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2010/09/10

Samsung Dominating 3D TV Buzz Share

6月に、Samsung 3D TV Promotionを書いた。

参考:Samsung 3D TV Promotion (Online Ad 2010/06/03)

それ以降も、矢継ぎ早といったマーケティング、プロモーションが繰り出された結果、8月31日のDealers Scopeによると、Samsungはすでに全世界で発売以来6ヶ月間で100万台の3D TVを販売し、米国シェアの88.3%を握っているようだ。

Source:Dealers Scope / Samsung Sells Millionth 3D TV, Eys Apps

しかし、VentureBeatによれば、Sonyは7月までにSony Style Storeにおいて200万回以上の3Dデモを実施。300人の3Dスペシャリストを配置。今後、2~3ヶ月で20万回の3Dデモを予定。5,000回以上のマーケティングイベント開催を予定しているとのこと。

Source:VentureBeat / Sony revs up the 3D TV sales pitch with millions of demos

各社のマーケティング、プロモーションがこれからも加熱、加速してきそうだ。

ただし、今、目の前に無視できないほど大きく広がった明白なギャップがある。それは、Samsungと競合する4社、Panasonic、Sharp、LG、そしてSonyに関するオンラインバズ数だ。

下は、3月10日から始まる週を起点として9月1日から始まる週までの6ヶ月間における5社、Panasonic、Sharp、LG、Samsung、そしてSonyの3D、TVに関するオンラインバズの時系列グラフだ。累計ではPanasonicは3.12K、Sharpは1.15K、LGは1.12K、Samsungは47.1K、そしてSonyは6.61K個のバズが発生している。
そのシェアを見ると、もう圧倒的としか言いようのないギャップがある。Samsungはこの6カ月間の3D、TVバズシェアの80%を握っている。日本メーカーではSonyが11%、Panasonicが5%、SharpはLGと同じ2%でしかない。残り4社が束になってかかってもSamsungはその合計の4倍のバズを発生させている。
このバズをもう少し詳しく、カテゴリ別に見てゆく。

まず、Blogだ。Samsungが28.5Kのバズを発生させていて、次に続くのはSonyの4.87K個と一ケタ少ない状況だ。
BlogバズシェアはSamsungが75%を握っており、Sonyが善戦して13%、Panasonicも健闘して7%だが、LGは3%、Sharpは2%でしかない。
次にForumバズを見ると、ここでもSamsungが競合を圧倒している。累計で14.9KのSamsungに対してSonyは1.37Kでしかない。ForumではLGがもっともひどく48個のバズしか発生していない。
ForumバズシェアはSamsungが89%だ。Samsungは全4カテゴリでトップシェアを占めているが、89%はその中でもTwitterに次ぐ高いシェアだ。
次はTwitterだ。ただし、TwitterのAPI制限の関係でモニタリングできているTwitterバズ数は実数の10%から15%の間ということになる。Samsungに関する3D、TVがらみのオンラインバズが2.64Kなのに対して、他の4社はひどい。136件のSony、55件のPanasonic、23件のLG、そしてSharpに至っては13件しかない。
ということで、TwitterバズシェアでSamsungは92%という最高シェアをたたき出している。こうなってしまうと、如何にSonyが5%、Panasonicが2%のシェアといっても、LGの1%とそう変わりはない。4社ともにTwitterを考慮したマーケティングやプロモーションをまだ実施できていないということだろうが、今時、まだ実施できていないとすると、もうこれは大変、後れているということになる。担当者自体がTwitterを使った情報やコンテンツ発信をしていないということだ。競合がどんなマーケティングやプロモーションをやっているかも調査していないということだ。今、ユーザ、デジタルネイティブ、アーリーアダプターがどこにいて、何を使い、どんな会話を紡いでいるかを無視しているということだ。
最後に、News関連バズだ。ここもSamsungが累計1.12Kなのに対して、Sonyは231件、Panasonicが134件、LGが98、Sharpが65だ。
シェアもSamsungがトップの67%、Sonyが15%、あとは推して知るべしといったシェアだ。

もう、3D TVと言えばSamsungしかあり得ないといったレベルのオンラインバズギャップが4社との間に存在している。Sonyだけではなく他の競合各社も様々なプロモーション、イベント、キャンペーンを仕掛けてくるだろうが、一朝一夕にこの途方もないバズギャップを埋めることは不可能だ。特に、従来からの一方通行キャンペーンではもう何も期待できない。

さて、このように見てきたオンラインバズは何かと言うと、Blog、Forum、Twitter、そしてNews関連サイトに書き込まれ、発信され、共有され、再露出されているブランドに関連する情報、コンテンツだ。

これらオンラインバズが、ブランド認知、想起、好感度、優先度などを向上させて、購買意思に大きく影響してくる。それもただ単に声が大きいだけとか、態度がでかいだけで俺は偉い専門家だと思っていユーザではなく、自分と同じようなピアが体験したブランドの評価、使い勝手や競合製品との比較、そしてブランドの本当の価値を伝えてくれるのがオンラインバズだ。

そのオンラインバズの80%をSamsungが牛耳っている。

Corporate Social Media Summitに参加していたSonyのChristina Stahler、Head of Consumer InsightsのPodcastを聴くと、今年、SonyはベンチマークするためNielsen BuzzMeticsとRadian6を使ってモニタリングしているそうだ。

参考:Corporate Social Media Summit (Online Ad 2010/04/15)
Source:UsefulSocialMedia / Podcast - Sony Christina

彼女のカバーするテリトリからは離れるが、訊いてみたい。Samsungとのこの途方もないバズギャップをどう考えているのかと。そして、このギャップを埋めるためにどのようなマーケティング、プロモーションを予定しているのかと。

この膨大なオンラインバズギャップを把握せず、対抗もせず、ただ、昔からの広報、広告、プロモーション、マーケティングをやっている企業・ブランドは何も見ていないし、聴いてもいないし、感じてもいない。昔からの業務をこなしているだけで、消費者がどこを向いているかも調べていない。

このギャップを埋めるには、「Samsungと同額以上のメディア費を投下すべきだ」と、昔からの自分たちのビジネスモデルをベースとして考える一部の特異な人たちは存在するが、それに何の意味があるはずもない。誰も見ていない、読んでいない、聴いていないTV、新聞、雑誌、ラジオ広告。封を開けられもしないDM。クリックされることもないポータルサイトでのオンライン広告。不達率の異常に高いEmailニュースレター(それもテキストメール)。Facebookへのオンライン広告。提案してくるのは、バケツをひっくり返したような大量露出、大音量のメガフォン広告キャンペーンだ。

ここにあるのは、企業・ブランドや代理店・エージェンシーにとって手離れの良いマーケティング、キャンペーンだ。効果など二の次で、広告エビデンスがちゃんと取れればそれでいいといった類の話だ。なんで、私たちが汗をかかなきゃいけないんだとうそぶき、消費者のことや、彼らにどうやってメッセージを届け、共有してもらうかといったマーケティングの肝が欠落している施策だ。

今、もっとも必要なのは、「消費者にブランドを語ってもらうこと」だ。2006年のANAでP&GのCEOは、「消費者がパワーを握っている」と語っている。それからすでに4年もたってしまった今年、企業・ブランドが如何に大声を張り上げたところでメッセージが届く消費者の数は少ない。彼らは、レガシーマスメディアを使った企業・ブランドからのメッセージを信頼するよりは、自分と同じピア達のメッセージを聴き、情報・コンテンツを消費、共有、再露出しているのだから。彼らにブランドを語ってもらわずして、何も伝わらない。何も共有してくれない。

今、彼らのスペースに参加し、メッセージを届け、共有してもらうべきユーザはデジタルネイティブしかいない。インフルエンサーとして、クリエイターとして、Blog、Facebook、Twitterに多くの読者、友人、フォロワーを抱える彼らにブランドを語ってもらい、彼らの読者、友人、フォロワーにも語ってもらうことしかない。

なぜ、Samsungが圧倒的なオンラインバズを握っているのか、何が、競合各社と違うのか、なぜ、消費者はバズを生成し続けているのか、なぜ、SamsungのCEOはLoicと会ったのか、そして、なぜ、あなたの企業は公式Blogを持っていないのか、また、なぜ、あなたの企業に関するバズが少ないのか、考えたことがありますか?

