体が日本ローカルなガラパゴスブランドに陥ってしまう危険性が一層、高くなると恐れています。

この危険性を少しでも低くするためには、また、上の6点において少しでも不安や心配の種がおありなら、既存広報、広告、マーケティング戦略を見直し、新しいパラダイムを前提とした戦略への転換を強くお勧めします。


長文になりましたが、是非、厳しい現状を認識いただき、最善、最適な戦略を打ち出されることを願ってやみません。

笠井孝誌
株式会社パワーレップ


追記:Scribdにpdfをアップしました。
Source:Scribd / Dramroll - Open Letter to CEOs in Japan

2010/08/16

One World with Early Adopters Circulating Content

先週、「Japanese Brands Left Far Behind While Samsung Accelerating」を書いた。

参考:Japanese Brands Left Far Behind While Samsung Accelerating (Online Ad 2010/08/09)

そうした処、9日の午後1時頃、日本大手メーカーの韓国支社の方がアクセスされ、韓国語に翻訳して30分以上閲覧された後、ご自身のTwitterから Tweetされていた。しばらくすると、そのTweetから韓国の方が何人がアクセスし、また、少し時間をおいて今度は、韓国Samsung、そしてLG からアクセスがあった。

そして、10日には、iblur's Communicationsという韓国のBlogで取り上げていたらしく、11日にそこをリフェラルとしてアクセスがあった。
Source:iblur's Communications / Social Media의 방향을 정한 Samsung, 어떠한 결과를 보여 줄 것인지.

世界は狭いと思いませんか?言葉や地理的な壁はないと思いませんか?世界はひとつにつながっていると思いませんか?
最初のアクセスがアーリーアダプターであり、彼が140文字以内に要約したTweetを発信し、彼をフォローしている韓国ユーザから日本語Blogへアクセ スがあった。そして、そのBlogに取上げられていたSamsung、そして競合するLGからアクセスがあったということになる。また、最初のTweet からBlog記事を書いたユーザもいて、そこからもアクセスが来たということだ。

これから分かることは二つある。

ひとつめは、前々から言っている「アーリーアダプターから国内ユーザへのコンテンツ共有、再露出」という情報・コンテンツのフローがある。今回は日本語から韓国 語への共有、再露出だが、これは例外と言っていい。基本は「世界中のアーリーアダプターが注目する最新の英語ニュース、情報、コンテンツから各国語への共有と再露出」だ。この基本が世界中で行われている。だから、それをベース として英語コンテンツを世界のアーリーアダプターに露出し、それを消費、共有してもらい、自国語に翻訳してBlog、SNS、Twitterなどで国内へ 再露出してもらうことができる。そのフローが証明されたことになる。そして、グローバルに全世界のアーリーアダプターに情報・コンテンツを提供するのは日 本本社のテリトリーだと言い続けてきた。グローバルにマーケティングを行うのが米国子会社や欧州販社ではない限り、それは日本本社の責任となる。

ふたつめは、Samsungにしても、LGにしてもちゃんとバズモニタリングをしていることだ。最初にTweetしたアーリーアダプターをフォローしていた わけではなく、自社ブランド名や競合ブランド名をモニタリングしていたからこそ、韓国ユーザのTweetをキャッチし、このBlogへアクセスしてきたわ けだ。ソーシャル化を進めるための基本として、各種情報収集、戦略構築、社内体制整備、要員トレーニング、モニタリングやWebビジター調査など様々なも のがある。その中でも基本中の基本であるモニタリングを2社ともにやっているということだ。

2社ともに国内においてBlog、SNS、Twitterなどをモニターしており、2社ともバズのリンク先までトレースしている。それが国外、日本であったとしても。

基本に忠実な韓国ブランドに比べ、日本のグローバル企業は...???

ひょっとして日本国内においてTwitterを使った拡販、販促だけしか考えていないのかもしれない、世界はひとつにつながり、世界中のユーザがブランド体験を共有しているにも関わらず...。

2010/08/13

Digital Teens Worldwide

13歳から17歳の米国ティーン達のオンライン行動を調べたレポート、The Secret Online Lives of TeensがMcAfeeから出ている。
  • 調査対象(10-17歳の1,357人)の半分は5年以上インターネットを使っている。58%は自分をヘビーユーザだと思っている。
  • コミュニケーションとダウンロードがインターネットの主要な役割。
  • 16-17歳の81%は少なくともひとつのSNSに参加している。13歳から17歳の73%はSNSにアカウントを持っている。(2008年時は59%)
そして、女の子は
  • 42%が頻繁にステータスアップデートを行う(男子は29%)
  • 25%がチャットする(16歳から17歳は43%)
Source:LastWatchDog / McAgee Teens Online (pdf)

ソースがMcAfeeなのでセキュリティに注意し、ウィルスソフトを使いましょうという結論はさておき、デジタルティーンズ、デジタルネイティブのプロファイルの一部が垣間見える。

