2007/01/31

Advice Givers and Seekers are Mirror Images of Each Other

BIGresearchが、15,000人以上の消費者を対象に年、2回実施しているSIMM 9 (Smilutaneous Media Study) という調査結果を公表した。

それによると、28.7%の消費者は自身が、製品やサービスに関して他の人々にいつもアドバイスを言い、65.4%はたまにアドバイスを出すという結果が出た。

逆にアドバイスをいつももらうのは16.2%にしか過ぎないが、たまにアドバイスもらうのは74.6%にも達している。

合計すると90%を上回る消費者はいつも、あるいはたまにアドバイスを与えたり、アドバイスをもらったりしていることになる。BIGresearchのCEO、Gary Drenikは「これら2つの消費者グループ(Advice GiverとAdvice Seeker)は、基本的にひとつで、同じグループだ」と語っている。

それはアドバイスを与える人も、知識を得るためにはアドバイスをもらい、それをまた、別の人にアドバイスとして伝えるからだ。

アドバイスするため、製品情報を知る主要な手段は当然、インターネットでの検索になり、アドバイスを与える人も、アドバイスをもらう人も、それ以外の人以上に検索エンジンを使っている。ただし、トップ5の検索エンジンはそれ以外の人とも同じで、Google、Yahoo!、MSN、AOL、そしてAskとなっている。

左の図のようにどのカテゴリの製品であったとしても、アドバイスを与える人(Advice Giver)と、アドバイスをもらう人(Advice Seeker)の割合はほぼ同じだ。

また、製品購入前の情報収集フェーズで、いつも、あるいはたまにオンラインで検索を実行するのは、Advice Giverで96.9%、Advice Seekerで96.6%となっており、ここでも両者は同じグループを形成している。

加えて、製品購入前にオンラインで情報を検索、収集した製品のカテゴリを見ると; 
  • Regular Advice Givers
    • エレクトロニクス
    • 衣類
    • 電化製品
    • 家庭用品
  • Regular Advice Seekers
    • エレクトロニクス
    • 衣類
    • 電化製品
    • 家庭用品
靴と、家庭用品の順番の違いはあるが、全く同じと言って良い。

Source:BIGresearch's SIMM 9 / Advice Gibers and Seekers are Mirror Images of Each Other
参考:eMarketer / Talking Business (注:リンクは1~2週間のみ有効)

このデータが面白いのは、Advice SeekerとAdvice Giverが全く別のものではなく、同じものだという点だ。
「オンラインでの行動から、Seekers対Giversという形で便利に二分割すべきではない。アドバイスを求めたり、アドバイスを与えることは製品購入に絡んでくるソーシャルネットワークをアップデートする行為だ。これらの消費者を単純に、ブランド資産構築のソースとして扱うことは有害だ」と結んでいる。

しかし、ここで言うAdvice Giverと、インフルエンサーが同一なのか、あるいはBrand Advocatesや、Social Persuadersといったグループ同一なのか、別物なのか、それを明らかにする指標が欲しかった。インフルエンサー、Brand Advocates (ブランド主唱者)、Social Persuadersといったグループは、 自分達の影響力を自覚し、その社会的ステータスを維持するために様々な形で情報収集を継続している。継続することでのみインフルエンサーとしてのステータスがあることを自覚している。そこが、一般消費者、あるいはアドバイスを求める人たちと大きく区別される点だと考える。

Advice GiversとAdvice Seekersを、インフルエンサーではなく、通常の一般消費者として考えれば納得が行くが、インフルエンサーなどと捉えることは難しいように思う。

2007/01/30

Mobile Internet in UK

2006年12月、Ipsos MORIとYouGovが英国の6,500世帯にインタビューしたPoint Topic のCS3 (Consumer Survey 3) がある。

それによると、UKの世帯数60%を占め、家庭からインターネットへアクセスする人々の携帯電話利用に前回、2006年1/2月のCS2と比べて変化が出ている。音声通話を行ったのは前回の84%から80%へ減少している。SM(ショートメッセージ)、音楽ダウンロードも減少しているが、写真画像を送受信するのは増えている。

表にはないが、もっとも顕著な変化は過去12ヶ月間に携帯からインターネットへアクセスしたことがある人々が4.8%から16%に増えていることだ。

移動中に何ができればいいかという設問への回答を見ると、60%がEmail、45%以上がインターネットサーフィングや検索、30%以上がオンラインバンキング機能を上げている。
ところが、上の表にある実際にEmailの送受信を行ったのは12月の調査で伸びたといっても10%以下だ。インターネットアクセスは12月でもまだ20%以下となっている。やりたいことと、やったこととの間に大きなギャップが見られる。
Source:Point Topic / Internet on the move : the people want mobility

Point Topicは、このギャップを説明するためにいくつかの可能性を上げている。そちらは製品開発マーケティングにお任せすることにして、ここで注目すべきはUKの携帯インターネットアクセスユーザが4.8%から16%に急増していることだ。

Morgan StanleyのGlobal Technology Trendsによれば、第2.5世代+第3世代携帯合計は2006年で6億台、07年で10億台、09年には18億台を上回ると予想している。普及率は06年で30%前後、07年で45%前後、09年で75%前後を予想している。AppleのiPhoneが投入されれば一層、モバイルインターネットユーザを押し上げてゆくだろう。

今後、モバイルユーザを対象としたWebコンテンツ制作や、モバイルユーザをターゲットとしたマーケティング戦略の立案が急務になってくる。
参考:Morgan Stanley / Global Technology Trends Presentation (pdf)

2007/01/29

MPA Initiative : Ideas that live beyond the page

MPA (Magazine Publishers Association) がキャンペーンを再開した。昨年Q4に短期間のキャンペーンをやっていたが、今度もNYTなどのメジャーなメディアサイトで再開したようだ。

左をクリックしてサイトへ飛ぶと、Vanity Fair、Forbes、Car Driving、Health、Detail、Wiredなどの表紙が現われる。そのどれをクリックしても「Magazines. Ideas that live beyond the page」というページに切り替わり、Engagement、Accountability、Case Studies、Magazine Handbook、Researchなどの項目から内容を見ることができる。

Engagement
まずEngagementは何かと書き起こし、その指標から各メディアを評価しようとしている。しかし、ここには対話型、参加型、オープンコミュニケーション型といったメディアチャネルとしての属性がまったく考慮されていない。Web 1.0とWeb 2.0の差として挙げられるインタラクティブなやり取りがないメディアにそれを求めるのは無理かもしれない。
それだからこそ、Engagementで比較要素として挙げられるのは;
  • メディア消費の排他性(どのメディアが一番排他的に消費されているか、ながら消費されていないか)
  • 消費時間の排他性(どのメディアが優先的に時間を消費されているか)
  • メディアごとの広告の信頼性(どのメディアの広告が信頼されているか)
  • メディアごとの広告の評価(どのメディアの広告が役に立つか)
などだ。
どの要素を取っても雑誌の広告が一番いいとなっている。

マルチタスキングでメディアを消費する消費者・ユーザを考慮していないし、ユビキタスに情報を消費する点も抜け落ちている。また、ちょっとどうかと思うのは、雑誌広告が一番消費者に信頼され、役に立っているというデータを出してきたことだ。

もうそんなことを言っている状況ではない。PEWのデータを見れば分かるとおり、新聞にしても雑誌にしても購読者は高齢化している。インターネットに乗り切れないラガード層の中心を構成するだろう高齢者に訴求してもクライアントのコアターゲット層からは見向きもされない。

参考:PEW Internet & American Life Project

Accountability
アカウンタビリティでまず、購入プロセス漏斗として左の図が挙げられている。

広告によるトータルなブランドの初期認知を獲得し、次にブランドを理解し、3番目にブランドの好感度をアップさせ、最終的に製品・サービスの購入に向かうというフローだ。これではAIDMA (Attention、Interest、Desire、Memory、Action) といわれる昔からの消費者の製品購入決定パターンから一歩も出ていない。

現在、検索エンジンを利用した情報検索が一日に十億回以上にも達している。企業が提供する情報以上に、消費者・ユーザは検索エンジンを駆使し、競合メーカーサイト、比較サイト、価格サイト、個人のWebやBlogをソースとして情報を収集する。その上で、実際の店舗やショップで製品を目で確かめ、販売員に尋ね、インフルエンサーのクチコミ推奨なども取り入れて購入を決定する。

消費者の製品購入決定パターンはいつまでもAIDMAではない。AIDMAではなく、AISAS (Attention 、Interest、Search、Action、Share) へ変化したし、DoubleClickが言うように、初期認知から情報収集へ、情報収集から購入決定へと変化している。
それを考慮しない認識では変化した消費者・ユーザの製品購入決定パターンに合わせた調査もできない。

