Universal McCannが「Power to the People」というレポートを公表している。
これは全世界21カ国で、16歳から54歳までの約9,500名を対象とした調査だ。
サマリとして次が挙げられている。
- ユーザは今、コンテンツ制作をリード
- 全世界で1億7,000万人がBlogコンテンツを書いている
- 21%はビデオをアップロードしたことがある
- 46%のBlog読者は、自身でもBlog書込みを開始
- 41%は写真のアップロード・共有したことがある
- ソーシャルメディアがエンゲージメントをドライブ
- 9ヶ月間でオンラインビデオの視聴経験は31%から62%へと倍増
全世界の推定では3億3,000万人 - 全世界の推定ではBlog読者は3億4,000万人
最大のBlog読者を抱えるのは米国で6,400万人 - ソーシャルネットワークを利用する16~54歳は推定1億9400万人
- インターネット利用はアジアと新興市場がリード
- 自己主張やCGMへのアクセス急増により中国が世界のソーシャルメディア消費を牽引
- アジア圏ユーザがコンテンツ制作に最もアクティブ
さて全調査対象者の平均を100として、性別、年代、職業別ごとにインデックスで比較している。それを見ると、男性は平均よりROMが多く、女性はライターが多い。16~34歳まではROM、ライターともに多いが、年代が上がるとROMもライターも平均より大きく落ち込んでいる。学生および中間管理職手前の社員はROM、ライターともに多いが、年代の上がる中間管理職はROMもライターも平均より下がっている。上級管理職でROMが平均を若干上回っているのは、外部にアンテナを張っているということだろう。非事務職、自営、主婦、失業中はいずれもROM、ライターともに平均より落ちる。
若年層がBlogを読み、書き込む一方、わずかばかりの上級管理職がROMっているということだろう。(クリックで拡大)
全世界平均を見ると、60%近くがBlogに積極的な自己表示の意味を認めている。40%は重要なソーシャルツールだとし、39%はお気に入りのBlogがあると答えている。そして34%がBloggerの意見を信頼できるとし、33%はBlogを公表している企業に対する認識に肯定的なインパクトがあるとしている。
ところで英、米、豪、独の4カ国はBlogに対して自己表示、自己表現と認識している比率は低い。一方、アジア、南ヨーロッパ、ラテンアメリカではBlogを自己表示、自己表現と認識している。特に中国では他国に飛びぬけていて90%近くがそのように認識しているが、日本は50%に留まり、他のアジア諸国と比べても低い数字となっている。(注:Universal McCannのpdfでは日本を30%としている)
次にソーシャルネットワーキングを見ると、全世界でBlogの普及率31%に比べると若干それを上回る36%となっている。これはアジアでSNSよりもBlogの関心、普及が高いことが影響している。(下は前回調査と比較できる14カ国での数値)
さて21カ国のユニバースで1億4,600万人がSNSに参加し、全世界では1億9,400万人と推定されているが、目を惹くのは米国の4,127万人に次ぐ3,097万人を数える中国だ。そして1,261万人のブラジルも際立っている。
このレポートも参照しているInternetWorldStats.comによれば、中国のインターネットユーザは1.44億人だから22%、ブラジルは3,900万人の32%という高率だ。すでに成熟していると見られる米国の19.5%を上回っている。インターネットの普及がアジアや新興国で進めば、進むほどSNS参加率も上がって行くのだろう。
SNSを新しい人達との出会いの場としているかという面白いデータがある。全世界の平均は50%を若干下回っているが、フィリピン、中国、インド、ブラジルといった国が70%を超えている。しかし、ダントツの最下位は日本の20%以下だ。日本でもSNSは急拡大しているが、見知った友人、知人との旧交を温めるだけのスペースなのかしら?