17歳までのティーンズの半数が5年以上インターネットを使っている。当然、80%は学校の宿題をインターネットを使ってやっているし、61%はオンラインゲームに夢中だ。そして、Facebookやチャットでああでもない、こうでもないとしゃべっている。

このトレンドが米国だけの話なら米国販社、子会社に任せておけばいい。しかし、ことはそう簡単ではない。

なぜなら、日本でも、中国でも、欧州各国でも、そして途上国でも、彼らデジタルティーンズは家庭、地域、学校で英語を学んだり、すでに流暢に英語を話せる世代なのだ。インターネットを使うのは親や先生よりも慣れていて、国境を越え、販社のテリトリを越えて世界中のピアとつながる障害がひとつもない世代だ。

そして彼らディジタルティーンズ(12-19歳)は先進国だけで7,100万人、年間購買力2,68億㌦、途上国なら3.9億人、購買力は3,240億㌦にも達するという規模を持っている。

参考:Digital Teens Impact (Online Ad 2010/05/21)

彼らに話を聞いてもらわなければ、彼らの話に取上げてもらわなければ、彼らのマインドセットにブランドは存在し得ないし、これからのビジネスはひとつも先へ進まないことになる。

ところで、100㌦という低価格ラップトップを世界の子供たちの教育のために提供しようというOLPCがウルグアイ、インド、中国で配布を開始し、そして最近の発表ではアフリカ諸国に2015年までに2,000万台を提供することを宣言している。最終目標である5億台配布に向けて積極的に活動している。

OLPCがラップトップを提供する国々の子供たちは小学校のころからインターネットを使って勉強を始めている。離れた地域の子供たちとメールやチャットでお話しし、違う国の子供たちともメール、ビデオでつながるようになる。Blogを書くようになるだろうし、SNSに参加して違う国の子供たちと一緒に勉強したり、歌を歌ったりするようにもなる。

参考:One Laptop Per Child (Online Ad 2007/08/09)
Source:OLPC / XO roadmap updates

もし、Bill Gatesが主導する「giving pledge」に協力を表明した米富豪の資産の一部でもこの運動に寄付されれば、OLPCが貢献できる国、子供たちの数は飛躍的に増える。

となれば、思ってもいない国の子供たちと、米国、欧州、中国の子供たちが手を結ぶ日が近くなる。そして、本当に世界はひとつ、すべての人間がひとつにつながっている社会ができる。どこにも壁や仕切りや、縦割りサイロのない世界が誕生する。

その時、まだ縦割りサイロ、テリトリベースの考え方をしていたとすると、自分で建てた高い壁に頭をぶち当たるだけだ。その時、流した血は壁の向こうの誰にも見えない。誰も助けに駆けつけてくれない。

だって、壁のこっちにいるブランドや人間は存在していないに等しいのだから。

2010/08/12

Prosper in China July 2010

BigResearchのChina Quarterly SurveyのProsper in China - July 2010というプレゼンをBrightTalkでやっていた。

これからの半年の間に高額商品を購買する予定はと聞かれた、18-54歳までの中国人と米国人のグラフがあった。

中国人の最も購買意欲の高い製品は旅行(36.3%)だが、PC(33.2%)、モバイルデバイス(26.2%)、デジカメ(23.1%)が続いている。 家具、家電、TVなども購買意欲が旺盛だ。それにしても米国人の最も購買意欲の高い製品はPC(14.4%)で、TV(11.6%)、旅行(13.4%) が上位だが、中国との差はとてつもなく大きい。
次に今後90日間に新しい携帯電話を購買する予定はありますかと聞かれて、2009年Q2は45.2%が「Yes」と答えていた。それが2010年Q1に48.4%に上昇したのだが、Q2で約4%ポイントも落ち込んでいる。とはいっても、45%近い人間がこれからの3カ月間に買い替える、新規購買を予定しているというのは空恐ろしいほどのボリュームだ。
もうひとつ、車・トラックに関するデータがあった。今後半年間で車・トラックを購買する予定はと聞かれて、2010年Q2では「No」が60%強、「Yes」が20数%だ。前年同期比では「No」が減少し、「Yes」が増加している。ただし、「No」、「Yes」に重ねられている移動平均線はちょっと違うような気がする。

どのメーカーを検討しているかというと中国メーカーがトップだが、前年は48.2%だったシェアを欧州車、米国車に喰われてきている。
そして、製品購買に関るメディアの影響も調査しており、車と日用雑貨品を取上げている。
Source:BrightTalk / Prosper in China - July 2010

例えば車なら、TVCFが31.9%購買決定に影響を与え、(プリント)記事は24.8%、CATVなら21.3%となっている。

このメディアインフルエンスに関して、以前、紹介したTNSのレポートと直観的に相容れない気がする。それは、中国インターネットユーザの60数%はForum/BBSに参加し、50%弱はBlogも利用している。この発信・共有スペースでブランドが語られている。そのため、ソーシャルメディアスペースの影響をメディアインフルエンスに入れていないBigReseachのレポートは片手落ちだと思うからだ。