目の肥えたメディアプランナーの理解を得ることは難しく、メディアとしての雑誌を活用したキャンペーンを大々的に実施するのは無理だろう。

Source:MPA / Engagement Guide (pdf)
参考:DoubleClick : Touchpoint IV

全米雑誌協会が一大キャンペーンを実施しているのだが、その方法論とコンテンツ自体に不備があると言わざるを得ない。

なぜTimeが先々週、289人を解雇したのかというと、それはGMが昨年4,789万ドル、DaimlerChryslerが9,350万㌦の広告を削減したからだ。その理由を雑誌メディアとして考える必要がある。

Source:Ad Age / Time Inc. Bleeds as Detroit Automakers Gut Magazine Ad Spending

2007/01/26

Online Video, SNS and Wikis for B2B

以前、紹介したKnowledgeStormとUniversal McCannによる「Blog and RSS for B2B」に続き、今回はオンラインビデオ、ソーシャルネットワーク、そしてWikiという新興メディアのB2Bへの影響を説明している「Emerging Media Series : Online Video, Social Networks and Wikis」を紹介する。

今回は5,300人のビジネス、テクノロジーの専門家を対象に、オンラインビデオ、ソーシャルネットワーク、Wikiへのアクセス、評価、購入決定への影響などを調査している。
  • 調査対象の45%は、企業内でのテクノロジーに戦術レベルで参画
  • 同55%は、テクノロジーの導入、管理に従事
  • 同42%は、IT調査や経験から社内の10人以上に頼られている
  • 同28%は、IT製品・システム購入、購入承認権限を持つ
オンラインビデオ
  • B2Bバイヤーの63%が少なくとも週に一回はオンラインビデオを閲覧している。
  • 63%がビジネスおよびテクノロジー情報の両方に関するビデオを閲覧している。ビジネス情報のみは10%、テクノロジー情報のみは20%。どちらも見ないのは7%にしか過ぎない。
  • 閲覧するオンラインビデオコンテンツの内訳は、70%がWebcast、67%がニュース、62%がデモをあげている
  • オンラインビデオがIT購入決定に影響すると回答したのは57%だ。
ソーシャルネットワーク
  • SNSを良く知っているのは24%。
  • SNSをどういった目的でB2Bバイヤーが利用しているかというと、69%がビジネスのネットワーク作り、あるいはそれを拡大するためと答えている。
Wiki
  • Wikiを良く知っているのは47%。
  • 毎日Wikiへアクセスするのは16%、毎週は36%
  • ビジネスとテクノロジーの両面でWikiを利用するのは63%
  • Wikiコンテンツを同僚に推薦したり、転送するユーザが70%(毎日、毎週、毎月)
  • WikiコンテンツがIT購入決定に影響するのが52%
Source:KnowledgeStorm / Emerging Media Series : OnlineVideo, Social Networks and Wikis (注:pdfダウンロードにはユーザ登録必要)

Knowledgestormは、結論として、「B2Bマーケターはオンライン予算を増やし続けている。従来からのバナー広告や検索エンジンマーケティングを越えて、オンラインビデオ・SNS・Wikiといった新しいメディアを検証し、トライすべきだ。これらコミュニケーションチャネルはB2Bテクノロジー市場における特定なニッチにターゲットでき、リーチを広げる大きな可能性を提供している」としている。

2007/01/25

B2B Marketing Priorities and Plans 2007

BtoBOnline.comが2007年のB2Bマーケティングの優先事項と計画の調査データを出している。

2007年、マーケティング予算を増やすのは63%に達している。減らすのは8%にしか過ぎない。

63%のマーケティング予算を増やすという企業のうち、
  • 8%が  50-100%増加
  • 5%が  30-50%増加
  • 18%が 20-30%増加
  • 38%が 10-20%増加
  • 31%が 0-9%増加
となっている。50%以上増やすという企業が13%だ。

マーケティング予算をどういったメディアに配分するかを見ると、昨年並みに変化なしという回答が多いのは、それぞれ84%と78%となっている屋外とTVだ。印刷媒体への予算も47%が変化なしという回答だ。

増やすという回答のうち、最大の伸びを示しているのは76%が増やすというオンラインだ。次に50%のDM、44%のイベント・展示会が続いている。

B2Bのマーケティングといえば専門誌・業界誌への出稿、イベント・展示会参加、客先デモ、DMやホワイトペーパーなどが主流だ。それらから引き合いを獲得するのがするのが目的なわけだが、それらの伸びを上回る予算をオンラインにつぎ込もうとするマーケターが多いということは、B2Bでもオンラインメディアを活用することの効果が認識されてきたからだろう。

そのオンラインメディアのどういった側面に予算を投下するかというと;
  • 32% Webサイト
  • 22% Email
  • 19% 検索
  • 9%  Webcasting
  • 6%  バナー
  • 5%  他
  • 3%  ビデオ
となっている。

Source:BtoBOnline / Marketing Priorities and Plans 2007

検索・バナー広告やEmailからトラフィックを誘導し、Webcastやビデオなどで充実させたWebサイトのコンテンツを消費してもらおうという戦略だ。すでにB2Bの情報収集はオンライン化が進んでいるから、多分、「他」に分類されているものの中にBlogが含まれているだろう。Blogでの情報発信を行わなくては、コンテンツの共有も転送も期待できない。だから必ず予算化されているはずだ。

米国のB2B企業はますます積極的にオンラインをマーケティングに取り込もうとしている。Web、広告、PR、Blogなど様々なオンラインメディアを活用して大量の情報が発信されることになる。Cargillのような典型的なB2B企業がオンラインでブランディングをする時代でもあり、この露出に対抗する必要が日本のB2B企業にはある。

参考:Cargill : B2B Branding Campaign

2007/01/24

Internet in Korea

韓国の情報通信省が出している2006年版インターネット白書があるのでこれを紹介する。

2000年末に1,900万人で44.7%の普及率が、2005年末で6歳以上のインターネットユーザは3,301万人、普及率は72.8%に達している。

ブロードバンド化の契機は2002年のようだ。2001年までに780万だったものが2002年にポーンと1,000万契約を超えている。その後、2006年1月には1,229万契約に達している。

10大ニュースとしてあげられている中に、3番目として「オンライン小売が10兆ウォンを突破、オンライン広告も総広告費の10%を超える」があり、9番目に「オンラインゲーム・ポータルの海外進出」があげられている。

2005年時点でオンライン広告が総広告費の10%を超えているというのは、英国で昨年10%を超えるよりも早く、2006年は前年比29%増の8,957億ウォンが予想されている。総広告費に占める割合も10%台の半ばくらいまで伸びるのではないだろうか。とてつもなくオンライン広告が認知、理解されているようだ。

その他、インターネットユーザのプロファイルや企業のWeb構築ステータス、ゲーム業界の売上・輸出高などに加え、ファイアウォール・侵入防止・VPN・バイオメトリックスなどのセキュリティ製品の輸出ボリュームやIPTV、無線、e-Business/e-Commerce、それにデジタルデバイドのデータや話が満載だ。

韓国へのマーケティングを検討するマーケターは必読では。

Source:2006 Korea Internet White Paper

2007/01/23

European Conversion Rates On The Rise

以前紹介したEIAA (European Interactive Advertising Association) のMediascope Europe 2006のデータから新しいプレスリリースが発表された。

それによるとヨーロッパの人々はオンラインで商品を購入し出しているし、特定の小売セクターでその傾向が顕著となっている。ここで言うコンバージョン率とは、オンラインで商品をチェックした後、その商品を購入する率を指す。

下にあるように、前年比のコンバージョン率アップ率が高いのは携帯電話、音楽ダウンロード、そしてカーアクセサリだ。コンサート・フェスティバルチケットがコンバージョン率75%だが、前年比コンバージョン率上位を示している表以外にも、旅行チケットが72%、書籍が71%のコンバージョン率をたたき出している。
調査によると、ヨーロッパのインターネットユーザの78%はオンラインでショッピングを行い、平均すると過去半年の間に10個の商品を購入し、€750を支出している。表のようにUK、北欧諸国が€1,000以上の大盤振る舞いをしているが、ドイツは購入件数からするとお買い得品を買っているようだ。
オンラインショッピングをする際、ユーザは当然ながら価格比較を行う。54%のオランダのユーザは少なくとも月に一回は比較サイトで価格をチェックしている。ドイツとフランスが50%だ。価格に敏感なUKとドイツのユーザ(それぞれ62%と49%)は、必ずオークションサイトをチェックしている。

Source:EIAA / Press Release : European Conversion Rates On The Rise
参考:EIAA Mediascope Europe 2006

インターネットには価格比較サイト、製品評価サイト、オークションサイト、それに個人のWebやBlogサイトなどから様々な情報がユーザに提供されている。企業や販社、小売店が既成メディアを活用したキャンペーンやWebからユーザに提供する製品・サービス情報以上に、インターネットには情報が溢れている。

既成マスメディアからの提供情報量とその訴求範囲では、現在のインターネットユーザを捕捉することは難しい。EIAAのプレスリリースには、「オンラインショッパーはインターネットを使う分、TVを見なくなっている。インターネットユーザの四分の三近くは、必要なものを短時間で手に入れられるのがインターネットだと分かっている」としている。

このメディアに露出しなければ認知も、検索も、購入もしてくれない。だからeMarketerが見るように、UKでは2006年にインターネットユーザ一人当たりで122㌦のオンライン広告が、2010年には217㌦へ、フランスは90㌦が136㌦へアップすることになる。

この広告費の伸び、オンライン露出増に日本企業はついていけるのだろうか?

