2008/07/31

Online Healthcare -1

Googleがつい最近、仮想世界、Livelyをオープンした。ところでGoogleにはImage、Map、Alerts、Trendsなど等、まあ沢山のサービスが提供されている。SL (Second Life)がアップアップしているところに導入されたサービスだから圧倒的な人気を博して...、というのはあまり期待できないだろう。

下のHitwiseのグラフを見れば、検索本体、YouTube、Gmail、Image、Map、Blogger、Newsまでは何とか顔が出ているが、それ以降はあまりグラフに顔が出てこない。まったくGoogleの業績に貢献してないサービスもある。それにLivelyが追加されても現状のプロパティ比率に大きな変動はないだろう。
Source:Hitwise / Google Properties Breakdown

さて、Googleのサービスの中にHealthがある。
このGoogle Healthというサービスは、ユーザプロファイル、体調、薬、アレルギー、カルテ保管、オンラインのヘルスサービス、ドクター検索などを提供してくれる。

迎え撃つ専門サイトには、WebMDを筆頭にRevolution Healthなど多くのサイトが無料、有料サービスを提供している。これら既存サイトが提供するサービスとGoogle Healthの何が違うか、何がメリットかというと何もない
既存サイトにはGoogle Healthのサービスに加えて、子供向けの症状例・対応例、フィットネス、食事や料理レシピ、育児・新生児アドバイスなどの情報がある。男性、女性別の症例やセックス(勃起不全)相談など幅広いサービスも取り揃えている。また、日々の体重、食事などの入力データにより健康指数インデックスを表示、ガン、心臓病の発生確率なども表示し、リスクファクターなどを教えてくれるサービスもある。WebMDなどのように医者、医療機関間のネットワークや、一般企業のヘルスケアサービスをポータルで提供しているところもある。

今のGoogle Healthのコンテンツは、データセンターの稼働率を上げるためだけの内容しかないように見える。とするとGoogleの大半のサービス同様、飛躍的に利用ユーザが増える見込みもなさそうだ。

日本でも、ソフトバンクリブラ、ここカラダ、So-Net M3 (Ask Doctors)、i-revoなど、またポータルサイトが提供しているオンラインメディカルサービスなどがある。どこも基本的に似たり寄ったりのサービスで格別、差異化できているところはない。最先発に近く、2007年Q4に月額315円で33.4万人の会員を抱えるAsk Doctorsだけが一人勝ちのような状況だ。
Source:So-net M3 / 決算資料pdf

オンラインのヘルスケアは今後とも大きな伸びが見込める市場だ。高齢化社会を迎える先進工業国ではインターネットの普及により、症状・症例・治療方法の確認、ダイエット・栄養・ビタミン、医薬品、病院、治療費、保険など様々な医療トピックが検索されている。また、様々な無償、有償サービスがオンラインで提供されている。人間が大きな関心を寄せる事柄なのだ。

少し古いが、PEWのデータによれば2006年にインターネットユーザの80%、18歳以上の1.13億人が何らかの形でオンラインの健康情報を検索している。医者に罹ったインターネットユーザとそうではないユーザは、84%対66%で健康情報を検索している。検索者は若干女性比率が高く、30-49歳が84%、18-29歳が79%、50-64歳が78%だ。インターネット世代が年をとるに連れて中高年のインターネット検索率も上がっていくだろう。検索したトピックの詳細は下の通り。
Source:PEW / Online Health 2006 (pdf)

日本でも同様だ。これも古く、今ではリソースを確認できないのだが、経産省の「健康サービス市場規模」的なデータに国民生活における関心事項がある。2番目と4番目を占めているのが「健康」だ。高齢化が進んでいる日本ならではといったところで、健康意識が非常に高い。
健康ニーズを見越して、Google Healthであれ、日本の同様サービスであれ、オンラインヘルスケア市場へ参入してきているのだが、まだ確立されたマネタイズフォーマットは見当たらない(So-Net M3/Ask Doctorsを除く)。

日本の場合、保険組合が治療費の7割を負担しているだけに、組合員(患者)の意識が高まらない限り、医療費の高騰は留まりそうにもないという状況にありながら、サービスはすべて個人に向いている。

長くなってきたので、続きは日を改めて。

2008/07/30

Anything Possible / Last Lecture by Randy Pausch

このBlogで取り上げるテーマから若干、ずれるかもしれないが、Carnegie Mellon大学、コンピュータサイエンスの教授、Randy Pauschが7月25日、亡くなった。NYTをはじめ多くのメディアが報道していたし、26日付の朝日新聞でも取り上げられていた。

YouTubeに上がっている彼の最終講義のビデオは25日から3日間で140万回も視聴され、累計で500万回以上視聴されている。コメントは5,000件、Blogエントリは4,300を超えている。(それにしてもTechnoratiの検索は毎回、違った結果を出してくる。567だったり、2,719だったり、3,800だったり、メディア化したことでBlog検索エンジンとしての意味が薄れてきたかも...。ということで4,300という数字は可変です)



Source:NYT Well / ‘Last Lecture’ Professor Randy Pausch, 47, Dies
Source:Scientific America / YouTube Lecturer and Virtual Reality Expert Randy Pausch Dies at 47
Source:朝日新聞 / 最後の授業
Source:YouTube / Randy Pausch Last Lecture: Achieving Your Childhood Dreams
Source:Technotati / Randy Pausch

06年8月、5年生存率4%という末期のすい臓がんと診断され、摘出手術後、抗癌剤・放射線治療を受けていたが、肝臓と脾臓に転移。転移後は苦痛緩和治療を受けていた。闘病生活を続ける中で、昨年9月に「Last Lecture / Achieving Your Childfood Dreams」と題した最終講義を行い、今年4月には同名の本を出版し、5月には米ブッシュ大統領から「ガンと戦う人々に勇気を与え、若い人々に学ぶ力を与えた」として感謝状が送られていた。
Source:Randy Pausch's Update page
Source:Randy Pausch / Summary of Adventure

「勝ち目のない戦(No-win scenario)」はないとしてガンと戦ってきたRandy Pauschは敗れたが、彼の勇気、意志の強さ、家族への愛情、そして子供達へ残していったメッセージは全世界のインターネットユーザに伝わっている。特に彼の最終講義ビデオで語られる「子供の時のユメを実現するには、あるいは他の人のユメをどのようにして実現させるか」で語られた「Anything Possible」は耳に残る。

さて、彼の最終講義のように社会へ意味、大義、メッセージを伝えるオンラインでの例として、「Free Hug campaign」がある。「Dove Evolution」もそうだ。「Free Hug」は約3,300万回、「Dove Evolution」は約1,700万回視聴されている。コメントもそれぞれ約67,000件、約8,000件ある。

参考:Free Hug : Global Viral Effect (Online Ad 2006/12/05)
Source:YouTube / Dove Evolution

