2008/08/29

The End of Advertising

「The End of Advertising as We Know It」というちょっと刺激的なタイトルの資料がIBM Global Business Servicesから出ている。全世界2,800人の消費者、および80人の広告業界のエグゼクティブを調査したもので、2007年の11月に公表されたものだ。
この資料は、「過去50年間に起こったことよりも、今後5年間に広告業界に起こる変革は大きい。力を持った消費者、独立独歩色を強める広告主、そして変革を継続する新技術が、どのように広告が販売され、消費され、追跡されるかを決定する。消費者、ビジネスモデル、ビジネスデザインにおける革新をうまく実装していかなければ、伝統的な広告業界のプレイヤー、TV局、広告代理店などは弾き飛ばされるかもしれない」というイントロから書き起こしている。

IBMは次の4つを広告、広告業界の地殻変動要因としてあげている。
  1. Attention
    マルチチャンネル世界の消費者は広告をどのように見て、どのようにやり取りし、フィルターするかというコントロールを行っている。リニアなTVから注意を逸らし、広告をスキップする。すでにPC利用時間はTVを上回っている。71%は毎日2時間、19%は6時間以上PCを利用するが、TVはそれぞれ48%、9%でしかない。
  2. Creativity
    オンラインビデオを視聴するサイトの中で、UGCサイトが回答者の39%を獲得してトップ。アマチュア、セミプロなどが新しい低価格の売上収入分配モデルでクリエイティブに参入。広告代理店制作のクリエイティブよりもアピールしている。雑誌やTV局は広告主と提携し、広告代理店を中抜きして、UGCを活用した戦略キャンペーンを実施し始めている。
  3. Measurement
    広告主はより一層、個人を特定し、関与度を測る測定を求めてくる。三分の二の調査対象者は、3年以内にインプレッションベースからインパクトベースへ、広告予算の20%が移行すると予想している。
  4. Advertising Inventories
    検索広告、アドネットワークなど新規参入により、半数以上の広告関係調査対象者は5年以内に広告発注の30%がオープンプラットフォームに移行すると予想している。
そして、毎年、「The State of News Media」を出しているJournalism.orgがある。2008年版のレポートに「Special Report」というセクションがあり、そこで「広告の将来」が語られている。
  • メディア環境で起こっている変化に、どのように対処すべきかを知っている人間は少ないし、これから起こる変化に関しては一層、少ない。
  • 分かりやすくいえば、「マスメディアというコンセプトは終了した。それを何が代替するのか?その際、広告がどのような役割を果たすのかはまだはっきりしていない」
Source:IBM / Digital Consumer Study (pdf)
Source:Journalism.org / The State of News Media 2008 (Special report)

オンライン広告が、広告全体に及ぼす影響が見えている。Web/Blog/Podcast/Webcastなどで個人がメディア化している。メディア化した個人がコンテンツ流通をコントロールし、マスメディアや企業が制作したコンテンツを凌駕する勢いで広がってゆく。ここにマスメディア以上のパワーが潜んでいる。

IBMやJournalism.orgがいうように、広告やマスメディアは死語となりつつあるのだろうか?多分、そうなる業界、広告主がいるし、そうならない業界、広告主もいるということだ。あるいはそうさせない広告業界がいると言い換えてもいい。

しかし、Accountability、広告効果測定および評価、ROIの可視化、投資の正当性といった段になると、もうフォーカスグループや、たった数千の視聴者ベースの話で納得する広告主は多くはない。

従来同様のビジネス、業務で来年は迎えられても、再来年は危うくなり、3~5年後には鮮明になっているのではないだろうか。危機意識のある代理店の人はいるのだろうか?

2008/08/28

Online Ad Spends in Europe 2007

テキストだけのプレスリリースは6月2日に出ているのだが、昨年の欧州16カ国のオンライン広告費のIABのデータ(グラフ)が入手できたので紹介する。

2006年の72億ユーロから40%も増えて2007年は112億ユーロに達している。米国は26%伸びて145億ユーロだ。このままの伸びが続けば2010年には欧州がUSのオンライン広告費を抜くと予想している。
このオンライン広告費の三分の二(65%、74億ユーロ)は英・独・仏からだが、伸び率の上位はギリシャが91%、スペインは55%、スロベニアは49%だ。市場規模が小さいとはいえ、とてつもないと言ってもいい伸び率だ。

次に各国ごとのオンライン広告比は18.5%のオランダを筆頭にポーランドまで7カ国がすでに10%を超えている。2010年までには合計10カ国が10%ラインを超えると予想している。
そして、一人当たりのオンライン広告費はノルウェーが133.2ユーロ、英が120.8ユーロ、デンマークが109.5ユーロだ。USの91.9ユーロを上回っている。
Source:IAB Europe / Online Ad Market 2007 (Doc)

今回からデータを取り始めた業界ごとのオンライン広告費は、エンタメ&レジャー、通信、金融&保険がトップ。中でもエンタメ&レジャーが群を抜いているようだ。

2008/08/27

Green Mind in UK

昨日、紹介したOfcomのデータには「Communications and the environment」というセクションもある。

UKでは2020年には、TV、携帯電話、ゲーム機、コンピュータなどが家庭で使用する電力の45%を占め、2008年の30%増になると見込まれている。

通信機器を購入する消費者にとっても「環境問題」は避けて通れないどころか、まず考えなければならない重要なポイントだが、なかなか一枚岩というわけではない。消費者にとって見ると機器を廃棄する際はグリーンを考えるが、購入時にエネルギー消費を比較するのが難しく、使用時のエネルギー消費を減らす方法をとっている消費者は少ないといった具合だ。

たとえば、三分の二(72%:Agree Strongly+Agree)の消費者は環境を考えて生活を送り、54%は洗濯機や食器洗機などの白物家電を購入・廃棄する際、環境にやさしいものはどちらかを比較している。
家電を廃棄する際は環境に配慮するのは74%だが、使わないときに家電製品のスイッチを必ずオフにするのは27%(Agree strongly)だし、購入する際は、機器のエネルギー消費を比較することが難しいので購入の判断ではまだ小さな役割(39%:Agree strongly+Agree)しか果たしていない。
各製品のスイッチをオフにするかどうかを見ると、無線ルーターのスイッチを入れっぱなしにしているのは63%、セットトップボックスも43%、デスクトップは19%、ノートPCは14%が入れっぱなしだ。
Source:Ofcom / Communication Market Report -1 (pdf)
Source:Ofcom / Communication Market Report -2 (pdf)