もし、ご興味があれば、お問い合わせください。

2010/08/17

Open Letter to CEOs in Japan

日本企業の最高経営責任者の皆さま

本日は、インターネット、パラダイムシフト、ソーシャルメディア、そして、日本ブランドの危機について理解していただくために筆をとりました。これらファクターが絡み合い、既存の広報、広告、マーケティング戦略を大転換しない限り、日本のグローバルブランドが今後数年のうちにローカルなガラパゴスブランドに転落するという危機感を共有していただきたいと考えています。
  1. まず、インターネットがあります。

    InternetWorldStats.comによれば2010年6月30日時点で、世界の総人口は68.5億人、インターネットユーザ数は19.7億人、普及率28.7%に達しています。そのトップ20には、日本、欧米諸国などに加え、中国、ロシア、インド、ブラジル、イラン、トルコ、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどBRICsおよび途上国が顔を出し、2000年からの伸びが13,000%を越えるイラン、12,000%を越えるベトナムはもとより、BRICsは軒並み1,000%を越えています。OECD加盟国のインターネット普及がこれ以上見込めない中、BRICs、途上国は猛烈な勢いでインターネットが普及しています。
    Source:InternetWorldStats.com / Top 20 countries

    次にブロードバンド化があります。2008年に発表されたEUの世帯別ブロードバンド普及率ですが、蘭が77%でトップ、英独仏は47%、33%、 48%、EU27カ国の平均でも36%に達しています。調査されたのは2007年ですから今日までの3年間に平均普及率は40%をを越え、50%に迫って いるのではないでしょうか。
    Source:EU / E-Communications Household Survey 2008 (pdf)

    米国の最新のデータを見ると、こちらは世帯ではなく、インターネットユーザのBB普及率となっていますが、今年の5月時点でBB化は66%にまで進展しています。
    Source:PEW / Home Broadband 2010 (pdf)

    そして、中国の場合、BB化はもっと猛烈です。今年1月に発表されたCNNICのレポートによれば、3億4,600万人がBBユーザだとしています。これは全インターネットユーザの90.1%にあたり、前年比7,600万人が増加したとしています。
    Source:CNNIC / The 25th Survey Report (pdf)

    このブロードバンド化の進捗は世界で起こっています。

    インターネットは情報通信の基盤でもあり、媒体としての側面もあります。世界のどこにいても、インターネットにアクセスさえできれば、そしてブロードバンド化していれば、IP電話、ビデオ電話、email、chat、Web、Blog、SNSなどを使って地球の裏側にいる人と会話すること、つながることができます。インターネットにアクセスさえできれば、朝日新聞であれ、New York TimesやCNNであれ、BBCであれ、マスメディアのWebサイトへアクセスし、最新ニュースや情報を入手することができます。業界紙・誌のWebサイト、業界フォーラムなども同じですし、企業や団体のWebサイトへアクセスすることができます。

    今まで地理的、時間的、経費的な障害によってコミュニケーションを行うことさえ難しかった人々とコンタクトしたり、ビジネスを行ったり、一緒に社会貢献活動を行うことさえ可能になりました。今までのビジネスのやり方、仕事の仕組みを大きく変えたのがインターネットだと言えます。

    そのインターネット、ブロードバンドが先進国だけではなく、BRICsおよび途上国にも広く普及し始めています。これらは世界がひとつにつながるプラットフォームだと言うことができます。

  2. このインターネットユーザの増大とブロードバンド化がパラダイムシフトへとつながっています。

    上で見てきたように、世界中の一般市民、消費者が、インターネットへアクセスできるようになり、月額固定料金でのブロードバンド化が進捗することによって、常時インターネットにアクセスするユーザが増えてきました。

    その中の先端ユーザ達は独自ドメインを取得し、自分のWebサイトを立ち上げるものも出てきました。企業、団体、マスメディアのWebサイトへアクセスするだけに飽き足らず、自分でWebサイトを立ち上げ、様々な情報やコンテンツを発信するユーザが増えてきたのです。しばらくすると、Blogを書くユーザも出てきました。世界最初のBlogのひとつは1994年に始まったとされていますが、1999年にサービスを開始したBloggerなど無料でBlogサービスを提供するプロバイダーも現れ、2004年頃までには政治、経済面でBlogは大きな影響力を発揮するようになってきました。

    Source:Wikipedia / Blog

    その後、専門家だけではなく、一般ユーザ・消費者が自分の日々の出来事をつづったり、ニュース、映画、ミュージック、セレブ、ブランドに関する意見・評価などをBlogから発信し始め、多くのインターネットユーザがBlogにコメントしたり、購読を始めるようになりました。

    2009年1月時点で、2002年以降にインデックスされたBlogの数は1.33億件、世界でBlog記事を読むユーザ数は3.46億人(2008年3月)に達しています。

    Source:The Future Buzz / Social Media, Web 2.0 and Internet Stats

    これだけBlogやその読者が増えてくると、トップBlogの中には読者数が数万人、数十万人を越えるケースも出てくるようになり、小規模な既存マスメディアサイトのトラフィックを上回る規模のものもあります。Blogによって個人の発信力が飛躍的にアップしてきたため、既存のマスメディアや企業、団体が行う情報発信のボリュームおよびクオリティと肩を並べてきました。

    そして、既存のマスメディアと違い、オープン、対等な関係でコメントしたり、違う意見を戦わせたり、友人や同僚を巻き込んで自分のBlogに発表するといった会話が成り立ってきました。

    また、WebやBlogだけではなく、情報発信の一部として、一般ユーザ・消費者が独自に制作したビデオをYouTubeなどに投稿する例も出てきました。

    中でも下のビデオは2006年6月、二人の知り合いがダイエットコークにメントスを入れた噴出実験を撮影したものです。同様の噴出実験ビデオをいくつも投稿していますが、世界中のユーザが飛びつき、それぞれ数10万回から数百万回も再生されました。
    Source:YouTube / Experiment #10

    彼らだけではなく、ビデオを視聴した他のユーザが同じような実験ビデオを投稿したり、WebやBlogに記事を書き、それを見たり読んだりした他のユーザが友人・知人に話すといったクチコミが広まりました。そのクチコミ露出に後を押され、まず、メントスが彼らのサポーターとなりました。その後もしばらくはだんまりを決め込んでいたコカ・コーラでしたが、売上が5~10%も伸びた結果を無視できず、彼らの実験を支援し始めました。コカ・コーラ本社前、米国各都市、果ては欧州のオランダで噴出実験を披露するキャラバンを展開しました。名にしおう世界のコカ・コーラ社がどこの誰とも分からないポット出のタレント、ビデオクリエイターの力を借りてグローバルなマーケティングを実行したのです。

    企業が大規模予算をかけて製品・サービスのプロモーションを行っている傍らで、たった数十㌦程度の撮影費用しかかけていないユーザのオリジナルビデオが米国や世界のユーザのマインドに刺さり、マスコミも追随して報道することで、商品が飛ぶように売れてゆく。企業がコントロールしていたはずのブランドコントロールが一般消費者の手に渡ったことを示す典型的なビデオだと言えます。

