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2011/08/03

Toyota rejects communications with users on Facebook

トヨタ本社が、今年の4月下旬からFacebookにページをオープンしている。7月30日にはファン数が30,000人を越えているから順調な滑り出しと言っていいのかもしれない。
ところが、画面左に見慣れない「コミュニティ・ガイドライン」というセクションがある。
そこへ行ってみると、
トヨタ自動車株式会社が運営するFacebookページへお越しいただきありがとうございます。本ページは、ユーザーのみなさまに当社の最新情報をお届けするとともに、ユーザーのみなさまと当社がつながる場所です。
とある。
ユーザーのみなさまとより良いコミュニケーションを実現するため、本ページでは下記のコミュニティ・ガイドラインを定めています。本ページのご利用にあたっては、本ガイドラインの内容に同意の上ご利用ください。
と続き、【運営】、【注意事項】、【禁止事項】、【準拠法・裁判管轄】といった項目をあげて説明している。

このような「コミュニティ・ガイドライン」を備えているFacebookページを見たことがない。「ユーザーのみなさまとつながる場所」なのだが、「準拠法・裁判管轄」といった文言で予防線を張る恐れがある場所なのだろうか。

昨年、NestleのFacebookページが炎上している。それは、米国Greenpeaceが3月17日にNestleがパーム油を仕入れているSinarmasが進める熱帯雨林の伐採によりオランウータンが絶滅の危機に直面しているというリリースやPDFレポート、その後のビデオキャンペーンやNestle本社での実力行使が火種になっている。
詳しいことは、下のタイムラインを参照していただくとして、とに角、Kit Katを捩った「Killer」というプロファイル画像をつけた書込みがFacebookページを占拠して炎上した。
Source:TechGuerillaTalk / Nestle / Facebook / Greenpeace Timeline (in process)

しかし、その後、NestleのFacebookページが閉鎖されたかというと、ページは閉鎖も、削除もされていないし、Nestleページの「Like」をクリックしたユーザからのプロ・コンの書込みもあり、Nestleの書込みに対して同じようにプロ・コンのコメントがある。 ある意味で、活発な会話が行われている。

また、昨年の炎上に懲りて、「コミュニティ・ガイドライン」を設けているかと言うとそんなものはない。
なぜ、NestleはFacebookページを閉鎖して、炎上を消火・鎮火しなかったのだろう?
なぜ、まだFacebookページを維持、運営を続けているのだろう?

それにはいくつか考えられる。
  1. もはやソーシャルメディア、Facebook抜きに一般消費者とオープン、対等、双方向コミュニケーションを行うことはできない
  2. いままでの一方的、一方通行のコミュニケーションでは一般消費者に届かない
  3. 企業に都合のいいスペースで何を発信しても、誰も、何も、消費も共有もしてくれない

    そして、

  4. 一般消費者を信頼しなければ、企業・ブランド側も信頼されない
ということを理解しているからだ。

特に、4番目を肝に銘じているからだ。

だから、「羹に懲りてなますを吹く」のではなく、「ユーザを信頼」して、Facebookページを運営しているのだ。


さて、米国ToyotaのFacebookページはどうかというと、当然のことながら、「コミュニティ・ガイドライン」といったセクションはない。
Infoには、以下が挙げられている。
Toyota is as committed to quality as it is to its customers. We value your opinions and wouldn't be here without your support.

Please join our community and continue the dialogue. We look forward to getting to know you better.
「トヨタ(アメリカ)は品質向上にまい進するのと同様に顧客対応に取り組んでいます。我々はカスタマーの意見を尊重し、あなた方カスタマーのサポートなしに我々は存在し得ません」

「私たちのコミュニティに参加し、対話を続けてください。我々はあなた方、顧客をより良く知ることを楽しみにしています」
と書いている。

本社と米国トヨタの違いは何かと言うと、顧客を信頼しているかどうかだ。米国トヨタは顧客を信頼している。

炎上騒ぎを起こしかねない不逞の輩や訳の分からない魑魅魍魎が跋扈しているソーシャルメディアスペース、Facebookにページを持つ上で、最低限の予防線を張る本社と、ソーシャルメディアを新しいコミュニケーション、オープンで対等、双方向のコミュニケーションチャネルとして理解し、そこでの会話者を信頼する米国トヨタの違いだ。

変な例えだが、「両手を差し伸べてつながりましょう」と声をかけるべきところで、「相手が信頼できないために利き手に匕首を握り、左手を伸ばしてつながろうとはしているが、重心を前足にかけていつでも後ろへ下がれる」状態に見える。それが【運営】、【注意事項】、【禁止事項】、【準拠法・裁判管轄】といった項目に表れているように思える。


さて、もうひとつある。

7月にトヨタのFacebookページにはトヨタから43本のポストがあり、2,476回のLikeがクリックされ、ファンからのコメントは196本あり、トヨタからのリプライは3回あった。

同時期に米FordのFacebookページにはFordから72本のポストがあり、23,339回のLikeがクリックされ、ファンからのコメントは6,436本あり、Fordからのリプライは14回あった。

当然、運用を開始してから3カ月ちょっとのトヨタと、5~6年は経っているはずのFordではまず、ファン数が違う。3万人強のトヨタに対して、Fordは約78万人だ。

この大きな差からすると、トヨタとFordのポスト、Like、コメント、リプライ数などは無視していい違いのように感じる方がおられるかもしれない。

しかし、実は、もっと大きな差がトヨタとFordのFacebookページにはある。それは、トヨタのファンになったユーザが独自にWallに書き込めない点だ。

トヨタのポストに対して、Likeやコメントはできるが、ファンになったユーザが自分の好き勝手なことをWallに書き込めない。これもあまり見たことはない。
当然、普通であれば下のFordのように、ファンになったユーザがページへ行けば、post、画像、リンク、ビデオもアップすることができる。
しかし、トヨタのページはそうはなっていない。

先ほどのトヨタやFordの7月の統計に入れていないものがある。それは、ファンになったユーザが独自に書き込んだPostやコメント、Likeだし、それに対するリプライだ。

トヨタはファンが書き込めないので「0」だ。Fordの場合、ファンのPost数は1,637件。そのPostに対して2,975回のLike、2,380件のコメント、101件のリプライがアップされている。

これが「本当の意味での会話とユーザとのつながり」 だ。当然、苦情・クレーマー的なPostも40件ある。それら全てをカバーする当然な「会話とユーザとのつながり」が行われている。
この数字を見れば、如何にFordのファンが、オリジナルコンテンツを書込み、それに対してファンが反応し、苦情・トラブル・クレームなどにはFordが対応していることが分かる。

Fordとそのファンの本当の意味でのコミュニティになっている。

一方、トヨタのほうは、先ほどの、【運営】、【注意事項】、【禁止事項】、【準拠法・裁判管轄】に同列につながっているものが、Wallへの書込み禁止なのだ。

どうしても炎上させたくないようだ。

しかし、Faebookは、メーカーとユーザがつながる場所でもあるが、ユーザ同士がつながる場所でもある。そのユーザ同士がつながる場所をメーカーが独占している。ユーザ同士のコミュニケーションを排除している。

残念なことに、触媒として存在し、機能すべきメーカーが、そうではなく、つながりや会話を独占しようとしている。それ以外を拒絶している。

個々のユーザは社会人であり、学生であり、主婦、OLさんであり、ビジネス生活、家庭生活の両方を送っている。個人になればBlogを書き、Twitterを使い、YouTubeにビデオを上げるし、UstやSkypeを使って遠く離れた家族、友人・知人とリアルタイムでコミュニケーションをとっている。

そのコミュニケーションパワーを持つユーザに手かせ足かせ口かせをはめて、ブランドに関連するオリジナルコンテンツの発信と共有を妨げていることに気づかなければならない。ブランドに対する愛着と言ってもいいほどの高い評価、その評価を基に発信されるコンテンツをドブに捨てていることに気づかなければならない。

「Mostly Negative」は9%もいるのだが、「Mostly Positive」は62%もいる。この62%のユーザの貴重な声を台無しにしたり、見殺しにしてしまうことになる。
Source:Keller Fay Group LLC / Single-Source WOM Measurement (pdf)

先ほどのFordの例では、苦情屋・クレーマーが何度も同じことを蒸し返している。Fordのカスタマーサービスがそのたびにリプライを返しているが、何人ものレギュラーユーザ、ロイヤルユーザが自分の立場や理解、コモンセンスを基にコメントしている。彼らを理解しようとしている。メーカー以上に、彼らが愛するブランドを守ろうとしている。

Facebookに限らず、コミュニティとはそういうものだ。そのコミュニティにロイヤルユーザに集ってもらい、あるいはそのコミュニティでロイヤルユーザに育ってもらうためには何が必要だろう?

今の対応がベストなのだろうか?


