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2010/09/10

Samsung Dominating 3D TV Buzz Share

6月に、Samsung 3D TV Promotionを書いた。

参考:Samsung 3D TV Promotion (Online Ad 2010/06/03)

それ以降も、矢継ぎ早といったマーケティング、プロモーションが繰り出された結果、8月31日のDealers Scopeによると、Samsungはすでに全世界で発売以来6ヶ月間で100万台の3D TVを販売し、米国シェアの88.3%を握っているようだ。

Source:Dealers Scope / Samsung Sells Millionth 3D TV, Eys Apps

しかし、VentureBeatによれば、Sonyは7月までにSony Style Storeにおいて200万回以上の3Dデモを実施。300人の3Dスペシャリストを配置。今後、2~3ヶ月で20万回の3Dデモを予定。5,000回以上のマーケティングイベント開催を予定しているとのこと。

Source:VentureBeat / Sony revs up the 3D TV sales pitch with millions of demos

各社のマーケティング、プロモーションがこれからも加熱、加速してきそうだ。

ただし、今、目の前に無視できないほど大きく広がった明白なギャップがある。それは、Samsungと競合する4社、Panasonic、Sharp、LG、そしてSonyに関するオンラインバズ数だ。

下は、3月10日から始まる週を起点として9月1日から始まる週までの6ヶ月間における5社、Panasonic、Sharp、LG、Samsung、そしてSonyの3D、TVに関するオンラインバズの時系列グラフだ。累計ではPanasonicは3.12K、Sharpは1.15K、LGは1.12K、Samsungは47.1K、そしてSonyは6.61K個のバズが発生している。
そのシェアを見ると、もう圧倒的としか言いようのないギャップがある。Samsungはこの6カ月間の3D、TVバズシェアの80%を握っている。日本メーカーではSonyが11%、Panasonicが5%、SharpはLGと同じ2%でしかない。残り4社が束になってかかってもSamsungはその合計の4倍のバズを発生させている。
このバズをもう少し詳しく、カテゴリ別に見てゆく。

まず、Blogだ。Samsungが28.5Kのバズを発生させていて、次に続くのはSonyの4.87K個と一ケタ少ない状況だ。
BlogバズシェアはSamsungが75%を握っており、Sonyが善戦して13%、Panasonicも健闘して7%だが、LGは3%、Sharpは2%でしかない。
次にForumバズを見ると、ここでもSamsungが競合を圧倒している。累計で14.9KのSamsungに対してSonyは1.37Kでしかない。ForumではLGがもっともひどく48個のバズしか発生していない。
ForumバズシェアはSamsungが89%だ。Samsungは全4カテゴリでトップシェアを占めているが、89%はその中でもTwitterに次ぐ高いシェアだ。
次はTwitterだ。ただし、TwitterのAPI制限の関係でモニタリングできているTwitterバズ数は実数の10%から15%の間ということになる。Samsungに関する3D、TVがらみのオンラインバズが2.64Kなのに対して、他の4社はひどい。136件のSony、55件のPanasonic、23件のLG、そしてSharpに至っては13件しかない。
ということで、TwitterバズシェアでSamsungは92%という最高シェアをたたき出している。こうなってしまうと、如何にSonyが5%、Panasonicが2%のシェアといっても、LGの1%とそう変わりはない。4社ともにTwitterを考慮したマーケティングやプロモーションをまだ実施できていないということだろうが、今時、まだ実施できていないとすると、もうこれは大変、後れているということになる。担当者自体がTwitterを使った情報やコンテンツ発信をしていないということだ。競合がどんなマーケティングやプロモーションをやっているかも調査していないということだ。今、ユーザ、デジタルネイティブ、アーリーアダプターがどこにいて、何を使い、どんな会話を紡いでいるかを無視しているということだ。
最後に、News関連バズだ。ここもSamsungが累計1.12Kなのに対して、Sonyは231件、Panasonicが134件、LGが98、Sharpが65だ。
シェアもSamsungがトップの67%、Sonyが15%、あとは推して知るべしといったシェアだ。

もう、3D TVと言えばSamsungしかあり得ないといったレベルのオンラインバズギャップが4社との間に存在している。Sonyだけではなく他の競合各社も様々なプロモーション、イベント、キャンペーンを仕掛けてくるだろうが、一朝一夕にこの途方もないバズギャップを埋めることは不可能だ。特に、従来からの一方通行キャンペーンではもう何も期待できない。

さて、このように見てきたオンラインバズは何かと言うと、Blog、Forum、Twitter、そしてNews関連サイトに書き込まれ、発信され、共有され、再露出されているブランドに関連する情報、コンテンツだ。

これらオンラインバズが、ブランド認知、想起、好感度、優先度などを向上させて、購買意思に大きく影響してくる。それもただ単に声が大きいだけとか、態度がでかいだけで俺は偉い専門家だと思っていユーザではなく、自分と同じようなピアが体験したブランドの評価、使い勝手や競合製品との比較、そしてブランドの本当の価値を伝えてくれるのがオンラインバズだ。

そのオンラインバズの80%をSamsungが牛耳っている。

Corporate Social Media Summitに参加していたSonyのChristina Stahler、Head of Consumer InsightsのPodcastを聴くと、今年、SonyはベンチマークするためNielsen BuzzMeticsとRadian6を使ってモニタリングしているそうだ。

参考:Corporate Social Media Summit (Online Ad 2010/04/15)
Source:UsefulSocialMedia / Podcast - Sony Christina

彼女のカバーするテリトリからは離れるが、訊いてみたい。Samsungとのこの途方もないバズギャップをどう考えているのかと。そして、このギャップを埋めるためにどのようなマーケティング、プロモーションを予定しているのかと。

この膨大なオンラインバズギャップを把握せず、対抗もせず、ただ、昔からの広報、広告、プロモーション、マーケティングをやっている企業・ブランドは何も見ていないし、聴いてもいないし、感じてもいない。昔からの業務をこなしているだけで、消費者がどこを向いているかも調べていない。

このギャップを埋めるには、「Samsungと同額以上のメディア費を投下すべきだ」と、昔からの自分たちのビジネスモデルをベースとして考える一部の特異な人たちは存在するが、それに何の意味があるはずもない。誰も見ていない、読んでいない、聴いていないTV、新聞、雑誌、ラジオ広告。封を開けられもしないDM。クリックされることもないポータルサイトでのオンライン広告。不達率の異常に高いEmailニュースレター(それもテキストメール)。Facebookへのオンライン広告。提案してくるのは、バケツをひっくり返したような大量露出、大音量のメガフォン広告キャンペーンだ。

ここにあるのは、企業・ブランドや代理店・エージェンシーにとって手離れの良いマーケティング、キャンペーンだ。効果など二の次で、広告エビデンスがちゃんと取れればそれでいいといった類の話だ。なんで、私たちが汗をかかなきゃいけないんだとうそぶき、消費者のことや、彼らにどうやってメッセージを届け、共有してもらうかといったマーケティングの肝が欠落している施策だ。

今、もっとも必要なのは、「消費者にブランドを語ってもらうこと」だ。2006年のANAでP&GのCEOは、「消費者がパワーを握っている」と語っている。それからすでに4年もたってしまった今年、企業・ブランドが如何に大声を張り上げたところでメッセージが届く消費者の数は少ない。彼らは、レガシーマスメディアを使った企業・ブランドからのメッセージを信頼するよりは、自分と同じピア達のメッセージを聴き、情報・コンテンツを消費、共有、再露出しているのだから。彼らにブランドを語ってもらわずして、何も伝わらない。何も共有してくれない。

今、彼らのスペースに参加し、メッセージを届け、共有してもらうべきユーザはデジタルネイティブしかいない。インフルエンサーとして、クリエイターとして、Blog、Facebook、Twitterに多くの読者、友人、フォロワーを抱える彼らにブランドを語ってもらい、彼らの読者、友人、フォロワーにも語ってもらうことしかない。

なぜ、Samsungが圧倒的なオンラインバズを握っているのか、何が、競合各社と違うのか、なぜ、消費者はバズを生成し続けているのか、なぜ、SamsungのCEOはLoicと会ったのか、そして、なぜ、あなたの企業は公式Blogを持っていないのか、また、なぜ、あなたの企業に関するバズが少ないのか、考えたことがありますか?