    一般消費者が投稿するビデオが、企業のマーケティング活動に大きく影響するだけではなく、企業のレピュテーションを毀損する例も出てきました。

    下は、ドミノピザ従業員が、唾を吐きかけたり、鼻くそをピザに塗り込めたりした様をビデオで撮影し、投稿したものです。このとんでもないビデオはあっという間にインターネットユーザに広まり、USドミノピザの社長がYouTubeに謝罪ビデオ投稿し、異例の顧客対応を余儀なくされました。

    Domino Pizzaの該当四半期の売上に対して1%から2%の影響があったと決算報告書に記載があります。それほど一般ユーザが作成したビデオは、企業業績に大きな損害を与えるほどの影響力があるわけです。
    Source:DailyMotion / Domino Pizza

    これら以外にも乗客の手荷物取扱を巡り、United Airlinesなどが糾弾された例があります。個人が制作したコンテンツにより、企業が営々と築き上げてきたブランド評価やレピュテーションはもちろん、業績にまで多大な影響を与えるケースもでてきています。そしてのその影響は、例えば米国内だけに止まるのではなく、世界中に露出し、企業・ブランドのレピュテーションを粉々にしてしまうほどのパワーを秘めているのです。

    このセクションの最初にダイエットコークとメントスの噴出実験ビデオを取り上げましたが、同じ年の10月、ANA(全米広告主協会)総会においてP&GのCEO、A.G.Lafleyは、「パワーは消費者が握っている。彼らは考えられるすべての意味で我々のブランドを所有し、ブランドコンテンツ制作に参加し始めている」と語っています。また、Wal-MartのMarketing VP、Stephen F. Quinnは、「消費者が手綱を握っており、消費者にうまく手綱を握らせるものが勝者になる」とまで発言しています。

    Source:NYT / Letting Consumers Control Marketing: Priceless

    企業は、大規模予算を投下してマスメディアを使った一方通行のコミュニケーションを継続してきました。新雑ラテという四大マスメディアはもとより、屋外、DM、展示会、プライベートセミナー・展示会、イベント開催など、すべてのコミュニケーション・チャネルを総動員して露出、リーチ、訴求、認知、想起といった昔からのマーケティング理論を実践してきました。

    しかし、四大マスメディアの露出、訴求力には陰りが見えます。多メディア化が進展し、ユーザを情報洪水が呑み込んでいる現在、TVの視聴率、新聞・雑誌の購読者数、ラジオの聴取率も右肩下がりを続けています。今後、回復する道筋は見えません。

    一方、インターネット、ブロードバンドを手にした消費者は、オリジナルのコンテンツやブランド関連コンテンツを作成し、個人的なネットワーク内で発信、共有するだけではなく、Blogや画像・ビデオ共有サイトなどに投稿することで、世界中のインターネットユーザにコンテンツを提供しています。そして、そのコンテンツを消費し、他のユーザと共有する世界のユーザがいます。

    まさに、情報・コンテンツの出し手は企業やメディア、そしてその受け手は消費者といった今までの固定観念が崩れ、新しいパラダイムが沸き起こってきたわけです。すなわち、一般消費者も情報・コンテンツを提供する出し手となり、他ユーザの制作、発信する情報・コンテンツの受け手となっています。また、受け取った情報・コンテンツを、家族、会社の同僚、学校のクラスメート、地域の知り合いといったオンライン上にある自分のネットワークの人々と共有しています。ここで点から点へ転送されてきた情報・コンテンツが、面で共有されることになります。オープン、対等、双方向の会話が成り立ち、それを閲覧するユーザも巻き込んで会話が拡大してゆくことになります。

    そして、その効果、波及範囲は国内だけに止まらず、世界に波及するということです。

    え?

    「米国、英語のコンテンツは非英語圏のユーザには波及しないだろ!」

    そう考えられるのは無理もありません。

    しかし、そうではありません。下図は、各国のインターネットユーザがアクセスしたコンテンツの言語比率を表しています。当然、豪、ニュージーランド、インド、英、アイルランド、カナダ、南アといった英語圏は英語でのコンテンツ消費が主です。しかし、韓国、台湾、日本、中国、欧州諸国、南米、イスラエルといった非英語圏でも少なからず英語でのコンテンツが消費されています。

    皆さんだって、ご自分でNYT.comやBBC.co.uk、WSJ.comやBloomberg.comへアクセスされているように、英語は情報・コンテンツが世界へ拡散される障害にならないのです。
    Source:comScore State of the Internet, Nov 2009

    え?

    「非英語圏ユーザが英語でコンテンツを消費しているとしても、ほんの少ししかいないじゃないか!!」

    そうです。国によっては違いますが、控え目にみて10%未満といった処でしょうか。でも、この10%未満のユーザ達は、アーリーアダプターと呼ばれる人たちです。非英語圏であろうと英語くらい流暢に話せる各国のアーリーアダプターは、ビジネスや個人目的で最新ニュース、情報、コンテンツを探しています。政治、経済、財務、芸能、スポーツ、IT、ネットワーク、アプリの最新情報、もっとも影響のあるソースと言えば、米国の英語情報・コンテンツです。これらをいち早く入手するため、アーリーアダプターはアンテナを張っています。そして、かれらは自分のWeb、Blog、SNS、Twitterなどで最新情報を自国語に翻訳して国内ユーザと共有しています。

    点と点がつながって、そこから面に拡散されているのです。

    ここで大きな問題があります。

    各国、各地域ごとの営業・販促活動は現地子会社、販社の責任ですが、非英語圏のアーリーアダプターが国境や子会社のテリトリを越えて、英語コンテンツを入手し、国内に露出、共有しているのです。

    例えば、米国子会社にとって非英語圏のアーリーアダプターはターゲットではありません。彼らが如何に米国の英語コンテンツを入手したところで販売につながるわけではありませんから。一方、各国のアーリーアダプターに対して各国子会社、販社ができることはあまりありません。米国以外の子会社や販社が米国へアクセスする各国のアーリーアダプターに米国で何かすることはできませんから。しかし、世界中のインターネットユーザがひとつにつながり、各国のアーリーアダプターが最新の英語ニュース、情報、コンテンツを探しまくり、国内に供給している現在、どこが何をすべきでしょうか?

    企業やメディアが一方的に情報やコンテンツを押し付けている時代から、一般消費者が自分の意見、判断、評価などを発信し始めたこと、そしてそれが消費者間で共有され、点から面に拡散されていること。これが最初のパラダイムシフトです。
    そして、世界のアーリーアダプターが国境を越えて英語コンテンツを入手し、国内に共有し始めたことで、海外子会社や販社の責任や義務を超越した存在になっていること。この世界のアーリーアダプターに対応しなければいけないこと。これが2つめのパラダイムシフトです。

  3. このパラダイムシフトのバックボーンを支えているのがソーシャルメディアです。

    上で紹介したANA総会は2006年でした。2006年というと、今、もっとも注目を集めているFacebookがすべてのインターネットユーザに解放された年ですし、YouTube、Twitter、あるいはLinkedInといったソーシャルメディアサイト・サービス・ツール・プラットフォームが出揃った年でした。
    Figure 1. Distribution of work task interruption
    Source:Social Network Sites: Definition, History, and Scholarship

    それから4年たってみると、Facebookは世界で5億人、Twitterは1億人、LinkedInは0.75億人以上の登録ユーザを抱え、YouTubeでは毎日20億回以上もビデオが再生されています。

