2007/09/19

The Baby Boomer Media Consumption Study - 2007

ベビーブーマー(1946年から1964年に生まれた世代、2010年にはこの43歳から61歳の層が8,400万人に達する)のメディア消費においてラジオがいかに大きな位置を占め、彼らがいかに新しいメディアを生活に取り入れているかを調査したBridge Ratingsのデータがある。

まず、ベビーブーマーを2つの群に分けてスクリーニングしている。それによると;
  • 第一群(1946-1954年生まれ:61歳から53歳)
    • 思い出に残るイベント
      JFK、ロバート・ケネディ、マーチン・ルーサー・キングの暗殺、政治、月面着陸、ベトナム戦争、反戦運動、公民権運動、環境運動、女性活動、抗議と暴動、麻薬
    • 主たる特徴
      実験的、個人的、自由な精神、社会的意義志向
  • 第二群(1955-1964年生まれ:52歳から43歳)
    • 思い出に残るイベント
      ウォーターゲート、ニクソン辞任、冷戦、石油禁輸、インフレ、ガソリン不足
    • 主たる特徴
      非楽観主義、政府不信、批判精神
ベビーブーマーの三分の二は第二群に属しており、ラジオ放送局、広告主にとって重要なメディア消費者となっている。またメディア消費パターンを見ると第二群のほうが、新しい技術やメディアを取り入れる傾向があるようだ。

ラジオ、衛星ラジオ、インターネットラジオ、MP3プレイヤーの中で「毎日に欠かせないメディアは?」、「群ごとの週単位でのラジオ聴取時間は?」、「これからの半年でどのメディアをよく聞くか?」などの比較データに加え、「現在と半年前のメディア利用」を調べたデータがある。

それを見ると;
  • 以前よりもメディア消費が減ったトップ3は、読書が57%、新聞が42%、映画が41%
  • 以前よりもメディア消費が増えたトップ3は、コンピュータが33%、携帯が30%、インターネットが20%
  • しかし、以前と同様に消費しているトップ3は、ラジオが73%、インターネットが70%、雑誌が55%
となっている。
Source:Bridge Ratings / The Baby Boomer Media Consumption Study - 2007

中高年世代が支えていると見られている書籍、新聞も彼らにとって聖域ではなく、メディア消費が移行するにつれて地盤沈下するのは避けられないようだ。彼らベビーブーマーでさえこうなのだから、それ以降の世代はと考えると、自ずと露出が必要とされるコアメディアは明らかだ。そして、ベビーブーマーという中高年世代であろうと、コンピュータ、携帯、そしてインターネットが三種の神器的な扱いをされていることに納得してしまう。

2007/09/18

Behavior Targeting & Purchase Funnel

Juniper Reseachが行ったBT (Behavioral Targeting) に関するデータがRevenue Scienceから出ている。
  • どのような広告タイプが消費者の関心と行動を生起するのか?どの程度までオンライン消費者は広告戦略を受容するのか?
  • BT受容オーディエンスの規模、特にオンラインショッピング傾向に関する該当グループの特性は?
  • いかにインターネットは日常のショッピングに適合するか?
  • いかにインターネットはショッピング過程に適合するか?
  • BTを通してオンラインショッパーに訴求する可能性はどれくらいか?
などを2007年4月に2,035人のオンライン消費者を対象に行われた調査だ。

まず三分の二のオンラインユーザは広告を見ることで何らかのアクションをおこしている。ここで興味深いのが下の2項目だ。
  • 12% 広告/製品に関して友人に話した
  • 8%  広告を友人に転送した
合計20%が広告の露出を広げ、情報共有を行っているということだ。企業がコントロールできないブランドの共有をユーザ自身が先導している。
オンラインショッパーにも、頻繁に購入してたり、たまに買う人、そしてまったく買わない人がいる。それぞれのグループ内でBT (Behavioral Targeting) を受容する人、CT (Contexual Targeting) を受容する人の比率を見ると、BT受容の比率がどのグループでも高い。
次に購入意思形成のプロセスを以下のように分解している。Insprire/Initiateプロセスで、一般的な製品情報をチェックし、何があるのか確認しているが、ここは「AISAS」の「AI」、Compareプロセスが「S」、Executeが「A」に相当するのだろう。
また、BT広告はファイナンス、自動車、旅行などカテゴリー別の購入予定者の場合、CTよりも認知されるというデータも出している。
Source:Revenue Science / Juniper Research Study (pdf)
(注:pdfダウンロードには登録必要)

ところで購入意思形成のプロセスで「情報の共有」を行うプロセス、「AISAS」の最後の「S」が検討されていない。また、上述のように「12%:広告/製品に関して友人に話した」、「8%:広告を友人に転送した」というアクションをAISASプロセスのどのステージへでも還流させる仕組みについては言及していない。

ここが肝になる。BTなり、CTなりを実行し、アクションを起こしたオンライン消費者に対して「購入意思形成のプロセス」で獲得した情報を発信、共有させることで一層の露出を促進し、アクションを拡大することこそが重要だ。プロセスに入った消費者を最終購入まで導くのと同時に、自発的なクチコミ営業マン化させる仕組みがなければ以前と同様に一方的な情報提供、露出の予算規模、ブランド認知勝負となるだけだ。

2007/09/14

US Ad Spending Down 0.3% in 1H 2007

TNS Media Intelligenceが、2007年上半期の広告費データを発表した。それによると前年比0.3%減の725.9億㌦となっている。

2001年以降、初めて2四半期続けて広告費が減少したそうだ。メディア別に見ると、インターネット、雑誌、屋外が増えているが、TV、新聞、ラジオの広告費減少に歯止めがかかっていない。最も大きな減少を記録したのはB2B専門誌が7.2%減を記録している。

昨日の「B2B Top 100 Advertisers」にあるように2006年のビジネス専門誌への広告費は前年比2.7%減となっていたが、その傾向が続いているようだ。全体として前年比4.6%の伸びを見せている雑誌カテゴリの中でもB2B・ビジネス雑誌が苦戦している。次に新聞の全国紙の減少が大きい。17.7億㌦から16.5億㌦へと6.4%下がり、1.2億㌦の減少だ。ここもインターネットからの広告売上が伸びているにしても紙の売上減をカバーするところまではいっておらず、苦しい時期が長引きそうだ。

この原因の多くは自動車メーカーのようだが、総じて弱含みの経済を反映したものになったようだ。そのため下半期も厳しい局面が続くと予想している。

そんな中でもインターネットは広告費を獲得し、全メディアの7.6%を占め、前年同期の6位からラジオを抜いて5位に上がっている。

Source:TNS Media Intelligence / U.S. Advertising Expenditures Decreased 0.3 percent in First Half of 2007
参考:B2B Top 100 Advertisers (Online Ad)

TNSが言うように全国、ローカルTVともにシェアを落としてはいるが合計するとまだ43.6%を占めた中心メディアであることに変わりはない。

しかし、昨年6月に出されたOPAの「A Day in the Life」という資料がある。それによるとメディア消費時間では2005年時点ですでにオンラインは23%を占めている。にもかかわらずオンラインの広告費シェアはたったの6%にしか達していない。その逆に雑誌は7%、新聞は10%のメディア消費時間にしか過ぎないが、それぞれ21%、22%の広告費シェアを持っている。