参考:Social Media in China (Online Ad 2010/06/15)

2010/08/11

Customer Service on Twitter

Conversation Agentが、Twitterのフォロワー数だけではなく、
  1. 顧客からの問い合わせにリアルタイムで対応しているか
  2. 顧客第一の考え方をしているか
  3. Twitterアカウントが何のためにあるのかちゃんと告知しているか
といった条件で、Twitterにあるカスタマー・サービスのベスト・アカウント12を選んでいる。

JetBlue

SouthWestAir

Comcast

Zappos

TwelpForce

HomeDepot

DirectTV

GMCustomerSvc

ATT

FordCustService

BlackBerryHelp

Ask_WellsFargo

Source:Twitter / ScottMonty
Source:ConversationAgent / Top Customer Service Accounts on Twitter

HomeDeptのクレーム対応、DirecTVのトラブル解決、GM、WellsFargoの顧客対応、RIMのちょっとしたコツ伝授、そして、ATTの週末お休み案内などの例が挙げられ、それぞれ数千から数万、果てはJetBlueのように150万を越えるフォロワーを抱えているアカウントまで多様だが、Twitterを使ったカスタマー・サービスが行われている。

Twitterを使った広報、広告、マーケティング活動だけが注目されているようだが、Twitterが最もよく機能するのはカスタマー・サービスだろう。トラブルに巻き込まれている顧客・ユーザが求めるリアルタイムのレスポンスを提供できるのはTwitterだけなのだから。メーカー、ベンダーのカスタマー・サービスの電話番号を調べるよりは、iPhoneなどで検索し、Tweetすればいいわけだ。

そして、企業の顧客対応がオープンにされているだけにメーカーは気の抜けない対応をしなければならない。また、「今度、何かイベントをやりますよ」といった従来型のマスへのコミュニケーション・メッセージではなく、「個客」、個人からのリクエストに応える必要がある。

参考:Twitter Customer for Service and Branding (Online Ad 2009/03/30)

上のように多くの大企業がTwitterを使ってカスタマー・サービスを開始している現在、Twitterユーザというか、世界のユーザがそれを見聞きし、企業の対応を体験している。その数は日々増えてゆく。そして、Twitterカスタマー・サービスを始める企業が増えれば増えるほど、それを体験するユーザも増えてゆく。Twitterでのカスタマー・サービスをやっていない企業にはユーザから「なんでやらないんだ」、「早く始めろ」といった声が届き始めることになる。

ということは、Twitterカスタマー・サービスが標準的な顧客対応になる日も来ると言うことだ。いや、すでに一部では始まっているということだ。

そんな時、カスタマー・セントリックではなく、マスメディアを使ったコミュニケーションをソーシャル化しただけ、注目を集めているTwitterを使って製品・サービスを紹介するといったメガフォンマーケティングをしているだけの企業・ブランドに下される評価は決まっている。

Dell_Outletの成果につられて、我も我もと売らんかなのTweetをしている企業の裏を見透かされるのに、どれくらい時間がかかるかの話だ。見透かされた企業・ブランドは、たとえ、Twitterフォロワー数が増えたところで死んだ子の年を数えるのと大差はないことになってしまう。フォロワーカウンターが増えたところで、顧客に提供する価値が増え、提供した顧客が増えない限り、企業は評価されないのだから。

2010/08/10

Puma Clever Little Bag

Pumaは4月に、「Clever Little Bag」というビデオをアップしている。

すでに19万回以上視聴されているこのビデオは、スニーカー・パッケージのボール紙を65%削減し、パッケージ製作にかかる電力2,000万メガジュール、100万トンの水を削減した新しいパッケージを説明している。



Source:YouTube / The New PUMA Fuseproject Packaging

グリーンやサステイナビリティに草木もなびくご時世だから、製品に使用される素材、製法、縫製、リサイクル、リユースに関してはどのメーカーも神経を使っている。

しかし、スニーカーを入れるパッケージに関して、今までどのメーカーも考えが及ばなかった。

21か月をかけ、2,000以上のアイディアをだし、40以上のプロトタイプを制作した上で、新しいパッケージを生み出したPUMAのケースは、どの業界、どのメーカーにも参考になる。過剰包装は日本だけではなく、世界中の問題だから。

ところで、Viral Video Chartによれば、このビデオに関して247のBlogが記事を書き、Facebookで2,268回共有されているし、153件のコメントがある。そして、バズは39%が英語、28%が西語、21%がポルトガル語、12%が仏語となっている。これらバズがそれぞれの国内だけのものだと考えるのは間違いだ。英語をネイティブに書ける人は世界中にいるし、西語・ポルトガル語・仏語は旧植民地を含め世界中に話せる人々がいる。

削減効果、数字の見える省エネ技術を紹介するビデオを、いつ日本のグローバル企業・ブランドが世界の消費者に向けて出してきてくれるのだろう?それとも、他国の企業・ブランドが世界のユーザに様々な省エネビデオを紹介している間、首を長くして待つしかないのだろうか?