もし、ご興味があれば、お問い合わせください。

2010/08/17

Open Letter to CEOs in Japan

日本企業の最高経営責任者の皆さま

本日は、インターネット、パラダイムシフト、ソーシャルメディア、そして、日本ブランドの危機について理解していただくために筆をとりました。これらファクターが絡み合い、既存の広報、広告、マーケティング戦略を大転換しない限り、日本のグローバルブランドが今後数年のうちにローカルなガラパゴスブランドに転落するという危機感を共有していただきたいと考えています。
  1. まず、インターネットがあります。

    InternetWorldStats.comによれば2010年6月30日時点で、世界の総人口は68.5億人、インターネットユーザ数は19.7億人、普及率28.7%に達しています。そのトップ20には、日本、欧米諸国などに加え、中国、ロシア、インド、ブラジル、イラン、トルコ、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどBRICsおよび途上国が顔を出し、2000年からの伸びが13,000%を越えるイラン、12,000%を越えるベトナムはもとより、BRICsは軒並み1,000%を越えています。OECD加盟国のインターネット普及がこれ以上見込めない中、BRICs、途上国は猛烈な勢いでインターネットが普及しています。
    Source:InternetWorldStats.com / Top 20 countries

    次にブロードバンド化があります。2008年に発表されたEUの世帯別ブロードバンド普及率ですが、蘭が77%でトップ、英独仏は47%、33%、 48%、EU27カ国の平均でも36%に達しています。調査されたのは2007年ですから今日までの3年間に平均普及率は40%をを越え、50%に迫って いるのではないでしょうか。
    Source:EU / E-Communications Household Survey 2008 (pdf)

    米国の最新のデータを見ると、こちらは世帯ではなく、インターネットユーザのBB普及率となっていますが、今年の5月時点でBB化は66%にまで進展しています。
    Source:PEW / Home Broadband 2010 (pdf)

    そして、中国の場合、BB化はもっと猛烈です。今年1月に発表されたCNNICのレポートによれば、3億4,600万人がBBユーザだとしています。これは全インターネットユーザの90.1%にあたり、前年比7,600万人が増加したとしています。
    Source:CNNIC / The 25th Survey Report (pdf)

    このブロードバンド化の進捗は世界で起こっています。

    インターネットは情報通信の基盤でもあり、媒体としての側面もあります。世界のどこにいても、インターネットにアクセスさえできれば、そしてブロードバンド化していれば、IP電話、ビデオ電話、email、chat、Web、Blog、SNSなどを使って地球の裏側にいる人と会話すること、つながることができます。インターネットにアクセスさえできれば、朝日新聞であれ、New York TimesやCNNであれ、BBCであれ、マスメディアのWebサイトへアクセスし、最新ニュースや情報を入手することができます。業界紙・誌のWebサイト、業界フォーラムなども同じですし、企業や団体のWebサイトへアクセスすることができます。

    今まで地理的、時間的、経費的な障害によってコミュニケーションを行うことさえ難しかった人々とコンタクトしたり、ビジネスを行ったり、一緒に社会貢献活動を行うことさえ可能になりました。今までのビジネスのやり方、仕事の仕組みを大きく変えたのがインターネットだと言えます。

    そのインターネット、ブロードバンドが先進国だけではなく、BRICsおよび途上国にも広く普及し始めています。これらは世界がひとつにつながるプラットフォームだと言うことができます。

  2. このインターネットユーザの増大とブロードバンド化がパラダイムシフトへとつながっています。

    上で見てきたように、世界中の一般市民、消費者が、インターネットへアクセスできるようになり、月額固定料金でのブロードバンド化が進捗することによって、常時インターネットにアクセスするユーザが増えてきました。

    その中の先端ユーザ達は独自ドメインを取得し、自分のWebサイトを立ち上げるものも出てきました。企業、団体、マスメディアのWebサイトへアクセスするだけに飽き足らず、自分でWebサイトを立ち上げ、様々な情報やコンテンツを発信するユーザが増えてきたのです。しばらくすると、Blogを書くユーザも出てきました。世界最初のBlogのひとつは1994年に始まったとされていますが、1999年にサービスを開始したBloggerなど無料でBlogサービスを提供するプロバイダーも現れ、2004年頃までには政治、経済面でBlogは大きな影響力を発揮するようになってきました。

    Source:Wikipedia / Blog

    その後、専門家だけではなく、一般ユーザ・消費者が自分の日々の出来事をつづったり、ニュース、映画、ミュージック、セレブ、ブランドに関する意見・評価などをBlogから発信し始め、多くのインターネットユーザがBlogにコメントしたり、購読を始めるようになりました。

    2009年1月時点で、2002年以降にインデックスされたBlogの数は1.33億件、世界でBlog記事を読むユーザ数は3.46億人(2008年3月)に達しています。

    Source:The Future Buzz / Social Media, Web 2.0 and Internet Stats

    これだけBlogやその読者が増えてくると、トップBlogの中には読者数が数万人、数十万人を越えるケースも出てくるようになり、小規模な既存マスメディアサイトのトラフィックを上回る規模のものもあります。Blogによって個人の発信力が飛躍的にアップしてきたため、既存のマスメディアや企業、団体が行う情報発信のボリュームおよびクオリティと肩を並べてきました。

    そして、既存のマスメディアと違い、オープン、対等な関係でコメントしたり、違う意見を戦わせたり、友人や同僚を巻き込んで自分のBlogに発表するといった会話が成り立ってきました。

    また、WebやBlogだけではなく、情報発信の一部として、一般ユーザ・消費者が独自に制作したビデオをYouTubeなどに投稿する例も出てきました。

    中でも下のビデオは2006年6月、二人の知り合いがダイエットコークにメントスを入れた噴出実験を撮影したものです。同様の噴出実験ビデオをいくつも投稿していますが、世界中のユーザが飛びつき、それぞれ数10万回から数百万回も再生されました。
    Source:YouTube / Experiment #10

    彼らだけではなく、ビデオを視聴した他のユーザが同じような実験ビデオを投稿したり、WebやBlogに記事を書き、それを見たり読んだりした他のユーザが友人・知人に話すといったクチコミが広まりました。そのクチコミ露出に後を押され、まず、メントスが彼らのサポーターとなりました。その後もしばらくはだんまりを決め込んでいたコカ・コーラでしたが、売上が5~10%も伸びた結果を無視できず、彼らの実験を支援し始めました。コカ・コーラ本社前、米国各都市、果ては欧州のオランダで噴出実験を披露するキャラバンを展開しました。名にしおう世界のコカ・コーラ社がどこの誰とも分からないポット出のタレント、ビデオクリエイターの力を借りてグローバルなマーケティングを実行したのです。

    企業が大規模予算をかけて製品・サービスのプロモーションを行っている傍らで、たった数十㌦程度の撮影費用しかかけていないユーザのオリジナルビデオが米国や世界のユーザのマインドに刺さり、マスコミも追随して報道することで、商品が飛ぶように売れてゆく。企業がコントロールしていたはずのブランドコントロールが一般消費者の手に渡ったことを示す典型的なビデオだと言えます。

    一般消費者が投稿するビデオが、企業のマーケティング活動に大きく影響するだけではなく、企業のレピュテーションを毀損する例も出てきました。

    下は、ドミノピザ従業員が、唾を吐きかけたり、鼻くそをピザに塗り込めたりした様をビデオで撮影し、投稿したものです。このとんでもないビデオはあっという間にインターネットユーザに広まり、USドミノピザの社長がYouTubeに謝罪ビデオ投稿し、異例の顧客対応を余儀なくされました。

    Domino Pizzaの該当四半期の売上に対して1%から2%の影響があったと決算報告書に記載があります。それほど一般ユーザが作成したビデオは、企業業績に大きな損害を与えるほどの影響力があるわけです。
    Source:DailyMotion / Domino Pizza

    これら以外にも乗客の手荷物取扱を巡り、United Airlinesなどが糾弾された例があります。個人が制作したコンテンツにより、企業が営々と築き上げてきたブランド評価やレピュテーションはもちろん、業績にまで多大な影響を与えるケースもでてきています。そしてのその影響は、例えば米国内だけに止まるのではなく、世界中に露出し、企業・ブランドのレピュテーションを粉々にしてしまうほどのパワーを秘めているのです。

    このセクションの最初にダイエットコークとメントスの噴出実験ビデオを取り上げましたが、同じ年の10月、ANA(全米広告主協会)総会においてP&GのCEO、A.G.Lafleyは、「パワーは消費者が握っている。彼らは考えられるすべての意味で我々のブランドを所有し、ブランドコンテンツ制作に参加し始めている」と語っています。また、Wal-MartのMarketing VP、Stephen F. Quinnは、「消費者が手綱を握っており、消費者にうまく手綱を握らせるものが勝者になる」とまで発言しています。

