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2012/09/28

お客様相談センターの対応から見るソーシャルメディア体制

昨年の11月、時事.comで震災関連のビデオを見ていた所、「墓石」のターゲッティング広告が表示された。あまりにも無神経な広告掲載だと感じたのでメーカーにメールした。

以下は、その時の回答だ。
ご指摘の映像に、お墓の宣伝は、確かに問題だと感じましたので、 震災以外の映像も含むすべてのYouTube動画や震災関連記事には、 当社の広告を表示をしないように設定いたしました。 
インターネット広告がどのように表示されるのかについて配慮が十分でなく、 XXXX様にはご不快な思いを抱かせてしまいましたことに 心よりお詫び申し上げます。 
今後ともお気づきの点がございましたら お知らせいただきたく存じます。 この度は本当にありがとうございました。
そして、今週、「教えてGoo」で「がん」や「見舞い品」について見ていた所、「お葬式」のターゲッティング広告が表示された。あまりにも無神経な広告掲載だと感じたので全国規模の大手小売業者にメールした。

以下は、その時の回答だ。
日頃より、弊社をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。
この度は、XXXXXの広告につきましてのメールをいただき恐縮いたしております。
お申し出内容を担当部署に伝えましたところ、 
XXXXX事業部の広告が、一部意図しないお客さまに表示されてしまい、お客さまに不快な思いをさせる結果になったことについてお詫び申し上げます。今回は、「教えてgoo」のシステムが、質問内容に関連する広告として当社広告を選び、掲載されたものと思われます。 
当社としては「病気」、「お見舞い」といったことに関連づける意図は全くありません。ご指摘のような点については、防御策も講じていますが、完璧に防げるわけではありませんので、「教えてgoo」で病気や見舞いに対する質問への回答」については、今後出ないようにいたします。 --中略--
と申しておりますので、何卒宜しくお願いいたします。
今後共、弊社をご愛顧賜りますようお願い申し上げます。
前段のお客様相談センターの回答と比べると後段のそれはあまりにも拙い。

回答文面そのものは別格に置くとしても、この小売大手企業の広告主としての知見の無さ、代理店任せで担当部署としての責任の無さ、社内縦割り組織の風通しの悪さなどが透けてくる。そして、覚束なさを埋めてくれるはずの消費者の声に傾ける耳を持ち合わせていないことも見えてくる。

こういった企業がソーシャルメディアを使った広告を出稿するのは難しい、ましてやエンゲージメントが入ってくるソーシャルメディアマーケティングを実行するのは難しい。

英国の小売最大手、TESCOはFacebook、Twitter、YouTube、そしてPinterestをやっている。
そして、TescoのFacebookではこんなやり取りがあった。
ニンジンを買って帰り、ローストチキンを作ろうとニンジンを取り出した時、1本逃げて行っちゃった。1本弁償して
という女性のウォール書込みに対して、 
逃げ出したニンジンの弁償はできません。なぜなら、目の前でニンジンが逃げ出すという新しい経験をされましたし、買った野菜が逃げ出さないように注意しておかなければならないという人生の教訓を学ばれましたから。ただし、逃げ出したニンジンがその理由を書きおいてくれればと思います 
とカスタマーサービスのサムが応えている。
まるで「生協の白石さん」を思い出させる軽妙なやりとりがある。

こんなバカげた時間つぶしの書込みに、ひとひねりしたレスポンスを返すことができるリソースがない限り、全国規模の小売大手企業は、FacebookやTwitterには手を出さない方が無難だ。

ただし、これは何も小売大手企業だけの話でもない。同じようなレベルの話はどの業種にも山ほど転がっている。

Facebookウォールにユーザの書込みを禁止している企業は何社あるのだろう?Facebookをリクルートに使っている企業数が1800社もあるという。そのうちの何社がFacebookを理解しているのだろう?

だから、規模の大小を問わず日本企業にソーシャルメディアは向かないのではとまで思えてくる。


2012/07/12

マレーシア首相とVisit JapanのFacebookページの類似点

Marketing-Interactive.comの7月6日に、「Japan Picks Digital Lead For Tourism Push」という記事があった。

出典:Marketing-Interactive.com / Japan Picks Digital Lead For Tourism Push

それによると、6月にコンペが行われて博報堂が8月から観光庁の公式Webサイト、Facebookページ、オンライン広告などを担当するようだ。博報堂によるとページに対する「いいね!」は昨年倍増したそうだ。

どんなFacebookページかと言うと下のようになっている。
さて、ここで見てもらいたいFacebookページがある。
これはマレーシアの首相、Najib Razak氏の公式Facebookページだ。

昨年7月、この首相のFacebookページに噛みついていたKent Ong というマーケティングコンサルタントがいる。「A Letter to Datuk Seri Najib on Social Media Marketing」という公開書簡を自身のBlogで公開していた。

出典:Human Website / A Letter to Datuk Seri Najib on Social Media Marketing

何に噛みついていたかと言うと、それは首相のFacebookページに対するファン・ユーザの投稿、ページ投稿に対するファン・ユーザのコメントに対してまったくレスポンスが見られないことだ。

まず初めに、首相にソーシャルメディアマーケティングの基本を知ってもらいたいと始めて、
ソーシャルメディアマーケティングの基本は、コミュニケートすること、エンゲージすることなんだ!
今は会話の時代であり、ブロードキャスティング時代ではないのだから、マレーシア国民はあなたと話し合いたいんだ。
あなたはFacebookのようなソーシャルネットワーキングサイトで国民を無視している。あなたと国民の間にエンゲージメントは全くない。
忙しすぎて時間がないのならFacebookは止めた方がいい。無意味だ。
とこき下ろしている。

全くその通りと一年遅れの拍手を送るしかない。現在、100万人以上のファンを集めている首相のページだが、オバマ大統領・鳩山首相(当時)など諸外国首脳との会談、国際会議出席、外遊実績などが強調されている。しかし、投稿やコメントに対してレスポンスは見えない。彼の言うとおり、ブロードキャスティング=メガフォンマーケティングをしているだけだ。

そこで再度、Visit Japan InternationalのFacebookページをよく見てみると、まず、ファン・ユーザが自由にウォールに投稿できない。
ハイライトをクリックしても、普通なら表示される「他のユーザーの投稿」が表示されない。そう、ファンやユーザが自由にウォールに投稿することはできないのだ。ユーザとのコミュニケーションやエンゲージメントを積極的に受け入れる門戸は閉じられている。

次にページ投稿に対するコメントだが、コメントすべてをチェックしたわけではないが、Visit Japan Internationalからのレスポンスがまったくないように見える。「いいね!」の数より、コメントやシェアを増やすためにもユーザコメントにきちんと対応しなければならないのだが、そういう体制はなく、対応されていないようだ。

Kent Ong に言わせれば、「マレーシア首相のFacebookページよりも対応レベルは低い」としか評価されそうにないのがVisit Japan Internationalのページのようだ。


もうひとつ、Kent Ong が噛みついてる点がある。それはTourism MalaysiaがFacebookのみをコミュニケーションチャネルとしていて、LinkedInを使っていない点だ。彼に言わせれば、
LinkedInに参加しているユーザの多くは決定権者だ。CEO、取締役、ゼネラルマネージャ、人事マネージャ、オーナー達だ。
Tourism Malaysiaは、Cuti-Cuti Malaysia(Visit Japanと同様のキャンペーン)グループをLinkedInに持つべきだ。 そこで、これら決定権者とコミュニケートし、エンゲージすべきだ。
Tourism Malaysiaは、Cuti-Cuti Malaysiaを取上げている人々、マレーシアへの旅行について話している人々を探し、彼らの声を聞き、その中に参加しなければならない。フォーラム、ブログ、Facebook以外のソーシャルネットワーキングサイトでもソリューションを提供しなければならない。
Facebookページをオープンして、ただカスタマーを待つだけというのは止めろ。ソーシャルメディアは彼ら(顧客、旅行者)のためのものであり、Tourism Malaysiaのためのものではないんだ。
これもまったくその通りと拍手を送るしかない。

どこの国でもレガシーメディアを長年使ってきた経験のあるユーザは誤解し続けている。数の論理がどこまでも通用する時代ではなく、ネガ・ポジであれ、清濁併せてモニターし、対応しなければならない時代に入っていることを理解していない。

理解した上で、ステークホルダーに一番近いスペースに参加し、声を聞き、会話しなければならない。参加もせず、聞きもせず、会話しないのであれば、それは自身に対するネガティブキャンペーンにしかならない。

願わくばマインドセットを転換し、Kent Ong の叫びがマレーシア首相やTourism Malaysiaだけではなく、日本のVisit Japan Internationalや博報堂にも伝わることを祈るのみだ。

2012/06/14

世界の美術館トップ5はTwitterから何を求めているのか?