Source:eMarketer / Europe: One Continent, Many Online Ad Markets
注:リンクは1週間から10日間だけ有効

2007/01/22

Corporate/CEO Blogging

19日にMarriott Internationalの会長兼CEO、Bill MarriottがBlogを始めたことを書いた。そうすると、20日の早朝にMarriottから2度、このBlogにアクセスがあった。最初は37秒で2ページを閲覧し、その後1時間半ほどして2度目のアクセスがあった。今度は12分滞在し、5ページを閲覧して行ったようだ。(英語OSで、Googleの翻訳を使っているわけではないので、書込みの見出しを頼りに内容を確認したのだろう)

Fortune 500にランクされるMarriott、その74歳になる会長兼CEOがCorporate Blogを始めるとなれば、個人Blogのトライ&エラーではなく、Corporate Blogチームといった部署も結成し、事前に社内外の調整や考えられる影響や反応を検討しておくことが必要だ。例えば、Blogに対してどれくらいのアク セス、反響があるのかを検討し、ネガティブコメントに対する対応も用意しておく必要があっただろう。だからリンクを張ったBlogサイトを確認するため、この日本語Blogへもアクセスしたのだろう。

そこで彼のBlogにどんな反応があったのかをTechnoratiでチェックしてみた。12サイトからリンクがある。英語が10サイト、伊語が1サイト、そして日本語のこのサイトということになる。(Technorati.comもTechnorati.jpも、20日には12サイトが結果として出たが、21日も22日も1サイトしか結果として出てこない。何なのだろう?恣意的な操作があるのだろうか?)

また、Bill Marriott (EXACT検索) に関するBlogは21日までに2227件(2227件を227件へ訂正:3月16日)。それを過去30日間のグラフで見ると左のようになる。16日に書かれた彼のBlogに反応して、17日からBill Marriottに関するBlogポストが増え始め、17日から20日までに115本が書き込まれている。

言語別に見ると、185本が英語。それ以外は9本が蘭、17本が独、2本が仏、2本が伊、3本がポルトガル、6本が西、3本が日本語となっている。やはり英語Blogの書込みが多いが、欧州からも39本書込みがあり、英語であろうと世界のBloggerの目に留まれば非英語圏にも露出してゆくことが明らかだ。

逆に言えば、英語で世界へ露出することができるわけだ。英語の書込みであったとしても、例えばMicropersuasionのような著名Blogは世界中のBloggerが注目、チェックしている。今回の場合はBill MarriottがBlogを始めたというものだが、その記事に目を惹くものがあれば、ローカル化して書き込んでゆく。それを国内のユーザが閲覧し、別途自分のBlogへ書き込んだり、メールで知り合いへ送ることで露出は非英語圏にも波及してゆく。

Fortune 500にランクされる企業のトップが書くBlogが世界のインターネットユーザに露出、波及し、彼のファンが生まれ、企業そのものの認知や好感度が上がってゆく。オープンなコミュニケーションチャネルを消費者、ユーザとの間に構築することで企業の広報が大きな効果をあげてゆく。74歳のトップセールスだ。

なお、ネガティブコメントに関して心配することはない。Coca-Cola Wishcast Campaignで示したように、Keller Fay Groupのデータによると、消費者の62%はブランドに対して肯定的なコメントを発しているし、中立的なコメントを含めれば74%になる。全否定的なコメントは10%でしかない。

この傾向がそのままBlogに反映されるとは思わないが、少なくともBill Marriottに関して書き込まれたBlogの論調は好意的に見える。ただし、否定的な書込みがあるのは事実だ。
Source:Keller Fay Group LLC / Single-Source WOM Measurement

世界中のどこにも本質を見ずに、揚げ足取りをする「いやな奴」はいる。しかし、インターネットユーザに対して正直に、正しい情報を発信している限り、全否定者のBlogやコメントは大多数のユーザに無視されるだろう。「いやな奴」を恐れていると、それに数倍する人々に伝えられる情報をゴミに捨てることになる。オンラインでのマーケティングでどちらを取るべきかは明白だ。

2007/01/19

Marriott's CEO Blog Launched

70歳を超えるMarriott Internationalの会長兼CEOのBill MarriottがBlogを始めた。

「このBlogを立ち上げることによって私は地図に載っていないテリトリに足を踏み入れる冒険を始めることになります。社内の情シスチームが旅行やツーリズムに関するBlogトラフィックをレクチャーし始めた1年前まで、Blogが何なのかも知りませんでした。今、お客様と直接対話をしたいなら、そして声を聴くには、ここがその場所であることを理解しています。すぐにBlogにオーディオ版が追加されます。そうなれば、お話をし、お話を聴くという私が最も得意な場所になるでしょう」と、書き出している。

彼はBlogを開始する前に、Sun MicrosystemのCEO、Jonathan SchwartzのBlog、BoeingのマーケティングVPのRandy BaselerのBlogを読み、そしてイリノイ州上院議員Barack ObamaのPodcastを聴き、十分な予習を行った上で書き始めたようだ。

正直なところコンピュータにあまり詳しくはないこと、10年前オンライン予約システム構築時には懐疑的だったことを告白した上で、私は改宗者、転向者だと宣言している。多分、Blogは彼の話を書き起こしているのだろう。数十件のコメントに対して数件のレスポンスがあるが、どれも「彼からの指示により」と書き始められている。

そして、80年前に自分の両親、J. WillardとAlice MarriottがWashington D.C.で始め、後にHot Shoppeと改称される「ルーツビールスタンド(このルーツビールからどのようにしてMarriottというグローバルビジネスにまで拡大してきたかの話は今後語られる予定だ)」から話を起こしている。

各ホテルのアソシエートから話を聴き、顧客から話を聴くという何十年にもわたる彼の仕事を、Blogでも実践することでグローバルベースで「Management by walking around」という父親直伝の経営哲学を実践しようとする姿勢がある。また、80周年を迎えたMarriott Internationalを将来に向けて大きく羽ばたかせるためにもBlogを活用しようとする経営者の品格がある。

最後に、「私は、お客様とのコミュニケーションを信じていますし、そしてインターネットはグローバルに、まったく新しい方法でそれをすることができます。私達が企業として学び、育ってきたやり方、すなわち直接対話に参加したいと考えています。考えておられること教えてください。そして一緒にMarriottを動かしてください」と結んでいる。

Source:Marriott on the Move / Bill Marriott's Blog
参考:Micropersuasion / Marriott's CEO Blogs
参考:Sun CEO's Blog

1月16日に開始されたばかりのBlogには、すでに数十のコメントが寄せられている。どれも彼の行動を褒め称え、次のポストに期待する、したいという内容ばかりだ。また、Marriottの取締役が何を考えているのか知りたいというコメントもある。

Marriottでの宿泊体験、高いサービスの質、1920年代の思い出、新婚旅行の思い出、ビジネスで年に100日、200日をMarriottで過ごす人々の声が多く聴かれ、2~3件のアドバイスに加え、当然、何件かはネガティブなコメントもある。それに対しても即座に、レスポンスを返している。

オープンなコミュニケーションチャネルが開かれ、彼の長年の苦労や喜び、顧客からの声が聞かれる予感が今後、多くのオーディエンスを集めることは間違いない。彼のBlogは、彼自身の歴史を語ることになり、またそれはMarriott InternationalのホスピタリティとしてのブランドPRともなり、コーポレートブランディングともなる。