    Source:NYT / Letting Consumers Control Marketing: Priceless

    企業は、大規模予算を投下してマスメディアを使った一方通行のコミュニケーションを継続してきました。新雑ラテという四大マスメディアはもとより、屋外、DM、展示会、プライベートセミナー・展示会、イベント開催など、すべてのコミュニケーション・チャネルを総動員して露出、リーチ、訴求、認知、想起といった昔からのマーケティング理論を実践してきました。

    しかし、四大マスメディアの露出、訴求力には陰りが見えます。多メディア化が進展し、ユーザを情報洪水が呑み込んでいる現在、TVの視聴率、新聞・雑誌の購読者数、ラジオの聴取率も右肩下がりを続けています。今後、回復する道筋は見えません。

    一方、インターネット、ブロードバンドを手にした消費者は、オリジナルのコンテンツやブランド関連コンテンツを作成し、個人的なネットワーク内で発信、共有するだけではなく、Blogや画像・ビデオ共有サイトなどに投稿することで、世界中のインターネットユーザにコンテンツを提供しています。そして、そのコンテンツを消費し、他のユーザと共有する世界のユーザがいます。

    まさに、情報・コンテンツの出し手は企業やメディア、そしてその受け手は消費者といった今までの固定観念が崩れ、新しいパラダイムが沸き起こってきたわけです。すなわち、一般消費者も情報・コンテンツを提供する出し手となり、他ユーザの制作、発信する情報・コンテンツの受け手となっています。また、受け取った情報・コンテンツを、家族、会社の同僚、学校のクラスメート、地域の知り合いといったオンライン上にある自分のネットワークの人々と共有しています。ここで点から点へ転送されてきた情報・コンテンツが、面で共有されることになります。オープン、対等、双方向の会話が成り立ち、それを閲覧するユーザも巻き込んで会話が拡大してゆくことになります。

    そして、その効果、波及範囲は国内だけに止まらず、世界に波及するということです。

    え?

    「米国、英語のコンテンツは非英語圏のユーザには波及しないだろ!」

    そう考えられるのは無理もありません。

    しかし、そうではありません。下図は、各国のインターネットユーザがアクセスしたコンテンツの言語比率を表しています。当然、豪、ニュージーランド、インド、英、アイルランド、カナダ、南アといった英語圏は英語でのコンテンツ消費が主です。しかし、韓国、台湾、日本、中国、欧州諸国、南米、イスラエルといった非英語圏でも少なからず英語でのコンテンツが消費されています。

    皆さんだって、ご自分でNYT.comやBBC.co.uk、WSJ.comやBloomberg.comへアクセスされているように、英語は情報・コンテンツが世界へ拡散される障害にならないのです。
    Source:comScore State of the Internet, Nov 2009

    え?

    「非英語圏ユーザが英語でコンテンツを消費しているとしても、ほんの少ししかいないじゃないか!!」

    そうです。国によっては違いますが、控え目にみて10%未満といった処でしょうか。でも、この10%未満のユーザ達は、アーリーアダプターと呼ばれる人たちです。非英語圏であろうと英語くらい流暢に話せる各国のアーリーアダプターは、ビジネスや個人目的で最新ニュース、情報、コンテンツを探しています。政治、経済、財務、芸能、スポーツ、IT、ネットワーク、アプリの最新情報、もっとも影響のあるソースと言えば、米国の英語情報・コンテンツです。これらをいち早く入手するため、アーリーアダプターはアンテナを張っています。そして、かれらは自分のWeb、Blog、SNS、Twitterなどで最新情報を自国語に翻訳して国内ユーザと共有しています。

    点と点がつながって、そこから面に拡散されているのです。

    ここで大きな問題があります。

    各国、各地域ごとの営業・販促活動は現地子会社、販社の責任ですが、非英語圏のアーリーアダプターが国境や子会社のテリトリを越えて、英語コンテンツを入手し、国内に露出、共有しているのです。

    例えば、米国子会社にとって非英語圏のアーリーアダプターはターゲットではありません。彼らが如何に米国の英語コンテンツを入手したところで販売につながるわけではありませんから。一方、各国のアーリーアダプターに対して各国子会社、販社ができることはあまりありません。米国以外の子会社や販社が米国へアクセスする各国のアーリーアダプターに米国で何かすることはできませんから。しかし、世界中のインターネットユーザがひとつにつながり、各国のアーリーアダプターが最新の英語ニュース、情報、コンテンツを探しまくり、国内に供給している現在、どこが何をすべきでしょうか?

    企業やメディアが一方的に情報やコンテンツを押し付けている時代から、一般消費者が自分の意見、判断、評価などを発信し始めたこと、そしてそれが消費者間で共有され、点から面に拡散されていること。これが最初のパラダイムシフトです。
    そして、世界のアーリーアダプターが国境を越えて英語コンテンツを入手し、国内に共有し始めたことで、海外子会社や販社の責任や義務を超越した存在になっていること。この世界のアーリーアダプターに対応しなければいけないこと。これが2つめのパラダイムシフトです。

  3. このパラダイムシフトのバックボーンを支えているのがソーシャルメディアです。

    上で紹介したANA総会は2006年でした。2006年というと、今、もっとも注目を集めているFacebookがすべてのインターネットユーザに解放された年ですし、YouTube、Twitter、あるいはLinkedInといったソーシャルメディアサイト・サービス・ツール・プラットフォームが出揃った年でした。
    Figure 1. Distribution of work task interruption
    Source:Social Network Sites: Definition, History, and Scholarship

    それから4年たってみると、Facebookは世界で5億人、Twitterは1億人、LinkedInは0.75億人以上の登録ユーザを抱え、YouTubeでは毎日20億回以上もビデオが再生されています。

    米国の直近データを見ると、2010年6月に米国インターネットユーザがオンラインで消費した時間のうち、22.7%(前年比43%増)はソーシャルネットワークです。インターネットの創生期から幅広く使われてきたemailは8.3%(同28%減)AOLやYahooといったポータル系は4.4%(同19%減)、チャットとして親しまれているIMは4%(同15%減)となっています。
    Source:Mashable / Social Networking Dominates Our Time Spent Online

    情報・コンテンツの配信チャネルや共有スペースとしてもソーシャルメディアは上位を占めています。ニュースの配信を受けるチャネルとして、Twitter、FacebookがEmailを抜いて一位、二位を占めていますし、コンテンツを共有するスペースとしてFacebookが一位、Twitterが三位につけています。
    Source:Silicon Allery Insider

    如何に米国のインターネットユーザが、ソーシャルネットワークにアクセスし、情報・コンテンツを発信しながら、消費・共有・拡散しているかが分かります。

    こういったパターンは何も米国だけに起っているのではなく、全世界共通です。Facebookの登録ユーザ5億人のうち70%は海外ユーザで、Twitterの登録ユーザ1億人のうち60%以上は海外ユーザなのですから。

    このソーシャルメディアが企業のマーケティング戦略に大きな影響を与えています。今年6月、NYにおいてCorporate Social Media Summitが開催されました。ここに講師として参加した欧米各社の担当者21人中、Social Media、Digital、Online、Interactiveといった部門のディレクター、シニアマネージャという肩書がついている人は14人に及びます。三分の二の企業が、いままでの組織ではなく、エンパワーされた世界の消費者が活動しているソーシャルメディア(スペース)を担当する部署をすでに立ち上げているのです。また、既存の部署名のままであっても、Social Media、Digital、Online、Interactiveに関係するコミュニケーションを担当しているのは明らかです。

    それは、今までの仕組みが変わってしまったからです。ソーシャルメディアによってエンパワーされた消費者、ユーザ、顧客は、今までの組織が行っていた既存業務では収まりきらない行動をとり、その影響は他部門に複層して及ぶからです。また、エンパワーされた消費者に対して企業・ブランドからのメッセージを送るには、既存の広報、広告、マーケティングチャネルではうまく行かないからです。

    例えば、Heather Armstrong、別名dooceという女性Bloggerがいます。昨年、彼女は購入したばかりにも関らず故障続きのMayTag洗濯機のトラブルで堪忍袋の緒が切れ、「MayTag製品は決して買わないで。MayTag製品は悪夢よ」というTweetをしました。通常であれば、これはカスタマー・サービスの守備範囲です。根気強く顧客の苦情、トラブルに電話対応をするわけですが、時代が違います。顧客はWeb、Blog、SNS、Chat、SMS、そしてTwitterで顧客対応の一部始終をオープンに公表することができますので、メーカー対顧客のコミュニケーションが青天白日、全世界のインターネットユーザが注視の元に対応しなければなりません。また、悪いことに彼女のTwitterには当時でも100万人以上のフォロワーがいたのです。彼女が行ったTweetは100万人以上のタイムラインに表示されるわけです。小さな通信社、あるいは中堅の地方新聞社に匹敵する露出力がある彼女にカスタマーサービスが対処すべきでしょうか、対処可能でしょうか。すでに発信された彼女のTweetを見たユーザ達への対応はどこが、どうすべきでしょうか。