ルーブル美術館、メトロポリタン美術館、大英博物館、ナショナルギャラリー、テート美術館が2011年の入場者数世界トップ5の美術館だ。

そこが当然、Twitter運用を行っているけれど、フォロワー数を求めていると思いますか、それとも何を求めていると思いますか?
出典:マサダ 入場者数世界トップ5美術館のTwitter対応

2012/05/31

米国美術館協会と全国美術館会議の差

彼我の差は、現状認識と、調査・情報収集を元にした未来予測の力に他ならない。 出典:マサダ 彼我の差はかくも広く、深く、そして遠い

2012/05/28

ユーザレビューは不可欠

集客施設にユーザレビューは不可欠。当然、良いことも、悪いことも。悪いことを書いてもらい、改善するだけの話。そういう体制があれば...。
出典:マサダ スキー場はユーザレビューをリンクすべきですよ!

2012/05/24

シドニー水族館がユーザ参加を促進する方法

ユーザ心理をくすぐるシドニー水族館の取り組みを紹介。 出典:マサダ ユーザ参加を促進するパターン:その2

2012/05/23

自己リソースだけで完結しますか?

コミュニケーションを行う一方である一般ユーザの貢献を認め、感謝する必要のない企業、集客施設はない。しかし、それを理解していないケースが多い。 出典:マサダ 一般ユーザの貢献に感謝するか、しないか?

2011/08/03

Toyota rejects communications with users on Facebook

トヨタ本社が、今年の4月下旬からFacebookにページをオープンしている。7月30日にはファン数が30,000人を越えているから順調な滑り出しと言っていいのかもしれない。
ところが、画面左に見慣れない「コミュニティ・ガイドライン」というセクションがある。
そこへ行ってみると、
トヨタ自動車株式会社が運営するFacebookページへお越しいただきありがとうございます。本ページは、ユーザーのみなさまに当社の最新情報をお届けするとともに、ユーザーのみなさまと当社がつながる場所です。
とある。
ユーザーのみなさまとより良いコミュニケーションを実現するため、本ページでは下記のコミュニティ・ガイドラインを定めています。本ページのご利用にあたっては、本ガイドラインの内容に同意の上ご利用ください。
と続き、【運営】、【注意事項】、【禁止事項】、【準拠法・裁判管轄】といった項目をあげて説明している。

このような「コミュニティ・ガイドライン」を備えているFacebookページを見たことがない。「ユーザーのみなさまとつながる場所」なのだが、「準拠法・裁判管轄」といった文言で予防線を張る恐れがある場所なのだろうか。

昨年、NestleのFacebookページが炎上している。それは、米国Greenpeaceが3月17日にNestleがパーム油を仕入れているSinarmasが進める熱帯雨林の伐採によりオランウータンが絶滅の危機に直面しているというリリースやPDFレポート、その後のビデオキャンペーンやNestle本社での実力行使が火種になっている。
詳しいことは、下のタイムラインを参照していただくとして、とに角、Kit Katを捩った「Killer」というプロファイル画像をつけた書込みがFacebookページを占拠して炎上した。
Source:TechGuerillaTalk / Nestle / Facebook / Greenpeace Timeline (in process)

しかし、その後、NestleのFacebookページが閉鎖されたかというと、ページは閉鎖も、削除もされていないし、Nestleページの「Like」をクリックしたユーザからのプロ・コンの書込みもあり、Nestleの書込みに対して同じようにプロ・コンのコメントがある。 ある意味で、活発な会話が行われている。

また、昨年の炎上に懲りて、「コミュニティ・ガイドライン」を設けているかと言うとそんなものはない。
なぜ、NestleはFacebookページを閉鎖して、炎上を消火・鎮火しなかったのだろう?
なぜ、まだFacebookページを維持、運営を続けているのだろう?

それにはいくつか考えられる。
  1. もはやソーシャルメディア、Facebook抜きに一般消費者とオープン、対等、双方向コミュニケーションを行うことはできない
  2. いままでの一方的、一方通行のコミュニケーションでは一般消費者に届かない
  3. 企業に都合のいいスペースで何を発信しても、誰も、何も、消費も共有もしてくれない

    そして、

  4. 一般消費者を信頼しなければ、企業・ブランド側も信頼されない
ということを理解しているからだ。

特に、4番目を肝に銘じているからだ。

だから、「羹に懲りてなますを吹く」のではなく、「ユーザを信頼」して、Facebookページを運営しているのだ。


さて、米国ToyotaのFacebookページはどうかというと、当然のことながら、「コミュニティ・ガイドライン」といったセクションはない。
Infoには、以下が挙げられている。
Toyota is as committed to quality as it is to its customers. We value your opinions and wouldn't be here without your support.

Please join our community and continue the dialogue. We look forward to getting to know you better.
「トヨタ(アメリカ)は品質向上にまい進するのと同様に顧客対応に取り組んでいます。我々はカスタマーの意見を尊重し、あなた方カスタマーのサポートなしに我々は存在し得ません」

「私たちのコミュニティに参加し、対話を続けてください。我々はあなた方、顧客をより良く知ることを楽しみにしています」
と書いている。

本社と米国トヨタの違いは何かと言うと、顧客を信頼しているかどうかだ。米国トヨタは顧客を信頼している。

炎上騒ぎを起こしかねない不逞の輩や訳の分からない魑魅魍魎が跋扈しているソーシャルメディアスペース、Facebookにページを持つ上で、最低限の予防線を張る本社と、ソーシャルメディアを新しいコミュニケーション、オープンで対等、双方向のコミュニケーションチャネルとして理解し、そこでの会話者を信頼する米国トヨタの違いだ。

変な例えだが、「両手を差し伸べてつながりましょう」と声をかけるべきところで、「相手が信頼できないために利き手に匕首を握り、左手を伸ばしてつながろうとはしているが、重心を前足にかけていつでも後ろへ下がれる」状態に見える。それが【運営】、【注意事項】、【禁止事項】、【準拠法・裁判管轄】といった項目に表れているように思える。


さて、もうひとつある。

7月にトヨタのFacebookページにはトヨタから43本のポストがあり、2,476回のLikeがクリックされ、ファンからのコメントは196本あり、トヨタからのリプライは3回あった。

同時期に米FordのFacebookページにはFordから72本のポストがあり、23,339回のLikeがクリックされ、ファンからのコメントは6,436本あり、Fordからのリプライは14回あった。

当然、運用を開始してから3カ月ちょっとのトヨタと、5~6年は経っているはずのFordではまず、ファン数が違う。3万人強のトヨタに対して、Fordは約78万人だ。

この大きな差からすると、トヨタとFordのポスト、Like、コメント、リプライ数などは無視していい違いのように感じる方がおられるかもしれない。

しかし、実は、もっと大きな差がトヨタとFordのFacebookページにはある。それは、トヨタのファンになったユーザが独自にWallに書き込めない点だ。

トヨタのポストに対して、Likeやコメントはできるが、ファンになったユーザが自分の好き勝手なことをWallに書き込めない。これもあまり見たことはない。
当然、普通であれば下のFordのように、ファンになったユーザがページへ行けば、post、画像、リンク、ビデオもアップすることができる。
しかし、トヨタのページはそうはなっていない。

先ほどのトヨタやFordの7月の統計に入れていないものがある。それは、ファンになったユーザが独自に書き込んだPostやコメント、Likeだし、それに対するリプライだ。

トヨタはファンが書き込めないので「0」だ。Fordの場合、ファンのPost数は1,637件。そのPostに対して2,975回のLike、2,380件のコメント、101件のリプライがアップされている。

これが「本当の意味での会話とユーザとのつながり」 だ。当然、苦情・クレーマー的なPostも40件ある。それら全てをカバーする当然な「会話とユーザとのつながり」が行われている。
この数字を見れば、如何にFordのファンが、オリジナルコンテンツを書込み、それに対してファンが反応し、苦情・トラブル・クレームなどにはFordが対応していることが分かる。

Fordとそのファンの本当の意味でのコミュニティになっている。

一方、トヨタのほうは、先ほどの、【運営】、【注意事項】、【禁止事項】、【準拠法・裁判管轄】に同列につながっているものが、Wallへの書込み禁止なのだ。

どうしても炎上させたくないようだ。

しかし、Faebookは、メーカーとユーザがつながる場所でもあるが、ユーザ同士がつながる場所でもある。そのユーザ同士がつながる場所をメーカーが独占している。ユーザ同士のコミュニケーションを排除している。

残念なことに、触媒として存在し、機能すべきメーカーが、そうではなく、つながりや会話を独占しようとしている。それ以外を拒絶している。

個々のユーザは社会人であり、学生であり、主婦、OLさんであり、ビジネス生活、家庭生活の両方を送っている。個人になればBlogを書き、Twitterを使い、YouTubeにビデオを上げるし、UstやSkypeを使って遠く離れた家族、友人・知人とリアルタイムでコミュニケーションをとっている。

そのコミュニケーションパワーを持つユーザに手かせ足かせ口かせをはめて、ブランドに関連するオリジナルコンテンツの発信と共有を妨げていることに気づかなければならない。ブランドに対する愛着と言ってもいいほどの高い評価、その評価を基に発信されるコンテンツをドブに捨てていることに気づかなければならない。

「Mostly Negative」は9%もいるのだが、「Mostly Positive」は62%もいる。この62%のユーザの貴重な声を台無しにしたり、見殺しにしてしまうことになる。
Source:Keller Fay Group LLC / Single-Source WOM Measurement (pdf)

先ほどのFordの例では、苦情屋・クレーマーが何度も同じことを蒸し返している。Fordのカスタマーサービスがそのたびにリプライを返しているが、何人ものレギュラーユーザ、ロイヤルユーザが自分の立場や理解、コモンセンスを基にコメントしている。彼らを理解しようとしている。メーカー以上に、彼らが愛するブランドを守ろうとしている。

Facebookに限らず、コミュニティとはそういうものだ。そのコミュニティにロイヤルユーザに集ってもらい、あるいはそのコミュニティでロイヤルユーザに育ってもらうためには何が必要だろう?