「Free Hug」、「Dove Evolution」、そして「Anything Possible」のように人々の耳に残るメッセージを世界中に発信でき、対話できるのがインターネットだ。今、インターネットで「何を伝えるか、どんな話に耳を傾けるか、そしてどんな会話をするのか」が問われている。

2008/07/29

comScore : State of the Internet

昨日、「World Broadband Q1 2008」の最後に;
  • あと何年かすると中国の人口を抜くとも予測されているインド、英語ユー ザが大半を占めるインド、携帯ユーザが爆発しているインド。この国が消費する(英語)コンテンツは膨大になる。そしてのその消費するコンテンツは何もイン ド国内だけではない。英国や米国の英語コンテンツも消費されてゆく。
と書いた。

なぜ、このようなことを書いたかというと、それはcomScore, Inc.が7月2日に開催したシンガポールからの「"The State of the Global Internet with a Focus on Asia"」というWebinarに面白いデータがあったからだ。そのプレゼン資料がcomScore.comのプレゼンテーションギャラリーに上がっているので紹介する。

まず、2010年には15歳以上のインターネットユーザが10億人を越えると予想している。地域別に見るとアジア・パシフィックが42%を占めダントツ、1996年には66%を占めていた米国は2008年4月20%へ落ち、2010年には北米としてまとめても20%にとどまる。

米国のシェアが落ち込んで、アジア・パシフィック、西欧、その他地域のシェアが大きく上昇してくる。すなわち、非英語ユーザが増えるということは、米国のパワー、影響力が低下しそうだが...。
以前、「Global Online Marketing and Branding Available」で紹介した、comScoreの別のデータがある。それは2006年9月のUSトップ25Webサイトへの世界からのトラフィックを説明したものだ。当時、トップだったYahoo!の米国の15歳以上のユニークユーザは1.15億だが、全世界のユニークユーザは4.8億人。非USユーザ比率は75.9%だった。

下に挙げられている米国のトップ25サイトの中で、Verizon、AT&T、Target、BOA、Wal-Martなどローカルサイトを除くと、大半のサイトにアクセスする非USユーザの比率は過半数を占めている。米国、すなわち英語サイトなのだが、世界中からアクセスを獲得している。
参考:Global Online Marketing and Branding Available (Online Ad 2006/11/09)
(注:上のエントリでcomScoreのプレスリリースへリンクを張っていたが、プレスリリースそのものが削除されたのでソースは現在存在しない)

さて、2006年9月のデータと、下の今年4月のデータを比べるとGoogleなどのように大きくユーザ数を伸ばしている所もあるが、非USユーザ比率があまり変わっていない。これだけ非US、非英語ユーザ数が増えたにもかかわらず、比率は大体同じだ。

ということは、それだけ非US、非英語ユーザが増えて自国内のサイトコンテンツも充実してきたにもかかわらず、変わらぬことなく、米国の英語サイトへアクセスしているということだ。
そして国ごとに言語による閲覧ページ分布を出している。(クリックで拡大しても分かりづらいので、末尾のリンクからpdfへ)
これによると、英語圏を除けば、英語ページを閲覧しているのは少数派だ。だから、「世界中のオーディエンスは自国語でコンテンツを消費する」とタイトルがついている。
Source:comScore, Inc. / Presentation Gallery

しかし、米・加・英・豪・ニュージーランド・インド・シンガポールなどの英語圏を除いても、マレーシア、香港、日本、中国、台湾、欧州各国、ロシア、南米、南アフリカ、そしてイスラエルでも必ず英語ページの閲覧ユーザがいる。これを英語ネイティブのユーザがアクセスしているだけと片付けられるだろうか?

いやいや、とんでもない。彼ら非英語圏から米国サイトへアクセスしているユーザはアーリーアダプターなのだ。彼らはどこの国、言語のWeb/Blog/SNSサイトであろうと、興味のあるサイト、必要な情報・ニュース・データのあるサイトへはアクセスするのだ。その国で少数派であろうとも、必要な情報、例えば、自国や自社に影響を及ぼす世界の政治、経済、金融、IT、インターネットなどの最新ニュース、情報を探しているのだ。その情報の出所として米国の英語サイトがあるのだ。

最後に紹介したスライドに関しては、こういった理解が正しいと思う。

さて、インドのインターネットユーザが増えると、国内のコンテンツ消費は当然増加する。そして国内発のコンテンツに満足の行かないユーザは海外サイトへアクセスすることになる。

各国の新聞やTV、ポータルやニュースサイトの一面、トップを飾る外国発記事のどれくらいが米国発なのかを考えてみればいい。その国の一般大衆には縁遠いコンテンツであったとして も、その国や企業に及ぼす影響は大きいはずだ。新聞やTV、ポータルやニュースサイトで報道されただけの情報に納得が行かない、もっと詳細情報が必要な場合、あなたならどうするだろ う?米国企業と提携している企業、新しい製品・サービス・ソリューション開発をしている企業、生産拠点を新設しようとしている企業などの担当者、あるいは アーリーアダプターとして様々な情報収集を行っているあなたは、明日の新聞やTVの続報を待つのか、国内のWebサイトが翻訳の続報記事を載せるまで待つのか、それとも米国サイトで詳細情報を収集するのか?

今でも米国サイトのコンテンツを消費しているインドのアーリーアダプターに加えて、アーリーマジョリティが米国コンテンツを消費し始めることになる。これは何もインドに限った話ではない。中国であれ、マレーシアであれ、ブラジルでも、イスラエルでも変わらない。

2008/07/28

World Broadband Q1 2008

Point Topicから2008年Q1のBBデータが出ている。

昨年Q4の四半期ごとの契約者数増加と比較してみる。はっきりと米国の勢いがなくなってきている。2007年Q4で330万契約程度あったのが、2008年Q1には250万程度だ。それに引き換え、中国は留まるところを知らない。2007年Q4で300万程度だったのが、2008年Q1には440万程度まで伸びている。
そして、トータルで見るとまだ米国が7,570万契約、中国が7,100万だ。ただし、両国の差は前四半期で650万あったのが、471万まで縮まってきた。中国がこのままの勢いを維持し、米国が伸び悩むと、ひょっとすると今年のQ4には逆転する可能性がある。(ま、いつもの早とちりで、あたらない可能性も大いにある)
Source:Point Topic / World Broadband Q4 2007 (pdf)
Source:Point Topic / World Broadband Q1 2008 (pdf)

中国とインドが元気だ。中国だけではなく、インドのBBも延びてきた。上の四半期ごとの契約増を見ると2007年Q4には9番目だったが、2008年Q1には日本、ブラジルなどを抜き去って6位、約50万契約増となり、累計では363万契約だ。Point Topicが公表している国の四半期ごとの伸び率の中で、17.36%増というのは最大だ。アジアのBBで見ると、契約増加が鈍ってきた台湾(466万、0.58%増)、オーストラリア(574万、6.4%増)にもうすぐ追いつくだろう。