    この場合、最終的にはMayTagの親会社、WhirlpoolのTwitterアカウントが彼女に対応しました。ここはWhirlpoolのコーポレートコミュニケーション部が管理し、Tweetを行っているアカウントです。企業情報を発信するTwitterアカウントが個別顧客のクレーム対応を行ったことになります。しかし、それも当然です。そのままでは、企業のブランド価値、評価を急落させかねないことになりますし、ひいては販売にも影響が出るかもしれないからです。
    Source:Twitter / WhirlpoolCorp

    ソーシャルメディアパワーを身にまとった消費者に対応するため、企業はまず、新しい組織を作りました。その上で、ユーザ達が自分のブランドに対してBlogやTwitterで何を語っているのかモニタリングを開始しました。上のWhirlpoolがいい例です。自社関連ブランド名、あるいは@dooceをモニタリングしていなければ、傷はもっと深かったはずです。

    また、企業の公式Webサイトにアクセスするユーザにサイトの分かりやすやコンテンツを評価してもらいサイトの改善につなげるためWebビジター調査も開始しています。

    加えて、ブランド情報・コンテンツを共有してもらうため、WebサイトにFacebookやTwitterへのリンクボタンをつけたり、Facebookなどのソーシャルネットワーキングサイトに企業の公式ページを持って、ユーザと会話を始めています。
    Source:Samsung.com/us/

    ソーシャルメディアは一般消費者に力を与えています。インターネットおよびパラダイムシフトがもたらした変革をベースに世界中の消費者が、企業、メディアに匹敵する質と量のニュース、情報、コンテンツの制作、発信を、Blog、Facebook、Twitterなどのソーシャルメディアスペースで行っています。その制作、発信されたニュース、情報、コンテンツを他のユーザ達が消費、共有し、その次のユーザ達につなげています。

    そのため、インターネットおよびパラダイムシフト、そしてソーシャルメディアは、企業そのものの体制、組織、マーケティング戦略をも変革しています。

  4. 最後に、日本ブランドの危機を取上げます。

    インターネット(+ブロードバンド)、パラダイムシフト、ソーシャルメディアが提供するもの、すなわち、
    • オープンで
    • フラット、対等な
    • 双方向のコミュニケーション、エンゲージメントをすること
    から
    • ブランド関連情報が発信され、共有、消費、再露出されている
    • それがひとつの国内だけではなく、世界へ波及する
    • 世界のインターネットユーザはひとつにつながっている
    ことを理解した先進企業はソーシャルメディア戦略を構築し、実行に移しています。

    ソーシャルメディアマーケティング戦略のトップランナーのひとつである米Fordは、一昨年から消費者をソーシャルメディアスペースに巻き込んだFiesta Movementキャンペーンを行っていました。キャンペーンが終了した昨年末時点でFiestaが米国内で販売されれば購買すると8万人が回答していました。もし、Fiesta1台を200万円だとすれば、1,600億円の売り上げにつながるという結果を出しています。また、Explorerの最新モデルをFacebook内で発表したりと積極的にソーシャルメディアを活用しています。

    Fordのソーシャルメディア戦略、キャンペーンから学習した競合、例えばVolkswagenは、2011年モデルのPolo GTIのキャンペーンをFacebookだけで開始しました。また、その公式ページの言語は英語だと宣言し、全世界の消費者に向けてFacebookをタッチポイントとする戦略を開始しています。BMWも同じです。Facebook内に本社管理のページを設け、全世界20カ国の子会社が開設しているFacebookページへのリンクページとして機能させています。BMWの本社ページも英語となっていますので、全世界の消費者に向けたポータルページなのです。

    これら2社が開設しているFacebookページは、独本社が全世界のインターネットユーザに向けたゲートウェイとなっています。ここから世界の消費者にブランド関連ニュース、情報、コンテンツを発信し、彼らに消費、共有してもらい、彼らの友人・知人達に再露出してもらうための場所となっています。また、世界中の消費者が体験したブランド経験、画像でも、ビデオでも、コメントでも、それらを共有してもらうためのスペースとしても機能させています。

    もう、昔と同じように既存マスメディアに広告を出しても、広報記事を掲載してもらっても、それらの情報・コンテンツを消費、共有してくれる消費者がいません。いや、正確には消費者はいるのですが、広告や広報記事を信用してくれる消費者がいないのです。消費者は、企業の広告や広報よりも、専門家の声や判断、社員との会話で得られた情報、あるいは自分と同じような人の意見や評価を信じているのです。Fordを含め、これら企業はそれを理解しています。

    各社は、ターゲットとなる消費者が集うソーシャルメディアスペースにブランド自身が参加し、ファンやフォロワーになってくれる消費者とオープン、対等、双方向のコミュニケーションを行おうとしています。そうすることで、消費者の信頼を獲得しようとしています。

    FordのGlobal VP-MarketingのJim Farleyは、Ad AgeのDigital Conference 2010において、
    15秒のTVCFで我々が聞いてほしいストーリーを話すことはできるが、我々が求めているのは顧客に我々のストーリーを語ってもらうことだ。顧客の信頼をどのように得るかを示してくれたのはデジタルだ。
    と語っています。


    Source:Ad Age / Digital Conference 2010

    また、彼は以前の新車発表・発売に焦点を当てた既存メディアキャンペーンではなく、
    メディアキャンペーン開始前から、そして終了後も継続されるソーシャルメディアスペースでの会話、エンゲージメントの重要性を指摘しています。
    キャンペーンに合わせた一時的な広告や広報活動ではなく、ソーシャルメディアスペースでユーザと、一から会話を紡ぎ、育て、垂れた稲穂をユーザの個人的コネクション、ネットワークに共有してもらう。その中で新しい接ぎ穂が出れば、それも大事に育ててゆく、そのなかで消費者の信頼を獲得するという、Fordの全く新しいパラダイムを惜しげもなく公表しています。

    Ford自体、まだグローバルな展開を見せていませんが、VolkswagenやBMWが学習成果を基にちゃっかりと一歩先のステップを踏み出しているように見えます。

    こういった事例が自動車メーカーだけではなく異業種でも学習されてゆきます。B2C企業だけではなく、B2B企業も同じように学習してゆきます。各国現法はFordをお手本に、本社はVWやBMWをお手本にして、各社の広報、広告、マーケティング戦略にソーシャルメディアが取り入れられてゆきます。そして、世界中の消費者、顧客、ビジネスパートナー、サプライヤーを巻き込んだ会話、エンゲージメントが活発化してゆきます。

    唯一、日本の企業を除いて...。

    日本企業も国内では相応にソーシャルメディア対応を行っていますが、海外、あるいはグローバルな展開は非常に遅れています。

    Facebook、Twitter、YouTubeのファン、フォロワー、購読者を集計し、Famecountというランキングを発表しているサイトがあります。
    Source:Famecount

    Facebook、Twitter、YouTubeというソーシャルメディアスペースの中心に、海外向け、あるいはグローバルな公式ページ、アカウントを持っている日本企業は数えるばかりです。とてもFacebookだけで1,200万人以上のファンをもっているStarbucks、Twitterに150万人以上のフォロワーがいるJetBlue、Dellとは比べられません。

    しかし、Red Bullが3位、Zaraが15位、H&Mが20位、Lacoste、PUMA、BlackBerry、Adidas、Louis Vuitton、Nokiaなど世界の錚々たるブランドがちゃんと顔を出しています。こういった現状では、日本の企業・ブランドはソーシャルメディアスペースに存在していないに等しく、それでなくとも大きい欧米各社との露出ギャップは大きくなるばかりです。

    幸いなことに今のところ、VWやBMW本社のようにFacebookをグローバルブランディングに活用しようとしている企業は限られています。しかし、Best Practiceは様々な場所、スペースでオープンに共有されるものですから、あなたの企業の競合メーカーがいつ、VWやBMW本社のようにソーシャルメディアを活用したマーケティング戦略を開始してもおかしくありません。

    あなたの競合メーカーがソーシャルメディアを活用したグローバルなマーケティング戦略を開始した時、あなたの企業はそれに対応することができますか?すでに対応するための組織、予算、戦略を準備されていますか?

    上述のSamsung.com/us/は、昨年末にヘッドハンドした人間をソーシャルメディアマネージャとし、今年1月のCESにおけるプレスコンファレンスをTwitterで同時中継したことから始まり、WebやEmailニュースレター、Facebook、YouTube、Twitterなど各種タッチポイントのソーシャル化を推進しています。彼は、今年、6月のCorporate Social Media Summitに講師として招かれプレゼンしていますし、7月には韓国Samsung本社においてCEOおよび100人以上の上層部に次のコミュニケーションプラットフォームのプレゼンをしています。これほど大きな動きをあなたの企業は同じように遂行することができますか?