今の対応がベストなのだろうか?


ああ、そうそう。

トヨタはFacebookだけではなく、Twitter、Ustream、YouTubeにも参加している。例えば、Twitterアカウントを見ると下のようになっている。
そう、もうお分かりだろうが誰もフォローしていないのだ。

以前、ダライラマ14世のTwitterアカウントを見たときと同じ衝撃を受けた。チベット仏教の最高指導者であったとしても他の人間の声を聞く必要はあるだろうと思っていただけに驚いたことを覚えている。

フォローしていないから誰の声も聞いていないとは考えない。当然、バズモニタリングはしているだろう。しかし、アカウントが誰もフォローしていないということは、アカウント宛てのオープンTweetは送れるが、ユーザが直接、メッセージを交換したり、問合せや苦情を送れないことになる。そして、誰もフォローしていないのでオープンTweetがどんなものなのか誰にも分からない。ユーザからどんな声が発信されているのかを誰にも見せないようにしているとしか思えない。

そして、TweetStatsで見ると、リプライは全Tweet168件中の1.78%、RTは1.18%。それもホンダとニッサンのアカウントに対してのTweetだ。残りの97%(163件)くらいはトヨタオリジナルのコンテンツをTweetしているだけということだ。アカウント宛てのオープンTweetは沢山来ているだろうが、それにリプライを返してもいないし、モニターやウォッチしているユーザのTweetをRTしていないのだ。
FordのTwitterの場合は、33,887人をフォローしている。
TweetStatsで見ると、リプライが60.94%、RTが10.05%もある。沢山のユーザからのTweetにリプライを送り、価値があると認めた他ユーザのTweetをRTしている。会話のネタをフォロワーに発信している。そして、残りの30%弱でFordがニュース・情報・コンテンツを発信しているということになる。
GMだって、BMWだって、VWだって、Kiaだって何千人、何万人もフォローしている。しかし、トヨタは誰もフォローしていない。ただの1人もフォローしていない。

一般ユーザにリプライも、彼らのTweetをRTもしていない。

ここの何処にユーザに対する信頼があるのだろう?

この対応からユーザの声を真摯に聞くというメーカーの姿勢が感じられるだろか?

そして、これが日本が誇る大企業、世界的なグローバル企業がFacebookやTwitterという一般消費者とオープン、対等、双方向のコミュニケーションを行うスペースを使ってやるコミュニケーションだろうか?

トヨタ内部でも相当の議論があったとは思う。しかし、もはや「ブランドがブランドコンテンツをコントロールできる時代は過ぎ、消費者・ユーザがコントロールしている」ことを理解しない限り、つぎはぎだらけの対応を行っていても、本当の会話もエンゲージメントも存在しえないし、苦情やユーザのちょっとした提案や思い付きなどから製品やサービスの改善・改良、開発のフィードバックを獲得することもできない。

炎上が怖いからソーシャルメディアを使わなければいいという時代は過ぎた。

Nestleのように炎上しても、何があってもFacebookやTwitterを使い続けなければならない時代なのだ。

消費者・顧客・ユーザを信頼し、価値のあるコンテンツを提供することで企業・ブランドを信頼してもらわなければならない時代なのだ。

そして、とにもかくにも、消費者・顧客・ユーザの声を聞かなければならない時代だし、その姿勢を見せる必要のある時代なのだ。

その時代に、現在のFacebookやTwitterの対応は不十分過ぎると言わざるを得ない。

一体、何のためにFacebookやTwitterを始めたのだろう?
本当にユーザ、消費者とつながるためなのか?
それとも今までのマーケティングコミュニケーションをソーシャル化するだけで、つながる意思はなかったのか?
ユーザ、消費者の声を聞くつもりはないのだろうか?

Ciscoのソーシャルメディアマーケティング部のシニアマネージャ、LaSandra Brillが今年2月、ソーシャルメディアサミットで公開した資料の中に下図がある。
最初のスライドに6点があげられている。曰く、
  1. 双方向コミュニケーション(一方的な一方通行ではなく)
  2. コミュニティ構築(Webサイトではなく)
  3. オーガニック(広告による強制誘導ではなく)
  4. 統合(邪魔するのではなく)
  5. 関係構築(イベント開催ではなく)
  6. 会話に参加(自社ドメインだけではなく)
Ciscoにした処で最初はてんやわんやだった。2005年2月に外向けBlogを開始、2007年のNexusローンチに初めてBlogマーケティングを活用し、2008年Q1のASR1000リリースは3ヶ月間という短期間でソーシャルメディア統合プランを計画実施している。それら経験を踏まえてASR9000リリースが本格的なソーシャルメディア統合プランとして実施されている。その後も各種経験を積み重ね、今では、各種サミット、セミナーなどでその成功しているソーシャルメディア戦略を説明してくれと引っ張りだこになっている。

そのCiscoがまとめているソーシャルメディアのグランドデザインが上図だ。

FacebookやTwitterといったツールの話ではないのだ。

それまでのマインドセットを切換えて、どうやって顧客ユーザに近づけるか、どうしたらオープン、対等な双方向コミュニケーションができるか、どうすれば製品・サービスの価値を伝えられるのか、それこそ昼夜を惜しんで絞り出した結論が下図だ。
Source:How Cisco Operationalizes Social Media for Repeated Success

戦略の中心に来るものが「Listening Focus」になっていると説明するしかない。


ちょうど一年ほど前に、「Open Letter to CEOs in Japan」を書いた。

参考:Open Letter to CEOs in Japan (Online Ad 2010/8/17)

あれは、日本ブランドがガラパゴスブランドに陥る危険性を示し、パラダイムシフトを前提とした新しいグローバル戦略への転換の必要性をCEO達に伝えた(つもりの)資料だった。

当時から不十分な資料に付け加えるべきは、Ciscoのようにトライ&エラーを蓄積した上でインフラを整備し、今日の輝かしいステージを迎えたケーススタディだった。

その上で、マインドセットを切り替えなければ...、と書くべきだった。


最後にひとつだけお願いしたいことがある。

それは、もし「コミュニティ・ガイドライン」の翻訳記事が、NYTだとか、GuardianやTechCrunch、Mashable、BusinessInsider、HuffingtonPostといったメディアに掲載された場合、その内容と、それが示唆するものを世界中のインターネットユーザ、すなわち日本を除く世界中の消費者、既存・潜在顧客はどう受け止めるかを考えてほしいということだ。


追記:(2011/9/19)
Blogのトップ右、プレゼン資料リストにアップしているファイルのダウンロード先をSlideShareへ変更。下のリンクURLは変更なし。

追加:(2011/8/4)
PDFをScribdとSlideShareにアップした。
Scribdは、http://www.scribd.com/doc/61570710/Case-Study-Toyota-on-Facebook
からダウンロード可能、また、Blogの右、プレゼン資料リストにもアップしている。
SlideShareは、http://www.slideshare.net/dramroll/case-study-toyota-on-facebook
からダウンロード可能。

2011/07/26

Why People Follow Brands

getsatisfactionというチームが作成したInfographicsがある。

中でもそのトップに来る「ユーザがブランドをフォローする理由」がある。
Facebook/MySpaceでブランドをフォローする理由
  • 32.9% 既存顧客だから
  • 36.9% 割引・安売りが目的
  • 6.2%   友人がファンだから
  • 18.2% 興味を惹く・面白いコンテンツが目的
  • 5%   サービス、サポート、製品ニュースが目的
  • 0.7%  その他
Twitterでブランドをフォローする理由
  • 23.5% 既存顧客だから
  • 43.5% 割引・安売りが目的
  • 6.3%   友人がファンだから
  • 22.7% 興味を惹く・面白いコンテンツが目的
  • 3.5%  サービス、サポート、製品ニュースが目的
  • 0.7%  その他
これを見ると、Facebook/MySpace/Twitterのいずれにしても、ブランドをフォローする理由は「割引・安売り」がトップを占め、「興味を惹く・可笑しいコンテンツ」が続き、合わせて過半数を占めている。