予想されるネガティブコメントや、不慣れなPC、ネットワークをものともせず、大海に乗り出した彼のBlogに期待したい。が、一方、日本のグローバル企業のCEOやCMO (Chief Marketing Officer) がいつ、顧客やユーザ、ビジネスパートナー、その他のステークホルダーに対してオープンな対話を始めるのか、こちらも興味津々だ。

2007/01/18

Big Brand for Search

創業以来30年、1999年からは乳幼児向け商品のオンライン販売を開始したペンシルベニア州のBabyAgeは、2006年の売上2,000万㌦に対して120万㌦の検索広告を実施していた。検索広告は期待通り、クリックを稼いでいるのだが、実際の商品購入につながらず、コストは2倍に膨らんでしまった。「こんな調子じゃ儲けにならない」と言い、BabyAgeのCEOは、今年、検索広告予算を削減する予定だ。こういった話はBabyAge.comだけではなく、宝飾品のICE.com、バッグのeBags.comでも同じように聞かれる。

DoubleClickによると2006年Q3のCPC (Cost Per Click) は、前年比31%も増加しており、中小・零細企業によっては印刷媒体やラジオといった代替方法を検討しているようだ。

Best Buyとか、Zale、General Motors、Wal-Martといったビッグブランドが検索広告へ進出し始めている。だからこそ、キーワード単価 (CPK:Cost Per keyword) は上がり、ビッグブランドがクリックをさらって行くので、中小・零細企業のCTRは下がり、コストが膨らんでゆく。また、同じ商品なら、やはり中小・零細より、名の通ったブランド品を購入するのはなにも日本人だけに限った話ではない。

Googleなどは中小・零細企業からの広告が減ったとしても、大企業からの広告が伸びてくるから何の心配もない。また、Yahooにしても、Googleにしても、「消費者に適した商品とメッセージを持っていれば、中小・零細企業であったとしてもオンラインでビッグブランドを打ち負かすことができる」としている。

しかし、中小・零細企業は少ない数のキーワードを購入するしかないし、MySpaceやYouTube、あるいはBlogやニッチなショッピングサイトに広告を出す他ないのかもしれない。
あるマーケティングコンサルタントは、「(中小・零細企業の)ただ飯は終わった」と結んでいる。

Source:Business Week / The Small Fry Sour On Search Ads
Source:MarketingVox /Brand Giants Shut Small Biz out of Search

さてさて、ビッグブランドが検索広告に参入してきた場合、物売りということであれば、中小・零細サイトを蹴散らしてクリックを獲得することは予算規模からして当然だろう。しかし、ROIが期待通りに伸びるかどうかは、どこまでクリック詐欺の被害を食い止められるかにかかっている。

Click Forensicsによれば2006年Q3のクリック詐欺率は13.8%にも及んでいる。ビッグブランドになればなるほどクリック詐欺集団の標的になる確率は高いだろう。

また、「Search Engine Marketing?」でも取り上げたが、検索結果ページの視線トラッキングを見ると、ユーザ視線はスポンサーリンクには行かず自然(Organic)検索結果に向かっているし、クリック箇所も大半が検索結果エリアだ。

中小・零細企業のようにTV、印刷媒体などでの露出がなく、オンラインでのコンタクトポイント獲得が重要な企業と違い、ビッグブランドはオフ・オンラインメディアでの膨大な露出がある。この露出を統合したクロスメディアミックスが本筋だと思うのだが...。

参考:Search Engine Marketing?

2007/01/17

X Media Impact

IAB (Interactive Advertising Bureau) UKによれば2006年上半期のオンライン広告費は前年比40.3%増の9.172億ポンドに達している。広告費総額に占めるその割合は10.5%にも達し、5.1%の屋外広告、3.4%のラジオ広告費を抜き、TV、印刷(ディスプレイ、案内)、DMに次ぐ5番目に位置している。

参考:IAB UK

そのためマーケターは予算をオンライン広告へシフトさせているが、クロスメディアの影響に関する調査は少ない。ということで、i-level、Yahoo! Search MarketingとHitwiseが、オフラインメディアへの露出がオンライン行動に与える影響について調査を行った。調査はUKの自動車連盟、デジタル有料放送のBSkyBテレビ、携帯電話会社のOrangeの3社について行われている。その中でBSkyBを紹介する。

オンライン広告はブランド認知と想起に効果的
従来からTVはブランド構築メディアであり、オンラインはレスポンスメディアとして理解されているため、まだまだインターネットがブランド構築メディアとしては確立されてはいない。ところが、昨年3月にBBCが「TV視聴時間は毎日148分に対して、オンラインは164分。大ロンドン地域では181分」という報道を行っている。それと今回の調査結果から、オンライン広告はブランド構築メディアとして効果的で、ブランド想起を向上させるとしている。

参考:BBC / Super surfers oust couch potatoes

2005年6月から2006年3月までの期間、BSkyBの広告費の11%がTV、20%がオンラインとなっている。
バナーimpressionによりSky HDブランド認知とSkyへの連想を向上
  • BSkyBは、2006年2月からHD TVの事前登録を開始し、4月にHD TVをリリースしている。テクコミュニティでのクチコミ、PR、バナー広告によってSky HDの認知をベースとして、SkyHD、HD、そしてHD TVという検索キーワードでの検索シェアを見ると、Sky HDは2月にピーク、4月に2次ピークを迎えており、SkyブランドとHDの関連付けがうまくできている。
  • Sky HDはHD TVの8倍の検索シェアを獲得(2月25日の週)
  • Sky HDがリリースされた4月、Sky HDを検索キーワードとしたSky.comへのアクセスは5%を占めた
  • 2月以降、バナー広告によるWebトラフィックが増加。Skyのオフライン広告のピークである2005年秋よりも、2006年2月にトラフィックは最高に達した。
統合メディアキャンペーンにはオンラインも
  • 多様なオフライン広告露出とオンライン広告露出を組み合わせることで、オンライン検索キーワードシェアが上がることでブランド認知が向上していることが分かる
  • BSkyBのオフライン広告のピークである2005年秋、Skyブランド、およびSkyのURL (sky.com、www.sky.com) 検索シェアははっきりと増加している。増加は通常キャンペーンが終了した数週間後まで継続している。8月から10月にかけ、Skyというキーワード検索シェアは20%増加し、URLシェアは倍加している。
  • オンライン広告とオフライン広告が連動しなかった2005年3~4月は、上記のようなシェア増加は見られない。
  • 同様に、オフラインのTV広告がなかった2006年1月は、オンライン広告を増やしたが、検索シェアの増加は見られない。
結論
  • オンライン広告はブランド認知を向上させ、ブランド想起を起こさせる高効率のメディア
  • 統合的なメディアプロモーションが全メディア広告効果を最大化
  • ブランドに関係するWebサイトへのトラフィック、検索キーワード、ボリュームといったオンライン利用データは、ブランド調査およびオフライン広告費の効果測定に利用可能
Source:IAB UK / The Hitwise UK Media Impact Report

BSkyBの広告予算配分に注目したい。オンラインが20%を占め最大シェアを獲得している。UK全体で2006年の上半期に40%以上も増加したオンライン広告費は、当然、他メディア予算から引き出され、あるいは追加予算を計上した結果ということになる。BSkyBも、契約数を伸ばすため相当の予算を計上したはずだが、Figure 3にある9~12月にしか支出されていないTV広告を見ると、どうやらTV広告費を削ったように見える。
TV受信契約を増やすためにTV広告を絞ったというのだろうか?