    あるいは、社内にこういった世界の動きをウォッチし、警鐘を鳴らしている組織、担当者はいますか?

    もし、社内で準備がされておらず、世界の動きをウォッチすることもなく、社内に警鐘が鳴り響いていないのであれば、世界に誇る日本ブランドの価値、評価はとてつもない危機に直面していると言えます。
さて、インターネット、パラダイムシフト、ソーシャルメディア、そして、日本ブランドの危機を説明してきましたが、おさらいの意味でもここでお聞きしたいことがあります。

それは、
  • 世界中の消費者がインターネット、パラダイムシフト、ソーシャルメディア、そして英語と言う共通語でひとつにつながっているということは全くないと考えますか?

  • 広報、広告、マーケティング部といった既存の組織が、ソーシャルメディアによりエンパワーされ、情報・コンテンツの制作・発信力を増し、共有・拡散力も以前とは比べ物にならないほどパワーを持つようになった消費者に対応できると考えますか?

  • 海外のことは海外の子会社、販社に任せておけばよく、各国のアーリーアダプター、インフルエンサーが翻訳し、国内に露出・共有する英語の情報・コンテンツなど気にする必要はないと考えますか?

  • 競合メーカーが各国市場やグローバルブランディングにおいてソーシャル化を進める中、今まで通りの広報、広告、マーケティング戦略を踏襲していても、企業価値、評価、消費者の信頼などは下落しないと考えますか?

  • WSJ、 NYT、WPなど一流マスメディアに広告を出稿し、PR WireやBusinessWireからプレスリリースを流し、CNNやSky、EurosportにCFを出し、Googleに検索広告、Yahooに ディスプレイ広告を出すことから、ソーシャル化、顧客の信頼獲得へと比重を移しているFordの戦略に全く危機感を感じませんか?

  • 物やサービスを売るというマーケティングが、消費者あるいは顧客やユーザとの会話を醸成し、点から面へ広げてゆくマーケティングへ移行しているとは考えませんか?
ということです。

日本航空の破たん原因を調べているコンプライアンス調査委員会が管財人に報告する内容には、組織の肥大化と経営者の 経営判断や全社的な危機意識の欠落が含 まれています。具体的には、営業や経営企画、運航本部といった組織が「縦割り」で横のつながりが乏しく、現場と上層部との間で風通しがわるくなっていたと 指摘しています。その結果、経営者が経営破綻に陥るような重大な事態に気づくのが遅れたとしています。

Source:Asahi.com / 日航破綻「歴代経営者の不作為が要因」

企業規模が大きくなればなるほど「親方日の丸」に近い意識が存在する可能性が高くなり、また、企業規模に慢心したグローバルな「危機意識の欠落」も存在可能性が高くなり、「ガラケー」といったひとつの製品だけではなく、企業全体が日本ローカルなガラパゴスブランドに陥ってしまう危険性が一層、高くなると恐れています。

この危険性を少しでも低くするためには、また、上の6点において少しでも不安や心配の種がおありなら、既存広報、広告、マーケティング戦略を見直し、新しいパラダイムを前提とした戦略への転換を強くお勧めします。


長文になりましたが、是非、厳しい現状を認識いただき、最善、最適な戦略を打ち出されることを願ってやみません。

笠井孝誌
株式会社パワーレップ


追記:Scribdにpdfをアップしました。
Source:Scribd / Dramroll - Open Letter to CEOs in Japan

2010/08/16

One World with Early Adopters Circulating Content

先週、「Japanese Brands Left Far Behind While Samsung Accelerating」を書いた。

参考:Japanese Brands Left Far Behind While Samsung Accelerating (Online Ad 2010/08/09)

そうした処、9日の午後1時頃、日本大手メーカーの韓国支社の方がアクセスされ、韓国語に翻訳して30分以上閲覧された後、ご自身のTwitterから Tweetされていた。しばらくすると、そのTweetから韓国の方が何人がアクセスし、また、少し時間をおいて今度は、韓国Samsung、そしてLG からアクセスがあった。

そして、10日には、iblur's Communicationsという韓国のBlogで取り上げていたらしく、11日にそこをリフェラルとしてアクセスがあった。
Source:iblur's Communications / Social Media의 방향을 정한 Samsung, 어떠한 결과를 보여 줄 것인지.

世界は狭いと思いませんか?言葉や地理的な壁はないと思いませんか?世界はひとつにつながっていると思いませんか?
最初のアクセスがアーリーアダプターであり、彼が140文字以内に要約したTweetを発信し、彼をフォローしている韓国ユーザから日本語Blogへアクセ スがあった。そして、そのBlogに取上げられていたSamsung、そして競合するLGからアクセスがあったということになる。また、最初のTweet からBlog記事を書いたユーザもいて、そこからもアクセスが来たということだ。

これから分かることは二つある。

ひとつめは、前々から言っている「アーリーアダプターから国内ユーザへのコンテンツ共有、再露出」という情報・コンテンツのフローがある。今回は日本語から韓国 語への共有、再露出だが、これは例外と言っていい。基本は「世界中のアーリーアダプターが注目する最新の英語ニュース、情報、コンテンツから各国語への共有と再露出」だ。この基本が世界中で行われている。だから、それをベース として英語コンテンツを世界のアーリーアダプターに露出し、それを消費、共有してもらい、自国語に翻訳してBlog、SNS、Twitterなどで国内へ 再露出してもらうことができる。そのフローが証明されたことになる。そして、グローバルに全世界のアーリーアダプターに情報・コンテンツを提供するのは日 本本社のテリトリーだと言い続けてきた。グローバルにマーケティングを行うのが米国子会社や欧州販社ではない限り、それは日本本社の責任となる。

ふたつめは、Samsungにしても、LGにしてもちゃんとバズモニタリングをしていることだ。最初にTweetしたアーリーアダプターをフォローしていた わけではなく、自社ブランド名や競合ブランド名をモニタリングしていたからこそ、韓国ユーザのTweetをキャッチし、このBlogへアクセスしてきたわ けだ。ソーシャル化を進めるための基本として、各種情報収集、戦略構築、社内体制整備、要員トレーニング、モニタリングやWebビジター調査など様々なも のがある。その中でも基本中の基本であるモニタリングを2社ともにやっているということだ。

2社ともに国内においてBlog、SNS、Twitterなどをモニターしており、2社ともバズのリンク先までトレースしている。それが国外、日本であったとしても。

基本に忠実な韓国ブランドに比べ、日本のグローバル企業は...???

ひょっとして日本国内においてTwitterを使った拡販、販促だけしか考えていないのかもしれない、世界はひとつにつながり、世界中のユーザがブランド体験を共有しているにも関わらず...。

2010/08/04

Internet Update June 30 2010

InternetWorldStatsから最新情報がアップデートされた。

それによると2010年6月30日時点で、世界人口は68.5億人、インターネットユーザは19.6億人。普及率28.7%だ。

半年で約1億人世界人口が増加し、インターネットユーザは約1.6億人も増加している。5年後の2015年ごろには73億人、22億人、普及率30%を予想していたが、このままのペースなら78億人とか、35億人、45%といったステージへ舞い上がってしまいそうだ。

参考:Internet Users in Dec 2009 (Online Ad 2010/04/07)
そして、インターネットで利用されている言語だが、英語が5.4億人、中国語が4.4億人、西語が1.5億人となっている。
Source:InternetWorldStats.com

トップ10に入っている言語ユーザのうち、少なくとも日本ユーザを除いた各国のユーザは英語ぐらい朝飯前のユーザばかりだろう。そんな中でもデジタルネイティブ、アーリーアダプター、インフルエンサーといったユーザ達は最新情報を求めて世界中を駆け巡っている。

それは米国、英語サイトということになる。例えばiPad、iOS4、Twitter、YouTube、FacebookといったIT系、ソーシャル系に関連する情報、ニュースを、ドメスティックな同様情報、ニュースソースが上回る注目を集めることはあまりない。世界中のユーザが注目しているのはグローバルな価値を持った情報、コンテンツなのだから。

最新ニュースの速報に命をかけているような彼らが、国内メディアの報道に先んじて米国、英語情報を国内向けに発信してくれるから、ドメスティックなユーザでもRSSを受信、Twitterでフォローしておけば最新ニュースに困ることはない。国内サイトだけしかアクセスしていなくても、世界中のニュースや情報に触れることができるのはマスメディアも同じだ。しかし、鮮度、個人的な親近感、信頼度、そして双方向性やRTを使った再発信力からすると、彼らとソーシャルメディアスペースでつながっているほうが自分のスペースで利用できるから、ベターだし、使いやすい。

こういったパターンで各国の国内ユーザは、各国のデジタルネイティブ、アーリーアダプター、インフルエンサーを経由して、米国、英語サイトの情報、コンテンツを入手でき、消費し、他のユーザと共有することができる。だから世界中のインターネットユーザは、「ひとつにつながっている」ことになる。

「ひとつにつながっている」世界のユーザ、消費者に米国販社、欧州子会社からブランド情報、コンテンツを発信し、消費、会話、共有してもらうのか、それとも日本本社がやるのか。あなたはどちらだと思いますか?

