2006/12/29

Lord of the Internet

メディアの主導権
イ ンターネットが急激に膨張し、多くの企業 がWebサイトを公開し始めた時、企業が初めて自前のメディアを手にしたと理解した。締め切りや、掲載料、スペースを気にすることなく、自由に世界に対し て発信してゆけるメディアを掌中にしたと理解した。情報の宝庫である企業Webサイトに世界中からアクセスを獲得し、企業を理解、認知させ、好感度や購入意思を形成させるチャネルとして、マーケティング・ブランディングで活用できると理解した。

しかし、それは誤りだった。今、 思えばメディアを手にしたのは世界中の個人だった。情報発信、共有、交換、転送、そして情報・コンテンツの再構築という面で主導権を握ったのは個人だ。そこに参加し、対話している約11億人の個人ユーザと、それを理解している一部の企業がいる。

イ ンターネットにより、個人や顧客、消費者やユーザは企業の製品・サービスの関連情報はもとより、個人やグループ、そして第三者による製品・サービスの評価、格付け情報も入手できる。客観的な競合製品の比較や、製品・サービス・サポートに不満を持ったユーザが語るクチコミ情報も知ることができる。

例えば、下はJ. D. Powerの携帯とデジカメの満足度調査だ。製品使用者の評価、あるいは客観的な競合製品の比較ができる。特に、デジカメの場合、同じブランドを将来、購入するユーザは26%にしかすぎない(2005年の調査では35%)という情報に驚かされるユーザも多いのではないだろうか。(今、使っているモデルが単に機能や使い勝手が劣るというだけではなく、購入後にもっと気に入ったモデルが別ブランドから出たということも関係しているだろうが...)
これに加えてBlogやSNSで購入予定モデルをチェックし、現実のショップで確認すれば、間違いのないモデル選択と購入ができる。

ユーザがワンクリックする先に企業が提供する以上の情報が溢れている。この現状で、企業はどのようにして情報を発信し、顧客・ユーザに消費、共有してもらえばいいのだろう?
参考:J.D.Power Conusmer Center

スタティック 対 ダイナミック 
Webページは企業にとり、言いたいこと、知らせたいこと、聞かせたいことをマスに対して発信しているが、毎日頻繁にコンテンツが更新されているわけではない。企業の生立ちから製品やサービス、最新の技術開発、IR、CSR、世界の販売チャネルなど膨大な情報が蓄積されているが、企業トップの声は何年も前のものが飾ってあるだけで顔が見えない。月に数回、テキストベースの文字情報だけを送り続けるプレスリリースはオンライン社会に露出する可能性は低く、メールアラートやRSSフィードを提供していなければ最新情報を消費してくれるユーザもいない。

企業Webは初期認知から、製品調査フェーズに入ったユーザには効果的だが、初期認知を行わせるために必要な露出は、オンライン広告、あるいは別のオンラインメディアを活用すべきだ。
企業Webサイトは顧客やユーザと対話し、初期認知を獲得するメディアとはなっていないのが現状だ

参考:DoubleClick : Influencing the Influencer

それに対して、例えばBlogを閲覧しているユーザは、毎日のように最新ニュース、データに基づいた比較レポート、分析、トピックを知ることができる。コメントを書き込んだり、自分のBlogにリンクバックしてくることで対話し、新しいトピックを生み出している。また、コメントをチェックしていれば、ユーザが送った問い合わせ・提案・苦情を知ることができ、それに対してどのような返事が出されたかを知ることができる。どのようなコメントであれ、対応しよう とするBlogger、あるいは企業Blogの姿勢、対応の中身を知ることができる。ユーザとBlogサイト間で、対話が前提とされる理解が共有されている。これは当然、特定個人Blogだ けに限った話ではなく、情報共有と対話をベースとし、増え続ける全てのオープンな参加型の企業Blogサイトにも当てはまる。

今のところ、Fortune 500の8%、40社しか企業Blogを開設してはいないが、その動きは急だ。SunのCEOなどは2年前からBlogを開設しているし、IBMなどは数 千のBlogの大半が社外に公開されている。財務情報などRegFDで現在、規制されている情報もあるが、可能な限り社内情報をオープンに公開し、企業の ステータスを伝え、新しいプロジェクトの種を植え、公正・公平な対応を元に信頼を勝ち取ろうとしている。

参考:Sun CEO's Blog

欧米企業と違い、日本のグローバル企業は、世界への情報発信量が非常に少ない。また、テキストベースのプレスリリースは欧米企業と格段に差がある。発信量が少ないうえに文字情報だけではオンラインで消費してくれない。加えて、本社発のグローバルなオンライン広告も無きに等しい。約11億のインターネットユーザにブランド認知さえしてもらえない。オンラインでのブランディングとあわせて企業Blogを開設し、頻繁に情報発信を行いユーザとの対話チャネルを構築する必要がある。

参考:E-Press Release

クローズド 対 オープン
2 年ほど前に知り合いの米国人が日本製カメラの故障修理を米国で頼んだそうだ。ところが何週間たっても修理を依頼したショップではいつ修理が終わるのか確かなことが分 からず、米国法人のWebページから問い合わせを出しても無しのツブテだった。業を煮やした彼は、日本本社の社長に直接苦情メールを出すからアドレスを調べて くれと頼まれたことがある。

企業に都合のいい話だけを既成メディアを通して流し、膨大な広告露出からブランドイメージを構築できたのは もう昔の話だ。一方通行の売りっぱなし、サポートなしのコミュニケーションや営業スタイルは死んだといってもいい。インターネットによって個人・グループが既成メディアを凌駕するほどの情報発信力および伝播力を持つ現在、顧客・ ユーザ・見込み客に企業・製品・サービスの最新情報を発信し、更新していかなければ、情報を消費、共有してもらえない。問い合わせを受けた際に、タイムリーなレスポンスを返さなければ、悪いクチコミだけが広まるのを見ているだけになる。

ちょっと古い話だが、PCの故障修理に関して不満をぶちまけたBlogから火を噴いたDellのケースが良い例だ。また、最近取り上げた、エチオピア首相を表敬訪問したStarbucksのCEOの話も個人やNGOが火元になっている。
この事件を契機にDellはBlogをモニターし始めたし、Starbucksも放って置けなくなりCEOが出て行かなければならなくなった。いかに、オープンになった情報共有、流通が企業を動かすかという証拠だ。
また、個々のニーズに対応し、的確なオープンレスポンスを返して行かなければ、企業・ブランド評価は地に落ちるということだ。

参考:Business Week / Dell : In the Bloghouse
参考:Fair Trade

ところでこのBlogを書いているBloggerの場合;
  • 合計画像ファイルサイズは300MBといっておきながら、100MBにも達しないレベルで画像がアップロードできない
    • 時間帯によってはアップロードできるが、不安定でいつアップロードできるか不明
  • YouTubeなどからのストリーミングファイルをHTMLモードで貼り付けても、作成モードで一度でもプレビューすると、embedタグが削除されてしまい保存できない
    • 保存するには毎度、embedタグを書き込まなければならない
  • レイアウトにアイテムを追加すると、編集ボタンが表示されなくなってしまい、追加編集ができない
    • そのフレームだけをオープンすることで編集は可能だが、何の説明もない
  • 度々、事前通告なしにログインできなくなる
    • 現在は改善されてはいる
などのメールを送ったが回答は来ない。
下の参考リンクにあるように企業ユース向けにBloggerの機能を強化したといったニュースを見ると、「ええ!これが企業ユース向けのアプリか?」と感じてしまい、企業が出す情報をどこまで信じていいのか分からないと思ってしまう。また、Bloggerからのレスポンスが見えないままでは、ユーザの不信感が頂点に達し、DellやStarbucksのような騒ぎになるかもしれない。

参考:InternetNews.com / Google Preps Blogger for the Enterprise

インターネットがここまで普及した現在、メディアの支配者は消費者、ユーザだ。企業が既成メディアを使ったマーケティングを行っても、プッシュ・プル型である限り、そのメッセージを消費してくれず、共有してもらえない。対話型でオープンなコミュニケーションチャネルが必要だ。

注:上の画像も10回以上、時間帯を変えて、ようやくアップできた。ということで、いつになるかは分からないが、来年はひょっとすると別のサイトに引っ越すかもしれない。

2006/12/28

Power of Internet

OpenNet Initiativeという団体がある。全世界の国家による検閲および監視状況を調査し、国、地方、企業のレベルでの検閲・監視マップを生成し、国家主権、セキュリティ、人権、国際法およびグローバル・ガバナンスに対するそれらのインパクトを研究している。この団体にはHarvard、Toronto、Cambridge、そしてOxford大学の各機関、研究センターなどが母体メンバーとして参加している。

そこから出されているインターネットフィルタリングマップを見るとよく分かるように中国、ベトナム、ビルマ(ミヤンマー)、バーレーン、イラン、サウジアラビア、シリア、チュニジア、ウズベキスタンなどが全面規制され、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イエメン、韓国などが広範規制されている。残りの国々は名目、間接、監視などの規制が行われている。


中国についてみると、バックボーンレベルからインターネットカフェユーザまで、またWebページ、Blog、オンラインフォーラム、BBS、Emailなど非常に広範で精細な検閲・規制が行われている。規制内容は、ポルノ、宗教関係、政治がらみがある。例えば、天安門事件、台湾やチベット独立問題、法輪功、ダライ・ラマ、野党、非中国共産党運動などがある。


中国の場合、2000年以降、コミュニケーションとしてのメディア特性が注目され、規制が大きく拡大し、少なくとも二桁の政府機関がインターネットに関する規制を実施している。

ISP、ICP (Internet Content Provider)、インターネット契約者、サイバーカフェ利用者ごとの規制を見ると;
  • ISP
    開業、運営に許認可必要。ユーザのアカウント番号、電話番号、IPアドレス、利用したICPなどを記録。コンテンツ自体の保存も必要。
  • ICP
    アクセスとBBSサービスをコントロールする。
  • インターネット契約者
    ISP契約後、30日以内に最寄の警察に届出が必要。
  • サイバーカフェ
    16歳以下は利用禁止。ポルノ、破壊的なコンテンツをブロックするソフトを導入。ユーザおよびアクセス履歴ログを記録、保存。ユーザID提示を求め、最低60日間は保存。
Source:OpenNet Initiative
Source:ONI / Internet Filtering in China 2004-2005 (pdf)