この逆転現象がいつ解消されるのだろう。いや、少なくとも是正されるのはいつだろう?
Source:OPA / A day in the Life (pdf)
参考:OPA "A Day in the Life" (Online Ad)
(注:参考に上げていたpdfのリンク先が変更されていたので上のpdfリンクを参照のこと)

2007/09/13

B2B Top 100 Advertisers

TNS Media Intelligenceのデータを分析し、2005年に141.9億㌦だったB2B広告は2006年に1.4%アップの143.9億㌦に達したというBtoBのレポートが公表された。

トップは2005年末にSBCが買収したAT&Tだ。「Your World. Delivered」という一大キャンペーンを行い、前年比10.4%増の4.2億㌦をB2B広告に支出している。2番目はMCIを買収したVerizonで、3番目もSprintとNextelが合併したSprint-Nextelと上位を通信会社が占めている。

全B2B企業がどういった媒体に広告費を投入しているかを見ると、
  • 26.0% ビジネス専門誌(前年比2.7%減
  • 13.4% ローカル新聞(同6.4%減
  • 10.6% 一般消費者向け雑誌(同1.9%増)
  • 10.4% ネットワークTV(同0.1%増)
  • 9.6%  インターネット(同17.0%増)
インターネットの前年比増を上回るのはヒスパニック系雑誌の同36.7%増だけだ。

しかし、これをトップ100の広告主だけで見ると、インターネットは前年比21.4%増で伸び率トップの媒体となり、ネットワークTVへの広告支出13.3億㌦の半分以上、7.8億㌦を占めている。ローカル新聞はトップ100広告主から9.5億㌦の広告費を集め、媒体順位で2位を占めているが、前年比14.2%と大幅な減少を記録している。今年はインターネットがローカル新聞を追い抜いて2番目の媒体になるのではないだろうか。
(クリックで拡大)
次ぎにインターネットを使ったトップ50広告主を見ると、Monster Worldwideがダントツだ。前年比79.6%増の1億㌦を投下している。全体予算ではトップのAT&TはネットワークTV、ローカル新聞、スポットTVなどで大量露出をしていたので、インターネットに限ると前年比2倍に増やしてはいても270万㌦しかなく、6位に留まっている。

B2B総広告費2.2億㌦で全体の5位、その30%近くの6,000万㌦以上をインターネットに投下して2位に入っているHPが注目される。HPはネットワークおよびスポットTV出稿が少なく、合計しても750万㌦程度だ。7,000万㌦のIBM、2,800万㌦のMSと比べると一桁少ない。特にIBMはインターネットには780万㌦しか出稿しておらず、HPはその8倍弱を出稿している。IBMやMSが総花的な広告予算配分をしているだけに、いかにHPがインターネットをB2B広告で活用しているかがわかる。
(クリックで拡大)
Source:BtoB / Top 100 b-to-b advertisers increased spending 3% in '06
Source:BtoB / TopAdvertisers (pdf)

HPは有り余る広告予算の中からインターネットを選択したのではない。過去何年かにわたる広告効果の測定、B2Bに必要な引き合い生成効果、伝播露出による効果、ビジネス専門紙誌とのクロスメディアミックスによる露出最大化など、多様な実績と効果を元にインターネットをB2Bのコアメディアとしたのだろう。

HPのようにTV出稿を削りながら、インターネットをB2Bのコアメディアとして活用する企業がいる中、うちはB2BだからB2C企業のような広告費はかけられないとか、広告してどれだけ売れるのかといった基本的な問いかけがある。しかし、既成メディアでの露出に加え、オンライン露出のギャップが拡大する中、この基本的な問いかけを繰り返すしかないのだろうか。また、ユーザが既成メディアからインターネットへメディア消費を移行させる中、メディアシフトを考慮しないメディアプランにいつまで承認を与えるのだろうか。

2007/09/12

Internet in China

CNNIC (China Network Information Center) が20回目のインターネットレポートを公表している。

それによると中国のインターネット人口は2007年6月時点で1億6,200万人を突破、米国の2億1,100万人に次ぎ世界第二位、半年で31.7%も増加、インターネット普及率は12.3%に達したとしている。
そして、わざわざロジャースのベルカーブを引き、普及率が10%を超えたことは、普及の次の段階に進んだことを意味し、次の3~5年にかけてより急激なユーザ数増加が見込まれるとしている。
様々なデータがあるのだが、その中からいくつか拾ってみる。
まず、時間ごとのインターネット利用状況がある。合計、学生、非学生ユーザの利用時間帯を見ると全般的に非学生ユーザの利用が全時間帯を通して最大。午後8時から10時までを見ると非学生ユーザの60%以上がアクセスしている。合計ユーザを見ても50%以上はクリアしているからオンライン広告の時間帯指定というのはひとつポイントになりそうだ。
インターネットユーザと非ユーザの間で情報を入手するチャネルはどうなっているかというと。非ユーザはTVに偏った形で情報を入手しているが、インターネットユーザは非ユーザに比べ、新聞、雑誌、携帯、書籍、ラジオでより情報を入手している。情報感度の高いユーザだということが明白だ。

とくに25-40歳のインターネットユーザに限ってみると、どの媒体を通した情報入手が他のインターネットユーザよりも多い。また、全インターネットユーザがTVを二番目のメディアとしているのと比べ、新聞が二番目に上がり、TVの順位が3番目に落ちている。加えて携帯が4位に上がっている。デジタルメディアの感度が非常に強いのが見える。
次に面白いデータとして、コミュニケーションのツールとしてIMとEmailを比較している。韓国と米国と比べて中国のインターネットユーザはEmailよりもIMをより使っている。

Online Time More to Content Than E-mail」で、

ひとつ気になるのはIMの利用が進み、Emailが通信ビークルの地位を脅かされていそうなことだ。これにTwitterや同様サービスを加えるとフリーメールを使うユーザ数やメール数、頻度にも影響が出ているのかもしれない。

と書いた。中国ではEmailによる情報の受発信が開花する前にIMのリアルタイム性がユーザの人気を集めているのかもしれないが、中国が一歩先を行っているのかもしれない。
次に今後6ヶ月のうちにインターネット利用をするかどうかという質問に2.9%が「必ず」と答えている。これは約2,000万人にあたる。「多分」と答えた9.3%を加えると1億前後の人が利用するかもしれないメディアだということだ。
Source:CNNIC / The 20th Survey Report (pdf)

中国のメディアとしてインターネットは最重要ではあることに間違いはない。しかし、「Power of Internet」で書いたように中国では検閲が大手を振ってまかり通っているのも事実だ。

参考:Power of Internet (Online Ad)