2010/08/09

Japanese Brands Left Far Behind While Samsung Accelerating

今年6月、NYでCorporate Social Media Summitが開催され、170人以上が参加した。講演者の中にはSamsungのソーシャルメディアマネージャ、Esteban Contrerasがいた。

彼は昨年秋口、コンサルタントとしてSamsungのソーシャルメディア取り組みについてインタビューするため、@SamsungTweetsにコンタクトしたそうだ。他にも何社かインタビューしたそうだが、Samsungとの接触はその後も続き、年末に彼はSamsungに入る決心をしたそうだ。それは、Samsungがソーシャルメディアを本格的にやることを知り、もっといい会社、もっとソーシャルな会社に変身するには自分が必要だと思ったからだそうだ。

今年1月から彼はSamsungのソーシャルメディアマネージャとして腕をふるっている。

現在、Samsung.com/us/のトップページにはTwitter、Facebookへのリンク、Wonderコンテストへのリンクボタンが大きく配置され、ページ底には「My Samsung」として、ユーザ登録・ログイン、検討中の製品、閲覧履歴、製品比較ができるようになっている。
(注:日本からアクセスするとIPフィルタリングによってsamsung.com/jp/にリダイレクトされてしまう。SamsungのemailニュースレターなどからUSサイトへアクセスできる)
Webページの機能拡張に加え、Emailニュースレター受信登録をすると送られてくるemailにモバイル版、「Share This」といった追加機能が付き始めたのは春以降だっただろうか。

彼がソーシャルメディアマネージャになってから3カ月たつか、たたないかのうちにWebページ、Emailニュースレターのソーシャル化が加速してきている。

Samsungのソーシャル化加速を目の当たりにしたUsefulSocialMediaは、入社してから半年目のContrerasをCorporate Social Media Summitに呼び、Samsungの取り組みを紹介したわけだ。

その中にこれから導入するツール、サービス、プラットフォームのモックアップがあった。これはSeesmicをベースに開発しているSamsungチャネルで、統合的なTwitter管理スペース、プラットフォームのようだ。
参考:Samsung Customer Centric (Online Ad 2010/07/29)

さて、SeesmicのLoic Le Meurと言えば知る人ぞ知る、いや、誰でも知っているような有名人だ。その彼が7月22日、下のTweetをしている。
Source:Twitter / Loic

Contrerasは現在、SamsungTweetsを個人的に管理しているようなので、ContrerasとLoci Le Meurが二人して、韓国のSamsung本社においてCEOのイ・ゴンヒ始め、居並ぶ100人以上の役職者を前にSeesmic Lookのプレゼンをしたようだ。

たった一人が組織に加わっただけで、Samsungの最大市場である米国のWebサイト、Emailニュースレターなどのソーシャル化が向上し、Facebook、YouTube、Twitterといったソーシャルメディアスペースにおけるプレゼンスが増強され、消費者・ユーザとのコミュニケーションが改善されてきた。それもたった7カ月かそこらでの話だ。そして、ソーシャル化の次のステージへ進展するための新しいプラットフォームを、本社においてCEOに直接プレゼンする処まで突き抜けている。このスピーディーな動きには目をみはるばかりだ。

ところで、北米や欧州消費者のニーズ、コミュニケーションチャネルが変化してきたことはその地域だけだと思うかもしれない。だから、社外からヘッドハントしてきたContrerasをソーシャルメディアマネージャに据えて、北米対応を行っているのだと。

しかし、その北米や欧州と、その他の国々、特にBRICsの消費者ニーズ、コミュニケーションチャネルに起こっている大変革に違いはない。インターネットユーザ数のトップ10、携帯ユーザ数のトップ5に BRICsは入っている。また、Webアクセストラフィックのシェアを見るとロシアやブラジルはその50%近くがソーシャルメディアスペースになっている。モバイルでのソーシャル化は世界トップかもしれない。北米や欧州と同じように、あるいはそれ以上にソーシャル化が進んでいるのがBRICsなのだ。そして、その後をその他の国々が追っている。