それはさておき、調査データでは、「統合メディアキャンペーンにはオンラインも」としているが、増え続けるオンラインメディア消費時間を考慮すれば、BSkyBほどではなくとも、積極的にオンライン広告を実施すべきだろう。

それにはオフライン広告とつりあいの取れた広告費が必要だ。その結果、オフライン広告とオンライン広告の相乗効果で、ブランド認知と想起が向上し、調査フェーズに移れば検索行動が起こる。検索結果からのアクセスもあれば、オフラインメディアで見たURLを入力するアクセスも出てくる。どちらを中心に置いたとしてもこぼれてしまう消費者、ユーザ、インフルエンサーが出てきてしまう。

2007/01/16

Make Trade Fair Email Campaign

Oxfamから新しい「Make Trade Fair」キャンペーンのEmailが出た。

現在、EUがアフリカ、ラテンアメリカ、アジアパシフィック諸国にEPAs (Economic Partnership Agreements) を提案している。そこでOxfamは、これは当事国に住む数百万人の生活と希望を奪う危険性があると訴え、交渉は当事国の貧困撲滅に焦点を当てるべきであり、そのため今年、EUの大統領職に就くドイツのAngela Merkel首相に対して、EUへの影響力を行使し、人々を貧困から救いだすための真にフェアなルールに基づいた政策を打ち出すよう求めるている。そしてOxfamに登録しているユーザに独首相へメールを出すよう提案している。

SourceのWebページへ行くと、宛名、タイトル、本文がある。後は、自分の名前とemailアドレス、国を入れて送信するだけだ。送信したメールはドイツの通産大臣にもCCで送られ、ドイツ語で届くようになっている。

Source:Oxfam / Make Trade Fair Email

こういった運動、キャンペーンが国境を越え、人種を越えて広がってゆく。Oxfamが行っているのはこれだけではなく、Starbucksに対するコーヒー商標登録問題(コーヒー買取価格値上げ問題)、医薬品の特許と発展途上国の薬価問題、米、砂糖、綿花などの市場開放問題があり、また、Al Goreの「Inconvenient Truth (不都合な真実)」なども取り上げている。
これらはマスメディアが取り上げない、あるいは取り上げたとしても行動を起こすように奨励することなどない問題だ。しかし、Oxfamだけではなく、多様なNGOは約11億人のインターネットユーザに対して、グラスルーツ、ボトムアップの運動、キャンペーンを展開している。それは情報を受信した世界のインターネットユーザが、それを消費し、他のユーザと共有するため自身のWebやBlogで発信してゆくからだ。既成メディアのインパクトとパワーを上回る訴求力と、訴求範囲を持つようになった市民メディアをもはや無視することはできない。

参考:Save Darfur

Starbucksの続き
昨年、12月6日にFair Tradeを書き、その中でStarbucksに対するOxfamのemailキャンペーンを紹介した。その後、12月16日にStarbuck本社やその他世界中のStarbucksショップ前で数千人が抗議デモを実施した。その際のビデオがYouTubeにアップされている。1月15日現在で32,000回以上視聴されている。

エチオピアが申請したコーヒーブランドの商標登録に反対した代償は、StarbucksのCEOがエチオピアの首相と会談しただけでは治まらず、拡大する兆しがある。

CSRを理念的に捉えるのではなく、ビジネスチャンスとして捉えているのが昨日紹介したGEだし、プロフィットビジネスとして競合との差別化にも取り入れようとしているのがShellでもあり、Unileverでもあり、その他の欧米企業だ。

参考:Global Compact and ISO 26000 (CSR)

2007/01/15

GE Ecomagination

GEのEcomaginationキャンペーンが再スタートするようだ。2005年後半からTV、プリント、オンライン広告を使い、CEOのJeff Immeltが直々にEcomaginationを語っていた。今回も彼が最初に登場したが、前回と同じFlashのようでEcomaginationのコンセプト説明をやっている。

前回と違うのは、Ecomagination Visionという総論、そして、産業、エネルギー、インフラ、鉄道、航空、家庭向けと各論が充実している。18ヶ月前の前回に比べ、Ecomaginationを名乗る製品が増えてきた。また、特にEcomagination Visionという総論にあげられている各項目の中でもGlobal Changeが注目される。

Global Changeの最初に来るのは、人口爆発だ。2006年で65億と推測されているが、それが2050年には90億人へ増加する。アジアは41%増の52億、アフリカは120%増の18億、ラテンアメリカも55%増の8億超と予想されている。

次に都市化が問題となる。増えた人口は地方で吸収できず大都市へ向かう。これが消費される資源と環境に深刻な影響を与える。

これだけ人間が増えるので消費も拡大する。2010年の登録自動車台数は9.4億台、石油は380億バーレル、天然ガスは210兆立方フィート、ソフトドリンクは7.65億バーレル、生活廃棄物は8.6億トンへ増える。いずれも1990年レベルの50%以上の増加、ソフトドリンクと生活廃棄物は2倍、天然ガスは3倍だ。

気温上昇は、人口増加と消費拡大に伴って温室効果ガスが蓄積し、オゾン層破壊につながり、必然的に50年、100年単位で上昇する。また、その波及影響は計り知れない。

最後にがある。現在でも毎日の生活に必要な安全な水が不足している15億人がいる。20年後には生活用水の三分の一が不足すると考えられている。

このGlobal Changeを前提に、GEがコミットするものとして以下の4つを挙げている。
  1. R&D投資を倍加
  2. Ecomagination製品を毎年投入
  3. 温室効果ガスを削減しエネルギー効率を向上
  4. 情報開示
このコミットメントを実行するために各論に掲げられる各製品を紹介している。

Source:ClickZ / New Web Films Tout GE's Eco-Friendly Inventions
Source:MarketingVox / GE Ecomagination Campaign Features Web Films
参考:ge.ecomagination.com
注:ge.ecomagination.comへ行くと言語選択をするが、Englishを選択しても中国語ページが表示される。英語で見たい方は次のURLへhttp://ge.ecomagination.com/@v=06012006_1843@/route.html?〈=en&
このことをGEにコメントしようとしたがHTTPSページでコメントを発信できない。また、Ecomaginationの"For Journalists"ページ、右側にあるMore Information / Newsに関する"Go to Web Site"リンクは切れている。折角のWebサイトが台無しだ。

世界最大といってもいい巨大なB2B/B2C複合企業であるGEが、Ecomaginationというブランドであり、CSRであり、個別製品・サービスマーケティングを積極的に実施することで世界中のステークホルダーへ与える影響は限りなく大きい。

comCoreが発表したように米国トップ25サイトのうち14サイトは米国よりも海外からのアクセスが60~70%以上だという現実をご存知だろうか。(参考1)
前回同様、TV、印刷媒体に加え、米国トップメディアサイトへ出稿されるオンライン広告は米国のみならず海外からアクセスする英語・非英語圏ユーザに露出される。米国・英語トップサイトへアクセスする非英語圏ユーザはアーリーアダプターだ。彼らは入手した最新情報をローカライズして自国内へ発信、共有する。米国トップサイトでのオンライン露出が、米国だけではなく、他の英語圏、非英語圏へ波及していく。

GEは米国だけではなく、欧州、豪、ニュージーランド、日本、中国、インドなどでもキャンペーン予定だからEcomaginationサイトには、中国語、英語、ドイツ語、フランス語、そして日本語インタフェースを用意している。サイトにアクセスしてくれさえすれば、コンテンツを消費し、自国内へ配信、共有してくれるわけだ。

また、キャンペーンに加えた様々な企画も準備している。まず、ビジネスと環境に関するReutersのオンライン、モバイル記事に「Eco-Business 」という見出しを出すスポンサーシップも計画している。また昨年も行っていたようにDow Jonesとも提携し、「Environmental Business Plan Challenge」というビジネスプランを募集し、事業化資金として5万㌦を与える賞を企画している。

参考1:Global Online Marketing and Branding Available

地球を取り巻く環境、状況は悪化の一途だ。それに対してグローバル企業としてGEの矜持を見せつけながら、しっかりプロフィットビジネスとして計画、実行しようとしている。GEだけではなく、ExxonMobil、Royal Dutch Shellなども気候変動などを切り口として企業広告を実施している。(参考2)

参考2:Global Online Branding

日本企業は省エネ分野では世界の最先端を走っている。環境に配慮した製品開発はどこの企業もやっている。わざわざ世界規模でのキャンペーンは不要だと考える企業が多いだろう。しかし、その取り組みを世界中のステークホルダーは知っているだろうか?プロフィットビジネスとしてマーケティングしているだろうか?