ああ、そうそう。

トヨタはFacebookだけではなく、Twitter、Ustream、YouTubeにも参加している。例えば、Twitterアカウントを見ると下のようになっている。
そう、もうお分かりだろうが誰もフォローしていないのだ。

以前、ダライラマ14世のTwitterアカウントを見たときと同じ衝撃を受けた。チベット仏教の最高指導者であったとしても他の人間の声を聞く必要はあるだろうと思っていただけに驚いたことを覚えている。

フォローしていないから誰の声も聞いていないとは考えない。当然、バズモニタリングはしているだろう。しかし、アカウントが誰もフォローしていないということは、アカウント宛てのオープンTweetは送れるが、ユーザが直接、メッセージを交換したり、問合せや苦情を送れないことになる。そして、誰もフォローしていないのでオープンTweetがどんなものなのか誰にも分からない。ユーザからどんな声が発信されているのかを誰にも見せないようにしているとしか思えない。

そして、TweetStatsで見ると、リプライは全Tweet168件中の1.78%、RTは1.18%。それもホンダとニッサンのアカウントに対してのTweetだ。残りの97%(163件)くらいはトヨタオリジナルのコンテンツをTweetしているだけということだ。アカウント宛てのオープンTweetは沢山来ているだろうが、それにリプライを返してもいないし、モニターやウォッチしているユーザのTweetをRTしていないのだ。
FordのTwitterの場合は、33,887人をフォローしている。
TweetStatsで見ると、リプライが60.94%、RTが10.05%もある。沢山のユーザからのTweetにリプライを送り、価値があると認めた他ユーザのTweetをRTしている。会話のネタをフォロワーに発信している。そして、残りの30%弱でFordがニュース・情報・コンテンツを発信しているということになる。
GMだって、BMWだって、VWだって、Kiaだって何千人、何万人もフォローしている。しかし、トヨタは誰もフォローしていない。ただの1人もフォローしていない。

一般ユーザにリプライも、彼らのTweetをRTもしていない。

ここの何処にユーザに対する信頼があるのだろう?

この対応からユーザの声を真摯に聞くというメーカーの姿勢が感じられるだろか?

そして、これが日本が誇る大企業、世界的なグローバル企業がFacebookやTwitterという一般消費者とオープン、対等、双方向のコミュニケーションを行うスペースを使ってやるコミュニケーションだろうか?

トヨタ内部でも相当の議論があったとは思う。しかし、もはや「ブランドがブランドコンテンツをコントロールできる時代は過ぎ、消費者・ユーザがコントロールしている」ことを理解しない限り、つぎはぎだらけの対応を行っていても、本当の会話もエンゲージメントも存在しえないし、苦情やユーザのちょっとした提案や思い付きなどから製品やサービスの改善・改良、開発のフィードバックを獲得することもできない。

炎上が怖いからソーシャルメディアを使わなければいいという時代は過ぎた。

Nestleのように炎上しても、何があってもFacebookやTwitterを使い続けなければならない時代なのだ。

消費者・顧客・ユーザを信頼し、価値のあるコンテンツを提供することで企業・ブランドを信頼してもらわなければならない時代なのだ。

そして、とにもかくにも、消費者・顧客・ユーザの声を聞かなければならない時代だし、その姿勢を見せる必要のある時代なのだ。

その時代に、現在のFacebookやTwitterの対応は不十分過ぎると言わざるを得ない。

一体、何のためにFacebookやTwitterを始めたのだろう?
本当にユーザ、消費者とつながるためなのか?
それとも今までのマーケティングコミュニケーションをソーシャル化するだけで、つながる意思はなかったのか?
ユーザ、消費者の声を聞くつもりはないのだろうか?

Ciscoのソーシャルメディアマーケティング部のシニアマネージャ、LaSandra Brillが今年2月、ソーシャルメディアサミットで公開した資料の中に下図がある。
最初のスライドに6点があげられている。曰く、
  1. 双方向コミュニケーション(一方的な一方通行ではなく)
  2. コミュニティ構築(Webサイトではなく)
  3. オーガニック(広告による強制誘導ではなく)
  4. 統合(邪魔するのではなく)
  5. 関係構築(イベント開催ではなく)
  6. 会話に参加(自社ドメインだけではなく)
Ciscoにした処で最初はてんやわんやだった。2005年2月に外向けBlogを開始、2007年のNexusローンチに初めてBlogマーケティングを活用し、2008年Q1のASR1000リリースは3ヶ月間という短期間でソーシャルメディア統合プランを計画実施している。それら経験を踏まえてASR9000リリースが本格的なソーシャルメディア統合プランとして実施されている。その後も各種経験を積み重ね、今では、各種サミット、セミナーなどでその成功しているソーシャルメディア戦略を説明してくれと引っ張りだこになっている。

そのCiscoがまとめているソーシャルメディアのグランドデザインが上図だ。

FacebookやTwitterといったツールの話ではないのだ。

それまでのマインドセットを切換えて、どうやって顧客ユーザに近づけるか、どうしたらオープン、対等な双方向コミュニケーションができるか、どうすれば製品・サービスの価値を伝えられるのか、それこそ昼夜を惜しんで絞り出した結論が下図だ。
Source:How Cisco Operationalizes Social Media for Repeated Success

戦略の中心に来るものが「Listening Focus」になっていると説明するしかない。


ちょうど一年ほど前に、「Open Letter to CEOs in Japan」を書いた。

参考:Open Letter to CEOs in Japan (Online Ad 2010/8/17)

あれは、日本ブランドがガラパゴスブランドに陥る危険性を示し、パラダイムシフトを前提とした新しいグローバル戦略への転換の必要性をCEO達に伝えた(つもりの)資料だった。

当時から不十分な資料に付け加えるべきは、Ciscoのようにトライ&エラーを蓄積した上でインフラを整備し、今日の輝かしいステージを迎えたケーススタディだった。

その上で、マインドセットを切り替えなければ...、と書くべきだった。


最後にひとつだけお願いしたいことがある。

それは、もし「コミュニティ・ガイドライン」の翻訳記事が、NYTだとか、GuardianやTechCrunch、Mashable、BusinessInsider、HuffingtonPostといったメディアに掲載された場合、その内容と、それが示唆するものを世界中のインターネットユーザ、すなわち日本を除く世界中の消費者、既存・潜在顧客はどう受け止めるかを考えてほしいということだ。


追記:(2011/9/19)
Blogのトップ右、プレゼン資料リストにアップしているファイルのダウンロード先をSlideShareへ変更。下のリンクURLは変更なし。

追加:(2011/8/4)
PDFをScribdとSlideShareにアップした。
Scribdは、http://www.scribd.com/doc/61570710/Case-Study-Toyota-on-Facebook
からダウンロード可能、また、Blogの右、プレゼン資料リストにもアップしている。
SlideShareは、http://www.slideshare.net/dramroll/case-study-toyota-on-facebook
からダウンロード可能。

2011/07/26

Why People Follow Brands

getsatisfactionというチームが作成したInfographicsがある。

中でもそのトップに来る「ユーザがブランドをフォローする理由」がある。
Facebook/MySpaceでブランドをフォローする理由
  • 32.9% 既存顧客だから
  • 36.9% 割引・安売りが目的
  • 6.2%   友人がファンだから
  • 18.2% 興味を惹く・面白いコンテンツが目的
  • 5%   サービス、サポート、製品ニュースが目的
  • 0.7%  その他
Twitterでブランドをフォローする理由
  • 23.5% 既存顧客だから
  • 43.5% 割引・安売りが目的
  • 6.3%   友人がファンだから
  • 22.7% 興味を惹く・面白いコンテンツが目的
  • 3.5%  サービス、サポート、製品ニュースが目的
  • 0.7%  その他
これを見ると、Facebook/MySpace/Twitterのいずれにしても、ブランドをフォローする理由は「割引・安売り」がトップを占め、「興味を惹く・可笑しいコンテンツ」が続き、合わせて過半数を占めている。

企業・ブランド側とすれば、「既存顧客だから」とか、「友人がファンだから」とか、「サービス、サポート、製品ニュースを目的」とするフォロワーが過半数を占めてほしいわけだ。しかし、そうはならない、なってはいない。

にもかかわらず、多くの企業・ブランド側は、せっせと「サービス、サポート、製品ニュースを」垂れ流し続けている。ユーザが求める「特売情報」や「興味を惹く・面白いコンテンツ」などは一切、発信せずに。

それはそうだろう。企業、ブランドや製品・サービス情報、CSRやIR・業績情報をせっせと垂れ流すことがマインドセットになっていたり、各国現法情報をアグリゲートしたり、引合生成やターゲット訴求を前面に押し出した情報発信をすることで良しとしている。

ここから会話や交流、エンゲージメントは生まれてこないし、客やユーザが求めるものや話していることを聞きもせずに、言いたいこと、聞かせたいこと、共有してもらいたいことを垂れ流している限り、すれ違うニーズとコンテンツのギャップは広まりこそすれ、狭まることはない。

さて、日本本社が「特売情報」を発信するのは難しいだろうが、「興味を惹く・面白しいコンテンツ」はなにも駅構内で数十人のダンス隊を踊らせることではない。ローラースケートをする赤ちゃんでも、ボディペイントしていたり、ラップで非常時の説明をする客室乗務員だけでもない。

マインドセットを切換えて、日本本社がグローバルなオーディエンス向けにコンテンツを創り出す必要があると思うが、いかがだろうか?