2010/06/21

Japanese Brand Endangered

先週金曜日、Ascii総合研究所とWDEのセミナー「企業Twitterは誰が使うべきか」において、「欧米企業のソーシャルメディア化がもたらす日本ブランドの危機」というテーマで話をさせてもらいました。

2006年10月、ANA総会において「パワーは消費者が握っている。彼らは考えられる全ての意味で我々のブランドを所有し、ブランドコンテンツ制作にも参加し始めている」と語たり、企業が支配してきたマスメディアにソーシャルメディアが追いつき、追い越すさまを理解したCEOがいるP&Gにしても、2009年3月に「デジタルビジネス戦略チーム」が、マーケティング役員向けにクラッシュコースを開催している。トップがパラダイムシフトを理解していたとしても、実際にマーケティングを実行する事業部トップを揺り動かし、マインドセットを切り替えさせるのは容易ではない。トップ企業であっても3年もかかっているし、また、それをマインドセットが切り替えられない担当事業部、部署が主催することも非常に困難なのだ。

それはそうだろう。今まで巨額の広報・広告・マーケティング予算を握ってきた既存組織が、訳の分からないとしか理解できないオンライン、それも「オープンだとか、対等だとか、エンゲージメントだとか」といったバズワードを口に出し、ブームに浮かれているとしか見えない社内の人間、社外のエージェンシーの声に耳を傾けると言うことは自分の存在を危うくすることになる。予算を別組織、別キャンペーンに横取りされてしまうことになる。組織内での自分の存在や声、知見が役に立たなくなるような新しいことを社内に啓発することはあり得ない。

だから、P&Gは「デジタルビジネス戦略チーム」 がクラッシュコースを開催したし、FordのScott Monty、PepsiのBonin Boughは外部のエージェンシーからヘッドハントされてパラダイムシフト、IMCのイニシアティブをとっている。それこそマスメディア・エージェンシーに取りつかれ、アゴアシ接待を受けているような社内組織のドンの首を挿げ替えなければ将来はないのだ。それさえも理解していない企業・ブランドは多い。

さて、6月12日にVolkswagen InternationalはFacebookにファンページを開設した。これは2011 Polo GTIキャンペーンの核を成すもので唯一のものだ。すなわち、Facebookファンページだけで2011年モデルのキャンペーンをやるそうだ。そして、このファンページの言語は英語だ。Volkswagenのブランド体験を全世界のユーザと共有するため、「公式言語は英語」だと宣言している。

Volkswagenがどこまでパラダイムシフトを理解しているかは不明だ。しかし、少なくとも他マスメディアを使わずにFacebook一本に絞ってPolo GTIキャンペーンをやろうとしているのはGAPのケースから学習している。Vitamin Waterからも学習している。今、どこに顧客が集い、ブランド体験、情報・コンテンツを消費、共有、再拡散してくれているかは理解している。そして、Starbucks、Adidasの戦略も加味してFacebookをブランドポータルとして全世界のユーザに英語でコミュニケーション、エンゲージしようとしている。ここからも学習している。

一方、パラダイムシフトを理解しない日本のグローバル企業・ブランドが、従来通りの縦割りサイロ組織から苔むしたメガフォンマーケティングをソーシャルメディア化しても、ツール主導のマーケティングを行ったとしても、パラダイムシフトを把握し、オープン、対等、双方向のコミュニケーション、エンゲージメントを行い始めた欧米企業との間に広がり、深まり、離れてゆくブランド体験ギャップは埋めようもない。

製品・サービスの購買者があれこれとつぶやき、称賛し、苦情を言いたてている今、彼らに刺さらないマーケティングをやるしかない日本企業・ブランドと、プロファイル・アップデート・ビデオコミュニケーション・つぶやき・個人検索・RSSフィード・自動タグ機能などFacebook、MySpace、Twitterが備える機能を取り込んだ企業内コラボレーションプラットフォーム、Cisco Quadのベータテストを今秋にも開始するCiscoとの差は途方もない。

社内の縦割りサイロ組織を越えるコラボレーションと、70を数える部署横断のチーム制、それこそ営業リーダーが開発チームを率いるCiscoが、そのプラットフォームをシステム化して販売しようとしている。それを導入してくる企業・ブランドが否応もなく、瓦解する縦割り組織から解き放たれてオープン、対等、双方向のコラボレーション、コミュニケーションを行い、顧客・ユーザとエンゲージする時、もし、日本のグローバル企業・ブランドが今まで通りのコミュニケーションを続けるとすると、そのブランド価値は奈落の底に転落するしか道はない。

可能性を見出すとするとそれはマインドセットを転換させ、パラダイムシフトを理解させるクラッシュコース開催だろう。あるいは、Webビジター調査を導入し、SiemensやPhilipsのように全世界40カ国、あるいは32カ国の自社Webサイトへアクセスするユーザにコンテンツを評価してもらうとともに、どんな情報・コンテンツを希望するのか、どんなフォーマット、チャネルで発信し、どういったスペースでどのようなエンゲージメント体制を敷けばいいのか聞くことだ。また、バズモニタリングを行い、何が語られ、何が共有され、何が批判されているのかを知ることだ。といって、数の話でも、グラフの話でも、限界線を越えたらアラートを発信するといった話ではない。バズのコンテンツ、影響する範囲・会話への参加者・参加度・可能性などからその価値を判断し、ブランドへの影響を想像することだ。

クラッシュコース開催、Webビジター調査、バズモニタリングなしに、通常マーケティング手法をソーシャルメディア化したところで、Cisco Quadが提供するコラボレーション、それが否応なく開くパラダイムシフトを想像できない限り、日本ブランドに将来はない。

と、考えるが、みなさんはどうでしょう?
ご意見をお待ちします。

2010/06/15

Social Media in China

3億8400万人のインターネットユーザがいる中国のソーシャルメディアのレポート、Social Media in China 2010がTNSから出ている。

中国ユーザの51%はソーシャルメディアスペースに参加し、最も頻繁に利用されているソーシャルメディアプラットフォームはForum/BBSだ。60%台前半のそれを50%強のBlog、50%弱のビデオ共有サイトが追っている。
そして、
  • 86% ソーシャルメディアスペースでブランドに関するネガティブコメントに
  • 90% ソーシャルメディアスペースでブランドに関するポジティブコメントに
出くわしたことがあるそうだ。

ネガティブの原因はというと、とんでもないサービス(81%)、ブランド不満足(78%)がトップ2だ。ちょっと気になるのは、ひどいCSRが47%になっている。
ポジティブの原因は、ブランドに満足(87%)、おまけや懸賞(56%)があるが、「友人のお勧め」が43%となっている。
そして、企業・ブランドがソーシャルメディアに参加する評価を聞いている。もっとアピールする(34%)、ある程度アピールする(43%)を合わせて77%が歓迎している。
Source:TNS / Social Media in China

中国も、欧米諸国とまったく違いがない。ソーシャルメディアスペースのユーザは自由闊達にコミュニケーションを育み、情報やコンテンツを共有している。そして、そのスペースにブランドが参加することを歓迎している。

もうリンクが消滅してしまったが、2006年3月の人民網(日本語版)には、
英語専攻者と非専攻者をあわせて約3億人が英語を学習している。そのうち、小学校から大学までの学習者は1億人を越え、数年で英語を母国語とする国家の人口合計を越えると見込まれる。
また、2008年6月17日には、
昨年、中国では100万人以上がIETLSを受験。世界で最も人気のある英語資格試験となった。
そして、2009年4月13日には、
英国王室言語学会首席会員のGrahame T. Bilbow氏は、中国での「英語ブーム」について、「中国語を学ぶ人が世界中で増えているのに、中国の人々の英語学習熱は衰えていない。私は多くの中国 の若者と接してきたが、彼らの英会話レベルは驚くほど高い」と語る。専門家の中には、「世界中で3千万の外国人が中国語を学んでいる一方で、3億の中国人 が英語をかじっている。英語を話す中国人の数が英語母語者の数を上回る日はすぐそこに迫っている」と言いきる人までいる。
という報道があった。