とにかく中国のインターネット規制は非常に厳しい。インターネットユーザは様々な回避策を編み出してはいるが、そのたびにつぶされているようだ。

しかし、この検閲・監視マップを見ると、全面・広範規制国を除く大多数の国がインターネットアクセスに関しては一般国内法に則った国民の自主的判断に任せていることが分かる。BBCやAmnestyをドメイン規制している中国のような国を除けば、少なくとも最新ニュースや情報を世界のトップサイトから入手することができるし、人気の音楽やビデオをダウンロードすることができる。また、世界に対して情報を発信してゆくことができる。

地域や国ごとの特性、需要に合わせてローカル、リジョナルなマーケティングが行われてきた。しかし、この世界マップを見ると、インターネットが世界中をカバーし、ユーザが11億になろうとしている現在、インターネットを活用したグローバルなオンラインブランディングが開く可能性は限りなく大きいと実感する。

2006/12/27

Newspaper Next

American Press Instituteが主導したNewspaper Next : The Transformation Projectという資料がある。これは新聞業界が目標とすべき新しいビジネスモデルを調査し、発展のチャンス、持続可能な成長、組織改革を提案している。

状況判断として、新聞購読者数は減少の一途、広告売上は弱含みから悪化、インターネットの売上は伸びてはいるがそれを埋めるわけには行かず、利益率は薄くなる一方、投資家からの圧力は強まるばかり。多くにとって長期低落の始まり、あるいはもっと悪い...。

しかし、業界の外を見れば、巨大なチャンスが口を開けている。個人および企業がニュース、情報、そして広告需要に対する新しいソリューションを見つける中、顧客行動は変化している。情報を入手し、情報を発信し、販売し、購買し、コミュニティとの関係を構築、維持し、利便を提供することで成功するビジネスモデルが沸き起こってきている。これら多くが従来からの新聞機能を補完し、新しい価値や利便性および双方向性を追加している。消費者、広告主はこれら新しいソリューションを採用している。

これらソリューションを創造している革新者達は目も眩むような成長を遂げている。新聞社はなぜ同じことができないのか?

新聞の次のソリューションは、できるということだ。しかし、従来思考の延長や、採用してきた戦略や運用しているプロセス上で劇的な改革なしには不可能だ。

ということで、以下の4つのセクションに分けて説明している。

Section 1:状況分析
Section 2:Newspaper Next戦略
Section 3:作戦計画
Section 4:塹壕からの教訓
Section 5:業界内コラボレーション

Source:API (American Press Institute)
Source:Newspaper Next : The Transformation Project (pdf)

最初のセクション、状況分析にあるグラフを見るだけで新聞が抱える大きな問題がわかる。
購読率50%を超えているのは2つのグループ。1932年以前に生まれた人々、すなわち74歳以上と、もうひとつは、1932~1941年生まれ、74~65歳のグループだけだ。
1942~61年生まれ(64~45歳)の2グループは40%強、1962~1981年生まれ(44~25歳)の2グループは22~23%前後にしか過ぎない。

今、25歳以下のグループは、ニュース入手ソースとしてインターネットを活用しているから、新聞であれ、雑誌であれ、紙媒体をより読まないか、まったく読まない層でもある。この層が、今後、新聞がどのような改革を断行したとしても、劇的に購読を始めることは難しいように見える。

Section 2以降に様々な分析と提案がなされているが、昨日の書き込みのようにメディアの変化だけではなく、人々の生活行動にまで影響を及ぼしているインターネットに対して、メディアとしてだけの改革戦略では機能しないだろう。

これは何も米国だけではなく欧州、日本も同様だ。特にフリーペーパーの侵食が止まらない欧州はメディアとしての存続の危機を迎えている。

参考:Free Paper Home Delivered in Europe

2006/12/26

Online Branding

今年1月末に「Online Branding」というレポートをまとめ、そのExecutive Summaryに以下のように書いた。
  • 膨張するインターネット
    • 10億人を越えたインターネットユーザは世界人口の15%以上を占めるクリティカルマスに達しました。Webアクセス、EmailやChatだけではなくBlogやPodcast、音楽やビデオのダウンロードといった面でもユーザを引き付けています。GoogleやYahoo!などもTV・ビデオ・音楽配信サービスなどを開始予定です。
    • インターネットの影響が他メディアを直撃しています。新聞・雑誌の購読部数や広告ページ数、TVの視聴者数・シェア・視聴率は減少を続け、新聞・雑誌・TVの影響力は低下の一途です。ブロードバンド化・常時接続により読者・視聴者・ユーザのインターネットシフトは加速しています。B2B市場でもインターネットが活用されており、89% がベンダー選定にオンラインのコンテンツが重要、非常に重要と答えています。インターネットがメディアとして確立し、企業の広告・マーケティングがインターネットへシフトしています。
  • オンライン広告
    • ドットコムバブル崩壊後、オンライン広告は回復し、04年に各国で過去最高を記録、05年上半期米国で前年同期比26%増、英国で同62%増を記録しました。Fortune500社が全米オンライン広告の30%を占めるほど大企業のマーケティングに組み込まれてきました。MSやHPは04年の総広告費を減少させた中、それぞれオンライン広告を前年比144%、97.4%増加させ、総広告費の30%、25%を占めています。
    • オンライン広告効果があることは各調査で実証され、オンライン広告戦略をみるとブランド認知向上、トラフィック誘導がコアとなっています。他メディアの影響力が低下する中、急激に増加しているインターネットユーザを対象に欧米企業は積極的にオンライン広告を実施し、日本企業との累積オンライン露出ギャップは拡大の一途です。
    • インターネットは消費者にとっても、企業にとっても購入予定商品・製品の情報ソースであり、欧米でのオンライン購入は増加の一途です。消費者、企業に対してオンライン露出が不足しているということは、コンタクトポイント不足・販売機会を喪失していることになります。
    • また、IBM、GE、Philips、Siemensといったグローバル企業は企業広告、ExxonMobil、Shell、BPは環境広告を開始し、穀物メジャーのCargillは企業戦略の転換をオンライン広告で告知しています。新生AT&Tの告知キャンペーンも総額5億㌦以上が投下され、オンライン広告が中核をなしています。オンライン露出が不足する企業は、これら企業広告にも対応が必要となります。
    • 英米トップサイトでのオンライン広告は世界へ波及しますのでオンライン広告もグローバル化しています。インターネットの最大言語である英語によるオンライン広告露出ギャップは、国・地域単位を越えて膨大なものとなり、既存媒体で確立したブランドと複合され、欧米企業のプレゼンスを大きくしています。グローバルなオンライン露出ギャップの解消は急務となっています。
  • オンラインブランディング
    • Fortune500にランクされる企業のCMO を対象としたCredit Suisse First Bostonの調査によれば、各社の総広告費に占めるオンライン広告費の割合は2005年9月で17%、11月で23%に達しています。今年オンライン広告費を30%増加させるというGMやFordのみならず、ブランド広告を本格化すると予想される多くの欧米企業とのオンライン露出ギャップが拡大し、ブランド力にも格差が生じます。情報発信の現状を見ると、日本企業の英語、あるいはグローバルWebサイトへアクセスするユーザ数は、1日当たり数千ユーザにリーチするHP、IBMなど欧米企業のWebサイトを大きく下回っています。
    • Think Global, Execute Localという戦略により企業が進出した世界の顧客・ユーザ・ステークホルダー自体が、インターネットによってグローバル化しています。ローカルに実行するだけではグローバル化したユーザを捉え切れません。
    • 日本企業は、英米現地のローカル情報と融合させ、補完すべき本社発ブランド情報を発信しなければ欧米企業とのオンライン露出ギャップと企業広告のブランド露出差は埋められません。
    • オンライン露出ギャップ解消とブランド認知向上を目指すオンラインブランディングが今、求められています。
これは2006年1月までのデータを元に書き起こしたため、今年の大きな動きであるWeb2.0、オンラインビデオ、SNS、Blog、Second Lifeなどが言及できていない。また、Blogのパワーなど書き足りない点も多々あるので2006年上期版としてどうぞ。

Source:Online Branding (pdf)

2007 Digital Future Report

南カリフォルニア大学、Annenberg School for CommunictionのCenter for the Digital Futureが、「インターネットユーザにとり、オンライン世界は現実世界と同じように重要か?」というレポートを出している。こちらを紹介する。

それによると、多くのインターネットユーザはオンライン世界と現実世界のコミュニティの価値を比較し、オンラインコミュニティに重きをおいている。インターネットユーザのうち、オンラインコミュニティに所属する43%は、「現実コミュニティと同じようにバーチャルコミュニティに対しても強い帰属感がある」ことが分かった。
「Webが一般に公開されてから10年以上経ち、パワフルな個人的および社会的現象としてインターネットが誕生している」とUSC Annenberg、デジタル将来センター長のJeffrey I. Coleが語る。「1994年以降、米国人にWebが利用されるようになり、インターネットはエンターテイメント、情報、コミュニケーションソースになってきた」、「しかし、今、我々は国民が世界と触れる完璧なツールとしてのインターネットの現実的な成長と、新しい方向性を見ている」と言う。
Source:USC, Annenberg School for Communication "2007 Digital Future" (pdf)

センターは、「インターネットは、友人や家族と直接触れ合う時間に変化をもたらしたのか?」と問い、「多数のインターネットユーザがオンラインへアクセスすることで友人や家族とコンタクトすることを増やしたと回答しているが、ほとんどのユーザは友人や家族と過ごす時間に変化はないと回答している」と結んでいる。

はたしてそうだろうか。メディア消費やユーザのインターネットシフト、SNS、Blogなどの隆盛によるオンラインコンタクトポイントの拡大は、今までとは桁違いのインパクトで人々に影響している。だからこそ、オンラインコミュニティ帰属意識が高まり、コミュニティ活動に参加し、コミュニティメンバーとのやり取り、付き合いが70.4%にまで達しているのだ。

人々の生活や行動パターンに影響が出始めている。Second LifeのようなバーチャルCGコミュニティへの参加者も100万人をすでに越えている。社会的な目的を持った活動をする人々が64.9%にも達しているということは、もはや単なるメディアの話ではなく、生活・人生に深く関わってくる社会の話になってきた。

やはり、現実社会に一歩一歩と近づいてきたオンライン社会の重要性を認識し、活用する必要がある。

2006/12/25

The Agency's Role In New Media

MediaPostのOnlineSPINにJoe Marcheseが、「The Agency's Role In New Media」と題して書いている。

ニューメディア環境での広告代理店の役割とは?
  • Customization vs. Automation
  • Creativity    vs. Standardization
  • Professional   vs. User-Generated
メディアや手段がデジタル化する中で、メディアメッセージのプラニング、バイイング、クリエイティブを専門に行う業界はいったいどうなってしまうのか?
その答えはテクノロジーにあると、Marcheseは書く。

彼は、Ad/OSを開発することがGoogleの最終ゴールだとするYoungに言及しながら、GoogleだけではなくMicrosoftなども同じだと言う。

参考:Google...The OS for Advertising

また、ここで最もよく間違われるのは、これら広告技術の進歩によって広告代理店の仕事がなくなってしまうといった理解だ。これら技術はツールであり、ソリューションではない。これらツールを使い、革新的なソリューションを開発するには人間の関与が欠かせない。これが広告代理店の役割だと彼は続ける。

例として検索エンジンマーケティングを取り上げている。SEM技術はまったく新しい専門業界を誕生させた。AdWordsを使うのは簡単で、企業によっては自社でSEMを実施することもできる。しかし、専門的にSEMツールを活用し、他と差異化してゆくのは広告代理店の価値だ。

SEMと他の知識・経験を調和させることで、広告代理店は統合マーケティングを通して高収益を獲得することができる。また、これにより21世紀の広告代理店が提供するサービスにSEMをベストマッチさせることができる。

では、どのような技術・ツールを使うことで広告代理店がクライアントに提供する価値を継続できるのか?新しい広告プラットフォームからどんな新しいサービスが生まれるのか?