世界中でインターネット、ソーシャルメディア、デジタルネイティブといったキーワードが、今まであった既存のコミュニケーションチャネルを揺り動かし、新しいコアチャネルとして確立してきている。その変化に即してマインドセットを切り替え、Samsungが新しいコアチャネルに適応している典型が北米、米国の対応だ。そして、その対応は何も米国、北米に止まらない。BRICsであろうと、それ以外の途上国であろうと、デジタルネイティブは存在し、アーリーアダプター、クリエーター、インフルエンサーとして力をふるう。その彼らにソーシャルメディアスペース経由でまず、各国子会社がコネクトするようになり、そして、本社がグローバルブランディングを開始するだろうと予想するのは、そんなに難しいことでもない。あるいは、北米対応だけを目指していたにも関わらず、世界各国のユーザがターゲットになっている、できるということを学習するのにそう時間はかからない。だから、本社のグローバルブランディングを実施するまたとないチャネルがソーシャルメディアだと理解するのはもうすぐ先だ。

さて、Samsungは2009年、40周年ミーティングで「ビジョン2020」を発表した。これからの10年間で売上高を400兆ウォンにすること、IT分野 でグローバルリーダーとなり、トップ10に入るグローバル企業になり、トップ5のブランディングパワー、尊敬される企業のトップ10になると宣言した。 Samsungのコアターゲット地域は北米と欧州だが、重点戦略地域として当然、BRICsもあり、 特に中国、インドなどで活動を活発化させている。

そのSamsungがまず北米、米国でソーシャル化を進めている。そして、上の簡単な予想が当たれば、世界のユーザをターゲットとしたグローバルなブランディングが始まる。

このまま、Samsungが北米での対応をトリガーとして、欧州、BRICs、その他途上国でのコミュニケーションをソーシャル化させてきた場合、対抗できる日本のグローバルブランドはいるのだろうか?あるいは、後をついていけるブランドはいるのだろうか?Contrerasをヘッドハントしてから半年やそこらで、米国Webサイトなどを改修、増強し、社内(あるいは社外も含めた)コミュニケーションプラットフォームを本社CEOにプレゼンできる環境が、日本のグローバル企業・ブランドにあるのだろうか?そして、なりよりもまず、社外のリソースをソーシャルメディアマネージャとしてヘッドハントするキャパがあるだろうか?

それは「絶対ない」と確信を持って言える。

縦割りサイロ組織が壁を作り、情報が共有できず、社内にソーシャルメディアのパワーを伝道するアーリーアダプターだけがストレスを積み重ねる中、マインドセットが昔のままの人間は「他人事」、「自分の担当ではない」と横を向いたきり、手も貸してくれない。あるいは社外のリソース、代理店やエージェンシーは、苔むしたビジネスモデルをベースとした提案をするだけで、良くてメガフォンマーケティングをソーシャル化することだけ、本当に企業が必要とする現状認識や新しいアイディア、ソーシャルメディア戦略構築、実施のリソースにはなりえない。

ここで今から5年後の2015年を思い描いていただいた場合、
  • あなたの企業・ブランドは、今のままのコミュニケーション戦略ですか?
  • 既存組織の返り討ちにあってソーシャル化はまだ始まっていませんか?
  • ようやく何年か続けた社内での啓蒙が取締役レベルにやっと上がった段階ですか?
  • それとも既存組織のままで足りない要員、予算を前に何もできないと嘆息していますか?
  • あるいは...
どんな状況になっていると思いますか。

言えることは、このままであれば、5年後の2015年にSamsungは2009年に宣言した通りの企業・ブランドとして世界に君臨しているだろうが、日本のグローバルブランドは価値、そして評価が下落し、単なるローカルなガラパゴスブランドになっているかもしれないということだ。

また、これはエレクトロニクス業界に限らない。B2Cであれ、B2Bであれ、特定業界・業種に限らず海外へ進出している、進出を予定する企業すべてにかかってくる。Samsungであれ、Fordであれ、それぞれの業界、業種におけるBest Practiceがそこかしこでオープンに共有され、それを規模の大小に限らず多くの企業・ブランドが学習してくるわけだ。異業種の事例の中から自社に適用可能なコンセプト、コンポーネント、パーツを取り入れ、その上で新しいアイディアを載せた独自の取り組みが実施される。これはすべての業界に適用される。

そして、これから行われるそういったコミュニケーションと接触し、エンゲージし、価値を見出すユーザが増えてくると、ソーシャルコミュニケーションを前提とする消費者、ユーザ、顧客、ビジネスパートナーが大半を占めてくることになる。そんな状況で10年前のコミュニケーションをやったところで、刺さる処も、響く処もないし、ターゲットのマインドセットにブランドが存在しなくなってしまう。

それだけ、これからの5年は重要だし、動きはグローバルに加速する。海外子会社や販社が担当国や地域単位でやるべきことに加え、日本本社がグローバルにやるべきことがある。