InternetWorldStats.comによれば、インドのインターネットユーザは6,000万人で、2000年から2007年までの伸びは1,100%だし、comScoreの新しいデータによれば、15歳以上のインターネットユーザは2,800万人で昨年同期比27%増となっている。アジアでは中国、日本に次ぐ3番目のインターネット大国になっている。

あと何年かすると中国の人口を抜くとも予測されているインド、英語ユーザが大半を占めるインド、携帯ユーザが爆発しているインド。この国が消費する(英語)コンテンツは膨大になる。そしてのその消費するコンテンツは何もインド国内だけではない。英国や米国の英語コンテンツも消費されてゆく。

Source:comScore / Top Web Sites in India for May 2008
Source:InternetWorldStats.com
参考:Mobile in India (Online Ad 2008/06/23)

2008/07/25

Critical Ad placement -2

以前、「Critical Ad Placement : Above or Below Folds」を書いたが、そのネタ元になっていたMarketing Sherpaの「Online Advertising Handbook + Benchmarks」の一部が手に入った。

その中に、広告プレースメント場所における視線トラッキングの調査結果を示した下図がある。

Eyetoolsが行った調査によれば、ほとんどのユーザは広告サーバから送信されてきた広告を見ていない。青いエリアで囲まれている部分のボトムは広告を見たユーザの%で、トップはその広告が見える(可視化される)ところまでスクロールして広告を見たユーザの%だ。例えば、一番左端の部分で見ると、「Above Fold」にある広告は100%から59%のユーザが見ている(広告が表示されていても視線が移動していないユーザもいる)。その差、ギャップが41%もいるということだ。

Fold直後の部分で見ると、わざわざスクロールダウンして広告が表示されているエリアまで移動しているが、70%前後から27~8%前後のユーザしか広告を見ていない。そのギャップは45.8%にも及んでいる。

Foldから下に行けば、行くほど、広告を見るユーザの%は減っていく。コラム1の広告1というスペースの場合、スクロールダウンしたユーザのうち25%以下しか広告を見ていない。
参考:Critical Ad Placement : Above or Below Folds (Online Ad 2008/04/30)
Source:Marketing Sherpa / Online Advertising Handbook + Bechmarks

Cookieを削除するユーザを考慮せず、サーバのログデータから単純にユニークユーザを算出するため、ユニークユーザを2.5倍に算出してしまうことを下の参考で取り上げた。膨らんだユニークユーザ数だけでサイト選択を行う広告主は少ないだろうが、正しい評価、検討を行うためにサイト側に努力が求められている。

それ以上に広告主にとってこの「広告プレースメント」問題は重要だ。広告サーバ側で配信したはず、見られたはずのインプレッションをベースに請求されるだけに、この種データもサイト側から提供する透明性が求められる。

参考:Internet, New Primetime (Online Ad 2008/05/26)

2008/07/24

B2B Interactive marketing tactics

先月、BtoB Onlineが「Interactive Marketing Guide 2008」を発表している。

オンライン広告サイズごとの出稿比率、オンライン広告のフォーマットごとの広告費推移・予想など様々なデータがある。その中からいくつか紹介する。

まず、2006年と2007年に実施されたオンライン広告戦術の中で効果の高い戦術を示している。2006年までは検索広告が49%、Email(自社リストベース)が47%、SEOが45%でトップ3に挙げられている。しかし、2007年になると順位が入れ替わり、SEOが57%、BTが44%、Email(自社リストベース)が42%となっている。効果が期待ほどではなかったとして検索広告が49%から34%にまで支持が落ち込んでいる。
次にMcKinseyのデータから「世界中の企業が採用したオンラインマーケティング戦術」を紹介している。上の図では効果があったとするのは2007年で7%しかいないが、83%が採用した戦術のトップにEmailがきている。これは、Emailがニュースレター送信、販促キャンペーン告知、顧客維持、アップセル+クロスセル、ブランド認知向上など多岐にわたって実施されているためだ。採用戦術としては最多なのだが、総合的な効果測定が難しいところから上の評価となっているのだろう。

また、73%が採用したディスプレイ広告が2番目に来ている。これもブランド認知、想起、連想など、検索実行につながる露出を考慮してのことだろう。また、ブランドスポンサーシップや他の戦術とあわせたブランド露出なしに検索広告の効果も上がらないからだ。
そして、同じくMcKinseyのデータから「マーケティング戦術ごとの目標」を紹介している。
ブランド構築目的では、スポンサーシップ、ビデオ広告、ディスプレイ広告が上位3戦術だ。
Source:BtoB Online / Interactive Marketing Guide 2008 (pdf)

最後の図にあるように、ブランド構築、比較・検討、直販、顧客維持、その他という戦術目的の中で、ブランド構築はどの戦術目的よりも大きなシェアを獲得している。

特にB2B企業であれば、検索広告で直販を目的とする企業は少ないだろう。何ヶ月も、あるいは1年以上もリードタイムのある製品・サービスの購買・導入を行うB2B企業にとって、既成メディア同様にブランド構築から、露出を拡散し、バイヤーの情報収集フェーズに適したコンテンツを提供し、引き合い生成やRFPへつなげていくことが重要だ。

オンラインでのブランド構築に着手しているB2B系日本企業はまだいない。

2008/07/23

Olympic Marketing : Visa

北京オリンピックが開幕まで30日を切り、いよいよ各メディアの報道も目立ち始めてきた。

さて、Visaはワールドワイドの公式スポンサーで「Go World」というキャンペーンを5月から立ち挙げている。TVスポット、印刷媒体、オンライン、そしてモバイル広告も予定されている。すでにいくつかのTVスポットは放映されており、オリンピック人気をあおっているようだ。

オンライン広告は、下の「Go World」というマイクロサイトへトラフィックを誘引するもので、このサイトでは過去・現在のアスリートのオリンピック体験、一般の人のオリンピック体験を読んだり、TCVFを見たり、自分のオリンピック体験をアップすることもできる。
Source:BtoB Online / Visa promotes Olympic sponsorship with ‘Go World’ campaign
Source:Visa Olympic & Paralympic Partnership / Marketing

こと、オンラインに関して言うと、「Olympic Marketing : Lenovo」で紹介したように、LenovoのBlogアグリゲーターサービスがVisaの一歩も二歩も先を行っている。

Visaのマイクロサイトで閲覧できるのは今のところMichael Phelpsなど高々、14人でしかない。それも英文200~400字程度のコメントだ。一般人のコメントは今のところ12件だけだ。この出来合いセットに加えて、650文字までの体験を募集しているが、どれだけの人間が書き込むのだろう。