どこの国でも同じ問題を抱えている。家庭で使われる家電・通信機器が多くなればなるほどスイッチを入れっぱなしで電気を消費している。これじゃ、いくら政府がエネルギー節約の旗をふってもエネルギー消費は抑えられない。

レポートではEUの「Eco」ラベル、CRT/Plasma/LCD TVの消費電力比較、家電などの回収サービスを紹介しているが、「どこそこに行けばあります。比較できます。分かります」といった露出では一般消費者には訴求しないだろう。意識の高い消費者の活動グループやNGOなどのほうが影響力がありそうだ。

だからGreenpeaceがやっている「Greener Electronics Guide」から目が離せない。

参考:Green Electronics Guide 2008 June (Online Ad 2008/08/13)

2008/08/26

Internet in UK 2007

Ofcom(英情報通信省)が最新の通信市場レポートを発表した。

その中に広告市場を詳しく見ているデータがある。それによると英国の広告市場は2007年に6.3%増加し、£149億に達している。これは過去3年間で最大の伸びとなっている。中でもインターネットは£28億に達し、前年比39.5%の大幅な伸び、過去5年の年平均成長率は70%を超えている。

TVの総広告費は£40億だが、 ITV1、Channel 4、S4C、Fiveの地上波TVだけでは£24億となり、インターネットが初めて地上波TV広告費を抜いた。
新聞は£47億で最大カテゴリなのは変わらないが、シェアで見ると31.3(注:Ofcomのpdf本文は31.8となっているが、下のグラフでは31.3となっている)%に落ち込み、初めて三分の一を下回った。インターネットだけが前年の14.4%シェアから18.9%へ伸ばしている。メディアシフトがいよいよ鮮明になってきた。
各国で一人当たりのオンライン広告費を見ると、UKの€357(オンライン広告比率18.9%)がダントツだが、スペインは€170(同16.9%)で続いている。それ以外は米国の€407(同12.6%)、日本の€219(同10.1%)だ。

Ofcomはインターネット広告の増大をUK独自の現象だとして、下の比較を行っている。しかし、これを過去のUKのインターネット広告比率から見ると、たとえば独・仏はUKの4.5年遅れ、伊は4年遅れ、日本が3年遅れ、米が1年ちょっと遅れていると見ることもできる。UKの実績、事例が他国企業の参考となるから、今後、このギャップは急速に縮まるだろう。
£28億のうち、「検索広告」は£16億(前年比39%増)は、「ディスプレイ広告」と「その他案内広告」は£6億でそれぞれ29%増、54%増だ。「検索広告」が最大であるのは間違いない。

しかし、オンラインコンテンツに金を払いたくないユーザが多数を占めていることから、オンラインで供給される無料TV番組を支える広告が伸びている。この傾向で行くと、「ディスプレイ広告」が今後、急増してゆくのかもしれない。
Source:Ofcom / Communication Market Report -1 (pdf)
Source:Ofcom / Communication Market Report -2 (pdf)

2008/08/25

US TV Ad spending in 2008 Q2/H1

TVB (Television Bureau of Advertising) Onlineから2008年Q2のTV広告費データが出ている。

Q2は全体で前年比4%減(約5億㌦減)の110億㌦だ。上半期H1も前年比1.3%(約4億㌦)減の229億㌦となった。
カテゴリ別にH1実績を見ると、自動車が15%減、Car&Truckディーラーが8.8%減など上位4カテゴリすべてが前年比減となっている。
Source:TVB Online / Q2 2008 TV Ad Revenue Figures

GMのH1を見ると約12%減の1.7億㌦だ。昨年から2,000万㌦減らしている。

Ad Ageの3月18日に「GM Roars Forward Into Digital Ad Channels」という記事があった。それは今後2~3年間のうちに、年間30億㌦の広告予算の半分を、TVおよび印刷媒体からデジタルおよび消費者ダイレクトチャネルへ移行するというものだ。GMは過去数年間で数億㌦をTVおよび印刷媒体から引き上げ、デジタルおよび消費者ダイレクトチャネルへ投下している。

GMのオンライン広告だけを見ても昨年は1億9,700万㌦だった。これが今年倍増するのかもしれない。

Ad Ageは同じ記事で韓国の現代自動車も2007年の2倍のオンライン広告を投下すると書いていた。「30秒のTVスポットよりオンラインが重要になるポイントに近づいている」とマーケティングVPのJoel Ewanickが語っている。

このコメントは自動車メーカーだけに適応するわけではない。

2008/08/22

US Mobile

米国のモバイル事情をCTIAのSemi-annual studyから見てみると、1985年12月に34万人だった契約者数は昨年末で2億5,500万人を超えている。3億をちょっと超えているのが米国の総人口だから普及率は80数%だ。InternetWorldStats.comによると、米国のインターネットユーザ数は2億1,500万人(普及率71.4%)なので、携帯ユーザはそれを超えている。
年間の通話時間は昨年で2兆分を超えている。毎年、17%の伸びだ。2億5,500万人が毎日約20分通話しているということだが、データ通信に関するデータは公表していない。
半年間の売り上げ総額(利用料金)は2007年で700億ドル、年間では1,380億ドルに達している。
CTIAが引用するOvumのデータによると2005年時点で6,880万企業ユーザのうち25%がブロードバンド化されている。そして2016年には8,190万企業ユーザのうち83%がBB化されると予想している。
Source:CTIA / Wireless Industry Survey (pdf)
Source:CTIA / The Economic Impact of the U.S. Wireless Industry on the U.S. Economy (pdf)

右肩上がりの数字のように見えるが、そうではない。すでに月の平均利用料金は1988年から下がり始め、1998年の平均39.43㌦を底に上昇したが、2001年以降約50㌦前後で推移している。今のところ携帯ユーザ数が増えてくれば総利用料金が増えるが、あと数年でその傾向も頭打ちになることは明らかだ。

AT&TがAppleのiPhone 3Gを独占販売して契約者獲得競争にしのぎを削っているのが分かるし、携帯市場が爆発しているインドの携帯市場へ進出しようとしているのも納得する。

Source:Economic Times / AT&T close to buying out Maxis in Aircel
参考:Mobile in India (Online Ad 2008/06/23)

グローバルに進出市場を開拓するのもひとつの戦略だろうが、もうひとつ、企業ユーザをどうやって獲得してゆくかも別な戦略にならないだろうか。

米国で言えば2016年までに約1,300万人増加する企業BBユーザにアピールするスピード、アプリ、サービスを提供できるかどうか、それをテコに全体で8,190万の企業ユーザのいくらを取り込めるかが勝負では...?