2007/09/11

Guardian American Website

5月の頭にPress Gazetteが、Guardianがワシントンベースのジャーナリスト、Michael TomaskyをGuardian America Webサイトの編集長に指名したと言う記事を書いていた。彼は北米でのGuardianのプレゼンスを高め、サイトのニュースやフロントページの記事を強化することになっているという話だった。

そして今月に入り、New York Observerが今月中にもGuardian Americaが立ち上がると伝えている。

Source:Press Gazette / Guardian appoints US website editor
Source:New York Observer / Guardian Reclaims America

ABC Electronicが公査した今年7月のGuardian Unlimitedのユニークユーザ数は1,606万人、PVは1億5,700万となっている。このユニークユーザのうち、63%の1,000万人以上は英国以外からのユーザだ。New York Observerによるとその半数以上の590万人が米国からのユーザだという。英国の590万と同じ数のユーザが米国にいるわけだ。

Source:ABCE / Guardian Unlimited July Audit (pdf)

以前、「Guardian moves towards digital future」で、Guardian News & Mediaの取締役、Tim Brooksの言葉;

英国の新聞社としてではなくグローバルマーケットを視野に入れ、「世界の先頭を切るリベラルメディア」となる意思、目標を持っている

を紹介し、

欧州の英国に本拠を持つ新聞社のWebサイトといった属性だけでは将来は見通せない。英語ニュースサイトとして、英国だけではなく世界のインターネットユーザに訴求する戦略が求められるはずだ。

と書いた。その戦略の一環がいよいよ姿を現してきたということだろう。

参考:Guardian moves towards digital future (Online Ad)

ただし、Guardian Americaのトップページには米国関連記事が載り、週に2~3本の米国発記事が来るだけで、その他のコンテンツは英国版を流用するようだ。米国のイラク政策にある意味で迎合していた米国メディアに飽き足らず英国のリベラルサイト、Guardian Unlimitedにアクセスした米国のリベラル知識人が、Guardian Americaへアクセスするかどうかは定かではない。また、米国ユーザがGuardian米国サイトへアクセスすると、Guardian本体へのアクセスが減少し、本体の媒体価値が下がる。これをどう見ているのだろう?

New York Observerは今回の記事に関して、Guardian(新聞)の編集長Alan Rusbridgerの昔からの米国進出意欲から書き起こしているが、広告ビジネスサイドの情報がない。英語メディアだからできる米国進出だが、なぜGuardian本体に米国発の記事を増やす形ではなく、米国版Webを立ち上げる決断が下されたのだろう。そしてそのコストをどうやって負担するのかが疑問だ。

2007/09/10

Apple iPhone Marketing

先週、AppleのSteve Jobsが誇らかに「iPod Touch」など新製品のリリースを発表した。と同時にiPhone 8GBの価格も599㌦から399㌦へと、200㌦の値下げも発表された。
するとMicro Persuasion の Steve Rubel が9月5日に怒り心頭のコメントをTwitterで書き連ねていた。
iPhoneの発売直後に入手し、まるでその広告塔であるかのように露出を行っていたRubelにしても怒りが収まらなかったようだ。それは20万人前後のその他、大勢の頭にきたiPhoneユーザと同じだ。たった2ヶ月やそこらで200㌦も値下げされては新製品に飛びついたユーザはたまらない。金を返せの大合唱があちこちで沸き起こってきた。

Technoratiで、「iPhone Price Cut」で検索したところ9月6日に1,400件に迫るほどBlog書込みがされている。
ユーザの怒りの声はBlogだけではなく、Appleの株価へも影響を与えていた。5日には5%程度下落し、6日も1.28%続落している。新製品の発表で年末商戦の勢いを加速させ、売上・利益増を目指していた目論見が泡と消えかねないほどの影響だ。
ここまで株価に影響があるとAppleも黙っていられないのは当然だ。AppleはiPhoneユーザに対してJobsのオープンレターを公開した。

To all iPhone customers:

I have received hundreds of emails from iPhone customers who are upset about Apple dropping the price of iPhone by $200 two months after it went on sale. After reading every one of these emails, I have some observations and conclusions.

だからAppleストアなどで100㌦のクレジット返金を決定した。詳細は来週発表すると書き、

We want to do the right thing for our valued iPhone customers. We apologize for disappointing some of you, and we are doing our best to live up to your high expectations of Apple.

と結んでいる。

Source:Slashpohne.com/ Apple stock falls after iPhone price cut
Source:Search views/Apple Dissed Early Adopters
Source:Apple Open Letter To all iPhone customers

それにしてもSteve Rubelは機嫌を直すのが早い。6日にはこう書いている。
  • I am very satisfied that Steve Jobs posted this letter and that he is offering us $100 in credits. Good call.
さてさて、一番取り扱いを注意しなければならないイノベーターやアーリーアダプターをコケにするAppleのマーケティングは信じられない。発売開始後68日目に200㌦という大幅な価格改定を行うに当たり、どのような反響、影響を考えていたのだろう。

既存製品を代替するような、あるいは拡張機能付き新製品発表には既存ユーザに対する特段の注意と配慮が必要なわけだが、メーカーの一方的な戦略というよりも思い込み、新機能搭載の新しい製品を出せば売れるという思いしか伝わってこない。また、この時代に一方的な押し付けがどのように消化され、流通、再編され、発信されてゆくのかを検討さえしていなかったとしか思えない。上手の手から水が漏れたというよりも、漏れる水を見過ごした、無視したおごりがある。

最後に蛇足も蛇足だが、Nokiaは9月5日に、「Sorry, Early Adapters. iPhone drops $200. Salvage yours with free content as MOSH」という検索広告を出している。これはマーケティングとして抜け目がないというよりは、全く意味のないマーケティングであり、Nokiaのブランドを下げるだけの効果しかない。
Source:TechCrunch / Nokia Marketing Team Reaches Out To Angry iPhone Users

2007/09/07

World Broadband Statistics Report - Q1 2007

Point Topicから2007Q1のブロードバンドレポートが出ている。

2007年Q1は、1,740万回線が増え、2.981億回線となった。四半期の伸びは6.2%、前年対比では28.7%だ。全世界の普及率は5.68%だが数年前までの伸び率と比べると明らかに停滞している。特にアジアパシフィック、そして北米での停滞が顕著だ。その中でもまだ西欧、東欧、東南アジアはシェアを伸ばしている。
2006年Q4
2007年Q1
ブロードバンド普及国の順位で変動があったのは2006Q4でドイツに抜かれた韓国が2007Q1にはフランスにも抜かれて5位に落ちている。韓国は1,410万人の契約者がいるが伸びが鈍化している。この四半期で0.4%で、平均の6.2%から大きく離されている。
英国もひたひたと後を追ってきているのでQ2には抜かれるのかもしれない。

また、中国と米国の差は2006Q4の540万から2007Q1には410万にまで縮まってきている。来年には必ず中国がブロードバンド普及国トップに躍り出るはずだ。
2006年12月
2007年3月
世帯普及率を見ると韓国が89.4%、香港が87.4%で上位を占めているが、モナコ、ノルウェーがランキングを伸ばしている。あおりを受けて、カナダはランク外へ、イスラエルも10位まで落ちた。
2006年Q4
2007年Q1
Source:Point Topic / World Broadband Statistics Report - Q1 2007 (pdf)
注:ダウンロードにはユーザ登録必要
参考:World Broadband Statistics Report - Q4 2006 (Online Ad)