それでは5年後、
  1. ローカルなガラパゴスブランドにならないためには、
  2. レガシーマスメディアに拘泥したままで効果のない広告、広報、マーケティングを続け、消費も共有もされないメッセージを流し続ける羽目にならないためには、
  3. 競合が数百人規模のソーシャル部隊を抱え、世界のユーザとダイレクトにエンゲージするスペースを運営している一方、数人規模のグループで対抗しなければならない羽目に陥らないためには、
  4. 各国子会社、販社の営業、販促活動をソーシャルメディアのグローバルスペースで日本本社が支援するためには、
  5. グローバルなユーザの声、評価、意見を聞き、それをブランドの価値向上、購買プロセスへの落とし込み、ロイヤル・リピートユーザの醸成に結びつけるためには、
  6. ポジティブな消費者・顧客・ユーザの声を育成、増強、拡散するためには、
  7. そして、世界中のソーシャルメディアスペースのユーザから総スカンを食わないためには、
  8. あるいは、Worst Practicesの上位に名を連ねないようにするためには、
どうしたらいいのだろうか?

CEOおよび役職者を対象としたクラッシュコース開催、Webビジター調査、オンラインモニタリング、そして、競合、同+他業界の動向、各種統計、最新事例を調査したり、米国や欧州、その他の国から広報、広告、マーケティング担当者を呼び集めてのヒアリングやクラッシュコース開催などやれることは山ほどある。

もし、これらに興味があればお問い合わせください。

2010/08/06

Online Ad Maturing

MediaMindから、「Making Display Advertising the Engine for Automotive Growth」というレポートが出ている。

MediaMindが配信した車関係のオンライン広告実績に基づいて、様々な指標を出している。中で目を惹いたのは下図だ。地域ごとのCTR、Dwellをグラフ化している。

北米や豪・ニュージーランドのCTRは0.1%前後、Dwellは6%弱、3%前後といったところだ。しかし、欧州、南ア、東アジア、南アジアのCTRは0.25%以上、南アジアは4%程度だろうか。Dwellも東アジアが6%強で、欧州、南ア、南アジアは9%以上だ。
Source:MediaMind / Automotive Analytics Bulletin

MediaMindは、
これにはユーザ行動の違いが大きく出ている。北米、豪、ニュージランドはオンライン広告成熟国なので、オンライン広告に反応したり、クリックすることは少ない。一方、他の地域・国では広告に反応し、クリックすることが多い。
と解説している。

しかし、衰退するレガシーマスメディアの補完、あるいは代替としてオンライン広告を最初に始めた北米では、ユーザに広告を露出しても行動を喚起させる力はなくなってきただけだ。というか、既存の一方通行広告をオンライン化しただけなので、目新しさで飛びついていたユーザは慣れてくると、オンライン広告をTV、新聞、雑誌と同じように無視し始めたということだ。

また、オンライン広告成熟国だからではなく、ソーシャルメディアが日常生活に深く浸透し始めてきたため、一方通行のマーケティングには反応しなくなってきたということだ。以前であれば露出、想起といった購買プロセスの入口であればまだレガシーマスメディアの存在感もあったかもしれないが、その入口にもソーシャルメディア経由の露出、共有、リンクなどが影響してきたということだ。

このソーシャルメディアの浸透に関してはFordの力が大きい。2008年から始めたFiesta Movement1は大きな反響・評価を生成し、先ごろExplorerの新車発表をFacebookで行っている。その影響・効果を学習した各社、例えば、HyundaiやVolkswagen、ToyotaやGMと言ったところもソーシャル化を加速させている。

今後、購買プロセスの入口におけるレガシーマスメディアの存在感が薄れ、身近な人間や知り合い、会社の同僚などからのオンライン・対面WOMが重きを増してくる。もう、TVCFに「「XXX」を検索」といったクレジットを入れても入口にならない。

消費者、ユーザ、オーナーが集うスペースで会話に参加することから始めなければならないのだが...。

2010/08/05

No Japanese Brands in Famecount

Facebook、Twitter、YouTubeのファン、フォロワー、購読者を集計し、Famecountというランキングを発表しているサイトがある。

トップはどこかと言うとStarbucksだ。Facebookで1,137万人のファン、Twitterで97万人のフォロワー、YouTubeで7,241人の購読者を集め、Famecountは68.83%でトップにランクされている。

Source:Famecount

ここで、国別のランキングを見ると日本ブランドとして3つあげられている。
が、これら3ブランドはすべてインドのTata Docomoであったり、豪のトヨタであったり、カナダの三菱自動車のFacebookやTwitter、YouTubeの数字を集計し、日本ブランドとしてランキングしている。

それだけ信用のおけないランキングだと切り捨てるべきかもしれない。しかし、それだけ本社アカウント、ページが知られていないということだ。ソーシャルメディアスペースで露出していないからヘンテコリンなアカウントが日本ブランドとして取上げられている。

一方、Red Bull(オーストリア)が3位、Zara(西)が15位、H&Mが20位だし、Lacoste、PUMA、BlackBerry、Adidas、Louis Vuitton、Nokiaなど世界の錚々たるブランドがちゃんと顔を出している。にも関らず、日本ブランドは200位までに顔を出していない。