2008/08/21

Oracle Web 2.0

BMA (Business Marketing Association) の年次総会でOracleのSVP-CMO、Judith Simがキーノートで語った話をBtoB Onlineが7月に書いていた。
  • 過去10年間、マーケティング予算は削減されてきた
  • 10年前売上の5%だったマーケティング予算は、現在、1.7%
  • 来年の印刷媒体の比率は9%(そのほとんどはWSJ)、今年は22%、昨年は55%
  • オンライン広告の比率は36%、昨年は22%
  • 空港のOOH比率は29%、昨年は18%
  • 今年のイベント数は6,623(昨年比4%減)
    2008年度で34.7万人(前年比10%増)を集め、
    成約率は56%
    平均成約額は前年比149%増
  • 利用しているWeb 2.0はpodcast、ユーザフォーラム、そしてソーシャルメディア
    昨年からソーシャルニュースリリース(URL、ビデオ、Blogへのリンクつき)を開始
  • Oracleのフォーラム参加者は22%増え、書き込みは94%増加
Source:BtoB Online / Oracle CMO opens the book on marketing spending, ROI

Oracleは、印刷媒体への広告を削減し、オンラインおよびOOHに注力し、イベント集客力を高め、Web 2.0ツールを活用してオンラインのエンゲージメントを高めている。

最後に彼女は、「これはサイトのStickiness(ねばり、粘着性?どうもいい単語がない)だ。Web 2.0のおかげでより多くの人がより長い時間、滞在するようになっている。うまく行っている」と語っている。

B2B企業として参考になるのでは...?

2008/08/20

Hi Seoul Campaign

「Hi Seoul」というキャンペーンが始まっているようだ。

ソウル市が主催し、8月8日から開催しているハイソウルフェスティバル(夏:漢江祝祭)、8月末から開催されるフードフェスティバル、10月から開催されるソウルデザインオリンピックなどがある。それを中国、台湾、日本、それ以外の海外へ紹介しているのがHi Seoulキャンペーンだ。(下をクリックでサイトへ)

「Hi Seoul」には、「ソウルからのストーリー(Story from Seoul)」というセクションがあり、タイの写真家アヌチャイ・セチァルンプトン、中国の映画監督チェン・カイコー、そして日本の小説家村上龍がそれぞれソウルでの体験などを語っている。
ところで、上のバナーがどこに掲出されているかというと、それは「Cyberjournalist.net」だ。(下をクリックでサイトへ:もう、下のバナーは出ないと思うが...)
Source:Hi Seoul / Soul of Asia
Source:ソウル市
Source:Cyberjournalist.net

韓国のソウル市が、オンライン広告キャンペーンを行っていることよりも、Cyberjournalist.netのように少しニッチなBlogサイトにバナーを掲出していることに驚く。

ただし、今、訴求対象者がいるスペースがどこなのかを理解した上で掲出しているわけだから、それは納得する。自分のビジネス、個人的な興味に必要な、役立つ情報を提供するWeb/Blogサイトは国内だけではなく、世界中に存在する。最低、英語が理解できれば最新情報を入手することができ、人の先をいくことができる。そんなアーリーアダプター、インフルエンサーがアクセスするサイトを活用することを理解しているわけだ。

以前、取り上げたエントリでも韓国のサイトは香港のインターネットユーザがアクセスするサイトの上位を占めていた。日本の観光振興協会、Visit Japanはその後塵を拝していた。2年前でもそんな状況だったのだが、Web 2.0的アプローチをすでに実施しているソウル市を見ると、韓国企業のオンライン露出戦略も日本企業のそれを2~3歩は先を行っているように思える。

参考:Visit Britain, Visit Korea, Visit Japan (Online Ad 2006/09/08)

2008/08/19

CEO of Whole Food back blogging

去年の7月、「Whole Foods boss rumbled for annonymous posting」でWhole Foods MarketのCEO、John Mackeyが匿名でYahooのコミュニティで競合企業をこき下ろす書き込みをしていた件を書いた。

今年の5月21日に、ようやくJohn MackeyがBlogを再開したようだ。再開にあたり、「Back to Blogging」として、これまでの経緯を説明している。1997年あるいは1998年にYahooにWhole Foods Marketのコミュニティーがあることを知り、参加し始めた。当時、Whole Foods Marketのことを悪く言うユーザが多く、会社を守るためコメントし始めた。当時は、匿名でコメントするのが一般的であり、それに従っただけだとしている。

そして、以下のように詳述している。
  • 文脈ではなく一部だけを切り取って糾弾された
  • 自分が備える戦う精神が競合企業に言及しただけで、それ以外の競合企業にも言及していた
  • 私には自分の意見を表明する権利がある
  • 匿名でYahooコミュニティに競合企業に対してコメントすることは倫理的ではなく、判断の間違いだった
  • 大企業のCEOとしての公的立場をわきまえるべきだった
  • Oats株価を操作しようとしたとするのは誤った糾弾だ
  • Whole Foods Marketの株価を上昇させようとする操作だというのも間違っている
Source:Whole Foods CEO's Blog / Back to Blogging
参考:Whole Foods boss rumbled for annonymous posting (Online Ad 2007/07/20)

ま、彼の言い分を公表したということだ。最後に学んだこととして、「現在、個人的、社会的生活が一体化し、公的な立場に立っている。その一挙手一投足は新聞の一面を飾ることがある。それゆえ、私の言動が与える影響に注意しなければならない」としている。

再開後のエントリに対して今のところ49件のコメントがある。当然ながら肯定、否定的な意見がある。どんな言い訳をしても、謝罪したところで明らかになった事実を隠蔽することはできないし、思いもしないところから昔のボロが出てくるかもしれない。また、 モデレートされてはいるが、彼を糾弾するコメントでBlogが炎上する可能性もあったし、糾弾する書き込みコメントを非表示にすることでBlog社会のあちこちで彼を非難する合唱が沸き起こってくる危険性もあった。

しかし、彼はBlogを再開した。

多くの危険性も考慮したうえで、Blogを再開する、あるいは再開せねばならない理由は何だろう?
ここまで詳細に説明するエントリを公開してまでBlogを再開したかった理由は何だろう?