自分のBlogに書いてあるエントリを勝手にRSSで読み込んでくれて、アグリゲータサイトに表示してくれるほうがずっと楽だし、簡単で、Blogに慣れたユーザに垣根が低い。それと比べ、Visaは一見、もっともらしく参加型サイトではあるが、ユーザの行動パターンからはちょっと外れている。アスリートや一般人の体験をメールで転送する機能もなければ、ソーシャルブックマークするボタンもない。することがないので、結局、TVCFを見るボタンを押すことしか残っていない。

参考:Olympic Marketing : Lenovo (Online Ad 2008/07/10)

VisaはUSにおいて昨年6月からFacebookを舞台にしたSMB用のアプリケーション・フォーラムをリリースしている。SMBオーナー間でアイディアを交換し、サプライヤーとコンタクトしたり、顧客ベースを拡大することができ、WSJやEntrepreneur.comが提供する記事、ビデオ、ちょっとしたビジネスチップへもアクセスできる。最初の2万社には100㌦、Facebookでの25万ページインプレッション分の広告がもらえることもあり、当初は一日あたり、1,000社が参加しており、累計で10万社が参加しているそうだ。

USで成功しているため、英国でも今後、数週間でサービスインを予定している。にも関わらず、オリンピック用のキャンペーンは双方向のメリットを活かし切れていない。ちょっともったいない。
Source:B2B Marketing Online / Visa accelerates roll out of UK Facebook application

2008/07/22

Samsung Instinct vs Apple iPhone 3G

今年の始め頃、「Samsung Bullys Blogger」というエントリを書いた。

参考:Samsung Bullys Blogger (Online Ad 2008/01/25)

ま、iPhoneのそっくりさんとして準備していたモデルだけに神経質になっていたのだろう。そしてiPhone 3Gに先駆けて発売されたのが、Instinct だ。Diggなどでバナーキャンペーンをやっていた。(下をクリックするとInstinctサイトへ)
iPhoneを独占販売しているAT&Tに携帯ユーザをさらわれてはたまらないSPRINTとSamsungが組んだパッケージは、当初の見込み、あるいは期待以上に成果を挙げていたようだ。

SPRINTのニュースリリースによれば「6月20日に発売が開始され、最初の一週間でいままでの機種の販売台数記録を軽く越え」ていたそうだ。また、7月9日にこんどはBest Buyからニュースリリースが出ていて、「Instinctは、過去2年間でもっとも売れている機種で、2006年のXmasシーズンに記録したMotorolaのRazrの記録と肩を並べている」と書いている。
Source:Moconews.net / Sprint’s Samsung Instinct Is Selling As Briskly As The Razr Two Years Ago
Source:Sprint / News Release
Source:Best Buy / Samsung Instinct, Exclusively from Sprint, Sets New High for Device Sales at Best Buy

AppleのiPhone 3Gと、SamsungのInstinctをMonocnews.netが比べているように価格的にはInstinctが有利だった。
  • 製品価格
    • Instinct $130(2年契約、契約がなければ$450)、2GBのMiniSD、交換用バッテリ2個
    • iPhone  $199-$299(2年契約、契約がなければ$599-$699)、8G/16G、交換用バッテリなし
  • 利用料金
    • Instinct $99(音声、データ、メッセージ全部込み)
    • iPhone  $129.99(音声、データのみ、+$20でメッセージも)
  • アプリケーション
    • Instinct ナビゲーション、50無料ストリーミング音楽チャネル、Sprint TV、NFLモバイルライブ、NASCAR Sprintカップモバイルなどが無料
    • iPhone  iPhoneアプリストアからサインアップ必要(無料、あるいは無料になる?)
が、形勢は一挙に逆転している。7月11日にiPhone 3Gが発売されて金土日の3日間で100万台を販売したとAppleのプレスリリースは高らかに宣言している。

これだけのビッグヒットは誰も予想できなかったはずだ。だから最初の3日間で42.5万台とネガティブに予想していたPiper Jaffaryは修正に追われている。それもAppleのプレスリリースが出される数時間前にクライアントに出したレポートをプレスリリース後に修正するほどあわてていた。

Source:Apple / press release
Source:CNN Money / Fortune / Piper Jaffray analyzes first weekend iPhone sales
Source:CNN Money / Fortune / Apple: 1 million iPhone 3Gs sold

ところでPiper Jaffaryの資料の中に、「前の携帯キャリアはAT&Tだった?」と、「iPhoneに買い替える前のモデルは?」という質問がある。

「前の携帯キャリアはAT&Tだった?」という質問で、昨年発売した最初のiPhoneの場合、別キャリアからAT&Tに乗り換えたのは52%だったが、今回は38%となっている。前回ほど別キャリアからの乗換えが促進できていない。

「iPhoneに買い替える前のモデルは?」という質問で、最初のiPhoneの場合、Motorolaから乗り換えた人が35%だった。NokiaやTreoから乗り換えたのが13%、Samsungからは9%だった。そしてiPhone 3Gの場合、オリジナルiPhoneからの買い替えが38%と最大だ。そしてMotorolaからが20%、Samsungからが13%となっている。Nokiaからは4%で前回より乗り換えた%が減っている。

唯一、Samsungから乗り換えた%が上がっている。
ということは、前回のiPhoneほど今回のiPhone 3GリリースでAT&Tにうまみはなく、SamsungもInstinct効果をiPhone 3Gで薄められているといったところだろう。最大のうまみを享受しているのはAppleだが、iPhone 3Gユーザはどうなのかしら。

それにしてもMotorolaの元気がないのが鮮明だ。

2008/07/18

Global Reputation

7月9日に、「Reputation Management」というエントリを書いたばかりだが、NYTが8日に「Googleが全米150社中、Reputationで勝利」といった記事を書いていた。

それは、27カ国で600社の大企業を調査し、トップ200社を発表したReputation Instituteの「World's Most Respected Companies 2008 」が元ネタだった。

しかし、米国ではなく、全世界を見ると就業環境、製品・サービス、革新、リーダーシップなど7項目の評価でToyotaが広範に得点を重ねていて、世界トップを占めている。Googleは世界2位なのだ。
トップ20を見ると、USが6社、日本とインドが2社、ブラジル、カナダ、中国、デンマーク、伊、メキシコ、西、スウェーデン、スイスがそれぞれ1社ランクインしている。トップ50で見ると、インド企業が躍進している。Tata、Infosys Technologiesが得点を大きく伸ばし、100位以上のランクを上げている。また、中国のHaier (ハイアール)は70位以上、Faw Groupなども躍進してトップ50入りを果たしている。インドと中国の企業が世界の大企業と肩を並べてきている。
国別にトップと最下位のリストもある。下の27か国中で最低の評価、17.44をもらっているのは、英国で最下位のNorthern Rockだ。昨年のサブプライムローン問題により、イングランド銀行から特別融資を受けたためだろう。
Source:NYTimes.com / Google Wins the Reputation Sweepstakes
Source:Reputation Institute / Global Pulse Reports

このランキングは就業環境、企業市民、企業統治、製品・サービス、革新、リーダーシップ、パフォーマンスという7項目で評価されている。しかし、いつになったら環境、Global Compact、あるいはISO 26000や全く新しい指標が企業活動を評価する中心になるのだろう。マーケティングや財務面から企業の将来価値をランキングしたり、売上高を元にした企業番付、人気企業ランキングなどランキング・番付は花盛りだが、そんな右肩上がりの指標はもう意味がない。

今、地球が抱える環境問題、気候変動、飢餓や水不足、温暖化など、これを手当てしていかなければ企業の成長はもちろん、人類の生存さえありえないのにと思う。

2008/07/17

TIME Mag Subscription Offer, $0?