    米国の直近データを見ると、2010年6月に米国インターネットユーザがオンラインで消費した時間のうち、22.7%(前年比43%増)はソーシャルネットワークです。インターネットの創生期から幅広く使われてきたemailは8.3%(同28%減)AOLやYahooといったポータル系は4.4%(同19%減)、チャットとして親しまれているIMは4%(同15%減)となっています。
    Source:Mashable / Social Networking Dominates Our Time Spent Online

    情報・コンテンツの配信チャネルや共有スペースとしてもソーシャルメディアは上位を占めています。ニュースの配信を受けるチャネルとして、Twitter、FacebookがEmailを抜いて一位、二位を占めていますし、コンテンツを共有するスペースとしてFacebookが一位、Twitterが三位につけています。
    Source:Silicon Allery Insider

    如何に米国のインターネットユーザが、ソーシャルネットワークにアクセスし、情報・コンテンツを発信しながら、消費・共有・拡散しているかが分かります。

    こういったパターンは何も米国だけに起っているのではなく、全世界共通です。Facebookの登録ユーザ5億人のうち70%は海外ユーザで、Twitterの登録ユーザ1億人のうち60%以上は海外ユーザなのですから。

    このソーシャルメディアが企業のマーケティング戦略に大きな影響を与えています。今年6月、NYにおいてCorporate Social Media Summitが開催されました。ここに講師として参加した欧米各社の担当者21人中、Social Media、Digital、Online、Interactiveといった部門のディレクター、シニアマネージャという肩書がついている人は14人に及びます。三分の二の企業が、いままでの組織ではなく、エンパワーされた世界の消費者が活動しているソーシャルメディア(スペース)を担当する部署をすでに立ち上げているのです。また、既存の部署名のままであっても、Social Media、Digital、Online、Interactiveに関係するコミュニケーションを担当しているのは明らかです。

    それは、今までの仕組みが変わってしまったからです。ソーシャルメディアによってエンパワーされた消費者、ユーザ、顧客は、今までの組織が行っていた既存業務では収まりきらない行動をとり、その影響は他部門に複層して及ぶからです。また、エンパワーされた消費者に対して企業・ブランドからのメッセージを送るには、既存の広報、広告、マーケティングチャネルではうまく行かないからです。

    例えば、Heather Armstrong、別名dooceという女性Bloggerがいます。昨年、彼女は購入したばかりにも関らず故障続きのMayTag洗濯機のトラブルで堪忍袋の緒が切れ、「MayTag製品は決して買わないで。MayTag製品は悪夢よ」というTweetをしました。通常であれば、これはカスタマー・サービスの守備範囲です。根気強く顧客の苦情、トラブルに電話対応をするわけですが、時代が違います。顧客はWeb、Blog、SNS、Chat、SMS、そしてTwitterで顧客対応の一部始終をオープンに公表することができますので、メーカー対顧客のコミュニケーションが青天白日、全世界のインターネットユーザが注視の元に対応しなければなりません。また、悪いことに彼女のTwitterには当時でも100万人以上のフォロワーがいたのです。彼女が行ったTweetは100万人以上のタイムラインに表示されるわけです。小さな通信社、あるいは中堅の地方新聞社に匹敵する露出力がある彼女にカスタマーサービスが対処すべきでしょうか、対処可能でしょうか。すでに発信された彼女のTweetを見たユーザ達への対応はどこが、どうすべきでしょうか。

    この場合、最終的にはMayTagの親会社、WhirlpoolのTwitterアカウントが彼女に対応しました。ここはWhirlpoolのコーポレートコミュニケーション部が管理し、Tweetを行っているアカウントです。企業情報を発信するTwitterアカウントが個別顧客のクレーム対応を行ったことになります。しかし、それも当然です。そのままでは、企業のブランド価値、評価を急落させかねないことになりますし、ひいては販売にも影響が出るかもしれないからです。
    Source:Twitter / WhirlpoolCorp

    ソーシャルメディアパワーを身にまとった消費者に対応するため、企業はまず、新しい組織を作りました。その上で、ユーザ達が自分のブランドに対してBlogやTwitterで何を語っているのかモニタリングを開始しました。上のWhirlpoolがいい例です。自社関連ブランド名、あるいは@dooceをモニタリングしていなければ、傷はもっと深かったはずです。

    また、企業の公式Webサイトにアクセスするユーザにサイトの分かりやすやコンテンツを評価してもらいサイトの改善につなげるためWebビジター調査も開始しています。

    加えて、ブランド情報・コンテンツを共有してもらうため、WebサイトにFacebookやTwitterへのリンクボタンをつけたり、Facebookなどのソーシャルネットワーキングサイトに企業の公式ページを持って、ユーザと会話を始めています。
    Source:Samsung.com/us/

    ソーシャルメディアは一般消費者に力を与えています。インターネットおよびパラダイムシフトがもたらした変革をベースに世界中の消費者が、企業、メディアに匹敵する質と量のニュース、情報、コンテンツの制作、発信を、Blog、Facebook、Twitterなどのソーシャルメディアスペースで行っています。その制作、発信されたニュース、情報、コンテンツを他のユーザ達が消費、共有し、その次のユーザ達につなげています。

    そのため、インターネットおよびパラダイムシフト、そしてソーシャルメディアは、企業そのものの体制、組織、マーケティング戦略をも変革しています。

  4. 最後に、日本ブランドの危機を取上げます。

    インターネット(+ブロードバンド)、パラダイムシフト、ソーシャルメディアが提供するもの、すなわち、
    • オープンで
    • フラット、対等な
    • 双方向のコミュニケーション、エンゲージメントをすること
    から
    • ブランド関連情報が発信され、共有、消費、再露出されている
    • それがひとつの国内だけではなく、世界へ波及する
    • 世界のインターネットユーザはひとつにつながっている
    ことを理解した先進企業はソーシャルメディア戦略を構築し、実行に移しています。

    ソーシャルメディアマーケティング戦略のトップランナーのひとつである米Fordは、一昨年から消費者をソーシャルメディアスペースに巻き込んだFiesta Movementキャンペーンを行っていました。キャンペーンが終了した昨年末時点でFiestaが米国内で販売されれば購買すると8万人が回答していました。もし、Fiesta1台を200万円だとすれば、1,600億円の売り上げにつながるという結果を出しています。また、Explorerの最新モデルをFacebook内で発表したりと積極的にソーシャルメディアを活用しています。

    Fordのソーシャルメディア戦略、キャンペーンから学習した競合、例えばVolkswagenは、2011年モデルのPolo GTIのキャンペーンをFacebookだけで開始しました。また、その公式ページの言語は英語だと宣言し、全世界の消費者に向けてFacebookをタッチポイントとする戦略を開始しています。BMWも同じです。Facebook内に本社管理のページを設け、全世界20カ国の子会社が開設しているFacebookページへのリンクページとして機能させています。BMWの本社ページも英語となっていますので、全世界の消費者に向けたポータルページなのです。

    これら2社が開設しているFacebookページは、独本社が全世界のインターネットユーザに向けたゲートウェイとなっています。ここから世界の消費者にブランド関連ニュース、情報、コンテンツを発信し、彼らに消費、共有してもらい、彼らの友人・知人達に再露出してもらうための場所となっています。また、世界中の消費者が体験したブランド経験、画像でも、ビデオでも、コメントでも、それらを共有してもらうためのスペースとしても機能させています。

    もう、昔と同じように既存マスメディアに広告を出しても、広報記事を掲載してもらっても、それらの情報・コンテンツを消費、共有してくれる消費者がいません。いや、正確には消費者はいるのですが、広告や広報記事を信用してくれる消費者がいないのです。消費者は、企業の広告や広報よりも、専門家の声や判断、社員との会話で得られた情報、あるいは自分と同じような人の意見や評価を信じているのです。Fordを含め、これら企業はそれを理解しています。