企業・ブランド側とすれば、「既存顧客だから」とか、「友人がファンだから」とか、「サービス、サポート、製品ニュースを目的」とするフォロワーが過半数を占めてほしいわけだ。しかし、そうはならない、なってはいない。

にもかかわらず、多くの企業・ブランド側は、せっせと「サービス、サポート、製品ニュースを」垂れ流し続けている。ユーザが求める「特売情報」や「興味を惹く・面白いコンテンツ」などは一切、発信せずに。

それはそうだろう。企業、ブランドや製品・サービス情報、CSRやIR・業績情報をせっせと垂れ流すことがマインドセットになっていたり、各国現法情報をアグリゲートしたり、引合生成やターゲット訴求を前面に押し出した情報発信をすることで良しとしている。

ここから会話や交流、エンゲージメントは生まれてこないし、客やユーザが求めるものや話していることを聞きもせずに、言いたいこと、聞かせたいこと、共有してもらいたいことを垂れ流している限り、すれ違うニーズとコンテンツのギャップは広まりこそすれ、狭まることはない。

さて、日本本社が「特売情報」を発信するのは難しいだろうが、「興味を惹く・面白しいコンテンツ」はなにも駅構内で数十人のダンス隊を踊らせることではない。ローラースケートをする赤ちゃんでも、ボディペイントしていたり、ラップで非常時の説明をする客室乗務員だけでもない。

マインドセットを切換えて、日本本社がグローバルなオーディエンス向けにコンテンツを創り出す必要があると思うが、いかがだろうか?

Source:DigitalBuzzBlog / Infographic: Why People Follow Brands

2011/07/04

Japanese Brands are Still at Web 1.0 stage

先日、コンビニの横でジュースを飲んでいると、お巡りさんが自転車で現れ、カギをかけてコンビニへ消えた。何とはなしにその自転車を見ると、左のハンドルに見慣れぬスイッチがある。そのスイッチからケーブルが下の方へ続いている。サドルを支える本体フレームの下部に白いパックがあり、そこへつながっている。そのパックには「Panasonic」とある。

そう、お巡りさんが乗っているのはパナソニックの電動アシスト自転車なのだ。
画像Source:シーバス電脳日誌 / 皇居二重橋、警視庁は電動アシスト自転車を採用していた

街中ですれ違うお巡りさんが乗っている自転車に特に気を付けたこともなく、初めてそれを知って、「へーっ」とつぶやいた。そこに買い物袋を提げた若いお巡りさんが戻ってきた。

話しかけるべきかどうかちょっと迷ったが、「電動自転車なんですね?」と訊く。

街中で赤の他人に声をかけ、その人から返事が戻ってくるまで否応もなく待たなければならない時間の2倍以上の間があいた。多分、こちらの値踏みをしていたのだろう。敵意のなさを確認し、一般市民の興味本位の質問に答えるべきかどうかの判断を行った後、こちらを射るような目線が動かずに口が開いた。

「使ってませんけど」
筆者は、白いパックを指さしながら、「電動自転車ですよね?」と再度聞く。

もう一度、不慣れな間が差し挟まった。自分の意図が伝わらないもどかしさと、興味本位の一般市民のしつこさに辟易するとでも言いそうな口がようやく開いた。

「ベテランの人は使いますが、私は使っていません」
「ああ、そうですか」

これで2人のぎこちない会話は終了した。買い物袋を自転車の白箱に入れると物も言わずにお巡りさんは去って行った。

街中でお巡りさんが一般市民から声をかけられることはないのだろう。突然、声を掛けられて一般的な、普段の「会話」を始めることはないのだろう。顔見知りクラスの会話を一般市民も期待しないが、警察官はもっと期待していないのだ。

以前、英国、ノース・ヨークシャー警察のEd Rogerson巡査がTwitterを使っていることを取上げた。彼が担当する地域の人々と、例えば「天気」「知り合いの近況」「食べ物」「野良猫」といった日常会話を交わし、育み、地域に根付いていると感じさせるエンゲージメントを行っていた。

参考:Police 2.0 (Online Ad 2009/11/26)
参考:US Twitter Detailed Stats (2010/5/12)

筆者が言葉を交わしたお巡りさんとEd Rogerson巡査の違いは、「会話」だ。「会話」は情報やコンテンツのやり取りでもあり、会話者同士が自身をよりよく知ってもらうことにつながる。そこから事件や事故の捜査に役立つ情報を仕入れたり、協力してもらうことができる。

翻って日本企業のグローバルな「会話」は、Ed Rogerson巡査はもちろん、電動アシスト自転車のお巡りさんよりも成立していない。

ソーシャルメディアが喧しい昨今、日本のグローバル企業はBlog、YouTube、Twitter、Facebook、果てはARやUstまで、最新ツールを駆使してニュース・情報を発信している。が、「もっと期待していない」と書いた警察官よりも「会話」は成立していない。

その理由は2つある。

ひとつは、日本のグローバル企業が行っているのは、世界各国の現地法人、グループ企業、そして本社の他部門との間の会話でしかないからだ。これは、自社内での情報共有であり、顧客やユーザとの会話ではないからだ。

例えば、電動アシスト自転車のパナソニックのTwitterアカウントが発信しているTweetのうち、36%は自社関連アカウントのTweetをRTしている。
もうひとつ、こちらはSony USAのTwitterアカウントの場合、Tweetの31%は自社関連アカウントのTweetをRTしている。
Source:TweetStats.com

自社関連TweetのRTがかなりの比率を占めるのは、日本企業に限った話ではない。が、その比率が30%を越え、オンラインメディアやThought LeaderのRTがないに等しいのは日本企業の特徴だろう。Content Curationを考慮していないのが日本企業のTwitter発信だと言うこともできる。

もうひとつは、日本企業に特有の理由だ。それは社員・担当者が見えないことだ。Samsungであれば、SamsungEstebanがいるし、KodakであればJennifer Cisney、FordであればScottMonty、CiscoならLaSandraBrill、IBMならSandy Carterがいる。しかし、日本のグローバル企業には、米国企業の彼らに匹敵するような人々がいないように見える。少なくとも、CiscoのCTO、Padmasreeのように140万人近いフォロワーを抱えている人間はいない。

組織として、顧客やユーザと会話するには企業アカウントだけではなく、社員・担当者が顔を見せて会話をリードしたり、補足する必要がある。個人としての幅や面白さ、ウィットを会話に追加することで信頼を得る必要がある。プレスリリースだけで会話などできるわけもなく、この点で日本のグローバル企業は一歩も二歩も遅れている。

お巡りさんとのぎこちない会話であっても、顔は見えた。居心地の悪さを双方で感じながらも情報のやり取りはできた。

しかし、村内の会話を村民を見たこともないそれ以外の人間に聞かせるのは、あるいはその話を共有してもらうのは至難の業だ。また、自分の言いたいことだけ、聴いてもらいたいことだけを話し、こちらの話に相づちをうつこともなく、そういえばと新聞に載っていた「なるほどとうなづける」話から会話を広げることもない村人と会話は成立しない。

とどのつまり、今までの会話、マーケティングコミュニケーションを最新のツール、サービスを使ってしているだけだ。

マインドセットを変えない限り、グローバルスタンダードで競合してゆくことなど夢のまた夢でしかない。

2010/08/03

Marriott Voluntourism Package

このBlogで何度か取上げた、Marriott On The Moveに

参考:Marriott CEO Blog Launched (Online Ad 2007/01/19)
参考:Marriott on the move (Online Ad 2007/03/20)

「Marriott Guests Can Give Back with New Voluntourism Package」というポストがあった。

Guests Giving Back Through Marirotts New Orleans Voluntourism Packageこれは何かと言うと、まずニューオーリンズ周辺のトップシェフが夏の初めに、原油流出事故の被害にあっている漁民やその家族を支援し、食事を提供するイベントを立ち上げたそうだ。

そして、当然、周辺地域に住む多くの人々が何か手助けできることはないかと思っているし、米国内の他州の人も同じだ。

ということで、7月上旬にMarriottは、ニューオーリンズにある7つのMarriottホテルチェーンにおいて、宿泊客がホテルの従業員達と一緒にボランティア活動を行うパッケージ、「Voluntourism Package」を発表した。これは、原油流出事故の被害者救済だけではなく、5年たった今も、ハリケーン・カテリーナの被害回復ができていない被災世帯への支援も含まれている。

是非、パッケージを利用して、コミュニティの再建に力を貸すとともに、米国でも有数の観光地として名高いニューオーリンズ周辺の自然、文化、歴史を体験くださいとの内容だ。