Source:人民網 / 中国人英語学習者は英語母国語者数を越えるか

中国には様々なアクセス制限、障害があるが、日本人よりけた違いの語学能力を発揮すれば、最新情報を発信する海外、米国のトップサイトへアクセスし、情報・コンテンツを何の苦もなく理解し、それをForumやBlogなどで国内に輸入、翻訳することができる。

ソーシャルメディアに慣れ親しんだ中国ユーザが、英語ソーシャルメディアスペースに参加することは、またひとつ、国単位や販売地域単位での広報、広告、マーケティング、ブランディングに頭痛の種を蒔くことになる。国外から持ち込んだ情報・コンテンツの方が最新であり、もっとも人気が高く、もっとも多くのユーザ達に共有されるのは間違いないのだから。

グローバルなブランディングには、英語が達者で、けた違いに多い中国ユーザも対象とすべきなのは明らかだ。

2010/04/09

Pan European and Gobal Campaign

この間、昨年12月に出ていたOfcomのICMRchartを見ていたら、欧米・日本のメディアごとの広告支出比率があった。

それによると2008年、英広告費の23%がインターネット、仏は16%、独が15%、伊が9%、ポーランドが11%、西が9%、蘭が18%、スウェーデンは19%だ。TVのシェアが30%を切っているのは、英、仏、独、蘭、スウェーデン、アイルランドとなっている。紙離れが深刻な日本は新聞・雑誌の合計で27%だが、26%のポーランドを除けばほかの国はまだ30%以上のシェアを死守している。
そして、2008年の2007年対比で見た場合、アイルランドを除く各国で伸びているのはインターネットだ。シェアを減らしているのは新聞、雑誌、TV、ラジオと相場が決まっている。ただし、米ではTVも伸びている。
Source:Ofcom / ICMRcharts (pdf)

先週、「Digital Natives vs. Immigrants」を書いたが、これら欧米圏のユーザの中核を成すのはデジタルネイティブでしかなく、今後、彼らが消費の中心とするメディアはインターネットをおいて他にない。

参考:Digital Natives vs. Immigrants (Online Ad 2010/04/02)

もう随分昔、2006年の8月に「English Next」を紹介した。それによると2010年にはすべての世代を通じて20億人が英語を学ぶと推測さ れている。

参考:Lingua Franca & Internet/Online Marketing (Online Ad 2006/08/29)

だから、彼らデジタルネイティブに日本人のような語学音痴はいない。少なくとも自国語と英語に加え、独、仏、伊、西、果ては露、アラビア、中国語くらいからひとつや二つはネイティブに近い読み書き、会話能力を持っている。

そして、彼らがアクセスするのは自国サイトだけではない。Facebookの友人には海外のユーザもいる。Twitterでフォローしているのは海外のイノベーター、アーリーアダプターが多いかもしれない。そして、彼らは海外から仕入れたコンテンツを自国語に翻訳して国内ユーザと共有、再露出している。

日本のIT、PC、ソフト、インターネット、ソーシャルメディア系Blogのコンテンツを調べたことがありますか?国内メディアが報道する海外コンテンツだけを引用、リンクしたサイトよりも、海外、米国サイトのコンテンツを直に翻訳して引っ張ってきているサイトのほうが断然多いことに疑いの目はない。また、国内メディアが提携サイトのコンテンツを全て翻訳しているわけではないし、紙と連携する必要性から翻訳できないコンテンツもあるため、ニッチなBlogが深堀したコンテンツを伝えているケースが多い。そして、そういったBlogへのアクセスはレガシーメディア、マスメディア系サイトを上回ることもある。これだけを見ても海外サイト、英語サイトのコンテンツと非英語ユーザとのコネクション、リレーション、ネットワークが構成されることは確かだ。

ターゲットとチャネルが決まれば、あとは英語を活用したパンヨーロッパ、あるいはグローバルキャンペーンの方法論だ。

2009/11/27

Early Adopter and Influencer in the World

「State of the Internet with a focus on Asia Pacific」というcomScoreのWebinarが19日にあった。

その中に次のスライドがある。

スライドの説明によれば、「世界中のオーディエンスは自国語のコンテンツ消費を望む」となる。豪、ニュージーランド、インド、シンガポール、マレーシア、英国、アイルランド、カナダ、プエルトリコ、南アなど英語圏、あるいはそれに近い国々を除くと、全て自国語のコンテンツ消費が過半数を占めている。
Source:comScore / Press Release

しかし、このスライドの本質は別にある。

それは韓国、日本、中国などのアジア諸国、デンマーク、ノルウェーなどの欧州諸国、コロンビア、メキシコ、ブラジルなど中南米諸国においても英語コンテンツ消費があることだ。

世界を駆け巡ったMichael Jacksonの突然死、Susan Boyleの歌声、他にも英語で発信されるコンテンツに世界中のユーザが群がっている。それはIT、ビデオ、映画、ミュージック、ネットワーク、PC、スポーツ、財務、経済、政治など自国、自社、自分に関連する、影響するニュース、情報、コンテンツが英語で発信されるケースが多いからだ。また、自国語で入手できるニュース、情報、コンテンツにも翻訳コンテンツが多い。

だから、英語くらいできる世界のアーリーアダプターは英語コンテンツを目指す。国内ユーザよりもいち早く、最新ニュース・情報を仕入れ、上手を取るために。そして、Facebookは言うに及ばず、LinkedIn、あるいはNingを使い自分でSNSを作り、各国に英語での個人的なネットワークを広げている最先端アーリーアダプターもいる。加えて、彼らは、最新ニュース・情報を自国語に訳して国内のアーリーマジョリティへ供給するインフルエンサーでもある。

彼らは欧州やアジア諸国、北米、南米に住んでいるかもしれないが、どこに住んでいるかは問題ではない。国境もなく、ビザもいらないインターネットがある限り、彼らは英語コンテンツを求めて最新、最先端のグローバルサイトへアクセスしている。彼らを国境で区切るテリトリ単位でマネージすることはできない。欧州支社や米国販社、南米営業所が、担当するテリトリにあるWebサイト経由で訴求できるわけはない。そんなことをしても彼らがテリトリ外の英語サイトから持ち込む、翻訳するコンテンツに影響を及ぼすことはできない。

彼らを担当できるのは企業・ブランド本社でしかない。

米国のグローバル企業なら意識することなく米国でレガシーメディア、オンラインメディア、ソーシャルメディアを使ったキャンペーン、プロモーションなどにより、英語コンテンツ、米国サイトへアクセスしている世界のアーリーアダプター、インフルエンサーに訴求できる。対話できるし、エンゲージすることができる。それを他国に本社をおく企業の米国販社がやろうにも予算も、人員も、権限もない。

それを担当できるのは企業・ブランドの本社でしかない。

2009/01/14

Students Online

eROIから新しい調査データが出てきた。全米283の高校、大学、大学院の学生を対象にどのようなコミュニケーションをオンラインで行っているかを明らかにしたものだ。

まず彼らは2.4個のemailアドレスを持ち、約8年間emailを使っており、最初にemailアドレスを取得したのは13歳だ。この現状がお分かりだろうか?

中心としてよく使っているemailアドレスは以下のとおり。Gmailが32%でトップだ。
次にコミュニケーション手段として何を使っているかというデータがある。モバイルのテキストメッセージが37%でトップ、26%でEmailが続いている。
Source:eROI / Q4 2008 How Students Communicate Survey Results (要登録)

eROIは、DMNews、Bokardo、Skype、Harris Interactiveが出した「Emailは死につつある。特に学生は」というレポートに反論するために今回の調査を公表している。そのためにいろいろとデータを切り出してきて説明している。

13歳からemailを使い始め、複数のemailアドレスを使い分け、アーリーアダプターとしてSNSの草分けとなった学生は、これから就職し、家庭を持ち、企業の中核をなすことになる。だからemailのマーケティングビークルとしての地位は揺らぎない。

しかし、この調査結果から見えてくるもうひとつのポイントは、モバイルの存在感はそれに優位していることだ。ユビキタスなデバイスとしてPCを上回るモバイルは今後の中心的なコミュニケーションデバイスとなる。

参考:Go Mobile for 2009 (Online Ad 2009/01/05)
参考:Mobile boosting in 2009 (Online Ad 2009/01/06)

2008/09/01

Royal Customer Advocacy

IHG (Intercontinental Hotel Group) といえば、日本ではホリディ・インとか、溜池にあったANAホテルを買収してANAインターコンチネンタルホテル東京としたことなどを思い出す。

「Online Hotel Booking and CEO Blogging」で、comScoreのオンラインホテル予約額データを紹介した中で、IHGも前年比0.4%増で健闘しているホテルグループのひとつだ。
そのIHGが、今年4月にバイラルなマーケティングプロモーションを実施した。ただし、これはロイヤルティの高い顧客のアドボカシー効果をテストするためのもので、本格的なバイラルキャンペーンというよりもトライアルの性格が強い。

IHGのプライオリティクラブに参加している4,000万人の中から、もっともアクティブにホテルを利用している130人、そしてもっとも利用していない20人、合わせて150人にキャンペーンemailが発送された。5月1日から6月15日までに、インターコンチからホリデイインエクスプレスまでのIHGグループのホテルに3泊すれば3ポイントが与えられるというものだ。本人に送られるキャンペーンの優待券に加えて、家族・友人や知人へ転送できる3本の優待券もつけられていた。

さて、この150人へのバイラルキャンペーンの効果はどんなものだっただろう?