昔、Wal-MartのやらせBlogが暴かれたとき、その黒幕だったEdelmanのCEOは、たった一言、「当初から2人のBlogger のIDを明らかにしていなかったのはこちらの誤りで、クライアント(Wa-Martという名称は出さず)ではなく、100%我々の責任だ。今後は、 WOMMA (Word of Mouth Marketing Association) の透明性ガイドラインを遵守する」とBlogに書いただけだ。

参考:Wal-Mart Enlists Bloggers in P. R. Campaign (Online Ad 2006/10/19)

日本人なら、日本企業なら、EdelmanのCEO的な幕引きしかしないのではないかと思うが、Whole Foods MarketのCEOは、敢えて火中の栗を拾うに等しく、(彼の一方的な説明ではあるが、)詳細情報を公開した上でのBlog再開を選択した。

秤にかけられた数多くの再開するメリットとデメリットのうち、もっとも大きな比重を占めたのは、LenovoのグローバルWebマーケティングのVP、David Churbuckが語っているように「顧客の声を聞く」ことではないだろうか?

参考:YouTube Marketing : Lenovo (Online Ad 2008/08/14)

2008/08/18

Social Media in Inc. 500

マサチューセッツ大学ダートマス校のマーケティングリサーチセンターから、Inc. 500に選出された新進企業のソーシャルメディア導入に関する調査データが出ている。

2007年のInc. 500に選出された企業のソーシャルメディア導入実績を調査し、2008年に再調査して、1年間でどれくらいソーシャルメディアが浸透したかを明らかにしている。

まず、Inc. 500各社のソーシャルネットワーキングの理解度だが、2007年に42%だったものが、2008年には57%に上昇している。1年間でもっとも理解が進んだのはオンラインビデオで、31%から55%に伸びている。WikiもPodcastを上回る程度まで理解されてきた。
次に、実際の導入実績だが、2007年に何も導入していなかった43%が、2008年は23%にまで減少している。1年間で20%がソーシャルメディアを導入している。それだけソーシャルメディアが企業活動に必要だということだ。導入実績では、ソーシャルネットワーキング、オンラインビデオ、Bloggingが群を抜いている。
そして、各ソーシャルメディアの重要度を訊いている。当然、理解度が高く、現在のオンライン社会でソーシャルメディアが果たす重要な役割を十分に認識しているため「非常に重要」とするのが44%、「ある程度重要」というのが34%になっている。
Source:UMass / Social Media in the Inc. 500: The First Longitudinal Study (pdf)

Fortune 500で公式Blogを公開している企業は58社(11.6%)だが、Inc. 500では39%に達している。既成、確立された企業と比べ、非公開、創立間もないが躍進すると期待される企業はソーシャルメディアを広く、深く導入しているようだ。

これは訴求対象ユーザが存在するスペースがどこなのかを考えれば当然の結果だろう。ただし、Inc.500各社の訴求対象ユーザと、Fortune 500各社の訴求対象ユーザが違うということでは決してない。

Source:Fortune 500 Business Blogging Wiki

2008/08/15

NGO Power

GreenpeaceがCanonに対して実施しているキャンペーン、「Ask Canon's CEO to focus on saving whales」をご存知だろうか?

今年の1月から開始され、138,000人以上の人が賛同し、以下のemailをCanonの会長、御手洗氏に送っている。
長年にわたりCanonは、National Geographicなどで「Wildlife as Canon sees it」という野生動物保護キャンペーンを行っている。また、野生動物保護団体などに撮影機材を提供したり、寄付したりしている。Greenpeaceが持ち出してきた下の写真は生息数1万頭とされるシロナガス鯨が取り上げられている。


そこでGreenpeaceは野生動物保護を訴えるCanonに調査捕鯨禁止への支援を求める書簡を送ったようだ。だが、支援が得られそうにないため、野生動物保護を訴えるCanonの会長であり、経団連の会長でもある御手洗さんにemailを送り、調査捕鯨禁止をCanonに支援してもらおうという作戦に打って出たわけだ。

Source:Greenpeace / Ask Canon's CEO to focus on saving whales
Source:Greenpeace / Letter to CEO

グローバル企業ともなれば世界各地のステークホルダー、株主・金融機関、顧客、ビジネスパートナー、各国の社員、地域コミュニティ、政府・自治体などに対応してゆかなければならない。それに加えて、NGOがいる。特に、Greenpeaceのように世界中にネットワークを張り巡らせ、各国でアドボカシーキャンペーンを行うNGOは、物言うステークホルダーの中でももっとも大きなパワーを持つ存在だ。

今回のように製品ボイコットを呼びかけるのではなく、調査捕鯨禁止への支援を求めるという戦術を取ってくる厄介な存在もあるだろう。Oxfamのように米国でのコーヒーブランドの商標登録がらみでStarbucksのCEOにemailキャンペーンを実施して勝ったケースもある。

参考:Fair Trade (Online Ad 2006/12/06)
参考:Make Trade Fair : Email Campaign (Online Ad 2007/01/16)

FBIはGreenpeaceを国内テロ団体として監視しているようだし、日本でも公安当局の監視下にあるらしい。その攻撃的なキャンペーンに非難を浴びたり、つい最近の日本国内でおきた調査捕鯨船乗組員による鯨肉の業務上横領告発事件など、その活動に批判の声が多いことも事実だ。

しかし、インターネットを活用するマーケティングに秀でているNGOが行うキャンペーンはマスメディアの注目を集める。それだけにGreener Electronics Guideだけではなく、グローバル企業はオンラインでの情報発信をウオッチしておく必要がある。

参考:Greener Electronics Guide 2008 June (Online Ad 2008/08/13)

しかし、あなたは鯨肉を食べたことはありますか?筆者は20年以上食べたことはない。2,000万人を超えている平成生まれの日本人の何割が食べたことがあるのだろう?