Source:DigitalBuzzBlog / Infographic: Why People Follow Brands

2011/02/07

Global Head of Digital Marketing and Social Media

Pete BlackshawAd AgeによるとFMCGジャイアントのNestleが、NielsenとMcKinseyが共同出資しているNM InciteのCMOであるPete Blackshawをデジタルマーケティング+ソーシャルメディアのヘッドとして3月1日から迎えると伝えている。

今後、彼はMarketing & Consumer Communication部門長のTom Buday、そして、Corporate Communications部門長のRudolf Ramsauerの下で活動し、報告するそうだ。

Source:AdAge / Nestle Hires Pete Blackshaw as Global Digital Chief

Nestleと言えば昨年4月に取上げたGreenpeaceのキャンペーンが記憶に新しい。

参考:Greenpeace Campaign Against Nestle (Online Ad 2010/04/19)

株主総会に合わせて、会場周辺での実力行使、Email、Twitter、Facebook、YouTubeなどで行われていたパーム油の使用禁止キャンペーンにより、サプライチェーンの見直し、パーム油円卓会議への参加、果ては会長によるビデオ声明にまで追い込まれたNestleが、1年かけて出した答えがこれだ。

YouTubeにアップされたビデオの削除要請、Facebookのコメント削除警告など、火に油を注ぐ対応しかできなかったNestleが出した答えが、部門新設と彼だ。


それまでNestleに「Digital Marketing & Social Media」といった部門はなかったはずだ。新しい部門を立ち上げて、そのトップに昔PlanetFeedback.comをやっていたBlackshawを据えるわけだ。

既存のMarketing & Consumer Communication、Corporate Communicationsに数多あるであろう下部組織・部門では昨年のブランド危機に対処できないことが証明された。その後、Nestle社内で行われたのは、まず、新しいメディア=オンライン、ソーシャルメディアのパワー、波及力、拡散力の分析であり、1対Nとは真逆に近いP2Pといったコミュニケーションチャネルや信頼・共感・協力を増幅するチャネルの把握、そして既存レガシーメディアのOne Wayに対するTwo wayコミュニケーションとの対比、ソーシャルメディアを構成するP2Pの人間つながりを把握した上で、今後の見通しやあるべき対応・組織・リソースが議論されたことだろう。

その結果、部門新設が決定され、Blackshawが選ばれた。1年という長いようで短い期間にどれだけの時間が費やされたのだろう、マーケティングや広報といった上位部門だけではなく、経営層で。

Nestleは、巨額の広告・マーケティング予算を支出し、どこにもでも顔を出すP&GやUnileverと比べると、あまり姿の見えないブランドだ。だから、まずGreenpeaceがパーム油で最初に標的にしたのもUnileverだった。Unileverは2009年にさっさと問題視されたSinar Masとの取引を中止したため、二の矢に選ばれたNestleが火だるまになってしまった。

この危機意識のなさはマーケティングや広報といった上位部門だけではなく、経営層が火種なのだから。パラダイムシフトを理解、把握するブランドと、していなかったブランドの差は途方もなく深く、広い。また、火傷から学ぶブランドと、学ばないブランドの差はこれからも開いてゆく。担当部署ではなく、経営層の理解が不足し、危機意識のない場合はとくに。

ツール主導で先走りがちな担当部署を抑え、組織的な改革と外部からのリソース注入により風通しのよい横断組織、あるいは組織新設に至るまで、企業の根幹を変えるのは経営層、CEOでしかあり得ない。いくら担当部署を監督する役職者が理解を示していたとしても、CEOの理解、決断がなければ、その企業はこれからのビジネスに脆弱性がついて回る。理解を示す役職者がいても、彼がCEOを動かさなければ企業は何も変わらない。

特に、担当部署が実施するOne Wayコミュニケーションのオンライン化、ソーシャル化を目指すだけの施策を見るにつけてもそう感ぜざるを得ない。例えば、企業広報部、グローバルブランド管理部、広告宣伝部、コーポレートなんとかといった組織そのもの、あるいはその下部組織を、根幹から変革し、担当分野や上下関係を変え、名称もデジタルとか、インタラクティブとか、ソーシャルメディアへと変えるのはCEOしかいないと思うのだが...。

それとも、やはり、他山の石ではなく、Domino Pizza、UA、Nestleのように業績やブランド価値・評価が実際に傷つかない限り、学ばない、学べないものなのだろうか、中でも日本企業と、そのCEOは...?

参考:Open Letter to CEOs in Japan (Online Ad 2010/08/17)

2010/08/05

No Japanese Brands in Famecount

Facebook、Twitter、YouTubeのファン、フォロワー、購読者を集計し、Famecountというランキングを発表しているサイトがある。

トップはどこかと言うとStarbucksだ。Facebookで1,137万人のファン、Twitterで97万人のフォロワー、YouTubeで7,241人の購読者を集め、Famecountは68.83%でトップにランクされている。

Source:Famecount

ここで、国別のランキングを見ると日本ブランドとして3つあげられている。
が、これら3ブランドはすべてインドのTata Docomoであったり、豪のトヨタであったり、カナダの三菱自動車のFacebookやTwitter、YouTubeの数字を集計し、日本ブランドとしてランキングしている。

それだけ信用のおけないランキングだと切り捨てるべきかもしれない。しかし、それだけ本社アカウント、ページが知られていないということだ。ソーシャルメディアスペースで露出していないからヘンテコリンなアカウントが日本ブランドとして取上げられている。

一方、Red Bull(オーストリア)が3位、Zara(西)が15位、H&Mが20位だし、Lacoste、PUMA、BlackBerry、Adidas、Louis Vuitton、Nokiaなど世界の錚々たるブランドがちゃんと顔を出している。にも関らず、日本ブランドは200位までに顔を出していない。

日本のグローバル企業のブランド力は、こと、ソーシャルメディアスペースに限って言えば、存在していないに等しい。人口減少に歯止めがかからない国内市場にしがみついている暇があれば、海外市場でプレゼンスを拡大しなければならない。とすれば、ビジネスのやり方を変革しているパラダイムシフト、デジタルネイティブ、ソーシャルメディアをベースに新しい戦略が必須なのだが...。

Famecountのトップに選出されたStarbucksのDigital Director、Alexandra Wheelerが、Social Media Influence 2010というプレゼンをアップしている。ご参考までに。

2010/06/21

Japanese Brand Endangered

先週金曜日、Ascii総合研究所とWDEのセミナー「企業Twitterは誰が使うべきか」において、「欧米企業のソーシャルメディア化がもたらす日本ブランドの危機」というテーマで話をさせてもらいました。

2006年10月、ANA総会において「パワーは消費者が握っている。彼らは考えられる全ての意味で我々のブランドを所有し、ブランドコンテンツ制作にも参加し始めている」と語たり、企業が支配してきたマスメディアにソーシャルメディアが追いつき、追い越すさまを理解したCEOがいるP&Gにしても、2009年3月に「デジタルビジネス戦略チーム」が、マーケティング役員向けにクラッシュコースを開催している。トップがパラダイムシフトを理解していたとしても、実際にマーケティングを実行する事業部トップを揺り動かし、マインドセットを切り替えさせるのは容易ではない。トップ企業であっても3年もかかっているし、また、それをマインドセットが切り替えられない担当事業部、部署が主催することも非常に困難なのだ。

それはそうだろう。今まで巨額の広報・広告・マーケティング予算を握ってきた既存組織が、訳の分からないとしか理解できないオンライン、それも「オープンだとか、対等だとか、エンゲージメントだとか」といったバズワードを口に出し、ブームに浮かれているとしか見えない社内の人間、社外のエージェンシーの声に耳を傾けると言うことは自分の存在を危うくすることになる。予算を別組織、別キャンペーンに横取りされてしまうことになる。組織内での自分の存在や声、知見が役に立たなくなるような新しいことを社内に啓発することはあり得ない。

だから、P&Gは「デジタルビジネス戦略チーム」 がクラッシュコースを開催したし、FordのScott Monty、PepsiのBonin Boughは外部のエージェンシーからヘッドハントされてパラダイムシフト、IMCのイニシアティブをとっている。それこそマスメディア・エージェンシーに取りつかれ、アゴアシ接待を受けているような社内組織のドンの首を挿げ替えなければ将来はないのだ。それさえも理解していない企業・ブランドは多い。

さて、6月12日にVolkswagen InternationalはFacebookにファンページを開設した。これは2011 Polo GTIキャンペーンの核を成すもので唯一のものだ。すなわち、Facebookファンページだけで2011年モデルのキャンペーンをやるそうだ。そして、このファンページの言語は英語だ。Volkswagenのブランド体験を全世界のユーザと共有するため、「公式言語は英語」だと宣言している。

Volkswagenがどこまでパラダイムシフトを理解しているかは不明だ。しかし、少なくとも他マスメディアを使わずにFacebook一本に絞ってPolo GTIキャンペーンをやろうとしているのはGAPのケースから学習している。Vitamin Waterからも学習している。今、どこに顧客が集い、ブランド体験、情報・コンテンツを消費、共有、再拡散してくれているかは理解している。そして、Starbucks、Adidasの戦略も加味してFacebookをブランドポータルとして全世界のユーザに英語でコミュニケーション、エンゲージしようとしている。ここからも学習している。

一方、パラダイムシフトを理解しない日本のグローバル企業・ブランドが、従来通りの縦割りサイロ組織から苔むしたメガフォンマーケティングをソーシャルメディア化しても、ツール主導のマーケティングを行ったとしても、パラダイムシフトを把握し、オープン、対等、双方向のコミュニケーション、エンゲージメントを行い始めた欧米企業との間に広がり、深まり、離れてゆくブランド体験ギャップは埋めようもない。