そこでSEM業界に次のようなマーケティングが登場するとMarcheseは見る;
  • UGVM (User-Generated Video Marketing)
    広告代理店は、コンテンツ、ジャンル、オーディエンスのデモグラフィック、そしてプレースメント入札に応じて、いかなる広告主のUGV広告要求にも対応できるプラットフォームを最適化する専門部署を創設する。このサービスの一面から、リアルタイムでコンテンツボリュームを作成する別の技術が必要だが、多分、ビデオコンテンツ作成モデュールを使い、ビデオコンテンツの適正なインベントリを作成する必要が起きてくる。

  • DPPM (Digital Product Placement Marketing)
    30秒スポットの効果低減により、増加するプロダクトプレースメントの重要性からすると、プロダクトプレースメントのための市場が要求する技術とあわせ、デジタル製品プレースメント技術は、非常に分散化されたコンテンツ環境でクライアント製品のプレースメントを最適化することに特化した広告代理店2.0部門が必要とされる。
これらは大枠も大枠だが、特定の現象に関わらず、マーケットを推し進めていく法則を創造するのは代理店にかかっていると言うことだ。ダイレクトで居心地のいい世界やパフォーマンスベースのオンラインマーケティングの外で、拡張性のある入札マーケットが機能できる法則を作成するのは広告代理店だと結んでいる。

Source:MediaPost / OnlineSPIN

Googleがいつディスプレイ広告に進出するかは秒読み段階に入っていると言ってもおかしくない。極秘裏にFortune1000を対象にCPMベースのディスプレイ、ビデオ広告の提案をしているのだから。

Source:MarketingVOX : 'Secrect' Google Display Advertising Network Rumored

Googleが広告代理店を中抜きするようなメディアバイイングを始めたらその影響は限りなく大きい。広告代理店もクロスメディアミックスからのソリューション提案が鍵となるし、Marcheseが示すようなUGVMやDPPM機能も必要になるのかもしれない。

2006/12/22

Creative Commons vs. All Rights Reserved

全世界のインターネットトラフィックの20%を配信する最大手、Akamaiがニュース、小売、音楽サイトへのトラフィックインデックスをリアルタイムで提供するサービスを一般にも公開した。加えて「Live Streaming」と、「On-Demand」のオーディオ、ビデオデータ配信データや、HTTPヒット、1分ごとのビジター数も公開した。

ニューストラフィックインデックス:
100以上のグローバルニュースサイトから数十億ページビュー(PV)以上を毎日配信しているそうだが、そのデータをチェックすることができる。全世界、各地域ごとのトラフィックをVM(Visitor Per Minute)というインデックスで示している。各地域の時間帯インデックスもあるので時差も関係なく、地域ごとのトラフィックフローを確認することができる。

他に、小売や音楽サイトへのトラフィックインデックスもあるが、ニュースのリアルタイムに近いトラフィック状況を見ると、米国ユーザがいかにニュースサイトへアクセスしているかが分かる。全体の90%前後のトラフィックを米国ユーザが生成している。Akamaiがモニターするニュースサイトの詳細が分からないが、深夜から早朝を除き、朝8時台から深夜12時台まで1分あたり200万ユーザがアクセスしている。

アクティブストリーム・ヒット・ビジター
アクティブストリームは24時間内のピーク、平均をオンデマンド、ライブストリーム別に表示、HTTPヒットもリアルタイムで地域(北米、南米、欧州、アジア、アフリカ、オーストラリア)ごとに表示、そして、1分ごとのビジター数も24時間内のピークなどのデータを表示してくれる。

これ以外にもネットワークパフォーマンス比較、リアルタイムWebモニターというインデックスも公開準備中となっている。
Source:Akamai / Net Usage Indices

様々な調査データがオンラインで一般に公開され始めたのがこのBlogを書き始めた理由のひとつだが、この流れは、リサーチ会社だけではなく、検索関連企業、ツールバー配布企業、そしてAkamaiなどの企業にも広がってきた。

情報を共有する際、障害になりかねない知的所有権や著作権問題がある。しかし、オンラインでの情報発信、共有が新しい価値を創造することも事実だ。Blogなどをベースに顧客企業とプロジェクトがスタートすることもある。特に個人が情報発信を開始し、大きなうねりとなっている現在、企業側だけが情報鎖国を行うことは自殺行為に近い。

欧米各国企業がWeb、Blog、Webinar、Podcastなどを利用し、非常に広義のクリエイティブコモンズ的に様々な情報を発信、露出してゆけば、それを元に様々なコンテンツが流通してゆく。これがブランドを消費者・ユーザの手に委ねることにもなり、ボトムアップ、グラスルーツのマーケティングともなる。トップダウンのマーケティングと決別するのではなく、パラレルに走らせる必要があるのではないだろうか。

2006/12/21

Viral Video Top 10

たまには少しは柔らかめのお話をひとつ。
今年はバイラルビデオが話題になったので、Ad Ageが選んだトップ10とViral Video Chartがリンク数に基づいてランクしたトップ10を紹介する。

Ad Age:バイラルビデオのトップ10

  1. OK Go
  2. Diet Coke and Mentos
  3. The LonelyGirl15 series
  4. Bank of America
  5. Faith Hill losed to Carrie Underwood at the Country Music Awards
  6. Clay Aiken puts his hand over Kelly Ripa's mouth
  7. Natalie Portman's qangsta rap
  8. Smirnoff's
  9. Must Love Jaws
  10. Kelly's Shoes
Source:Advertising Age / 10 Viral Videos You Should Have Seen

Viral Video Chart:2006年トップ10
  1. Kerry Belittles U.S. Troops 38,710リンク:876,228視聴
  2. Free Hugs Campaign. 20,829リンク:7,862,099視聴
  3. White and Nerdy 17,685リンク:11,085,593視聴
  4. Worst Burglar Ever 16,919リンク:2,517,526視聴
  5. Evolution of Dance 13,152リンク:39,606,662視聴
  6. Kiwi! 13,052リンク:4,662,680視聴
  7. OK Go 12,869リンク:12,887,893視聴
  8. Colbert Roasts President Bush 10,704リンク:3,020,723視聴
  9. A Message From Chad and Steve 8,041リンク:2,142,896視聴
  10. Guiness World Record for most T-Shirts worn at one time 7,342リンク:2,508,908視聴
(リンク数:視聴回数は12月16日のblog.viralvideochart.com/による)
Source:Viral Video Chart / Top Viral Videos of 2006

さて、あなたは何本観たことがあるだろうか?

Kerry上院議員にはリンク数で劣るが、「Free Hugs」が2位になっている。やはり、自然発生的な人々の輪の力がある。
10位の155枚Tシャツ重ね着男が意図的なバイラル効果を目的としたもので、様々な派生ビデオも追随したが、ランクインはしなかった。


個人的なお勧めは「Worst Burglar Ever」だ。「Evolution of Dance」も驚かされる。

2006/12/20

DoubleClick : Influencing the Influencer

先日、DoubleclickのTouchpoint IVを紹介したが、そのデータで「製品やサービスを購入する判断にもっとも影響を及ぼしたものは何か?」という問いがあり、「クチコミ」が14%でWebサイトの18%、ショップの15%に次いで3番目に高い結果となっていた。

参考:DoubleClick Touchpoint IV

最近は「クチコミ」がホットなマーケティングトピックとして取り上げられている。それでは、「クチコミ」を活かしたマーケティングをどのように実施すればいいのかという問題が提起される。そこでDoubleclickはTouchpoint回答者6,000人から1,000人のインフルエンサー、アクティブなネットワーカーで、テーマごとのエキスパート、Bloggerで、オンラインコミュニティの参加者を特定した。そこでこれら核となるオーディエンスグループを調査したところ、一般的には企業のWebサイト、そして特にオンライン広告が彼らに影響を及ぼす重要なソースだということを明らかにした新しい資料をリリースした。これを紹介する。

オンライン広告はインフルエンサーのショッピングの鍵
Touchpoint IVのデータを、初期認知ではなく、製品・サービスの学習(サーチ)ステップでインフルエンサーと、それ以外を分けた場合、企業Webサイトの影響力がインフルエンサーにとってトップだが、インフルエンサーの19%が製品・サービス購入決定を行うリサーチ段階で重要な役割を果たすとしており、非インフルエンサーの8%と大きな開きがある。