パッケージサイトによれば、一泊99㌦で、デラックスベッドルーム、「Habitat for Humanity(ハリケーン・カテリーナ被害救済)」あるいは「Second Harvest Food Bank(原油流出被害救済)」への参加、ボランティア当日の2人分のお弁当、ボランティア活動場所までの往復の交通手段、記念のTシャツ2枚が提供されるようだ。そして、8月から12月までのボランティア活動予定がアップされている。
Source:Marriott On The Move / Marriott Guests Can Give Back with New Voluntourism Package
Source:Marriott Voluntourism Package

こんな活動こそがCSRの名にふさわしい社会貢献だ。多くの人々のボランティア活動を支援し、被災者救済と痛手を受けている観光産業の支援まで行うパッケージは一石二鳥、三鳥の効果と評価をもたらす。

カテリーナ被害救済に何億円も寄付した企業は世界中にいるが、5年たった今、その寄付行為を覚えてもらっている企業はどれほどいるだろう。顔を見せず、汗も流さず、ただ金を出しただけの企業はその金がどこに、どれだけ、どのように使われたのかさえ分からず、記憶に留められることもない。一方、顔を見せ、汗を流し、一緒に泥をかき出し、柱をすえなおした行為はいつまでも当事者の心、記憶に残る。

以前、紹介した下の言葉、中国の諺がある。
Tell me and I'll forget; show me and I may remember; involve me and I'll understand.
参考:Involve me and I'll understand (Online Ad 2009/11/12)

「百聞不如一見、百見不如一干(百回聞くことは一回見ることに及ばない。百回見ることは一回やることに及ばない)」という意味だそうだ。

一緒に汗を流す行為をCSRとし、それがソーシャルメディアスペースで共有されることを考えれば、スーパーボールのTVスポットに数億円を投下するよりも比較にならないほどのROIをたたき出すことは明らかだ。

一緒に汗を流しませんか?

2010/06/21

Japanese Brand Endangered

先週金曜日、Ascii総合研究所とWDEのセミナー「企業Twitterは誰が使うべきか」において、「欧米企業のソーシャルメディア化がもたらす日本ブランドの危機」というテーマで話をさせてもらいました。

2006年10月、ANA総会において「パワーは消費者が握っている。彼らは考えられる全ての意味で我々のブランドを所有し、ブランドコンテンツ制作にも参加し始めている」と語たり、企業が支配してきたマスメディアにソーシャルメディアが追いつき、追い越すさまを理解したCEOがいるP&Gにしても、2009年3月に「デジタルビジネス戦略チーム」が、マーケティング役員向けにクラッシュコースを開催している。トップがパラダイムシフトを理解していたとしても、実際にマーケティングを実行する事業部トップを揺り動かし、マインドセットを切り替えさせるのは容易ではない。トップ企業であっても3年もかかっているし、また、それをマインドセットが切り替えられない担当事業部、部署が主催することも非常に困難なのだ。

それはそうだろう。今まで巨額の広報・広告・マーケティング予算を握ってきた既存組織が、訳の分からないとしか理解できないオンライン、それも「オープンだとか、対等だとか、エンゲージメントだとか」といったバズワードを口に出し、ブームに浮かれているとしか見えない社内の人間、社外のエージェンシーの声に耳を傾けると言うことは自分の存在を危うくすることになる。予算を別組織、別キャンペーンに横取りされてしまうことになる。組織内での自分の存在や声、知見が役に立たなくなるような新しいことを社内に啓発することはあり得ない。

だから、P&Gは「デジタルビジネス戦略チーム」 がクラッシュコースを開催したし、FordのScott Monty、PepsiのBonin Boughは外部のエージェンシーからヘッドハントされてパラダイムシフト、IMCのイニシアティブをとっている。それこそマスメディア・エージェンシーに取りつかれ、アゴアシ接待を受けているような社内組織のドンの首を挿げ替えなければ将来はないのだ。それさえも理解していない企業・ブランドは多い。

さて、6月12日にVolkswagen InternationalはFacebookにファンページを開設した。これは2011 Polo GTIキャンペーンの核を成すもので唯一のものだ。すなわち、Facebookファンページだけで2011年モデルのキャンペーンをやるそうだ。そして、このファンページの言語は英語だ。Volkswagenのブランド体験を全世界のユーザと共有するため、「公式言語は英語」だと宣言している。

Volkswagenがどこまでパラダイムシフトを理解しているかは不明だ。しかし、少なくとも他マスメディアを使わずにFacebook一本に絞ってPolo GTIキャンペーンをやろうとしているのはGAPのケースから学習している。Vitamin Waterからも学習している。今、どこに顧客が集い、ブランド体験、情報・コンテンツを消費、共有、再拡散してくれているかは理解している。そして、Starbucks、Adidasの戦略も加味してFacebookをブランドポータルとして全世界のユーザに英語でコミュニケーション、エンゲージしようとしている。ここからも学習している。

一方、パラダイムシフトを理解しない日本のグローバル企業・ブランドが、従来通りの縦割りサイロ組織から苔むしたメガフォンマーケティングをソーシャルメディア化しても、ツール主導のマーケティングを行ったとしても、パラダイムシフトを把握し、オープン、対等、双方向のコミュニケーション、エンゲージメントを行い始めた欧米企業との間に広がり、深まり、離れてゆくブランド体験ギャップは埋めようもない。

製品・サービスの購買者があれこれとつぶやき、称賛し、苦情を言いたてている今、彼らに刺さらないマーケティングをやるしかない日本企業・ブランドと、プロファイル・アップデート・ビデオコミュニケーション・つぶやき・個人検索・RSSフィード・自動タグ機能などFacebook、MySpace、Twitterが備える機能を取り込んだ企業内コラボレーションプラットフォーム、Cisco Quadのベータテストを今秋にも開始するCiscoとの差は途方もない。

社内の縦割りサイロ組織を越えるコラボレーションと、70を数える部署横断のチーム制、それこそ営業リーダーが開発チームを率いるCiscoが、そのプラットフォームをシステム化して販売しようとしている。それを導入してくる企業・ブランドが否応もなく、瓦解する縦割り組織から解き放たれてオープン、対等、双方向のコラボレーション、コミュニケーションを行い、顧客・ユーザとエンゲージする時、もし、日本のグローバル企業・ブランドが今まで通りのコミュニケーションを続けるとすると、そのブランド価値は奈落の底に転落するしか道はない。

可能性を見出すとするとそれはマインドセットを転換させ、パラダイムシフトを理解させるクラッシュコース開催だろう。あるいは、Webビジター調査を導入し、SiemensやPhilipsのように全世界40カ国、あるいは32カ国の自社Webサイトへアクセスするユーザにコンテンツを評価してもらうとともに、どんな情報・コンテンツを希望するのか、どんなフォーマット、チャネルで発信し、どういったスペースでどのようなエンゲージメント体制を敷けばいいのか聞くことだ。また、バズモニタリングを行い、何が語られ、何が共有され、何が批判されているのかを知ることだ。といって、数の話でも、グラフの話でも、限界線を越えたらアラートを発信するといった話ではない。バズのコンテンツ、影響する範囲・会話への参加者・参加度・可能性などからその価値を判断し、ブランドへの影響を想像することだ。

クラッシュコース開催、Webビジター調査、バズモニタリングなしに、通常マーケティング手法をソーシャルメディア化したところで、Cisco Quadが提供するコラボレーション、それが否応なく開くパラダイムシフトを想像できない限り、日本ブランドに将来はない。

と、考えるが、みなさんはどうでしょう?
ご意見をお待ちします。

2010/05/06

Johnson & Johnson in Social Media

「Ford: Online Monitoring」で引用したRonAmokに、Johnson & Johnsonのソーシャルメディア化を取上げたホワイトペーパーがある。今年で創業124年目を迎え、11.8万人の社員を抱え、関連企業250社、売上高640億㌦の超巨大企業であるJ & Jがどのようにソーシャルメディアスペースに参加したのかを解説している。

参考:Ford: Online Monitoring (Online Ad 2009/09/17)

世界中に名の知れたビッグブランドにありがちなように、「うちにソーシャルメディアは関係ない、そんなことをする必要はない、やるにしても社内調整が大変でできっこない」と、Johnson & Johnsonは考えなかった。

ただし、1996年にオープンした初めてのWebサイトは、まったく良いところはない。薬の説明書きをWeb化したかのように見出しとクリッカブルがあるだけだ。
その後、インターネットが次第に影響力を増すにつれて、Webサイトのコンテンツも改善されてきたのは当然だ。

マスメディア系Webサイトからの情報・コンテンツだけではなく、一般のユーザも情報・コンテンツの発信・制作を行うようになり、Blogが存在感を増してきた2006年7月、Kilmer Houseという最初のBlogを立ち上げている。これはJ&Jの最初のサイエンスディレクター、F. B. Kilmerの名を冠したBlogで、J&J創業当時の会社、働く人達を取上げて医療、衛生、健康、予防など幅広いトピックを紹介している。FDA(米食品医薬局)が出てくるまでもなく、J&Jが過去から培ってきた、過去に行った、人々の記憶に残っている事柄を分かりやすく説明している。