    各社は、ターゲットとなる消費者が集うソーシャルメディアスペースにブランド自身が参加し、ファンやフォロワーになってくれる消費者とオープン、対等、双方向のコミュニケーションを行おうとしています。そうすることで、消費者の信頼を獲得しようとしています。

    FordのGlobal VP-MarketingのJim Farleyは、Ad AgeのDigital Conference 2010において、
    15秒のTVCFで我々が聞いてほしいストーリーを話すことはできるが、我々が求めているのは顧客に我々のストーリーを語ってもらうことだ。顧客の信頼をどのように得るかを示してくれたのはデジタルだ。
    と語っています。


    Source:Ad Age / Digital Conference 2010

    また、彼は以前の新車発表・発売に焦点を当てた既存メディアキャンペーンではなく、
    メディアキャンペーン開始前から、そして終了後も継続されるソーシャルメディアスペースでの会話、エンゲージメントの重要性を指摘しています。
    キャンペーンに合わせた一時的な広告や広報活動ではなく、ソーシャルメディアスペースでユーザと、一から会話を紡ぎ、育て、垂れた稲穂をユーザの個人的コネクション、ネットワークに共有してもらう。その中で新しい接ぎ穂が出れば、それも大事に育ててゆく、そのなかで消費者の信頼を獲得するという、Fordの全く新しいパラダイムを惜しげもなく公表しています。

    Ford自体、まだグローバルな展開を見せていませんが、VolkswagenやBMWが学習成果を基にちゃっかりと一歩先のステップを踏み出しているように見えます。

    こういった事例が自動車メーカーだけではなく異業種でも学習されてゆきます。B2C企業だけではなく、B2B企業も同じように学習してゆきます。各国現法はFordをお手本に、本社はVWやBMWをお手本にして、各社の広報、広告、マーケティング戦略にソーシャルメディアが取り入れられてゆきます。そして、世界中の消費者、顧客、ビジネスパートナー、サプライヤーを巻き込んだ会話、エンゲージメントが活発化してゆきます。

    唯一、日本の企業を除いて...。

    日本企業も国内では相応にソーシャルメディア対応を行っていますが、海外、あるいはグローバルな展開は非常に遅れています。

    Facebook、Twitter、YouTubeのファン、フォロワー、購読者を集計し、Famecountというランキングを発表しているサイトがあります。
    Source:Famecount

    Facebook、Twitter、YouTubeというソーシャルメディアスペースの中心に、海外向け、あるいはグローバルな公式ページ、アカウントを持っている日本企業は数えるばかりです。とてもFacebookだけで1,200万人以上のファンをもっているStarbucks、Twitterに150万人以上のフォロワーがいるJetBlue、Dellとは比べられません。

    しかし、Red Bullが3位、Zaraが15位、H&Mが20位、Lacoste、PUMA、BlackBerry、Adidas、Louis Vuitton、Nokiaなど世界の錚々たるブランドがちゃんと顔を出しています。こういった現状では、日本の企業・ブランドはソーシャルメディアスペースに存在していないに等しく、それでなくとも大きい欧米各社との露出ギャップは大きくなるばかりです。

    幸いなことに今のところ、VWやBMW本社のようにFacebookをグローバルブランディングに活用しようとしている企業は限られています。しかし、Best Practiceは様々な場所、スペースでオープンに共有されるものですから、あなたの企業の競合メーカーがいつ、VWやBMW本社のようにソーシャルメディアを活用したマーケティング戦略を開始してもおかしくありません。

    あなたの競合メーカーがソーシャルメディアを活用したグローバルなマーケティング戦略を開始した時、あなたの企業はそれに対応することができますか?すでに対応するための組織、予算、戦略を準備されていますか?

    上述のSamsung.com/us/は、昨年末にヘッドハンドした人間をソーシャルメディアマネージャとし、今年1月のCESにおけるプレスコンファレンスをTwitterで同時中継したことから始まり、WebやEmailニュースレター、Facebook、YouTube、Twitterなど各種タッチポイントのソーシャル化を推進しています。彼は、今年、6月のCorporate Social Media Summitに講師として招かれプレゼンしていますし、7月には韓国Samsung本社においてCEOおよび100人以上の上層部に次のコミュニケーションプラットフォームのプレゼンをしています。これほど大きな動きをあなたの企業は同じように遂行することができますか?

    あるいは、社内にこういった世界の動きをウォッチし、警鐘を鳴らしている組織、担当者はいますか?

    もし、社内で準備がされておらず、世界の動きをウォッチすることもなく、社内に警鐘が鳴り響いていないのであれば、世界に誇る日本ブランドの価値、評価はとてつもない危機に直面していると言えます。
さて、インターネット、パラダイムシフト、ソーシャルメディア、そして、日本ブランドの危機を説明してきましたが、おさらいの意味でもここでお聞きしたいことがあります。

それは、
  • 世界中の消費者がインターネット、パラダイムシフト、ソーシャルメディア、そして英語と言う共通語でひとつにつながっているということは全くないと考えますか?

  • 広報、広告、マーケティング部といった既存の組織が、ソーシャルメディアによりエンパワーされ、情報・コンテンツの制作・発信力を増し、共有・拡散力も以前とは比べ物にならないほどパワーを持つようになった消費者に対応できると考えますか?

  • 海外のことは海外の子会社、販社に任せておけばよく、各国のアーリーアダプター、インフルエンサーが翻訳し、国内に露出・共有する英語の情報・コンテンツなど気にする必要はないと考えますか?

  • 競合メーカーが各国市場やグローバルブランディングにおいてソーシャル化を進める中、今まで通りの広報、広告、マーケティング戦略を踏襲していても、企業価値、評価、消費者の信頼などは下落しないと考えますか?

  • WSJ、 NYT、WPなど一流マスメディアに広告を出稿し、PR WireやBusinessWireからプレスリリースを流し、CNNやSky、EurosportにCFを出し、Googleに検索広告、Yahooに ディスプレイ広告を出すことから、ソーシャル化、顧客の信頼獲得へと比重を移しているFordの戦略に全く危機感を感じませんか?

  • 物やサービスを売るというマーケティングが、消費者あるいは顧客やユーザとの会話を醸成し、点から面へ広げてゆくマーケティングへ移行しているとは考えませんか?
ということです。

日本航空の破たん原因を調べているコンプライアンス調査委員会が管財人に報告する内容には、組織の肥大化と経営者の 経営判断や全社的な危機意識の欠落が含 まれています。具体的には、営業や経営企画、運航本部といった組織が「縦割り」で横のつながりが乏しく、現場と上層部との間で風通しがわるくなっていたと 指摘しています。その結果、経営者が経営破綻に陥るような重大な事態に気づくのが遅れたとしています。

Source:Asahi.com / 日航破綻「歴代経営者の不作為が要因」

企業規模が大きくなればなるほど「親方日の丸」に近い意識が存在する可能性が高くなり、また、企業規模に慢心したグローバルな「危機意識の欠落」も存在可能性が高くなり、「ガラケー」といったひとつの製品だけではなく、企業全体が日本ローカルなガラパゴスブランドに陥ってしまう危険性が一層、高くなると恐れています。

この危険性を少しでも低くするためには、また、上の6点において少しでも不安や心配の種がおありなら、既存広報、広告、マーケティング戦略を見直し、新しいパラダイムを前提とした戦略への転換を強くお勧めします。