クチコミに影響させるマーケティング方法は?」と問われた場合、それはオンライン広告ということになる。それは潜在顧客層に訴求するだけではなく、彼らを通して友人、同僚、家族といったインフルエンサーが影響力を及ぼす全ての人々に広告を露出していることになるからだ。
インフルエンサーの行動は製品カテゴリで違う ということで、自動車、そして旅行を取り上げて比較している。
  • 自動車
    • インフルエンサーの場合:自動車メーカーのWebサイトが学習(リサーチ)段階でもっとも重要
    • 非インフルエンサーは40%がメーカーWeb、37%がディーラーWeb
    • インフルエンサーは48%がメーカーWeb、31%がディーラーWeb
  • 旅行
    • インフルエンサーの場合:Webサイトが学習(リサーチ)段階でもっとも重要
    • 非インフルエンサーは40%前後がWeb、およびディーラーWeb
    • インフルエンサーは50%弱がWebサイト、30%強がディーラーWeb
    • インフルエンサーの場合:TV広告よりもオンライン広告が重要
    • 非インフルエンサーはTVが21%、オンライン広告が19%
    • インフルエンサーはオンライン広告が24%、TV広告が13%
インフルエンサーは広告に敏感
インフルエンサーは一般的に広告に対して、非インフルエンサーと比べ、より肯定的な関連づけをしている。
特に製品・サービス購入モード時により広告に対して注目することが報告されている。製品メリットをハイライトする広告や使える情報を提供する広告を評価している。また、インフルエンサーは、彼らの行動パターンをベースとして、ターゲッティングしたオンライン広告を実施するよう広告主に期待しているし、アクセス頻度制限をすることで同じメッセージを消費し尽すことがないように考えている。
インフルエンサーは、クッキーを削除するし、TV広告の早送りもする。しかし、広告を見た後、オンラインでフォローアップリサーチを行い、それを友人や家族に話す傾向が非インフルエンサーよりも強く出ている。また、露出された広告を認知し、評価し、そしてそれをコントロールしようとしている。
インフルエンサーはオンライン時間が長い
消費エキスパート、そしてアクティブにアイディアを共有するインフルエンサーは、アクティブなメディア消費者でもある。インフルエンサーは様々なメディアタイプを利用している中でもインターネットの消費が際立つ。一日5時間以上オンライン時間を消費する非インフルエンサーは23%なのに対して、インフルエンサーの39%は5時間以上消費している。
インフルエンサーは新しいメディアがお好き
15タイプの振興メディアの利用率を見ると、インフルエンサーは非インフルエンサーよりもおおよそ全てのメディアで10ポイントパーセント以上の差を開き、その多くが利用している。57%のインフルエンサーはオンラインビデオを視聴(非インフルエンサーは40%)し、44%がBlogへアクセス(同28%)し、36%がPDAなどでインターネットへアクセス(同21%)している。
結論
  • インフルエンサーは、Webサイトに次ぎ、オンライン広告を製品・サービス購入プロセスの重要な一部だと認識している。製品詳細や学習(リサーチ)段階にターゲティングされている広告はエコー効果を呼び、他者へ大きな影響を及ぼす。このためオンライン広告は潜在顧客に訴求するだけではなく、広範なオーディエンスに影響することができる
  • 消費者行動は製品・サービスタイプで変動する。マーケターはオリジナル顧客層調査に投資し、マーケティングプランを適応させる必要がある
  • インフルエンサーは製品・サービス購入プロセスにおける広告を情報チャネルとして高く評価する。加えて必要としない、価値のない広告をフィルターする術も見に付けている。クチコミ顧客のロイヤルティにもっとも効果のあるマーケティング戦略が必要だ
  • インフルエンサーはデジタルメディアをより利用している。インフルエンサーにリーチし、クチコミ効果を狙うにはデジタルメディアを活用するメディアプランが必要。オンラインビデオ、モバイルWebコンテンツ、Blogといったものがインフルエンサーに効果的だ
Source:DoubleClick / Influencing the Influencer How Online Advertising and Media Impact Word of Mouth
参考:Doubleclick

このように前回紹介したYahoo!は「ブランド主唱者(Brand Advocate)」、そしてDoubleClickは「インフルエンサー」としてのパワーを説明している。Timeが今年の顔として「You」を選んだように、インターネット、デジタルメディアを活用する個人ユーザのパワーは既成メディアを凌駕するほど大きくなりつつある。既成メディアから情報を流し続けるだけではオンラインのブランド確立は困難なステージにまで達している。いままでの既存マーケティング戦略はB2Cであれ、B2Bであれ再検討を迫られている。

しかし、この「クチコミ」パワーの訴求力が魅力的なだけに、様々な問題も産んでいる。Wal-Marting America、Lonelygirl15でも止まらず、今度はSonyのPSPでもやらせBlogが判明した。

関連するマーケティング戦略、Blogger/Blogの倫理などを別の機会に取り上げたい。

Source:Adotas / Sony PSP Viral Site Busted
Source:MediaPost / Sony Confesses To Creating 'Flogs,' Shtters Comments
参考:Wal-Mart Enlist Bloggers in P.R. Campaign
参考:WOMMA : Ethical Blogger Contact Guideline

2006/12/19

36% (Brand Advocate) Talk Brands Online

「影響力のある消費者は、検索エンジン、ソーシャルメディア、コミュニケーションツールによってリーチ」できるという調査が出た。

これはYahoo!とcomScoreが、過去半年から3ヶ月の間に300㌦以上のエレクトロニクス製品や、自動車を購入したり、旅行(ホテルに宿泊する家族旅行)したり、不動産ローンを組んだ2,297人と、直接インタビューした24人を対象に実施した調査だ。

結果で示される重要なポイントは;
  • 消費者がブランドについて話したり、推奨する際、インターネットは大きなインパクトを持つ
  • 信頼できるソースからの情報、すなわち「クチコミ」はオンラインで増幅され、より大きなオーディエンスにリーチする
  • ブランド主唱者(Brand Advocate)」が主たるインフルエンサーとしてオンラインに誕生し、少なくとも二対一の比率で友人、家族に同じ製品やブランドを買わせる
  • ブランド主唱者(Brand Advocate)」は大きな影響範囲を持ち、様々なオンラインメディアでつながっているためマーケターにとって重要となっている
「ブランド主唱者(Brand Advocate)」
調査によると「ブランド主唱者(Brand Advocate)」とは、冒険的なオピニョンリーダーで、平均より若く、高学歴、高収入、そして非ブランド主唱者よりもオンライン消費時間が長い層で全体の約36%を構成している。
非ブランド主唱者の場合は三分の一だが、ブランド主唱者(Brand Advocate)の半数は、製品購入前のリサーチで検索エンジンを利用している。リサーチに時間をかけることでブランド主唱者は購入後に製品を購入した判断に納得がいくので、よりブランドを他人に話したくなる衝動に駆られるのだ。

「ブランド主唱者(Brand Advocate)はオンラインでブランドを語る」 ブランド主唱者の半数は友人、家族、そしてまったく知らない人間にも様々なオンラインチャネルを通じてブランドをクチコミしている。非ブランド主唱者が26%なのに対して、ブランド主唱者の60%は良いブランドをクチコミすることは価値があると信じている。また、約90%は購入製品に対して肯定的な書込みをする。

ソーシャルメディア
ブランド主唱者は、ソーシャルメディアツールを最大限に利用しているので、IM、Chat、コミュニティ、画像サイト、Blogなど、どれをとっても広範なオンライン社会、サークルに対して影響を及ぼすことができる。例えば、非ブランド主唱者よりIMを使うユーザが40%多く、Podcastなら119%多い。また、誰かに自分の意見をメールで送るのは非ブランド主唱者の倍、オンラインで質問したりするのは非ブランド主唱者の倍だ。


Source:MediaPost / Yahoo : 4 in 10 Discuss Brands Online
Source:Yahoo! Media Relations / Press Release

ところが、Keller Fay Groupの資料によれば、WOM (Word of Mouth:クチコミ) の70%は直接会話であり、インターネット関連は合計でも8%にしかすぎない。クチコミはオフラインが大半だとしている。そしてブランドを含んだ会話の25%が夫婦、23%が家族、26%が親友・友人となっており、残りの26%が職場の同僚、知人、他人となっている。
しかし、会話の中で引用されるメディアを見てみるとトップはTV全体で11%(広告6%、番組5%)だが、2番目にインターネットが入ってくる。合計で9%、企業Webサイトが4%、オンライン広告が2%、そしてBlog/Chatが1%を占めている。
Source:Keller Fay Group LLC / Single-Source WOM Measurement (pdf)

GEN Yだけを取り上げると、IMが3倍に伸びるが、直接会話が63%、電話が17%となっており、直接会話が大半なことは変わらない。

参考:Ad Age / Word of mouth: The real action is offline (pdf)

Yahoo!とKeller Fay Groupの調査をあわせてみると;
  • オンラインでブランドを話し、書き込む「ブランド主唱者(Brand Advocate)」は36%にも達し、IMやChat、Blogなども活用し、積極的にブランドに肯定的な書込みを行っている
  • ブランドを含んだ会話が行われるのは家庭、職場、友人との直接会話が大半(89%)だが、インターネットを通した会話も8%行われている
  • 近親者とのブランドを含む会話の中でよく取り上げられるメディアはTV(11%)だが、その次にインターネットがらみの話(9%)が出ている
マーケターが使うメディアから見るとTVに次ぎ、インターネットがブランドメッセージを届けていることになる。IM、Chat、Blog、VoIPなど新しいオンラインメディアによって遠く離れた人間とも会話することで、ブランドメッセージを幅広く、世界中に届けられるのはインターネットということになる。そしてブランドを主唱する人々はインフルエンサーとして大きな力を発揮することになる。

DoubleClickもYahoo!と同様の調査結果を発表している。これを次ぎにでも紹介したい。

Blog, Video and VoIP

Mediamark Research Inc. (MRI) が2006年秋版としてリリースした米消費者データ、インターネットで行う行動のうち、Blogを閲覧し、オンラインビデオを視聴し、VoIPで電話をかけるのが前年比でもっとも伸びたとMarketingVoxが伝えている。

全体を見ると、ユーザ行動の上位はEmailが70.5%、ニュース入手が40.2%、ショッピングが34.2%、支払いが30.7%、IM利用が26.8%となっている。 次に2002年と2006年を比較した場合、この間にもっとも伸びたユーザ行動はショッピングがトップの57.7%増、ビジネス目的の購入が51.5%、 不動産情報の入手が36.6%増となっている。
ところが昨年比でもっとも顕著な伸びを示したのは、197.7%増のVoIP、163.9%増のBlogアクセス、123.7%増のオンラインビデオ視聴となっている。

今回調査された22項目中、比較ができない3項目を除いた19項目のうち10項目は前年比減で、特に新車情報入手は12.1%減、不動産情報入手が8.3%減、求人情報が7.7%減、スポーツニュースが7%減となっている。

全体的にインターネットでのユーザ行動が集約されてきたような感がある中、Blog、ビデオ、VoIPは飛躍的にユーザをひきつけている。一方的に情報を提供するオンラインメディアから、双方向的なオンラインメディアへユーザがシフトし始めたようだ。
Source:MarketingVox / Online : Reading Blogs, Video Grow Most; Email, News, Shopping Most Popular
Source:Mediamark Research / Blogs, Video and Phone Calls Lead Internet Growth (pdf)

まだまだ全体的に見れば少数派だが、VoIP、Blog、そしてオンラインビデオという対話型のオンラインメディアとしてシェアを伸ばしている。先進的ユーザ、デジタルイノベーター、アーリーアダプターが双方向的オンラインメディアに移行しつつあるようだ。

VoIPやBlogと比べオンラインビデオ視聴は双方向的ではないと見られるかもしれないが、ビデオを視聴し、お気に入りに追加したり、ランク付けや共有したり、グループに追加、コメントを書き込んだり、そして自分のビデオをアップしたりと、オンラインビデオは一方通行ではない。
また、今、一番、注目を集めているのはオンラインビデオだ。様々な企業がオンラインビデオを取り込んだバイラルマーケティングを実施している。

これらVoIP、ビデオ、Blogといった対話型オンラインメディアを活用するユーザがインターネットで何を話し、書き込んでいるのだろう?そして彼らはどういったグループを形成しているのだろう?
そこら辺のデータをYahoo!が出しているので次に紹介する。

2006/12/18

Click Fraud : Al Qaida, Hezbollah and Fallujah ?