驚くべき購読勧誘チラシがある。

それは米Timeのポスティングに使われているチラシだ。下図の下部を見ると;

「YES, it's important to me to get real insight into the news. Please send me a full year of TIME -- 56 issues --- for the amount indicated below」

と来て、

「My check is endorsed for $ ( 空 白 ) 」

となっている。
ということは、こちらが記入した金額、「$0」ではだめだろうが、例えば「$1」で年間56冊のTIME誌が購読できるということだ。

PIBは2008年Q1の雑誌の成績(広告収入、広告ページ数)を発表している。全体的に見ると四半期で57億㌦、合計50,695.6ページで、前年同期比それぞれ0.4%減、6.3%減となっている。主だったところだけを拾い上げたが、どれもこれも赤、赤のオンパレードだ。
AARP(全米退職者協会の雑誌)の広告ページ数・広告収入が減っている。うる覚えだが、「Visit Japan」キャンペーンで可処分所得の多い旅行者としてAARP読者がターゲットとしてリストアップされていたような?今でも出稿しているのかしら?米国の中高年もBB化進展と共にインターネット消費時間が増え、雑誌離れが起こっているようだ。

参考:Visit Britain、Visit Kora、Visit Japan (Online Ad 2006/09/28)

ビジネス誌・一般ニュース紙も下げ止まりは見えない。ただ、Wiredだけが一人気を吐いている。
広告費は通常毎年値上げされているから、広告ページ数が減ったとしてもある程度の吸収はできる。しかし、広告ページ数が全体で6.3%も減っていては売上も減らざるを得ない。

Source:New York Post / REPORT: NO PAGE TURNER
Source:Media Bistro / How Much Would You Pay for a Year of Time?
Source:PIB Revenue & Pages / Jan - Mar 2008 vs 2007

だとしても、TIMEの「それこそいくらでもいいから購読してください」的なポスティングチラシは、ブランドの信頼と評価を傷つけ、財務的にもマイナスだ。

2008/07/16

Press Release Grader

Webサイトを様々なポイントからチェック、評価してくれる「WebSiteGrader」というサービスを提供しているHubSpotが、今度はPress Releaseを評価してくれる「PressReleaseGrader」というサービスも始めたようだ。

詳細は6分ほどの下のビデオをどうぞ。



さて、HubSpotから彼らが提唱している「Inbound Marketing」の脇を固めるパーツとして、「Free Press Release Marketing Kit」がある。それにもう言い古されたことだが、旧来からのプレスリリースと、現在のプレスリリースのあり方を説明したスライドがある。

SEO対策としてプレスリリース配信会社を使った露出を拡大するのはどこの企業もやっているだろう。しかし、プレスリリースのターゲットを今までどおりのメディア向けのままにしている企業は多い。今時、プレスリリースを送ってどこそこの大メディアに取り上げられたと喜んだり、広報マンの得点としたところで、その大メディアへのユーザアクセスがなかったり、外部リンクもせず、外部からのリンクも拒絶しているようなメディアも一部まだある。そんなメディアに送るより、メディア化し、既成メディアよりも露出を拡散してくれる一般ユーザ、顧客、見込み客、BlogやSNSへ送ったほうが何倍も価値がある。

知ってますか?
  1. 米国だけで月に5万件のプレスリリースが発行されていることを、ということは、
  2. 一日あたり2,400件のプレスリリースが送られていて、
  3. 1営業時間ごとに300件のプレスリリースになることを。
その中で、御社のプレスリリースがメディアに取り上げられる確率はどれくらいでしょう?よっぽどのブランド企業でなければ、そしてのそのブランド企業のプレスリリースでも「iPhone 3G」的な価値がなければ取り上げられないだろう。ま、「iPhone 3G」ならプレスリリースを発信する必要もないが...。
また、送るべきコンテンツ、フォーマット、リンク、キーワード、頻度、タイミング、効果計測をチェックしていないければ、新しい方式によるプレスリリースは従来同様の効果と悪影響しか及ぼさない。

Source:WebInkNow / Grade your press release (for free!)
Source:HubSpot / Press Release Grader
Source:HubSpot / Free Press Release Marketing Kit (ユーザ登録必要)

せっかくのプレスリリース評価サービスなので、何社かトライしてみた。ただし、このサービスはまだまだベータ的なサービスなので改善リクエストを送る必要はあるし、評価ポイント自体も修正する必要はある。特に何でCanonのプレスリリースが「0点」なのかさっぱり分からない。
  • IBM USA     視覚障害者のインターネットアクセスを改善 76点
  • Panaonic USA  プラズマ・LCD TV向け無料コンシェルジェサービスを提供  48点
  • HP USA      David Shaneを外部コミュニケーションVPに指名 70点
  • Samsung USA   Blu-rayリソースセンター開設 45点
  • Canon USA    EOS Rebel XSアナウンス 0点
ところで中には、プレスリリースの詳細、全文をpdfで提供しているところがある。これでは誰も眼にしてくれず、コンテンツを消費してもくれない。

2008/07/15

JVC Carsteroke campaign

2006年に一度紹介したJVCがまた、新しいCGMを始めている。

雑誌Spin、車ファンサイトStreetfire.net、印刷媒体、Webバナー、バイラルビデオ、サンセット通りのビルボードを動員したキャンペーン(車の中で歌を唄う姿をビデオに撮って応募させ、優勝者にはLAのクラブ出演、JVCのモバイルカーステレオやその他の賞品送る)をプロモーションしている。予算の大半はオンラインだそうで、8月31日まで応募を受け付けている。
実は、JVCは5月からHeavy.comで「Turn me on」というバイラルビデオをアップし、Mobile.jvc.comへの誘引を行っている。
5月13日にアップされた上のビデオは、今日(7月14日)時点で視聴は200万回を越えている。このHeavy.comから5月だけでMobile.jvc.comへ8万ビジットを誘引している。この結果、効果に気を良くして「Carstereoke」キャンペーンを始めたようだ。