製品・サービスの購買者があれこれとつぶやき、称賛し、苦情を言いたてている今、彼らに刺さらないマーケティングをやるしかない日本企業・ブランドと、プロファイル・アップデート・ビデオコミュニケーション・つぶやき・個人検索・RSSフィード・自動タグ機能などFacebook、MySpace、Twitterが備える機能を取り込んだ企業内コラボレーションプラットフォーム、Cisco Quadのベータテストを今秋にも開始するCiscoとの差は途方もない。

社内の縦割りサイロ組織を越えるコラボレーションと、70を数える部署横断のチーム制、それこそ営業リーダーが開発チームを率いるCiscoが、そのプラットフォームをシステム化して販売しようとしている。それを導入してくる企業・ブランドが否応もなく、瓦解する縦割り組織から解き放たれてオープン、対等、双方向のコラボレーション、コミュニケーションを行い、顧客・ユーザとエンゲージする時、もし、日本のグローバル企業・ブランドが今まで通りのコミュニケーションを続けるとすると、そのブランド価値は奈落の底に転落するしか道はない。

可能性を見出すとするとそれはマインドセットを転換させ、パラダイムシフトを理解させるクラッシュコース開催だろう。あるいは、Webビジター調査を導入し、SiemensやPhilipsのように全世界40カ国、あるいは32カ国の自社Webサイトへアクセスするユーザにコンテンツを評価してもらうとともに、どんな情報・コンテンツを希望するのか、どんなフォーマット、チャネルで発信し、どういったスペースでどのようなエンゲージメント体制を敷けばいいのか聞くことだ。また、バズモニタリングを行い、何が語られ、何が共有され、何が批判されているのかを知ることだ。といって、数の話でも、グラフの話でも、限界線を越えたらアラートを発信するといった話ではない。バズのコンテンツ、影響する範囲・会話への参加者・参加度・可能性などからその価値を判断し、ブランドへの影響を想像することだ。

クラッシュコース開催、Webビジター調査、バズモニタリングなしに、通常マーケティング手法をソーシャルメディア化したところで、Cisco Quadが提供するコラボレーション、それが否応なく開くパラダイムシフトを想像できない限り、日本ブランドに将来はない。

と、考えるが、みなさんはどうでしょう?
ご意見をお待ちします。

2010/06/15

Social Media in China

3億8400万人のインターネットユーザがいる中国のソーシャルメディアのレポート、Social Media in China 2010がTNSから出ている。

中国ユーザの51%はソーシャルメディアスペースに参加し、最も頻繁に利用されているソーシャルメディアプラットフォームはForum/BBSだ。60%台前半のそれを50%強のBlog、50%弱のビデオ共有サイトが追っている。
そして、
  • 86% ソーシャルメディアスペースでブランドに関するネガティブコメントに
  • 90% ソーシャルメディアスペースでブランドに関するポジティブコメントに
出くわしたことがあるそうだ。

ネガティブの原因はというと、とんでもないサービス(81%)、ブランド不満足(78%)がトップ2だ。ちょっと気になるのは、ひどいCSRが47%になっている。
ポジティブの原因は、ブランドに満足(87%)、おまけや懸賞(56%)があるが、「友人のお勧め」が43%となっている。
そして、企業・ブランドがソーシャルメディアに参加する評価を聞いている。もっとアピールする(34%)、ある程度アピールする(43%)を合わせて77%が歓迎している。
Source:TNS / Social Media in China

中国も、欧米諸国とまったく違いがない。ソーシャルメディアスペースのユーザは自由闊達にコミュニケーションを育み、情報やコンテンツを共有している。そして、そのスペースにブランドが参加することを歓迎している。

もうリンクが消滅してしまったが、2006年3月の人民網(日本語版)には、
英語専攻者と非専攻者をあわせて約3億人が英語を学習している。そのうち、小学校から大学までの学習者は1億人を越え、数年で英語を母国語とする国家の人口合計を越えると見込まれる。
また、2008年6月17日には、
昨年、中国では100万人以上がIETLSを受験。世界で最も人気のある英語資格試験となった。
そして、2009年4月13日には、
英国王室言語学会首席会員のGrahame T. Bilbow氏は、中国での「英語ブーム」について、「中国語を学ぶ人が世界中で増えているのに、中国の人々の英語学習熱は衰えていない。私は多くの中国 の若者と接してきたが、彼らの英会話レベルは驚くほど高い」と語る。専門家の中には、「世界中で3千万の外国人が中国語を学んでいる一方で、3億の中国人 が英語をかじっている。英語を話す中国人の数が英語母語者の数を上回る日はすぐそこに迫っている」と言いきる人までいる。
という報道があった。

Source:人民網 / 中国人英語学習者は英語母国語者数を越えるか

中国には様々なアクセス制限、障害があるが、日本人よりけた違いの語学能力を発揮すれば、最新情報を発信する海外、米国のトップサイトへアクセスし、情報・コンテンツを何の苦もなく理解し、それをForumやBlogなどで国内に輸入、翻訳することができる。

ソーシャルメディアに慣れ親しんだ中国ユーザが、英語ソーシャルメディアスペースに参加することは、またひとつ、国単位や販売地域単位での広報、広告、マーケティング、ブランディングに頭痛の種を蒔くことになる。国外から持ち込んだ情報・コンテンツの方が最新であり、もっとも人気が高く、もっとも多くのユーザ達に共有されるのは間違いないのだから。

グローバルなブランディングには、英語が達者で、けた違いに多い中国ユーザも対象とすべきなのは明らかだ。

2010/04/26

LG Dear Personal Hero

季節外れの話で恐縮だが、昨年12月に入り、あと何日でX'mas、あと何日で大みそか、あと何日でNew Yearという時期になって、多くの企業・ブランドがホリデー用のキャンペーンを仕掛けていた。

そんな中で、9カ国で10,737人に対して行った調査、
例えば、
  • 「あなたのマンガヒーローは誰?」、
  • 「マンガヒーローに頼みたいこと」、
  • 「2009年のヒーローは誰?」、
  • 「グローバルヒーローに贈る最も元気の出る贈り物は?」、
  • 「毎日、周りにいるけど日の当らないあなた個人のヒーローは誰?」、
  • 「その個人ヒーローに感謝の意を伝えるのは何がベスト?」
の結果を公表し、あなたの個人ヒーローに感謝の言葉を添えてメールを送りましょうというキャンペーンをLGがやっていた。
(クリックでサイトへ)

YouTubeにビデオも上がっている。

すでに47,641人(12月11日時点)が個人ヒーローにメールを送っていた。

Source:LG Dear Hero

こういったユーザ個人が持っている小さな価値を取上げたり、ユーザに新しい価値を提供するキャンペーンこそが、「ブランディング」だと感じる。企業・ブランドがダイレクトにエンドユーザ、消費者、あるいは既存の顧客とつながり、対話できる時代なだけにもっと多くの企業・ブランドが実行すべきマーケティングだと感じる。

2010/04/12

Future of Legacy Media Online Site

先週、久しぶりにNYTimes.comへアクセスした処、なんとも寂しい思いをした。

下の画面はNYTのグローバル版で、その下は米国版だ。
グローバル版のHome Page SOV(Share of Voice=NYTロゴの左右に位置するスペース)には、IHT購読プロモーションが掲出されているが、米国版は空白だ。
もう5年ほど前の話だが、SOVには毎月、5クライアントがユーザアクセスごとのローテーションで入り、最低3,000万impression、確か10万㌦程度の広告スペースだったはずだ。そのSOVに自社広告と空白スペースしかないというのは、世界の新聞とも言えるNYTのトップページとしては実に寂しい。

IHTと合併させたグローバルサイトのオーディエンスセクションには、780万人の海外読者がついており、世界とビジネスニュースのソースとして毎日数回アクセスし、FT.comやWSJ.comより欧州およびアジアからのユニークユーザは多いと書いている。また、欧州とアジアの詳細データを挙げている。
そして、HPSOV、HPMPU、Videoなどの広告スペース・オプションごとに、ブランディング、ターゲッティングなどの可能性を説明している。

しかし、今、必要なのは上のようなスタティックデータではない。上のようなスタティックデータは新聞をレガシー広告媒体として売るためには必要だが、Webサイトをオンライン広告媒体として売るためには役に立たない。

現在、いかなるWebサイトも単独で存在していないし、存在できない。それはNYTに限らず、CNNであれ、Yahooであれ同じだ。レガシーメディアの新聞が地域的に隔離されたり、業務・職務の読者で分類されたりと、差別化要素を個々に持ち得るのとは違い、いかなるWebサイトであろうと世界中をひとつのオンラインスペースに抱合するインターネットのごく一部でしかない。そこに、昔からのマインドセット通り、購読者数だとか、デモグラフィックスだとか、UU数だとか持ってきても意味を成さない。

ひとつの宇宙の中に浮かんでいる小島が、宇宙の中でどのようなリレーションズ、コネクションズ、ネットワークを構成し、一部となっているかを示すデータが必要だ。それはソーシャルメディア関連データでしかあり得ないし、ソーシャルメディアスペースにおけるユーザ評価でしかない。

そしてレガシーメディアのオンラインサイトと同様に、企業・ブランドのWebサイトも全く同じだ。裸の王様は、おとぎ話の世界だけにいるのではなく、リアルな世界にもいることはわれわれ自身が身をもって体験している。そして、我々だけではなく、裸の王様になってしまった経験を持つ世界に冠たる企業・ブランドも多く存在する。寒々しい風が吹き付ける裸のわが身を認めない限り、レガシーメディアのオンラインサイトはCNNであれ、NYTであれ、存続することは非常に困難だと思う。