長文になりましたが、是非、厳しい現状を認識いただき、最善、最適な戦略を打ち出されることを願ってやみません。

笠井孝誌
株式会社パワーレップ


追記:Scribdにpdfをアップしました。
Source:Scribd / Dramroll - Open Letter to CEOs in Japan

2010/08/04

Internet Update June 30 2010

InternetWorldStatsから最新情報がアップデートされた。

それによると2010年6月30日時点で、世界人口は68.5億人、インターネットユーザは19.6億人。普及率28.7%だ。

半年で約1億人世界人口が増加し、インターネットユーザは約1.6億人も増加している。5年後の2015年ごろには73億人、22億人、普及率30%を予想していたが、このままのペースなら78億人とか、35億人、45%といったステージへ舞い上がってしまいそうだ。

参考:Internet Users in Dec 2009 (Online Ad 2010/04/07)
そして、インターネットで利用されている言語だが、英語が5.4億人、中国語が4.4億人、西語が1.5億人となっている。
Source:InternetWorldStats.com

トップ10に入っている言語ユーザのうち、少なくとも日本ユーザを除いた各国のユーザは英語ぐらい朝飯前のユーザばかりだろう。そんな中でもデジタルネイティブ、アーリーアダプター、インフルエンサーといったユーザ達は最新情報を求めて世界中を駆け巡っている。

それは米国、英語サイトということになる。例えばiPad、iOS4、Twitter、YouTube、FacebookといったIT系、ソーシャル系に関連する情報、ニュースを、ドメスティックな同様情報、ニュースソースが上回る注目を集めることはあまりない。世界中のユーザが注目しているのはグローバルな価値を持った情報、コンテンツなのだから。

最新ニュースの速報に命をかけているような彼らが、国内メディアの報道に先んじて米国、英語情報を国内向けに発信してくれるから、ドメスティックなユーザでもRSSを受信、Twitterでフォローしておけば最新ニュースに困ることはない。国内サイトだけしかアクセスしていなくても、世界中のニュースや情報に触れることができるのはマスメディアも同じだ。しかし、鮮度、個人的な親近感、信頼度、そして双方向性やRTを使った再発信力からすると、彼らとソーシャルメディアスペースでつながっているほうが自分のスペースで利用できるから、ベターだし、使いやすい。

こういったパターンで各国の国内ユーザは、各国のデジタルネイティブ、アーリーアダプター、インフルエンサーを経由して、米国、英語サイトの情報、コンテンツを入手でき、消費し、他のユーザと共有することができる。だから世界中のインターネットユーザは、「ひとつにつながっている」ことになる。

「ひとつにつながっている」世界のユーザ、消費者に米国販社、欧州子会社からブランド情報、コンテンツを発信し、消費、会話、共有してもらうのか、それとも日本本社がやるのか。あなたはどちらだと思いますか?

2010/07/13

Digital Influencer Index 2010

インターネット人口の48%を占める世界の7カ国、米、英、独、仏、加、中、日を対象として、メディアの影響力を調査した、Fleishman-Hillardの「Digital Influencer Index 2010」が出ている。

2008年に紹介したDigital Influence Index Studyの拡張版ということになる。

参考:Digital Influence Index Study (Online Ad 2008/07/02)

9個ポイントが挙げられているが、その中からいくつか紹介する。

まず、「グローバルに見てデジタルメディアの消費者への影響力が高いにも関わらず、投下されるマーケティング予算は見合っていない」という最初のポイントがある。

7カ国のメディア消費時間(週)において、中国と仏を除く5カ国でトップはTVだ。インターネット利用はわずかな差で2位につけている。しかし、emailもそこそこの時間を消費しているので、これを合計するとトップになる。しかし、マーケティング予算は...、ということになる。まったく、メディア消費時間から考えると、レガシーメディアへとんでもない予算が投下されていることになる。

そして、中国のメディア消費時間シェアはもっととんでもないことになっている。インターネットがダントツで、TVは携帯と同等の時間しか消費されていない。TVの時間枠を売るエージェンシーは、これをどうやって説明するんでしょうか?
そして、メディア消費時間に重要度を加味したメディアインデックスを見ると、もう、TVの出る幕はない。メディアインデックスで言うと、中国のTVはインターネットの四分の一、日・英を除く4カ国は二分の一、日・英は六割といったところだ。
2番目に、「中国のインターネットユーザは先進的なアーリーアダプターで、増加する余地がある」という点だ。

以下の5つの行動インデックスのトップに来るのは中国だ。上位3カ国を比べると中国が突出しているのがよくわかる。
  • 調査・検索       中国85%、日本77%、仏64%  
  • コミュニケーション   中国85%、仏51%、加・日50%  
  • Eコマース        中国51%、日本40%、独24% 
  • 発信           中国77%、日本33%、加20% 
  • モバイル         中国73%、日本49%、英25% 
ここまでインターネット化、モバイル化が進んでいる中国は、まだこれからの国だ。これからもガンガンと大幅に伸びる余地が有り余っている国だ。そんな国においてレガシーマスメディア広報、広告、マーケティングをやっているとしたら...?

3番目に「調査・検索、購買、そしてピアの影響によりデジタルメディアは決断のコアを成す」があり、7番目に「ユーザの声を聞き、リアルタイムで対応する企業をTwitterユーザは信頼する」がある。

Twitterをモニタリングしている企業・ブランドに対して、「自分が抱える問題に耳を傾け、対応してくれれば嬉しい」と考えるTwitterユーザはどこの国でも同じだ。特に中国でその比率は94%(重複回答)だ。ただし、それ以外の国では、「プライバシーがらみで心配」、あるいは「見せかけだけ」だという比率が高くなる。
そして、Twitterをやっている企業・ブランドを信頼するかどうかと聞かれた場合も、中国がダントツで信頼している。日本も中国に続いているが、他5カ国とは色合いが大きく違う。欧米各国では「企業・ブランドを信頼するかどうかには関係ない」と回答するケースが多い。それはそうだろう。アカウントを開設しただけで信頼が勝ち取れるわけではない。Twitterするコンテンツ、コンテキストが問題になるのは当たり前だ。が、中国や日本ではすこし違うようだ。
Source:Fleishman-Hillard / Digital Influencer Index 2010 (pdf)

Twitterアカウントを持っているだけでは意味がなく、きちんと企業・ブランドに関連するバズをモニタリングし、リアルタイムに対応してくれることが必要だろう。そして、Twitterでつぶやく内容が問題だ。ポリシーやガイドラインを決める前に、何をつぶやくかを決める必要がある。

そんなことは決まっている。各種プレスリリースのタイトルや、新しくYouTubeにアップしたビデオ、開催イベントやプレスリリースまでに行かない速報をつぶやけば良いと考えているとすれば、信頼を勝ち取ることも、Twitterというデジタルメディアを活用することにもならない。ユーザにとって意味のない、泡を吐き出しているだけだ。フォロワー数やRT数が増えたところで全く意味のない数字を額装することになる。

そして、Samsungのように日本語を英語に訳してまでモニタリングしている企業からすれば当然だろうが、モニタリングの「モ」も検討していないとするとTwitterアカウント開設の価値は半減以下に落ちることになる。

参考:Samsung's monitoring deeper (Online Ad 2010/07/05)

2010/05/12

US Twitter Detailed Stats

Edison ResearchとArbitronが、「Twitter Usage In America」というレポートを出している。

主だったところを抜き出してみる。
まず、Twitterの認知;
Twitter利用者;
Twitter利用頻度;
TwitterとFacebookの認知度比較;
Twitterユーザの年代、性別;
Twitterユーザのインデックス;
Twitterユーザの携帯からのSNSアクセス;
TwitterユーザのSNS利用;
Twitterユーザにとってのインターネット;
Source:PR Sarah Evans / Twitter Usage In America: 2010

他にもいろいろと参考になるデータがある。

さて、日本の消防庁も今月中旬をメドに「ツイッター」を活用して災害情報の発信を始めるそうだ。

Source:Yahoo News / 消防庁、ツイッターで災害情報発信へ

ただし、
フォロワーの「つぶやき」(書き込み)に対する返信は原則行わない。平常時は同庁の発表資料などを発信する。
そうだ。

なんともはや!!!!!!!!!??????????