日本のグローバル企業のブランド力は、こと、ソーシャルメディアスペースに限って言えば、存在していないに等しい。人口減少に歯止めがかからない国内市場にしがみついている暇があれば、海外市場でプレゼンスを拡大しなければならない。とすれば、ビジネスのやり方を変革しているパラダイムシフト、デジタルネイティブ、ソーシャルメディアをベースに新しい戦略が必須なのだが...。

Famecountのトップに選出されたStarbucksのDigital Director、Alexandra Wheelerが、Social Media Influence 2010というプレゼンをアップしている。ご参考までに。

2010/08/04

Internet Update June 30 2010

InternetWorldStatsから最新情報がアップデートされた。

それによると2010年6月30日時点で、世界人口は68.5億人、インターネットユーザは19.6億人。普及率28.7%だ。

半年で約1億人世界人口が増加し、インターネットユーザは約1.6億人も増加している。5年後の2015年ごろには73億人、22億人、普及率30%を予想していたが、このままのペースなら78億人とか、35億人、45%といったステージへ舞い上がってしまいそうだ。

参考:Internet Users in Dec 2009 (Online Ad 2010/04/07)
そして、インターネットで利用されている言語だが、英語が5.4億人、中国語が4.4億人、西語が1.5億人となっている。
Source:InternetWorldStats.com

トップ10に入っている言語ユーザのうち、少なくとも日本ユーザを除いた各国のユーザは英語ぐらい朝飯前のユーザばかりだろう。そんな中でもデジタルネイティブ、アーリーアダプター、インフルエンサーといったユーザ達は最新情報を求めて世界中を駆け巡っている。

それは米国、英語サイトということになる。例えばiPad、iOS4、Twitter、YouTube、FacebookといったIT系、ソーシャル系に関連する情報、ニュースを、ドメスティックな同様情報、ニュースソースが上回る注目を集めることはあまりない。世界中のユーザが注目しているのはグローバルな価値を持った情報、コンテンツなのだから。

最新ニュースの速報に命をかけているような彼らが、国内メディアの報道に先んじて米国、英語情報を国内向けに発信してくれるから、ドメスティックなユーザでもRSSを受信、Twitterでフォローしておけば最新ニュースに困ることはない。国内サイトだけしかアクセスしていなくても、世界中のニュースや情報に触れることができるのはマスメディアも同じだ。しかし、鮮度、個人的な親近感、信頼度、そして双方向性やRTを使った再発信力からすると、彼らとソーシャルメディアスペースでつながっているほうが自分のスペースで利用できるから、ベターだし、使いやすい。

こういったパターンで各国の国内ユーザは、各国のデジタルネイティブ、アーリーアダプター、インフルエンサーを経由して、米国、英語サイトの情報、コンテンツを入手でき、消費し、他のユーザと共有することができる。だから世界中のインターネットユーザは、「ひとつにつながっている」ことになる。

「ひとつにつながっている」世界のユーザ、消費者に米国販社、欧州子会社からブランド情報、コンテンツを発信し、消費、会話、共有してもらうのか、それとも日本本社がやるのか。あなたはどちらだと思いますか?

2010/08/03

Marriott Voluntourism Package

このBlogで何度か取上げた、Marriott On The Moveに

参考:Marriott CEO Blog Launched (Online Ad 2007/01/19)
参考:Marriott on the move (Online Ad 2007/03/20)

「Marriott Guests Can Give Back with New Voluntourism Package」というポストがあった。

Guests Giving Back Through Marirotts New Orleans Voluntourism Packageこれは何かと言うと、まずニューオーリンズ周辺のトップシェフが夏の初めに、原油流出事故の被害にあっている漁民やその家族を支援し、食事を提供するイベントを立ち上げたそうだ。

そして、当然、周辺地域に住む多くの人々が何か手助けできることはないかと思っているし、米国内の他州の人も同じだ。

ということで、7月上旬にMarriottは、ニューオーリンズにある7つのMarriottホテルチェーンにおいて、宿泊客がホテルの従業員達と一緒にボランティア活動を行うパッケージ、「Voluntourism Package」を発表した。これは、原油流出事故の被害者救済だけではなく、5年たった今も、ハリケーン・カテリーナの被害回復ができていない被災世帯への支援も含まれている。

是非、パッケージを利用して、コミュニティの再建に力を貸すとともに、米国でも有数の観光地として名高いニューオーリンズ周辺の自然、文化、歴史を体験くださいとの内容だ。

パッケージサイトによれば、一泊99㌦で、デラックスベッドルーム、「Habitat for Humanity(ハリケーン・カテリーナ被害救済)」あるいは「Second Harvest Food Bank(原油流出被害救済)」への参加、ボランティア当日の2人分のお弁当、ボランティア活動場所までの往復の交通手段、記念のTシャツ2枚が提供されるようだ。そして、8月から12月までのボランティア活動予定がアップされている。
Source:Marriott On The Move / Marriott Guests Can Give Back with New Voluntourism Package
Source:Marriott Voluntourism Package