2010/04/09

Pan European and Gobal Campaign

この間、昨年12月に出ていたOfcomのICMRchartを見ていたら、欧米・日本のメディアごとの広告支出比率があった。

それによると2008年、英広告費の23%がインターネット、仏は16%、独が15%、伊が9%、ポーランドが11%、西が9%、蘭が18%、スウェーデンは19%だ。TVのシェアが30%を切っているのは、英、仏、独、蘭、スウェーデン、アイルランドとなっている。紙離れが深刻な日本は新聞・雑誌の合計で27%だが、26%のポーランドを除けばほかの国はまだ30%以上のシェアを死守している。
そして、2008年の2007年対比で見た場合、アイルランドを除く各国で伸びているのはインターネットだ。シェアを減らしているのは新聞、雑誌、TV、ラジオと相場が決まっている。ただし、米ではTVも伸びている。
Source:Ofcom / ICMRcharts (pdf)

先週、「Digital Natives vs. Immigrants」を書いたが、これら欧米圏のユーザの中核を成すのはデジタルネイティブでしかなく、今後、彼らが消費の中心とするメディアはインターネットをおいて他にない。

参考:Digital Natives vs. Immigrants (Online Ad 2010/04/02)

もう随分昔、2006年の8月に「English Next」を紹介した。それによると2010年にはすべての世代を通じて20億人が英語を学ぶと推測さ れている。

参考:Lingua Franca & Internet/Online Marketing (Online Ad 2006/08/29)

だから、彼らデジタルネイティブに日本人のような語学音痴はいない。少なくとも自国語と英語に加え、独、仏、伊、西、果ては露、アラビア、中国語くらいからひとつや二つはネイティブに近い読み書き、会話能力を持っている。

そして、彼らがアクセスするのは自国サイトだけではない。Facebookの友人には海外のユーザもいる。Twitterでフォローしているのは海外のイノベーター、アーリーアダプターが多いかもしれない。そして、彼らは海外から仕入れたコンテンツを自国語に翻訳して国内ユーザと共有、再露出している。

日本のIT、PC、ソフト、インターネット、ソーシャルメディア系Blogのコンテンツを調べたことがありますか?国内メディアが報道する海外コンテンツだけを引用、リンクしたサイトよりも、海外、米国サイトのコンテンツを直に翻訳して引っ張ってきているサイトのほうが断然多いことに疑いの目はない。また、国内メディアが提携サイトのコンテンツを全て翻訳しているわけではないし、紙と連携する必要性から翻訳できないコンテンツもあるため、ニッチなBlogが深堀したコンテンツを伝えているケースが多い。そして、そういったBlogへのアクセスはレガシーメディア、マスメディア系サイトを上回ることもある。これだけを見ても海外サイト、英語サイトのコンテンツと非英語ユーザとのコネクション、リレーション、ネットワークが構成されることは確かだ。

ターゲットとチャネルが決まれば、あとは英語を活用したパンヨーロッパ、あるいはグローバルキャンペーンの方法論だ。

2010/04/01

Leadership of Ford and Toyota in Social Media

実は3月17日のお昼頃、あるBlogに以下のようなコメントを書いた。
今年78歳になるBill Marriottは、2007年1月に初めてBlogを始める際、
「I know this is where the action is if you want to talk to your customers directly -- and hear back from them.」と書いています。http://www.blogs.marriott.com/marriott-on-the-move/2007/01/uncharted-territory.html
日本語だけではなく世界に向けて英語で発信されるのがベストではないでしょうか?
コメントを保存していないので正確には覚えていないが、多分、こんな内容だったと思う。

ここで引用したのは、Marriott Internationalの会長兼CEOであるBill Marriottだ。

参考:Marriott's CEO Blog Launched (Online Ad 2007/01/19)

そして、上のコメントを書き込んだのは、「モリゾウ」というスクリーン名でBlogが立っているトヨタの社長、豊田章男氏のBlogだ。
Source:Gazoo / ドライバーモリゾウ

ところが3月31日になっても、筆者のコメントはBlogのコメント欄に表示されていない。

今回のリコールに大きく影響を受ける欧米ユーザに社長として直接、対話を開始する必要性をコメントしたつもりだった。欧米に比べればその影響が非常に少ない日本ユーザに語るよりも、欧米をはじめとする世界のトヨタ車オーナーに語ること、対話のチャネルを開くこと、そして、フィードバックをオープン、対等、双方向に受けることが必要だと確信するからこそ、コメントしたわけだ。

しかし、一般的な公序良俗に著しく反しているとも、Gazooの利用規約、コミュニティ・ガイドラインに抵触しているとも思われないコメントを無視し、表示していない。(もし、抵触しているのなら、そう判断した理由をお聞きしたい)

これでは今まで同様に一方通行のコミュニケーションでしかない。送り手と受け手の対極しか存在していない。常時、送り手と受け手がその立場を替え、相手の立場を理解、尊重した上で対等なカンバセーションを行うチャネルではない。

一方、Fordの社長兼CEOのAlan Mulallyは、Washington Postの「On Leadership」で次のように語っている。紹介したいのは2つある。


Source:Washington Post / On Leadership : Ford CEO Alan Mulally on the "liberating clarity" of his mission

まず、ひとつめ。
我々は仕えるために存在しているといつも考えている。業界のリーダーとして選ばれる栄誉を与えられているが、実際のところ我々は顧客に仕えているし、従業員にも仕えているわけだ。もっと召使的な観点を持つか、あるいは召使的な体制を取れば、もっと(Fordを顧客に)取り込んでもらうことができる。また、他の人間のアイディアに対して尊敬の気持ちを持てば、他人に理解してもらおうとする前に他人を理解することができる。そして、人々のパワー、力がひとつになってゆく。ここがいつも私を驚かせている。
そして、もうひとつ。
我々はどこへ行くのか、どうやってそこへいくのか、そして我々一人一人に何が求められているのかを我々自身が理解すればするほど、進展は早まる。こういったコミュニケーションを私(Alan Mulally)が部下に指示するのではなく、そういった環境を創造することなのだ。

今何が起こっているかを全ての人間が知れば知るほど、個人のパフォーマンスが増大すると思う。また、それによってチームパフォーマンスも上がってくる。どのようなビジネスに自分がいるのか、対する顧客はどんな人なのか、世界中でベストな競争をするためには何が必要なのかを知れば知るほど、(今までの企業組織、担当といった)桎梏からどれほど解き放たれるかを考えてみてください。これら大きな決断がFordの創造性を解き放ったと考えている。
FordとToyotaは、同じ自動車メーカーだが数えきれない点で違う。単純に同じ地平線に乗せて比較することなどできはしない。しかし、その相違点を納得した上で、今、もっとも大きく、そして重要な違いは、ソーシャルメディアの理解ではないだろうか。

ソーシャルメディアを導入する、ソーシャルメディアスペースに参加するということは、今までの企業そのもの、既存組織、決定伝達フロー、予算執行優先度など様々な決まりを変更し、桎梏から脱するということだ。一方通行のメッセージを大量投下するのではなく、個々のユーザとエンゲージするということだ。彼らとの対話からフィードバックを受け取り、彼らの参加、協力を求めてオープン、対等、双方向のコミュニケーションを成立させるということだ。フォーカスグループなどの特定ユーザグループからのヒアリングではなく、前後左右、上下から降ってくる、湧いてくる硬軟とり混ざり、雑多な意見、フィードバックを受け入れるということだ。

そして、Bill Marriottが言うように、「今、顧客に直接話しかけ、彼らからフィードバックをもらうためには、どこで行動を起こすべきか」を知らなければならないリーダーは、企業・ブランドとしてソーシャルメディアを導入し、ソーシャルメディアスペースに参加するという、企業そのものを変革することになる意思決定、判断を下さなければならない。FordのAlan Mulallyが言う、サーブする視点、相手を理解する視点、ゴールを理解する視点の重要性を説き、そして、それらを新しい企業、組織、フローとして 社内環境、マインドセットを創造することが必要となってくる。なぜなら、企業・ブランドを取り巻く外環境には、「力になりたい」、「手を貸したい」、 「一緒に始めよう」という顧客、ファンが集っているのだから。「What/How can I help you?」というキーワードは、Haitiの例をひくまでもなくソーシャルメディアスペースに満ちているのだから。

ただし、トップ、あるいはトップを支えるチーム、そして企業自体のマインドセットには、相応以上のソーシャルメディア(スペース)に対する理解、把握、実績、そして展望がなければならない。FordのAlan Mulallyを支えるチームの中心には、Scott Montyがいるはずだ。そのScott MontyをOrangeからヘッドハントしてきた目利きの人間がFordにはいるわけだ。Bill Marriottにしても社内の情シス部門から長期間にわたったレクチャーがあった。パソコン音痴の彼の理解を広げ、(最年長?)CEO Blogを始めさせたプロがいたわけだ。

ひょっとするとここが最も大きな肝かもしれない。特に、今まで企業・ブランドとして経験したことのないスペースを導入、参加するに際して、BlogやForum、SNS、Twitter、YouTubeなどを経験したことのない人々や、既存組織から予算、担当テリトリ、意思決定フローなどがシフトすると危惧する人々から、吐き出されるネガティブセンチメントに対抗し、新しいマインドセットを伝道してゆくにはリーダーだけでは無理だ。リーダーを支える強力なリソースが是非とも必要になる。