Blogという新しいメディアチャネルを企業としてどのように利用、活用できるのか、このBlogへのユーザの反応、評価といったものを時間をかけて理解しようというスタンスが見えてくる。
Source:Kilmer House

次に2番目のBlog、JNJ BTWを2007年7月に立ち上げている。こちらはJ&Jが今やっていること、自社に関するニュースへのコメント、公式発表の補足、その他を6人のスタッフが記事を書いているし、寄稿も受け付けているようだ。コンテンツを充実させ、多面的な情報を提供しようとするスタンスが見える。
Source:JNJ BTW

これら二つのBlogから多くのことを学んだのだろう。2008年7月には、YouTubeにチャネルを開設している。
Source:YouTube / Johnson & Johnson health channel

そして2009年3月にはTwitterアカウントが走り始め、
Source:Twitter / JNJComm

2009年4月にはFacebookのグループを立ち上がった。ただし、現在、グループはないようで、Johnson & Johnson + NetworkページとSafe Kidsなどのページがある。
Source:RonAmok / J&J Does New Media (pdf)

このようにJ&Jは、情報・コンテンツをデジタル化し、一般ユーザが集うスペース、ソーシャルメディアに参加し、対話を積み重ねてきている。最先端とは言わないが、標準的で模範的なソーシャルメディア戦略だと言える。いや、J&Jのような大企業、グローバル企業とすれば十分以上の対応だろう。

ただし、J&Jのように、初めてBlogを立ち上げた時点で、今何が起きているかを理解していた企業・ブランドは幸せだ。手探りながらも先進企業から半歩遅れ程度のギャップを意識しながら、トライ&エラーをやれる体制と組織が持て、予算が計上できた。だから、何年か経ってみると社内での意識も経験、実績もそこそこ累積している。2008年、2009年と立て続けに新しいステップを踏み出せているのがその証拠だ。

今、J&Jのように時間をかけ、トライ&エラーでやろうとしてもなかなかそうはいかない。あまりにも開いてしまった欧米企業とのギャップをどうやって埋めようかと検討しても、埋められる部分が少なく、小さくなってしまった競合の背中しか見えない分野ばかりといったケースもある。また、既存の広告、広報、マーケティング、戦略ブランディングといった部署だけでは手を出せない分野が多いことが明らかだ。既存の縦型サイロ組織に横串をささなければならないのだが、その音頭をとる人間にタスクが集中してしまい狙い通りに複数部署のコラボは動かない。猫の手も借りたいほどなのだが、外部支援エージェンシーはあまり頼りにならない。それどころか今まで通りの提案を持ってくるだけといった状況が続く。

そんな時、社内の有志を募るしか方法は残っていない。

今時、どんな企業・ブランドにもソーシャルメディアに詳しい人間が一人や二人、いや数百人、数千人のレベルでいるだろう。しかし、そういったエキスパートが企業・ブランドとしてのソーシャルメディアへの取り組みを他人事(ひとごと)としてとらえている。自分の担当ではない、部署ではない。いろいろな理屈、理由を持ち出してきて、自社がソーシャルメディアの潮流から遅れ、渦に巻き込まれ、海の底に沈んでいくのを黙って見ている。

このエキスパート達に現状を理解してもらい、積極的な参加、協力を募り、Cokeのようなカウンシルを立ち上げるしか、広がるばかりのソーシャルメディア対応ギャップを埋める手立てはない。欧米グローバル企業には、Social Media、Digital、Online、Interactiveという名称のついた部署があり、部長クラスが旗を振っているが、それは今までの既存組織と同様に孤立した組織ではないはずだ。風通しのいい情報・コンテンツの社内共有が前提にあることは明らかだ。

参考:Insights from Coke (Online Ad 2010/04/13)
参考:Corporate Social Media Summit (Online Ad 2010/04/15)

2010/04/01

Leadership of Ford and Toyota in Social Media

実は3月17日のお昼頃、あるBlogに以下のようなコメントを書いた。
今年78歳になるBill Marriottは、2007年1月に初めてBlogを始める際、
「I know this is where the action is if you want to talk to your customers directly -- and hear back from them.」と書いています。http://www.blogs.marriott.com/marriott-on-the-move/2007/01/uncharted-territory.html
日本語だけではなく世界に向けて英語で発信されるのがベストではないでしょうか?
コメントを保存していないので正確には覚えていないが、多分、こんな内容だったと思う。

ここで引用したのは、Marriott Internationalの会長兼CEOであるBill Marriottだ。

参考:Marriott's CEO Blog Launched (Online Ad 2007/01/19)

そして、上のコメントを書き込んだのは、「モリゾウ」というスクリーン名でBlogが立っているトヨタの社長、豊田章男氏のBlogだ。
Source:Gazoo / ドライバーモリゾウ

ところが3月31日になっても、筆者のコメントはBlogのコメント欄に表示されていない。

今回のリコールに大きく影響を受ける欧米ユーザに社長として直接、対話を開始する必要性をコメントしたつもりだった。欧米に比べればその影響が非常に少ない日本ユーザに語るよりも、欧米をはじめとする世界のトヨタ車オーナーに語ること、対話のチャネルを開くこと、そして、フィードバックをオープン、対等、双方向に受けることが必要だと確信するからこそ、コメントしたわけだ。

しかし、一般的な公序良俗に著しく反しているとも、Gazooの利用規約、コミュニティ・ガイドラインに抵触しているとも思われないコメントを無視し、表示していない。(もし、抵触しているのなら、そう判断した理由をお聞きしたい)

これでは今まで同様に一方通行のコミュニケーションでしかない。送り手と受け手の対極しか存在していない。常時、送り手と受け手がその立場を替え、相手の立場を理解、尊重した上で対等なカンバセーションを行うチャネルではない。

一方、Fordの社長兼CEOのAlan Mulallyは、Washington Postの「On Leadership」で次のように語っている。紹介したいのは2つある。


Source:Washington Post / On Leadership : Ford CEO Alan Mulally on the "liberating clarity" of his mission

まず、ひとつめ。
我々は仕えるために存在しているといつも考えている。業界のリーダーとして選ばれる栄誉を与えられているが、実際のところ我々は顧客に仕えているし、従業員にも仕えているわけだ。もっと召使的な観点を持つか、あるいは召使的な体制を取れば、もっと(Fordを顧客に)取り込んでもらうことができる。また、他の人間のアイディアに対して尊敬の気持ちを持てば、他人に理解してもらおうとする前に他人を理解することができる。そして、人々のパワー、力がひとつになってゆく。ここがいつも私を驚かせている。
そして、もうひとつ。
我々はどこへ行くのか、どうやってそこへいくのか、そして我々一人一人に何が求められているのかを我々自身が理解すればするほど、進展は早まる。こういったコミュニケーションを私(Alan Mulally)が部下に指示するのではなく、そういった環境を創造することなのだ。

今何が起こっているかを全ての人間が知れば知るほど、個人のパフォーマンスが増大すると思う。また、それによってチームパフォーマンスも上がってくる。どのようなビジネスに自分がいるのか、対する顧客はどんな人なのか、世界中でベストな競争をするためには何が必要なのかを知れば知るほど、(今までの企業組織、担当といった)桎梏からどれほど解き放たれるかを考えてみてください。これら大きな決断がFordの創造性を解き放ったと考えている。
FordとToyotaは、同じ自動車メーカーだが数えきれない点で違う。単純に同じ地平線に乗せて比較することなどできはしない。しかし、その相違点を納得した上で、今、もっとも大きく、そして重要な違いは、ソーシャルメディアの理解ではないだろうか。

ソーシャルメディアを導入する、ソーシャルメディアスペースに参加するということは、今までの企業そのもの、既存組織、決定伝達フロー、予算執行優先度など様々な決まりを変更し、桎梏から脱するということだ。一方通行のメッセージを大量投下するのではなく、個々のユーザとエンゲージするということだ。彼らとの対話からフィードバックを受け取り、彼らの参加、協力を求めてオープン、対等、双方向のコミュニケーションを成立させるということだ。フォーカスグループなどの特定ユーザグループからのヒアリングではなく、前後左右、上下から降ってくる、湧いてくる硬軟とり混ざり、雑多な意見、フィードバックを受け入れるということだ。