2007/09/06

Websites of American Magazines 2007

Bivingsが昨年に続いて雑誌のWeb対応比較をやっている。

サマリ
以下のように昨年と比較すると今年、多くの項目で雑誌WebサイトのWeb2.0対応が強化されているのが分かる。
  • 58%(昨年40%) 記者Blog提供
  • 54%(昨年34%) Blogコメント許可 
  • 60%(昨年34%) ビデオ配信
  • 36%(昨年14%) ブックマーク
  • 34%(昨年12%) モバイル
しかし、雑誌サイトを新聞サイトと比較してみるとタグを除くすべての比較項目でまだ新聞サイトが雑誌サイトの対応を上回っている。
特に新聞Webサイトでは、RSSフィード、個別RSSフィード、Blog、Blogコメント、ビデオが対応90%を上回っているが、雑誌Webサイトはまだまだこれからといった状況だ。
Source:Bivings /Analyzing the Websites of American Magazines
Source:Bivings / Analyzing the Websiets of American Magazines (pdf)

Bivingsは新聞と雑誌のWeb2.0対応の違いを、新聞は毎日最新情報を発信する属性を持つが、雑誌は日常生活に対するエクストラでありしばしば娯楽中心になっている。そのため雑誌は最新情報を求めるユーザやアプリケーションユーザ向けというよりも、一般的なBrowserユーザ向けとなっているのがその違いだろうとしている。

さて、日本の雑誌、新聞のWebサイトのWeb2.0対応はどうなのだろう。昨年、Bivingsが日本の新聞社のWebサイトを評価したデータを紹介した。その結論として;

しかし、日本人は活字 やTVといった従来のメディアを好み、また、メディアの信頼度で新聞が群を抜く存在であるため、日本の新聞はWeb2.0を米国ほどは導入していない。加 えて、携帯電話へのニュース提供などは米国を引き離しており、日本の新聞が大きな後れを取っているわけではないと結論づけている。

と2003年の日経新聞の調査結果を引用して、メディアの信頼度を測っていた。その後の活字離れ、新聞離れ、既成メディア離れなどの後、どんな対応になっているのだろう。興味が尽きない。

参考:The Use of the Internet by Japanese Newspaper (Online Ad)

2007/09/05

Will Podcasting Survive?

Alex Iskold Technology BlogでPodcast/Podcastingを考察している。

プロ制作のコンテンツ、放送局による放送番組選択、ブロードキャストというラジオと、ユーザが生成するコンテンツ(UGC)、ユーザの聴取選択、オンデマンドというPodcastとの対比から始まり、ブロードバンド化によりサイズの大きいオーディオファイルを取り扱うことに障害はなく、2004年にPodcastingが登場したとき、多くの人々が飛びつき人気を博していたと分析している。

しかし、近頃、この熱狂も冷めたようだとしてGoogle Trendsで検索実績を比較している。
Podcast、Video、Blogでの検索実績トレンドを見ると下のようにPodcastは2004年Q4以来、低空飛行を続けている。(注:Alex IskoldのBlogではPodcastingを含めPodcastとVideo、 Blog、Podcastingと3つの図を使って比較している)
Podcastの不運は、オンラインビデオ、Blogと競合しなければならない点だ。ビデオはクールで、短く、オンデマンドで消費でき、五感に訴えられるが、音楽以外のPodcastは会話、議論、演説などを集中して聞き取らなければならない。だから仕事をしながら聴取できる音楽とも競合できない。

Nielsen BuzzMetricsでVideo、Blog、Podcastを比較しても、Podcastは地を這うような状況だ。(注:Alex IskoldのBlogではPodcasting、Podcasts、Videoを比較している)

Blogが脅威だ。Blogは拾い読みができるが、Podcastは拾い聴きができない。Webページを読むことには慣れているが、長時間の議論をビジュアルなしで聴取することには慣れていない。ラジオコンテンツの大半は音楽、あるいはニュースであり、Podcastのコンテンツおよびフォーマット自体、ユーザに適応してもらう垣根がある。
次に、利用の制限、困難な資金化、大手メディアとの競合などを続けて結論を出している。

Podcastは人気が回復する兆しはないし、Podcastingも現状下り坂を下っている。ビデオやBlog、既成メディアとの熾烈な競合、そして明確なマネタイズ方式の欠如により、Podcastingに人々が飛びつく十分なインセンティブがない。が、Podcastが存在できないというわけではない。

Podcastのおかけで既成メディアが提供するコンテンツと、個人が提供するコンテンツを選択する権利が与えられ、既成メディアはユーザのニーズに則した形でコンテンツを提供せざるを得ない。その結果、ユーザが望むときに、どこにいてもコンテンツを消費することができるのだ。

ビデオほど人気にならないとしても、Podcastに何が次に起ころうと、実際に出現したものだということ自体が重要だ。大きな波になってはいないとしても、意味のある波として、と締めくくっている。

Source:The Editors Weblog /Podcast use stagnates
Source:Alex Iskold Technology Blog / Will Podcasting Survive?

彼の結論は、Blogやビデオを前にすると音楽以外のPodcastは死期が近いと聞こえてくる。

インターネットが一部の人間にだけ利用されていた昔からすると、そのリソース、コンテンツは11億人以上のユーザに解放されてきてはいる。ユーザ自身がメディア化することで、様々な自己主張、コンテンツ制作が行われている。その中で、表現のひとつとしてあるPodcastが生き残るには、マルチタスク環境でコンテンツを消費するユーザにアピール、訴求することが必要だ。しかし、マルチタスク環境では音楽以外の集中が要求されるPodcastに存在感はないし、訴求力もないように見える。

以前、一時期日本の車メーカーの社長のスピーチがPodcastで提供されており、なぜビデオではなく、Podcastなのかと疑問になったことがある。以降はビデオで提供されているが、それが再度、Podcastで提供されることはないし、検討されることもないのだろう。

音楽以外と、プロ制作を除き、一般ユーザが制作するPodcastは死期が近い。

2007/09/03

Netvibes goes iPhone

Netvibesがモバイル対応を改良強化し、加えてiPhone対応となった。

タブ、フィード、Todoリスト、検索、FacebookのWidget、email、twitter、del.icio.usなどなどPC仕様の全てがモバイル対応だ。また、iPhone版も開発コミュニティからWidgetが提供された。

iPhoneユーザでなくても下の画面は、ここから試してみることができる。(NetvibesのID必要)
モバイル版を試すだけなら、ここへ。(同)
Source:Netvibes Blog / Going mobile: netvibes in your pocket

背景が違うが、Netvibesのモバイル対応が迅速だ。

FAMEの「Global Mobile Mindset」、OPAの「Going Mobile」、Ipsos Moriの「Mobile Internet in UK」などでモバイルの動きを紹介してきた。特にFAMEの調査によれば;