Source:Brand week / JVC Mobile Kicks Off 'Carstereoke'
Source:Brand week / How the iPod Killed the Car Stereo Business
参考:JVC Embraces CGM (Online Ad 2006/11/15)

Brand weekはPioneerの動きも書いている。JVCは16-25歳をターゲットとしているのだが、Pioneerはそれよりも上の世代向けに4つの印刷媒体を利用したキャンペーンを5月から開始している。タグラインが「The Best Seat in the House」というこのキャンペーンは、通勤や家族旅行に際して、いかにGPS、Bluetooth、iPod接続を装備したカーオーディオがマッチしているかをプロモートしている。

車載カーオーディオの販売台数が今年の第一四半期で21%もダウンしたし、過去5年間でカーオーディオの認知が30%もダウンしている。この影響をJVCもPioneerも受けている。その主な原因は、iPodおよびiPhoneに代表される携帯デバイスだ。

だからこそ、新しいキャンペーンを両社共に開始しているわけだ。しかし、既成メディアの中でも印刷媒体を選択したPioneerと、オンラインおよびバイラルビデオを選択したJVCに大きな違いがある。25歳以上のファミリー層がターゲットだと言っても、オンラインを外すのはよく理解できない。

2008/07/14

HP Print 2.0: Unlocking the POWER of PRINT

HP Communitiesというサイトがあり、そこに「Print 2.0 Blog」がある。2007年8月20日の「Print 2.0:Unlocking the POWER OF PRINT」というエントリに、QuickTimeのプレゼンがある。これはHPのImaging and Printing GroupのVP、かつCTOであるPatrick Scagliaのプレゼンだ。
実は、2007年5月30日にHPは「Print 2.0」という新しい戦略を発表している。それに関しては和英ともプレスリリースが発表されているが、プレゼン資料ではない。このプレゼン資料は、社内向けともとれる2010年にかけてHPが実行する戦略の元ネタだ。

その元ネタがBlogに公開されていることに驚くし、その中身にも驚かされる。

まず、HPは1995年以前を「Printer」、1995年から2006年までを「Printing」、2006年以降を「Print 2.0」と定義している。「モノ」から「サービス」、そして「サービス」から「(印刷の再定義が必要な)Print 2.0」へ移行すると見ている。
2005年に印刷市場の9%を占めるデジタル印刷は45兆ページに達し、2010年にはシェア10%で54兆ページに達すると推測している。これは2,960億㌦に相当する。2006年にはすでに世界中で1億のWebサイトが存在し、コンテンツ制作や保管は急速にオンラインで行われている。そして印刷されるコンテンツの50%はWebからのものだ。

そこでHPは、製品とコンテンツをリンクできるかと問い、Web時代にあたり印刷の意味を再定義する必要があるとした。それが「Print 2.0」で、これは「デジタルコンテンツから製品を開発」することだという。
デジタルコンテンツには様々な形態がある。しかし、Web用に制作されたコンテンツを、印刷製品用のコンテンツとして利用するためのベストモデルがない。

どうやってここを修正すればいいのかと問い、Tabblo、Snapfishなどエンドユーザ向けのWeb/Blogサイト用印刷ツール提供、写真共有・管理・印刷サービスサイト提供をまず挙げている。

次に、SMB向けのデザインと印刷サービス、続いてオンデマンドの次世代印刷プラットフォームでエンタープライズ市場を狙い、最後に雑誌や新聞の印刷、書籍印刷を40秒でできないのかと自問し、22年間のインクジェット技術をベースにハイエンドの商用印刷にデジタルで切り込むと結んでいる。
Source:HP Communities / Print 2.0 Blog (注:FF3では見られないかもしれないので、IEでどうぞ)

現状把握からビジネスチャンスを探り当て、大きく伸びると期待されるデジタル印刷市場をターゲットとし、また、アナログ市場も視野に入れたHPのIPG戦略がここにある。Tabblo、Snapfishなどを買収し、エンドユーザやWeb/Blog市場のコンテンツ印刷の脇を固め、2007年中盤からHPは3億㌦の予算を組み、「Print 2.0」戦略を具体化した「What do you have to say?」キャンペーンなどを開始している。
それと比べると他のプリンタメーカーの戦略がかすんで見える。

2008/07/11

Face2Face More Positive and Credible than Online?

つい先週、Harris InteractiveとFleishman-Hillardが公表した英・独・仏3カ国での消費者行動および購買決定に関わるインターネットのインパクトをトラックし、計測するDigital Influence Index (DII)を紹介した。

その中で「購買判断にとても、非常に、絶対的に影響したメディア」に関して、「他のどの調査結果でも2番目以下のメディアを大きく引き離して最上位が約束されているはずの「WOM」と「Internet」が互角だ。英を除けば仏・独では「Internet」が「WOM」を上回っている」と紹介した。

参考:Digital Influence Index Study (Online Ad 2008/07/02)

そうすると、Keller FayからオフラインWOMはインターネットよりも信頼できるし、購買意思にもより大きな影響を与えているという調査結果が出てきた。

それによると、米国では一日に35億WOMが発生しており、オフラインWOMはその92%(対面が75%、電話が17%)を占めている。オンラインと判断されるものは合計7%(EmailとIM/テキストが3%ずつ、Chat/Blogが1%)、その他が2%となっている。
WOMを0~10までの段階評価で9、あるいは10という非常に高い信頼をおく比率を見ると、トータルで58%が高い評価をしている。その中でオフラインWOMは59%なのに対してオンラインWOMは49%にしか過ぎない。

対面や電話WOMが59%に比べると、Emailが46%、Text/IMおよびChat/Blogが51%だ。オフラインWOMがオンラインを上回っている。
そして、強く購買意思に影響する点で、オフラインWOMは50%に対してオンラインWOMは43%でしかないとしている。
また、「オフラインに比べオンラインWOMの場合、知らない人同士のコミュニケーションだから信頼性が低い」という説明に加え、調査は、「オフラインWOMでも配偶者、親戚、親友からのWOMが、その他の友人、同僚などよりも高い評価を受ける」としている。

Source:KellerFay /Offline Word of Mouth More Positive and Credible than Online Buzz
Source:Marketing Charts / Offline WOM More Prevalent, Positive and Credible than Online Buzz

Keller FayおよびPQ Mediaは、インターネットに偏っているWOM戦略にオフラインWOMの可能性を示しているのだが、さてこの調査結果をどう解釈すればいいのだろう?