2010/03/31

Web Visitor Survey

Unicaから「The State of Marketing 2010: Unica's Global Survey of Marketers」が出ている。

様々なデータがあるのだが、「Webビジター調査」がある。四分の三、75%はWebサイトへアクセスしたビジター調査のデータをもとに、マーケティング戦略・戦術を決定している。

Google AnalyticsなどフリーのWeb解析ツールを使っているところは多いが、アクセスユーザの属性やWebへアクセスした目的、興味、行動など、そしてユーザ属性をベースにWebサイト改良や次のマーケティング戦略に活かすデータマイニングをやっているところが75%ということだ。
そして、得られたデータ、分析をもとに現在活用している、あるいはこれから活用しようとしているマーケティング戦術として、Email、DM、Webパーソナル化、コールセンター、モバイルなどを使ったオファー、販促などがある。
Source:Unica

この調査は欧米150人以上のオンラインおよびダイレクトマーケティングの専門家を対象としたものなので、その業務は販促、直販がコアになっているし、Webビジター調査をやっているのも非常に高率となっている。だから、ビジター調査を基にしたマーケティング戦術にはEmailオファー・販促などが来ている。

しかし、Webサイトへのトラフィックが増えた、減ったで一喜一憂するよりも、アクセスユーザの属性を把握し、オファー・販促以上に、ユーザのアクセス目的、その目的が達成したのかしないのか、あるいはWebサイトの評価、機能、ボタン、リンク、検索、必要メディアはあったのかなかったのか、どこをどう改善すれば再訪することにつながるのか、あるいは、アクセスユーザのソーシャルメディア経験、よく利用するサイト、ユーザの友人数・フォロワー数・RT数、ソーシャルメディアスペースでの競合イメージ、比較などを聞きまくったほうが、オンラインやダイレクトマーケティングだけではなく、ブランドマーケティング、オンラインブランディングとしても今何が不足していて、来期何をすべきかが見えてくると思うが、いかがだろうか?

なぜなら、Webを立ち上げ、コンテンツを発信し、ソーシャルメディアスペースに参加しているだけでは、特定コンテンツが共有されることはあったとしても、ユーザとの対話チャネルの一部にしかならないからだ。直接、企業・ブランドがビジター調査をするという意思を発現して、フィードバックを受け取る形も対話チャネルの一部を構成するからだ。また、そうやってこそ、生の声を訊くこともできるからだ。

2010/02/09

Another PR Nightmare for McDonald's

LinkedInのCorporate Communications Executive Networkに、「McDonald'sにとりPR悪夢になりかねない状況がシカゴで発生している。彼らはどのように行動するべきか?」という議論があり、24本もコメントが行き交っている。

それはChicago Sun-Timesによるとこうだ。

ボストン大学の学生で19歳のLauren McCluskyは、2007年から年一回、高校や大学のバンドを集めシカゴでMcFestというチャリティコンサートを主催し、知的発達障がい者の自立や社会参加を助けるスペシャルオリンピックに貢献してきた。2年間で3万㌦を集めたそうだ。ところが2008年に彼女が商標登録をしようとしたところ、昨年8月、McDonald'sがMc関連商標をすでに登録しているとして異議申し立てを行った。



この係争が裁判所に持ち込まれれば、すでに5,000㌦を支払っているLaurenは新たな出費を負担しなければならない。

McDonald'sは、彼女のコンサートを中止させたいと思っているわけでもなく、彼女と円満に解決するため協議を重ねている。広報担当者、Ashlee Yinglingは、彼女に別の新しい名前をコンサートにつけてほしいと語っている。「別の名前をつけてくれればコンサート費用を負担するといった代替案」をだしている。

この話がLinkedInのCC部門で議論されている。

Source:LinkedIn / Corporate Communications Executive Network
Source:Chicago Sun-Times / McDonald's in beef over trademark with Chicago teen

自分の名字をコンサート名の先頭につけ、スペシャルオリンピックに貢献してきた10代の学生の社会貢献を巨大資本がひねりつぶそうとしているようにも見える。また、一方、すでに「Mc」を前置した単語を登録しているMcDonald'sからすると、とんでもないという話のようにも見える。

さて、あなたはどう考えるだろうか?

McDonald's自体、社会貢献を長年続けている。Ronald McDonald House Charitiesがつとに有名だ。このサイトのトップページに書かれている文章そのものが答えだろう。
Source:Ronald McDonald House Charities

「あなたの支援なしに2009年50万㌦を集めることはできなかった」、「あなたなしに、Lance Kopplinの大きな笑顔、きれいな髪、奇跡の回復はなかった」。

社会貢献をひとつの柱として長年、顧客の力、支援を借りながら実績を上げてきた企業・ブランドは、一方で同じ目的を目指す個人、グループ、団体の行動を支援してきたことになる。双方向で支援と協力、情報の共有などを行ってきたわけだ。

いかに巨大な資本だと言ってもできることには限りがある。限りがあるからこそ、できる範囲とできない範囲の棲み分けを個人、グループ、団体と行ってきた。至極当然なことだ。

しかし、ここで、登録済み商標を個人、グループ、団体が社会貢献目的で使う際に資本側の理論を押しつけようとした場合、結局、資本側の狙いは社会貢献ではなく、社会貢献を行う善良な企業・ブランドだというイメージ、販促、売上につながる効果だけだということが見透かされてしまう。今までの社会貢献が色あせてしまう。

異議申し立てを却下し、かかった費用を弁償するべきだ、あるいはPR部門に抗議のemailを送ろうとか、LinkedInでは議論が活発だ。

ただ、商標登録を共有すべきだというコメントは見られない。そんな解決策もあるかとは考えるが、あなたはどう考えますか?

2010/01/25

Toyota Risk Management

以前、「Toyota Floor Mat Campaign」というエントリを書いた。

BrandChannelの記事を、
400万台以上のリコールを行っているToyota USAのWebサイトには、大量リコールをうかがわせるものはなく、ただ、「NEWS ALERT Important Information on Floor Mat Campaign」とページ左下に、あくまでも目立たなく小さな告知があるだけだ。
また、昔、FordのPinto/Explorerがメカニカルな問題を隠ぺい、軽視、あるいは危険性公表を怠ったために受けたダメージを例に引き、Toyotaはデトロイト、大昔のデトロイトの流儀に危険なほど似ているとまで書いている。
と紹介した。

参考:Toyota Floor Mat Campaign (Online Ad 2009/12/14)

ところが、先週、Toyotaはまず、米国で230万台のリコールを発表、欧州でもリコールの準備をしているという報道があった。

Source:NYTimes.com / Toyota Issues a 2nd Recall
Source:朝日新聞 / トヨタ、米で新たに230万台リコール

以前、12月14日前後では「NEWS ALERT  Important information on Floor Mat Campaign」だったが、
今回、1月23日は、「NEWS ALERT Imporant information On Safety Recall Campaign」となっている。
そこで上の赤セクションをクリックすると、1月21日付の「Toyota Files Voluntary Safety Recall on Select Toyota Division Vehicles for Sticking Accelerator Pedal」というリリースが読める。今回のリコールを(あくまでも当局の強制ではなく)自発的に行うこと、限定された車種だけに適用され、ごく稀にしか起こらないと説明している。

Source:Toyota.com / Toyota Consumer Safety Advisory

ところがJust-Autoによれば、Toyotaのリコール発表は、ABC Newsがプライムタイムで「意図しない加速問題」を番組で取り上げる数時間前に出されたとのことだ。このABC Newsは、「ニュージャージーに住むKevin HaggertyというToyota車オーナーが車のアクセルの電気系統不具合をToyotaのディーラーに見せ、ディーラーはセンサーとアクセルを取り換えた」ことを伝えたらしい。

Source:Just-Auto / US: Toyota recalls 2.3m more cars as media eyes acceleration claims

今まで構造的な不具合はないとしていたToyotaに、エレクトロニクス系統の不具合の可能性があることを認めさせるような番組が報道される数時間前に、やっと、リコールを発表したというのが真相のようだ。

Facebook、Twitterにおける対応も同じだ。リコールが公表され、顧客・ユーザがFacebook、Twitterに書き込みだして、初めててリコールを告知している。その後、殺到している顧客からの問合せ電話回線がつながりにくいための「謝罪」が来ているが、リコール関係で公式Web以上の情報はない。


こう見てくると、まず企業・ブランドの公式Webサイトで顧客対応や危機管理はできないのが自明だ。顔の見えない者同士が建前だけで言いたいこと、聞かせたいこと、見せたいことを並べ立てるだけの公式Webサイトにおいて、わざわざ突っ込みを入れられかねない事柄、リコール情報を大仰に掲示するわけにはいかない。Web担当も法務、広報、財務など社内組織の複数から許可、承認を受けた上で公式Webページを改訂、更新するしかないわけだ。

しかし、ソーシャルメディアスペースにおいて、そんな建前は成立しない。製品・サービスを購買し、利用している既存顧客にCレベルから語れる言葉はない。製品・サービスを開発、検証、販売、保守している担当者の言葉がなければ既存顧客に届く言葉とはならない。対応を受けた顧客がそのコンテンツを他ユーザと共有するだけに、オープン、対等、双方向のメッセージでなければ意味がない。

また、オープンなソーシャルメディアスペースでは、企業・ブランドがアナウンスする前に情報感度の高いユーザは最新情報を複数サイトにあっという間に書き込む。そのユーザの友人やフォロワーは、自分のフォロワーに転送、共有する。全体トレンドの方向性を決めかねないほどのパワーが発揮されるスペースだ。そのスペースで後出しでは、告知効果もしれている。

だからこそ、FacebookやTwitterといったスペースで真摯に顧客・ユーザと直接対応しなければならないはずだが...?