全世界のユーザは、仕事と家庭生活をブレンドしてくれるSMSテキストメッセージ、無線email、モバイルIMなどのプレミアムサービスに喜んでお金を 払うと回 答している。加えて40%の西欧ユーザは携帯端末への依存性が高いことを認めており、15%は今以上に携帯利用を増やすと答えている。また、途上国でもマ ルチメディアコンテンツ、メッセージング、端末のパーソナル化が差別化の大きな要因だとされている。

また、「Global Mobile Mindset」の最後に以下のように書いた。

人と人をつなぐメッセージング機能をテコに、マルチメディアやパーソナル端末が充実してくると、一層、携帯端末が個人のメディア化を促進するだろう。また、世界の半数近くにも普及する携帯端末はブランドメディアビークルとして重要性を増してくる。

この流れを積極的に意識したプラットフォーム作りをしているように見えるのがNetvibesだ。

参考:Global Mobile Mindset (Online Ad)
参考:Going Mobile (Online Ad)
参考:Mobile Internet in UK (Online Ad)

No Map in USA

たまには息抜きの話題をひとつ。

ちょっと可哀想な気もするが、今、ガンガンに視聴されているビデオは「Miss Teen USA 2007 - South Carolina answers a question」だ。

Vidmeterによれば日本時間の9月3日朝時点で、2,160万回以上視聴されており、米国時間8月27日から9月2日まで毎日の視聴回数トップを続けている。コメント数も70,000を越え、リンク数は5,000を超えている。コンテストは8月24日に開催されているのでYouTubeにアップされたのは25日だろう。たった1週間ちょっとやそこらで2,100万回以上の視聴をたたき出すのはそれだけの理由がある。

このビデオで南カロライナからミスティーンコンテストに参加した子、Lauren Caitlin Upton (18)が、「米国人の五分の一が世界地図で米国を指し示せないのはなぜ」という質問に対して、「地図を持っていないから」と答え、後は「南アフリカやイラクのような国、そんな国々に、米国の教育で米国、南アフリカ、イラク、アジア諸国の教育を支援し、将来を作って...」とか訳の分からないことをしゃべったからだ。

Source:Vidmeter / Top 100

それにしても意地悪な質問だ。教育相に「なぜ米国人の五分の一が世界地図にある米国を示せないのか?」と聞いたところで答えがあるはずもない。YouTubeには、「アホなブロンド美人の典型」的なコメントが多いが、下の地下鉄マップで彼女の発言の揚げ足取りをしているサイトには感心させられた。
Source:THE MORNING TOAST / I'm sorry I missed the Miss Teen USA pagent

2007/08/30

Why Do I Blog?

7月20日に、「Whole Foods boss rumbled for annonymous postings」を書いた。

その後も、Whole Foods MarketがWild Oatsを買収する件は、数度にわたりFTCが地裁に中止や差し止めを求めていたが、地裁はそれらを棄却し、8月28日に買収は完了したようだ。買収完了の プレスリリースにコメントを載せてはいるが、SECの調査が入った7月17日以降、CEOのJohn MackeyのBlogは更新されておらず、だんまりを決め込んでいる。また、同様に17日付けで取締役会がオンラインのファイナンスボードへの書き込みを独立した内部委員会が調査すると公表してはいたが、その後何も発表されていない。

ここまで顧客、いや、全てのステークホルダーに不透明な企業、情報開示を行わない企業は米国でも珍しいのではないだろうか?

さて、Whole FoodsのCEO、John Mackeyが時に競合相手、時に買収相手であったWild Oatsをこき下ろしていたBlogの話は大きく報じられたので以前、何度が取り上げたMarriott のCEO、Bill Marriottも自身のBlogで言及している。

「競合に対する良いとは言えない書き込みをしていたCEOに関する話でこのところもちきりだった」、「インターネットのおかげで、今日、ビジネスの世界はより透明性が高まってきているようだ」と語っている。

そこで彼は、「私がBlogするのはなぜ?」と続け、「ビジネスは価値を創造するものでなければならない。そして、私は我々の価値をBlogを通して伝えようと努力している」と書いている。

最後に、「苗字がホテルの看板にあったり、会社と一体化しているような存在であるなら、口に出すことや行うこと、全てが良い方へも悪いほうへもビジネスに影響する。この素晴らしき情報時代に、CEOは透明でなければならない」と結んでいる。

参考:Whole Foods boss rumbled for annonymous postings (Online Ad)
Source:Whole Foods Market /Whole Foods Market Closes Acquisition of Wild Oats
Source:Marriott On The Move / Why Do I Blog?

Marriottのように創業者の苗字が会社名となっている企業は多く存在するし、またそうではない企業も数多く存在する。ただし、現在、世界展開しているグローバル企業の中でも創業者一族がCEOを努めているのは希であり、それだからこそBill Marriottは一層、厳しく自己を律しているだろう。

しかし、どんな企業名を持つ企業であれBill Marriottとその他のCEOの違いは、時代を理解し、PC操作ができないにもかかわらずわざわざ口述したものをBlogにアップさせる手間をかけてまで、ステークホルダーに企業のコミットメントを提示しようとする彼の姿勢だ。

ところで7月20日の彼のBlogにある意味で驚くべき写真が載っていた(右)。

MarriottがNickelodenと提携してホテルを建設するという話があったが、その関連でNickelodeonに登場するキャラクターたちに「スライムを浴びせられたらどう思う」と聞かれていたそうだ。そして、何らかのセレモニーでそれが実際に行われたときの写真だ。

この後、彼自身の2人の孫、AndrewとJackは父親がステージの下から取り出したバケツに入ったスライムをお爺さんであるBillのズボン、靴、靴下に注ぎ込んだ。靴に入り込んだスライムのおかげで歩くたびにキュー、キュッと変な音が出るし、惨めな格好だったが、楽しかったと書いている。

そしてことあるごとにその時のことを思い出させるグリーンとオレンジのシャツを着て現れる孫達は、Marriottが建築するNickeloden仕様ホテルをキッズにとって一層、エキサイティングなホテルにするためのアイディアを与えてくれると書いている。

Source:Marriott On the Move / The Experience of Getting Slimed

以前、最初に彼のBlogを紹介した折、最後に;

日本のグローバル企業のCEOやCMO (Chief Marketing Officer) がいつ、顧客やユーザ、ビジネスパートナー、その他のステークホルダーに対してオープンな対話を始めるのか、こちらも興味津々だ。

と書いたが、Bill Marriottのオープンさ、懐の深さ、そして顧客優先の考え方を見せられると、日本人に同じことを求めるのは無理だと、それこそ頭からスライムを浴びせられたような気になった。

参考:Marriott's CEO Blog Launched (Online Ad)

2007/08/29

Kodak EASYSHARE

Canonが24%の支持を集めて一位、Kodakが17%、SonyとNikonが15%、Olympusは9%で五位になったというデジカメのベストメーカーランキングをIpsos Insightが発表している。

Canonへの支持は18-34歳層でダントツ、35-54歳層でも二位グループを引き離している。55歳以上のグループでようやく21%の支持を集めたKodakが19%のCanonを凌いでいる。

しかし、次の図にあるように消費者の希望は、もっと安いプリンタインクなのだ。
この消費者のニーズに呼応しているのがKodakの「EASYSHARE All-in-One Printers and Ink」キャンペーンだろう。
Source:Ipsos Insight /U.S. Internet Consumers Embracing Digital Imaging
Source:Kodak / EASYSHARE All-in-One

メーカーは消費者の求める製品、サービスを提供することを第一として考えているとよく言うが、こと利益率が高く、売上に大きな貢献をしている消耗品については消費者の声に耳を塞いでいる。Kodakのマーケティングが消費者にとって最も大きな意味を持つことはどの競合メーカーも認識しているが、後を追う日本メーカーは出てくるのだろうか?