2006年春、Googleに対しておこされていたクリック詐欺による過払いに関する集団訴訟は和解となり、Googleから9,000万㌦が支払われた。その結果、Googleがどのようにクリック詐欺を判定し、どれくらいのボリュームを削除しているかが明らかにされることはなかった。しかし、集団訴訟に加わっていた一部の広告主は、和解内容が不十分だとして別の集団訴訟を提訴しているし、ClickForensicsによれば2006Q3のクリック詐欺率は13.8%と若干、Q2よりも改善したが依然として13~14%の高率でPPC広告が被害を受けている。

そこにGoogleのAd Wordsがアルカイダやヘズボラの資金源になっているという疑惑が提起された。Webmaster Radio.FMのJim Hedgerが取り上げ、Search Engine JournalのLaren Bakerが後追い記事をアップしている。(全体画像を表示するには下をクリック)
それによるとGoogleのソーシャルネットワーク、Orkutにアルカイダ、ヘズボラグループと関係するフォーラムが複数あり、Ad Wordsの文脈ターゲティング広告が掲出されている。そして、グループシンパがクリックすることで過激派組織に金が渡っているというのだ。シンパがクリックするだけではなく、自動で広告をクリックする「Clickbots」を使っているという話も当然ある。

加えて、Master Radio.FMは、イラクの過激派組織ファルージャと関係し、GoogleのAd Senseを利用したBlogを運営している人物ともコンタクトしている。

Source:Webmaster Radio.FM
Source:Search Engine Journal
Source:Click Forensics

どこまで本当の話か不明だが、少なくとも集団訴訟が継続しているGoogleのクリック詐欺防止システムはうまく機能していないか、あるいは、Googleの防止システムをうまく回避し、不当な利益を上げている人間・グループが数多く存在しているのは事実だろう。アルカイダ、ヘズボラ、ファルージャという組織がイスラム原理主義に加担し、資金供給している国・組織に加え、独自の資金源としてGoogleに限らず、可能なものは何でも利用しようとしているのはわかるし、犯罪集団が組織的に行っていることもあるだろう。

Google、Yahoo!、MSNともに無効なクリックを探知し、課金システムから削除しているとは言うが、対応は遅く、詐欺集団(ネット)は世界中に拡散、波及しているようだ。AdotasにClickTracks AnalyticsのVP、Michael Stebbinsがクリック詐欺を防ぐためのステップを書いている。そこまでクリック詐欺は日常化しているのかもしれない。
  • クリック詐欺セッションを特定
  • シンジケート(アフィリエート)を除外
  • 米国・カナダなどだけにターゲッティング
  • 滞留時間が「0(ゼロ)」のサイトをブロック
  • クリック詐欺の過払いを請求
Source:Adotas /Click Fraud’s Unseen Downside

簡単なようだが、クリック詐欺のセッションを特定するためには人、時間、金がかかる。PPCによって露出し、コンタクトポイントを獲得し、売上につな げようと言うスタートアップ、SOHO、中小企業には無理な話だ。詐欺セッションを特定できず、過払い請求に必要なデータ提出ができないケースなら、 PPCキャンペーンを中止するしかない。

しかし、MediapostにGord HotchkissがGoogleサイドの見方として書いた記事によると、Googleは「無効なクリック」として、様々な事象を挙げ、それらを自動的にクリックカウントから削除している。Googleの公式コメントによれば「無効なクリック」数は有効なクリック数と比べれば「取るに足りない%」だという。彼の計算によれば0.18%程度だとしている。

Source:Mediapost / The Elusive Click Fraud Issue: Google's Side Of The Story

しかし、「取るに足りない%」のはずの「無効なクリック」に対して、どうしてGoogleが集団訴訟の和解金として9,000万㌦も支払ったのだろう?

2006/12/16

Page View ?

MSNBCがMySpaceがYahoo!のページビュー(PV)を抜いたことを伝えている。comScoreの11月のデータによればMySpaceが387億PVで、Yahoo!が381億PVとなり、MySpaceは前月の2%増、2005年11月の3倍という。

Yahoo!はAjaxをMapやEmail、その他のサービスに導入しており、PV減少につながった可能性があるとされる。以前、Ajaxを使うことによってページビューが減ることが理解できないと書いたが、それは誤りだった。

Source:MSNBC /MySpace beats Yahoo in page views

以前、DoubleClick Touchpoint IVでMicropersuasionの記事に関して、
  • ここがどうも理解できない。NYTのMyTimesにしても、GoogleのPersonalized Homeにしても見出しを呼び込んできてはいるがコンテンツへのアクセスはオリジナルサイトへアクセスすることになっている。
  • Google Readerにしたところで、Expanded Viewにしても第一文節の40文字くらいまでしか表示していない。オリジナルコンテンツを読むにはクリックし、別ウィンドウを開くことになり、ページ ビューを生成することになる。また、「GoogleやMSは、インタラクティブでページをめくる必要を減らすプラットフォームをプッシュしている」とは思 えない。
と書いた。

参考:DoubleClick Touchpoint IV

My Yahoo!にしたところでニュースアイテムにカーソルを合わせれば第一文節のコンテンツが表示されるが、基本的にニュースをクリックすればオリジナルコンテンツの別ウィンドウが開くことに変わりはない。しかし、どうやらAjaxを使ったことにより、Webページの特定部分だけを閲覧することでよしとするユーザが多く、ページ全体を読み込まないため、PV生成に影響があるようだ。

ここで問題になるのはPVの定義と、comScoreなどがどのような指標でデータを収集しているかだ。comScoreなど第三者の調査・マーケティング会社は、基本的にWebページ全体を読み込み、あるいは全体を更新することをPVとしているため、AjaxによるWebページの特定部分だけの読み込みをカウントできない。
また、IABのInteractive Advertising Basics/Preliminary glossary of Interactive Termsによれば;
  • Page Viewとは、ページが実際、ユーザに見られたこと。注:今日、これは計測できるものではない。今日、もっともそれを表わすものとしてはPage Dispalysがある。
  • Page Displaysとは、ページがユーザのコンピュータスクリーンに成功裏に表示されること
とされている。(この記述は2年ほど前から変更なし)

Source:IAB / Preliminary glossary of Interactive Terms

PVもPDのどちらにしても最初からWebサイト側、広告サーバ側、あるいは第三者が計測できるものではないことが分かる。

AjaxによるWebページ全体読み込みが減ることで、PVを広告効果指標として使うことに疑問が提示されているのは納得できる。PVがサイト規模の指標であり、過去何年にもわたり使われてきたものだが、Ajaxなどの新しい技術により時代遅れになりつつあるのも納得できる。それとは別に、comScoreなど第三者側もそれに沿った比較指標を出さなければ、Ajax利用サイトとそうではないサイトとの比較ができない。彼ら自体の存在にも関わってくる話だ。

なお、MSNBCも書いているようにYahoo!は11月に1.3億のユニークユーザを集め、Googleを上回っている。PVが減ったところで、現実のユーザ数が減ったわけではない。また、実際のところ、PVよりはUnique Users、Page Impression、CTR、PPCなどの指標による広告効果測定が多く用いられており、PVが指標として使われなくなるだけで、広告を出すクライアントが減るわけではない。

2006/12/15

Blog.Compete.com : ?

Compete.comのJeremy Craneが、「Ask.com: Crossing the Digital Divide」という一見、もっともな記事を書いている。その中で彼は、最近、Ask.comがオフラインメディアを使ったキャンペーンを実施したが、そのキャンペーンに「効果があったのか?」という問いを投げかけている。この内容を検証してみる。

彼はその根拠として、月ごとのメディアへの広告費とユニークビジターを比較している。3月にオフラインメディア(中心はTV)に重点投下したにもかかわらず効果が見えにくい。30日程度のレスポンス遅延は普通だから、4~5月にかけてのユニークビジター増に若干貢献したともいえる。しかし、その増加はオンライン広告の出稿パターンによる貢献が一層効果を上げている。
また、月ごとのメディアへの広告費と検索エンジンシェアを比較してみるとそれが一層際立つ。9月と10月に検索エンジンシェアが増加しているが、その時期はオンライン広告だけで、オフライン広告はなされていない。
2005年11月から2006年11月までの検索エンジンシェアを見ると、オフラインメディアではなく、オンラインメディアへの広告出稿による相関性が認められる。
ゆえに、オフライン広告キャンペーンはAsk.comにとり、(少なくとも今のところまだ)機能していないと結論している。
Source:Blog.Compete.com / Ask.com: Crossing the Digital Divide

こんな乱暴なデータの取り扱いと、雑な結論の出し方を見たことがない。

我々一般消費者・ユーザは、毎日、新聞、雑誌、TV、ラジオ、屋外、インターネットなどのクロスメディアからブランド、メッセージを露出されている。ひとつのメディアが露出効果を独占できるものではない。IAB、OPA、EIAA、MPA、NAAなど多くの業界団体が出しているのはクロスメディア環境で、各メディアのリフト効果だ。単一メディアが消費者・ユーザの認知、自然想起、ブランド好感度、購入意思を決定するものではない。また、季節要因や競合との露出差も関係してくる。

このデータを元に推測できることは;
  • Ask.comの知名度、認知度の低さはTVなどへのオフライン広告によっても、オンライン広告によっても一朝一夕に向上させられるものではない。何年にもわたる競合検索エンジンの認知度が大きく勝っている。
  • しかし、オフライン広告の露出によって、若干、ユーザの認知が高まり、オンライン広告での反復も合わさって、4・5月にユニークビジター数が増加したように見える。
  • 7・8月は夏休み時期になるため、オン・オフライン広告を実施しても効果がなかったように見える。(この時期にオフライン広告を実施した失敗は大きい。ユビキタスメディアとしてのオンライン広告は夏休みであろうと効果が期待できるがオフライン広告は難しい)
  • しかし、9月に入り、学校に戻った学生達がまたビジター数を増やし、シェアを伸ばしたように見える。
のではないかと言うことだけだ。当然、競合検索エンジンの露出キャンペーンも行われているから、露出数の叩き合いになった分だけ、効果が削減されていることも考慮しなければいけない。