2008/08/14

YouTube Marketing : Lenovo

「Olympic Marketing:Lenovo」でLenovoのオリンピックがらみのBlogを使ったマーケティングを紹介したが、Lenovoは大々的にTVCFも展開している。

参考:Olympic Marketing:Lenovo (Online Ad 2008/07/10)

そのひとつに「Sumo」がある。


どう見てもクールとはいえないクリエイティブだが、それはさておき。このビデオをアップしているのはLenovoVision だ。Lenovoが開設している北京オリンピックでのホスピタリティセンター、鳥の巣といわれる競技場、北京の風景に加え、ThinkPadやThinkStationの製品ビデオ、そして上の「Sumo」や「Laser」といったTVCF、合計61本のビデオをアップしている。ほかにLenovoのチャネルは14ある。

コンテンツサイトとして世界中のユーザがアクセスするYouTubeを使ったマーケティングが実施されている。特に世界中の注目を集めるオリンピックとい う一大イベントに際して、Lenovoはボトムアップ、消費してもらうコンテンツを提供することで、世界各国のユーザ、潜在顧客にブランドを露出してい る。

Source:YouTube / LenovoVision
Source:BtoB Online / Olympi-ads

話は変わるが、1to1 MediaがLenovoのグローバルWebマーケティングのVP、David Churbuckにインタビューしている。
  • オンラインでのユーザ経験を構築する苦労は?
    顧客ニーズを満足する最高の経験を提供できるように、競合他社だけではなく、eBay、Amazon、ディスカウントカメラベンダーなど多彩、多様なサイトを参考にしてきた。
    とにかく「顧客が何を言っているかを聞くだけだ」。
  • 企業戦略でのソーシャルメディアは?
    2006年、企業Blogとしてデザイン部門のVP、David Haleを中心として、lenovoblogs.com を公開。以降、ユーザアドボケート、Formula-1スポンサーシップ関連のBlogなど、公式Blog以外に多くのBlogを開設した。徹底的にやろうとしており、wikisや、顧客とのコラボレーション手段など様々なオプションも検討している。北京オリンピックでも初めて100人の参加選手Blogを公開した。
  • ソーシャルスペースへ進出するためのアドバイスは?
    耳に痛い話を聞いたことがない人には苦痛となる本当の話を聞くためには厚い外皮をまとい、耐える意欲が必要だ。初めてソーシャルスペースへ出て行く企業にアドバイスするのは、人々が話していることをどのようにモニターするかを準備しておくことだ。企業が顧客の声に耳を傾ける時、そしてそのことを顧客が知った時、まったく新しい発見が生まれる。顧客は、彼らの声を誰かがちゃんと聞いていることに満足するのだ。
Source:1to1 Media / Lenovo's Online Strategy Aims to Increase Brand Recognition
Source:1to1 Media Podcast / Lenovo Takes Online Marketing to New Heights

ブランドの露出、認知からブランド構築へと時間のかかる作業を黙々と行っているLenovoが期待している効果、結果はひょっとしてこのオリンピックが転機になるかもしれない。

2008/08/13

Greener Electronics Guide 2008 June

お馴染みのGreenpeaceによる「Greener Electronics Gudie」だが、6月発表の第8回目のランキングから評価項目が追加、変更されている。そのため3月の評価ポイントからすると各社のポイントは大きく落ち込んでいる。
これは化学物質、電子廃棄物に関する規制を厳格化し、そして5項目のエネルギー評価指針を追加したためだ。

だから、下の7回目のランキングではSamsungとToshibaが7点台後半の得点を上げていたが、8回目では上の通りだ。他社が総崩れとなった中、SonyとSony Ericssonが得点を減らしながらも踏みとどまって首位となっている。
Source:Greenpeace / Greener Electronics Guide June 2008
Source::Greenpeace / New Criteria (pdf)

今回から追加されたエネルギー関連の5項目だが、
  1. 世界での温室効果ガス排出削減を支援すること
    2050年までに50%削減(1990年レベルから)、先進国の場合は2020年までに30%削減
  2. 企業としての温室効果ガス排出量、サプライチェーンの第二段階までの排出量を公表
    ISO 14064に基づいた企業自体およびサプライチェーンの第二段階までの温室効果ガス排出量を公表
  3. 期限付きで企業としての温室効果ガス排出量削減を宣言
    2012年までに20%削減
  4. 再生可能エネルギーの使用量を公表
    総エネルギー消費における再生可能エネルギー比率
  5. 特定新製品のエネルギー効率
    最新の「Energy Star(ES)標準」に準拠し、ES標準を30%上回る
Nintendoは有害化学物質や二酸化炭素排出で改善したが、エネルギー関連ではES標準をクリアできず今回も0.8点で18社中、最下位の18位となっている。Nintendoの個別評価シートを見ると全15項目中、11項目でBad、4項目でPartially Badと評価されている。もし、全項目でマイナス評価も得点に加算されたとすると「0.8」ではなく、「-10」くらいは行きそうだ。

ここまでグリーンが注目を集める今、どんな企業もマインドシフトが必要だろう。
Source:Greenpeace / Nintendo Overall Score (pdf)
参考:2008年9月版は以下へ
Nintendo Least Green Tech Firm (Online Ad 2008/10/01)

2008/08/12

Charlene Li is Back

ついこの間、「Farewell to Charlene Li」を書いた。その後もTwitterやFriendfeedで彼女をフォローしていた。

Source:Twitter / Charleneli
Source:Friendfeed / Charleneli

そして、8月4日の彼女のWeb/Blogサイトに、「What I'm doing next」という記事が上がっていた。今後、独立した「Thought Leader (実践的先駆者)」としてやってゆくらしい。Blogや、Twitter、Friendfeedなどのコンタクト先を書き、企業インタビューや講演、コンサルティングサービスをやってますとしている。

最後に

But to wit, I can't do it alone. I'm counting on you to provide me with feedback, criticism, leads, tips, and ideas to move my thinking forward. So please stay in touch, subscribe to my blog feed, and let me know what I should be thinking about.