以前、Police 2.0で受け持ち地区を巡回しながら、Twitterし始めたノース・ヨークシャー警察のEd Rogerson巡査を紹介した。あれから5カ月以上たって彼のフォロワーは1,086人に増え、例えば「子供用の靴、サイズ5と9はありませんか?」と訊いて、すぐに「靴をゲットしました。ありがとう」とTweetを返せるまでに住民、ユーザとエンゲージしている。

参考:Police 2.0 (Online Ad 2009/11/26)
Source:Twitter / hotelalpha9

彼はエンゲージしているからこそ、Tweetから価値を提供できている。しかし、エンゲージしない目的でTwitterを始めようと言う消防庁、いや、原口総務大臣は一体、何を考えているのだろう?情報の出し手は消防庁や総務省だけで、ユーザはそこから発信される情報・コンテンツをただ与えられた通りに消費するだけのブタだとでも思っているのだろうか?

鳩山首相のTwitterには57万人以上のフォロワーがいるが、彼が発する情報・コンテンツが57万人に伝わっていると思う人は何人いるだろう?

Source:Twitter / hatoyamayukio
参考:Twitter: hatoyamayukio (Online Ad 2010/01/05)

Twitterを使うには特にマインドセットの切り替えが必要だ。Tweet、フォロー、RTすること、そしてフォロワーとのエンゲージメントを考えずに始めるくらいなら、あるいは自己満足ならやめた方がいい。「私作る人、僕食べる人」といったCMが昔あったが、今は、「僕聞く人」、そして、「僕君と話す人」といったマインドが必要だ。

2010/04/01

Leadership of Ford and Toyota in Social Media

実は3月17日のお昼頃、あるBlogに以下のようなコメントを書いた。
今年78歳になるBill Marriottは、2007年1月に初めてBlogを始める際、
「I know this is where the action is if you want to talk to your customers directly -- and hear back from them.」と書いています。http://www.blogs.marriott.com/marriott-on-the-move/2007/01/uncharted-territory.html
日本語だけではなく世界に向けて英語で発信されるのがベストではないでしょうか?
コメントを保存していないので正確には覚えていないが、多分、こんな内容だったと思う。

ここで引用したのは、Marriott Internationalの会長兼CEOであるBill Marriottだ。

参考:Marriott's CEO Blog Launched (Online Ad 2007/01/19)

そして、上のコメントを書き込んだのは、「モリゾウ」というスクリーン名でBlogが立っているトヨタの社長、豊田章男氏のBlogだ。
Source:Gazoo / ドライバーモリゾウ

ところが3月31日になっても、筆者のコメントはBlogのコメント欄に表示されていない。

今回のリコールに大きく影響を受ける欧米ユーザに社長として直接、対話を開始する必要性をコメントしたつもりだった。欧米に比べればその影響が非常に少ない日本ユーザに語るよりも、欧米をはじめとする世界のトヨタ車オーナーに語ること、対話のチャネルを開くこと、そして、フィードバックをオープン、対等、双方向に受けることが必要だと確信するからこそ、コメントしたわけだ。

しかし、一般的な公序良俗に著しく反しているとも、Gazooの利用規約、コミュニティ・ガイドラインに抵触しているとも思われないコメントを無視し、表示していない。(もし、抵触しているのなら、そう判断した理由をお聞きしたい)

これでは今まで同様に一方通行のコミュニケーションでしかない。送り手と受け手の対極しか存在していない。常時、送り手と受け手がその立場を替え、相手の立場を理解、尊重した上で対等なカンバセーションを行うチャネルではない。

一方、Fordの社長兼CEOのAlan Mulallyは、Washington Postの「On Leadership」で次のように語っている。紹介したいのは2つある。


Source:Washington Post / On Leadership : Ford CEO Alan Mulally on the "liberating clarity" of his mission

まず、ひとつめ。
我々は仕えるために存在しているといつも考えている。業界のリーダーとして選ばれる栄誉を与えられているが、実際のところ我々は顧客に仕えているし、従業員にも仕えているわけだ。もっと召使的な観点を持つか、あるいは召使的な体制を取れば、もっと(Fordを顧客に)取り込んでもらうことができる。また、他の人間のアイディアに対して尊敬の気持ちを持てば、他人に理解してもらおうとする前に他人を理解することができる。そして、人々のパワー、力がひとつになってゆく。ここがいつも私を驚かせている。
そして、もうひとつ。
我々はどこへ行くのか、どうやってそこへいくのか、そして我々一人一人に何が求められているのかを我々自身が理解すればするほど、進展は早まる。こういったコミュニケーションを私(Alan Mulally)が部下に指示するのではなく、そういった環境を創造することなのだ。

今何が起こっているかを全ての人間が知れば知るほど、個人のパフォーマンスが増大すると思う。また、それによってチームパフォーマンスも上がってくる。どのようなビジネスに自分がいるのか、対する顧客はどんな人なのか、世界中でベストな競争をするためには何が必要なのかを知れば知るほど、(今までの企業組織、担当といった)桎梏からどれほど解き放たれるかを考えてみてください。これら大きな決断がFordの創造性を解き放ったと考えている。
FordとToyotaは、同じ自動車メーカーだが数えきれない点で違う。単純に同じ地平線に乗せて比較することなどできはしない。しかし、その相違点を納得した上で、今、もっとも大きく、そして重要な違いは、ソーシャルメディアの理解ではないだろうか。

ソーシャルメディアを導入する、ソーシャルメディアスペースに参加するということは、今までの企業そのもの、既存組織、決定伝達フロー、予算執行優先度など様々な決まりを変更し、桎梏から脱するということだ。一方通行のメッセージを大量投下するのではなく、個々のユーザとエンゲージするということだ。彼らとの対話からフィードバックを受け取り、彼らの参加、協力を求めてオープン、対等、双方向のコミュニケーションを成立させるということだ。フォーカスグループなどの特定ユーザグループからのヒアリングではなく、前後左右、上下から降ってくる、湧いてくる硬軟とり混ざり、雑多な意見、フィードバックを受け入れるということだ。

そして、Bill Marriottが言うように、「今、顧客に直接話しかけ、彼らからフィードバックをもらうためには、どこで行動を起こすべきか」を知らなければならないリーダーは、企業・ブランドとしてソーシャルメディアを導入し、ソーシャルメディアスペースに参加するという、企業そのものを変革することになる意思決定、判断を下さなければならない。FordのAlan Mulallyが言う、サーブする視点、相手を理解する視点、ゴールを理解する視点の重要性を説き、そして、それらを新しい企業、組織、フローとして 社内環境、マインドセットを創造することが必要となってくる。なぜなら、企業・ブランドを取り巻く外環境には、「力になりたい」、「手を貸したい」、 「一緒に始めよう」という顧客、ファンが集っているのだから。「What/How can I help you?」というキーワードは、Haitiの例をひくまでもなくソーシャルメディアスペースに満ちているのだから。