2007/08/28

Dark Side of PR 2.0

Ivana KalayがStumpetteに「WARNING: Beware the Dark Side of PR 2.0」と題して、Web 2.0、PR 2.0の裏側を書いている。

Souce:Stumpette / WARNING : Beware the Dark Side of PR 2.0

Web 2.0、PR 2.oの裏側とは、「Black PR」、「BPR」を指し、利益目的であったり、悪意を持って(競合)企業などの信頼、評価を下げることを目的としたマーケティングということになるだろうか。あるいは昨年、Diggで実行された愉快犯、個人的な劇場型犯罪を行う輩も含まれるかもしれない。

参考:Fake News Story Games Thousands of Digg Users (Online Ad)

KalayはAjax、フィード、ソーシャルネットワーク、Splog、SEOパワーツールなどを説明しながら、それらを悪用できる可能性について書き、実例としてひとつ上げている。それによるとヨーロッパの大手航空会社が最近、Ajaxを活用した新しいWebサイトをオープンした。クールで使い易く、ユーザの評判も上々だったようだが、問題は脆弱だったことだ。競合する航空会社が「Black-hats (hackers)」チームを雇い、単純なWebアプリを使ってサイトを精査した結果、顧客名、コンタクト詳細、その他多くの個人情報を獲得する様々な穴を発見したそうだ。その後、競合会社はその情報を使い、各種旅行プロモーションを行い、大手航空会社は25%の収入減に見舞われたと書いている。

さてさて、売上が25%も落ち込むという影響があったとするとMSM(Main Stream Media)がファイナンス記事で取り上げてもおかしくないイベントだが、そんなニュースは聞いたことがない。そのため彼の書き込みに対して否定的なコメントもいくつかある。だから、彼のエントリを単に意味のない憶測記事だとかたずけるのは簡単だが、クリック詐欺やSplog、上記のガセネタのように広告プラットフォームを悪用したり、SNSやニュースアグリゲーターを利用して金を稼いだり、釣られた人々に対して大笑いする輩がいることを無視することはできない。

Click Forensicsによれば2007年Q2で15.8%に達し、GoogleのAd-Sense、YahooのPublisher Networkを含んだ検索エンジンのコンテンツネットワークに出現したPPC広告に対するクリック詐欺の比率は25.6%だ。そしてクリック詐欺のうちフランスが5.1%、中国が3.2%、オーストラリアが3.1%を占めるという現状を見れば、対岸の火事どころか足元でくすぶっているボヤが壁を伝い始める前に対処しなければいけないのが明らかだ。
Source:Click Forensics / Click Fraud Q2 2007

2007/08/27

IBM Digital Consumer Study

IBM Institute for Business Valueというところから米、英、日、独、豪の5カ国ごとにPC、携帯、ポータブルメディアプレーヤーの普及やメディアそしてエンタテイメント消費に関する調査が発表されている。

IBM Institute for Business Valueは、重要なビジネスチャンスに対する戦略分析や提案をすることでクライアントが新分野へ投資するための支援を行っている部門らしい。全世界17カ国でリサーチや分析を行っているそうだ。IBM自体、メディアおよびエンタテイメント業界、すなわちエンタテイメント、出版、情報提供、メディアネットワーク、広告などの業界セグメントごとにそのサービスや製品をフォーカスしていると、以下のSourceで謳っている。

ところで、下は平成16年全国消費実態調査(世帯分布結果表)から作成したものだ。右から2番目の列が世帯数(10万世帯対)で、一番右が各世帯収入階級の比率となっている。300万円未満が10%、600万未満が40%、1,250万未満が42%、1,250万以上が8%だ。
この比率とIBMのデータを比べると、まず調査対象の58%が世帯収入を回答してないと注記されている。これは日本以外の国では見られない兆候だ。
また、約2,400万(1㌦=120円計算)以上の世帯収入比率が23%だとしている。このデータには首を傾げざるを得ない。非正社員雇用を増やして人件費を抑制、削減する企業、働けども働けども手取り収入の少ないワーキングプアの存在が声だかに叫ばれる現在、まるで渋谷や赤坂に住んでいる社長さんだけを選んで調査対象としたかのようだ。
Wikipediaにあった2005年の米国の統計と、IBMの数字は、当たらずとも遠からずといったレベルで日本ほど大きな差はないようだ。Source:IBM / End of advertising survey results
Source:Wikipedia /Household income in the United States
Source:総務省統計局 / 平成16年全国消費実態調査 世帯分布結果表 世帯属性、都道府県別世帯分布 (全その1) (xls)

さて、このBlogでもよく取り上げるEIAAでは毎年いくつかの調査を発表している。通常、各国ごとの人口、男女比、年齢構成、教育レベルそして居住地などを勘案し、英、独、仏、伊、西が1,000人、ベルギー・蘭が500人、北欧(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク)が330人前後の合計約7,000人を対象とした調査を行っている。これによって各市場を正しく反映したデータ、分析を行っているわけだ。

参考:EIAA Mediascope Europe 2006 (Online Ad)

ところでIBMが収集したデータ数は、米で888人、英で559人、独で338人、日で378人、豪で263人だ。その中で男女比、年齢比は出しているが、各国の人口分布を反映したものではない。この調査の対象となった人間の男女比、年齢比を出しているだけだ。

その中でも日本の378人中、58%の219人が世帯収入を回答していない点、そして、2,400万円の世帯収入を持つ調査対象が23%もおりながら、そのバイアスをなんら考慮、修正していない点から、IBMが収集したデータは日本という国を正確に写したものだとは思えない。他にも、例えばDVRの普及率を5%としていたり、SNSに参加しているのがたった9%だとしている。

注1:電通が2005年7月に出した「DVR普及がテレビ視聴に与える影響について」ではDVR普及率を15%としている。
Source:電通 / DVR普及がテレビ視聴に与える影響について (pdf)

注2:インプレスが2006年に出した「インターネット白書2006」によれば、「SNSへの参加は2005年の2.6%から11.0%へ増加」したとされている。
Source:マイコミジャーナル / SNS利用者の82.6%をmixiを利用-「インターネット白書2006」発表