と書いている。

この姿勢が今、どの企業、マーケターにも必要だ。崩壊しつつある既成メディアに対する根強いブランド信仰からメディアシフトに対応できず、絶対露出量・フリーケンシー中心でエンドユーザの声など構わずに大音量でがなり立てる
一方通行の情報垂れ流しマーケティングから脱し切れていないマーケターがまだまだ主流だ。

彼女のように立場の違うユーザ、消費者の声に耳を傾け、対等でオープンなコミュニケーションを構築できるマーケターは何人いるのだろう?

Source:Charlene Li

2008/08/11

Data Credibility

以前、「Internet, New Primetime」としてcomScore, Inc.のデータを紹介した。それが下の図だ。午後7時から8時の間、TVよりもリーチを稼いでいるのがインターネットだと紹介した。
参考:Internet, New Primetime (Online Ad 2008/05/26)

そして、comScore Inc.の会長、Gian Fulgoniが7月16日にShopLocal Annual Summitでプレゼンした折、次のスライドが紹介されている。上のスライドとはあきらかにTVのリーチが違う。そして、午後7時から8時にかけてもTVのリーチにインターネットが近づくことはない。
Source:comScore Inc. / Online is the New Primetime Presentation Request (上図のソース)
Source:comScore Inc. / ShopLocal Presentation Request (下図のソース)

データソースとして、同じ「National People Meter, comScore Media Metrix 2007」がクレジットされている。TVのリーチが上図では最大でも43%くらいなのだが、下図では60%を越えている。

7月29日にcomScoreに問い合わせたのだが、まだ回答はない。

以前、「Blog Write and Read」でも書いたように、Universal McCannの「Wave III」という資料にも間違いがあった。担当者にemailし、不在のため代わりの人間からemailが届き、担当者が休暇から戻るや否や、正しいデータを送ってくれた。他にも日本から送ったemailに無視を決め込む担当者もいるが、適切に対応してくれる担当者もいる。

参考:Blog Write and Read (Online Ad 2008/06/10)

Dell Hellになるリスクをどの企業も抱えていることを理解していなければ、Blog社会での評価、ソーシャルメディア界での評価は期待するものにはならない。

2008/08/08

Marketing & Media Ecosystem 2010

今年2月、IABの年次総会で公表されたMarketing & Media Ecosystem 2010という資料がある。

メディアとして200億㌦規模に達するまでに必要した期間を新聞(127年)、ラジオ(75年)、TV(37年)、CATV(25年)、そしてオンライン(13年)で比較したグラフがあったり、下図のように各メディアごとに広告費の増減予想をしている。
その中で、マーケターが考える2010年に重要となる要因として次のものが挙げられている。上位3つを見ると;
  • 82% 消費者洞察
  • 80% 行動ターゲティング
  • 71% ブランド戦略
がある。そして、直接のパートナーシップとしてどこが重要になるかとして
  • 52% 媒体社
  • 52% 媒体プランナー
  • 52% コミュニケーションプランナー
  • 27% 広告代理店
となっている。今後、消費者洞察、行動ターゲティングやブランド戦略を重視、検討していく上で、マーケターはあまり広告代理店に期待していない姿が浮かんでいる。
そこで、広告代理店に対するメディアの見方を見ると;
  • 91% すでにわが社(メディア)はクライアントに代理店のようなサービスを提供している
  • 65% 広告代理店との関係を再検討している
  • 63% メディアが代理店的なサービスを開発すると代理店と摩擦が起きる
メディアからすると、「すでに(ある程度の)代理店機能を持っているため、代理店との関係を再検討してはいるが、軋轢が問題になる」という状況だろうか。
そこでメディア側が提供できるサービス、上位3つを見ると;
  • 88% キャンペーン開発やアイディア作成
  • 88% 適正オーディエンスへターゲッしたクリエイティブト
  • 79% クリエイティブ
でもそれを代理店の機能と比較してみると;
次の2つはメディア側能力が代理店を上回っているが、
  • 76% 行動ターゲティング
  • 33% 消費者洞察調査
上記以外の
  • クリエイティブプロダクション
  • クリエイティブ開発
  • コミュニケーションプラニング
  • メディアプラニング
ではまだまだ大きなギャップがある。

Source:IAB / Phase II Presentation (from the IAB Annual Metting : pdf)

クリエイティブに関してはまだまだ代理店に強みがあるようだ。しかし、企業(マーケター)側からすると、著名なブランドデザイナーがお好きな一部のクライ アントを除けば、高額な代理店のクリエイティブに頼むよりは、子飼いや、中小のプロダクションに外注する傾向があることも事実だ。

企業側のマーケターとしては消費者洞察と行動ターゲティングを重視し、ブランド戦略アイディアを提供してくれるコンサルティング機能付のパートナーがいればいいわけだ。それがメディアであろうと、従来からの代理店であろうが構わない。特に消費者洞察から競争力、インパクトのあるクリエイティブを提供してくれるパートナーが重要になる。その点、メディア側に若干の強みがあり、また、行動ターゲティングを絡ませることになればその差は一挙に開いてゆく。

今までのところ印刷やTV媒体の地盤沈下が大きく言われているが、それだけ血を流しているだけにメディア側もWeb 2.0時代に対応する努力を続けている。まだまだ流血は止まらないだろうが、流血が止まる時、代理店の出血が始まるのかもしれない。

2008/08/07

Building Web 2.0 Enterprise

McKinseyから、企業における「Web 2.0」技術の導入に関する2回目の調査が出ている。

昨年と比べると、Webサービス、P2Pの導入が減り、Blog、RSS、Wikisなどが増え、SNSは現状維持といったところだ。
別なデータでは昨年と比べ、Web 2.0を導入するケースとして、社内は93%から94%へと若干増えただけだが、顧客とのインタフェースの場合、91%から87%へ、パートナー・サプライヤーとのインタフェースの場合も83%から75%へと減少している。