国別に見た本社WebのGlobal・英語セクションへのアクセス数、製品・サービスページへのアクセス数、Annual Report/CSRレポートのダウンロード数、各国サイトへのダウンリンク数などデータをお持ちですか?いや、海外から本社グローバルWebへのトラフィック解析をそもそもやっておられますか?本社グローバルWebに対して海外メディアなどやBlogサイトから、どこにどれぐらいリンクされていますか?無味乾燥なPDF提供ではなく、E-PRをやっていますか?(参考3)バイラル化のための仕組みをランディングページに準備していますか?(参考4)と、訊ねたいことは山ほどある。

参考3:E-Press Release
参考4:B2C Online Survey

2007/01/12

Internet in India 2006

IAMAI (Internet & Mobile Association of India) からインドのインターネット白書2006が出ている。欧米なら様々なデータがあるが、インドのデータは珍しい。

注:INMAIをIAMAIへ訂正(2008/01/23)

都市生活者だけで2.43億人という数字からまず驚かされる。これをベースに漏斗型でインドのインターネットユーザを現している。識字者が2.03億人、英語基礎レベルが7,700万人、PC使用者が5,900万人、インターネット経験者が3,200万人、アクティブユーザが2,100万人という構造になっている。

PC利用者は2000年の1,600万人から2006年には270%増の5,900万人へ、インターネット経験者は2000年の500万人が540%増の3,200万人へ、アクティブユーザは2000年の200万人が950%増の2,100万人へ飛躍している。

インターネット経験者のうちアクティブユーザが占める比率は2000年の40%が、2006年には66%へ伸びている。

地理的には2001年時点で27%にしか過ぎなかった地方・小都市ユーザが、2006年には39%に伸びている。マスメディアの報道やクチコミでインターネット熱が地方へ広がっており、中央の大都市だけではなく、地方にもインターネットユーザが広がっている。
8大都市のユーザはアーリーアダプターを構成し、最大グループを構成していたが、地方都市の比重が上昇してくるようだ。

社会階層的に見ると2006年に、SEC Aが42%、SEC Bが35%、SEC Cが21%、SEC D & Eが3%となっている。下位階層でもインターネットの認知が上がり、PC購入やインターネット接続契約が手の届く範囲になってきたこと、また、試験結果確認、チケット発券など単純なアプリを使う簡単な経験などからインターネットの利用が広がっている。加えて、企業内デジタルデバイド根絶プログラムやNEGPイニシアティブなどにより、2~3年内には下位階層での利用も上昇すると見られている。

他にもいろいろと面白いデータがあるが、インターネットのアクセスポイントというデータが面白い。2003年にはアクセスポイントの52%をサイバーカフェが占めている。2006年でも39%だ。これはサイバーカフェが、下位階層の人々にとって唯一のアクセスポイントであり、多数ユーザにとってもインターネットに最初にアクセスする場所ということから最大のアクセスポイントになっている。

インドでもブロードバンド普及が27%に達している。2008-09年にダイアルアップを追い越し、2009-10年に75%に達するとされている。通常ならその大半は企業や家庭になるはずだが、今後、増える下位階層のインターネットユーザが使うアクセスポイントはサイバーカフェとなるため、現状の39%から急激にシフトするとは見られていない。

Source:Internet in India 2006

大都市圏だけでも英語基礎レベルの人間が7,700万人、PC利用者が5,900万人ということは、UKの3,800万人とカナダの2,200万人を合わせたような規模の英語圏に近いインターネットユーザがいるということだ。中国では2005年に1億7670万人が英語を学んでいるというし、その他の非英語圏の国にしたところで英語情報へアクセスすることが最初の一歩になる。ビジネスや音楽などの最新情報は英語がソースだ。だからcomScoreのデータが示すように米国トップWebサイトへのアクセスの大半(60~70%)は米国以外からのものだ。

ローカルはローカルに情報発信をすべきだが、日本本社から英語での情報発信が重要だ。それによって各国のアーリーアダプターに訴求でき、彼らが持ち帰る英語情報がローカル化されて国内に拡散してゆく。

参考:Lingua Franca & Internet/Online Marketing
参考:Global Online Marketing and Branding Available

2007/01/11

B2C Online Survey

最近、Forbesへアクセスした際、今度はE-Bookに関するブランドサーベイを受ける機会があった。

E-Book関連製品のブランド認知、購買意思、購買予定などをチェックしていくものだった。
  • E-Bookを知っているか?
  • 以下の5製品を知っているか?
    • iPod Electronic book
    • Amazon Kindle
    • iRex iLiad
    • Franklin E-bookman
    • Sony Reader
  • 上の製品のオンライン広告を見たことがあるか?
  • 5製品の印象を10段階で評価
  • 5製品を購入する際どれを選ぶかを10段階で評価
  • 購入予定時期は?
  • 5社のブランドイメージを項目ごとに評価
  • オンライン広告を見せて、これを見たことがあるか?
  • その広告はどのブランドの広告だったのか?
  • その広告に対してどのようなイメージを持ったか項目ごとに評価
  • 最近、購入したデジタル家電とその価格
などを訊くといったサーベイだった。

オンライン広告のフォローとして当然とも言えるビフォー・アフターのブランド認知をやっている企業は希だ。コストや手間がネックなのは分かるが、フォローアップを行わずに広告効果を測定することはできず、ベンチマークさえ設定できない。その点、この企業はきちんとやっていることがわかる。

ただし、設問にもう少し膨らみが必要だろう。サンプルとして見せられたオンライン広告は、単純なLarge Rectangleだし、ランディングページにもオンライン露出を拡大させる仕掛けはなかった。そのため、「このオンライン広告を見たことがあるか?」という部分で終わってしまい、追加の設問ができていない。

現在、オンラインでの露出はWebサイトであれ、オンライン広告であれ、Blogであれ、情報がバイラル化しなければ非常に限定された露出となる。既成メディアでの露出と同様に、力技で露出を稼がなければならなくなってしまう。Dellのように2004~2005年の2年間に米国だけで500億impressionを超える露出を投下できる企業ならいざしらず、大企業であっても事業部予算で出稿されるようなオンライン広告なら、露出=絶対露出量に加え、何らかのバイラル化を図るマーケティングが必要だ。一端、目論見どおりにバイラル化してくれれば、コストのかからない露出が自然発生的についてくる。

それにはランディングページに、左のボタンをつけ、パーソナライズドホームページにアイテムとして追加させたり、ソーシャルブックマークさせたり、ニュースアグリゲーターに登録させることで、コンテンツや画像、動画を共有してもらい、バイラル化することが重要だ。また、オープンなコメントセクションを設け、アクセス者コメントに対する企業側レスポンスを見せることも必要だ。企業がユーザと対話する姿勢を持ち、個別コメントに的確なレスポンスを返すことを示す必要がある。そうすることによってのみ、ユーザは企業側情報を消費し、フォーラム、コミュニティメンバーなどと共有してくれる。

そういった仕掛けがあれば、E-Bookサーベイの設問で、例えば以下のように追加露出分の把握が可能となり、どのオンラインメディアをモニターし、次回キャンペーンはどこを重点的にプロモーションすべきかも分析できる。
  • del.icio.usのソーシャルブックマークを見ましたか?
  • Diggの投稿を見ましたか?
  • YouTube/Yahoo!/MySpace/Google Videoで見ましたか?
  • Technoratiで検索しましたか?
著名な既成メディアサイトであるNew York TimesやWashington PostにしてもWeb2.0化、バイラル化戦略を推進している。特にWashington Postは積極的だ。左のようにBloggerが該当記事に対して何を言っているのか。Digg、Google、del.icio.usなどのブックマーク機能、そしてFacebookで自分のプロファイルに記事を追加したり、共有させる機能まで備えている。

世界からトラフィックを獲得している著名な既成メディアであったとしても、個人メディアが膨大なトラフィックを生成し、情報共有、発信が行われている現在、サイト単独での露出力、露出範囲は限られている。彼らにしてもWeb2.0トレンドに便乗し、バイラル化しなければ、取り残されてしまうことを膚で感じているのだ。

欧米競合企業との圧倒的なオンライン露出ギャップ、製品・サービス・ブランド・企業情報量に劣る日本のグローバル企業は、製品マーケティングにも、ブランドマーケティングにも、コーポレートマーケティングにも、バイラル化戦略は欠かせない。

2007/01/10

Google Blog Search Surpasses Technorati

Hitwiseによると初めてGoogle Blog Searchが、Technoratiのマーケットシェアを抜いた。

TechCrunchは、Hitwiseのデータを元にGoogleが10月にGoogle NewsにBlog Searchリンクを追加、メインページのMoreセクションにもBlogsリンクを追加したことと、Technoratiが落ち込んだため逆転劇となったと分析している。そしてそのデータを伝えたHitwiseとcomScoreを比較し、comScoreのデータがまた間違っているようだと伝えている。
また、GigaOMGattelemediaなどその他、人気のあるBlogでもTechnoratiとGoogleの件が取り上げられているが、Competeのデータとはちょっと違う。ということで、CompeteもTechnoratiとGoogle Blog Searchのデータを出してきた。それによれば10月以降、Google Blog Searchのユニークビジター数は若干伸びているが、Technoratiと比べれば、まだまだそのギャップは大きく、対抗馬とはなり得ていないことを示している。
Source:Hitwise / Google Blog Search Surpasses Technorati
参考:TechCrunch / Google v. Technorati (and Hitwise v. comScore)
参考:Compete / Technorati Holding Its Ground Against Google

CompeteがAlexa、Hitwiseと比較したデータを見ると、アクティブユーザ数はCompeteが200万以上で断トツ、そしてそれ以外にもISPやASPからのパネルユーザを持ったデータを分析している。ただしパネルユーザ数は明記していない。Hitwiseに言わせれば、USで1,000万、全世界で2,500万のパネルユーザ(ISP経由)を持っている。どちらがより信用できるかということではなく、どちらもある側面を切り取っているだけだ。
ただ、ツールバーを使っているアクティブユーザ数が200万以上というのはひとつポイントだろう。そこがHitwiseとCompeteの大きな違いだが、Alexaのユーザ数を100万としているのはちょっと腑に落ちない。Alexaはツールバーダウンロード数を累計1,000万以上としているので、その中のアクティブユーザ数を出してくれるといいのだが...。
なお、Competeは、SnapShotサービスにサブドメイン分析を追加し、いつでもユーザが自由に比較分析できるよう開発中だとのこと。今回のようにCompeteが比較するまで待つこともなく、将来的にセカンドオピニオンをユーザが自由に入手、分析できるようになるのはうれしい。

願わくば、USだけではなく、全世界をカバーするデータを出してくれれば、オンラインのブランディングに手助けとなる。ということでCompeteにコメントを残しておいたが検討してくれるだろうか?