先のHarris InteractiveとFleishman-Hilardの調査は間違いで、やはり対面WOMが購買決定に最大のインパクトを持っているのは事実で、その最新データを明らかにしたKeller Fayが正しいとするのは早計だろう。

何故なら、オフラインでもオンラインでも情報が溢れかえっている現在、オフとオンの情報ソースを切り分けるのは容易ではない。オフラインの新聞、TV、雑誌、OOHなどから仕入れた情報をオフラインWOMに使っていることもあるし、オンラインのWeb/Emial/Chat/IM/Blog/SNSなどから仕入れた情報をオフラインWOMに使っていることもあるからだ。

現在、ユーザの社会生活に浸透してきたインターネットがTV、新聞、雑誌の消費時間を減らしてきている。対面・電話WOMより信頼度は低いが、オンラインWOMも相応の信頼を勝ち得ている。この信頼をベースに対面・電話WOMで語られるコンテンツの中にオンラインWOMが入ってきているのではないだろうか?

逆に考えると会話の92%を占めている対面+電話WOMにしては、信頼度や購買影響度に圧倒的な存在がない。たった7%の会話でしかないオンラインWOMは、信頼や購買影響にそれぞれ49%、43%を獲得している。それだけオンラインの浸透力が大きいということではないだろうか。

また、オフラインWOMが購買決定に影響を及ぼしたとしても、それだけで製品・サービスを購入するだろうか?オフラインWOMを受けた後に行われる仕様、機能、価格の調査、アフターサービスの詳細を調べ、オンラインあるいはリアルショップでの購買まで、大半はオンラインでの情報収集だ。そして価格比較やユーザレビューなどを通してオンラインWOMの信頼性も上がっていくのではないだろうか?

2008/07/10

Olympic Marketing : Lenovo

2月にIOCは、北京オリンピックで初めてBlogに関するガイドラインを公表していた。それまでも2004年のアテネ大会、2006年のトリノ大会で参加選手が勝手にBlogを書いていたが、それは非公式、非公認のBlogだったわけで、今回からIOCのお墨付きのついた選手Blogとなる。

ただし、当然ながら様々な制限がある。立ち入り制限エリア外での静止画、スポーツアクションのない会場内での個人的な写真はBlog掲載がOKだし、個人の自由な表現の範囲ならOKだ。しかし、ジャーナリズム的な形ではNGとなっている。加えて、名にしおう中国だからファイアウォールもそこかしこにできるかもしれない。

そして、Lenovoは30競技、25カ国から100人のアスリートをフィーチャーしたキャンペーン、「Voices of the Olympic Games」を始めるとMarketingVoxが伝えている。

Lenovoのオリンピックサイト:(クリックでサイトへ)
キャンペーンサイト:(クリックでサイトへ)
100人のアスリートはノートPCとカメラをもらい、彼(女)の個人Blogに様々な記事を書き込む。それらがキャンペーンサイトにRSSフィードされる。「Voices of the Olympic Games」へ行けば、アスリート100人が綴る30競技のBlogが読める。写 真はFlickrに供給され、del.icio.usも活用し、別途LenovoのBlog、そしてTwitterでも露出拡散を計画している。

Source:MarketingVox / IOC Gives Blogging Olympians the Conditional Go-Ahead
Source:MarketingVox / Lenovo Tackles Summer Olympic with Social Media Blitz
Source:2008.Lenovo.com
Source:Summergames.lenovo.com

オリンピック出場が今回で5回を数えるバハマ出身で女子走り幅跳びのJackie Edwardsも「Voices of the Olympic Games」キャンペーンに選ばれた一人だ。

個人の最高記録は96年の6.8mで、シドニーでは7位だった。しかし、今回は参加標準記録Bを超えているが最終選考会ではライバルに敗れた。ところが、そのライバル自身はB記録を超えていない。ライバルは追試大会でB記録を上回らなければならないし、そうなるとJackieは今の持ち記録を9cmも上回るA記録を出さなければ出場できない。と、彼女のBlogには、いろいろあってようやく正式にバハマのオリンピック参加選手として選出された話が綴られている。

金メダル確実な選手の声もいいが、より一般の人々に近い選手の体調、コンディション、競技内容や結果、そして彼らの声が聞こえてくる。
「Open Source Data and Analysis」で書いたように、2005年にIBMからPC部門を買収したLenovoはブランド確立に注力しているが、まだまだIBMの検索実績に及んでいない。トリノから公式スポンサーになっているLenovoが今回の北京オリンピックに力を入れているのは良く分かる。

参考:Open Source Data and Analysis (Online Ad 2008/07/03)

だからこそ従来からの露出に加え、今回ソーシャルメディアを活用するマーケティングを採用したことに納得が行く。

オリンピックは世界中が熱狂し、注目するスポーツイベントだが、今まではマスメディアを通した一方通行の情報提供しか行われていなかった。同じ映像の垂れ流しばかりだ。会場の観客が体験した生の感動を伝えるマスメディアはなかった。アテネ以来、個々の観客のWeb/Blogなどから流される情報も大きなうねりにはなっていなかった。

そこに各国の様々なスポーツファンやTV観戦者に対して、出場選手のBlogと、それを収集するサイトをテコに体験を共有してもらうソーシャルマーケティングを採用したわけだ。マスメディアであればどうやっても予算以下しか期待できない露出に比べ、ソーシャルメディアはうまく行けば予算の数倍に値する露出を拡大、拡散することができる。

Lenovoのマーケティングに大きな期待をかけたい。

ただし、他のワールドワイドスポンサー、各国ごとのオリンピックスポンサーも同じようなことを準備しているかもしれない。別に出場選手でなくても会場にいる観客から生の声を吸い上げるBlogアグリゲーターサイトを立ち上げればいいわけだ。個人Blogに競技の写真、動画を載せようと準備している万を超える観客がいる。彼ら、彼女らに協力してもらえばすむことだ。

マスメディアが取り上げないニッチ競技の詳細や、人気競技の舞台裏に近い情報を提供してくれる数多くの観客がいるだろう。彼らが取り上げる、書き込むBlog情報を収集するサイトを公開し、彼らの実体験を世界中の観客に共有してもらうことだ。機材提供や瞬間の記録機械としての公式スポンサーをアピールするだけではなく、世界最高のスポーツ競技会の一瞬、一瞬を伝え、感動を共有してもらうことができるチャネルを構築することができる。

2008/07/09

Reputation Management

MarketingProfsのBlogにPaul Dunayが、「Reputation Mangement for New Media Survey」という記事を書いている。

その中に面白い調査データがあるので紹介する。

「企業は自社ブランドの評判をよく理解しているか?」という設問に対して約60%は、「よく、ある程度理解している」と回答している。が、残りの40%は、「同意できない、あまり同意できない、全然同意できない」としている。
企業(ブランド)の評判はオフラインでも、オンラインでも語られるので、社員のBlogに関する公式な規範、ルールがあるかどうかを訊ねると、63%はポリシーがないとしている。これはトラブルの原因になる。Paul Dunayは2~3日でポリシーを設定したIBMの例を紹介している。
また、Blogポリシーというよりは、Blogだけではなく、SNSやForum、Chat/IMなども包括したソーシャルメディアポリシーとして策定するのがベストだとも書いている。
続いて、2008年に企業の評判を計測したり、モニタリングすることが戦略的な優先課題かどうかを訊いていて、53%があるとしている。