Web 2.0の連呼に釣られて拙速に導入したのはいいけれど、社内体制整備が追いつかず、たなざらしとなった企業が多いのだろう。社内だけでも何らかの効果を出せればいいといった、後ろ向きの企業が多くいるのだろう。

さて、資料の中に地域別、Web 2.0技術導入比率がある。中でも眼を惹くのは、インドおよびアジア・パシフィックのBlogだ。インドは46%、アジア・パシフィックは48%が導入している。また、インドはWikisの導入も他地域よりも比較的高い。中国ではP2Pだ。

他地域でも特徴的なWeb 2.0技術が見えている。

最初からWeb 2.0を導入すべきではない後ろ向きの企業ではなく、顧客の声を吸い上げ、製品開発に活かしたり、顧客サービスを向上させたり、新規顧客獲得や既存顧客維持などにWeb 2.0を活用したいと考える企業であれば、競合他社との差異化に活かしたいと考える企業であれば、使えるベンチマークだろう。

個別国ごとの対応は現地に任せればいいが、パン、あるいはグローバルなマーケティングを考えるのであれば最低限の情報だ。
Source:McKinsey / Building the Web 2.0 Enterprise (ユーザ登録必要)

2008/08/06

Let Content Consumed

Marketing Sherpaの「Top 10 B-to-B Marketing Fast Fixes」がある。

そのサマリ版から2つ紹介する。まず、イベントごとにB2Bマーケターが見る質の高い引き合いを獲得したのは、
  • 67% プライベートセミナー
  • 53% 講演会
  • 44% 展示会
  • 34% イベントスポンサー
  • 31% バーチャル展示会のブーススポンサー
プライベートセミナーがトップだが、最後のバーチャル展示会がすでに高い評価を受けている。31%はバーチャル展示会からの引き合いの高さに満足しているわけだ。まだバーチャル展示会そのものの開催数、参加人数、開催コンテンツなどこれからといった時期ではあるが、大きな可能性を秘めている。

CESなどでベガスに行くよりも、事前登録しておけば自宅や職場から空き時間にバーチャル展示会に参加できる時代だ。ブースのアテンダントとChatしたり、カタログやホワイトペーパー、ケーススタディをダウンロードし、質問があれば後でemailできる。

すでに(リアルな)展示会の情報ソースとしての位置低下は始まっているだけに、バーチャル(オンライン)展示会への取り組みを優先課題とするべきだ。

参考:Online Exhibition (Online Ad 2008/04/14)
参考:Online Exhibition -2 (Online Ad 2008/04/15)

次に、コンテンツをダウンロードするためにユーザ情報の登録をさせた場合と、させない場合を見ている。
同じ100人がバナーなどをクリックしてランディングページに到着し、登録させた場合、10人が登録し(そのうち30%は登録情報はウソ)、5人がコンテンツをダウンロードし、3人が転送などをして、合計8人がコンテンツを消費するらしい。逆に登録は不要とした場合、35人がダウンロードし、21人が転送などをして、合計56人がコンテンツを消費するとしている。

7倍というコンテンツ消費ギャップは大きい。コンテンツをいかにして消費してもらうかが最も大きなマーケティングであるといっても過言ではない。

しかし、B2Bということで引き合い情報の登録に血眼になるわけだが、ここでも一方的にユーザ情報を要求するわけには行かなくなってきている。タイトルだけのPDFの中身を何も説明せず、あるいは目次も見せないままに、ユーザ情報をよこせという話は通らない。ユーザ情報を登録すると、電話、Emailでコンタクトしてくるマーケターに飽き飽きしているのだ。だから、登録情報の30%はウソを書くことになる。emailアドレスもフリーメールのアドレスを入力し、会社のアドレスは教えない人が多い。
Source:Marketing Sherpa / Top 10 B-to-B Marketing Fast Fixes

情報が氾濫している。企業、ビジネス、個人情報が溢れかえる中、どうにかしてコンテンツを消費してもらい、願わくばそれを友人、同僚、上司に転送してもらうことで、消費・露出を拡散、共有、再発信してもらいたいわけだ。マーケター側で得意客、上客、潜在顧客といったランク付けをして、配布する情報の質や量を変えていけた時代ではない。顧客、ユーザの購買フェース・段階に則したコンテンツを的確に、スピーディーに提供していけるかだ。

昔のやり方が今も通用すると考えているマーケターには、難しい時代だ。

2008/08/05

B2B Lead Nurturing

先月、EloquaとMarketingSherpa共同の「Lead Nurturing in 2008」というWebinarがあった。
その中で、1995年と2008年におけるB2Bカスタマーの購買プロセスを比較したものがある。

当然、1995年なら購買漏斗の入り口では購買バイヤーはベンダーの営業マンと対面で、自社が抱える問題について検討している。これが教育フェーズにあたる。次に営業マンが持ってきた提案を社内でレビューし、再提案などを受ける評価フェーズがあり、最後に社内稟議、最終決定、発注決定、そして導入まで営業マンと交渉するフェーズがあった。
それが2008年になると各フェーズの内容が変化している。教育(情報収集)フェーズで営業マンは出てこない。Googleなどの検索エンジンが大活躍して企業が抱える問題のソリューションを探ることになる。次の評価フェーズでも営業マンの影も形も見えない。このフェーズでもバイヤーは独自に、業界サイト、ベンダー企業サイト、Blog、ビジネスSNSなどから情報を仕入れ、対面ではなくemailなどで提案を受け入れている。そして、ようやく最終フェーズで営業マンは購買企業に出向いて最終交渉を行うことになる。
とすると、今日のB2Bマーケティングでは、教育、評価、クロージングというフェーズを、「引き合い醸成」と「引き合い得点化」という側面から見ることができる。
自社が抱える現状の問題点、欠点、改善ソリューションなどを検索する購買バイヤーにコンテンツを提供することで、「引き合いを醸成」し、その引き合いを最終的な購買につなげるために「引き合いを得点化」しなければならない、というわけだ。
例えば、企業規模、タイトル、場所などに加え、Webアクセス履歴、Emailへの反応などを得点化して、購買可能性を評価するわけだ。
しかし、その引き合い醸成ステップの現実はどうかというと、大半がフォローされていない。果実として収穫されないままビジネスチャンスを逸しているのが現状だ。
特にフォローされた20%の中で、30%しか可能性があると判定されず残りの70%は放置される。しかし、その70%は24ヶ月以内に引き合いを出した企業、あるいはその競合企業から製品・サービスを購入しているそうだ。ということは、フォローされた20%のうち、半分強の収穫に失敗しているということになる。
また、フォローされなかった80%の何%の収穫に失敗していることになるのだろう?
Source:Eloqua.com
Source:MarketingSherpa