ただし、トップ、あるいはトップを支えるチーム、そして企業自体のマインドセットには、相応以上のソーシャルメディア(スペース)に対する理解、把握、実績、そして展望がなければならない。FordのAlan Mulallyを支えるチームの中心には、Scott Montyがいるはずだ。そのScott MontyをOrangeからヘッドハントしてきた目利きの人間がFordにはいるわけだ。Bill Marriottにしても社内の情シス部門から長期間にわたったレクチャーがあった。パソコン音痴の彼の理解を広げ、(最年長?)CEO Blogを始めさせたプロがいたわけだ。

ひょっとするとここが最も大きな肝かもしれない。特に、今まで企業・ブランドとして経験したことのないスペースを導入、参加するに際して、BlogやForum、SNS、Twitter、YouTubeなどを経験したことのない人々や、既存組織から予算、担当テリトリ、意思決定フローなどがシフトすると危惧する人々から、吐き出されるネガティブセンチメントに対抗し、新しいマインドセットを伝道してゆくにはリーダーだけでは無理だ。リーダーを支える強力なリソースが是非とも必要になる。

2009/09/30

Ford Social Media Strategy

つい先日、「Ford: Online Monitoring」で、Twitterを使い、八面六臂の大活躍をしたFordのGlobal Digital and Multimedia Communications Manager、Scott Montyを紹介したばかりだが、その彼が、9月21日に開催されたOMMAの基調講演で発表したFordのソーシャルメディア戦略という資料がある。

参考:Ford: Online Monitoring (Online Ad 2009/09/17)

Source:SlideShare / Zero to 60: Social Media Strategy via Ford
Source:ViralBlog / Ford's Social Media Strategy - OMMA Keynote

詳細はスライドを見ていただくとして、中ごろに以下のスライドがある。
Strategy: to humanize the company by connecting consumers with Ford employees and with each other when possible, providing value in the process.
顔の見える企業・ブランドへ変革するという今、一番、重要で必要な認識と戦術だろう。

そして、FacebookにあるFordのエコ・グリーンキャンペーン用アプリも紹介されている。アクセスしたユーザ一人ひとりが自分にできるエコ・グリーン対策を書き込み、それを他のユーザが評価することができる。すでに24,000人以上が書き込んでいる。そして、それはユーザのプロファイルに表示することもできるため、彼らの友人コネクションへも広がってゆく、Fordのブランド、キャンペーンと共に。
(クリックでページへ)

昨日、「Social Media Tips from Kodak」を書いたばかりなのだが、Fordのソーシャルメディア戦略からも米国の大手グローバル企業が本格的にソーシャルメディアマーケティングを導入し始めていることが分かる。

参考:Social Media Tips from Kodak (Online Ad 2009/09/29)

上の参考資料でKodakは、ソーシャルメディアに関する3つの誤解、神話を挙げていた。
  • ソーシャルメディアはガキ向けだ
  • 米国では人気になっているが世界ではまだまだだ
  • ソーシャルメディアはビジネスで使えない
と、他国の企業・ブランドが思っている間に、米国グローバル企業・ブランドは後姿が見えないほど先へ行ってしまう。

2009/09/17

Ford: Online Monitoring

先日、アップした「Twitter Report」の「Branding & Awareness」にFordを取上げた。

参考:Twitter Report (Online Ad 2009/09/11)

そのFordのケーススタディを詳しく見てみたい。
















まず、2008年12月9日、18:10、Ford RangerのファンサイトであるThe Ranger Stationから火の手が上がった。














その種火は、Fordの法務部門からサイトへ送られた「警告状」だ。これはサイトオーナー、Jim Oakesに対してWebを閉鎖、URLを返上し、5,000㌦を支払えというものだ。何が何だか分からないJimは、サイトのユーザフォーラムでうっぷんをぶちまけたところ、その後の22時間で916回のレスポンスを受けた。この火種はWeb、Blog、フォーラム、SNS、Twitterと様々なチャネルを通して延焼していった。

12月10日、5:30、Fordのグローバルデジタル・マルチメディアコミュニケーションマネージャ、Scott Montyは通常通り、Twitterをチェックしたところ、ひとつのTweetが1:30から待っていた。
上は、Jim OakesのオリジナルエントリをアップしているFordの別ファンサイト、FocalJetへリンクされている。別にScottには別のファンサイト、Mustang Evolutionにある類似エントリを知らせるDMもあった。野火がファンサイトからファンサイトへ飛び火、延焼していた。FordのカスタマーサポートセンターにはJimのオリジナルエントリを出火場所とする1,000通以上の苦情emailが殺到していた。

Scottは午前中一杯、内外の状況把握に努めていた。そのステータスをTwitterで発信している。
そして、彼は、ある程度、状況が把握できた時点で下のTweetを行っている。これが最初の消火活動となっている。それは「fordファンサイトに関する法的手段に関して関心を寄せる方へ:現在、法務と問題解決の交渉中」というメッセージもそうだが、画期的なポイントは、「RT乞う」というメッセージだ。
その時点でScottのフォロワーは5,600人。そのうち19人が彼の要請に応えてRTした。その19人が抱えていたフォロワーは13,400人。

その後も、Scottは法務からのフィードバックを供給し続けている。曰く、「法務からは全く別の話が分かってきた」、「サイトオーナーからチャンと返事がもらえていなかった。これにはもっと深い問題がある」「サイトで偽物が売られていたことが分かった。URLに関しては調査中」
ScottはTweetの間に社内の法務とコンタクトして、「サイトでFordのロゴを付けた偽物が売られていたという警告状送付の理由、URL返上・サイト閉鎖や5,000㌦要求は法的手段に訴えるという脅し」だったことを確認している。

ようやくここまで原因調査や火災消火の方法、今後の対処などが決まると、ScottはJime Oakesに直接、電話している。これまでの状況を説明し、これからの対処を説明し、Jim側の話も聴取している。双方が対処方法に納得したのち、ScottはTweetしている。
その後もTweetを続け、Scottが鎮火を宣言したのは翌日の2:29だった。Ranger Stationでの発火から鎮火まで、22時間26分かかったことになる。

Source:RonAmok / Ford, Fansites, and Firefighting
Source:RonAmok / The Ranger Station Fire: How Ford Motor Company Used Social Media to Extinguish a PR Fire in Less Than 24 Hours.

Ron Amokは、
  1. Everything is Public
  2. Company don't talk: People do
  3. Without Support: New Media Fails
を挙げてまとめとしている。

Ron Amokは、上の3点を挙げ、下の7点を比較してROIを出せとしている。
  1. Scott Montyはこの問題解決にあたり19時間を費やした
  2. 彼は問題の原因調査を主導した
  3. 彼は複数のミーティングを開催した
  4. 彼は複数の電話をかけた(サイトオーナーJim Oakesへも)
  5. 彼は138回、今回の問題に関してTwitterにメッセージをアップした
  6. 彼はフォロワーに助けを請い、フォロワーは合計32,332人へメッセージを転送した
  7. 彼は今回の問題を24時間以内に完全鎮火、解決した
これらにかかったコストと、今回の問題が解決されず放置され、オンライン史上最大の大火となり、販売台数減少、ブランドイメージ・価値・評価が地に落ち、マスメディアを駆使した販売・イメージ回復キャンペーンに費やした総コストを比較した場合、そのROIはどうなるのかと。

彼の3点に
  1. ソーシャルメディアスペースにおけるリスク管理
  2. オンラインモニタリングの重要性
  3. RT (ReTweet)効果
  4. ソーシャルメディアマーケティングの人員・組織・予算化の必要性
を付け加えたい。

特に、リスク管理にソーシャルメディアを取り込んでいる米企業もまだ13%でしかない。ハドソン川の奇跡を伝えたTwitterが、企業に牙をむくのは今日かもしれない。
Source:Source:Russell Herder / EMBRACING THE OPPORTUNITIES,
AVERTING THE RISKS