Alexaが独占していたWebサイトのランキング、リーチ、ページビューなどの指標に、Compte.comが独自の指標を公開して分け入って来たことは喜ぶべきことだ。どちらにも長所があり、短所があるが、マーケターは必要に応じて使い分ければいいわけだ。

しかし、自前のデータを勝手に解釈し、それをBlogで公開するとなると話は変わってくる。オンラインの効果を大きく見せたいのは分かる気がするが、先走りすぎた感がある。Hitwiseも複数のアナリストが自社データを元にBlogを書いているが、より地に足がついた説得力のある書き込みを読むことができる。

12月13日(米国時間:12日、7:53 pm)にコメントを投稿しておいたが、今のところ返事はない。

参考:http://blog.compete.com/2006/12/12/askcom-offline-media-spending/#comment-9468

2006/12/14

Sun CEO's Blog

今日の書き込みで100回目を数える。今まで様々なデータ、資料を元にオンライン広告、ブランディング、マーケティングを紹介し、オンライン露出ギャップが米国だけではなく、全世界に波及していること。インターネットがコアのメディアとして確立し、他メディアを凌駕しつつあることを紹介し、日本のグローバル企業が日本からインターネットを使ったブランディングをしない限り、露出ギャップを埋められず、その差は開くばかりだと言い続けてきた。

一区切りというわけではないが、100回目にあたり注目すべきデータや資料、書き込みの中から、やはりもう一度、SunのCEO、Jonathan SchwartzのBlogを取り上げようと思う。
Fortune500にリストアップされる企業のCEOである彼は、Blogアクセスユーザに対して平易に、普通の話し言葉で語りかけている。新製品の紹介、プ リント媒体のインタビュー、PCと携帯電話、Blogでの財務・企業情報開示の必要性、データセンターの検討、企業の透明性、オープンソースの話など、時 には脱線してしまうこともあるがストレートに書いている。これが非常に印象に残る。

例えば11月28日に、「Tomorrow's Fortune 500」というエントリーがある。
これは環境配慮型のT2000の根付け根拠、発売後の売上高・シェア増加、そして大企業、金融機関、大手キャリア、データセンターなどを重要顧客とするSunのイメージとは違い、「設立4年未満、社員150人未満」規模の新興企業を対象とした販売戦略を説明している。

広報部が用意した文書を元に書いているのではなく、社内での軽い衝突も明らかにし、最初から最後まで彼の言葉で説明している。

Source:Sun CEO / Jonathan's Blog : Tomorrow's Fortune 500
Source:日本語版:将来のFortune500企業

上記のエントリーは英・独・仏・中・日・韓・露・伊・西・ポルトガルの10ヶ国語に翻訳されているので、インターネットで使われている言語のトップ10を網羅し、理論的には約8.6億のインターネットユーザに訴求することができる。(ただし、comScoreのデータを見ればわかるように米国Top(=世界Top)25Webサイトのうち14サイトは米国以外からのアクセスが大半なことから、非英語圏ユーザであっても必要な情報を提供するサイトであれば自国語に翻訳されていなくてもアクセスすることは間違いない)
Source:InternetWorldStats.com / Internet World Users by Language

そして、Technoratiによれば彼のBlogはランク1,321位、1,059Blogから2,224個のリンクがなされている(数字は12月13日時点)。11月27日時点ではランク1,474位、991Blogから1,996個のリンクだったので、2週間ほどの間にランクもアップし、リンク数も増えている。それだけ、彼の人柄、考え、言葉が世界中に伝わったことになる。

2004年6月28日に初めてBlogを開始した際、彼はこう書いている。
「範を示す」
上場企業のトップがBlogを始めてはなぜいけないのだろう。ある意味、論理的には米国のRegFD (Regulation Fair Disclosure :公平開示規則)により、企業情報の排他的提供を禁じられているわけだが、Blogを始めることで外部とコミュニケートすることが我々のやり方だ。
今、JavaOneの新チームはルーツに立ち返り、変革を推進し、攻撃に出ようとしている。破壊的な革新者となる。そして我々はこれから少なからずリスクを負うことになる。私を知っていれば私が自分の信念を言葉にすることを知っているはずだ。
なぜBlogを始めるかと言うと、革新がその予言力を失うとき、革新自体が自立し道を開くと考えている。だからまず私から責任を果たすべきだと考えた。次に私の言葉が文書化されるフォーマットとその正確性を変更するためだ。文中に識者のコメントなしでストレートに伝えるためだ。そしてコミュニティからフィルターのかかっていないフィードバックを受けるためだ。と書いて、自分のEmailアドレスを明記している。

2004年と言えば4月の業績発表で12四半期連続減収、その結果経営幹部の交代が相次ぎ、3,000人以上の従業員削減などが続いていた時期だ。しかし、6月28日と言えば、SunがSFの「JavaOne 2004」でデスクトップアプリケーション向けの4つの新技術を発表し、それらをオープンソース化し、Java.netで公開するとした日でもある。
まなじりを決してBlogを始めることで、改革者としてイバラの道を進み、自身の言葉をステークホルダーに直接伝え、そしてフィードバックをもらうことで病めるSunを回復のトラックへ戻そうとするトップの姿が見えてくるようだ。

一部のグローバル企業のトップは公式WebやマイクロサイトにビデオやFlashで登場し、マーケティング戦略を説明するGEのCEOなどもいた。しかし、日本のCEO、COO、CMO、SVP、VPの大半の人たちの「書き言葉」はスタティックなWebページに掲載され、何年もそのままのことがある。

トップセールスとはしばしば聞かれるが、その中でもSchwartzは、世界中で最も知られ、影響力を持つトップセールスマンであり、トップPRマンだということになる。日本のグローバル企業のトップが来年早々には世界を対象にしたトップセールスを開始することに是非、期待したい。

2006/12/13

Coca-Cola Wishcast Campaign

Experiment #214におけるDiet CokeとMentosのバイラルビデオ効果に気を良くし、Coca-Colaが「Holiday Wishcast」を開始した。YouTubeと初めて提携し、ホリデービデオの投稿をユーザに呼びかけている。また、Cokeが用意したビデオ、あるいはLisaNova、Geriatric1927、RenettoなどYouTubeで最もポピュラーなビデオBlogger6人が作成するビデオをEmailで友人などへ送ってもらい、グリーティングビデオとして使ってもらおうと言う計画だ。当然、EmailがCokeのブランディングとなる。
Coca-ColaのグローバルインタラクティブマーケティングのVP、Tim Koppが、YouTubeで「Wishcast」を説明している。わざわざマーケティングのVPがビデオに出演し、ビデオグリーティングカードを世界中のみんなと共有しましょうと語っている。Coca-Colaが本腰を入れてマーケティング戦略にバイラルビデオを取り入れてきたことが分かる。

Ad WeekでKoppは、「人々とつながることがブランドにとって重要だ」、「マーケティングの観点からすると、我々は的確なリスクとリターンを計りにかけてきた」と語っている。

Source:Ad Week / Coke Uses YouTube Stars for Holiday Campaign
参考:Coca-Cola / Wishcast
参考:YouTube : Coca-Cola Holiday Wishcast

Fritz GrobeとStephen Voltzが行ったDiet CokeとMentosの噴出実験は、まずMentosが飛びつき、ようやくそのバイラルビデオ効果を無視できずCokeも「Expeiment #214」で追随した。Mentosが飛びついた後も、しばらくは自サイトをYouTube似のCGM (Consumer Generated Media) サイトへ改修してはみたものの、10月になりFritz GrobeとStephen Voltzを招いてChallengeというコンテストを開始していた。そして、10月30日、RevverとGoogle VideoでExperiment #214が公開され、Googleだけで約320万回視聴されるヒットとなった(視聴回数は12月12日時点)。

参考:Crowdsourcing
参考:Coca-Cola Challenge

Koppが語るようにBlogやSNSをブランディングプロモーションに使うリスクとリターンがある。それは何を書かれ、言われ、何が多くの人々に伝播、広がっているのかブランド側でコントロールできないからだ。Cokeのような企業でもMentosの対応、Experiment #214の実績を見た後でなければ、なかなか踏み出せなかった理由もわかる。

しかし、Cokeはそのリスクとリターンを天秤にかけた結果、バイラルビデオを積極的に推進し、今年のホリデーシーズンのキャンペーンに取り入れてきた。そこにあるのは、やはり、トップダウン方式のマーケティングではなく、ボトムアップ・グラスルーツ方式のマーケティングに変えていかなければならないという判断ではないだろうか。コントロール不能のCGMによりブランドイメージを損なうリスク、CGMという新しいプラットフォームでブランドを生かすことによるリターン、そして既成メディアを凌駕する市民メディアのパワーを活用するメリット。その他、既存マーケティング戦略との調整、Webサイト改修・管理、ユーザDB構築など等、コスト面やその他を検討した結果が「Wishcast」になったわけだ。

さて、Cokeの判断、戦略を側面から支援、補強するデータがある。これはKeller Fay Groupが出している「Single Souce WOM Measurement」という調査データだ。

人々がブランドについてどう言っているかを調査したところ、消費者の62%はブランドに対して肯定的なコメントを発している。否定的な10%の6倍もの消費者は、使いやすいとか、格好いいとか、可愛いとか、長持ちだとか、とにかく良い点や気に入った点をクチコミするのだ。業界別ではCPG(Consumer Packaged Goods)が特に肯定的で、最も肯定的ではないのは通信機器だそうだが、平均すると消費者は否定的なコメントよりももっと肯定的なコメントを発している。
Source:Keller Fay Group LLC / Single-Source WOM Measurement

どのようなグローバル企業にしても、否定的なコメント、クチコミ、悪評はあるだろう。しかし、ユーザビリティ、機能、価格、サポートなどでユーザの信頼を勝ち取ってきた企業が、一部の全否定主義者を恐れることはない。それに数十倍するファンがブランドを広めてくれるのだ。

また、すでに企業がコントロールしようが、しまいが、消費者・ユーザはブランドを取り込んだコンテンツを製作し、発信、共有、交換、普及している。もう誰も止めることはできない。この現状に目をつぶり、殻に閉じこもったままで過ごすのか、新しいブランドマーケティングの核として取り組んでいくのか、戦略が問われている。

2006/12/12

E-Press Release

先日、「Fair Trade」で今後のPRについて取り上げたので、実際のところ、欧米企業のE-PR (Press Release)はどのようになっているのかを見てみる。