B2Bマーケティング戦略のトップに来る引合生成だが、B2Bバイヤーの情報収集パターン変化に合わせ、引き合いの醸成や収穫を強化するCRMを導入する例は多い。

しかし、その前にオンラインコンテンツの充実や、コンテンツ流通チャネルの整備、オンライン社会での露出評価を検討する必要があるだろう。それなしに引き合いはないのだ。

2008/08/04

Mobile Sales in 2008 Q2

mocoNews.netから2008年Q2の携帯電話売上とシェアのデータが出ている。

MotorolaのQ2の業績が発表される前日、BloombergやmocoNews.netの7月30日の記事ではLGに抜かれて4位に転落と書かれていたが、なんとか持ちこたえて3位を死守したようだ。それにしても700万台以上も台数を落としている。日本の中堅携帯メーカーの年間販売台数と変わりないくらいの台数を四半期で落とすというのは大変なことだ。

マーケットシェアを見ても、Motorolaは4%ポイント以上落としている。が、2%ポイント弱伸ばしたLGの9.3%を0.2%ポイントの差で3位に留まっている。大手の中ではSony Ericssonもシェアを落とした。
Source:Bloomberg / Motorola May Be No. 4 in Phones After Losing to LG (Update 2) (07/30)
Source:mocoNews.net / Motorola Falls Again, LG Now Fouth Largest Vendor (07/30)
Source:mocoNews.net / Handset Shipments Surge 15 Percent In Second Quarter (07/31)

どこから、どう見てもNokiaの一人勝ちだ。iPhone 3Gがどんなに売れようと今のところ、Othersに括られるしか道はない。

iPhone自体のシェアは2007年Q2が0.7%で、2008年Q2が0.2%だ。170万台から70万台へ100万台も販売台数が落ち込んでいた。これはiPhone 3G発売前に旧在庫を一層するためで、アナリストは、Q3には350万台、1.1%のシェアになると予想している。

全体では2008年Q3には、全世界で3.21億台が販売され、2007年Q3から12%増と予想しているが、このランキングに純粋な日本メーカーが出てこないのはいかにも寂しい。

Morgan Stanleyによる2007年の市場規模は以下の通り。
  • 32.85億人 携帯ユーザ
  • 14.67億人 インターネットユーザ
  • 79.66億枚 クレジットカード
  • 8.33億台  設置PC
  • 12.79億台 固定電話
携帯ユーザの伸びは20%、インターネットユーザは21%、クレジットカードの伸びが12%を除けば他は10%未満の伸びでしかない。
NECが海外へ再度、打って出るという記事がどこかにあったが、他の日本メーカーにも期待したい。

Source:Morgan Stanley / Internet Trends (pdf)

2008/08/01

Guardian Breaks 20M user barrier

英国のGuardian.co.ukへアクセスするユニークユーザが、英国の新聞社サイトで初めて2,000万の大台を突破した。
英国の場合、ABCeがユニークユーザ数、PVなどを毎月オーディットしている。だからサイト側の独自数値ではなく、ABCeのお墨付きのついた数値として比較できる。そこでGuardianの今年6月のユニークユーザ数が、前月から12%も増えて、20,499,858人、PVは183,178,155になった。

Source:ABCe

これまでもずっと英国新聞社サイトのトップを走ってきたわけだが、そのGuardianがとうとう2,000万の大台を超えたというわけだ。

Guardianは、Telegraph、Times Online、Mail Online、Sun Online、Mirror、Independentなど他新聞社サイトの数字も挙げた後、「ほとんどの新聞社はまだまだ国内中心の事業展開を行っているため、広告主にとってUKユーザ(数)は最も価値のあるオーディエンスだ」として、新聞社それぞれのUKユーザ数を書き出している。

こんな戦略ではどの国の紙媒体サイトも、もうやっては行けない。

国内のクオリティユーザは、地理的、言語的な壁を乗り越えて必要な情報、コンテンツを求めて最適サイトへアクセスしている。先日書いた「comScore:State of the Internet」にも挙げたように、インターネットユーザ数が増えても米国(英語)Webサイトへアクセスする非USユーザ比率は変わらない。自国サイトが充実するにつれて自国内アクセスが増え、海外サイトへアクセスするユーザが減りそうなものだが、減らない。自国サイトに満足しないユーザ、アーリーアダプターやアーリーマジョリティが海外のカテゴリトップサイトへアクセスしている。

参考:comScore:State of the Internet (Online Ad 2008/07/29)

限りのある国内ユーザに依存したオンライン戦略では、もはやどの国のサイトも立ち行かない。Guardianのように約59%を占める海外ユーザを有効に活用する戦略が求められている。日本、中国、韓国、その他、非英語圏のWebサイトが他言語ユーザのトラフィックを誘導することは困難だが、英語サイトであり、世界的に名の通ったWebサイトであれば、海外ユーザ比率は高いはずだ。高くなければ国内向けサイトとして叩き合うしか道は残っていない。

しかし、海外ユーザ比率が高ければ、そしてアクセスするクオリティユーザの実証ができれば、大きく飛躍するチャンスがある。ただし、この論理を理解するグローバルクライアントの存在が欠かせないのも事実ではあるが...。
Source:Guardian / ABCe: Guardian.co.uk breaks 20m user barrier