こうしてみると、少なくとも日本に関するIBMのデータはあまりにも実態とかけ離れており、そのデータを元にした分析、提案、コンサルティングにも残念ながら真が置けないと感じる。

2007/08/24

Intelligent New Business Survey 2007

米150社を対象に調査し、マーケティングコミュニケーション会社がどのように見込み企業から新規ビジネスを獲得するべきかを明らかにしたRainmaker の「The Intelligent New Business Survey」が公表されている。


マーケティング会社、代理店が新規ビジネスを獲得するにあたり正確な洞察がクリティカルとなる以下の3つのポイントで調査したものだ。
  1. 企業が新しい代理店を物色する理由
  2. 代理店が最も効果的に企業とエンゲージする方法
  3. 企業が多くの競合代理店の中から特定代理店を選択する理由
サマリ
  • 企業は代理店の規模に関心はない。が、代理店はそうだと感じている。代理店は規模で仕事をすべきではない。
  • 企業の83%は代理店の所在地を問題としない。が、代理店はそう思っている。代理店は地理的な近さが提案するソリューションの受注成功にはつながらないことを理解すべきだ。
  • 企業の85%は代理店が新規ビジネス提案を行う事前調査、準備を十分だとは思っていない。代理店は現状分析に一層投資すべきだ。
  • 企業の75%はビジネスの諸問題に対するソリューションを求めている。が、代理店は広告、PR、クリエイティブなど自分の得意分野を求めていると誤解している。代理店が提案すべきはソリューションだ。
  • 企業は競合他社の先を行く対応を代理店に求めている。が、代理店の多くは冷房の効いた居心地のいいオフィスにいることを好む。代理店は新規ビジネス獲得のためにプロアクティブに行動すべきだ。
  • メジャートレンドとして疑いもなく企業から求められるのは消費者動向分析だ。代理店はより正確な消費者動向分析を行い、積極的に企業に提案すべし。
Source:Rainmaker / The Intelligent New Business Survey (pdf)

詳細は上のリンクを参照していただきたい。

この調査は、相応のマーケティングコミュニケーション能力を持つ代理店を必要とする意識と目的が高く、(グローバルな)ビジネス戦略を持つ企業を対象としているので、こういう結果になっているのだろう。

そうではなく普通のごく一般的な企業の場合、サマリ結果の逆が真になっているのが実情だろう。代理店の規模は大きい方が良いに決まっているし、締め切り後の変更などにわがままが効く近場の代理店を重宝し、言われたことをやるだけでいちいち時間のかかる新規ビジネスの提案などしてこない代理店が良いし、得意分野でアプローチしてくる代理店の中から相見積もりで指定するのが楽だし、企業内部での調整に時間のかかる一歩先を行く提案は無いに越したことはないし、消費者動向分析などされても分からないというのが本当ではないだろうか?

これは国内でも勿論だが、海外向けにおいて一層、真だと言える。それはCMOなど存在せず、現地法人からの販売支援要請に唯々諾々と従うことが通例となり、グローバルなマーケティング戦略を持たない企業が多いからだ。

現状のオンライン露出量調査となるとNielsen//NetRatingsなどのAdRelevanceを使った出稿量調査をベースとするのだろうが、そんなトラディショナルメディアと同じ方法でオンラインの露出、認知、想起は計測できない。BlogやWebサイトへのリンク、トラックバックなどを加味している調査を行う代理店はいるのだろうか。Google Trend、Digg、del.icio.usなどのデータや露出を活用する代理店はいるのだろうか。ごく一部では実践している代理店もいるだろうが例外だろう。それは、そういったデータを元にした現状分析を求める企業が少ないからだ。

ただし、日本の税務当局が海外広告に関して課税を強化しているというマイナスファクターがあることも事実だ。広告宣伝費ではなく、海外現地法人への利益供与だとして課税されているのは納得が行かない。このインターネット時代にグローバルWebサイトを活用したオンラインブランディングなしにどんなマーケティングが可能だと言うのだろう?
それを実践している日本のグローバル企業は皆無だが...。

2007/08/23

NYTimes Select Rumor Continued

ついこの前、「The End of Paid Content (?)」でNYTimes.comがTimesSelectの無料化を決定したと(推測した)NYPostの記事を紹介し、有料サービスから無料サービスへの戦略転換の話を書いた。

そのエントリでもSteve Yelvingtonの話を伝えたが、NYPostの記事の裏にはいろいろとあるようで、WiredのBlogで書かれているように、「NYPostの記事は大量の塩をかけて品定めしなければならない」ような眉唾物かもしれない。その話を引きながらHitwiseのBill Tancerが、NYTimes.com、TimesSelectのサイトデータを出して分析している。

7月にwww.nytimes.comの中で最もトラフィックを稼いでいたのはselect.nytimes.comで全体の8%になる。ところがNYTimesからSelectへアクセスしたトラフィックは前年比16%減となっている。Select自体のトラフィックのうち67%はNYTimesからのもので、米国からのSelectへのトラフィックは前年比22%となっている。

年代別のオーディエンスをNYTimesとTimesSelectで比較してみると、TimesSelectは18~44歳までのインデックスが100を超えている。NYTimes全体を100とするとTimesSelectのユーザの方が例えば、18-24歳では138.83となる。25-34歳では149.29で、これを合計した34歳以下ではNYTimesがTimesSelectの45%増しのオーディエンスを集めていることになる。
また、同様に15万㌦以上の世帯収入を持つグループのインデックスは約150だ。TimesSelectの50%増のオーディエンスがNYTimesへアクセスしていることになる。TimesSelectよりNYTimes全体のオーディエンスのほうが高級管理職、自営業者などの富裕層が多いことになる。
参考:The End of Paid Content (?) (Online Ad)
Source:Wired / Rumor Control : Post Says Times Select To Go Free
Source:Hitwise Blog /New York Times Select Rumor - Data Perspective

Bill Tancerの結論は、「TimesSelectを無料化してもオーディエンス増加につながるかどうか不明だが、富裕ヤング層を人気コラムニストの記事に触れさせることで広告売上の増加が期待できそうだ」としている。

やはり米国内の広告主を対象とした戦略はすでに限界だと感じる。20日のエントリ、「Online Time More to Content Than E-mail」でも書いたが、コンテンツのクオリティこそNYTimesが推すべきキラーアプリだし、訴求対象は米国のみならず全世界のクオリティオーディエンスだろう。

NYTimes.comへのBlogインバウンドリンク数をみれば83,740を集め、二位以下のCNN、YahooNews、BBCなどを大きく引き離している。また、全Blog言語の37%を占める日本語はさておき、36%の英語、8%の中国語、3%の伊、西、2%の露、仏、ポルトガル、1%の独語を見ればおのずと戦略は定まると思うのだが...?
Source:Sifry's Alerts

2007/08/22

Social Bookmarking in Plain English

「ソーシャルブックマーキング、アールエスエス、ソーシャルネットワーク、ウィキを、例えば、上司や同僚、家族にどうやってわかりやすく説明するか」に悩んでいるあなた!