下はMultiVuのMultimedia News Releaseのサンプルとして挙がっているGAPのプレスリリース例だ。
通常のボディテキストは左側、右側にMediaplayer、Real Player用のストリーミングファイルを配している。
下のほうへ行くと、画像ファイルのダウンロード、del.icio.usへの投稿ボタン、コンタクト先と、関連リンク先が表示されている。
基本的なE-PRレターのサンプルだ。少なくともこれくらいのアイテムがなければ、受信側でいろいろと手間をかけなければデータが集まらず、それだけ掲載される可能性が低くなってしまう。

ただし、この例にしたところで、担当者の電話番号しか記載されておらず、Emailアドレスや企業BlogのURLもない。メールで転送させるボタンもないし、ストリーミングはユーザ個人で完結してしまい、YouTubeでバイラル化することもできない。折角、GAPのブランドクリエイティブディレクターやマーケティングのVPが顔を出し、その意図や目的を語っている価値が半減している。もったいない。

次に、Edelmanが提唱するソーシャルメディア版のニュースリリースを作成するStoryCrafterというプレスリリースウィザードを使ったニュースリリースを見てみる。
まず、Edelmanは、コアニュースファクト、引用、マルティメディア、リンク、RSSフィード、リソース、Technoratiタグ、発信者説明、コンタクト先、トラックバックとコメントという10アイテムを列挙している。
  • ニュースのコアとして、リンク付きで会社名、Wikiのタグ、Technoratiのタグ、開発部署、StoryCrafterのベータテスターなどを紹介
  • 引用

  • マルチメディアとしてPodcast、ベータテスト風景、StoryCrafterのスクリーンショットなどをリンク
  • リンクとしてGoogleグループ、Yahoo!グループへリンク
  • RSSフィードとしてEdelman自身のRSSフィードとTechnoratiのタグフィードをリンク

  • リソースとしてdel.icio.us、およびDiggへリンク
  • TechnoratiのEdelman、ソーシャルメディアニュースリリース、SMNR、ニューメディアリリースタグへリンク
  • Boilerplateとしてニュースリリース発信者を明示
  • コンタクト先として、電話、Emailアドレスを明示
  • トラックバックを明示し、コメント追加機能を提供
参考:PRNewsWire / Multimedia News Release Sample Page
参考:Edelman / Social Media News Releases
参考:Fair Trade

Edelmanはソーシャルメディア版ニュースリリースを、「ハイパーリンク、ソーシャルブックマーク、マルチメディア、コメントやトラックバックという ソーシャルメディア機能を搭載することで、従来からのニュースリリースと新しい通信フォームを合体させ、橋渡しを行う次世代ニュースリリース」としてい る。

さて、Edelmanのものは上記リンク先のコメントにもあるように現在、使われているものを全て集め、体裁よく配置しただけだが、アイテムとしては利用可能なものを網羅しており、雛形としてこれで不足はない。

紙、あるいはpdfベースで海外広報活動をまだ行っている日本のグローバル企業と、欧米企業とのオンラインPR露出ギャップはオンライン広告露出のそれよりも大きく、PRギャップは解消する糸口さえないのが現状だ。RSSフィードもなく、Podcastもなく、Webinarもなく、一時代前といわざるを得ない文字情報の提供だけでは、世界中のステークホルダーの情報収集網からこぼれ落ちてしまっている。情報を既成メディアに提供するのではなく、既成メディアに加え市民メディアにも受信、転送、発信してもらう仕組みを活用している欧米企業のトレンドも無視されているかのようだ。

今年のANA総会では「使い古されたトップダウン方式のマーケティングではなく、ボトムアップ、グラスルーツ方式のマーケティングへ変えていかなければならない」という声が溢れていた。この動きを加速させたのは、メディア消費を一層変革しつつあり、メディアを支配し、情報を垂れ流してきたブランドによる消費者支配にも影響を及ぼしているSNS、Blogといった市民メディアだ。

ブランド支配が消費者の手に移りつつあるように、PRも企業が一方的な出し手であり、そのフォームも十年一日変わらないといった形では情報を受け入れてもらい、消費してもらうことは難しく、世界中のステークホルダーに説明責任を果たすことはできない。

参考:Letting Consumers Control Marketing : Priceless
参考:Infection、Endemic and Pandemic

2006/12/11

New Revver : New Viral Flow

バイラルビデオネットワークのRevverが新しくなった。

まずWebサイトを刷新した。
ご覧のように新しいシステム、Upload、Share、Earnを説明し、その下にRecently Added、Editor's Picks、Most Watched、Featured Collection、Featured Creatorsなどのセクションがある。

以前は、Diet Coke and MintosなどのクリエーターとRevverがスポンサーからの金を分け合っていたシステムだったが、これからは
  • クリエーターに40%
  • シェアラーに20%
  • Revverに40%
と、ビデオの視聴者兼バイラル化協力者もその分け前に与れる。そのヒント、チップとして次を推奨している。
  • MySpaceやFacebookのプロファイルにコメントとしてビデオをアップ
  • 自分のBlogのサイドバーにお気に入りのビデオを入れたWidgetをポスト
  • 好きなタイプのビデオをPodcast
  • 毎日、友人にお気に入りビデオへのリンク付のEmailを送る
  • iTunesやDemocracyに自分のビデオをPodcast
  • del.ico.usやdigg.comなどのソーシャルブックマーキングやニュースサイトに自分のビデオを投稿
ビデオのクリエーターだけではなく、視聴者にもビデオのバイラル化を働きかけ、相応の謝礼を払うというシステムだ。どこまでバイラル効果を高める効果があるのかは未知数だが、すでに11月からRevverは英国のSky Digital Networksで始まった「Fame TV」と提携し、ビデオを供給している。

Source:Revver Blog / Fame TV live this week

これが今後、クロスメディアでのバイラルフローとして確立していくと非常に面白いことになる。また、企業側としてもオリジナルコンテンツ以外に、可能性のあるビデオを選択し、その可能性にかけることができる。Revverがビデオの配給先として既成メディアを取り込むことができればできるほど、そのチャネルとカバー範囲、訴求対象が広がっていくことになる。

Business WeekがGoogleとBSkyBが提携し、BSkyBユーザにカスタム化したWebサービスを提供すると伝えているが、GoogleがWebに特化している限り、今のところRevverのクロスメディア提携の方が影響は大きい。

参考:Business Week / BSkyB, Google to roll out customized services

2006/12/08

EIAA Mediascope Europe 2006

EIAA (European Interactive Advertising Association) は、ヨーロッパのEU9カ国とノルウェーの7,036人を対象にCATi (Computer Aided Telephone Interview) を使ったMediascope Europe Studyを9月4日から25日にかけて行った。

ヨーロッパにおける人々がどのようにメディア時間を消費しているかを示す包括的な調査であり、消費者がコンテンツ、通信、商取引にどのようにインターネットを利用しているかを明らかにしている。

サマリ
  • ヨーロッパの人々のインターネットとの関わりは、メディアとして誕生し、成熟するにつれてコンスタントに変化している
  • 消費者の個人生活の一部として浸透するにつれ、インターネット電話、IM、オンラインフォーラム経由のソーシャルネットワーキングと個人的な付き合いを確立することが、一層、インターネットの存在を大きくしている
  • ヨーロッパ中でブロードバンドが普及しだし、オンラインで消費する時間に大きなインパクトを与え、旅行、Blogging、価格比較、ラジオ、そして音楽ダウンロードなど、オンラインWebサイトの利用に貢献している
インターネット利用
  • ヨーロッパのインターネットユーザの45%は、毎日、オンラインへアクセス
  • 平均的インターネットユーザは週に11時間20分オンラインへアクセス(昨年の10時間15分から11%増)
  • 平均的インターネットユーザは、週に5.4日オンラインへアクセス
  • オンライン時間の70%を個人、30%を仕事で消費
変化するオンライン目的先
  • ブロードバンドが普及し、インターネットが提供するマルチメディアコンテンツ、サービスを消費する機会が増加
  • SNS系Webサイト利用は23%が最低月に1回アクセス。価格比較、ローカル情報、ニュース、IT系Webサイトの利用もかなり増加
  • アクセス活動のトップは検索、IM、音楽ダウンロード、そしてラジオ聴取
    • オンラインフォーラムへの参加は前年比30%増
    • 31%が最低、月に1回は音楽をダウンロード
    • 15%がVoIP利用-前年比50%増
ブロードバンド
  • 10ヶ国平均で75%がブロードバンド化
  • ブロードバンド普及率は前年比14%アップ
  • 29%のダイアルアップユーザは、12ヶ月以内にブロードバンド化予定
  • 高ブロードバンド普及率国のユーザは、インターネットを娯楽目的で使用する頻度が高い
メディアへの対応
  • 47%は欲しいものを即座に見つけるメディアとしてインターネットを選択
  • 下記の設問にもっともマッチするメディアは何かと問われて
    • 47% 欲しいものを即座に見つけるメディア
    • 44% 欲しいときに欲しいものがあるメディア
    • 28% 自分がコントロールできるメディア
    • 36% 人より先へ行けるメディア
    • 21% 頭がもっともアクティブなときのメディア
(注:グラフにInternetという凡例がなかったため追加した)

Source:EIAA / Mediascope Europe 2006 Executive Summary

さて、平均的インターネットユーザは週に11時間20分オンラインへアクセス(昨年の10時間15分から11%増)という結果が出ているが、BBCが伝えるGoogleの調査(英国)によれば毎日、平均164分をオンラインで消費している。年間に換算すると41日間、オンライン漬けという状況になる。TVは148分なので、年間37日ということになる。
年代別では16-24歳の消費時間の増加が最大。男女比では男性が172分、女性が156分だ。地域的に見るとロンドン近郊で毎日、181分となっている。

BBCの記事は今年3月8日のものだが、少なくとも英国では、もはやTVを追い抜き、メディアの消費時間ではトップに立ったのがインターネットということになる。

参考:BBC / Super surfers oust couch potatoes

2006/12/07

DoubleClick Touchpoint IV

デジタルメディアがどのように消費者の購買判断に関与しているかを明らかにするDoubleClickの調査データ、Touchpoints IVが出ている。

この調査は過去4年にわたり、消費者の購買判断を決定するプロセスに影響する様々なメディアとファクターを特定し、定量化してきた。重要な点は明らかに、Webサイト、検索エンジン、広告、Email、専門家や消費者自身の評価といった広範な形を取るインターネットが、最初の認知から最終的な判断決定までのプロセスにおけるすべてのステージで高い影響力を及ぼしていることだ。
事実、オンライン、オフラインの両方での購買にWebがどのファクターよりも影響を及ぼしているとしている。