そして、Bill Marriottが言うように、「今、顧客に直接話しかけ、彼らからフィードバックをもらうためには、どこで行動を起こすべきか」を知らなければならないリーダーは、企業・ブランドとしてソーシャルメディアを導入し、ソーシャルメディアスペースに参加するという、企業そのものを変革することになる意思決定、判断を下さなければならない。FordのAlan Mulallyが言う、サーブする視点、相手を理解する視点、ゴールを理解する視点の重要性を説き、そして、それらを新しい企業、組織、フローとして 社内環境、マインドセットを創造することが必要となってくる。なぜなら、企業・ブランドを取り巻く外環境には、「力になりたい」、「手を貸したい」、 「一緒に始めよう」という顧客、ファンが集っているのだから。「What/How can I help you?」というキーワードは、Haitiの例をひくまでもなくソーシャルメディアスペースに満ちているのだから。

ただし、トップ、あるいはトップを支えるチーム、そして企業自体のマインドセットには、相応以上のソーシャルメディア(スペース)に対する理解、把握、実績、そして展望がなければならない。FordのAlan Mulallyを支えるチームの中心には、Scott Montyがいるはずだ。そのScott MontyをOrangeからヘッドハントしてきた目利きの人間がFordにはいるわけだ。Bill Marriottにしても社内の情シス部門から長期間にわたったレクチャーがあった。パソコン音痴の彼の理解を広げ、(最年長?)CEO Blogを始めさせたプロがいたわけだ。

ひょっとするとここが最も大きな肝かもしれない。特に、今まで企業・ブランドとして経験したことのないスペースを導入、参加するに際して、BlogやForum、SNS、Twitter、YouTubeなどを経験したことのない人々や、既存組織から予算、担当テリトリ、意思決定フローなどがシフトすると危惧する人々から、吐き出されるネガティブセンチメントに対抗し、新しいマインドセットを伝道してゆくにはリーダーだけでは無理だ。リーダーを支える強力なリソースが是非とも必要になる。

2010/02/17

HP Computer Racist?

あるショップでHPのMediaSmartとWeb camを使って顔認識・トラッキングをテストしたところ、黒人の顔を認識せず、カメラが動かないというビデオがYouTubeに上がっている。



このビデオは何もHPのコンピュータが人種差別をしていると糾弾しているのではなく、「何か変?」的なビデオなのだが、12月28日のViral Video Chartの10位にランクされていた。その時点で152万回視聴され、381のBlogが記事を書き、8,046個のコメントがあり、1,481のTweetがあった。

ちょっとした注目を集めていたわけで、いくつかのメディア系Blogでも取上げられていた。

そのひとつにLaptopmag.comのBlogがある。そこがビデオに対するHPのVoodoo Blogからのコメントを紹介していた。
Source:HP Voodoo Blog

まず、HPは日本、インド、南米、欧州など世界のHP社員と、世界中の全てのユーザ、多様な人種のユーザに最高の製品を提供するために協力していると書き出し、人種差別などまったくないことをソフトトーンで述べている。

その後、YouTubeのビデオに言及し、基本的な顔認識のしくみ、考えられる原因、HPがトラブル解決に当たっている間、Webcam利用のガイドも参照してほしいこと、そして、フォーラムやTwitterへフィードバックを送って欲しいことを書いている。

ビデオはHPを糾弾しているわけではないので、ピリピリした感じはないが、真摯にことに当たっている担当者の顔が見えてくる。メーカー側の認識、考え方やこう操作しろといった使い方を押し付けるのではなく、顧客・ユーザの意見、評価を対等に受け入れるスタンスが見えてくる。そしてユーザとのコミュニケーションがクローズドなスペースではなく、オープンなソーシャルメディアスペースで行うという当然の理解も見える。

ここにユーザは、企業・ブランド・メーカーの誠意、クオリティ、スタンスを見る。そして、YouTubeだけではなく他のソーシャルメディアスペースをモニタリングし、顧客サービス・満足度向上に努めているメーカー、言いたいことを言うだけの口だけではなく、耳も目もあるメーカーをユーザは見る。

売るための広告、PR、マーケティングや営業とは違うエンゲージメント、コネクション、リレーションズがある。そんな時代にいつまでも広告、PR、マーケティング、営業といった組織しか活用できないとしたら...?

2009/08/13

Reason to Re-Visit

Small Business Trendsが、Webサイトに関して犯しやすい4つのエラーを書いている。

サイトの名前通りに中小企業向けのトレンドを発信しているサイト、Small Business Trendsが上げたのは以下の4つ。
  1. Bad Design = No Credibility
  2. Your Conversion Funnels is Too Long
  3. There's No Method Behind The Madness
  4. There's No Reason To Re-Visit
Source:SmallBusinessTrends / 4 Common Site Errors

Small Business Trendsは4番目の「Webサイト再訪理由がない」に関して、
ほとんど全てのSMB(Small to Medium Business:中小企業)のWebサイトが抱える致命的なエラーは、ユーザが再訪する理由がないことだ。Emailアドレス、電話番号は明記してある。それでいい。Webサイトが提供するすべてはそれだからとSMBは考えている
と書いている。

SMBにしてみればemailや電話番号だけしかないというのは大げさにしても、それらに加えて、取り扱う製品・サービスのページもあり、digg、del.icio.us、myspace、facebookなどソーシャルメディア用ツールも装備しているはずだ。しかし、コンテンツがスタティックなままで何カ月もたなざらしではTwitterするトリガーにも、emailや電話で新製品を問い合わせるトリガーにもならない。第一、ソーシャルメディアスペースの住人の口の端に上るようなトピックスがないのでは話にならない。

「再訪する理由のないWebサイト」とは、別にSMBに限った話ではない。グローバル企業・ブランドのWebサイトにも同じように見られるものだ。トップページでJavaやFlashを使い、主力製品を代わる代わる自動で切り替えながら取り上げてはいるが、どこにユーザが再訪する理由や再訪を促進するツールが仕掛けてあるのだろう?

FAQ、メルマガ、登録、お問い合わせ、カタログ請求など必要なパーツはそろっているようだが、再訪する理由にはならない。相応の予算をかけてWebサイトを構築しているわけだが、一度、アクセスしてくれれば全ての情報を取得し、情報・コンテンツを消費してくれると期待できるだろうか?

Webサイトにアクセスするユーザはその時点時点で、必要とする情報・コンテンツは違う。購入前提のユーザもいれば、他社製品と比較しようというユーザもいる。そういったユーザが消費するコンテンツはWebが供給するコンテンツの一部でしかない。単純にどんな製品ラインアップがあるのかチェックしに来たユーザが、機能、仕様、保守、サービスを確認するステージに入った時にもWebサイトを再訪してもらわなければならないはずだ。

そのために、再訪を促す仕組み、ツール、仕掛けが必要となる。流行りの技術を使い、カタログを見栄え良く広げるだけのWebサイトではいつまで経ってもWeb 1.0のままでしかない。

2009/07/27

Real time search

筆者はSitemeterを使ってBlogのアクセスログをとっている。先週金曜日、午前7時23分にVirgin Americaからのアクセスが記録されている。
実は、先週の金曜日、「Virgin America and Twitter」を書いた。それをNetvibesからFacebookおよびTwitterに共有したのが午前7時21~22分頃。それから1分もしないうちにVirgin AmericaからBlogにアクセスがあったことになる。このアクセスはTwitterで、「Virgin America」を検索し、その結果に上がっていた筆者のBlogへアクセスしたようだ。
参考:Virgin America and Twitter (Online Ad 2009/07/24)

ま、これは自動的にTwitterで「Virgin America」を検索し、記録しておくプログラムだろうが、最初のアクセスから2分ほどして、今度は直接、「Virgin America and Twitter」へアクセスがあった。今度はFFではなく、IE7でのアクセスなので別PCだったのだろう。筆者Blogを確認したようだ。(日本語がわかったのかしら?)

そして、筆者のTwitterアカウントにフォロワー追加のメールが来た。Virgin Americaのお眼鏡にかなったらしく、筆者のTwitterをフォローするらしい。(ま、本当のところはどんなアカウントであれ、Virgin Americaという書き込みをしたアカウントは必ずフォローしているはずだ)
ということで、Twitterのリアルタイム検索で何が行われているか、少しはお分かりいただけただろうか?

B2C企業としてのVirgin Ameriaは、現下の厳しい経済状況において顧客満足度、ブランドロイヤルティ、ブランドレピュテーション、カスタマーサービス向上など様々な施策を実行している。

その施策ツールの一つとしてTwitterがある。このソーシャルメディアツールを利用して、リアルタイムで顧客、乗客、傍観者の声を拾い集めている。時には、DMなどで直接会話を行うし、飛行中の乗務員、乗客にフィードバックしたり、カスタマーサービスを提供したり、そして、TwitterでVirgin Americaに関するつぶやきを囁くユーザのモニターを開始したりと八面六臂の活躍だ。

これはアウトバウンドマーケティングではなく、インバウンドマーケティングだし、その過程がオープンにされていることで会話が成立するカンバセーションマーケティングともいえる。また、緊急対応が要求されるリアルタイムマーケティングともいえるものだ。そして、マスメディアを排除したダイレクトレスポンスチャネルがエンゲージメントを向上させるソーシャルメディアマーケティングだともいえる。

日本の航空会社の対応、ブランディング、マーケティングに関しては別の機会に書くつもりだが、今、Virgin Amricaなどが行っている上記マーケティングは、顧客対応が必要であれば、B2C/B2B企業にかかわらず重要だ。

なぜなら今、ブランドをコントロールしているのは消費者、顧客、ユーザだからだ。彼らの声、意見、アイディアを聞き、疑問、苦情に応えなければ、本来比率の低いネガティブコメントがオンライン会話の大半を占めてしまう。あるいは、シカトされたブランド価値が暴落してしまう。(InterBrandなどが出す企業ブランドランキングも、オンラインでのユーザエンゲージメントをブランド価値の指標のひとつとして取り込むべきなのだが...)