こんな活動こそがCSRの名にふさわしい社会貢献だ。多くの人々のボランティア活動を支援し、被災者救済と痛手を受けている観光産業の支援まで行うパッケージは一石二鳥、三鳥の効果と評価をもたらす。

カテリーナ被害救済に何億円も寄付した企業は世界中にいるが、5年たった今、その寄付行為を覚えてもらっている企業はどれほどいるだろう。顔を見せず、汗も流さず、ただ金を出しただけの企業はその金がどこに、どれだけ、どのように使われたのかさえ分からず、記憶に留められることもない。一方、顔を見せ、汗を流し、一緒に泥をかき出し、柱をすえなおした行為はいつまでも当事者の心、記憶に残る。

以前、紹介した下の言葉、中国の諺がある。
Tell me and I'll forget; show me and I may remember; involve me and I'll understand.
参考:Involve me and I'll understand (Online Ad 2009/11/12)

「百聞不如一見、百見不如一干(百回聞くことは一回見ることに及ばない。百回見ることは一回やることに及ばない)」という意味だそうだ。

一緒に汗を流す行為をCSRとし、それがソーシャルメディアスペースで共有されることを考えれば、スーパーボールのTVスポットに数億円を投下するよりも比較にならないほどのROIをたたき出すことは明らかだ。

一緒に汗を流しませんか?

2010/08/02

Integration of Social Media, Mobile and Email

米国では、
  • 米世帯の97%がemailを利用している
  • ネット接続している75%がソーシャルネットワークを利用している
  • 米世帯の61.5%がソーシャルネットワークを利用している
  • 米人口の91%がモバイルを利用している
  • 米人口の23%がスマートフォンを利用している
これだけ多くのユーザにemail、モバイル、ソーシャルメディアが利用されているにも関らず、単独マーケティングであったり、他デバイスやチャネルを考慮しないマーケティングがまだ大半だ。

ということで、eROIが統合マーケティングの現状をレポートしている。

全米で2.85億台のモバイルデバイス、7,000万台のスマートフォンが利用されているにも関わらず、デジタルマーケティングをモバイルに最適化することを、「重要だ」と考えているのは31.6%でしかない。「テスト中」が24.6%だが、「重要ではない」と回答しているのは14.8%もいる。
また、email購読者のモバイル利用や有用性を調査していないのが63%もいるので、モバイル版のWebサイトのランディングページを「使っていない」+「分からない」のが77%にも達している。そのコンテンツもPC用Webサイトの完全版は32%、モバイルに特化したランディングページが68%となっている。
下のようにemailとソーシャルメディアの統合はそこそこ進んでいる。FacebookとTwitterは必須、LinkedinとYouTubeが二番手。まだFourSquareの統合化率は低いけれど、今後、ガンガン上昇してくるはずだ。
Source:eROI / The Current State of Social, Mobile & Email Integration

email、モバイル、ソーシャルメディアの統合実施率グラフといったものを期待していたのだが、それはなかった。残念。

というか、そこまでまだ米国マーケターも手が回らないといった状況なのだろう。まだまだ縦割りサイロ組織が幅を利かせ、既存部門が予算と人員を握っている状況では、あれもこれもというわけにはいかない。だから、社内で伝道しながら予算を調達するといった努力を続けているマーケターがまだ多いはずだ。

しかし、企業・ブランドからみて使いやすい、ROIが計りやすい、効果を期待しやすい、可視化しやすいデバイスやチャネルではなく、消費者・ユーザに一番近いデバイスやチャネルを使い、会話に参加しなければ、コミュニケーションが成立しない。

先週の「Global CEO Study from IBM」で紹介したように、不変だと確信していた顧客が変身し、彼らは後れる企業の対応を横目に先へ先へと進んでいく。今までの業務だけで追いつくことは不可能になってきているのだが...。
「デジタルネイティブである次の世代は、政治、公共機関、そしてビジネスのやり方に革命的な影響を及ぼすだろう。市民は変革を推進し、社会を根本的に変える。それは進化というレベルではない」
Peter Gilroy, CEO, Kent County Council

「運航乗務員を社内のコミュニティに参加させるためには、バーチャルなコミュニケーション環境が必要だ。若い世代の社員は、まったく新しいコミュニケーション方法を求めている。多様な社員を一つにまとめるには、世代を越えたコミュニケーション戦略が必要だ」 
David Cush, President and CEO, Virgin America Airlines

「技術はすでに顧客の行動に影響を与えている。顧客は最先端の技術を使って四大陸を駆け巡り、商品の価格を調べている」
Michael Ward, CEO, Harrods
参考:Global CEO Study from IBM (Online Ad 2010/07/30)