この他に、「IMを使ったことがある」、「VoIPを使ったことがある」という調査で最下位は日本だ。そしてビデオクリップを鑑賞したことがある、SNSにプロファイルがある、ニュース記事を投稿したことがある、Podcastをダウンロードしたことがあるなど18項目におよぶ比較をすると、中国、ブラジル、メキシコ、韓国がトップ4、最下位争いは米国、パキスタン、日本、ドイツの4カ国だ。ここでもアジア、南ヨーロッパ、ラテンアメリカが上位を占めている。
レポートは最後にこの調査が指し示すものとして以下を挙げている。
ソーシャルインターネットのルールソーシャル志向のインターネットは、適切に対応すればブランド、広告主、マーケターにとって大きな機会を提供する。本当のメリットが創造される場所で消費者とより積極的な関係を構築する。それには対応すべき3つのテーマがある。
- クリエイティビティ
- グローバルなソーシャルメディアプラットフォームで流通されるべきブランドコンテンツを創造すること。消費者は自身をブランドコンテンツとして実行している。リソースに富むブランドが実行しない、できないという言い訳はあり得ない
- スタティック(固定的)で、一方的なクリエイティブを捨て、消費者との対話を産み出せ
- 真の意味での消費者メリットを創造するアプリケーション、サービス、そしてプラットフォームを開発し、エンゲージメントを加速せよ
- 参加
- 縦割り(孤立サイロ)型ブランドサイトを捨てろ。重なり合い、織り合わされたプラットフォームとコンテンツの世界では、孤立したブランドサイトはエンゲージできない
- グローバルを志向しろ。すでに消費者は実行している。メディア消費およびソーシャルな相互関係は、国境ではなく言語で制限されているだけで国際化している。
グローバルなブランドアイデンティティ、マルチマーケットキャンペーン、そしてグローバルな体制が喫緊の課題だ - ソーシャルプラットフォームをコミュニケーションミックスに取り込め。Bloggingプラットフォーム、SNS、ビデオそして画像共有サイトこそ、消費者が時間を過ごす場所であり、そしてエンゲージメントを獲得する機会がある場所だ
- 相互作用
- 消費者がブランドと相互に関係を創造できるようにせよ。ユーザ独自開発の広告、ブランドのBlog、そして継続するフィードバックが必要だ
- 消費者に彼ら自身のブランドをオンラインで管理するツールを提供せよ
- ソーシャルネットワークの中に存在しろ。プロファイルを作り、ネットワークを広げ、コンテンツを流通させ、そして広告やスポンサーシップを展開せよ
Source:
Universal McCann / Social Media - Power to the People (pdf)
と、ここまで言われて日本のグローバル企業はどこまでグローバル戦略を構築できるのだろうか?本社の広報・宣伝部、ブランド担当部署、経営企画室などにグローバルなオンラインメディアの専門家がいる企業は何社あるのだろう?CMOがいる企業は何社あるのだろう?
メディアミックス・プランをすべて代理店に任せているだけなので、代理店が海外の提携先に丸投げしている実態があったとしても、企業側では上がってきた提案を精査することもできない。代理店は手離れの良いメディア、ROIの良いメディアを優先的にリストアップしてくるわけで、メディアミックス時点、および出稿後に工数が掛かるオンラインを中心に据えることはない。
NYTなどの著名メディアも紙の売上減をオンラインで補えてはいない。売上が伸びているオンラインに注力すればするほど紙の売上が落ちてしまうというジレンマを抱えている。これは代理店にも言える。オンラインを売っても、紙・TVの売上を担保することはできないからオンライン中心の提案はしない。
ここにあるのは「何がクライアントにとって最適なメディアミックスであり、ブランディング提案か」という問いが欠落していることだ。
また企業側も出稿エビデンスとしてティアシートやTVCFを積み重ねることができる既成メディアを偏重し、メディア消費の変革を無視している。海外子会社から上がってくる販促支援要請に従うだけで、ブランドの露出からオンラインユーザとのエンゲージメントへつなげる戦略構築は二の次となり、従来からの予算パターンで消化しているだけだ。
ここにも「消費者、ユーザとオンラインでエンゲージするためにはどうすればいいのか」という問いが欠落している。
1971年にJohn Lennonが発表した「Power to the People」は、確か「人々に勇気を」と訳されていた。
しかし、このレポートが意味することは2つある。
ひとつはLetting Consumers Control Marketing : Pricelessや、Mindset Shift Requiredで書いたように、背景としてすでにブランドのコントロールはブランド自身の手を離れ始めているし、パワーは消費者が握っているという理解が世界のCEO達にあることだ。また、直に消費者の変化、メディアトレンドを理解し、表層的な対応をするのではなく、コアの変化を理解した上で、もっとも求められている誠実で、平等な対話を、オープンに行うコミュニケーションやマーケティング戦略が必要とされていることだ。
そうすると「(
Media)
Power (
is shifted)
to the People」という意味が見えてくる。
そして2つ目は「(
広告主、広告代理店の)
人々に勇気を」ということだ。
参考:
Letting Consumers Control Marketing : Priceless参考:
Mindset Shift Required