そんな悩みを解決してくれるのが、Common Craftのビデオだと、GroundswellのCharlene Liが紹介している。
Common Craftは以下の4つのビデオをアップしている。これはもう見ていただくしかない。
  • Social Bookmarking in Plain English
  • RSS in Plain English
  • Wikis In Plain English
  • Social Networking In Plain English
Social Bookmarking in Plain English(英語版オリジナル)


Social Bookmarking in Plain English(日本語字幕付)


Source:Groundswell /Web 2.0/social computing explained, thanks to Common
Source:Common Craft / Video: Social Bookmarking in Plain English
Source:dotSUB / Social Bookmarking in Plain English

dotSUBはCommon Craftがアップしているビデオの全てに字幕をつけているが、言語によっては100%字幕付とまではいっていない。ソーシャルブックマーキングとWikisの日本語字幕は100%だが、RSSは30%、ソーシャルネットワーキングは0%となっている。もうしばらくすれば両方ともに100%字幕付となるだろうが、自信のある方は是非ご協力を。

2007/08/21

Symphonic Concert on Second Life

英国ロイヤルリバプールフィルハーモニーが9月14日にSecond Lifeでコンサートを開催する。

ラベルやラフマニノフではなく、リバプールの作曲家、Kenneth HeskethとJohn McCabeの作品を演奏(?)予定だ。100席のチケットがくじでSL住人に割り当てられる。入場者はバーチャルコンサート会場でライブのビデオ、オーディオストリームを楽しむことになる。その後、バーでライブのQ&Aを楽しむこともできる。

オーケストラのCEO、Michael Elliotは、「今日のオーケストラは音楽をよりアクセスし易くし、新しい聴衆に鑑賞を働きかける必要がある」、「そうするためには新しい技術が提示する機会を利用することだ。我々にとり、2003年以来爆発的に伸びてきたSecond Lifeは潜在的なグローバルオーディエンスに訴求することを可能としてくれる」と語っている。

Source:Guardian Unlimited / Website sets out its stall for first online symphonic concert

それにしても、このオーケストラはWebサイトからPodcastもやっていれば、オリジナルの着信音がダウンロードできるし、リアルタイムでチャットもできるようだ。それに加えて、Second Lifeでのコンサートを開催するのだ。

どこかの企業が顔負けするほどオンラインのマーケティングが進んでいる。耳目を集めやすいSLを使った一発型のマーケティングではなく、これまでPodcastなどを使ったオンラインのマーケティングが培ってきた実績があってのSLだ。それがあってこそ、オーケストラのCEOの言葉が意味を持つ。

2007/08/20

Online Time More to Content Than E-mail

OPA (Online Publishers Association) が新しい調査を発表した。

2003年から2007年5月までの4年間のIAI(Internet Activity Index)の推移を見ると、コンテンツが37%増加しオンライン消費時間の約半数(47%)を占めるまでになっている。

検索、EC、通信(Emailなど)という他3部門のうち伸びているのは検索の35%増だけ、ECも通信もシェアを落としている。2003年時には消費時間の46%が通信で消費されていたが、ECおよび通信の割合は下がっている。コンテンツは2003/2004年で10%増、2004/2005年は変化なし、2005/2006年で13%増、2006/2007年で同13%増だ。
コンテンツに時間が消費される主たる原因
  • ニュース、娯楽情報、天気といった昔からの伝統的なオフラインコンテンツへの行動がオンライン化した
  • クオリティコンテンツサイトはメジャーなニュースイベントがあればトラフィックが突出し、イベント後も高原状態を維持する。例えばハリケーンカテリーナ、NCAAといったイベントは消費者を一層オンラインコンテンツにエンゲージさせる
OPAはコンテンツ消費時間が伸びる原因として他にもいくつか上げている。
  • アクセスが容易、高速になったインターネットはトータルのオンライン消費時間を加速する
  • オンラインビデオ人気によりオンラインコンテンツの消費を加速する
  • 検索結果が改善し、希望するビデオに素早くたどり着ける消費者は一層コンテンツとインゲージする
  • 4年前と比べWebサイトは多くのコンテンツを提供してるため、コンテンツの消費時間を加速する
  • 通信ツールとしてIMが使われるようになり、通信での消費時間を抑制。IMはEmailよりも効果的な通信ビークルだ
参考:OPA Internet Activity Index (Online Ad)
Source:Editor & Publisher / People Devote More Time Online to Content Than E-mail
Source:OPA / Press Release

SEO、SEM、LPOと検索がらみのマーケティングに関心が集まっているが、伝統的メディアが提供するコンテンツ、あるいはSNSサイトが提供するコンテンツと通信(共有)というスペースでオンライン時間の約半分が消費されている。消費時間3%にしか過ぎない検索エンジンに広告予算をつけるなら、コンテンツ側にも応分の予算が必要だ。とくにブランドを露出させるためにはコンテンツ側でのマーケティングが必須だろう。

コンテンツはユーザ・消費者の興味、関心を惹き、(ソーシャル)ブックマーク、リンク、トラックバックなどでクロスメッシュしてゆく。やはりトラディショナルコンテンツは強いし、オフラインで強いイベントはオンラインでも強い。

ひとつ気になるのはIMの利用が進み、Emailが通信ビークルの地位を脅かされていそうなことだ。これにTwitterや同様サービスを加えるとフリーメールを使うユーザ数やメール数、頻度にも影響が出ているのかもしれない。

2007/08/15

Metro now pays for successful bloggers

Metro InternationalのWebサイトには最新のプレスリリースがないが、Editors Weblogの8月13日に「スウェーデンのMetro(フリーペーパー)がBloggerに金を払うプログラムを開始した」という書込みがあった。(出所は6月19日のPoloPolyなどのプレスリリースなので再掲のようだ)

これはPolopolyのシステムを使い、5,000PV@月以上のアクセス、ビジットを獲得しているBloggerを自動的に特定し、5,000PV@月以上になると自動的に銀行口座を開設し、マスターカードが送られてくる。源泉徴収などを差し引かれた分が振り込まれる。料金は、一PVあたり3 öre(オーレ=二分の一セント)となっている。

この契約にサインしたBloggerの記事の中で質の良いエントリはMetroのスウェーデン版とMetro.seに掲載するというプログラムだ。ただし、上記契約以上の金は出ない。

Source:Editors Weblog / Sweden: Metro now pays for successful bloggers
Source:Polopoly/Metro Launches Get-Paid-Per-View Blogging
Source:Editors Weblog / Swedish Metro to pay bloggers half a cent per page view

Bloggerからすると広告がからんだ話や、ペイドパブではなく、自分のBlogコンテンツをいじる必要もなく、ビジットが多ければいいわけだし、質の良いエントリはフリーペーパーと言えども、スウェーデンで100万部という新聞に掲載され、オンライン版にも載ることになる。願ったり叶ったりのプログラムだ。

Metroとしてもユーザが生成し、アクセスを獲得するコンテンツを再配信することができるわけだから、リアルのペーパー読者とオンラインの読者双方に訴求することができる。新聞が生き残る方法のひとつとして検討してもよいのでは...?