顧客の声など聴く必要もないとうそぶき、上から目線でものを言っていた誰かのように四面楚歌の中、退場を余儀なくされるのか、それとも今年末までにはリリースが予定され、Twitterを飲み込む機能を装備するらしいGoogle Waveなどを活用するマーケティングを開始するのか?

答えはたった一つしかない。

2009/07/13

Michael Jackson on Facebook

以前、「RIM MJ」を書いた。

参考:RIM MJ (Online Ad 2009/06/27)

その絡みでちょっとFacebookを確認したところ、Michael JacksonのFacebookにあるPageには、すでに780万人以上(7月9日時点)のFanがついている。今朝はもう877万人を超えている。あっという間にObama大統領を追い抜いてFacebookで最もFanを抱えているページになっている。

InsideFacebookによれば、7月8日だけで90万人以上、1週間で454万人以上がFanになっている。チョー強烈な伸びだというほかはない。
MJのWallには、ライブ追悼式の件、追悼式の告知、無料ギフトなど上がっている。
そして、MJのFanになった筆者のFacebookページには、他のFanや友人が書き込んだコンテンツと一緒にMJコンテンツも反映されている。
ということで、Facebookは世界中に友達の輪が広がってゆくネットワークであり、コンテンツの流通チャネルであり、露出増幅マシーンでもある。

また、Facebookをメディアと捉えるとMJの場合、877万人もの読者、聴取者、視聴者がいる自前メディアを持っていることになる。自前メディアなのでコストはかからない。

既成レガシーメディアであれば双方向のコミュニケーションはもちろん存在しないし、ワンウェイのコミュニケーションを行ったところでそれを他人が知る術はない。最初から会話が成立するベースは存在していない。また、メディアから押し付けられるコンテンツを受け入れるか、あるいは拒絶するかの選択肢しかない。

ところがオンラインのソーシャルメディアスペースで最大であるFacebookのページ、Wallであれば、MJからのコンテンツも、Fanからのコンテンツもオープン、透明に供給され、消費され、共有され、再露出されているし、会話が成立する。

こういったコミュニケーションチャネルこそ、企業・ブランドが昔から、広告というメッセージを発信した時から希求していたものだ。いや、最初はマスメディアを使うことで露出を稼ぎ、押し売りするメリットを最大化しようとしていただけなのかもしれない。

しかし、2006年のANA総会でP&GのCEO、A. G. Lafleyが、

パワーは消費者が握っている
「マーケターおよび小売業者は、消費者にしがみついて後れないようについて行っている」
P&Gは長い間、消費者がどのように商品を理解、使用すべきかを教えてきたが、
「DVRや衛星ラジオなどの技術を使った広告を、いつ見たり、いつ消すかを消費者が選択している今日、小売側は消費者とともに学んでいる段階だ」
消費者があらゆる意味で我々のブランドを所有し、ブランド創造にも参加している
「我々は、消費者や好きな製品の回りに築かれるオンラインコミュニティによってコマーシャルが創造されるこのトレンドを認めるべく学習すべきだし、それを歓迎すべきだ」

と述べているように、「トップダウン方式のマーケティングからボトムアップ、グラスルーツ方式のマーケティングへ変えていかなければならない」という理解は広まり、実践するケースが増えこそすれ、少なくなったり、消えてゆくようなことはない。そして、現在、ボトムアップ、グラスルーツ方式のマーケティングの中身が変化してきている。

参考:Letting Consumer Control Marketing : Priceless (Online Ad 2006/10/17)

話をFacebookに戻すと、ボトムアップ・グラスルーツ方式から、参加、共有、コラボ、拡散、再露出というソーシャルメディアマーケティングへ移行してきた状況で、そのメディア・コミュニケーションシーンのトップに立つFacebookを活用することで、既存メディアの存在意義が薄まってくる。

なにしろコストのかからないメディアなど今まで存在していなかったのだから。レガシーメディアへの広告がなくなることはない(だろう)が、そのシェアは減るしかない。
参考:Beyond Advertising (Online Ad 2009/04/30)

新聞や雑誌広告、TVCFに金をかけ、仰々しく額装丁されたエビデンスプレートをオフィスに飾るステータスとしてのレガシーメディアが全てを牛耳っていた時代から、一般消費者・ユーザ・顧客が手綱を握るソーシャルメディアへ参加することで初めてコミュニケーションが成立する時代へ変わってきている。

こういった時代にレガシーメディアに広告を出しているだけで、ソーシャルメディアスペースで露出することもできないし、参加することなど全くできはしない。今こそ、マインドセットをシフトする時なのだが...。

2009/03/16

Ryanair in Flames

アイルランドの格安航空会社、Ryanairは「乗客が機内で吸う空気以外は、すべて別料金」というビジネスモデルで大成功を収めている。強制加入の旅行保険、クレジットカード処理、電話対応などすべて手数料がかかる。(下をクリックでサイトへ)
ryanair_logo

そのRyanairの航空券予約Webサイトのバグを、Jason RoeというフリーランスのWeb開発エンジニアが見つけた。いろいろとやっていると航空券の値段が「0ユーロ」になるというバグだ。

そこで彼は「0ユーロ」で航空券をゲットするのではなく、自分のBlogでそのバグを指摘した。
ra1

彼が2月19日の午前中にアップしたエントリに対して、午後5:25、Ryanair Staff #1というユーザからの書き込みがあった。

jason!
you’re an idiot and a liar!! fact is!
you’ve opened one session then another and requested a page meant for a different session, you are so stupid you dont even know how you did it! you dont get a free flight, there is no dynamic data to render which is prob why you got 0.00. what self respecting developer uses a crappy CMS such as word press anyway AND puts they’re mobile ph number online, i suppose even a prank call is better than nothing on a lonely sat evening!!

ここまで口汚く罵るというのは、顧客対応以前だし、書き込み者の知性を疑わせるほどのものだ。

その後もRyanair Staff #2、#3というユーザからの書き込みもある。

Source:ViralBlog / Why Ryanair Needs A Social Marketing Agency
Source:JasonRoe.com / Ryanair no credit card fee + 0.00 flight bug

ViralBlogは以下のように書いている。

どうしてブランドは難しい方法で学びたがるのだろう?どうしてブランドは、デジタル消費者がコントロールしている新しい時代だということを理解しないのだろう?なぜブランドは、インターネットはコントロール不能のメディアであり、我々全員が所有しているということを学習することが難しいのだろう?

何度、ブランドに言わなければならないのだろう。広告代理店やPR代理店はソーシャルスペースでブランドの助けにはならないことを。

2008/08/11

Data Credibility

以前、「Internet, New Primetime」としてcomScore, Inc.のデータを紹介した。それが下の図だ。午後7時から8時の間、TVよりもリーチを稼いでいるのがインターネットだと紹介した。
参考:Internet, New Primetime (Online Ad 2008/05/26)

そして、comScore Inc.の会長、Gian Fulgoniが7月16日にShopLocal Annual Summitでプレゼンした折、次のスライドが紹介されている。上のスライドとはあきらかにTVのリーチが違う。そして、午後7時から8時にかけてもTVのリーチにインターネットが近づくことはない。
Source:comScore Inc. / Online is the New Primetime Presentation Request (上図のソース)
Source:comScore Inc. / ShopLocal Presentation Request (下図のソース)

データソースとして、同じ「National People Meter, comScore Media Metrix 2007」がクレジットされている。TVのリーチが上図では最大でも43%くらいなのだが、下図では60%を越えている。

7月29日にcomScoreに問い合わせたのだが、まだ回答はない。

以前、「Blog Write and Read」でも書いたように、Universal McCannの「Wave III」という資料にも間違いがあった。担当者にemailし、不在のため代わりの人間からemailが届き、担当者が休暇から戻るや否や、正しいデータを送ってくれた。他にも日本から送ったemailに無視を決め込む担当者もいるが、適切に対応してくれる担当者もいる。

参考:Blog Write and Read (Online Ad 2008/06/10)

Dell Hellになるリスクをどの企業も抱えていることを理解していなければ、Blog社会での評価、ソーシャルメディア界での評価は期待するものにはならない。