2007/01/09

Kodak : Winds of Change

12月14日にYouTubeにアップされ、現在(1月7日時点)までに11万回視聴されているビデオがある。もともとは社内向けに作成されたものだが、従業員をはじめあまりの人気の高さにどこからか秘密裏にアップされたKodakのWinds of Changeというビデオだ。


3分を超える長尺ビデオは、白髪の男性が演壇に立ち、創業以来100年を超えるEastman Kokakは記憶であり将来であったという歴史を語るところから始まる。彼は静かに、長い間人々の生活を切り取り、記録し、コダックの瞬間(Kodak Moment)と呼ばれた時代、業界のパイオニアとしてきらびやかなKodakの歴史を語る。
その後、一転し、もうそんな昔の話ではうまく行かないと切り捨てる。演壇を離れ、エネルギッシュに声を荒げ、聴衆に身振り手振りを交えながら話し始める。いや、叫び始める。
現在はデジタル、多機能、無線などを備えて21世紀へ向かうときだ。それをKodakがやっている。影に隠れていると思っているのか?
Kodakは今、顔認識、GPS機能、メタ知識による被写体認識、画像共有など多くの機能を備えた製品を開発している。「昔、Kodak Momentだった。そして今度も同じ瞬間となる。しかし、今度はデジタルだ」
「オー、ヤー」という雄たけびでビデオは終わる。

ビデオは昨年5月のWall Street Journalが開催した「All Things Digital Conference」に招待されたKodakが内部向けのプレゼンとして準備されたもので、いくつものバージョンがあるらしい。

Source:Ad Age / Kodak's Self-Deprecating In-house Video Goes Viral

前半の終盤から一種自虐的、後半はデジタル化にまい進するKodakを強く印象付けるビデオだ。Kodakはデジタル化に遅れ、デジカメではCanon、Sonyに続く3位、2006年Q3のシェアは14%(前期21%)に落ち込み、「昔は良い製品を作っていたが、今は遅れている」といったブランドイメージを隠さずありのままに伝えている。ここに笑いのファクターがある。自虐的ともいえるコンテンツを正直でオープンに示す企業姿勢が見える。これに好感を覚えるビデオ視聴者のコメントが多く見られる。また、YouTubeにはKodakに期待するコメントも多く上がっている。

「新しい技術面でのリーダーシップを製品やサービスで実現しなければならない。時間はあまり残されていない」のも事実だが、「厳しい現実に直面しながらも、バイラルビデオの成功で、Kodakが消費者の注目を集め、デジタル化を推進するマーケティング戦略をプッシュしてゆくことは間違いない」とAd Ageは結んでいる。

キューブリック監督による「Dr. Strange Love (博士の異常な愛情)」の終盤に見るドクターストレンジラブの演説が持つファナティックさとは違うが、信念を持ちKodak社内の全員にモチベーションを高く持てと鼓舞するパワーは、冷笑ではなく、社内の団結を強め、目標に向かって進もうという強烈なメッセージを与えている。社内向けだったこのビデオをYouTubeに投稿したことで、結果的にオープンなコミュニケーションによって消費者と対話を始めようとする姿勢が見えるし、応援したくなる。これほど感情や情緒に訴えてくるCFはあるだろうか?また、これほど消費者の注目を集める露出をコストをかけずに獲得できるだろうか。

2007/01/08

Google Print Ad and Beyond

昨年11月からテストが開始されていたGoogleの新聞広告販売プログラムだが、うまく行っているようだ。66新聞と100広告主で開始されたテストプログラムは期待(目標)の3倍に達し、プログラムに参加している中のトップ5新聞は毎週、数件の入札があるようだ。

Googleは今年が転機となり、新聞へまったく新しいクラスの広告主を招き入れると話している。
NYTなども、「新しい広告主がNYTおよび印刷メディアを体験するまたとない機会」だとして、中小の広告主から新しいビジネスを受け入れる可能性を示唆している。しかし、「ただし、今まで直取引をしている大企業広告主に門戸を広げるつもりはない。プログラムがうまく運べば、アップセルを目指すし、より大きなプログラムへ移行させ、紙面のよりよい場所へ移し、Googleプログラムから脱却させるつもりだ。Googleにはこの話を正直にしている」という。

Googleの新聞プロジェクトは、既成メディアの広告取引を変換させる大きな取り組みの一部を構成し、新聞のほかに、ラジオ、雑誌などもトライしているし、TV広告にも興味を示している。

ある意味で、Googleがやろうとしていることは、新聞の売れていない紙面を買い取り、駆け込み客に売るという、何年も行われてきたブローカーや代理店の仕事と似ている。新聞の場合、Googleは色刷りや全面広告ではなく小さなディスプレー広告だけを売っている。時には小さな広告をまとめて大きなスペースとして売っているが、読者の目にはGoogleがその広告を売っていることは分からない。

Googleが抱えるオンライン広告主の大半は、今まで新聞広告を実施したことはなかったが、クリック入札でそれができるようになる。

Source:Washington Post / Google Set To Expand Newspaper Ad Program
Source:MediaPost / Google Extends Newspaper Program
Source:MediaBuyerPlanner / Googles Print Initiative Soars, Set to Expand

まず、Googleがメディアレップとして機能すると中小広告代理店のメディアバイイングをスキップする可能性がある。また、参考のように、広告全般を取り仕切るOSとして機能し始めると、Googleを使っている広告主はクロスメディアミックスが可能となり、中小広告代理店はクリエイティブ作成だけの機能へ追いやられる可能性がある。加えて、うわさのようにFortune 1000を対象としたディスプレー広告を始められると今度は中堅・大手広告代理店のメディア予算も侵食されることになる。そうなると広告代理店の生き残り策として、UGVMやDPPMといったマーケティング技術を持つ新しい広告代理店2.0部門が必要になるのかもしれない。

ただし、本当にそこまでの流れになるのだろうか?

参考:Google... the OS for Advertising
参考:MarketingVox / 'Secrect' Google Display Advertising Nework Rumored
参考:The Agency's Role in New Media

Washington Postによれば、Googleを使ってきた広告主は今まで新聞広告を出したことのなかった中小企業、零細企業、SOHO、個人だということになる。ロングテールに陽の光をあてるGoogleの検索エンジンにぶら下がるこれら広告主は、通常の大企業が行うメディア露出に必要な予算はない。それだからこその検索エンジンによるコンタクトポイント獲得なわけだ。

AlexaのBlogが言うようにロングテールは、超ローーーーングテールであり、そこから這い上がってくるのは大変なことだ。これら広告主が既成メディアへ露出することができる確率は非常に低い。しかもNYTのようにもし広告主が育ってくればGoogleとは手を切らせて囲い込もうとするのが既成メディアだ。簡単にメディアレップとして機能できるわけではない。ただし、それに手をこまねいているGoogleではないからこそのうわさなのだろう。

ところで、MarketWatchによれば年間に400万~1,0000万㌦を検索広告に投下してきた中規模の広告主がGoogleへの予算を削減する方向だという。キーワード価格の上昇、ROI低下、クリック詐欺など、どれをとっても広告主が耐えられる限界を超えつつあるのも現実だ。

Source:MarketWatch / Some Google advertisers cutting spending

超ロングテールビジネスの限界を見据え、クロスメディア向けメディアレップ機能や、Fortune1000を対象とするディスプレー広告で乗り越えようとするGoogleの戦略ではないのだろうか。うわさが事実となるとき、代理店の真価が問われるような気がする。

参考:Alexa / Traffic on the Long... Long... Tail...