2009/12/24

Leveraging Real Time Events

SimpliflyingのShashank Nigamが、IATAのシンポジウムでキーノートスピーチを行っていて、そのプレゼン資料がアップされている。

6つのアジェンダのうち、リアルタイムイベントをテコにする3つのアイディアが紹介されている。
  1. 遅延対策
    国際線に出発時間の遅延はつきもの。待たされている乗客がラウンジでTweetするのも当然。もし、搭乗口の担当者がCo-Tweetできたとしたら...
  2. 荷物紛失
    航空会社は乗客に謝罪し、まず、帰宅するようSMSを送り、モバイルで紛失した荷物をトレースするアプリを開発したとしたら...
  3. カスタマーサービス
    様々のトラブルを抱えている乗客、顧客にリアルタイムで対応ができたとしたら...
Source:Simpliflying / Keynote from IATA Commercial Symposium 2009

Twitterで、「flight delay」、あるいは「flight status」と検索してみるといい。「時間通り」をTweetしているユーザの何倍もの人々が、「うんざりする」、「また遅れてる」、「いつになったら」と嘆息している声が聞こえてくる。

昔、破産する前のパンナムでカナダからNYへ飛んだ時、バックを失くされた。NYのホテルにカスタマーサービスから調査中との電話があったきり、次に来たのは日本へ紛失物弁償請求書を送ったとのボイスメールだった。まだ1カ月は米国にいると伝えたにも関らず...。滞米中は調査がどこまで進んでいるかもわからず、結局、日本に戻っても請求書は届いていなかった苦い思い出がある。

出発が遅れている時、荷物を失くされた時、そんな時、リアルタイムで対処してくれる担当者がいるだけで救われる。そして、その対応すべてがオープンにされているだけに乗客、担当者の会話はブランドと消費者のコミュニケーションメッセージとなる。オンラインのブランディングとなる。SouthwestのLouis Beginは、一人の顧客に心から対応しただけだが、そのブランディングは世界へ広がっている。

先週、Strategy of British Airwaysを書いたばかりだが、こんなマーケティングもJALには必要だ。顧客、乗客にどんな価値を提供できるサービスができるかが再生するJALには必要だ。それがなければJALの再生は完結しない。

参考:Southwest: Brand Royalty (Online Ad 2009/10/26)
参考:Strategy of British Airways (Online Ad 2009/12/18)

2009/12/21

US Facebook Users Update Nov 2009

Media Postが米国Facebookユーザ数が1億人を突破したと伝えたと思ったら、Business Insiderは米国FacebookユーザがAOLのそれを上回ったと伝えている。
Facebook over time

そして、Morgan Stanleyが10月に出したデータでは全世界で3.9億人のユーザ数としている。
Source:MediaPost / Facebook Tops 100 Million U.S. Users
Source:Business Insider / Facebook Blows Past AOL In The U.S.
Source:Morgan Stanley / Economy + Internet Trends

1億人の米国ユーザと2.9億人の海外ユーザを合わせて3.9億人のユーザが全世界からアクセスするソーシャルメディアスペース、Facebookは、中国の13.4億人、インドの11.6億人、YouTubeの4.45億人に次ぎ、世界第4位の大国となる。そして、その人口は日々増えている。米国だけではなく、欧州、東南アジア、南米でもユーザが増えているし、ユーザが持つ個人的なソーシャルコネクションは国境を越えて世界へ広がっている。

雑多な言語ユーザを抱えるオンラインカントリーだが、言語ごとに隔離されたユーザではない。昔、StarbucksのFacebookにあるコメントを200件ほどチェックしてみたところ15件くらいが非英語での書き込みだった。非英語ユーザが英語で書き込んだ件数はチェックできないが、乱暴にその倍以上はあるだろうと考えて合計50件とすれば25%になる。全体の25%を占める非英語ユーザがFacebookのStarbucksページで対話していることになる。

世界中のユーザが企業・ブランドと直接エンゲージできるスペースとして使い始めている。もう翻訳記事やニュースを待つこともない。非英語圏のユーザであろうが、英語どころか数ヶ国語を操るアーリーアダプター、インフルエンサーは企業・ブランドと直接対話を始めている。そして、彼らは国内ユーザにブランドコンテンツを翻訳し、リンクを提供し、共有し始めている。

米国企業・ブランドは国内マーケティングの一環としてFacebookを使っているかもしれないが、その効果は米国テリトリーを越えてゆく。そのため、本社が行うグローバルなオンラインブランディングとして機能している。一方、米国へ進出した海外企業の子会社、販社が行う米国内向けマーケティングも米国を越えてゆき、意図せず、本社が行うべきグローバルなオンラインブランディングとして世界のユーザに露出している。だから、米国販社のマーケティングにイスラエルや南アフリカから問合せがくることになる。この違いは大きい。

この違いを手当てしなければ、米国企業・ブランドのソーシャルメディアマーケティング、ソーシャルメディアリレーションズをスタンダード、世界標準だと認識する世界のユーザから大きくかけ離れたマーケティングを行うことになってしまう。この違いを手当てするのは各国の本社しかないと思うがいかがだろうか?

2009/12/14

Toyota Floor Mat Campaign

Toyota USAが「Floor Mat Campaign」をやっているとBrandChannelが伝えている。

それによれば、
Toyotaの2009年は1950年以降初めて50億㌦の損失を計上、米国政府の支援策により、ようやく第三四半期に2.41億㌦の利益を計上している。ただし、この暫定的な回復を脅かしかねないのが12人の命を奪ったアクセル、フロアーマット問題だ。
ブランド、販売などに途方もないダメージを与える400万台のリコールという現状にあるToyota USAのサイトには、
大量リコールをうかがわせるものはなく、ただ、「NEWS ALERT Important Information on Floor Mat Campaign」とページ左下に、あくまでも目立たなく小さな告知があるだけだ。
と伝えている。
(クリックでサイトへ)
また、昔、FordのPinto/Explorerがメカニカルな問題を隠ぺい、軽視、あるいは危険性公表を怠ったために受けたダメージを例に引き、
Toyotaはデトロイト、大昔のデトロイトの流儀に危険なほど似ている
とまで書いている。

Source:BrandChannel / Accelerator Recall Missteps Threaten Toyota's Recovery

日本におけるパナソニックの例を引くまでもなく、製品に瑕疵、それも重大な事故を引き起こしかねない欠陥が発見された場合、メーカーのとる対応は限られている。

が、メーカー自体の認識が「フロアーマット」キャンペーンの場合、パナソニックとのブランド評価は大きく開きそうだ。

Sysomosの「Best Global Brands Online」のランキング10位にToyotaは顔を出しているが、ランキングには別に「最も高いネガティブセンチメント」もある。この3位に顔を出しているのもToyotaだ。日本のグローバルブランドが、このランキングトップをMcDonald'sと争うようなことにはなって欲しくない。
Source:Sysomos / Best Global Brands Online

2009/11/17

Consumers Open to Branding

PerfomicsとROI Researchから「消費者が日常生活でソーシャルメディアネットワークをどのように使っているか、特に新しい製品を探すときの他のメディアチャネルとの関係」を調べたレポートが出ている。

「消費者の場所で、彼らの言葉で」メッセージを出すことができるマーケターは、消費者を獲得し、売上につなげることができるというレポートだ。

例えば、
  • 34% ソーシャルネットワークで広告を見た後、それら製品・サービス・ブランドを検索した
  • 30% ソーシャルネットワークで新しい製品、サービス、ブランドを知った
などが挙げられている。

ただし、最も注目すべきは、
  • 25% ソーシャルネットワーク経由で友人に製品・サービス・ブランドを勧めた
だろう。FacebookやTwitterは、友人やフォロワーの個人コネクションがある。ユーザは、どちらも平均すると120人前後の友人やフォロワーを持っているから、タッチポイントひとつで最大120人にコンテンツを共有してもらうことができる。こんなメディアはないわけで、そして、情報ソースとして信頼される上位に入る友人から勧められた製品・サービス・ブランドの価値はマスメディア経由の情報よりも価値が高いからだ。



他にもTwitter、Facebook、YouTubeユーザごとにトピックを挙げている。

Twitterユーザ
  • 48% Twitterで広告を見た後、検索した
  • 44% Twitterで製品を勧めた
Facebookでブランドとコネクトしたユーザ
  • 46% 製品について話したり、勧める
  • 44% 製品を買いたい
YouTubeユーザ
  • 36% ソーシャルサイトで知った後、オンラインショップやECサイトへアクセス
  • 31% 他のチャネルで広告を見た後、ブランドについて話した
Source:Performics / Consumers very open to branding, marketing messages on social media sites
Source:MarketingProfs / Social Media Users Open to Branding, Marketing