参考:Online Hotel Booking and CEO Blogging (Online Ad 2008/06/06)

IHGには「Social Marketing Manager」という職種がある。Cassandra Imfeld Jeyaramがそうで、彼女によると、このキャンペーンの目的は「もっともロイヤルティの高い顧客が、旅行コミュニティ内でのインフルエンサーかどうかを確認するため」だった。

結果として、「旅行業界でも、ストーリーを語り、経験を共有し、喜んでキャンペーンに参加する」インフルエンサーはいたし、その影響力は大きなものだった。

バイラル(トライアル)キャンペーン結果:
  • キャンペーンemail受信者は平均17人に転送
  • 4,200室の宿泊予約獲得
  • プライオリティクラブメンバーは720万ポイントを獲得
  • キャンペーンはあっというまに30カ国に波及(サウジアラビア、シンガポール、リトアニア、マレーシアなど)
  • 6週間で25万㌦の売り上げ増
メンバーがゲットした720万ポイントがいくらのコストになるかは知らないが、たった150人へのemailキャンペーンで25万㌦の売り上げ増というROIは驚異的だ。

Source:1to1 Media / Intercontinental Hotels Mines Customer for Advocacy

人、ユーザ、顧客がメディアとしてコンテンツを広めてくれる。特に米国で開始されたキャンペーンが海外の友人・知人、あるいは会社の関係者に広がっている。ホテルの優待クーポン券だからというわけではない。コンテンツに言語は関係ないのだ。

アドボカシー的にも、インフルエンサー的にも、自分にとって、友人・知人、関係者にとってメリットがあるのか、ないのかだけだ。その意味のある、メリットのあるコンテンツを家族・友人・知人、会社の同僚・上司・部下、業界の関係者に知らしめることに意味があるだけだ。

しかし、ここにLingua Francaが出てくる。サウジアラビア、シンガポール、リトアニア、マレーシア、あるいはその他の国に転送されたコンテンツの言語が、Lingua Francaではない場合、ここまでの地球規模での露出拡散はありえない。

そして、このキャンペーンに広告ビークルはない。企業と顧客の間に仲介する存在はない。

参考:The End of Advertising (Online Ad 2008/08/29)

最後に
  • Kodakには、Chief Bloggerがいる
  • Dellには、VP-communities and conversationsがいる
  • IHGには、Social Marketing Managerがいる
日本の企業に同様の職種はいつになったらできるのだろう?

参考:VP and Chief Blogger (Online Ad 2008/06/17)

2008/07/29

comScore : State of the Internet

昨日、「World Broadband Q1 2008」の最後に;
  • あと何年かすると中国の人口を抜くとも予測されているインド、英語ユー ザが大半を占めるインド、携帯ユーザが爆発しているインド。この国が消費する(英語)コンテンツは膨大になる。そしてのその消費するコンテンツは何もイン ド国内だけではない。英国や米国の英語コンテンツも消費されてゆく。
と書いた。

なぜ、このようなことを書いたかというと、それはcomScore, Inc.が7月2日に開催したシンガポールからの「"The State of the Global Internet with a Focus on Asia"」というWebinarに面白いデータがあったからだ。そのプレゼン資料がcomScore.comのプレゼンテーションギャラリーに上がっているので紹介する。

まず、2010年には15歳以上のインターネットユーザが10億人を越えると予想している。地域別に見るとアジア・パシフィックが42%を占めダントツ、1996年には66%を占めていた米国は2008年4月20%へ落ち、2010年には北米としてまとめても20%にとどまる。

米国のシェアが落ち込んで、アジア・パシフィック、西欧、その他地域のシェアが大きく上昇してくる。すなわち、非英語ユーザが増えるということは、米国のパワー、影響力が低下しそうだが...。
以前、「Global Online Marketing and Branding Available」で紹介した、comScoreの別のデータがある。それは2006年9月のUSトップ25Webサイトへの世界からのトラフィックを説明したものだ。当時、トップだったYahoo!の米国の15歳以上のユニークユーザは1.15億だが、全世界のユニークユーザは4.8億人。非USユーザ比率は75.9%だった。

下に挙げられている米国のトップ25サイトの中で、Verizon、AT&T、Target、BOA、Wal-Martなどローカルサイトを除くと、大半のサイトにアクセスする非USユーザの比率は過半数を占めている。米国、すなわち英語サイトなのだが、世界中からアクセスを獲得している。
参考:Global Online Marketing and Branding Available (Online Ad 2006/11/09)
(注:上のエントリでcomScoreのプレスリリースへリンクを張っていたが、プレスリリースそのものが削除されたのでソースは現在存在しない)

さて、2006年9月のデータと、下の今年4月のデータを比べるとGoogleなどのように大きくユーザ数を伸ばしている所もあるが、非USユーザ比率があまり変わっていない。これだけ非US、非英語ユーザ数が増えたにもかかわらず、比率は大体同じだ。

ということは、それだけ非US、非英語ユーザが増えて自国内のサイトコンテンツも充実してきたにもかかわらず、変わらぬことなく、米国の英語サイトへアクセスしているということだ。
そして国ごとに言語による閲覧ページ分布を出している。(クリックで拡大しても分かりづらいので、末尾のリンクからpdfへ)
これによると、英語圏を除けば、英語ページを閲覧しているのは少数派だ。だから、「世界中のオーディエンスは自国語でコンテンツを消費する」とタイトルがついている。
Source:comScore, Inc. / Presentation Gallery

しかし、米・加・英・豪・ニュージーランド・インド・シンガポールなどの英語圏を除いても、マレーシア、香港、日本、中国、台湾、欧州各国、ロシア、南米、南アフリカ、そしてイスラエルでも必ず英語ページの閲覧ユーザがいる。これを英語ネイティブのユーザがアクセスしているだけと片付けられるだろうか?

いやいや、とんでもない。彼ら非英語圏から米国サイトへアクセスしているユーザはアーリーアダプターなのだ。彼らはどこの国、言語のWeb/Blog/SNSサイトであろうと、興味のあるサイト、必要な情報・ニュース・データのあるサイトへはアクセスするのだ。その国で少数派であろうとも、必要な情報、例えば、自国や自社に影響を及ぼす世界の政治、経済、金融、IT、インターネットなどの最新ニュース、情報を探しているのだ。その情報の出所として米国の英語サイトがあるのだ。

最後に紹介したスライドに関しては、こういった理解が正しいと思う。

さて、インドのインターネットユーザが増えると、国内のコンテンツ消費は当然増加する。そして国内発のコンテンツに満足の行かないユーザは海外サイトへアクセスすることになる。

各国の新聞やTV、ポータルやニュースサイトの一面、トップを飾る外国発記事のどれくらいが米国発なのかを考えてみればいい。その国の一般大衆には縁遠いコンテンツであったとして も、その国や企業に及ぼす影響は大きいはずだ。新聞やTV、ポータルやニュースサイトで報道されただけの情報に納得が行かない、もっと詳細情報が必要な場合、あなたならどうするだろ う?米国企業と提携している企業、新しい製品・サービス・ソリューション開発をしている企業、生産拠点を新設しようとしている企業などの担当者、あるいは アーリーアダプターとして様々な情報収集を行っているあなたは、明日の新聞やTVの続報を待つのか、国内のWebサイトが翻訳の続報記事を載せるまで待つのか、それとも米国サイトで詳細情報を収集するのか?

今でも米国サイトのコンテンツを消費しているインドのアーリーアダプターに加えて、アーリーマジョリティが米国コンテンツを消費し始めることになる。これは何もインドに限った話ではない。中国であれ、マレーシアであれ、ブラジルでも、イスラエルでも変わらない。