しかし、オンラインでの評判を管理する戦略計画を実行しているかという段になると、58%がやっていない。優先的な課題だと認識してはいるが、実行を伴っていない。既成メディアとは違い、インターネットは各ユーザがメディア化するだけに何らかのモニタリングが必要だろう。
しかし、Beacons (現Cision)、Burrels等の既存のメディアモニタリング会社を54%は使っていない。また、BlogやSNSのフォーラムや掲示板などのソーシャルメディアをモニターするためCymfonyやBuzzMetricsなど使ったモニタリングをしていないのは77%に達している。ところが、Google AlertsやTechnoratiを使った無料モニタリングは63%がしていると回答している。

最後に、オンラインの評判に対する危機管理体勢が、まあまあ、かなり十分だと回答したのは23%しかいない。
Source:MarketingProfs / Paul Dunay / Reputation Management for New Media Survey
(注:アクセスにはメンバーシップ登録必要?)

自社(ブランド)評価、評判をちゃんと理解していないのが40%、社内Blogポリシーがないのが63%、企業の評判をモニタリングすることを53%が優先課題としてはいるが、58%は実行していない。有償モニタリングサービスはあまり使わず、無償サービスで済ませているのが63%。そして危機管理ができていそうにないのが55%となっている。

KFC/Taco Bellの店内を「ねずみ」が自由に歩き回る姿を撮影した下のニュースビデオは約90万回視聴されている。

Whole Foods CEOの匿名での競合(買収)企業こき下ろしBlogや、SonyによるPSPの不透明な(やらせ)Xmasキャンペーン、古くはEdelmanが仕込んだ「Wal-marting across America」など危機管理が必要な局面が必ずある。危機管理体勢が不十分だと判断している55%の企業は「他人の失敗」から学ぶことが少ない。

Surce:Pepperdigital / In case you missed it...
参考:Whole Foods boss rumbled for anonymous postings (Online Ad 2007/07/20)
参考:Wal-Mart Enlists Bloggers in P.R. Campaign (Online Ad 2006/10/19)

2008/07/08

Farewell to Charlene Li

Forrester ResearchのCharlene Liが辞めるようだ。

彼女のBlogエントリ、「Why I'm leaving Forrester」は、7月3日の午前7時頃、TechMemeの3番目に引用されていた。MSのOfficeとLive spaceをワンパッケージ化するEquip、Netflixのビデオストリーミングに関する話に続いて3番目だった。

ITニュースのアグリゲータ最大手のTechMemeが取り上げるほどのニュースだっだ。

共著「Groundswell」の全米行脚キャンペーン以降、Blogの書き込みに時間がかかるようになっていたことに気付いていた。キャンペーンで収集した様々な情報分析に時間を割いているとばかり思っていたが、どうやら彼女の個人Blog、Silicon Valley Moms Blogに答えがあるようだ。

Source:Forrester Blog / Why I'm leaving Forrester

3月の書き込みは、今後1~2ヶ月続く「Groundswell」出版キャンペーンツアーにあたり、San Diegoでの講演に9歳の長男を同行したこと、今後は8歳間近の長女も同行予定だと書いている。5月にはSuperNova2008のパネルプレゼンを予定し、Churchhillクラブのイベントに関わりながら二人の子供を夏休みキャンプに送り出す途中で、仕事の席には必ずつけているコンタクトレンズを忘れていたことに気付き、大きなため息をついたと書いている。

Source:SVMoms Blog Charlene / Moms, daughters, and friendships

「Groundswell」出版キャンペーンツアー前であれば、仕事と家庭の両立は、危ういながらバランスが取れていたはずだ。しかし、全国ツアーが始まり、その後のスケジュールと子供の成長を見通すと、彼女ほどのスーパーウーマンでも難しくなったのかもしれない。

彼女のBlogを最初に引用させてもらったのは、2007年2月の「Measuring Blogging ROI」だった。New Comm Forumで彼女のBlogはForresterの利益100万㌦に相当すると発言してから、そのROI算出根拠を質問する嵐に見舞われ、その数量化のドラフトを提示し、ユーザのフィードバックなどを募集、最終的にROI算出のフレームワークを完成させたことを紹介した。

オープンな対話をするアナリストだと驚いたし、「へーっ」と声が出た。それから今まで彼女のForrester Blogをモニターさせてもらっていた。「Groundswell」だけではなく、「Groundswell」サイトにあるSocial Technographic Profileなども、彼女の力が発揮された集大成だったと思う。それだけに惜しい。

参考:Measuring Blogging ROI (Online Ad 2007/02/06)

彼女の多分、最後の記事にコメントが続々と書き込まれている。今までのところ累計で63件(7/3日時点)、108(7/4日時点)件だ。これほど惜しまれている彼女だから、秋口には別の場所で姿を見せて、新しいBlogを読むことができるかもしれない。

2008/07/07

FF3 Download Guinness World Record

6月19日にアップした「Firefox 3」で18日の昼12時近くにダウンロードしたと書いたが、FF3のダウンロードに参加した証明書を見ると17日になっている。
それはともかく、24時間内に800万回以上のダウンロードが実行されて「ギネス記録」に登録されたようだ。
参考:Firefox 3 (Online Ad 2008/06/19)

ArsTechnicaによると、アクセスするブラウザの45%はFFで、FF3がリリースされた後、その約65%が新バージョンにすでに切り替わっている。
Source:ArsTechnica / Mozilla sets Guinness World Record with Firefox 3 launch

少し古いが、2007年7月、XiTi Monitorがモニターする欧州各国のブラウザごとのバージョンを見ると以下の通り。IE7は約34%でしかない。IE6がまだまだ幅をきかせていた。IE7は2006年10月18日に正式リリースされてから約8ヶ月経っても30%台に留まっていたわけだ。
Source:XiTi Monitor / Browser War: FF2 pulls ahead of IE7 in Europe

新バージョンがリリースされてから1~2週間で過半数がアップグレードしたFFと、8ヶ月経ってもアップグレードユーザが半数にも達しないIE。この違いは大きい。

5月に公開ダウンロードがアナウンスされ、ダウンロード日に確実にダウンロードすると誓約するユーザを募集(約170万人が誓約)、そしてダウンロード日3日前のリマインダ、誓約ユーザマップ、ダウンロード証明書など、グラスルーツマーケティングの勝利だ。ArsTechnicaが書くように、「ユーザに貢献してもらい、FireFoxコミュニティの一部になってもらう」アプローチが多くのユーザの賛同を得たわけだ。そしてこのアプローチがオープンに行われたからこそ、その露出も拡散したわけだ。

いくつものアイディアが詰まったマーケティングは、Mozillaグローバルマーケティングチームが主導した。