2007/01/05

Social Persuaders and Influencers

「SPI (Social Persuaders and Influencers : 発音は"spy"だそうだ)」という新しい調査がMcElroyとStartSamplinから1月に出るとMediaPostが伝えている。
それによると、鍵になるソーシャルインフルエンサーは、認知、リサーチ、個人体験、推薦という4つのWOM (クチコミ)プロセスを踏んでいる

ソーシャルインフルエンサーはWOMピラミッドの頂点に位置し、彼らは人口の10%を構成し、残りの90%の選択に影響を与える。SPIは、ソーシャルネットワークの規模、説得力、そして製品やサービス情報を拡散する傾向という3つの興味ある次元で特定されるユニーバーサルな個性と行動特徴を有している。SPIは他のインフルエンサー定義と相反したり、競合するのではなく、デモグラフィックスや特定カテゴリでのバイラル行動と関係なく、効果的に待望の10%を特定、把握する高レベルの骨組みを構築するものだという。

「誰もインフルエンサーがWOMマーケティングに非常に重要なことは理解している」が、「SPIレポートは、彼らが非常にリーチしやすいことも示している」とStartSamplingのCEO、Larry Burnsは言う。
特にMcElroyのVP、Dani Marianoは、「SPIは製品を推薦することでソーシャルな対価を得ている」、「しかし、彼らは製品を薦める前に、彼ら自身が有するインフルエンサーとしての資産を乱用することのないよう、しっかりとリサーチしている。ということは、彼らはメディアに露出された製品情報を実際に読み、理解する消費者だということだ」と語る。


認知・リサーチフェーズ
個人体験・推薦フェーズ
Source:MediaPost / Reach Persuaders: A Four-Step Program To WOM Happiness

WOMマーケティングはこれから花盛りを迎えるだろうが、そこで重要になってくるのは、SPI、Brand Advocate、インフルエンサーといったコアグループに、いかにして初期認知を獲得させるか、その後、いかにしてリサーチフェーズに入った彼らに企業Webサイトへアクセスさせるかということになる。

感度が高く、積極的にメディアからの情報を消費する彼らにはYahoo!やDoubleClickの調査にあるように、オンライン露出がもっとも効果的だ。当然、WebやBlog、Podcastなどからの発信も行っているだろうから、ワンクリック先にブランド情報があれば早速消費してくれることになる。

参考:38% (Brand Advocate) Talks Brands Online
参考:DoubleClick : Influencing the Influencer

ただし、上記のように彼らはすでにSPIなどとして実績があり、その資産を持ち、友人・知人・家族・他人にも彼の行動が知られていることになる。彼、彼女はSPIとして信頼されているわけだ。当然、入手する情報源のチェックも行うし、競合製品・サービスと比較、対照した後、納得した上での推薦となる。
彼らにはオープンな情報提供が欠かせない。

McElroyのVP、Dani Marianoによれば、SPIは
  • 彼らのソーシャルネットワークに何人を抱えているか
  • 彼らはどれくらい頻繁に関連する情報を広めるのか
  • 彼らに説得力があるのかどうか
で定義され、3番目がもっとも重要だとしている。「信憑性がすべてだ。一部の人間はいつも回りに話しているが、信用されていなければ誰もその話を聴かない」と結んでいる。

だから単にPPP(PayPerPost)に金を払い、隠れペイドパブを流せば済むというわけにはいかない。PPPのポスティングが自発的ではなく、外部要因に誘わ れたもので、決してクライアントに不利益な情報を出さない(出せない)のが原則なら、オープンに対するクローズドとなり、その情報元に信頼はおけないし、反感を買うだけだろう。個人的、あるいは一部の反感だけならいいが、SPI達がソーシャルメディアとしての力を発揮したら...。

2007/01/04

Global Online Branding

最近、ちょくちょくお目にかかるのがExxonMobil、そしてRoyal Dutch Shellの企業広告だ。下だけではなくリーダーボードやスカイスクレーパーなどのサイズがある。Webサイトだけではなく、新聞Webサイトの「今日の見出し」、「今日の見出しとコラム」メールなどにも掲載されている。

これらの広告をクリックすると、Shellは本社Webサイトの企業広告セクション内の「気候変動に対して」というセクションにリンクされ、Exxonも企業セクションのトップにリンクスペースが設けられている。ExxonはUSとGlobalごとに、それぞれで推進するプロジェクトを紹介している。Shellは以前、Global Campaign by Shellで紹介したように2005年からこの種、企業広告を推進している。

参考:Shell / Addressing climate change
参考:Exxon / Corporate (トップの画像)
参考:Global Campaign by Shell

これらオンライン広告が米国トップの新聞・ニュースサイトに掲出されている。何度も取り上げているが、comScoreのデータによれば米国トップ25Webサイト中、14サイトは海外のユニークユーザ数、比率、ページビュー比率が米国からのものを大きく上回っている。サイトによっては60%、70%を超えている例もある。実質的に米国ユーザより、海外ユーザのほうが米国トップサイトへアクセスしている。

それは何故だろう?
自国の新聞・ニュースサイトのコンテンツが足りないこともあるだろうが、英語さえ理解できれば米国、あるいは世界トップの新聞・ニュースサイトの記事が読めるわけだ。世界中に張り巡らせた取材網を駆使した報道のクオリティを必要とする世界中のインターネットユーザがアクセスしているし、また、音楽、映画、ビデオといった世界中のユーザが期待する最新情報も米国サイトから発信されているからだ。
参考:Global Online Marketing and Branding Avilable

Shell、Exxonが掲出しているサイトはこのトップ25Webサイトの中でも新聞やニュースサイトが中心となっているようだ。ということは気候変動、環境保護、エネルギー供給、低排出ガスに関する企業の取り組み、姿勢を訴えるShell、Exxonの企業広告は世界中から米国トップの新聞やニュースサイトへアクセスするインターネットユーザに露出されていることになる。

これによって
  • 欧米企業は意図することなく
    • 米国(英語)トップの新聞・ニュースサイトへアクセスする
    • ビジネスなどで米国の政治・経済情報を必要とする
    • 英語+非英語圏のクオリティユーザに露出することになる
  • また、広報面でも文字情報だけではなく、
    • ストリーミング
    • Podcast
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    • コメント欄まで供えたフォーマットを利用しているため
    • オンラインユーザにE-PRとして消費、共有、転送、再構築してもらうことができる
  • 加えて、CEOおよび様々なレベルの企業Blogからの露出もあるため
    • トップダウンのマーケティングだけではなく
    • ボトムアップのマーケティングも活用されていることで
    • グローバルなオンラインのブランディングができている。
翻って日本のグローバル企業は
  • 本社からのオンラインブランディング広告は皆無に等しいため
    • 欧米企業とのオンライン露出ギャップが拡大中で
    • 既成メディアへの露出ギャップとあわせて増大中
    • 上記クオリティユーザへの露出ギャップが拡大中
  • また、海外広報実態も文字情報ベースのものが多く
    • E-Press Releaseへの取り組みも遅れているため
    • グローバルなオンラインユーザに消費、共有、転送してもらう情報配信が不足している
  • 米国子会社からのオンライン広告は販売促進、トラフィック誘導が中心となっているため
    • 日本本社のブランディングを代替するものではなく
    • 企業としての質、そして量的なオンラインのブランド露出が不足している
参考:E-Press Releaese
参考:Sun CEO's Blog

日本本社Webサイトから提供しているグローバルセクション、あるいは英語セクションが日本在住の外国人向けのコンテンツでしかなく、世界中のステークホルダーへ訴えかけるべき内容がないのであれば、また、グローバルセクションへ世界からのトラフィック誘導を目的としていないのであれば、グローバルセクション、あるいは英語セクションの意味はない。

しかし、それらが世界中のインターネットユーザ、世界中のステークホルダーに提供すべきコンテンツを有しているのなら、積極的な露出、トラフィック誘導、そして、各地域・国のローカルWebサイトへのダウンリンクを戦略として構築するべきだろう。

意図せずにグローバルなオンラインブランディングが行えてしまう欧米企業と比べ、言語的にも、コンテンツ的にも露出量が劣る日本のグローバル企業は、本社から積極的にオンライン露出とブランディングを行わない限り、既存の露出ギャップを埋めることはできないし、ギャップが拡大してゆくだけだ。また、CSRマーケティングなどを積極的に取り入れようとしている欧米企業とも質的なギャップが拡大してゆく。

参考:Global Compact and ISO 26000 (CSR)

約11憶に達するインターネットユーザ、すなわち世界中のステークホルダーに対するオンライン露出戦略、ブランディング戦略を構築することなしに、グローバル戦略はありえない。