消費者購買漏斗のキーステージ
初期認知、情報収集、購買判断という製品・サービスの購入意思決定プロセスの全てで企業Webサイトがもっとも影響している。これは前回、3回目のTouchpoints IIIの結果と同じだ。
Webサイトは購入決定に最大の影響
18%が新しい製品やサービスを購入する際、Webサイトでの調査がもっとも購入に影響したと回答している。製品やサービスをショップなどで実際に見たという15%よりも高い影響力を及ぼしていることがわかる。3番目にWOM (クチコミ) が入っているのが注目される。
消費者はオンライン広告をクリックするよりもショップやWebサイトへ行く
67%がオンライン広告を認識し、ショップなどで実際にその製品を見ると回答している。また、61%はオンライン広告を認識し、クリックスルーではなく、後でビュースルー(その時点で広告をクリックせず、後で直接広告主Webサイトへアクセス)するとしている。
オンライン広告をクリックすると回答したのは30%で、ビュースルーはクリックスルーの2倍に達している。DoubleClickは、実際の多くのキャンペーンでの結果と同じだとしている。
消費者は初期認知時よりも、調査時のソースとして広告に価値を見出す
例えば、回答者の0.75%はラジオ広告を最初に製品を知ったタッチポイントとして挙げ、3%が製品をより知ろうとして使ったタッチポイントしてラジオを挙げている。このことは、製品を初めて知ったタッチポイントとしてより、より知ろうとして使ったタッチポイントとしてラジオ広告を4倍も評価していることを表わしている。
この最初の認知時と次の調査時の比率差が大きなものを左から並べている。

同様に検索エンジンも初期認知時よりも、調査時に4倍の価値を見出している。3倍の価値があるのはセールスマン、そして2倍以上の価値があるのがWebサイトとオンライン広告となっている。
TV広告、WOM (クチコミ)、DMは初期認知時も、次の調査時にも同じような評価となっている。

しかし、絶対値から見ると初期認知時のトップは、実際のショップ、Webサイト、WOMが続き、調査時にはWebサイト、実際のショップ、検索エンジンが続いている。
Source:DoubleClick / Touchpoint IV : How Digital Media Fit into Consumer Purchase Decisions

さて、企業Webサイトは製品・サービス・ブランド情報の宝庫だ。企業のプロファイル、M&A、開発、海外展開網、Sustainability・CSR・Corporate Citizenship・Community、ニュースなど、ありとあらゆる情報が詰まっている。それは消費者も理解しているから購入目的の製品を調査する際、一番向かうのは企業Webサイトになる。そして最終的な購入判断にもWebサイトが最大の影響を与えているわけだ。

初期認知(露出)時にどのメディアであれ、タッチポイントであったとしても、そのブランド・製品・サービスなどが十分に認知、理解されていれば、情報調査時には企業Webサイトへ行くことになる。また、オンライン広告を露出された時点で興味がなくても、そのブランドなどが十分に認知、理解されていれば、後でWebサイトへアクセスする。だからクリックスルーよりもビュースルーするユーザ比率が2倍も高いことにうなずける。

どのメディアにしても露出がなければ、引き合いも、製品販売もない。露出による自然想起や他の複合露出などによる助成想起がなければ認知、理解されない。情報収集される候補にもならない。それだからこそビュースルーの前提はページビュー(PV)であり、投下したPI(ページインプレッション)、すなわち露出量ということになる。露出することによりクリックスルーも、ビュースルーも生成されるわけで投下するPIがすべての起点、初期認知ということになる。オンライン広告効果の本質は、クリックスルーだけではなく、ビュースルーもあわせて影響を及ぼすPIだといえる。

最近はCTR (Click Through Rate) が低下することに不満を募らせる広告主もいるらしい。しかし、露出サイトに投下するPIはどれほどなのだろう。例えば、2005年のYahoo.comは3,000億PIを集めていた。単純計算すると月間で250億PIだ。1ヶ月キャンペーンでYahooに1,000万PIを投下したとしてもサイト全体の0.04%にしかならない。どこに出ていたのか分からないほどの露出量だし、これでは競合の膨大な露出の影に隠れてしまい、自然想起の種になるのも難しい。

オンライン広告に投下される膨大な露出に伍して期待するCTRを獲得するには、相応のPIが必要だ。相応のPIによる露出を蓄積していかなければCTRは生まれてこない。例えば、Dellは2003年Q4から2005年Q3までの2年間に約520億PIを投下、露出している。この膨大な蓄積された露出の上に2006年の露出がある。また、TVなどその他の媒体での複合露出もある。それを考慮せず、ほんの一握りにしか過ぎない露出量でCTRが低いと言うのは、他企業の露出を無視し、自社のオンライン蓄積量と露出量を過信している。

ところで最近、MicropersuasionでSteve RubelがAjaxやFlashなどによりページビューがカウントされないとして、ページビューに差し迫る危機という記事を書いている。GmailやGoogle ReaderなどのようにWebページの遷移なしでユーザがあれこれできるサイトの場合、ページビューはそれに適した測定方法を提供できない。GoogleやMSは、インタラクティブでページをめくる必要を減らすプラットフォームをプッシュしているし、ESPNやNYTはMyTimesなど独自のインタラクティブなプラットフォームを導入している。これから広告費を獲得するためページビューを代替する測定方法をみんなが探しまくる。お楽しみにと書いている。

ここがどうも理解できない。NYTのMyTimesにしても、GoogleのPersonalized Homeにしても見出しを呼び込んできてはいるがコンテンツへのアクセスはオリジナルサイトへアクセスすることになっている。
Google Readerにしたところで、Expanded Viewにしても第一文節の40文字くらいまでしか表示していない。オリジナルコンテンツを読むにはクリックし、別ウィンドウを開くことになり、ページビューを生成することになる。また、「GoogleやMSは、インタラクティブでページをめくる必要を減らすプラットフォームをプッシュしている」とは思えない。

メディアサイトであるESPNやNYTがPVを減らすシステムを導入することは自分の首を絞めることになる。そんなことをするTV、新聞、雑誌社、ポータルサイトがいるだろうか。

Ajaxはページ更新をするためWebページ全体をリロードする必要性を減らしているだけだ。それがPV減少につながるとしているが、ユーザはリロードとは無関係に必要なコンテンツはクリックして消費し、PVを生成するだけだ。

PVが低下しているとしても、それはなにもAjaxやFlashによるものではない。既成メディアサイトへ行っていたトラフィックがSNSやBlogへ向かっているということだ。インターネットユーザが10億を超えたとは言っても、10月時点で5,700万を超え、半年くらいで総数が倍増しているBlogへ向かうトラフィックが増えているということだ。オンラインコンテンツが豊富となり、一部特定メディアサイトへ集中していたトラフィックが分散しているというだけだ。特に中小サイトであれば、SNSおよびBlogへのトラフィック影響を大きく受けて、PVが激減していてもおかしくない。

独立系最大手PR会社、EdelmanのSVPであるRubelの記事を、オンライン広告に比べ比率の低いPRに向けようとした意図だと変な邪推はしないが、彼の記事に納得がいかない。

2006/12/06

Fair Trade

Oxfam Internationalは、1942年に設立されたOxford飢饉救済委員会に起源を持ち、1995年に創設され、現在世界100カ国以上に3,000以上のパートナーを抱える13の独立したNGOが構成する貧困根絶および社会正義を推進する団体だ。

そのOxfamが推進する活動に「Make Trade Fair」がある。今、Webサイトのフロントページを飾っているのは、「Access to Medicine」、「Tell Starbucks」、「AIDS」だ。

2001年の30年来というコーヒー価格の暴落により、作っても、作っても、コーヒー農家の取り分は下がり、世界中で多くの農家が大きなダメージを受けた。発展途上国のコーヒー農家が受け取るのは栽培コストの60%にしか過ぎないと言われている。そのため2001年からOxfamは、世界中のコーヒー栽培農家の売り渡し価格を上げて生活レベルを改善しようとするキャンペーンを実施してきた。

さて、昨年、エチオピア政府は、コーヒーの商標権を元に、年間8,800万㌦の収入増を果たそうと商標登録申請をUSPTO (US Patent and Trademark Office) に行った。ところが、Starbucksが主要メンバーであるNCA (National Coffee Association of USA) が商標登録に異議を唱え、USPTOは申請を却下した事件があった。

そこで、Oxfamは、「Tell Starbucks」というエチオピアのコーヒー農家に公平な取り分を確保しようという活動を開始したわけだ。世界中から8.5万人以上の人々がOxfarmのキャンペーンに賛同し、StarbucksへEmailやFaxを送った。そしてようやくStarbacksのCEO、Jim Donaldとエチオピアの首相Meles Zenawiとの会談が11月29日にもたれたようだ。しかし、エチオピアの商標登録が受理されるまでキャンペーンは続けられるだろう。

下はOxfamの生花、チョコレート、ドルキャンペーンバナーの例。




Oxfamが行う様々な活動に賛同する人々の数は、インド、エチオピア、バングラデシュ、ブルキナファソ、ザンビアなどの発展途上国、そして先進国を合わせて1,780万人を超えている。

Alexaによれば、「Make Trade Fair」へのリンク数は968。Technoratiによれば、Oxfamはランク2,641位、698Blogから2,791個のリンクを受けている。

もはや企業活動は特定国、地域で完結するものではない。グローバル化している企業にとって「Fair Trade」はCSRとも通じ、今後、企業活動の重要な節目になってくるだろう。いかに企業がFairで、社会的な責任も果たしていることを世界へ向かって発信していくことが重要だ。オンライン広告だけではなく、広報・PR面からもインターネットの規模、スピード、インパクトを認識する必要がある。

極論だが、プレスリリースを既成メディアへ発行しているだけ、Emailでのアラート配信もなく、RSSフィード化もされていなければ、10億人のインターネットユーザに届くことはない。流通、共有されるオンラインコンテンツとして配信しなければ、転送してくれるユーザもいない。

下は、米国のSave the Childrenが2006年3月21日(18:37)に発信したHTMLメールだ。写真をふんだんに使い、見やすく、分かりやすい。
また、Emailの最下部には、Webサイトへアクセスして友人にもこの件を伝えてほしいこと。友人からこのEmailを転送されたならぜひ、Save the Childrenにサインアップしてほしいことなどが表示されている。
企業の広報・PRニュースレターにも当然、これらバイラル属性を持ったEmailアラート・ニュース発信が必要だ。参考:Make Trade Fair
参考:Oxfam
参考:DMA (Direct Marketing Association) / E-mail Fundraising for Nonprofit Organizations
(pdf 注:ダウンロードにはユーザ登録必要)
参考:Global Compact and ISO 26000 (CSR)
参考:Why CEOs should learn to love the blog