Twitter、Facebook、YouTubeユーザのいずれもが、ブランドとのタッチポイント後、そのブランドコンテンツを友人やフォロワーと共有している。共有されたユーザは自身でブランドを検索したり、SNSのブランドスペースへ参加したりする。そこがセカンドステージのタッチポイントとなる。そこから次の友人やフォロワーへコンテンツが共有されてゆく。そして、また......。

親ガメ、子ガメ、孫ガメへと次から次へコンテンツが共有されてゆく。カメが接触するタッチポイントにおけるブランド側の体制やコンテンツが前提ではあるが、このフローがソーシャルメディアそのものだ。

しかし、このフローではブランドがコンテンツをコントロールできない。そのため、二の足、三の足を踏んでいる多くのブランドがある。また、自社コンテンツのIPRにがんじがらめになり、折角、コンテンツに手を加えて、カメの背フローに載せようとしてくれるありがたいユーザを拒否するブランドもいる。

消費者は納得したブランドコンテンツを喜んで自分のコネクションに広めようとしている。そして、ソーシャルメディアスペースでブランドに対してオープンな対話を望んでいる。

まず、オンラインモニタリングをするべきなのだが...。

2009/10/23

Ford Social Media Marketing

このところ立て続けにFord、Scott Montyを取上げていたが

参考:Ford: Online Monitoring (Online Ad 2009/09/17)
参考:Ford Social Media Strategy (Online Ad 2009/09/30)
参考:Scott Monty Video (Online Ad 2009/10/14)

BusinessWeekでも、Fordのソーシャルメディアマーケティングについて伝えている。

それによれば、Fordは、今年、マーケティング予算の25%をデジタル分野へ投下(これは業界平均の2倍)している。J.D. Powerによれば業界は平均で9%をデジタル分野へ投下、2012年には12%へ上昇(TVやプリント媒体予算の削減分が当てられる)するようだ。

という前ふりがあり、J.D. PowerのコンファレンスでFordのCMO、James Farleyが語った言葉を紹介している。
我々が行っているように、会社を最初から作り直していることをコミュニケートしたいのなら、それを言うだけでは十分ではない。人々がそのことを他の人たちに伝えるようにしなければならない。
そして、ブランドイメージや購買意思に関する計測指標が上がり続けていることに関して、Scott Montyの言葉を紹介している。
Fordは、デジタル、そして特定のソーシャルメディアが重要な推進力になっているという仮定を持っている。

今年に入り、公的資金を唯一受けなかった自動車メーカー、株価上昇、J.D. Powerによる高い製品評価、Consumer Reportのレポートなどのニュースが、ブランド認知を向上させている。しかし、デジタルコミュニケーションがそれらニュースを増幅させ、消費者の間にこだまさせている。我々が今、享受している機会を広告に帰するのは難しい。
Source:BusinessWeek / Ford Spending 25% of Marketing on Digital and Social Media

「会社を最初から作り直していること」とは、広告あるいはPR、マーケティング戦略を単純にデジタル化しているということではない。企業・ブランド、マスメディア、消費者というゴールデントライアングルを固定観念とすれば、そこから脱却し、観念を転換することを意味する。その前提には、ブランドを所有しているのが企業・ブランドから、消費者に移ったという厳然たる事実を甘受する冷静な認識が必要だ。その認識があって初めて、広告あるいはPR、マーケティングをデジタル化するのではなく、何をデジタル化すべきかが見えてくる。

BusinessWeekの記事でFordのソーシャルメディアマーケティングの一例として広告費「ゼロ」のFiesta Movementが取上げられている。Fiesta Movementが潜在購買(予定)者5万人を獲得しているということは、その10%が実際に購買したとしても数十億円規模以上の売上を上げることになる。Dell_Outlet以外にも、広告費「ゼロ」のソーシャルメディアマーケティングが新しい金字塔を打ち立てることになる。

いや、ソーシャルメディアマーケティングのROI的な話よりも、そこで共有されているのが企業・ブランド側からの固定観念の共有ではなく、個人消費者のリアルな体験だということに注目すべきだろう。そして、その体験が他の人たちに伝えられているということも。

なお、今、Scott Montyの担当テリトリは北米だが、これがグローバルに拡大されるようだ。

2009/10/20

Top Brands by Social Media

ReadWriteWebが、Sysomosのソーシャルメディアプレゼンスをベースにしたトップブランドランキングを伝えている。

ReadWriteWebも書いているように、このランキングはInterbrandが採用している財務データだとか、経済的な付加価値だとかは関係ない。Blog、フォーラム、ニュースサイトなどのソーシャルメディアスペースにおけるプレゼンスから判定している。

だからInterbrandランキングでトップのCoca-Colaは11位だし、7位のGoogleはSysomosではトップになっている。
なお、Sysomosはセンチメント判定もやっていて、そのトップにはSamsungが座り、Nokia、Intel、IBM、そしてCiscoが続いているそうだ。

Source:ReadWriteWeb / The Top 3 Brands by Social Media Presence

家電メーカーとしてSamsungがランキング9位に顔を出し、センチメントでトップに座っているということは非常に大きな意味を持つ。FacebookやTwitter、フォーラム、BlogなどのソーシャルメディアスペースでSamsungブランドが語られているのだ。そして、肯定的なポスト、コメント、エントリ、メッセージにおいてSamsungがトップなのだ。

下の参考で書いたようにソーシャルメディアを意識したマーケティングを行っているSamsungだからこそ、ソーシャルメディアスペースにおける露出、共有、再露出も当然のごとく増えてゆく。

参考:Extreme Sheep LED Art (Online Ad 2009/03/24)
参考:Samsung LED TV Campaign (Online Ad 2009/04/16)

そして、この露出は何も米国に限った話ではない。YouTubeに上がっているExtreme Sheepのビデオは全世界のユーザが視聴しているし、バズの30%は非英語になっている。

すぐにでも手を打つ必要がある状況だ。


Source:YouTube
Source:ViralVideoCharts

なお、Interbrandのランキングの重要性や意味は変わらないだろうが、Sysomosなどが提供するソーシャルメディアにおけるブランドランキングの重要性や意味はこれから一層、重きを増してくることは間違いない。

2009/10/02

JAL Story -2

先日、JAL Storyを書いたが、その後の報道によれば来年3月までに2,800億円、2011年3月末までには4,500億円の資金が必要となる状況で、国交相は破たん回避を明言したが、再建は非常に困難を伴うようだ。

参考:JAL Story (Online Ad 2009/09/14)

一方、Singapore Airlinesは、ユーザ・乗客・予約客のオンライン体験を向上させるため、Sapient Interactiveの力を借りて、Singaporeair.comを全面的に刷新するようだ。

Sapientのプレスリリースによれば、
Singapore Airlinesのオンラインブランドアイデンティティをリデザインし、
End-to-EndのECサービスを拡充し、
グローバルなカスタマー体験を強化する。

新しいグローバルなブランド体験はSingapore Airlinesのグローバルなレピュテーションを反映し、顧客に迅速で分かりやすく、使いやすいオンラインチャネルを提供する。
としている。

今はどこの航空会社ともあまり変わりのないWebサイトだが、これをどれほど変えてくるのか期待したい。(クリックでサイトへ)
Source:Sapient / Singapore Airlines Selects Sapient Interactive to Elevate Online Experience

Singapore Airlinesと言えば、昔からそのホスピタビリティは折り紙つきで、最近もロシアのAeroflotがAir Hostessの研修先に選んだほどだ。
Aeroflot said its current hostess uniforms 'evoke revulsion'
Source:Daily Mail / Aeroflot ditches 'revolting' hostess uniform and reveals: 'We will only hire attractive girls'

そのSingapore Airlinesが、オンラインマーケティングをもう一段ステップアップしてくる。

その理由をいくらか説明してくれる面白いデータが、最近、Nokiaが買収したDopplrにある。

頻繁に長距離便を利用する伝統的なトラベラーがSingapore Airlines、BA、Lufthansaを使うのに対して、デジタルネイティブで若く、高額所得者でより頻繁に旅行するトラベラーはBAがトップとな り、Virgin Atlanticが二位でSingapore Airlinesは三位に落ちる。
そして、旅行関係で航空会社やホテルを推薦されたのは90%。その方法は対面が88%だが、emailが62%、Twitterが28%、Facebookが25%もある。
Source:Dopplr / How the Dopplr Community Travels

このデータだけでSingapore Airlinesが新しいオンラインマーケティングを始めたわけではないが、どこのデータを見ても同じだろう。デジタルネイティブに即したマーケティング をする必要があるのだ。当然、これはその他のメガキャリアも同様の施策を検討しているはずで、今まで以上にオンライン(+携帯+モバイルデバイス)ユーザ を前提としたマーケティングの火花が散ることになる。

そして、その先には当然、FacebookやTwitterがくる。Virgin Atlantic、JetBlueやSouthWestだ けではなく、他のメガキャリアもソーシャルメディアスペースに大きなステップを踏みこんでくることになる。ソーシャルメディアスペースでのプレゼンスとエ ンゲージメントがカギになることは明らかだ。今後、ソーシャルメディアスペースにプレゼンスのないキャリアとあるキャリアのギャップは開くばかりだろう。

一筋縄ではいかないはずのJALの再建に、もうひとつ頭痛の種が増えそうな状況だ。また、この頭痛の種をなんとかする戦略がなければ、再建は...?